JP4095812B2 - 圧縮機およびそのメインテナンス方法 - Google Patents

圧縮機およびそのメインテナンス方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、複数の要メインテナンス部品のそれぞれを適切な時期にメインテナンスし得るようにした、圧縮機およびそのメインテナンス方法の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧縮機、とりわけ軸封、潤滑、冷却等のために油を利用する油冷式スクリュ圧縮機では、メインテナンスを要する多くの部品(以下、要メインテナンス部品という。)を内包している。例えば、吸込フィルタ、油分離エレメント、油フィルタ、および油そのもの等が要メインテナンス部品に該当する。これら各要メインテナンス部品のメインテナンス時期は、圧縮機の使用状態等によって相違するが、現実には、定期的にメインテナンスを行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
圧縮機の吸込フィルタ、油分離エレメント、油フィルタ、圧縮機本体を駆動する電動モータ、および油そのもの等の要メインテナンス部品は、上記の通り、圧縮機の使用状態等によって相違するにもかかわらず、定期的にメインテナンスされている。圧縮機の要メインテナンス部品を定期的にメインテナンスするとなれば、本来メインテナンスを要しない要メインテナンス部品に対してもメインテナンスすることになり、無駄が多くなる。例えば、定期的に一律に部品交換をルール化している場合等にあっては、継続使用可能な要メインテナンス部品まで交換してしまうという無駄も生じる。このように一律に部品を交換するというルール化は、圧縮機の安定運転にとっては好ましいが、そのメインテナンスコストやランニングコストにとっては好ましくない。
【0004】
また、圧縮機の要メインテナンス部品のメインテナンス自体は圧縮機に欠くことのできないものである。要メインテナンス部品に対して適切な時期に適切なメインテナンスを施すことができないとなれば、最悪の場合には、要メインテナンス部品の寿命による突発的な故障等により圧縮機が突然停止し、圧縮機の運転操業、ひいては圧縮ガスを使用する製品製造ラインの操業に重大な影響を及ぼしかねない。
【0005】
従って、本発明の目的は、圧縮機の使用状態の如何にかかわらず、圧縮機の要メインテナンス部品に対して適切な時期に適切なメンテナンスを施すことを可能ならしめる圧縮機およびそのメインテナンス方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る圧縮機が採用した手段は、圧縮機本体を備え、油フィルタが介装された油流路を有する油冷式圧縮機である圧縮機において、前記圧縮機の運転状態に係る運転状態量を検出する運転状態量検出手段を設け、この運転状態量検出手段で検出される運転状態量に基づいて要メインテナンス部品の所定のメインテナンス時期を演算する機能を有する演算手段を設け、前記運転状態量検出手段は圧縮機本体の吸込側に設けられた吸込温度計、圧縮機本体の吐出側に設けられた吐出温度計、および前記油流路に設けられた給油温度計であり、前記運転状態量は前記吸込温度計で検出される吸込温度T と、前記吐出温度計で検出される吐出温度T と、前記給油温度計で検出される給油温度T とに基づいて、下記式にて求められる前記油流路を流れる油の油流量qであり、前記要メインテナンス部品は前記油フィルタであることを特徴とする。
式‥‥q={W−C ×Q× ( −T ) }/{C × ( −T )
上記式におけるW,Q,C ,C は定数である。
【0007】
本発明の請求項2に係る圧縮機のメインテナンス方法が採用した手段は、圧縮機本体を備え、油フィルタが介装された油流路を有する油冷式圧縮機である圧縮機の運転状態に係る運転状態量を測定し、測定された運転状態量に基づいて要メインテナンス部品の所定のメインテナンス時期を決定する圧縮機のメインテナンス方法において、前記運転状態量は前記圧縮機本体の吸込側に設けられた吸込温度計で検出される吸込温度T と、前記圧縮機本体の吐出側に設けられた吐出温度計で検出される吐出温度T と、前記油流路に設けられた給油温度計で検出される給油温度T とに基づいて、下記式にて求められる前記油流路を流れる油の油流量qであり、前記所定のメインテナンスが前記油フィルタのメインテナンスであることを特徴とする。
式‥‥q={W−C ×Q× ( −T ) }/{C × ( −T )
上記式におけるW,Q,C ,C は定数である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のメインテナンス方法を実施する実施の形態に係る圧縮機の構成を、この圧縮機が油冷式スクリュ圧縮機(以下、圧縮機という。)である場合を例として、その模式的構成説明図の図1を参照しながら説明する。
【0009】
図1に示すものは、本発明のメインテナンス方法を実施する実施の形態に係る圧縮機であって、この圧縮機は、図示しない雌雄一対のスクリュロータをロータケーシングに内蔵してなる圧縮機本体1を備えている。前記スクリュロータの一方(通常、雄ロータである。)の軸には、図示しないカップリングを介して、インバータ15により回転数が制御される電動モータ2の出力軸が接続されている。前記圧縮機本体1の吸込口3には吸込流路10が接続されており、この吸込流路10には、吸込ガスである吸込空気に含まれているごみ等の異物を除去する吸込フィルタ11が介装されている。
【0010】
また、前記圧縮機本体1の吐出口4には、吐出ガス供給先である圧縮空気供給先に連通する吐出流路12が接続されており、この吐出流路12に、後述する油分離回収器5が介装されている。この油分離回収器5の内部上方には圧縮機本体1から吐出される油分を含む吐出空気から油を分離する油分離エレメント6が配設されると共に、内部下方にはこの油分離エレメント6で分離された油を溜める油溜まり部7が形成されている。そして、油分離エレメント4を通過して油分が除去された圧縮空気が、吸込流路10を通して圧縮空気供給先に供給されるように構成されている。
【0011】
また、前記油分離回収器5の油溜まり部7から圧縮機本体1には、後述する油流路13が連通している。この油流路13には、冷却ファン14で冷却される油クーラ8が介装されると共に、油フィルタ9が介装されており、油溜まり部7に溜められた油が所定温度に冷却され、かつスラッジ等が除去されて、圧縮機本体1に供給されるようになっている。
なお、油の供給個所は、圧縮機本体1の図示しない圧縮空間、軸封部、軸受等である。
【0012】
このような構成になる圧縮機は、圧縮機制御装置20によって運転が制御されるように構成されている。即ち、この圧縮機制御装置20は、吸込流路10の吸込フィルタ11の下流側に配設され、吸込流路10を流れる吸込空気の温度を測定する吸込空気温度計21、電動モータ2の温度を検出するモータ温度計25を備えている。また、吐出流路12に設けられ、油分離エレメント4を通過して油分が除去された供給空気の圧力を測定する供給空気圧力計23を備えている。また、油分離回収器5に設けられ、この油分離回収器5内の吐出空気の圧力および温度を測定する吐出空気圧力計22、吐出空気温度計24を備えている。さらに、油流路13の油クーラ8の上流側に配設され、この油流路を流れる油の温度を測定する給油温度計26を備えている。これら測定機器類が圧縮機の運転状態検出手段である。
【0013】
そして、前記吸込空気温度計21、吐出空気圧力計22、供給空気圧力計23、吐出空気温度計24、モータ温度計25、給油温度計26からの検出値が入力される制御器27を備えている。この制御器27は、インバータ15に前記電動モータ2の回転数を制御するための信号と、前記給油温度計26から入力される検出値、つまり油温に応じて冷却ファン14の回転を制御するための信号を出力するものである。さらに、後述する複数の要メインテナンス部品のメインテナンス時期に係る演算を行うと共に、演算結果を図示しないディスプレイ等の表示手段に表示するように構成されている。なお、この制御器27には、前記表示手段に加えて、音声発生手段または警告発生手段等を設けても良い。
【0014】
前記制御器27によるメインテナンス時期に係る演算の対象となる要メインテナンス部品は、下記のとおりである。
(1)吸込フィルタ(目詰まり)
(2)油分離エレメント(目詰まり)
(3)油フィルタ(目詰まり)
以下、前記制御器27で行う上記要メインテナンス部品のメインテナンス時期について、より詳細に説明する。
【0015】
先ず、吸込フィルタ(目詰まり)について、横軸に時間(h)をとり、縦軸に冷却ファンの回転数(rpm)をとって示す、冷却ファン回転数の経時変化説明図の図2を参照しながら説明する。圧縮機がパッケージ型で、かつ圧縮機本体1が油冷式スクリュ圧縮機である場合には、吐出空気の温度を吐出空気温度計24によって測定しながら冷却ファン14の回転数を制御して、圧縮空気中で水分が凝縮しないように吐出空気の温度を制御している。
より具体的には、吐出空気の温度が高い場合には冷却ファン14の回転数を上げて冷却風量を多くし、逆に吐出空気の温度が低い場合には冷却ファン14の回転数を下げて冷却風量を少なくするようにしている。
【0016】
圧縮機の上記のような制御運転中において、吸込フィルタ11が目詰まりすると、防音カバー内が負圧になってしまう。そのため、冷却ファン14の吸込側と吐出側とで差圧が大きくなって冷却風量が減少し、吐出空気の温度が上昇する。すると、吐出空気の温度上昇を防ぐために、吐出空気温度計24から出力される測定温度に基づいて、冷却ファン14の回転数が高速回転になるように制御される。従って、冷却ファン14の回転数が経時的に上昇するときは、吸込フィルタ11が目詰まりを起こしていることになるから、冷却ファン14の回転数の上昇カーブから吸込フィルタ11の余寿命を演算することができる。
【0017】
例えば、冷却ファン14の回転数が、図2に示すような上昇カーブを描いて上昇しているものとする。この図2に示す実線は冷却ファン14の実際の回転数を示している。また、破線は前記実線中の複数点からラグランジェ補間等により曲線を推定して示したものであって、いわば冷却ファン14の回転数の経時的推移を平準化して示したものである。
【0018】
ところで、ここでいう冷却ファン14の回転数とは、制御器27の演算機能を有する演算部で演算されて導出されるものであり、冷却ファン14に対して発信される回転数制御信号は演算された回転数に準じたものである。この実施の形態に係る圧縮機の場合には、部品点数を極力抑えるために、ロータリーエンコーダのような回転数検出器等を設けていない。しかしながら、冷却ファン14にロータリーエンコーダ等の回転数検出器を設けて、この回転数検出器から出力される回転数信号から冷却ファン14の実際の回転数を求めるという方法も、当然採用することができる。
【0019】
前記制御器27は、吸込フィルタ11のメインテナンス時期、つまり交換時期を演算し、その交換の要否を、図示しない表示機器等の表示手段に表示するようになっている。また、この制御器27には、図示しない入力スイッチが付設されている。この入力スイッチは、吸込フィルタ11のメインテナンスが終了し、次のメインテナンス時期の演算を新たに開始することを制御器27に伝達するためのものである。
【0020】
即ち、最初に吸込フィルタ11の取付けを終え、そして圧縮機の運転を開始するに際して、圧縮機の使用者は取付けた吸込フィルタ11のメインテナンス時期の演算を新たに開始するということを制御器27に伝達するために入力スイッチを押す。これにより、制御器27は新たに吸込フィルタ11のメインテナンス時期の演算を開始することになる。なお、通常、吸込フィルタ11は、取付けてから交換するまでの間は取り外さない。従って、吸込フィルタ11の枠部に隣接する位置にリミットスイッチを取付け、このリミットスイッチがOFFになったときを以って、吸込フィルタ11が取り外されたということを制御器27に認識させる構成にしても良い。
【0021】
フィルタ交換時期演算方法1を説明すると、制御器27には吸込フィルタ11の寿命初期値Lが入力されている。吸込フィルタ11を交換した時点(前記入力スイッチを押した時点)からの経過時間をtとし、t時間経過した時点における冷却ファン14の回転数をRとする。
【0022】
ここで、前記制御器27は、Δtの単位時間毎に冷却ファン14の回転数をn回サンプリングしたとすると、n回サンプリングしたときまでの経過時間tは、t=n×Δtである。また、t時間経過したときの吸込フィルタ11の寿命がLであるとすると、この吸込フィルタ11の寿命Lは、下記(1)式で表すことができる。
=L−cΣRiΔtΔt ‥‥‥‥‥‥(1)
なお、上記(1)式中の英小文字cは任意の定数であり、また英小文字iは0〜nまでの整数である。
上記(1)式を演算することにより、吸込フィルタ11の寿命Lが所定の閾値よりも短くなったときに、制御器27の表示機器に吸込フィルタ11のメインテナンスが必要であるということが表示される。
【0023】
次に、フィルタ交換時期演算方法2を説明すると、先ず図2において二点鎖線で示すように、吸込フィルタ11の寿命の目安として冷却ファン14の回転数の上限値Rthを定めておく。冷却ファン14の回転数が上限値Rthに到達する時間(メインテナンスを必要とする時期)Lthを冷却ファン14の回転数のサンプリングにより求める。なお、このフィルタ交換時期演算方法2により求めるのは、吸込フィルタ11の寿命そのものではなく、吸込フィルタ11の寿命が尽きる時期である。
【0024】
即ち、吸込フィルタ11を交換した時点(前記入力スイッチを押した時点)を0点として、この0点からの経過時間をtとし、t時間経過した時点における冷却ファン14の回転数をRとする。ここで、制御器27はΔtの単位時間毎に冷却ファン14の回転数をn回サンプリングしたとすると、n回サンプリングしたときまでの経過時間tは、上記フィルタ交換時期演算方法1の場合と同様に、t=n×Δtとなる。この場合、下記の(2)(3)式により、吸込フィルタ11のメインテナンスを必要とする時期Lthを演算することができる。
【0025】
th=(Rth−R( n−1 ) Δt)×{Δt/(RnΔt−R( n−1 ) Δt)}+(n−1)Δt
‥‥‥‥‥‥(2)
但し、上記(2)式でLth≧Lとなる場合は、Lth=Lとし、さらに、
nΔt≦R( n−1 ) Δt ‥‥‥‥‥‥(3)
を用いる。なお、上記(2)式は、y−R( n−1 ) Δt={(RnΔt−R( n−1 ) Δt)/Δt}×{x−(n−1)Δt}の式に、y=Rthを導入して整理することにより得たものである。
【0026】
吸込みフィルタ11のメインテナンスを必要とする時期Lthの演算に、上記(2)式と(3)式とを用いるのは、下記の理由による。即ち、上記式(2)式のみによって吸込フィルタ11のメインテナンスの必要な時期Lthを導出しようとすると、上記式(3)の場合には、(2)式に基づく時期Lthの解を得ることができないか、または時期Lthの値が負になってしまう。そこで、上記のような場合には、上記のとおり、吸込フィルタ11の寿命の初期値LをLthとし、さらに(3)式を用いるものである。
【0027】
従って、前記制御器27は吸込フィルタ11を交換してからの経過時間tと、演算により得られた時期Lthとを比較し、その相違が所定の閾値よりも小さくなったら交換時期であると判断する。これにより、「吸込フィルタ11のメインテナンスが必要である」という判断結果が制御器27に設けられた表示機器に表示されることとなる。
【0028】
ところで、以上では、圧縮機の要メインテナンス部品が防音カバーの空気取入口に取付けた吸込フィルタ11であり、この交換時期の決定に用いる「圧縮機の運転状態に係る状態量」が冷却ファン14の回転数である場合の2演算方法について説明した。しかしながら、これらフィルタ交換時期演算方法に係る思想を、吸込フィルタ11のメインテナンス時期の決定だけでなく、他の要メインテナンス部品のメインテナンス時期決定に対しても適用することができる。
【0029】
より詳しくは、圧縮機のある要メインテナンス部品のメインテナンス時期を決定するには、そのメインテナンス部品に関与する「圧縮機の運転状態に係る状態量」を直接的、または間接的に検出する。そして、要メインテナンス部品の寿命の初期値(上記例ではL)と任意の定数(上記例ではc)とを予め決定すれば、上記演算方法1に準じた形で、圧縮機の要メインテナンス部品のメインテナンス時期を決定することができる。また、要メインテナンス部品の寿命の初期値(上記例ではL)と状態量の上限値(上記例ではRth)とを予め決定すれば、上記演算方法2に順じた形で、圧縮機の要メインテナンス部品のメインテナンス時期を決定することができる。
【0030】
油分離エレメント(目詰まり)について、横軸に時間(h)をとり、縦軸に吐出空気圧力計22と供給空気圧力計23との差圧をとって示す、差圧の経時変化説明図の図3を参照しながら説明する。油分離エレメント6は、圧縮機本体1から吐出される吐出空気内にダストが含まれていると目詰まりを起こし、油分離エレメント6の前後の差圧が大きくなる。
差圧が大きくなると、供給空気圧力計23で測定されるエレメント後圧は一定になるように制御されるため、吐出空気圧力計22で検出されるエレメント前圧が上昇し、圧縮機本体1がオーバーロードになる。そのため、この差圧の経時的変化を監視し、差圧の上昇カーブから油分離エレメント6の余寿命を計算することができる。
【0031】
前記差圧の上昇カーブから油分離エレメント6の余寿命を演算する具体的な演算方法は、冷却ファン14の回転数から吸込フィルタ11の目詰まりを判断した上記フィルタ交換時期演算方法1、2の場合と同様である。即ち、吐出空気圧力計22で測定される圧力がPdであり、そして供給空気圧力計23で測定される圧力がPdであるとすると、差圧Dは、D=Pd−Pdで表されるが、図3においては、差圧Dは実線で示されている。また、破線は、図2における破線の場合と同様に、図3における実線中の複数点からラグランジェ補間等で曲線を推定して示したものである。
【0032】
前記制御器27は、油分離エレメント6のメインテナンス時期を演算し、そのメインテナンスの要否を、図示しない表示機器等の表示手段に表示するようになっている。また、この制御器27には、図示しない入力スイッチが付設されている。この入力スイッチは、油分離エレメント6のメインテナンスが終了して、次のメインテナンス時期の計算を新たに開始することを制御器27に伝達するためのものである。より具体的には、最初に油分離エレメント6の取付けを終え、圧縮機の運転を開始するに際して、圧縮機の使用者はメインテナンス時期の演算を新たに開始するということを制御器27に伝達するために入力スイッチを押す。 これにより、制御器27は、新たに油分離エレメント6のメインテナンス時期の演算を開始する。
【0033】
以下、エレメント交換時期演算方法1を説明すると、前記制御器27には油分離エレメント6の寿命初期値Leが入力されている。油分離エレメント6を交換した時点(前記入力スイッチを押した時点)からの経過時間をtとし、t時間経過した時点における差圧がDであるとする。ここで、制御器27は、Δtの単位時間毎に差圧をn回サンプリングしたとすると、n回サンプリングするまでの経過時間tは、t=n×Δtである。また、t時間経過したときの油分離エレメント6の寿命がLeであるとすると、油分離エレメント6の寿命Leは下記(4)式で演算することができる。
Le=Le−c′ΣDiΔtΔt ‥‥‥‥‥‥(4)
但し、上記(4)式中の英小文字c′は任意の定数であり、また英小文字iは0〜nまでの整数である。この(4)式を演算することにより、油分離エレメント6の寿命Leが所定の閾値よりも短くなったときに、制御器27の表示機器に「油分離エレメント6のメインテナンスが必要である」ということが表示されることとなる。
【0034】
次に、エレメント交換時期演算方法2を説明すると、先ず図3において二点鎖線で示すように、油分離エレメント6の寿命の目安として差圧の上限値Dthを定めておく。差圧が上限値Dthに到達する時間tthを差圧のサンプリングにより求める。油分離エレメント6の交換をゼロ点として、そのゼロ点からの経過時間をtとし、t時間経過の後の差圧がDであるとする。ここで、制御器27はΔtの単位時間毎に差圧をn回サンプリングしたとすると、n回サンプリングするまでの経過時間tは、t=n×Δtである。すると、下記(5)(6)式により、メインテナンスの必要な時期Lethを演算することができる。
【0035】
Leth=(Dth−D( n−1 ) Δt)×{Δt/(DnΔt−D( n−1 ) Δt)}+(n−1)Δt
‥‥‥‥‥‥(5)
また、上記式でLeth≧Leとなる場合は、Leth=Leとし、さらに、
nΔt≦D( n−1 ) Δt ‥‥‥‥‥‥(6)
を用いる。上記(5)(6)式を用いるのは、下記の理由による。上記(5)式のみにより油分離エレメント6のメインテナンスの必要な時期Lethを導出しようとすると、上記式(6)式の場合には、(5)式に基づく時期Lethの解を得ることができないか、または時期Lethの値が負になってしまう。そこで、上記のような場合には、上記のとおり、油分離エレメント6の寿命の初期値LeをLethとし、さらに(6)式を用いるものである。
【0036】
従って、制御器27は油分離エレメント6を交換してからの経過時間tと時期Lethとを比較し、その相違が所定の閾値よりも小さくなったら交換時期であると判断する。これにより、「油分離エレメント6のメインテナンスが必要である」との判断結果が表示機器に表示されることとなる。
【0037】
油フィルタ9のフィルタ交換時期演算方法について説明する。油フィルタ9が目詰まりすると、圧縮機本体1への給油量が減少する。油冷式スクリュ圧縮機の場合、油で空気を冷却しているため、給油量が減少すると吐出空気の温度が上昇する。一般に、吸込空気温度Tと、吐出空気温度Tと、給油温度Tと、給油量qとの間には、下記のような関係がある。
q={W−C×Q×(T−T)}/{C×(T−T)}
なお、上記式中の英大文字Qは空気量(定数と見なす)であり、英大文字Wは圧縮動力(定数と見なす)であり、英大文字CおよびCは何れも定数である。
【0038】
上記式の給油量qから油フィルタ9の目詰まりの度合いを知ることができる。つまり、この給油量qから油フィルタ9の余寿命を演算することができる。この場合、メインテナンス時期を決定する要メインテナンス部品は油フィルタ9であり、そしてそのメインテナンス時期決定の演算に用いられる「圧縮機の運転状態に係る状態量」は給油量qである。
【0039】
即ち、上記のとおり、給油量qを吸込温度Tと、吐出温度Tと、給油温度Tとから間接的に検出する。さらに、油フィルタ9の寿命の初期値と任意の定数とを予め決定しておけば、上記フィルタ交換時期演算方法1に順じた形で油フィルタ9のメインテナンス時期を決定することができる。また、油フィルタ9の寿命の初期値と状態量、つまり給油量qの下限値とを予め決定しておけば、上記フィルタ交換時期演算方法2に順じた形で油フィルタ9のメインテナンス時期を決定することができる。
【0040】
なお、上記フィルタ交換時期演算方法2に順じた形で油フィルタ9のメインテナンス時期を決定する場合に、給油量qの上限値を決定するのではなく下限値を決定するのは、下記の理由によるものである。即ち、冷却ファン14の回転数が上昇し、また差圧が大きくなる吸込フィルタ11、油分離エレメント6のメインテナンス時期を演算する場合と異なり、時間の経過につれて油フィルタ9の目詰まりが進行し、給油量qが少なくなるからである。
【0041】
以上述べたように、本実施の形態に係る圧縮機によれば、吸込フィルタ11、油分離エレメント6、および油フィルタ9のメインテナンス時期は、それぞれ下記のようにして求められる。
(1)吸込フィルタ11のメインテナンス時期は、吐出空気温度計24で測定される吐出空気温度による回転数制御信号から演算される冷却ファン14の回転数の上昇から求められる。
(2)油分離エレメント6のメインテナンス時期は、吐出空気圧力計22で測定される吐出空気圧力と、供給空気圧力計23で測定される供給空気圧力との差圧の上昇から求められる。
(3)油フィルタ9のメインテナンス時期は、吸込空気温度計21により測定される吸込空気温度と、吐出空気温度計24により測定される吐出空気温度と、給油温度計26により測定される油温度との関係から得られる油の油流量の減少から求められる。
【0042】
本実施の形態に係る圧縮機によれば、演算により要メインテナンス部品のメインテナンス時期を確実に求めることができるから、下記のとおりの効果がある。
(1)定期的にメインテナンスを行う従来例のように、本来メインテナンスを要しない部品に対してメインテナンスを施すようなことがなく、無駄がなくなるから、圧縮機のメインテナンスコストやランニングコストの削減に大いに寄与することができるという優れた効果がある。
(2)突発的な故障等による圧縮機の突然停止を防止することができるのに加えて、要メインテナンス部品のメインテナンス時期を前以って予測することが可能である。そのため、圧縮空気の供給先での生産ラインにおける製品製造計画に混乱が生じるようなことがなく、製造計画通りに製品を製造することができるから、納期に確実に所定数の製品を納入することができる。
【0043】
ところで、以上では、インバータで回転数が制御される電動モータによって圧縮機本体が駆動されて、この圧縮機本体から吐出される吐出空気の吐出量が制御される圧縮機を例として説明した。しかしながら、圧縮機本体から吐出される吐出空気の吐出量をスライド弁によって制御する圧縮機に対しても適用することができるので、上記実施の形態に係る圧縮機の形態に限定されるものではない。また、以上では、各種の要メインテナンス部品のメインテナンス時期や寿命を演算するため、様々な計算式を示した。但し、本発明は上記の演算式に限定するものではない。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の請求項1に係る圧縮機、および本発明の請求項2に係る圧縮機のメインテナンス方法によれば、演算により吸込フィルタ、油分離エレメント、油フィルタ等の要メインテナンス部品の適切なメインテナンス時期を求めることができる。
従って、定期的にメインテナンスを行う従来例のように、本来メインテナンスを要しない部品に対してメインテナンスを施すようなことがなく、無駄がなくなるので、圧縮機のメインテナンスコストやランニングコストの削減に大いに寄与することができるという優れた効果がある。
【0045】
また、本発明の請求項1に係る圧縮機、および本発明の請求項2に係る圧縮機のメインテナンス方法によれば、突発的な故障等による圧縮機の突然停止を防止することができるのに加えて、要メインテナンス部品のメインテナンス時期を前以って予測することが可能である。そのため、圧縮ガスの供給先での生産ラインにおける製品製造計画に混乱が生じるようなことがなく、製造計画通りに製品を製造することができるから、納期に確実に所定数の製品を納入することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のメインテナンス方法を実施する実施の形態に係る圧縮機の模式的構成説明図である。
【図2】 本発明の実施の形態に係り、横軸に時間(h)をとり、縦軸に冷却ファンの回転数(rpm)をとって示す、冷却ファン回転数の経時変化説明図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係り、横軸に時間(h)をとり、縦軸に吐出空気圧力計と供給空気圧力計との差圧をとって示す、差圧の経時変化説明図である。
【符号の説明】
1…圧縮機本体、2…電動モータ、3…吸込口、4…吐出口、5…油分離回収器、6…油分離エレメント、7…油溜まり部、8…油クーラ、9…油フィルタ、10…吸込流路、11…吸込フィルタ、12…吐出流路、13…油流路、14…冷却ファン、15…インバータ、20…圧縮機制御装置、21…吸込空気温度計、22…吐出空気圧力計、23…供給空気圧力計、24…吐出空気温度計、25…モータ温度計、26…給油温度計、27…制御器。

Claims (2)

  1. 圧縮機本体を備え、油フィルタが介装された油流路を有する油冷式圧縮機である圧縮機において、前記圧縮機の運転状態に係る運転状態量を検出する運転状態量検出手段を設け、この運転状態量検出手段で検出される運転状態量に基づいて要メインテナンス部品の所定のメインテナンス時期を演算する機能を有する演算手段を設け、前記運転状態量検出手段は圧縮機本体の吸込側に設けられた吸込温度計、圧縮機本体の吐出側に設けられた吐出温度計、および前記油流路に設けられた給油温度計であり、前記運転状態量は前記吸込温度計で検出される吸込温度T と、前記吐出温度計で検出される吐出温度 と、前記給油温度計で検出される給油温度T とに基づいて、下記式にて求められる前記油流路を流れる油の油流量であり、前記要メインテナンス部品は前記油フィルタであることを特徴とする圧縮機。
    式‥‥q={W−C ×Q× ( −T ) }/{C × ( −T )
    上記式におけるW,Q,C ,C は定数である。
  2. 縮機本体を備え、油フィルタが介装された油流路を有する油冷式圧縮機である圧縮機の運転状態に係る運転状態量を測定し、測定された運転状態量に基づいて要メインテナンス部品の所定のメインテナンス時期を決定する圧縮機のメインテナンス方法において、前記運転状態量は前記圧縮機本体の吸込側に設けられた吸込温度計で検出される吸込温度T と、前記圧縮機本体の吐出側に設けられた吐出温度計で検出される吐出温度T と、前記油流路に設けられた給油温度計で検出される給油温度T とに基づいて、下記式にて求められる前記油流路を流れる油の油流量qであり、前記所定のメインテナンスが前記油フィルタのメインテナンスであることを特徴とする圧縮機のメインテナンス方法
    式‥‥q={W−C ×Q× ( −T ) }/{C × ( −T )
    上記式におけるW,Q,C ,C は定数である。
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