本発明における一実施の形態である打撃検査装置は、被検査対象物であるコンクリート構造物の壁面を被検査面として、その被検査面を打撃することにより当該被検査面から伝播してくる反射振動に基づいて被検査面の内部(深部)に存在する空洞の有無を検査する装置である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である打撃検査装置1の概略的な外観図である。図1に示すように、打撃検査装置1は、被検査面80の打撃及びその打撃により被検査面80に生じる反射振動の検出を行う検査マウス2と、その検査マウス2による検出結果である空隙検査情報を記憶するとともに打撃検査装置1の各部の制御を行うコントロールボックス3とを備えている。
検査マウス2は、使用者により把持される筐体4を備えている。この筐体4には、その横幅方向両側にハンドベルト5の両端部が連結固定されており、このハンドベルト5を手の甲に掛け渡すことで筐体4を強く握らずに把持することができる。この筐体4の外面には空隙判定ランプ6と、3個の姿勢確認ランプ7とが互いに隣接して設けられている。
この検査マウス2によれば、その筐体4を手で把持した状態で打撃検査を行えるので、例えば、垂直面、天井面、湾曲面などのように検査マウス2を手放しで被検査面80に載置したまま打撃検査を行えない場所が被検査面80である場合でも、何の支障もなく検査マウス2を被検査面80に押し当て打撃検査を行うことができる。
空隙判定ランプ6は、被検査面80の内部に空隙があるか否かを点灯色を切り替えることにより報知するLEDであり、検査箇所の内部に空隙が存在する場合に赤色点灯され、被検査面80の内部に空隙が不存在である場合に緑色点灯される。
3個の姿勢確認ランプ7は、後述する打撃ユニット20及び振動検出ユニット30の被検査面80に対する相対的な姿勢(以下「打撃検出姿勢」ともいう。)が正常姿勢であるか又は異常姿勢であるかを報知するLEDであり、打撃検出姿勢が正常姿勢である場合において、3個全て同時点灯された状態となり、打撃検出姿勢が異常姿勢である場合において、1個以上が消灯した状態となる。
コントロールボックス3は、接続ケーブル8を介して検査マウス2と接続されており、検査マウス2との間で各種信号が送受信可能となっている。このコントロールボックス3は、ウェストベルト(図示せず)を介して使用者の腰回りに巻き付けられて装着されるものであり、使用者の腰部に当接する内側の外壁面が凹面状に湾曲形成されている。
また、コントロールボックス3の外側の外壁面は凸面状に湾曲形成されており、そこには使用者により操作される機能切替スイッチ9A、ゲイン変更スイッチ9B、開始スイッチ9C、停止スイッチ9D及び閾値調整スイッチ9Eの各種キースイッチを有した操作パネル9が設けられている。さらに、コントロールボックス3の上面には、LCDを用いて打撃検査結果を表示する表示パネル10が設けられており、コントロールボックス3の側部からは、打撃検査装置1の各部の駆動用の直流電力を商用交流電源から取得するための電源コード11が導出されている。
図2は、検査マウス2の詳細図であり、図2(a)は側面図であって部分的に断面視したものであり、図2(b)は正面図であり、図2(c)は底面図である。なお、図2では、検査マウス2の3個の支持脚13が当接される被検査面80として、理想平面(何学的平面)を2点鎖線を用いて図示している。
図2(a)から図2(c)に示すように、筐体4は、コンピュータ関連機器の一つであるマウス型ポインティングデバイスの形態を模したマウス形状に形成されており、片手で把持可能な手の平サイズに形成されている。この筐体4は、手との接触部分となる上面部(被検査面80との非対向部分)が、湾曲した手の平の形態に適合した湾曲形状に形成されており、手の平に対するフィット性が高められている。
なお、本実施例では、筐体4を片手で把持可能な手の平サイズのものとして説明しているが、かかる筐体4のサイズは必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、片手サイズより若干大きめの両手で把持可能なサイズであっても良い。
図2(a)の側面図に示すように、筐体4の後端部には接続ケーブル8を接続可能なコネクタ18が設けられており、この筐体4の前側部分には前端部から頂部まで傾斜した斜面が設けられている。図2(b)の正面図に示すように、筐体4の前側部分にある斜面には上記した空隙判定ランプ6と3個の姿勢確認ランプ7とが配設されている。
図2(a)の側面図及び図2(b)の正面図に示すように、筐体4には、その頂部(被検査面80との非対向部分)に平坦面状の装着面4Aが形成されており、この装着面4Aにキャップ12がビス止めにより着脱自在に固定されている。このキャップ12は筐体4の頂部から凸状に突設されており、これが筐体4を把持する際に手の平の中央に嵌り込むことで、筐体4を把持する手が丸められてハンドベルト5と筐体4との間から抜け難い格好となるようになっている。
また、筐体4の底面は、検査マウス2による打撃検査時において被検査面80との対向面となるものである。図2(c)の底面図に示すように、この筐体4の底面には、被検査面80を打撃する打撃ユニット20と、その打撃ユニット20により打撃された被検査面80に接触して当該被検査面80からの反射振動を受信検出する振動検出ユニット30とが配設されている。
図2(a)の側面図に示すように、打撃ユニット20は、被検査面80に衝突して打撃する打撃ヘッド21と、その打撃ヘッド21を被検査面80に衝突させる駆動力を付与する駆動ソレノイド22とを備えている。打撃ヘッド21は、被検査面80との衝突面21Aが球面状に形成されており、この衝突面21Aの裏面にプッシュバー23の先端部が取着されている。
駆動ソレノイド22は、そのフレーム22Aが検査マウス2の筐体4内部に収容固定されており、かかるフレーム22Aの下端面からプッシュバー23が垂直下方へ突出されている。この駆動ソレノイド22は、フレーム22A内に固定鉄心、コイル及びプランジャ(可動鉄心)を備えたプッシュ式ソレノイドであり、そのプランジャを待機位置へ向けて付勢する戻りバネが内蔵され、このプランジャの先端にプッシュバー23が取着されている。
この駆動ソレノイド22によれば、コントロールボックス3からの駆動電圧の印加(励磁)によりプランジャが吸引され、プランジャにより押動されたプッシュバー23がフレーム22Aから外へ突出され、この突出により打撃ヘッド21が被検査面80に衝突させられる。一方、駆動ソレノイド22への駆動電圧が無印加(消磁)状態になれば、プランジャが戻りバネの弾性復元力により付勢されて待機位置に復帰し、かかる復帰によりプッシュバー23がフレーム22A内に退出されて、打撃ヘッド21が被検査面80から離反される。
このように打撃ヘッド21は、駆動ソレノイド22の駆動によって、退避位置(図2(a)の実線で示す位置)から最大突出位置(図2(a)の2点鎖線で示す位置)までの区間を出没可能となっており、退避位置から最大突出位置へ向けて突出されることで被検査面80を打撃するようになっている。
振動検出ユニット30は、被検査面80から伝播してくる反射振動を検出する加速度センサ31と、この加速度センサ31を内部に収容して被検査面80に接触される振動プローブ32と、その振動プローブ32を被検査面80に対して付勢して圧接させる付勢バネ33とを備えている。
振動プローブ32は、加速度センサ31を収容可能な外径を有する円柱状の収容体32Aと、この収容体32Aの下端面に一体形成されて被検査面80に直接接触される先端部を有した受振軸32Bとを備えている。また、収容体32Aは、その軸中心方向に上下2つに分割されており、その下側部分に相当するものであって受振軸32Bが一体形成される収容体基部32Cと、その上側部分に相当する収容体蓋部32Dとを備えている。
加速度センサ31は、振動プローブ32の収容体基部32Cの上端面に凹設される嵌合凹部32Eに嵌め込まれた状態で収容されている。この加速度センサ31は、その底面が受振面となっており、かかる受振面が嵌合凹部32Eの底面に接着固定されている。また、この加速度センサ31の受振面は、受振軸32Bの軸中心の真上にあり、この受振軸32Bを通じて被検査面80の振動が伝播され易くなっている。
さらに、収容体基部32Cの嵌合凹部32Eの深さは加速度センサ31の厚みに適合している。このため、収容体基部32Cの上端面に収容体蓋部32Dを覆設してビス止めにより固定することにより、加速度センサ31が収容体基部32Cと収容体蓋部32Dとの間に挟持される。
このようにして構成される振動プローブ32は、その収容体32A内に加速度センサ31を収容したままの状態で、筐体4内の下面に凹設される摺嵌穴14に収容されている。この振動プローブ32は、筐体4の底面に対する垂直方向へ摺嵌穴14内で摺動自在となっており、その摺嵌穴14の天井面と収容体32Aとの間には振動プローブ32を垂直下方へ付勢する付勢バネ33が介装されている。
また、摺嵌穴14の下端部は底蓋板15により閉塞されており、この底蓋板15の中央から振動プローブ32の受振軸32Bのみが垂直下方へ突出されている。この受振軸32Bは、その外径が収容体32Aの外径より小さくかつその先端(下端)が球面状に形成されており、この球面状の先端が付勢バネ33の付勢力により被検査面80に圧接されるようになっている。
図2(c)の底面図に示すように、検査マウス2の筐体4は、その前後方向に延びる中心線Lに対して左右対称に形成されており、この筐体4の底面には打撃ヘッド21、受振軸32B及び3個の支持脚13が左右対称に配置されている。3個の支持脚13は、検査マウス2の筐体4を被検査面80上で三点支持するものであり、この筐体4の底面における互いに間隔を隔てた3箇所(3点)に1個ずつ配設されている。
この3個の支持脚13は、打撃ユニット20の打撃ヘッド21及び振動検出ユニット30の振動プローブ32の受振軸32Bを取り囲むように配設されており、当該支持脚13のうち1個が筐体4の前端部における中心線L上に配設され、残る2個が筐体4の後端部における中心線Lに対する対称位置にそれぞれ配設されている。また、打撃ヘッド21及び振動プローブ32の受振軸32Bの中心は中心線L上に配置されている。
図2(a)の側面図及び図2(b)の正面図に示すように、3個の支持脚13は、その基端部がいずれも筐体4の底面に固定されており、筐体4の底面から所定長さ突出されている。また、各支持脚13の突出長さは等しく、このため、全ての支持脚13が理想平面の被検査面80に当接した場合、筐体4の底面は被検査面80に対して一定の間隔を隔てた平行状態となる。
なお、打撃ヘッド21の衝突面21Aは、打撃ヘッド21が最大突出位置(図2(a)参照。)にある場合に、各支持脚13の突出長さ以上となって各支持脚13の先端を越えた位置まで到達する一方、打撃ヘッド21が退避位置にある場合、各支持脚13の突出長さ未満となって被検査面80から所定の間隔を隔てた位置に退避するようになっている。
被検査面80が理想平面である場合、3個全ての支持脚13が被検査面80に当接することにより、打撃検出姿勢が正常姿勢となると、打撃ユニット20の打撃中心及び振動検出ユニット30の検出中心が被検査面80に対して垂直となる。なお、打撃ユニット20の打撃中心は、打撃ヘッド21、プッシュバー23及びプランジャの軸中心に一致し、振動検出ユニット30の検出中心は、加速度センサ31の受振面に対する垂直方向である振動プランジャの収容体32A及び受振軸32Bの軸中心に一致する。
ここで、本実施例では、被検査面80が理想平面であるか否かを問わず、3個の支持脚13の全てが被検査面80と当接した状態における打撃検出姿勢を正常姿勢と設定している。これは、実際の被検査面80となるコンクリート面が凹凸若しくは歪みのある又は曲面状をした非理想平面であるため、3個の支持脚13が全て被検査面80に当接した状態をもって、打撃検出姿勢の正常姿勢と定めたものである。
そして、打撃検出姿勢が正常姿勢か又は異常姿勢であるかを判定するため、3個の支持脚13の各々には、感圧式のリミットスイッチの一種であるボールプランジャスイッチを用いた姿勢検出器16が内蔵されている。各支持脚13の姿勢検出器16は、それが設けられる支持脚13の先端部にあるボール16aが所定圧力以上で押圧されることによりオン状態となり、所定圧力未満の押圧又は未押圧により接点がオフ状態となるように構成されている。
ここで、姿勢検出器16がオン状態に出力する信号(オン信号)は、支持脚13が被検査面80に対して当接状態である旨を示す姿勢検出信号であり、姿勢検出器16がオフ状態に出力する信号(オフ信号)は、支持脚13が被検査面80に対して非当接状態である旨を示す姿勢検出信号である。そして、これらの3個の姿勢検出器16から出力される姿勢検出信号は、打撃検出姿勢が正常姿勢であるか又は異常姿勢であるかを判定するために用いられる。
具体的には、3個全ての姿勢検出器16から出力される姿勢検出信号がオン信号である状態ならば、打撃検出姿勢が正常姿勢であると判断され、3個のうち少なくとも1個の姿勢検出器16から出力される姿勢検出信号がオフ信号である状態ならば、打撃検出姿勢が異常姿勢であると判断される。
しかも、各支持脚13の先端部は、姿勢検出器16の接点をオンオフさせるボール16aの球面で構成されており、当該ボール16aの球面を介して被検査面80と接触することから、被検査面80とより点接触に近い状態で当接できる。このため、3本の支持脚13による検査マウス2の三点支持状態がより安定したものとなる。
図3は、検査マウス2に延長ロッド17を連結した状態を示した図であり、図3(a)は正面図であり、図3(b)は側面図である。図3に示すように、筐体4の装着面4Aには、キャップ12に代えて、延長ロッド17がビス止めにより連結されている。延長ロッド17は、その先端に検査マウス2が装着されることによって、使用者の手許から離れた被検査面80に当該検査マウス2を接触させるための長尺棹状の器具である。
延長ロッド17は、その先端部にキャップ12と同一形態をした継手部17Bが設けられており、かかる継手部17Bが筐体4の装着面4Aにビス止め固定されることで検査マウス2と一体的に連結される。また、延長ロッド17は、その本体棹部17Aと継手部17Bとがユニバーサルジョイント17Cを介して連結されており、かかるユニバーサルジョイント17Cを介して延長ロッド17の先端部で検査マウス2の向きが自在に変更可能となっている。
このような延長ロッド17を用いることによって、使用者が筐体4を直接把持して検査マウス2を被検査面80に押し当てることができない場所、例えば、腕を入れることができな隙間や、使用者が手を伸ばしても届かない場所にある被検査面80に対して検査マウス2を押し当てて打撃検査を行えるようになっている。
図4は、打撃検査装置1の電気的構成を示したブロック図である。図4に示すように、検査マウス2は、上記した駆動ソレノイド22と、加速度センサ31と、空隙判定ランプ6と、3個の姿勢確認ランプ7と、3個の姿勢検出器16とを備えている。
これらの検査マウス2の各部はコントロールボックス3の各部と接続ケーブル8を介して電気的に接続されている。なかでも、駆動ソレノイド22はソレノイド駆動回路41と、空隙判定ランプ6は空隙判定ランプ駆動回路42と、3個の姿勢確認ランプ7は姿勢確認ランプ駆動回路43と、それぞれ接続されている。
加速度センサ31は、ピエゾ素子などの圧電素子を用いたものであり、受振面に加わる振動加速度(振動圧力)に応じた大きさの電圧、即ち、打撃ヘッド21による打撃により被検査面80に生じた反射振動の強さに応じた大きさの電圧を検出信号として発生し、この検出信号を接続ケーブル8を通じてコントロールボックス3へ出力する。
この加速度センサ31は、その出力部がセンサ増幅器44の入力部と接続されており、このセンサ増幅器44の出力部は絶対値回路45の入力部とも接続されている。また、絶対値回路45の出力部はピークホールド回路46の入力部に接続されており、ピークホールド回路46の出力部はマイクロプロセッサ50のA/D変換器55の入力部に接続されている。
なお、センサ増幅器44、絶対値回路45及びピークホールド回路46、並びに、A/D変換器55を備えたマイクロプロセッサ50は、コントロールボックス3に内蔵されている。
この加速度センサ31による検出信号は、電気的アナログ信号(電圧信号)として出力され、センサ増幅器44により増幅され、絶対値回路45により絶対値に変換され、ピークホールド回路46により最大値が検出され、A/D変換器55により電気的デジタル信号に変換される。このA/D変換器55により変換されたデジタル信号は、CPU51によりA/D変換器55の量子化ビット数(分解能)に基づいて数値化されることにより反射振動測定値となる。
コントロールボックス3は、CPU51、タイマ52、ROM53、RAM54、A/D変換器55、通信インターフェイス56、バス57その他の回路が搭載されたマイクロプロセッサ50を備えており、これらのCPU51、タイマ52、ROM53、RAM54、A/D変換器55及び通信インターフェイス56は、バス57を介して互いに電気的に接続されている。
このコントロールボックス3には電源装置60が装備されており、この電源装置60により商用交流電源から供給される交流電力は直流電力に変換され、検査マウス2及びマイクロプロセッサ50を含めたコントロールボックス3の各部へ必要な駆動電圧として供給される。
さらに、マイクロプロセッサ50のバス57には、ソレノイド駆動回路41、空隙判定ランプ駆動回路42及び姿勢確認ランプ駆動回路43、並びに、操作パネル9、表示パネル駆動回路47、ブザー駆動回路48及びEEPROM53が接続されている。そして、表示パネル駆動回路47には表示パネル10が、ブザー駆動回路48にはイヤホンジャック49が、それぞれ電気的に接続されている。
CPU51は、ROM53に記憶される制御プログラム53Aに基づいて打撃検査装置1の各部を制御し、各種の演算を行う演算装置である。タイマ52は、電源装置60からの電力供給開始時点からの経過時間(以下「稼働時間」という。)、打撃動作の繰返し周期である打撃周期、及び、打撃ユニット20の駆動ソレノイド22に対して駆動電圧の印加状態を継続する時間である駆動継続時間を、それぞれ計測する回路である。
ROM53は、CPU51によって実行される各種の制御プログラム53Aやデータなどを格納した書換可能な不揮発性のメモリであり、図6から図9のフローチャートに示す各種処理を実行するための制御プログラム53Aは、このROM53内に格納されている。また、このROM53には、上記した打撃周期の設定値と駆動継続時間の設定値とが記憶されており、例えば、打撃周期の設定値が1.5s(秒)、駆動継続時間の設定値が50msとされている。
RAM54は、各種のデータを記憶するための機能する書換可能な揮発性のメモリであり、ワークエリアとして用いられる。また、このRAM54には、稼働時間エリア54Aと、モードフラグ54Bと、駆動フラグ54Cと、姿勢フラグ54Dと、打撃カウンタ54Eと、最大測定値エリア54Fと、判定閾値エリア54Gと、空隙判定フラグ54Hと、ゲインエリア54Iとが設けられている。
稼働時間エリア54Aは、毎回の打撃検査(1回分打撃動作とそれに伴う反射振動検出動作をいう。以下同じ。)の実行時(開始時)における稼働時間を毎回更新しながら一時記憶するための記憶領域である。この稼働時間エリア54Aに記憶される稼働時間は、例えば、CPU51から駆動ソレノイド22に対して駆動電圧の印加指令が出力されるタイミングに合わせてタイマ52からCPU51により読み取られて書き換えられる。なお、稼働時間エリア54Aは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりその記憶値が「0」にリセットされる。
モードフラグ54Bは、打撃検査装置1の動作モードが、打撃検査処理の実行モードである打撃検査モードであるか、又は閾値設定処理の実行モードである閾値設定モードであるかを示すフラグである。このモードフラグ54Bは、使用者の操作によって、機能切替スイッチ9Aからオン信号が出力された場合にオン状態とオフ状態とが交互に切り替えられる。
このモードフラグ54Bがオン状態の場合、打撃検査装置1の動作モードは打撃検査モードとなり、オフ状態の場合、打撃検査装置1の動作モードは閾値設定モードとなる。なお、このモードフラグ54Bは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりオフ状態、即ち、閾値設定モードに設定される。
なお、打撃検査モードは、後述する図7に示す打撃検査処理の実行モードであり、閾値設定モードは、後述する図9に示す閾値設定処理の実行モードである。
駆動フラグ54Cは、使用者が打撃検査の開始又は停止のいずれを要求しているかを示すフラグであり、使用者による操作によって、開始スイッチ9Cからオン信号が出力された場合にオンされ、停止スイッチ9Dからオン信号が出力された場合にオフされる。この駆動フラグ54Cのオンオフに基づいて打撃検査の実行の可否は決定される。なお、駆動フラグ54Cは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりオフ状態となる。
姿勢フラグ54Dは、打撃検出姿勢が正常姿勢であるか又は異常姿勢であるかを示すフラグであり、3個全ての姿勢検出器16から出力される姿勢検出信号が全てオン信号である場合にオンされ、いずれか1つの姿勢検出器16から出力される姿勢検出信号がオフ信号である場合にオフされる。この姿勢フラグ54Dのオンオフに基づいて打撃ユニット20の駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加の可否は決定される。なお、姿勢フラグ54Dは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりオフ状態となる。
打撃カウンタ54Eは、打撃検査の総実行回数を計数記憶するためのカウンタである。この打撃カウンタ54Eに記憶されるカウント値、即ち、打撃検査の総実行回数は、CPU51から駆動ソレノイド22に対して駆動電圧の印加指令が出力されるタイミングに合わせてカウントアップされる。また、この打撃カウンタ54Eに記憶されるカウント値は、パーソナルコンピュータ等の外部装置70からのデータクリア指令によりゼロクリア(初期化)することが可能となっている。なお、打撃カウンタ54Eは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりその記憶値が「0」にリセットされる。
最大測定値エリア54Fは、1回の打撃検査の実行中に測定される反射振動測定値の中で最大値を示すもの(以下「最大反射振動測定値」という。)を記憶するための記憶領域である。例えば、ある回の打撃検査中に最大測定値エリア54Fに最大反射振動測定値としてある値が暫定的に記憶されたとしても、同じ回の打撃検査が終了する迄に更に大きな反射振動測定値が検出されれば、最大測定値エリア54Fの記憶値はより大きな反射振動測定値に逐次書き換えられる。そして、最大測定値エリア54Fに最終的に記憶されている反射振動測定値が、その回の打撃検査で測定された最大反射振動測定値となる。
また、この最大測定値エリア54Fは、毎回の打撃検査の当初に、例えば、CPU51から駆動ソレノイド22に対して駆動電圧の印加指令が出力されるタイミングに合わせて一旦ゼロクリア(初期化)されてから使用される。なお、最大測定値エリア54Fは、打撃検査装置1の電源投入時にも、RAM54の初期化によりその値が「0」にリセットされる。
判定閾値エリア54Gは、被検査面80の内部に空隙が存在するか否かを判定するための基準となる閾値(以下「判定閾値」という。)を記憶保持する記憶領域である。この判定閾値エリア54Gに記憶される判定閾値の値は、上記した閾値調整スイッチ9Eを操作することにより増減変更される。なお、判定閾値エリア54Gは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりその値が「0」に一旦リセットされる。
空隙判定フラグ54Hは、打撃検査の結果である空隙の有無を示すフラグであり、打撃検査により、被検査面80の内部に空隙があるものと判定された場合にオンされ、被検査面80の内部に空隙ないものと判定された場合にオフされる。具体的には、空隙判定フラグ54Hは、打撃検査で得られる最大反射振動測定値が判定閾値を超過する場合にオン状態となり、最大反射振動測定値が判定閾値以下である場合にオフ状態となる。
また、上記した空隙判定ランプ6は、この空隙判定フラグ54Hがオン状態である場合に赤色点灯され、この空隙判定フラグ54Hがオフ状態である場合に緑色点灯される。なお、この空隙判定フラグ54Hは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりオフ状態(即ち、被検査面80の内部に空隙が存在しない状態を示す値)に初期化される。
ゲインエリア54Iは、センサ増幅器44の出力ゲイン(増幅倍率)がハイレンジ又はローレンジのいずれであるかを示す記憶領域であり、このゲインエリア54Iの記憶値は操作パネル9のゲイン変更スイッチ9Bの操作により切り替えられる。このゲインエリア54Iの記憶値は、センサ増幅器44がハイレンジの場合に「1」となり、ローレンジとなる場合に「0」となる。このゲインエリア54Iの記憶値に基づいて、CPU51は、センサ増幅器44のゲインをハイレンジ又はローレンジの一方から他方へと切り替える。
なお、このゲインエリア54Iは、打撃検査装置1の電源投入時に、RAM54の初期化によりその値が「0」に初期化され、それ故、センサ増幅器44の出力ゲインの初期状態はローレンジに設定される。
A/D変換器55は、検査マウス2の加速度センサ31による検出信号から生成されるアナログ信号をデジタル信号に変換する回路である。このA/D変換器55は、その分解能(量子化ビット数)が例えば10ビットのものであり、アナログ信号である入力電圧の最小値から最大値までの範囲を1023分割した「0〜1023」の値を示すデジタル信号に変換して出力する。
通信インターフェイス56は、RS−232C準拠の汎用型シリアル通信ポートである。この通信インターフェイス56は、これに接続される接続ケーブル8を介してパーソナルコンピュータ等の外部装置70と接続可能となっており、外部装置70との間でデータの送受信を行うことができる。後述するEEPROM53に記憶される空隙検査情報は、この通信インターフェイス56及び接続ケーブル8を介して外部装置70であるパーソナルコンピュータに取り込まれる。
ソレノイド駆動回路41は、CPU51からの駆動指令を受けて駆動ソレノイド22に印加される駆動電圧をオンオフするドライバー回路であり、この駆動電圧を検査マウス2の打撃ユニット20に備わる駆動ソレノイド22に入力することにより、この駆動ソレノイド22を励磁又は消磁させる。
空隙判定ランプ駆動回路42は、CPU51からの駆動指令を受けて空隙判定ランプ6の点灯を制御する回路であり、姿勢確認ランプ駆動回路43は、CPU51からの駆動指令を受けて3個の姿勢確認ランプ7の点灯を制御する回路である
操作パネル9には、上記したように機能切替スイッチ9A、ゲイン変更スイッチ9B、開始スイッチ9C、停止スイッチ9D及び閾値調整スイッチ9Eが設けられている。
機能切替スイッチ9Aは、これが操作されることにより打撃検査装置1の動作モードを打撃検査モード又は閾値設定モードの一方から他方へ交互に切り替えるスイッチである。また、ゲイン変更スイッチ9Bは、これが操作されることにより加速度センサ31用のセンサ増幅器44の出力ゲイン(増幅倍率)をハイレンジ又はローレンジの一方から他方に切り替えるスイッチである。
開始スイッチ9Cは、これが操作されることにより打撃検査処理を開始する指令信号を出力するスイッチである。また、停止スイッチ9Dは、それが操作されることにより打撃検査処理を停止する指令信号を出力するスイッチである。
閾値調整スイッチ9Eは、増加スイッチ9E1と減少スイッチ9E2とを備えており、これらを操作することによりRAM54の判定閾値エリア54Gに記憶される判定閾値を増減させるための指令信号を出力するスイッチである。この閾値調整スイッチ9Eからの指令信号に基づき、CPU51は、RAM54の判定閾値エリア54Gに記憶される判定閾値を増加又は減少するのである。
表示パネル駆動回路47は、CPU51からの駆動指令を受けて表示パネル10の表示制御を行う回路である。この表示パネル駆動回路47による制御に基づいて、表示パネル10には、上記したRAM54の稼働時間エリア54A、打撃カウンタ54E、最大測定値エリア54F、判定閾値エリア54G、空隙判定フラグ54H、及び、ゲインエリア54Iに記憶される値が、それぞれ表示される。
図5は、表示パネル10の表示例を示した図である。図5に示すように、表示パネル10には、その最上部にレベルメータ10Aが設けられており、このレベルメータ10Aには、最大測定値エリア54Fに記憶される最大反射振動測定値の大きさがレベルバー10A1の長さとして表示される。また、レベルメータ10Aには、そのレベルバー10A1下に複数の目盛線10A2が一定間隔で設けられている。
複数の目盛線10A2の並びの中には、これらの目盛線10A2の他に、判定閾値エリア54Gに記憶される判定閾値の大きさを示す閾値線10A3も含まれている。このレベルメータ10Aにより最大反射振動測定値が判定閾値に対してどの程度の大きさであるを視覚的に容易に確認することもできる。
また、レベルバー10A1の右側には、空隙判定フラグ54Hのオンオフに基づいた空隙の有無を示す空隙判定表示部10Bが設けられている。この空隙判定表示部10Bには、空隙判定フラグ54Hがオフ状態である場合に被検査面80の内部に空隙が無いことを示す「OK」の文字が、空隙判定フラグ54Hがオン状態である場合に被検査面80の内部に空隙があることを示す「NG」の文字が表示される。
また、レベルメータ10Aの下には、測定値表示部10C、閾値表示部10D、打撃回数表示部10E、及び、稼働時間表示部10Fが右側から順番に設けられている。測定値表示部10Cは最大測定値エリア54Fに記憶される値を、閾値表示部10Dは判定閾値エリア54Gに記憶される値を、打撃回数表示部10Eは打撃カウンタ54Eに記憶される値を、稼働時間表示部10Fは稼働時間エリア54Aに記憶される値を、それぞれ表示する領域である。
図4に戻って説明する。ブザー駆動回路48は、空隙判定フラグ54Hがオン状態である場合に、CPU51からの駆動信号を受けてブザー音信号をイヤホンジャック49に出力する回路であり、このブザー音信号は、イヤホンジャック49に接続されるイヤホンによりブザー音に変換されて出力される。
このブザー音によれば、被検査面80の内部に空隙があると判定される場合にその旨を報知するために出力されるものであり、これをイヤホンを介して聞くことで、使用者は空隙の有無を空隙判定ランプ6や表示パネル10を目視せずとも確認することができる。
EEPROM53は、毎回の打撃検査により得られた空隙検査情報を蓄積記憶する書換可能な不揮発性のメモリである。各回の空隙検査情報には、その回の打撃検査により取得された稼働時間と、最大反射振動測定値と、判定閾値と、ゲインレンジの種別を示す値とが含まれており、毎回の打撃検査の終了時にRAM54の稼働時間エリア54A、最大測定値エリア54F、判定閾値エリア54G及びゲインエリア54Iから読み出されて、EEPROM53に書き込まれる。
また、このEEPROM53に記憶される全ての空隙検査情報は、パーソナルコンピュータ等の外部装置70からのデータクリア指令によりゼロクリア(初期化)することが可能となっているが、打撃検査装置1の電源投入時に初期化されず、前回の電源オフ時の内容がそのまま保持されるようになっている。
図1から図9を参照して、上記のように構成された打撃検査装置1の使用方法び動作方法について説明する。図6は、打撃検査装置1におけるメイン処理のフローチャートであり、図7は、打撃検査処理のフローチャートである。
図6に示すように、メイン処理では、打撃検査装置1が電源コード11を介して商用交流電源に接続されることにより電源装置60に電源投入される(S01)。この電源投入により、電源装置60は、検査マウス2及びコントロールボックス3の各部に対し、必要な直流駆動電圧の供給を開始する。また、電源投入のタイミングに合わせて、RAM54が初期化されるとともに、タイマ52による稼働時間の計測が開始される(S02)。
この電力投入後は、モードフラグ54Bをチェックし(S03)、このモードフラグ54Bがオン状態であれば(S03:ON)、動作モードは打撃検査モードであるので、図7に示した打撃検査処理を実行する(S04)。一方、モードフラグ54Bがオフ状態であれば(S03:OFF)、動作モードは閾値設定モードであるので、図9に示した閾値設定処理を実行する(S05)。
なお、打撃検査処理(S04)又は閾値設定処理(S05)の実行後は、処理は再びS03へ移行して、その後の処理行う。
図7に示すように、打撃検査処理(S04)では、まず、駆動フラグ54Cをチェックし(S11)、この駆動フラグ54Cがオフならば(S11:No)、この打撃検査処理を終了する。また、開始スイッチ9Cの操作により開始スイッチ9Cがオンされて、駆動フラグ54Cがオンになっていれば(S11:Yes)、次は、姿勢フラグ54Dをチェックする(S12)。
姿勢フラグ54Dは、検査マウス2の3個全ての支持脚13が被検査面80に対して当接状態となった場合、すなわち、打撃検出姿勢が正常状態となった場合にオンされる。ここで、姿勢フラグ54Dをオン状態にさせるには、以下のように検査マウス2が操作される。まず、検査マウス2の筐体4が把持された状態でその底面が被検査面80に向けられ、全ての支持脚13の先端部(プランジャスイッチのボール16a)が当たるように被検査面80に押し当てられる。
このとき、3個ある支持脚13のうち1つでも非当接状態ならば、その非当接状態の支持脚13に内蔵される姿勢検出器16から姿勢検出信号としてオフ信号が出力され、姿勢フラグ54Dがオフされる(S12:No)。このように、姿勢フラグ54Dがオフならば(S12:No)、この打撃検査処理(S04)を終了する。つまり、打撃検査処理の実行は、駆動フラグ54C及び姿勢フラグ54Dの双方がオン状態(S11,S12:Yes)となるまで、実質的に禁止されたままの状態となる。
一方、検査マウス2の3個全ての支持脚13が当接状態となっていれば、3個全ての姿勢検出器16から姿勢検出信号としてオン信号が出力され、姿勢フラグ54Dがオンされる(S12:Yes)。
このようにして、駆動フラグ54C及び姿勢フラグ54Dの双方がオン状態になると(S11,S12:Yes)、打撃検査処理が実質的に開始されるため、まず、1回分の打撃検査時間に相当する打撃周期の計測を開始し(S13)、ピークホールド回路46をリセットし(S14)、最大測定値エリア54Fをゼロクリアし(S15)、タイマ52から現時点の稼働時間の値を読み込んでRAM54の稼働時間エリア54Aに上書きする(S16)。
そして、これらと同じタイミングで駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加が開始されることにより(S17)、駆動ソレノイド22が作動して、打撃ヘッド21が被検査面80に衝突させられ、かかる衝突により被検査面80に打撃が加えられる。一方、駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加開始とともに(S17)、タイマ52による駆動継続時間の計時を開始し(S18)、タイマ割り込みを許可する(S19)。
このタイマ割り込みの許可(S19)によって、インターバル処理である反射振動測定処理(図8参照。)が所定のインターバル周期で繰返し実行されて、この反射振動測定処理により、打撃ヘッド21の打撃に基づいて被検査面80に生じる反射振動の検出処理が行われる。
図8は、反射振動測定処理のフローチャートである。なお、この反射振動測定処理は、打撃検査処理(図7参照。)の実行中に、所定のインターバル周期(例えば1ms)毎に定期的に実行されるタイマ割り込みによるインターバル処理である。
図8に示した反射振動測定処理において取得される反射振動測定値は、以下の過程を経て取得される。具体的には、まず、打撃ヘッド21の打撃(起振)により生じた被検査面80の反射振動が、その被検査面80に圧接される振動プローブ32の受振軸32Bに伝播され、加速度センサ31により受信検出されて電圧検出信号に変換され、それがセンサ増幅器44により増幅され、その増幅信号が絶対値回路45により絶対値(電圧信号)に変換される。
そして、ピークホールド回路46は、加速度センサ31による検出信号を増幅した絶対値から、その最大値(ピーク値)を検出して、それをA/D変換器55へ出力する。A/D変換器55は、ピークホールド回路46から入力される最大値を電気的デジタル信号に変換してCPU51へ出力し、CPU51は、A/D変換器55の量子化ビット数(分解能)に基づいてA/D変換器55からの入力信号を数値化することで、反射振動測定値を取得するのである。
図8に示すように、反射振動測定処理では、所定のインターバル周期毎に、A/D変換器55の出力信号を取得してこれを数値化することにより反射振動測定値を取得する(S41)。このようにして取得された反射振動測定値は、最大測定値エリア54Fの現在の記憶値と大きさが比較される(S42)。
この比較(S42)の結果、当該取得された反射振動測定値が最大測定値エリア54Fの現在の記憶値を超過するならば(S42:Yes)、最大測定値エリア54Fに現在記憶される値を消去した上で、当該取得された反射振動測定値を、今回の打撃検査において現時点で最も大きな反射振動測定値として最大測定値エリア54Fの値を書き込み、最大測定値エリア54Fの値を書き換えた後(S43)、この反射振動測定処理を終了する。
一方、この比較(S42)の結果、当該取得された反射振動測定値が最大測定値エリア54Fの記憶値以下であれば(S42:No)、S43の最大測定値エリア54Fの値の書換え処理をスキップして、この反射振動測定処理を終了する。
図7に戻る。タイマ割り込みが許可された後(S19)、図8に示す反射振動測定処理のタイマ割り込みは、駆動継続時間の計測値が駆動継続時間の設定値を経過してタイマ割り込みが禁止されるまで(S20:Yes,S21)、繰返し実行される(S20:No)。この結果、最大測定値エリア54Fには、1回の打撃に伴って発生した反射振動測定値の中で最大の値を示すものが記憶保持されることとなる。
このように反射振動測定処理が繰り返し実行されている期間中、振動検査処理は、駆動継続時間が所定時間を経過するまで処理を待機しており(S20:No)、駆動継続時間の計測値が駆動継続時間が設定値を経過したならば(S20:Yes)、タイマ割り込みを禁止することにより(S21)、反射振動測定処理の実行を禁止した上で、駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加を停止して(S22)、タイマ52による駆動継続時間の計測を終了する(S23)。
このあとは、反射振動測定処理により1回分の打撃検査において取得された反射振動測定値の最大値である最大測定値エリア54Fの値と、判定閾値エリア54Gの値とを比較する(S24)。そして、最大測定値エリア54Fの値が判定閾値エリア54Gの値を超過するならば(S24:Yes)、空隙判定フラグ54Hを空隙の存在を示すオン状態とし(S25)、空隙判定ランプ6を赤色点灯する(S26)。
一方、最大測定値エリア54Fの値が判定閾値エリア54Gの値以下であれば(S24:No)、空隙判定フラグ54Hを空隙の不在を示すオフ状態とし(S27)、空隙判定ランプ6を緑色点灯する(S28)。
空隙判定ランプ6を赤色点灯又は緑色点灯した後は(S26,S28)、RAM54の稼働時間エリア54A、最大測定値エリア54F、判定閾値エリア54G及びゲインエリア54Iに記憶される値、即ち、今回の打撃検査により取得された稼働時間、最大反射振動測定値、判定閾値及びゲインレンジの種別を示す値とを含んだ空隙検査情報が読み出されて、EEPROM53に書き込まれる(S29)。このS29の処理が繰り返されることにより、EEPROM53には、それまでに行われた全ての打撃検査に関する空隙検査情報が蓄積記憶されることとなる。
また、このEEPROM53への空隙検査情報の書き込み後は(S29)、打撃周期の計測値が打撃周期の設定値を経過するまで処理を待機し(S30:No)、打撃周期の計測値が打撃周期の設定値を経過したならば(S30:Yes)、打撃周期の計測を終了して(S31)、1回分の打撃検査処理が終了したものとして、処理をS11へ移行して、再び、S11以降の一連の処理が繰り返し実行される。
さらに、2回目以降の打撃周期においても、処理がS11へ移行する度ごとに、駆動フラグ54C及び姿勢フラグ54Dのチェックを実行してこれら双方がオン状態(S11,S12:Yes)であり続ける限り、打撃周期の設定値の時間間隔で打撃ヘッド21による起振を繰り返し、その起振の度ごとに反射振動測定処理(図8参照。)により反射振動測定値の最大値を取得し、EEPROM53に空隙検査情報を繰り返し書き込む。
ただし、2回目以降の打撃周期において、停止スイッチ9Dが操作されることにより駆動フラグ54Cがオフ状態となれば(S11:No)、打撃検査処理は再び駆動フラグ54Cがオン状態となるまで中断される。
また、2回目以降の打撃周期において、姿勢フラグ54Dがオフ状態となれば(S12:No)、打撃検出姿勢が異常姿勢であるので、打撃ユニット20による起振動作及び反射振動検出ユニット30による検出動作を含めた打撃検査の実行が禁止される(S11,S12:No)。これにより、打撃検査処理を実施する途中で、打撃検出姿勢が正常姿勢から異常姿勢となった場合に、異常姿勢のまま打撃検査が行われて空隙判定結果が誤ることを防止できる。
次に、図9を参照して、判定閾値の設定方法について説明する。まず、コンクリート構造物の検査対象となる被検査面80の全体の中から空隙の不在箇所を1箇所選択し、そこを判定閾値の設定方法を実施する実施箇所とする。そして、この実施箇所に検査マウス2を、打撃検出姿勢が正常姿勢となるように押し当てたまま、図9に示した閾値設定処理の実行する。
図9は、閾値設定処理のフローチャートである。この閾値設定処理は、上記した打撃検査処理(S04)(図6参照。)の一部の処理ステップを用いて構成されるので、打撃検査処理と同様の処理ステップにはそれと同一の符号の後に「’」を付加した符号を付している。また、以下の説明では、打撃検査処理(図7参照。)と重複する構成部分についてはその説明を省略し、主として異なる構成部分について説明する。
図9に示すように、閾値設定処理(S05)では、まず、駆動フラグ54Cのチェック(S11’)及び姿勢フラグ54Dのチェック(S12’)が行われ、駆動フラグ54C及び姿勢フラグ54Dの双方がオン状態(S11’,S12’:Yes)となるまで、閾値設定処理の実行が実質的に禁止される(S11’,S12’:No)。一方、駆動フラグ54C及び姿勢フラグ54Dの双方がオン状態になると(S11’,S12’:Yes)、閾値設定処理が実質的に開始される。
その後は、打撃周期の計測開始(S13’)、ピークホールド回路46のリセット(S14’)、最大測定値エリア54Fのゼロクリア(S15’)を順番に実行し、次に、駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加を開始する(S17’)。すると、駆動ソレノイド22により打撃ヘッド21が被検査面80に衝突させられ、かかる衝突により被検査面80に打撃が加えられる。
駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加開始(S17’)後、駆動継続時間の計時開始(S18’)及びタイマ割り込み許可(S19’)が行われ、このタイマ割り込み許可(S19’)後、駆動継続時間が所定時間を経過してタイマ割り込みが禁止されるまで(S20’:Yes,S21’)、図8に示した反射振動測定処理が所定のインターバル周期で繰返し実行される。
この反射振動測定処理により、打撃ヘッド21の打撃に基づいて被検査面80に生じる反射振動の検出処理が行われることで、最大測定値エリア54Fには、1回の打撃に伴って発生した反射振動測定値の中で最大の値を示すものが記憶保持されることとなる。
このように反射振動測定処理が繰り返し実行されている期間中、閾値設定処理は、駆動継続時間の計測値が駆動継続時間の設定値を経過するまで処理を待機しており(S20’:No)、駆動継続時間の計測値が駆動継続時間が設定値を経過したならば(S20’:Yes)、タイマ割り込みを禁止することにより(S21’)、反射振動測定処理の実行を禁止した上で、駆動ソレノイド22への駆動電圧の印加を停止して(S22’)、タイマ52による駆動継続時間の計測を終了する(S23’)。
このあとは、反射振動測定処理により1回分の打撃検査において取得された反射振動測定値の最大値である最大測定値エリア54Fの値と、判定閾値エリア54Gの値とを比較する(S24’)。そして、最大測定値エリア54Fの値が判定閾値エリア54Gの値を超過するならば(S24’:Yes)、空隙判定フラグ54Hを空隙の存在を示すオン状態とし(S25’)、空隙判定ランプ6を赤色点灯する(S26’)。
一方、最大測定値エリア54Fの値が判定閾値エリア54Gの値以下であれば(S24’:No)、空隙判定フラグ54Hを空隙の不在を示すオフ状態とし(S27’)、空隙判定ランプ6を緑色点灯する(S28’)。
空隙判定ランプ6を赤色点灯又は緑色点灯した後は(S26’,S28’)、打撃周期の計測値が打撃周期の設定値を経過するまで処理を待機し(S30’:No)、打撃周期の計測値が打撃周期の設定値を経過したならば(S30’:Yes)、打撃周期の計測を終了して(S31’)、1回分の閾値設定処理が終了したものとして、処理をS11’へ移行して、再び、S11’以降の一連の処理が繰り返し実行される。
図9に示した閾値設定処理の継続実行を開始した後は、閾値調整スイッチ9Eの減少スイッチ9E2を操作して、判定閾値エリア54Gの値が「0」に一旦設定される。この判定閾値エリア54Gの値は、閾値調整スイッチ9Eの増加スイッチ9E1又は減少スイッチ9E2の操作に応じて、CPU51により変更される。
例えば、CPU51は、閾値設定処理の実行中に、閾値調整スイッチ9Eの増加スイッチ9E1からオン信号が入力されると、RAM54の判定閾値エリア54Gの値を増加させる一方、閾値調整スイッチ9Eの減少スイッチ9E2からオン信号が入力されると、RAM54の判定閾値エリア54Gの値を減少させる。
なお、判定閾値エリア54Gの値は、表示パネル10のレベルメータ10Aに閾値線10A3として表示されるとともに、閾値表示部10Dに数値として表示される。よって、使用者は表示パネル10を目視することにより現状の判定閾値の値を確認することができる。
判定閾値エリア54Gの値が「0」に設定された後は、閾値調整スイッチ9Eの増加スイッチ9E1を操作して、空隙判定ランプ6の点灯色が赤色から緑色に変化するまで、判定閾値エリア54Gの値を「1」ずつ増加させることを繰り返す。そして、空隙判定ランプ6が赤色点灯から緑色点灯に切り替わったならば、もう一度閾値調整スイッチ9Eの増加スイッチ9E1を操作して、空隙判定ランプ6が赤色から緑色に切り替わったときの判定閾値エリア54Gの値に更に「1」加算して、判定閾値の設定が完了する。こうして判定閾値エリア54Gに最終的に設定された値が、打撃検査処理において判定閾値として用いられる。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、例えば、具体的な数値の変更や、その他の本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
なお、本発明において、請求項1の報知手段は、図7のS24〜S28の処理を含むものである。請求項3の打撃駆動手段には、図6のS03のONの分岐と、S04の処理のうち図7のS11のYesの分岐、S12のYesの分岐、S17、S18、S20、S22、S23、S30及び31の処理と、S04からS03へ戻る処理とが該当する。請求項4の報知手段に備わる打撃禁止手段は、図7のS12のNoの分岐が該当する。請求項5の報知手段に備わる記憶手段は、図7のS29の処理を含むものである。請求項5の報知手段に備わる記憶禁止手段は、図7のS12のNoの分岐が該当する。