JP2011214655A - 摩擦係合装置 - Google Patents

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芳則 柴山
Masashi Kito
昌士 鬼頭
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祐一 関
Kazumasa Nishinaka
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Abstract

【課題】装置全体の軸方向における大型化を抑制しつつ、ハウジング内に油路を適切に形成することが可能な摩擦係合装置を実現する。
【解決手段】多板係合機構CLと、外側支持部材26、内側支持部材22、及び多板係合機構CLを収容するハウジングCHと、を備え、多板係合機構CLは、複数の摩擦板31と、押圧部材36と、支持板32と、を備え、支持板32は、複数の摩擦板31の軸方向一方側に、当該複数の摩擦板31と径方向に重複するように配置され、ハウジングCHの内部が油で満たされた油密空間とされ、多板係合機構CLは油密空間に収容され、支持板32の軸方向一方側に接して所定圧力の油が流通する油流通経路が形成され、支持板32の軸方向他方側に配置され、当該支持板32の軸方向他方側への移動を規制する他方側規制部材35を備える。
【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能な湿式の摩擦係合装置に関する。
上記のような湿式の摩擦係合装置として、例えば下記の特許文献1に記載された発進クラッチが既に知られている。この発進クラッチ10は、当該特許文献1の図1に示されているように、湿式多板クラッチ30が備えるバッキングプレート5の当該図中における右側に、カバー部材17を備えている。このカバー部材17を備えることで、湿式多板クラッチ30を冷却するための油をハウジング40内において円滑に流通させ、湿式多板クラッチ30を効率的に冷却することが可能となると記載されている。
具体的には、当該特許文献1の図1に示されているように、ハウジング40内の空間はカバー部材17により軸方向に区画される。これにより、互いに油の流通方向が異なる油路である、ハウジング40の外部から供給された油を湿式多板クラッチ30へ供給するための油路(図中の矢印Aで示される方向に油が流れる油路)と、湿式多板クラッチ30を冷却した後の油をハウジング40の外部へ排出するための油路(図中の矢印Bで示される方向に油が流れる油路)との双方を形成し、油のハウジング40の内部における円滑な移動並びにその結果実現される湿式多板クラッチ30の効率的な冷却を図る構成となっている。
特開2009−52603号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、当該文献の図1より明らかなように、油路を形成するための専用の部材として、ハウジングの内部における径方向のほぼ全域にわたって配置されるような比較的大型の部材(カバー部材17)が必要となる。そのため、このような構成では、摩擦係合装置の全体が軸方向に大型化するおそれがある。なお、この問題を回避すべく、このような大型の専用部材を用いずにハウジング内に油路を形成することも考えられる。しかしながら、上記特許文献1にはそのような構成は開示されておらず、当然ながら、そのような構成とした場合に発生し得る課題やその課題を解決するための手段について何ら示されていない。
そこで、装置全体の軸方向における大型化を抑制しつつ、ハウジング内に油路を適切に形成することが可能な摩擦係合装置の実現が望まれる。
本発明に係る、内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能な湿式の摩擦係合装置の特徴構成は、前記第一軸及び前記第二軸のいずれか一方に駆動連結される外側支持部材と、前記第一軸及び前記第二軸の他方に駆動連結される内側支持部材とを、互いの回転軸が一致するとともに前記外側支持部材が前記内側支持部材に対して径方向外側に位置するように備え、更に、前記外側支持部材と前記内側支持部材とを選択的に駆動連結する多板係合機構と、前記外側支持部材、前記内側支持部材、及び前記多板係合機構を収容するハウジングと、を備え、前記多板係合機構は、軸方向に沿って摺動自在な複数の摩擦板と、前記外側支持部材と前記内側支持部材との駆動連結時に前記複数の摩擦板を軸方向一方側に押圧する押圧部材と、前記押圧部材の押圧力に抗して前記複数の摩擦板を軸方向一方側から支持する支持板と、を備え、前記支持板は、前記複数の摩擦板の軸方向一方側に、当該複数の摩擦板と径方向に重複するように配置され、前記ハウジングの内部が油で満たされた油密空間とされ、前記多板係合機構は、前記油密空間に収容され、前記支持板の軸方向一方側に接して所定圧力の油が流通する油流通経路が形成され、前記支持板の軸方向他方側に配置され、当該支持板の軸方向他方側への移動を規制する他方側規制部材を備える点にある。
本願において、2つの部材の配置に関して、ある方向に「重複」とは、当該方向の配置に関して2つの部材が同じ位置となる部分を少なくとも一部に有することを指す。
この特徴構成によれば、支持板の軸方向一方側に接して油流通経路が形成されるため、支持板に対して軸方向一方側に油路形成のための専用部材を配置し、当該専用部材の軸方向一方側に接して油流通経路が形成される場合等と比較して、装置全体の軸方向における大型化を抑制しつつハウジング内に油路を形成することができる。
ところで、複数の摩擦板の軸方向一方側に配置される支持板は、摩擦係合装置の分離状態(非係合状態)において摩擦板間のクリアランス(パッククリアランス)が適正な値となるような軸方向厚さのものが用いられる。よって、仮に分離状態において支持板が軸方向他方側に移動すると、分離状態における摩擦板間のクリアランスが狭くなり、摩擦板同士の接触や摩擦板間に存在する油の粘性に起因する粘性抵抗(せん断抵抗や攪拌抵抗等)により、引き摺りトルクが大きくなるおそれがある。この点に関し、本願発明者らは、鋭意研究の結果、支持板の軸方向一方側に接して油流通経路を形成する構成とした場合に、支持板が軸方向他方側に摺動可能に構成されていると、当該支持板の軸方向一方側に接する油の圧力の大きさによっては支持板が軸方向他方側に移動し、引き摺りトルクが増大するおそれがあることを知見した。
本願発明は、この新規な技術的知見に基づき完成されたものであり、支持板の軸方向一方側に接して所定圧力の油が流通する油流通経路が形成される構成において、支持板の軸方向他方側に配置され、当該支持板の軸方向他方側への移動を規制する他方側規制部材を備える構成とする。これにより、支持板の軸方向他方側への移動が抑制され、支持板の軸方向他方側への移動に起因する引き摺りトルクの増大を抑制することができる。
なお、このような他方側規制部材は、支持板の軸方向一方側に隣接して流通する油の圧力に抗して支持板の軸方向他方側への移動を規制できる程度の構成を備えていれば良く、ハウジングの大きさに比べて小型な部材とすることができる。よって、他方側規制部材を備えることによる装置全体の大型化は抑制される。
以上のように、上記特徴構成によれば、装置全体の軸方向における大型化を抑制すべく支持板の軸方向一方側に接して油流通経路を形成した場合に生じ得る引き摺りトルクの増大を抑制することができる。すなわち、装置全体の軸方向における大型化を抑制しつつ、ハウジング内に油路を適切に形成することが可能となる。
ここで、前記ハウジングは、径方向に延びるとともに前記油密空間の軸方向一方側を区画する一方側径方向延在部を備え、前記内側支持部材の軸方向一方側端部に内側径方向延在部が連結され、前記内側径方向延在部は、前記内側支持部材との連結部から径方向に延びるように形成され、前記支持板と前記ハウジングの前記一方側径方向延在部との対向する間が、少なくとも径方向に延びる第一油路とされ、前記内側径方向延在部と前記ハウジングの前記一方側径方向延在部との対向する間が、少なくとも径方向に延びる第二油路とされ、前記第一油路と前記第二油路とが、径方向に連続して前記油流通経路を構成していると好適である。
この構成によれば、油密空間の軸方向一方側を区画する一方側径方向延在部に沿って、ハウジングの内部における径方向の比較的広い範囲に亘って延びる油路を形成することが容易となる。そして、このような油路を用いて、冷却の対象となる多板係合機構(特に、摩擦板間の空隙)を経由する油流通経路を比較的容易に形成することができる。
また、前記支持板は、径方向一方側に、前記外側支持部材又は前記内側支持部材に係合する係合部を備え、前記他方側規制部材の径方向他方側端部と同じ径方向位置或いは当該径方向他方側端部より径方向他方側の径方向位置を径方向特定位置とし、前記支持板は、前記径方向特定位置よりも径方向一方側部分と径方向他方側部分とで軸方向厚さが異なるように形成され、前記他方側規制部材は、前記支持板における前記径方向特定位置よりも径方向一方側部分に対して軸方向に当接するように備えられていると好適である。
支持板は、摩擦係合装置の分離状態(非係合状態)における摩擦板間のクリアランスを調整したり、摩擦係合装置の係合時に押圧部材を軸方向に移動させる距離(ストローク)を適正にしたりするためのものである。そのため、摩擦係合装置毎に異なり得る各摩擦板の厚みのばらつき等に応じ、支持板における係合状態に摩擦板と当接する部分の軸方向厚さが設定されることが望ましい。すなわち、支持板は、各摩擦板の厚みのばらつき等に応じて、上記部分の軸方向厚さが異なる複数種類の中から選択されることが望ましい。
この構成によれば、支持板における径方向特定位置よりも径方向一方側部分の軸方向厚さを一定にすることで外側支持部材又は内側支持部材における支持板の係合部が係合される部分の構成並びに他方側規制部材の構成として同じものを採用しつつ、径方向特定位置よりも径方向他方側部分の軸方向厚さを変えることで各摩擦板の厚みのばらつきを吸収することが可能となる。すなわち、径方向特定位置よりも径方向他方側部分の軸方向厚さが異なる支持板であっても、径方向特定位置よりも径方向一方側部分の軸方向厚さを一定にしておけば、同一の構成(仕様)の外側支持部材又は内側支持部材や、同一の構成(仕様)の他方側支持部材で対応することができる。従って、製造コストや在庫コストの増大を抑制しつつ、各摩擦板の厚みのばらつきを適切に吸収することが可能となる。
また、回転電機を駆動力源として備える駆動装置のケース内に備えられ、前記ハウジングは、軸方向に延びるとともに前記回転電機のロータを支持する筒状のロータ支持部と、前記ロータ支持部の軸方向一方側端部から径方向内側に延びるとともに前記油密空間の軸方向一方側を区画する一方側径方向延在部と、を備え、前記一方側径方向延在部は、径方向内側に向かうに従って軸方向他方側へ向かう傾斜延在部を備え、前記一方側径方向延在部を前記ケースに対して回転可能に支持する軸受が、前記傾斜延在部に対して径方向内側に、当該傾斜延在部に対して軸方向に重複するように配置されていると好適である。
この構成では、支持板と一方側径方向延在部との対向する間に少なくとも径方向に延びる油路を形成し、当該油路を径方向外側から径方向内側へ向かって油が流通する場合に、一方側径方向延在部が備える傾斜延在部付近を流れる油は径方向内側へ向かうに従って軸方向他方側に向かうように流れることになる。この場合、当該油が支持板を軸方向他方側へ押圧する力が大きくなるおそれがあるが、支持板は他方側規制部材により軸方向他方側への移動が規制されているため、支持板の軸方向他方側への移動に起因する引き摺りトルクの増大は抑制される。本願発明は、このように支持板が軸方向他方側へ押圧される力が大きくなるおそれがあるような場合の構成として特に好適である。
本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の概略構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の部分断面図である。 図2の一部拡大図である。 本発明の実施形態に係るクラッチドラムの一部斜視図である。 本発明の実施形態に係るクラッチハブの一部斜視図である。
本発明に係る摩擦係合装置の実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、本発明を、ハイブリッド車両用の駆動装置1(以下、「ハイブリッド駆動装置1」)に備えられる発進クラッチに適用した場合を例として説明する。ハイブリッド駆動装置1は、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置である。このハイブリッド駆動装置1は、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている。そして、本実施形態に係る発進クラッチ10は、図3に示すように、バッキングプレート32の軸方向一方側(図3中における右側)に接して所定圧力の油が流通する油流通経路が形成され、バッキングプレート32の軸方向他方側に配置され、当該バッキングプレート32の軸方向他方側への移動を規制する第二スナップリング35を備える点に特徴を有する。これにより、発進クラッチ10全体の軸方向における大型化を抑制しつつ、クラッチハウジングCH内に油路を適切に形成することが可能となっている。以下、本実施形態に係る発進クラッチ10の構成について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、クラッチハブ21及びクラッチドラム26の回転軸である回転軸X(図2参照)を基準として、「軸方向」、「周方向」、「径方向」を定義している。また、以下の説明では、特に断らない限り、図2における右側を「軸方向一方側」とし、図2における左側を「軸方向他方側」とする。
本実施形態では、発進クラッチ10、バッキングプレート32、及び第二スナップリング35が、それぞれ、本発明における「摩擦係合装置」、「支持板」、及び「他方側規制部材」に相当する。また、本実施形態では、クラッチハウジングCH、クラッチドラム26、及びクラッチハブ21の円筒状部22が、それぞれ、本発明における「ハウジング」、「外側支持部材」、及び「内側支持部材」に相当する。そして、本実施形態では、径方向外側及び径方向内側が、それぞれ、本発明における「径方向一方側」及び「径方向他方側」に相当する。
1.ハイブリッド駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の全体構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、このハイブリッド駆動装置1は、車両の第一の駆動力源としての内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車両の第二の駆動力源としての回転電機MGと、変速機構TMと、回転電機MGに駆動連結されると共に変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、を備えている。また、ハイブリッド駆動装置1は、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられる発進クラッチ10と、カウンタギヤ機構Cと、出力用差動歯車装置DFと、を備えている。これらの各構成は、駆動装置ケースとしてのケース2内に収容されている。すなわち、本例では、発進クラッチ10は、回転電機MGを駆動力源として備える駆動装置(ハイブリッド駆動装置1)のケース2内に備えられている。本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「第一軸」に相当し、中間軸Mが本発明における「第二軸」に相当する。
なお、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、「駆動力」はトルクと同義で用いている。また、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の内燃機関出力軸EoがダンパDを介して入力軸Iに駆動連結されている。また、入力軸Iは発進クラッチ10を介して回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結されており、入力軸Iは発進クラッチ10により選択的に回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結される。この発進クラッチ10の係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、発進クラッチ10の解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルクや車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して変速出力ギヤGへ伝達する装置である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、シングルピニオン型及びラビニヨ型の遊星歯車機構とクラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチ等の複数の係合装置とを備えて構成され、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、その他の具体的構成を備えた自動変速機構や、変速比を無段階に変更可能な自動の無段変速機構、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式の有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、変速出力ギヤGへ伝達する。
カウンタギヤ機構Cは、変速出力ギヤGの回転及びトルクを車輪W側へ伝達する。このカウンタギヤ機構Cは、カウンタ軸Csと第一ギヤC1と第二ギヤC2とを有して構成されている。第一ギヤC1は変速出力ギヤGに噛み合っている。第二ギヤC2は、出力用差動歯車装置DFが有する差動入力ギヤDiに噛み合っている。出力用差動歯車装置DFは、差動入力ギヤDiの回転及びトルクを複数の車輪Wに分配して伝達する。本例では、出力用差動歯車装置DFは、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構とされており、カウンタギヤ機構Cの第二ギヤC2を介して差動入力ギヤDiに伝達されるトルクを分配して、それぞれ出力軸Oを介して左右2つの車輪Wに伝達する。これにより、ハイブリッド駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させる。
なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1では、入力軸Iと中間軸Mとが同軸上に配置されると共に、カウンタ軸Csと出力軸Oとが、それぞれ入力軸I及び中間軸Mとは異なる軸上に互いに平行に配置されている。このような構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるハイブリッド駆動装置1の構成として適している。
2.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の各部の構成について図2及び図3を参照して説明する。なお、発進クラッチ10の構成については、後に第3節で詳細に説明する。図2に示すように、ケース2は、その内部に収容される回転電機MGや変速機構TM等の各収容部品の外周を覆うケース周壁3と、当該ケース周壁3の軸方向一方側(内燃機関E側)の開口を塞ぐ第一支持壁4と、ケース周壁3の軸方向他方側(内燃機関Eとは反対側)の端部を塞ぐ端部支持壁(不図示)と、を備えている。更に、このケース2は、軸方向で回転電機MGと変速機構TMとの間に配置される第二支持壁7を備えている。
第一支持壁4は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第一支持壁4には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが第一支持壁4を貫通してケース2内に挿入されている。第一支持壁4は、軸方向他方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部5を備えている。軸方向突出部5は、第一支持壁4の本体部と一体的に形成されている。本例では、第一支持壁4は、入力軸Iが貫通されている部分において、径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置するように、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有する壁部とされている。第一支持壁4は、クラッチハウジングCHに対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第一支持壁4には、その内部に排出油路72が形成された油路形成部材71が、径方向に沿って取り付けられている。
第二支持壁7は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第二支持壁7には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが第二支持壁7を貫通している。第二支持壁7は、軸方向一方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部8を備えている。軸方向突出部8は、第二支持壁7の本体部と一体的に形成されている。第二支持壁7は、クラッチハウジングCHに対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第二支持壁7の内部に形成されるポンプ室には、オイルポンプ18が収容されている。本実施形態においては、オイルポンプ18は、インナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。オイルポンプ18のインナロータは、その径方向の中心部でクラッチハウジングCHと一体回転するように駆動連結(ここでは、スプライン連結)されている。クラッチハウジングCHの回転に伴い、オイルポンプ18は油を吐出し、発進クラッチ10や変速機構TM等に油を供給するための油圧を発生させる。なお、第二支持壁7及び中間軸M等の内部には、それぞれ油路が形成されており、オイルポンプ18により吐出された油は、不図示の油圧制御装置及びこれらの油路を流通して、油供給対象となる各部位に供給される。
入力軸Iは、内燃機関Eのトルクをハイブリッド駆動装置1に入力するための軸であり、図2に示すように、軸方向一方側の端部において内燃機関Eに駆動連結されている。ここで、入力軸Iは、第一支持壁4を貫通する状態で配設されており、第一支持壁4の軸方向一方側でダンパDを介して内燃機関Eの内燃機関出力軸Eoと一体回転するように駆動連結されている。ダンパDは、内燃機関出力軸Eoの捩れ振動を減衰させつつ、当該内燃機関出力軸Eoの回転を入力軸Iに伝達する装置であり、各種公知のものを用いることができる。本実施形態では、ダンパDは、周方向に沿って配置された複数のコイルスプリングを有して構成されており、内燃機関出力軸Eoに固定されるドライブプレートDPに固定一体化されると共に、入力軸Iにスプライン連結されている。ダンパDは、全体としてドライブプレートDPよりも小径に形成されており、ドライブプレートDPの軸方向他方側に配置されている。また、入力軸Iと第一支持壁4とに亘って、これらの間を液密状態として軸方向一方側(ダンパD及び内燃機関E側)への油の漏出を抑制するための第三シール部材63が配設されている。
本実施形態では、入力軸Iの軸方向他方側端部の内径部には、軸方向に延びる軸端孔部12が形成されている。この軸端孔部12には、中間軸Mの軸方向一方側の端部が軸方向に進入される。また、入力軸Iは、その軸方向他方側端部に、当該入力軸Iから径方向に延びるフランジ部11を有する。フランジ部11は、入力軸Iの本体部と一体的に形成されている。図2に示すように、フランジ部11は、クラッチハウジングCH内に進入して、当該クラッチハウジングCH内に収容される発進クラッチ10のクラッチハブ21に連結されている。フランジ部11の軸方向一方側には、第二軸受52が配設されると共に、フランジ部11の径方向外側であってかつ発進クラッチ10が有するクラッチハブ21(円環板状部23)の軸方向他方側には、第三軸受53が配設されている。本実施形態では、クラッチハブ21の円環板状部23が、本発明における「内側径方向延在部」に相当する。
中間軸Mは、回転電機MGのトルク及び発進クラッチ10を介する内燃機関Eのトルクの一方又は双方を変速機構TMに入力するための軸であり、クラッチハウジングCHにスプライン連結されている。図2に示すように、この中間軸Mは、第二支持壁7を貫通する状態で配設されている。上記のとおり、第二支持壁7の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して中間軸Mが第二支持壁7を貫通している。中間軸Mは、第二支持壁7に対して回転可能な状態で径方向に支持されている。また、中間軸Mの軸方向一方側の端部は入力軸Iの軸端孔部12に軸方向に進入されている。このとき、中間軸Mの軸方向一方側の端面と入力軸Iの軸端孔部12における軸方向の底部を規定する面との間には、所定の隙間が形成されている。本実施形態においては、中間軸Mはその内径部に供給油路15及び排出油路16を含む複数の油路を有する。供給油路15は、中間軸Mの軸方向一方側において、軸方向に延びると共に発進クラッチ10の作動油室37に連通するように軸方向の所定位置で径方向に延びて中間軸Mの外周面に開口している。排出油路16は、中間軸Mの軸方向一方側において、供給油路15とは周方向の異なる位置を軸方向に延びて軸方向一方側の端面に開口している。
発進クラッチ10は、上記のとおり入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられ、内燃機関Eと回転電機MGとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。本実施形態では、発進クラッチ10は、油が供給される空間内で動作する湿式多板クラッチ機構を備えた湿式の摩擦係合装置として構成されている。この発進クラッチ10の詳細な構成については後に第3節で詳細に説明するが、発進クラッチ10は、クラッチ機構CLと、クラッチ機構CLを収容するクラッチハウジングCHとを備えて構成されている。後述するように、クラッチハウジングCHの内部には、クラッチ機構CLの係合に関する状態を制御するための作動油室37と、クラッチ機構CLを冷却するための油が循環する循環油室38とが形成されている。この作動油室37には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、中間軸Mに形成された供給油路15及びクラッチハウジングCHに形成された連絡油路48を介して供給される。また、循環油室38には、オイルポンプ18により吐出されて所定の油圧に調整された油が、軸方向突出部46内を軸方向に延びるように形成された循環油路47を介して供給される。このように、オイルポンプ18からオイルパン(図示せず)に向かう油流通経路は、複数の分岐路を有し、分岐路の一つは作動油室37を経由し、分岐路の別の一つは循環油室38を経由するように構成されている。なお、循環油室38内における油の流れについては、後に詳細に説明する。本実施形態では、クラッチ機構CLが、本発明における「多板係合機構」に相当する。
本例では、循環油室38からの油の排出経路は、図2において破線矢印で示すように、2系統に分かれている。第一の排出経路は、入力軸Iの外周面に開口する径方向の連通孔及び中間軸Mの内径部に形成された排出油路16を介するものである。本実施形態では、中間軸Mの軸方向一方側の端部の外径は入力軸Iの軸端孔部12の内径よりも僅かに小さくなるように形成されており、また中間軸Mの軸方向一方側の端面と入力軸Iの軸端孔部12における軸方向の底部を規定する面との間には、所定の隙間が形成されている。これにより、入力軸Iに形成される径方向の連通孔を通って循環油室38から排出される油を、中間軸Mと入力軸Iの軸端孔部12との間に形成される径方向の隙間及び軸方向の隙間を介して排出油路16へと適切に導くことが可能となっている。第二の排出経路は、第五軸受55(図3参照)から軸方向に漏出する油を対象とし、第一支持壁4に取り付けられた油路形成部材71の内部の排出油路72を介するものである。このような第二の排出経路は、入力軸Iと第一支持壁4との間に配設される第三シール部材63、及び一方側径方向延在部41の軸方向突出部42と第一支持壁4の軸方向突出部5との間に配設される第一シール部材61により画定される。これにより、第五軸受55から軸方向に漏出する油を、排出油路72へと適切に導くことが可能となっている。
図2に示すように、回転電機MGは、クラッチハウジングCHの径方向外側に配置されている。回転電機MGは、ケース2に固定されたステータStと、このステータStの径方向内側に回転自在に支持されたロータRoと、を有する。ステータStは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されて第一支持壁4に固定されるステータコアと、当該ステータコアに巻装されるコイルと、を備えている。なお、コイルのうち、ステータコアの軸方向両側に突出する部分がコイルエンド部Ceである。回転電機MGのロータRoは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されたロータコアと、当該ロータコアに埋め込まれた永久磁石と、を備えている。
本実施形態においては、回転電機MGは、クラッチハウジングCHと軸方向に重複して配置されている。すなわち、回転電機MGは、径方向から見てクラッチハウジングCHと重複して配置されている。本例では特に、回転電機MGのロータRoが、クラッチハウジングCHを構成する円筒状部49(詳細は後述する)の外周部に固定されている。すなわち、ロータRoを構成する複数の電磁鋼板のそれぞれの内周面が、円筒状部49の外周面に当接した状態で固定されている。これにより、クラッチハウジングCHはロータRoを支持するロータ支持部材としても機能し、本実施形態ではクラッチハウジングCHとロータ支持部材とが共通化されて形成されていることになる。
また、本実施形態においては、クラッチハウジングCHの軸方向他方側で、ケース2の第二支持壁7及び他方側径方向延在部45の双方に隣接して回転センサ19が設けられている。回転センサ19は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位相を検出するためのセンサである。本実施形態では、回転センサ19は、第二支持壁7の内部に収容されたオイルポンプ18の径方向外側に、当該オイルポンプ18と軸方向に重複して配置されている。すなわち、回転センサ19は、径方向から見てオイルポンプ18と重複して配置されている。本例では、第二支持壁7に回転センサ19のセンサステータが固定され、円筒状部49の軸方向他方側端部の内周面に回転センサ19のセンサロータが固定されている。このような回転センサ19としては、例えばレゾルバ等を用いることができる。
また、本実施形態においては、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有して形成された第一支持壁4の、軸方向一方側から見て軸方向他方側に引退した空間に、ダンパDが配置されている。本例では、更にダンパDは、回転電機MGのステータStのコイルエンド部Ceの径方向内側に、当該コイルエンド部Ceと軸方向に重複して配置されている。すなわち、ダンパDは、径方向から見てコイルエンド部Ceと重複して配置されている。
3.発進クラッチの構成
次に、発進クラッチ10の構成について図2及び図3を参照して詳細に説明する。図3に示すように、発進クラッチ10は、クラッチハブ21と、クラッチドラム26と、クラッチ機構CLと、クラッチハウジングCHとを備えた湿式の摩擦係合装置である。クラッチハブ21は、円筒型の形状を有する円筒状部22を備えており、発進クラッチ10は、クラッチドラム26とクラッチハブ21の円筒状部22とを、互いの回転軸(本例では回転軸X)が一致するとともにクラッチドラム26が当該円筒状部22に対して径方向外側に位置するように備えている。また、クラッチドラム26、クラッチハブ21が備える円筒状部22、及びクラッチ機構CLは、クラッチハウジングCHの内部に収容されている。
クラッチ機構CLは、クラッチドラム26とクラッチハブ21が備える円筒状部22とを選択的に駆動連結する機構である。クラッチ機構CLは、軸方向に沿って摺動自在な複数の摩擦プレート31と、クラッチドラム26とクラッチハブ21が備える円筒状部22との駆動連結時に複数の摩擦プレート31を軸方向一方側に押圧するピストン36と、ピストン36の押圧力に抗して複数の摩擦プレート31を軸方向一方側から支持するバッキングプレート32と、を備えて構成されている。ピストン36は、リターンスプリングにより軸方向他方側に付勢された状態で複数の摩擦プレート31に対して軸方向他方側に配置されている。また、バッキングプレート32は、鋼板等の金属製の部材とされ、複数の摩擦プレート31に対して軸方向一方側に、当該複数の摩擦プレート31と径方向に重複するように配置されている。すなわち、バッキングプレート32は、軸方向から見て複数の摩擦プレート31と重複して配置されている。このバッキングプレート32は、当該複数の摩擦プレート31同士を係合させる際の押さえ部材として機能し、軸方向一方側への移動は第一スナップリング34により規制されている。また、本実施形態では、バッキングプレート32の軸方向他方側への移動が、第二スナップリング35により規制されている。すなわち、バッキングプレート32は、軸方向一方側への移動を第一スナップリング34により規制され、軸方向他方側への移動を第二スナップリング35により規制された状態で保持されている。なお、本発明の要部に関係するバッキングプレート32及び第二スナップリング35の構成については、後に第4節で詳細に説明する。本実施形態では、摩擦プレート31及びピストン36が、それぞれ、本発明における「摩擦板」及び「押圧部材」に相当する。
クラッチハブ21は、入力軸Iと一体回転するように当該入力軸Iのフランジ部11に連結されている。クラッチドラム26は、クラッチハウジングCHを介して中間軸Mと一体回転するように連結されている。すなわち、本実施形態では、入力軸I及び中間軸Mの一方である中間軸Mに、外側支持部材であるクラッチドラム26が駆動連結され、入力軸I及び中間軸Mの他方である入力軸Iに、内側支持部材であるクラッチハブ21の円筒状部22が駆動連結されている。クラッチドラム26は、円筒型の形状を有し、クラッチハウジングCHと一体的に形成されている。クラッチ機構CLは、摩擦プレート31として、対となるハブ側摩擦プレート31aとドラム側摩擦プレート31bとを有する。本例では、クラッチ機構CLは、5枚のハブ側摩擦プレート31aと5枚のドラム側摩擦プレート31bとを備えている。そして、ハブ側摩擦プレート31aとドラム側摩擦プレート31bとは、共に円環板状の部材(鋼板等の金属製の部材)であり、互いに回転軸(本例では回転軸X)が一致するように軸方向に交互に配置されている。すなわち、クラッチハブ21に軸方向に移動可能に組み込まれたハブ側摩擦プレート31aは、クラッチドラム26に軸方向に移動可能に組み込まれたドラム側摩擦プレート31bの間に介在するように配置されている。
クラッチハブ21が備える円筒状部22の外周面には、ハブ側摩擦プレート31aを保持するためのスプライン溝22aが形成されている(図5参照)。そして、図示は省略するが、ハブ側摩擦プレート31aの内周面には、当該スプライン溝22aと係合するスプライン溝が形成されており、これらのスプライン溝が係合することで、ハブ側摩擦プレート31aは、クラッチハブ21により径方向内側から支持された状態で、当該クラッチハブ21に対して相対回転が規制されると共に軸方向に摺動自在に保持されている。また、クラッチドラム26の内周面には、ドラム側摩擦プレート31bを保持するためのスプライン溝26aが形成されている(図4参照)。そして、図示は省略するが、ドラム側摩擦プレート31bの外周面には、当該スプライン溝26aと係合するスプライン溝が形成されており、これらのスプライン溝が係合することで、ドラム側摩擦プレート31bは、クラッチドラム26により径方向外側から支持された状態で、当該クラッチドラム26に対して相対回転が規制されると共に軸方向に摺動自在に保持されている。
そして、ハブ側摩擦プレート31a及びドラム側摩擦プレート31bは、互いに対向する軸方向端面が、全体として円環状とされた摩擦当接面とされており、発進クラッチ10の係合時に双方の摩擦当接面同士が当接可能に対向配置されている。ハブ側摩擦プレート31a及びドラム側摩擦プレート31bの少なくとも一方の軸方向端面には、例えば紙や合成樹脂等を基材とする摩擦材が貼り付けられており、当該摩擦材が摩擦当接面を構成している。そして、摩擦材を成形することにより溝状部が形成されている。溝状部は、例えば放射状や格子状に形成される。このような溝状部が形成されているため、摩擦プレート31間に導入された油を径方向内側(内周側)から径方向外側(外周側)へ向かって流しやすい構成となっている。
なお、後述するように、摩擦プレート31を冷却するための油は、当該摩擦プレート31に対して径方向内側から供給される。本実施形態では、このように径方向内側から供給される油を効率的に摩擦プレート31間の隙間に導入すべく、図5に示すように、クラッチハブ21の円筒状部22には、当該円筒状部22の内周側と外周側とを連通するように、径方向に貫通する貫通孔22bが形成されている。本例では、円筒状部22は、スプライン溝22aの底部(径方向内側端部)に対して径方向外側に突出した部分に貫通孔22bを複数有し、当該複数の貫通孔22bが周方向に分散配置されている。また、本例では、貫通孔22bは、軸方向及び周方向に所定幅を有して形成されたスリット状貫通孔とされている。
また、摩擦プレート31間の隙間に導入され、径方向外側(外周側)へ向かって流れた油を適切に当該隙間から排出すべく、本実施形態では、図4に示すように、クラッチドラム26には、当該クラッチドラム26の内周側と外周側とを連通するように、径方向に貫通する貫通孔26bが形成されている。本例では、クラッチドラム26は、スプライン溝26aの底部(径方向外側端部)に貫通孔26bを複数有し、当該複数の貫通孔26bが周方向に分散配置されている。また、本例では、貫通孔26bは、軸方向及び周方向に所定幅を有して形成されたスリット状貫通孔とされている。
図3に示すように、本実施形態では、クラッチドラム26と一体化されたクラッチハウジングCHとピストン36との間には液密状態(油密状態)の作動油室37が形成される。すなわち、作動油室37は油密空間とされている。この作動油室37には、上述したように、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、中間軸Mに形成された供給油路15及びクラッチハウジングCHに形成された連絡油路48を介して供給される。作動油室37の油圧が上昇してリターンスプリングの付勢力よりも大きくなると、ピストン36は作動油室37の容積を広げる方向(本例では、軸方向一方側)に移動して、バッキングプレート32との協働により複数の摩擦プレート31同士を互いに係合させる。その結果、入力軸Iから伝達された内燃機関Eのトルクが発進クラッチ10を介して回転電機MG及び中間軸Mに伝達される。一方、ピストン36に対して作動油室37とは反対側には、循環油室38が形成される。この循環油室38には、オイルポンプ18により吐出され、不図示の油圧制御装置により所定の油圧に調整された圧油が、クラッチハウジングCHに形成された循環油路47を介して供給される。
クラッチハウジングCHは、入力軸Iに対して相対回転すると共に中間軸Mと一体回転する状態で、入力軸Iと中間軸Mとに亘って配設されている。そして、クラッチハウジングCHは、同軸上に配置される入力軸I及び中間軸Mの径方向外側で、クラッチ機構CLの軸方向両側及び径方向外側を包囲してクラッチ機構CLを収容している。そのため、クラッチハウジングCHは、クラッチ機構CLの軸方向一方側に配置されて径方向に延びる一方側径方向延在部41と、クラッチ機構CLの軸方向他方側に配置されて径方向に延びる他方側径方向延在部45と、一方側径方向延在部41と他方側径方向延在部45とをこれらの径方向外側端部で軸方向に連結する円筒状部49と、を有して構成されている。すなわち、一方側径方向延在部41は、円筒状部49の軸方向一方側端部(より正確には、軸方向一方側端部近傍)から径方向内側に延び、他方側径方向延在部45は、円筒状部49の軸方向他方側端部(より正確には、軸方向他方側端部近傍)から径方向内側に延びる。本実施形態では、円筒状部49が、本発明における「ロータ支持部」に相当する。
一方側径方向延在部41は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。一方側径方向延在部41は、後述する油密空間(循環油室38)の軸方向一方側を区画する。一方側径方向延在部41の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが一方側径方向延在部41を貫通してクラッチハウジングCH内に挿入されている。一方側径方向延在部41は、入力軸Iの周囲に、軸方向一方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部42を備えている。軸方向突出部42と入力軸Iとの間には第五軸受55が配設されている。軸方向突出部42は、一方側径方向延在部41の本体部の径方向内側の端部において、当該一方側径方向延在部41の本体部と一体的に形成されている。本例では、一方側径方向延在部41は、全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置するように、軸方向他方側に向かって凸となる皿状に湾曲した形状を有する部材とされている。一方側径方向延在部41は、第一支持壁4に対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接すると共に、軸方向突出部42が第一支持壁4の軸方向突出部5に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接する状態で配置されている。更に、一方側径方向延在部41は、クラッチハブ21及び入力軸Iのフランジ部11に対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、軸方向突出部42と第一支持壁4の軸方向突出部5とに亘って、第一軸受51と、これらの間を液密状態として軸方向他方側(回転電機MG側)への油の漏出を抑制するための第一シール部材61と、が配設されている。本実施形態では、第一軸受51が、本発明における「軸受」に相当する。
図3に示すように、一方側径方向延在部41は、径方向内側に向かうに従って軸方向他方側へ向かう傾斜延在部41aを備えている。このような傾斜延在部41aを備えることで、一方側径方向延在部41は、全体として径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸方向他方側に位置する形状となっている。そして、一方側径方向延在部41をケース2(第一支持壁4)に対して回転可能に支持する第一軸受51は、傾斜延在部41aに対して径方向内側に、当該傾斜延在部41aに対して軸方向に重複するように配置されている。すなわち、第一軸受51は、径方向から見て傾斜延在部41aと重複して配置されている。なお、本実施形態では、第一軸受51は、軸方向荷重及び径方向荷重の双方を受けることが可能なボールベアリングとされており、図3に示すように、軸方向突出部42の外周面に形成された段差部43(外径が変化する部分)に軸方向一方側から当接する状態で配設されている。なお、本例では、傾斜延在部41aは、径方向に沿って切断した断面(図3)において延在方向が異なる2つの部分が連結されてなり、本例では、2つの部分の内の円筒状部49側の部分が、第一軸受51と軸方向に重複しており、反対側の部分は、第一シール部材61に対して径方向外側に、当該第一シール部材61に対して軸方向に重複するように配置されている。
なお、このように、一方側径方向延在部41に傾斜延在部41aを設けるのは、以下のような理由による。すなわち、クラッチハウジングCH内に配置されるクラッチ機構CLは、要求されるトルク伝達容量を確保できるような枚数の摩擦プレート31を備えるため、軸方向にある程度の大きさをもつ。一方、クラッチハウジングCH内におけるクラッチ機構CLよりも径方向内側部分は、油路を適切に形成することができる範囲内で、軸方向長さを短く抑えることができる。そして、本実施形態のようにクラッチハウジングCHの外周面(円筒状部49)に回転電機MGのロータRoが固定される構成では、ロータRoを高精度に支持するために、クラッチハウジングCHをケース2に対して支持する軸受として、比較的大きな軸受(本例ではボールベアリング)が必要となる。本実施形態では、このように、クラッチハウジングCHの径方向内側部分は径方向外側部分に対して軸方向長さを短くすることができる点と、第一軸受51として比較的大型の軸受が必要となるという点とに鑑み、一方側径方向延在部41に傾斜延在部41aを設けるとともに、当該傾斜延在部41aに対して径方向内側に、当該傾斜延在部41aに対して軸方向に重複するように第一軸受51を配置する構成とすることで、クラッチハウジングCH及び第一軸受51が占める軸方向範囲を短く抑え、車両への搭載性の向上を図っている。
円筒状部49は、クラッチ機構CLの径方向外側を包囲する円筒型の形状を有し、本実施形態では一方側径方向延在部41の径方向外側端部から軸方向他方側に向かって延在している。円筒状部49は、後述する油密空間(循環油室38)の径方向外側を区画する。上述したように、この円筒状部49の外周部には回転電機MGのロータRoが固定されている。よって、円筒状部49は、軸方向に延びるとともに回転電機MGのロータRoを支持する部材である。本例では、円筒状部49は一方側径方向延在部41と一体的に形成されている。
他方側径方向延在部45は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。他方側径方向延在部45は、ピストン36よりも径方向内側部分で、後述する油密空間(循環油室38)の軸方向他方側を区画する。本例では、他方側径方向延在部45は、径方向内側部分が径方向外側部分に対して軸方向一方側に向かってオフセットされた形状を有する板状部材とされている。また、他方側径方向延在部45は、径方向外側端部の近傍において円筒状部49の軸方向他方側の部位と溶接等により連結されている。他方側径方向延在部45の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが他方側径方向延在部45を貫通してクラッチハウジングCH内に挿入されている。他方側径方向延在部45は、径方向内側の端部においてその内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。また、他方側径方向延在部45は、中間軸Mの周囲に、軸方向他方側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部46を備えている。軸方向突出部46は、他方側径方向延在部45の本体部の径方向内側の端部において、当該他方側径方向延在部45の本体部と一体的に形成されている。
軸方向突出部46は、中間軸Mと一体回転するようにスプライン連結されている。他方側径方向延在部45は、第二支持壁7に対して軸方向一方側に所定間隔を空けて隣接すると共に、軸方向突出部46が第二支持壁7の軸方向突出部8に対して径方向内側に所定間隔を空けて隣接する状態で配置されている。更に、他方側径方向延在部45は、その径方向内側の部位において、入力軸Iのフランジ部11に対して軸方向他方側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、軸方向突出部46と第二支持壁7の軸方向突出部8とに亘って、第四軸受54と、これらの間を液密状態として軸方向一方側(回転電機MG側)への油の漏出を抑制するための第二シール部材62と、が配設されている。
なお、本実施形態においては、この他方側径方向延在部45にクラッチドラム26が一体的に形成されている。より具体的には、他方側径方向延在部45の径方向外側の端部近傍において、当該他方側径方向延在部45から軸方向一方側に向かって延在するように円筒状のクラッチドラム26が一体形成されている。このとき、クラッチドラム26は、円筒状部49に対して径方向内側に、当該円筒状部49と径方向に所定間隔を空けて隣接して配置されている。このクラッチドラム26と円筒状部49との間に形成される隙間は、クラッチハウジングCH内の軸方向一方側端部において軸方向に開口している。また、本実施形態においては、他方側径方向延在部45とピストン36との間に作動油室37が形成されている。また、他方側径方向延在部45には、供給油路15と作動油室37とを連通するように、径方向に対して軸方向一方側に向かって僅かに傾斜しつつ全体として径方向に延びる連絡油路48が、軸方向突出部46との連結部に形成されている。
クラッチハウジングCHの内部に形成される空間のうち、作動油室37を除いた大部分を占める空間が、先に説明した循環油室38となる。そして、本実施形態においては、上述したように、オイルポンプ18により吐出されて所定の油圧に調整された油が、軸方向突出部46内を軸方向に延びるように形成された循環油路47を介して循環油室38に供給される。本実施形態では、軸方向突出部42と入力軸Iとの間に配設される第五軸受55は、ある程度の液密性が確保可能に構成されたシール機能付軸受(ここでは、シールリング付ニードルベアリング)とされている。更に、他方側径方向延在部45は、径方向内側の端部においてその内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。このように、循環油室38は、油流通経路に沿わない油の流れを抑制するような液密状態(油密状態)に形成された油室とされている。すなわち、循環油室38は、油密空間とされている。よって、循環油路47を介して循環油室38に供給された油の多くは、上述した循環油室38からの油の排出経路へと導かれる。図3には、循環油室38内における油の主な流れを破線矢印で示している。
以下、循環油室38内における油の主な流れを具体的に説明する。循環油路47から循環油室38に供給された油は、まず他方側径方向延在部45とフランジ部11との間、及びピストン36とクラッチハブ21の円環板状部23との間を通って径方向外側に向かって流れ、クラッチハブ21の円筒状部22に到達する。なお、クラッチハブ21の円環板状部23は、クラッチハブ21の円筒状部22の軸方向一方側端部に連結されており、当該連結部から径方向(本例では、径方向内側)に延びるように形成されている。すなわち、円環板状部23は、円筒状部22の軸方向における、ピストン36を油圧により動作させる機構(油圧サーボ機構)に対して反対側から径方向に延びるように形成されている。具体的には、円環板状部23は、径方向外側から径方向内側に向かって、円筒状部22と連結されるとともに径方向に沿って延びる部分と、径方向内側に向かうに従って軸方向他方側に向かう部分と、径方向内側端部がフランジ部11と連結されるとともに径方向に沿って延びる部分とを備え、径方向に沿って切断した断面(図3)において、全体として一方側径方向延在部41の形状に沿うように形成されている。なお、本実施形態では、円環板状部23は、バッキングプレート32と軸方向に重複するように形成されている。より具体的には、円環板状部23における円筒状部22との境界側の径方向に沿って延びる部分が、バッキングプレート32と軸方向に重複するように形成されている。すなわち、円環板状部23(より具体的には円環板状部23における上記部分)は、径方向から見てバッキングプレート32と重複して配置されている。
そして、クラッチハブ21の円筒状部22に到達した油は、当該円筒状部22に形成された貫通孔22bを介してハブ側摩擦プレート31aとドラム側摩擦プレート31bとの間の隙間に導入される。ハブ側摩擦プレート31aとドラム側摩擦プレート31bとの間に導入された油は径方向内側(内周側)から径方向外側(外周側)へ向かって移動し、ハブ側摩擦プレート31aとドラム側摩擦プレート31bとが冷却される。そして、摩擦プレート31の径方向外側端部(外周側端部)に到達した油は、クラッチドラム26に形成された貫通孔26bを介してクラッチドラム26と円筒状部49との間の隙間に排出される。
クラッチドラム26と円筒状部49との間の隙間に排出された油は、当該隙間を軸方向一方側へ向かって流れ、その後、第一油路L1、第二油路L2、及びフランジ部11と一方側径方向延在部41との間を通って径方向内側に向かって流れ、フランジ部11の基端部に到達する。その後、上述した排出経路を介して循環油室38から排出される。ここで、第一油路L1は、バッキングプレート32とクラッチハウジングCHの一方側径方向延在部41との対向する間により形成される油路であり、少なくとも径方向に延びるように形成されている。本例では、第一油路L1は、径方向及び周方向に延在している。また、第二油路L2は、円環板状部23とクラッチハウジングCHの一方側径方向延在部41との対向する間により形成される油路であり、少なくとも径方向に延びるように形成されている。本例では、第二油路L2は、径方向及び周方向に延在している。そして、第一油路L1と第二油路L2とは、径方向に連続して油流通経路を構成している。本例では、このようなクラッチハウジングCHの内部における径方向の広い範囲に渡って径方向に連続して形成される油路を用いて、冷却の対象となるクラッチ機構CL(特に、摩擦プレート31間の隙間)を経由する油流通経路が形成されている。なお、油が同時に周方向に流れたり、油がクラッチハブ21やクラッチドラム26に形成されたスプライン溝の延在方向に沿って軸方向に流れたりする場合も当然あり得るが、径方向及び軸方向の主な流れは上記のようになる。
このように、本実施形態では、循環油室38は、油流通経路における上流側から下流側へ向かって、他方側径方向延在部45とフランジ部11との間の空間、ピストン36とクラッチハブ21の円環板状部23との間の空間、ハブ側摩擦プレート31aとドラム側摩擦プレート31bとの間の空間、クラッチドラム26と円筒状部49との間の空間、バッキングプレート32と一方側径方向延在部41との間の空間(第一油路L1)、クラッチハブ21の円環板状部23と一方側径方向延在部41との間の空間(第二油路L2)を備えて構成されている。
ところで、上記のように、循環油室38は、油流通経路に沿わない油の流れを抑制するような油密空間として形成されている。そして、循環油室38内の空間には、基本的には循環油路47から所定油圧の油が供給され続ける状態となるため、循環油室38の内部は基本的には常時油で満たされた状態となる。すなわち、クラッチハウジングCHの内部は、油で満たされた油密空間とされている。なお、クラッチハウジングCHの内部に形成される別の油室である作動油室37は、クラッチ機構CLの係合時には圧油で満たされた状態となるが、クラッチ機構CLの解放時には圧油が排出された状態となる。すなわち、作動油室37も循環油室38と同様油密空間として形成されているが、作動油室37が油で満たされている状態にあるか否かは、クラッチ機構CLの係合に関する状態に依存する。よって、より正確には、クラッチハウジングCHの内部であって、クラッチ機構CLを冷却するための油が循環する部分は、油で満たされた油密空間とされているといえる。
そして、循環油室38の内部は、油で満たされた状態が維持されつつ、油が所定圧力を有した状態で循環する状態となる。すなわち、循環油室38内においては、所定圧力の油が油流通経路に沿って流通する。そして、上記のように、クラッチ機構CLはこのような循環油室38(油密空間)の内部に備えられており、所定圧力の油がクラッチ機構CLが備える摩擦プレート31間の隙間を径方向内側から径方向外側に向かって流通する。これにより、発進クラッチ10に備えられる複数の摩擦プレート31を、循環油室38に常時満たされる多量の油で効果的に冷却することが可能となっている。また、本実施形態では、油はクラッチドラム26と円筒状部49との間の隙間を軸方向一方側へ向かって流れるため、ドラム側摩擦プレート31bで発生した熱が伝達されるクラッチドラム26を積極的に冷却することも可能な構成となっている。なお、「所定圧力」とは、クラッチハウジングCH(循環油室38)内に油が全体として滞留せず、クラッチハウジングCH(循環油室38)内への油の供給とクラッチハウジングCH(循環油室38)内からの油の排出との双方が行われるような油の圧力を表し、好ましくは、発進クラッチ10の使用上大きな問題が生じない程度に油をクラッチハウジングCH(循環油室38)内において流通させることができるような油の圧力を表す。このように、「所定圧力」とは、ある特定の圧力を意味するものではなく、少なくともある程度の幅をもつ圧力を指す。
ところで、上記のように、循環油室38内においては、所定圧力の油が油流通経路に沿って流通するため、循環油室38内における油流通経路に含まれる第一油路L1には所定圧力の油が流通する。この第一油路L1は、バッキングプレート32と一方側径方向延在部41との対向する間に形成されている。よって、バッキングプレート32の軸方向一方側に接して所定圧力の油が流通する油流通経路が形成されている。さらに、本例では、一方側径方向延在部41は、上述したように、径方向内側に向かうに従って軸方向他方側へ向かう傾斜延在部41aを備えている。そのため、図3に示すように、第一油路L1を流通する油は、径方向内側へ向かうに従って軸方向他方側へ向かう。その結果、バッキングプレート32は軸方向他方側へ押圧されるが、本発明では、バッキングプレート32の軸方向他方側に、当該バッキングプレート32の軸方向他方側への移動を規制する第二スナップリング35が備えられている。これにより、発進クラッチ10の分離状態(非係合状態)におけるバッキングプレート32の軸方向他方側への移動は抑制され、バッキングプレート32の軸方向他方側への移動に起因する引き摺りトルクの増大が抑制されている。
4.バッキングプレート及び第二スナップリングの構成
次に、本発明の要部に関係するバッキングプレート32及び第二スナップリング35の構成について詳細に説明する。本実施形態では、バッキングプレート32は、軸方向厚さを除いて、基本的にドラム側摩擦プレート31bと同様に構成されている。すなわち、バッキングプレート32は円環板状の部材とされるとともに、外周面にはクラッチドラム26の内周面に形成されたスプライン溝26aと係合するスプライン溝が形成されている。すなわち、バッキングプレート32の外周面に形成されたスプライン歯(周方向に隣接するスプライン溝の間の部分)が、バッキングプレート32をクラッチドラム26に係合するための係合部33として機能している。すなわち、本例では、係合部33は、バッキングプレート32の径方向外側であって、バッキングプレート32の軸方向一方側部分に備えられている。
そして、バッキングプレート32を軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅は、ドラム側摩擦プレート31bを軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅と等しく設定されている。すなわち、図3に示すように、バッキングプレート32の径方向内側端部と、ドラム側摩擦プレート31bの径方向内側端部とは、同じ径方向位置に位置する。バッキングプレート32をこのように構成することで、複数の摩擦プレート31同士を係合させる際の押さえ部材としての機能と、第一油路L1の軸方向他方側を区画する機能との双方を適切に確保することが可能となっている。
上記のように、バッキングプレート32の軸方向一方側には第一スナップリング34が配設されている。この第一スナップリング34は、図4に示すように、クラッチドラム26の内周面(本例では、スプライン溝26aの底部に対して径方向内側へ突出した部分)に形成された第一凹溝81に嵌めこまれた(嵌入された)状態でクラッチドラム26に保持されている。また、バッキングプレート32の軸方向他方側には第二スナップリング35が配設されている。この第二スナップリング35は、図4に示すように、クラッチドラム26の内周面(本例では、スプライン溝26aの底部に対して径方向内側へ突出した部分)に形成された第二凹溝82に嵌めこまれた(嵌入された)状態でクラッチドラム26に保持されている。このようなスナップリングの構成については公知であるため詳細な説明は省略するが、スナップリングは周方向の一部が切り欠かれた環状(C字状)の部材であり、凹溝に嵌めこまれた状態で軸方向の推力を受け止めることができる。上記のような構成を備えることで、バッキングプレート32は、軸方向一方側に配設された第一スナップリング34により軸方向一方側への移動が規制され、軸方向他方側に配設された第二スナップリング35により軸方向他方側への移動が規制されることになる。
ところで、バッキングプレート32は、発進クラッチ10の分離状態(非係合状態)における摩擦プレート31間のクリアランスを調整したり、発進クラッチ10の係合時にピストン36を軸方向に移動させる距離(ストローク)を適正にしたりするためのものである。そのため、発進クラッチ10毎に異なり得る各摩擦プレート31の厚みのばらつき等に応じ、バッキングプレート32(係合時に摩擦プレート31と当接する部分)の軸方向厚さが設定されることが望ましい。すなわち、バッキングプレート32は、各摩擦プレート31の厚みのばらつき等に応じて、上記部分の軸方向厚さが異なる複数種類の中から選択されることが望ましい。本実施形態では、以下のような構成を備えることで、製造コストや在庫コストの増大を抑制しつつ、各摩擦プレート31の厚みのばらつきを適切に吸収することが可能な構成となっている。以下、このような構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態では、バッキングプレート32は、径方向外側部分と径方向内側部分とで軸方向厚さが異なるように形成されている。すなわち、バッキングプレート32は、所定の径方向位置(以下に述べる径方向特定位置)に軸方向の段差が形成された段付形状に形成されている。ここで、バッキングプレート32における軸方向厚さが変化する径方向位置を径方向特定位置とする。この径方向特定位置は、第二スナップリング35の径方向内側端部と同じ径方向位置或いは当該径方向内側端部より径方向内側の径方向位置に設定される。本実施形態では、この径方向特定位置は、第二スナップリング35の径方向内側端部より径方向内側であって、ハブ側摩擦プレート31aの径方向外側端部と同じ径方向位置に設定されている。これにより、バッキングプレート32を段付状の部材として構成することによる押さえ部材として機能の低下が抑制されている。また、第二スナップリング35とバッキングプレート32に当接するハブ側摩擦プレート31aとが径方向に重複しないため、すなわち、第二スナップリング35が、軸方向から見てハブ側摩擦プレート31aと重複しないため、第二スナップリング35の軸方向厚さとして許容される範囲をハブ側摩擦プレート31aの軸方向幅分だけ拡大することも可能となっている。
上記のように、バッキングプレート32は、径方向特定位置よりも径方向外側部分(以下、単に「径方向外側部分」という。)と、径方向特定位置よりも径方向内側部分(以下、単に「径方向内側部分」という。)とで軸方向厚さが異なるように形成されている。そして、第二スナップリング35は、バッキングプレート32における径方向外側部分に対して軸方向に当接するように備えられている。このような構成を備えることで、クラッチドラム26に形成される第一凹溝81や第二凹溝82の形状、第一凹溝81と第二凹溝82との軸方向間隔、第一スナップリング34及び第二スナップリング35の形状を変化させることなく、各摩擦プレート31の厚みのばらつきを吸収することが可能となっている。
すなわち、図3より明らかなように、バッキングプレート32が各摩擦プレート31の厚みのばらつきを適切に吸収するための機能を発揮する部分は、バッキングプレート32における径方向内側部分である。バッキングプレート32における径方向外側部分は、バッキングプレート32をクラッチドラム26に係合するために必要となる部分である。よって、各摩擦プレート31の厚みのばらつきを適切に吸収するためには、バッキングプレート32における径方向内側部分の軸方向厚さのみを変化させれば十分であり、バッキングプレート32における径方向外側部分の軸方向厚さを変化させる必要はなく、当該径方向外側部分の軸方向厚さが同一であれば、径方向内側部分の軸方向厚さが異なっていても、バッキングプレート32を保持するための構成として同じものを採用することができる。このように、バッキングプレート32を軸方向の段差を有する段付形状とすることで、バッキングプレート32を保持するための構成として同じものを採用しつつ、各摩擦プレート31の厚みのばらつきを適切に吸収することが可能となっている。
なお、本例では、バッキングプレート32は、軸方向一方側の端面は径方向に沿う平坦面とされ、軸方向他方側の端面が軸方向の段差部を有する非平坦面とされている。そして、バッキングプレート32の径方向外側部分の軸方向厚さは、ドラム側摩擦プレート31bの軸方向厚さと一致し、バッキングプレート32の径方向内側部分の軸方向厚さは、ドラム側摩擦プレート31bの軸方向厚さよりも大きく(本例では、2倍程度)設定されている。そして、第二スナップリング35は、バッキングプレート32の径方向内側部分に対して径方向外側に、当該径方向内側部分に対して軸方向に重複するように配置されている。すなわち、第二スナップリング35は、径方向から見て当該径方向内側部分と重複して配置されている。
また、本実施形態では、図3より明らかなように、第一スナップリング34及び第二スナップリング35は、軸方向幅が互いに同一に形成されているが、径方向幅は互いに異なるように形成されている。具体的には、第二スナップリング35を当該第二スナップリング35の延在方向(周方向)に直交する面に沿って切断した面における断面積は、第一スナップリング34を当該第一スナップリング34の延在方向(周方向)に直交する面に沿って切断した面における断面積よりも小さく設定されている。
なお、第一スナップリング34と第二スナップリング35とは、図3に示すように、径方向外側端部が互いに同じ径方向位置に位置するように配置されるため、第二スナップリング35の径方向内側端部は、第一スナップリング34の径方向内側端部よりも径方向外側に位置することになる。このように第二スナップリング35を小型なものとすることができるのは、以下のような理由による。すなわち、第二スナップリング35は、バッキングプレート32の軸方向一方側に接して流通する油から当該バッキングプレート32が受ける押圧力(流通油押圧力)に抗して、バッキングプレート32の軸方向他方側への移動を規制するものである。これに対し、第一スナップリング34は、発進クラッチ10の係合時に複数の摩擦プレート31を軸方向一方側へ押圧するピストン36からバッキングプレート32が受ける押圧力(ピストン押圧力)に抗して、バッキングプレート32の軸方向一方側への移動を規制するものである。そして、このピストン押圧力は、上記の流通油押圧力よりも大きいからである。すなわち、第二スナップリング35に要求される耐スラスト力(バッキングプレート32の軸方向への移動を規制する力)は、第一スナップリング34に要求される耐スラスト力よりも小さいため、第二スナップリング35は第一スナップリング34に比べて小型なものとすることができる。そして、このように、第二スナップリング35を小型なものとすることができることにより、上記のように、バッキングプレート32における軸方向厚さが変化する径方向位置である径方向特定位置を、ハブ側摩擦プレート31aの径方向外側端部と一致させることが容易となっている。
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る摩擦係合装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される特徴構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態では、バッキングプレート32がクラッチドラム26に係合する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、バッキングプレート32をクラッチハブ21に係合させる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成では、当然ながら、第一スナップリング34及び第二スナップリング35も、クラッチハブ21に配設される。この構成では、径方向内側及び径方向外側が、それぞれ、本発明における「径方向一方側」及び「径方向他方側」に相当する。
(2)上記の実施形態では、クラッチドラム26が、クラッチハウジングCHの円筒状部49に対して径方向内側に、当該円筒状部49と径方向に所定間隔を空けて隣接して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、クラッチドラム26が、クラッチハウジングCHの円筒状部49に対して径方向内側に、当該円筒状部49と径方向に隙間無く配置されている構成とすることもできる。この場合において、クラッチドラム26を他方側径方向延在部45ではなく円筒状部49と一体的に形成する構成としても良い。この場合、ドラム側摩擦プレート31bは、クラッチハウジングCHの円筒状部49に保持される構成となる。
(3)上記の実施形態では、クラッチドラム26が、クラッチハウジングCH(他方側径方向延在部45)と一体的に形成されている場合を例として説明したが、クラッチドラム26をクラッチハウジングCHとは別体で形成することも当然に可能である。
(4)上記の実施形態では、バッキングプレート32の軸方向他方側に配置され、当該バッキングプレート32の軸方向他方側への移動を規制する他方側規制部材が、スナップリングである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、他方側規制部材をスナップリング以外の部材(例えばピン、ねじ等)とすることもできる。
(5)上記の実施形態では、バッキングプレート32の軸方向一方側への移動が、第一スナップリング34により規制される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、バッキングプレート32の軸方向一方側への移動を、クラッチドラム26やクラッチハウジングCHを構成する部材(例えば、一方側径方向延在部41等)により規制する構成とすることもできる。また、バッキングプレート32の軸方向一方側への移動を、ピンやねじ等により規制する構成とすることもできる。すなわち、バッキングプレート32の軸方向一方側に配置され、当該バッキングプレート32の軸方向一方側への移動を規制する部材(一方側規制部材)は、第一スナップリング34に限られず各種の構成を採用することができる。
(6)上記の実施形態では、クラッチハブ21が備える円筒状部22の軸方向一方側端部に、円環板状部23が連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、円環板状部23を円筒状部22の軸方向他方側端部に連結する等、円環板状部23が円筒状部22の軸方向一方側端部以外の部位に連結された構成とすることもできる。
(7)上記の実施形態では、バッキングプレート32が、径方向特定位置よりも径方向外側部分と径方向内側部分とで軸方向厚さが異なるように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、バッキングプレート32の軸方向厚さを径方向に一様なものとすることもできる。また、上記の実施形態では、径方向特定位置が、ハブ側摩擦プレート31bの径方向外側端部と径方向位置が一致する場合を例として説明したが、径方向特定位置を、ハブ側摩擦プレート31bの径方向外側端部より径方向外側或いは径方向内側に設定することも当然に可能である。
(8)上記の実施形態では、発進クラッチ10が回転電機MGを駆動力源として備えるハイブリッド駆動装置1のケース2内に備えられ、クラッチハウジングCHの円筒状部49が、回転電機MGのロータRoを支持するロータ支持部として機能する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ロータRoを支持する部材を、クラッチハウジングCHとは別体で構成し、当該部材とクラッチハウジングCHとが駆動連結されている構成とすることもできる。
(9)上記の実施形態では、一方側径方向延在部41が傾斜延在部41aを備え、一方側径方向延在部41をケース2に対して回転可能に支持する第一軸受51が、傾斜延在部41aに対して径方向内側に、当該傾斜延在部41aに対して軸方向に重複するように配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、傾斜延在部41aと第一軸受51とが軸方向に重複しないような配置等、傾斜延在部41aの配設位置と第一軸受51の配設位置とは、互いに独立に設定することが可能である。また、一方側径方向延在部41が、傾斜延在部41aを備えない構成とすることもできる。
(10)上記の実施形態では、本発明に係る摩擦係合装置を、ハイブリッド車両用駆動装置1に備えられる発進クラッチ10に適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明に係る摩擦係合装置を、トルクコンバータに備えられるクラッチに適用することもできる。また、本発明に係る摩擦係合装置を、駆動力源としての回転電機を備えない駆動装置内に備えられる摩擦係合装置に適用することもできる。
(11)上記の実施形態においては、クラッチハブ21の円筒状部22に形成される貫通孔22bが、スリット状貫通孔とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、円筒状部22に形成される貫通孔の軸方向長さを、図5で示す貫通孔22bの軸方向長さよりも短くし、複数(例えば、2つ、3つ等)の貫通孔が軸方向に沿って配置される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。同様に、上記の実施形態においては、クラッチドラム26に形成される貫通孔26bが、スリット状貫通孔とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、クラッチドラム26に形成される貫通孔の軸方向長さを、図4で示す貫通孔26bの軸方向長さよりも短くし、複数(例えば、2つ、3つ等)の貫通孔が軸方向に沿って配置される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、貫通孔22b及び貫通孔26bの少なくともいずれか一方が形成されていない構成とすることも可能である。
(12)上記の実施形態では、クラッチハブ21が入力軸Iと一体回転するように駆動連結されると共に、クラッチドラム26が中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されなく、クラッチハブ21が中間軸Mと一体回転するように駆動連結されると共に、クラッチドラム26が入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。すなわち、入力軸I及び中間軸Mの一方である中間軸Mに、内側支持部材であるクラッチハブ21の円筒状部22が駆動連結され、入力軸I及び中間軸Mの他方である入力軸Iに、外側支持部材であるクラッチドラム26が駆動連結されている構成とすることができる。
(13)上記の実施形態では、バッキングプレート32を軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅が、ドラム側摩擦プレート31bを軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅と等しく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、バッキングプレート32を軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅を、ドラム側摩擦プレート31bを軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅と異なるように設定することも可能である。例えば、バッキングプレート32を軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅を、ドラム側摩擦プレート31bを軸方向に沿って見た場合の周方向に連続する部分の径方向幅よりも小さくすることができる。
(14)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
本発明は、内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能な湿式の摩擦係合装置に好適に利用することができる。
10:発進クラッチ(摩擦係合装置)
22:円筒状部(内側支持部材)
23:円環板状部(内側径方向延在部)
26:クラッチドラム(外側支持部材)
31:摩擦プレート(摩擦板)
32:バッキングプレート(支持板)
33:係合部
35:第二スナップリング(他方側規制部材)
36:ピストン(押圧部材)
41:一方側径方向延在部
41a:傾斜延在部
49:円筒状部(ロータ支持部)
51:第一軸受(軸受)
CL:クラッチ機構(多板係合機構)
CH:クラッチハウジング(ハウジング)
E:内燃機関
I:入力軸(第一軸)
M:中間軸(第二軸)
MG:回転電機
Ro:ロータ
TM:変速機構
X:回転軸
L1:第一油路
L2:第二油路

Claims (4)

  1. 内燃機関に駆動連結される第一軸と、変速機構に駆動連結される第二軸との間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能な湿式の摩擦係合装置であって、
    前記第一軸及び前記第二軸のいずれか一方に駆動連結される外側支持部材と、前記第一軸及び前記第二軸の他方に駆動連結される内側支持部材とを、互いの回転軸が一致するとともに前記外側支持部材が前記内側支持部材に対して径方向外側に位置するように備え、更に、前記外側支持部材と前記内側支持部材とを選択的に駆動連結する多板係合機構と、前記外側支持部材、前記内側支持部材、及び前記多板係合機構を収容するハウジングと、を備え、
    前記多板係合機構は、軸方向に沿って摺動自在な複数の摩擦板と、前記外側支持部材と前記内側支持部材との駆動連結時に前記複数の摩擦板を軸方向一方側に押圧する押圧部材と、前記押圧部材の押圧力に抗して前記複数の摩擦板を軸方向一方側から支持する支持板と、を備え、
    前記支持板は、前記複数の摩擦板の軸方向一方側に、当該複数の摩擦板と径方向に重複するように配置され、
    前記ハウジングの内部が油で満たされた油密空間とされ、
    前記多板係合機構は、前記油密空間に収容され、
    前記支持板の軸方向一方側に接して所定圧力の油が流通する油流通経路が形成され、
    前記支持板の軸方向他方側に配置され、当該支持板の軸方向他方側への移動を規制する他方側規制部材を備える摩擦係合装置。
  2. 前記ハウジングは、径方向に延びるとともに前記油密空間の軸方向一方側を区画する一方側径方向延在部を備え、
    前記内側支持部材の軸方向一方側端部に内側径方向延在部が連結され、
    前記内側径方向延在部は、前記内側支持部材との連結部から径方向に延びるように形成され、
    前記支持板と前記ハウジングの前記一方側径方向延在部との対向する間が、少なくとも径方向に延びる第一油路とされ、
    前記内側径方向延在部と前記ハウジングの前記一方側径方向延在部との対向する間が、少なくとも径方向に延びる第二油路とされ、
    前記第一油路と前記第二油路とが、径方向に連続して前記油流通経路を構成している請求項1に記載の摩擦係合装置。
  3. 前記支持板は、径方向一方側に、前記外側支持部材又は前記内側支持部材に係合する係合部を備え、
    前記他方側規制部材の径方向他方側端部と同じ径方向位置或いは当該径方向他方側端部より径方向他方側の径方向位置を径方向特定位置とし、
    前記支持板は、前記径方向特定位置よりも径方向一方側部分と径方向他方側部分とで軸方向厚さが異なるように形成され、
    前記他方側規制部材は、前記支持板における前記径方向特定位置よりも径方向一方側部分に対して軸方向に当接するように備えられている請求項1又は2に記載の摩擦係合装置。
  4. 回転電機を駆動力源として備える駆動装置のケース内に備えられ、
    前記ハウジングは、軸方向に延びるとともに前記回転電機のロータを支持する筒状のロータ支持部と、前記ロータ支持部の軸方向一方側端部から径方向内側に延びるとともに前記油密空間の軸方向一方側を区画する一方側径方向延在部と、を備え、
    前記一方側径方向延在部は、径方向内側に向かうに従って軸方向他方側へ向かう傾斜延在部を備え、
    前記一方側径方向延在部を前記ケースに対して回転可能に支持する軸受が、前記傾斜延在部に対して径方向内側に、当該傾斜延在部に対して軸方向に重複するように配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の摩擦係合装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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