JP2011213608A - 歯科用水硬性仮封材組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 初期の硬化性に優れ歯質との粘着性,密着性にも優れ、口腔内における充填の操作性も極めて良好である歯科用水硬性仮封材組成物を提供する。
【解決手段】
歯科用水硬性仮封材組成物を硫酸カルシウム,酢酸ビニル樹脂,無機充填材,沸点が110℃以上のアルコ−ル類,非イオン系界面活性剤とで構成すると、適度な親水性を持った有機溶媒及び非イオン系界面活性剤との親水作用で歯面の水分がペースト表面にはじかれることなく付着し、その効果によりペースト内部により速く安定して水分が浸透,拡散することで初期の硬化性を高めることができ、更にその親水性の効果は歯質との粘着性,密着性にも有効であり口腔内における充填性が極めて良好となる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、歯科治療において仮封材として用いられる歯科用水硬性仮封材組成物に関する。
歯科治療において、次回来院までの間の経過観察,窩洞形成から歯冠製作物作製までの間の窩洞内への食片の混入や細菌感染の防止、窩洞や根管に填入した薬物の漏洩を防ぐこと等を目的として一定期間窩洞を封鎖する仮封が行われている。この仮封に使用される材料が歯科用仮封材である。
歯科用仮封材の性質としては、緊密な封鎖効果があること,咬合圧に耐え破損や脱落および変形しないこと,歯の硬組織および歯髄への為害性を有さないこと,充填および除去操作が容易であること等が挙げられる。歯科用仮封材としては、熱可塑性樹脂(テンポラリーストッピング),歯科用セメント(ユージノールセメント,非ユージノールセメント,燐酸亜鉛セメント)水硬性仮封材の3種類に大別できる。
熱可塑性樹脂(テンポラリーストッピング)は、棒状あるいはペレット状に成形されて供給されているので、これを加熱・軟化させ窩洞に圧接して用いる。充填,除去操作が簡便なため多く利用されているが、冷却・硬化時の収縮が大きいため歯牙との接着性が充分ではなく窩洞の封鎖性が悪い。また充填時に加熱・軟化させる必要があるため操作に際しては必ず火焔等が必要となるので操作が面倒である。
また、歯科用セメント(ユージノールセメント,非ユージノールセメント,燐酸亜鉛セメント)は、粉と液とを練り混ぜてペースト状にしてから充填する。数分で適度な硬さの硬化体となるため窩洞への封鎖性が良く、鎮痛,鎮静,抗菌作用を持つものもある。しかしながら、粉と液との混合操作は煩雑かつ熟練を必要とし、また、硬化体が比較的硬いため除去操作が困難である欠点がある。また、ユージノールセメントは独特の臭いや粘膜組織に対して刺激性があるという問題もある。
水硬性仮封材は歯質との接着性はないもののパテ状のペーストを窩洞に充填させることで口腔内の唾液などの水分と反応し硬化する。そのため練和・加熱の必要もなく操作性に優れている。また硬化時に膨張する特徴があるため封鎖性に優れている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、口腔内の水分と組成物中の硫酸カルシウムの反応による硬化機構を利用しているため、硬化時間が長く特に初期の硬化が緩慢であるという問題があった。
特許公報 昭38−2628号
そこで本発明は歯科用水硬性仮封材組成物において、従来よりも初期の硬化性に優れ、封鎖性が高く、口腔内における充填の操作性も極めて良好である歯科用水硬性仮封材組成物を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、歯科用水硬性仮封材組成物を硫酸カルシウム,酢酸ビニル樹脂,無機充填材,沸点が110℃以上のアルコ−ル類,非イオン系界面活性剤とで構成すると、適度な親水性を持った有機溶媒及び非イオン系界面活性剤との親水作用で歯面の水分がペースト表面にはじかれることなく付着し、その効果によりペースト内部により速く安定して水分が浸透,拡散することで初期の硬化性を高めることができ、更にその親水性の効果は歯質との粘着性にも有効であることから口腔内における充填性が良好となり、それらの結果、封鎖性が向上することを究明して本発明を完成した。
即ち本発明は、
即ち本発明は,
A)硫酸カルシウム 10〜90重量%
B)酢酸ビニル樹脂 5〜40重量%
C)無機充填材 1〜40重量%
D)沸点が110℃以上のアルコール類 1〜30重量%
E)非イオン系界面活性剤 0.001〜5重量%
から成ることを特徴とする歯科用水硬性仮封材組成物である。
本発明に係る歯科用水硬性仮封材組成物は、初期の硬化性に優れ、封鎖性が高く、口腔内での充填操作が容易な歯科用水硬性仮封材組成物である。
本発明に係る歯科用水硬性仮封材組成物は、A)硫酸カルシウム10〜90重量%と,B)酢酸ビニル樹脂5〜40重量%と,C)無機充填材1〜40重量%と,D)沸点が110℃以上のアルコール類1〜30重量%と,E)非イオン系界面活性剤0.001〜5重量%とで構成される歯科用水硬性仮封材組成物である。
A)成分は、硫酸カルシウムであり歯科用水硬性仮封材としての基本的な硬化機構を与えると共に強度を与える成分である。硫酸カルシウムに唾液などの水分が反応して硬化する。
A)成分の硫酸カルシウムの含有量は歯科用水硬性仮封材組成物中に10〜90重量%であることが必要である。10重量%未満であると歯科用水硬性仮封材組成物に必要な硬化反応を与えることができず強度も不足する。90重量%を超えると硬化前のペーストが硬くなりすぎて歯質への充填操作が難しくなる。中でも30〜70重量%の範囲であると十分な硬化反応を示し粘着性や強度も適正となるので好ましい。硫酸カルシウムは、α型半水石膏,β型半水石膏,二水石膏,無水石膏等が例示できる。これらは2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
B)成分の酢酸ビニル樹脂は、歯科用水硬性仮封材組成物に可塑性を与える基材として配合される。また後述するD)成分と共に用いることで歯質への粘着性を高める。酢酸ビニル樹脂の例としては、ポリ酢酸ビニル,エチレン酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニルと塩化ビニル共重合体,酢酸ビニルとアクリロニトリルとの共重合体,ビニルエステルと塩化ビニルとの共重合体,アクリル酸,マレイン酸,フマル酸,クロトン酸及びそれらのエステルとの共重合体等が例示できる。これらは2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
B)成分の配合量は、歯科用水硬性仮封材組成物中に5〜40重量%であることが必要であり、5重量%未満であると歯科用水硬性仮封材組成物に必要な可塑性がなくなり、付形性や充填操作性が悪くなる。40重量%を超えると強度が低下し、更に充填器具に付着しすぎて歯質への充填操作性が悪くなる。中でも10〜30重量%の範囲であると適正な付形性や充填操作性が得られるため好ましい。
C)成分の無機充填材は、歯科用水硬性仮封材組成物に強度を与える。無機充填材としては、例えば、酸化亜鉛,シリカ,シリカ微粉末,硫酸バリウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,フッ化イットリビウム,バリウムガラス,アルミノシリケートガラスが挙げられる。その含有量は1〜40重量%である。1重量%未満であると強度が低くなり歯科用水硬性仮封材組成物の付形性も不十分となる。40重量%を超えると脆くなる。中でも10〜30重量%の範囲であると強度が適正となるので好ましい。
D)成分の沸点が110℃以上のアルコール類は、歯科用水硬性仮封材組成物をペースト化させるための成分である。また、歯科用水硬性仮封材としての初期の硬化性を向上させるための成分でもある。歯科用水硬性仮封材組成物に適度な親水性を持った有機溶媒を加えることで、親水生作用を得ることができ水分がペースト表面にはじかれることなく早期に浸透してペースト内部にも水分がより速く安定して浸透,拡散する。このため吸水速度が向上し初期の硬化性が向上する。後述するE)成分と共に用いることで更にその効果が向上する。
D)成分のアルコール類としては沸点が110℃以上のものであれば水酸基の数が1個のアルコール類でも2個以上の多価アルコール類のいずれにおいても限定せず使用することができる。好適なものを具体的に示すと、1−ブタノール,t−ブチルアルコール,1−ペンタノール,イソアミルアルコール,s−アミルアルコール,t−アミルアルコール,1−ヘキサノール,2−エチル−1−ブタノール,4−メチル−2−ペンタノール,イソヘキシルアルコール,メチル−1−ペンタノール,s−ヘキサノール,1−ヘプタノール,イソヘプチルアルコール,2,3−ジメチル−1−ペンタノール,1−オクタノール,2−エチルヘキサノール,イソオクチルアルコール,2−オクタノール,3−オクタノール,1−ノナノール,イソノニルアルコール,3,5,5−トリメチルヘキサノール,1−デカノール,イソデシルアルコール,3,7−ジメチル−1−オクタノール,1−ドデカノール,イソドデシルアルコール,炭素数6〜11までの高級アルコール,エチレングリコール,トリエチレングリコール,テトラエチレングリコール,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,1,3プロパンジオール,ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,ブタンジオール,1,5−ペンタンジオール,2―メチル−2,4ペンタジオール,2,2,4−トリメチル−1,3−ヘキサンジオール,2−エチル−1,3−ヘキサンジオール,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールモノビニルエーテル,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル,エチレングリコールモノイソプロピルエーテル,エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル,エチレングリコールモノイソブチルエーテル,エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル,エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル,エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル,エチレングリコールモノ−2,4−ヘキサジエンエーテル,エチレングリコールモノ−2,6,8−トリメチル−4−ノニルエーテル,エチレングリコールモノフェニルエーテル,エチレングリコールモノメチルフェニルエーテル,エチレングリコールジメチルエーテル,エチレングリコールジエチルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル,ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル,ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル,ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル,ジエチレングリコールジメチルエーテル,ジエチレングリコールジビニルエーテル,ジエチレングリコールエチルビニルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルフェニルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル,トリエチレングリコールモノビニルエチルエーテル,テトラエチレングリコールメチルエーテル,テトラエチレングリコールブチルエーテル,テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル,テトラエチレングリコールジエチルエーテル,ポリエチレングリコールメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,プロピレングリコール−n−モノプロピルエーテル,プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル,プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル,プロピレングリコールブトキシエチルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,ジプロピレングリコールモノメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル,プロピレングリコールアリルエーテル,ジプロピレングリコールアリルエーテル,トリプロピレングリコールアリルエーテル,プロピレングリコールイソブチルエーテル,ジプロピレングリコールイソブチルエーテル,トリプロピレングリコールイソブチルエーテル,ブチレングリコールモノメチルエーテル,ブチレングリコールモノエチルエーテル,ブチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどが例示できる。これらのアルコール類は2種類以上組み合わせて使用しても良い。
D)成分の配合量は、歯科用水硬性仮封材組成物中に1〜30重量%であり、1重量%未満であると親水性の効果が充分ではなく、歯科用水硬性仮封材組成物に必要なペースト状とできないため充填操作性が悪くなる。30重量%を超えると硬化速度が遅くなり初期の硬化性が低下してしまう。中でも2〜20重量%の範囲であると適正な硬化性が得られ充填操作が最も良くなるので好ましい。
E)成分である非イオン系界面活性剤は、水分との相溶性を高め、前述したD)成分と共に用いることで初期の硬化性を高める。このE)成分として用いる非イオン系界面活性剤としては、親油基であるアルキル基に親水基が組み合わさった非イオン系界面活性剤が適当である。好適な非イオン系界面活性剤を具体的に示すと、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキレンエーテル,ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどの中でエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加モル数が1〜30であるもの、アルキル基の炭素数が12〜22であるエーテル型のもの、ソルビタン脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリグリセリン脂肪酸エステル,エチレングリコール脂肪酸エステル,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル,プロピレングリコール脂肪酸エステル,ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどの中で多価アルコールと炭素数が12〜22である脂肪酸の部分エステル型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンマンニタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステルなどの中でエチレンオキサイドの付加モル数が1〜30で脂肪酸の炭素数が12〜22であるエーテルエステル型のもの、ポリオキシエチレンヒマシ油,硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンラノリン誘導体,ポリオキシエチレンミツロウ誘導体などの中で付加モル数が1〜30のエチレンオキサイドとのエステル型のものを挙げることができる。これらの非イオン系界面活性剤は2種以上を組み合わせて用いても良い。
E)成分の配合量は歯科用水硬性仮封材組成物中に0.001〜5重量%であり、0.001重量%未満であると親水性の効果が充分ではない。一方、5重量%を超えると歯科用水硬性仮封材組成物の保存安定性の低下を引き起こす。中でも0.01〜2重量%の範囲であると保存安定性が得られ、適正な親水性となるので好ましい。
なお、本発明に係る歯科用水硬性仮封材組成物においては、少なくとも上記のA)〜E)成分からなり、本発明の目的を損なわない限り、その他の任意の成分として、必要に応じて塩酸塩,硫酸塩等の硬化促進剤,炭化水素類,高級脂肪酸類,エステル類等の油性成分,各種の無機あるいは有機の着色剤,抗菌材,香料等を含有しても良い。
表1に示した配合に従い各成分を計量し、混練機にて混練して各実施例及び各比較例に用いた歯科用水硬性仮封材組成物を作製した。なお、比較例3には、従来の歯科用水硬性仮封材組成物(商品名:ジーシー キャビトン,株式会社ジーシー社製)を用いた。
『初期硬化強度』
歯科用水硬性仮封材組成物の初期の硬化性を評価するため、歯科用水硬性仮封材組成物をφ10mm,高さ5mmの金属製リングに充填し,37℃水中に1時間浸漬させた後、試験片を万能試験機(商品名:オートグラフAG−IS,島津製作所製)に断面積1mm2の針(ビカー針)を装着し,クロスヘッドスピード1mm/min.にて針入させたときの表面強度を測定した。
『操作性の確認』
歯科用水硬性仮封材組成物の操作性を評価するため、牛歯に直径約3mm,深さ2mm程度の窩洞を形成し、その窩洞へ歯科用水硬性仮封材組成物を歯科用インスツルメントを用いて充填した。その際の操作性を下記の基準で評価した。
○:歯科用水硬性仮封材が、歯科用インスツルメントへは付着しないで充填できた。
△:歯科用水硬性仮封材が、歯科用インスツルメントに付着するが充填できた。
×:歯科用水硬性仮封材が、歯科用インスツルメントに付着してしまい歯質へは充填できなかった。
『密着性の評価』
密着性の評価をするため、歯根模型(商品名:歯根管模型,株式会社ニッシン社製)の根管を拡大した根管に、歯科用インスツルメントを用いて各実施例及び各比較例に示した歯科用水硬性仮封材組成物を充填した時の充填の後の密着性を評価した。評価は、根管壁に隙間無く密着できた場合を○とし、僅かに隙間ができた場合を×とした。
Figure 2011213608
表1から明らかなように、実施例に示した本発明に係る歯科用水硬性仮封材組成物は、更に比較例1,2,3と比較して初期の硬化性が優れ、操作性が良く、密着性にも優れていることが確認できた。

Claims (1)

  1. A)硫酸カルシウム 10〜90重量%
    B)酢酸ビニル樹脂 5〜40重量%
    C)無機充填材 1〜40重量%
    D)沸点が110℃以上のアルコール類 1〜30重量%
    E)非イオン系界面活性剤 0.001〜5重量%
    から成ることを特徴とする歯科用水硬性仮封材組成物。
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