JP2011211945A - ポリオール脱水素酵素組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】バイオセンサに適用した際に精度のバラツキを最小限に抑えることができるポリオール脱水素酵素組成物の提供。
【解決手段】補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む、ポリオール脱水素酵素組成物である。
【選択図】なし
【解決手段】補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む、ポリオール脱水素酵素組成物である。
【選択図】なし
Description
本発明は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素(以下、「PQQ依存性PDH」または単に「ポリオール脱水素酵素」とも称する)を含む、酵素組成物およびそれを用いたバイオセンサに関する。
試料中の特定成分を簡易に定量する方法として、様々なバイオセンサが提案されているが、代表的なものとしては、絶縁性の基板上に少なくとも作用極および対極からなる電極系を形成し、この電極系上に、電極系に接して親水性高分子と酸化還元酵素と電子伝達体を含む反応層を形成したものがある。
このようにして作製されたバイオセンサの反応層に、基質を含む試料液を供給すると、反応層が試料液によって溶解することにより、酵素と基質が反応し、これに伴って電子伝達体が還元され、この還元された電子伝達体を電気化学的に酸化し、得られる酸化電流値から試料液中の基質濃度を定量することができる(例えば、特許文献1)。
かかる酵素としては、PQQ依存性PDHを用いる方法が知られている。PQQ依存性PDHは、バクテリアの細胞膜に存在し、グルコノバクター属の細菌などから抽出、精製する方法が知られている。かような酵素を用いてグリセロールやソルビトール、マンニトールなどの定量に利用されている。
しかしながら、PQQ依存性PDHをバイオセンサに適用する際に、場合によってはバイオセンサの測定値にバラツキが生じるという問題があった。
そこで本発明は、バイオセンサに適用した際に精度のバラツキを最小限に抑えることができるポリオール脱水素酵素組成物を提供することを目的とする。
本発明のさらに他の目的は、かかるポリオール脱水素酵素組成物を用いたバイオセンサを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った。その結果、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;
下記式1または式2:
下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む、ポリオール脱水素酵素組成物を提供することによって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む、ポリオール脱水素酵素組成物を提供することによって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
また、絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成されてなる、少なくとも作用極および対極を含む電極と、前記電極上に形成されてなる試料供給部と、を有するバイオセンサであって、前記試料供給部が、上記ポリオール脱水素酵素組成物と、電子伝達体と、を含む反応層を有する、バイオセンサを提供することによって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明によれば、バイオセンサに適用した際に精度のバラツキを最小限に抑えることができるポリオール脱水素酵素組成物を提供することができる。
また、かかるポリオール脱水素酵素組成物を用いたバイオセンサを提供することができる。
本発明は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;
下記式1または式2:
下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む、ポリオール脱水素酵素組成物。である(以下、「本発明のポリオール脱水素酵素組成物」とも称する)。
以下、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を、好ましい実施形態を挙げることによって説明する。本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、バイオセンサに用いられることが好ましい。よって、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を適用した本発明のバイオセンサの好ましい実施形態を説明する。
本発明のバイオセンサは、絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成されてなる、少なくとも作用極および対極を含む電極と、前記電極上に形成されてなる試料供給部と、を有するバイオセンサであって、前記試料供給部が、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、電子伝達体と、を含む反応層を有する。
以下、図面を参照しながら本発明のバイオセンサの実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、反応層が1つである本発明のバイオセンサの第1実施形態を示す分解斜視図である。図2は、図1のバイオセンサの断面図である。図3は、反応層が2つである本発明のバイオセンサの第2実施形態を示す分解斜視図である。図4は、図3のバイオセンサの断面図である。
本発明のバイオセンサの第1実施形態においては、反応層は1つである(図1、2参照)。本発明のバイオセンサの第2実施形態においては、反応層は2つである(図3、図4参照)。反応層が1つである本発明のバイオセンサの第1実施形態においては、かかる反応層は、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、電子伝達体と、を含む。反応層が2つである本発明のバイオセンサの第2実施形態においては、かかる反応層は、電極上に形成される第一の反応層と、前記第一の反応層と分離されて形成されてなる第二の反応層を有し、前記第一の反応層が、前記本発明のポリオール脱水素酵素組成物および前記電子伝達体の一方を含み、かつ、前記第二の反応層が他方を含む。
図1、2が示すとおり、絶縁性基板1(本明細書中、単に「基板」とも称する)の上に、作用極2、参照極3および対極4が形成されている。さらに、接着剤6が、絶縁性基板1上の端部に設置される。作用極2、参照極3および対極4は、バイオセンサ外部を電気的に接続するための手段として機能している。作用極2、参照極3および対極4は、例えば、スクリーン印刷・スパッタリング法などの従来公知の知見を適宜参照し、あるいは組み合わせて、所望のパターンの電極を形成することができる。
そして、絶縁性基板1上に形成された作用極2、参照極3および対極4には電極を露出するように、絶縁層5が形成されている。絶縁層5は、各電極間の短絡を防止するための絶縁手段として機能する。絶縁層の形成方法についても特に制限はなく、スクリーン印刷法や接着法などの従来公知の手法により形成されうる。
また、絶縁層5を挟むように、作用極作用部分2−1、参照極作用部分3−1および対極作用部分4−1が形成されている。そして、作用極作用部分2−1、参照極作用部分3−1および対極作用部分4−1上には、反応層10が形成されている。なお、図1では、反応層10と、前記反応層10とカバー7との間に位置する空間部Sと、が試料供給部を形成する。この反応層10は、少なくとも、電子伝達体と、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、を含む。この作用部分(2−1、3−1、4−1)は、バイオセンサの使用時において、反応層10中の試料に電位を印加するための電位印加手段および試料中に流れる電流を検出するための電流検出手段として機能する。なお、作用部分(2−1、3−1、4−1)を含めて作用極2、参照極3および対極4と称する場合もある。作用極2および対極4は、バイオセンサの使用時に一対となって、反応層10中の試料に電位を印加した際に流れる酸化電流(応答電流)を測定するための電流測定手段として機能する。バイオセンサの使用時には、参照極3を基準として、対極4と、作用極2との間に所定の電位が印加される。
本実施形態のバイオセンサは、基板1に設置された接着剤(両面テープ)6を介して反応層10を覆うようにカバー7が接着されることにより構成される。なお、接着剤(両面テープ)6は、電極側に設置してもよいし、カバー7側のみに設置してもよいし、両方に設置してもよい。
図3、4に示すとおり、基本的な構造は、図1、2で示す第1実施形態のバイオセンサと同様であるが、第1実施形態のバイオセンサとの相違点は、反応層を2つ(第一の反応層8と、第二の反応層9)設ける点である。この際、第一の反応層8と、第二の反応層9と、前記第一の反応層8と前記第二の反応層9との間に配置される空間部Sと、が試料供給部を形成する。前記第一の反応層8が、本発明のポリオール脱水素酵素組成物および前記電子伝達体の一方を含み、かつ、前記第二の反応層9が他方を含む。換言すれば、第2実施形態のバイオセンサにおいては、本発明のポリオール脱水素酵素組成物および前記電子伝達体が同時に同一の反応層に含まれない。具体的には、第一の反応層8に電子伝達体が含まれれば、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は含まれず、前記第二の反応層9に、本発明のポリオール脱水素酵素組成物が含まれば、電子伝達体が含まれない。なお、便宜的に、カバー7側に形成される方を第一の反応層8と称し、電極側に形成される方を第二の反応層9と称する。なお、第一の反応層8は、両端に接着剤(両面テープ)6aが設置されたカバー7上の両端の隙間に形成されてなる。
第2実施形態のバイオセンサは、第二の反応層9が形成されている基板1に接着された接着剤(両面テープ)6bと、第一の反応層8が形成されているカバー7に接着した接着剤(両面テープ)6aと、が互いに貼り合わされることにより、構成されてなる。なお、接着剤(両面テープ)6は、基板1側のみに設置してもよいし、カバー7側のみに設置してもよい。
以下、各構成要件を詳説する。なお、上記の通り、第1実施形態のバイオセンサの構造と、第2実施形態のバイオセンサの構造の相違点は、反応層が1つだけであるか、反応層が2つ(第一の反応層8と、第二の反応層9)であるか、である。それ以外の点は同様であるので、特に明記しない限り、下記に記載する構成要件の具体的な説明は、第1実施形態のバイオセンサにも、第2実施形態のバイオセンサにも適用される。また、本明細書中において、各構成要件の含有量を説明する際に「1センサ」という用語を用いることがあるが、本明細書における「1センサ」とは、一般的なバイオセンサの大きさである、試料供給部に供給される試料が「0.1〜20μl(好ましくは2μl程度)」であるものを想定している。よって、それよりも小さかったり、大きかったりするバイオセンサにおいては、各構成要件の含有量を適宜調整することによって制御することができる。
<絶縁性基板>
本発明において使用される絶縁性基板1は、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。一例を挙げると、プラスチック、紙、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。また、絶縁性基板1の形状やサイズについては、特に制限されない。
本発明において使用される絶縁性基板1は、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。一例を挙げると、プラスチック、紙、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。また、絶縁性基板1の形状やサイズについては、特に制限されない。
プラスチックとしても、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。一例を挙げると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル樹脂などが挙げられる。
<電極>
本発明の電極は、少なくとも作用極2と対極4を含む。
本発明の電極は、少なくとも作用極2と対極4を含む。
本発明の電極は、試料(測定対象物)と、本発明のポリオール脱水素酵素組成物との反応を電気化学的に検出できるものであれば特に制限されず、例えば、カーボン電極、金電極、銀電極、白金電極、パラジウム電極などが挙げられる。耐腐食性およびコストの観点からは、カーボン電極が好ましい。
本発明においては、作用極2と対極4のみの二電極方式であっても、参照極3をさらに含む三電極方式であってもよい。なお、電位の制御がより高感度で行われるという観点からは、二電極方式よりも三電極方式が好ましく用いられうる。また、その他、液量を感知するための感知電極などを含んでいてもよい。
また、試料供給部と接触する部分(作用部分)は、それ以外の電極部分と構成材料が異なってもよい。例えば、参照極3が、カーボンからなっている場合に、参照極作用部分3−1が、銀/塩化銀からなっていてもよい。なお、バイオセンサは、一般的に使い捨てであるため、電極としては、ディスポーザブル電極を用いるとよい。
<絶縁層>
絶縁層5を構成する材料は特に制限されないが、例えば、レジストインク、PETやポリエチレン等の樹脂、ガラス、セラミックス、紙などにより構成されうる。好ましくは、PETである。
絶縁層5を構成する材料は特に制限されないが、例えば、レジストインク、PETやポリエチレン等の樹脂、ガラス、セラミックス、紙などにより構成されうる。好ましくは、PETである。
<試料供給部>
上記の通り、第1実施形態のバイオセンサにおいて、試料供給部は、電子伝達体と、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、を含む反応層10を有する。
上記の通り、第1実施形態のバイオセンサにおいて、試料供給部は、電子伝達体と、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、を含む反応層10を有する。
第1実施形態のバイオセンサのような反応層を1つとする形態においては、簡便にバイオセンサを作製できる点で好ましい。また、大量生産時における製造コストが安くなる点で好ましい。
反応層10の厚さにも特に制限はないが、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.05〜40μm、さらに好ましくは0.1〜25μmにするとよい。この際の、厚みの制御方法としても特に制限はないが、例えば、滴下する量を適宜調節することにより、制御することができる。
一方で、第2実施形態のバイオセンサにおいては、前記試料供給部が、電子伝達体と、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、を含む反応層を有し、前記反応層が、電極上に形成される第一の反応層8と、前記第一の反応層と分離されて形成されてなる第二の反応層9を有し、前記第一の反応層8が、本発明のポリオール脱水素酵素組成物および前記電子伝達体の一方を含み、かつ、前記第二の反応層9が他方を含む。
第2実施形態のバイオセンサのような反応層を2つとする形態においては、本発明のポリオール脱水素酵素組成物および電子伝達体を別々の反応層に含有させることができるため、電子伝達体と、本発明のポリオール脱水素酵素組成物とが接触することによる保存中の劣化を防ぐことができる点で好ましい。
また、第一の反応層8、第二の反応層9それぞれの厚さにも特に制限はないが、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.025〜10μm、さらに好ましくは0.05〜8μmにするとよい。ここで、第一の反応層8と、第二の反応層9の厚さは、同じであっても異なってもよい。この際の、厚みの制御方法としても特に制限はないが、例えば、滴下する量を適宜調節することにより、制御することができる。なお、第一の反応層8と、第二の反応層9との、離隔距離には特に制限はないが、好ましくは0.05〜1.5mm、より好ましくは0.075〜1.25mm、さらに好ましくは0.1〜1mmである。0.05mm未満であると、保存中に本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、電子伝達体が接触する場合がある。また、1.5mmを超えると、毛細管現象が起こりにくく、試料が反応層に吸引されない場合がある。離隔距離は、接着剤の厚みを制御することにより、制御することができる。つまり、接着剤は、第一の反応層8と、第二の反応層9と、を離隔される、スペーサとしての役割をも担う。
<本発明のポリオール脱水素酵素組成物>
本発明における反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)は、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含む。
本発明における反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)は、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含む。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む。
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む。
ポリオール脱水素酵素は細胞膜結合型酵素であり、疎水性が高いために水溶媒系では不安定である。このため、溶液中におけるポリオール脱水素酵素の凝集を防ぎ、ポリオール脱水素酵素の安定性を向上させる目的で、酵素の安定化剤として界面活性剤を使用することが知られている。確かに酵素の安定化剤として界面活性剤を使用すると、酵素の保存安定性は向上する。
一方で、本発明者らは、かかる保存安定性が向上した酵素をバイオセンサに適用した場合であっても、バイオセンサの精度が不安定である場合があることを見出した。
本発明者らは、かかる問題の原因を追究すべく鋭意研究を行った結果、PQQ依存性PDHに、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有させたポリオール脱水素酵素組成物を提供することによって、バイオセンサに適用した際にも、測定結果のバラツキを抑制することができることを見出した。
なお、バラツキが生じていたメカニズムは必ずしも明らかではないが、酵素の安定化剤として使用していた界面活性剤が原因ではないかと考えられる。すなわち、従来、安定化剤として使用していた界面活性剤(特に、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(オキシエチレン数=9,10)[(polyoxyethylene-p-t-octylphenol;TritonX-100)]など)が、ポリオール脱水素酵素組成物に少しでも含まれていると、特にバイオセンサの試料として全血を用いた場合、かかる界面活性剤の溶血作用によって、溶血が進んでしまい、結果として、バイオセンサの測定結果のバラツキを生じさせてしまうということがあるのではないかと考えられる。なお、本発明は、上記メカニズムによっては限定されない。
本発明においては、本発明の構成を採用することによって、バイオセンサに適用した際に精度を向上させうる酵素組成物を簡便に提供することができる。そして、かかる組成物をバイオセンサに適用することによって、精度に信頼性をおけるバイオセンサを提供することができる。
以下、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を構成する構成要件について詳説する。
(補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素)
本発明において、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素(PQQ依存性PDH)は、いずれのポリオールを基質としてもよく、2つ以上の水酸基を有するアルコール(糖アルコールを含む)であれば、特に制限されない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ラクチトールなどの二糖由来アルコール、グリセロールなどのトリオール、エリスリトールなどのテトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトールなどのペンチトール、マンニトール、ソルビトールなどのヘキシトール、イノシトールなどのシクリトールなどが挙げられる。中でも好ましくは、グリセロール(ピロロキノリンキノン依存性グリセロール脱水素酵素)、アラビトール(ピロロキノリンキノン依存性アラビトール脱水素酵素)、およびマンニトール(ピロロキノリンキノン依存性マンニトール脱水素酵素)を基質とし、より好ましくはグリセロール(ピロロキノリンキノン依存性グリセロール脱水素酵素)を基質とする。
本発明において、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素(PQQ依存性PDH)は、いずれのポリオールを基質としてもよく、2つ以上の水酸基を有するアルコール(糖アルコールを含む)であれば、特に制限されない。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ラクチトールなどの二糖由来アルコール、グリセロールなどのトリオール、エリスリトールなどのテトリトール、アラビトール、キシリトール、リビトールなどのペンチトール、マンニトール、ソルビトールなどのヘキシトール、イノシトールなどのシクリトールなどが挙げられる。中でも好ましくは、グリセロール(ピロロキノリンキノン依存性グリセロール脱水素酵素)、アラビトール(ピロロキノリンキノン依存性アラビトール脱水素酵素)、およびマンニトール(ピロロキノリンキノン依存性マンニトール脱水素酵素)を基質とし、より好ましくはグリセロール(ピロロキノリンキノン依存性グリセロール脱水素酵素)を基質とする。
本発明に用いられるPQQ依存性PDHとしては、従来公知の酵素をいずれも好ましく使用することができる。該酵素は例えば、グルコノバクター属、シュードモナス属など、様々な細菌が生成することが知られている。本発明では、これらのPQQ依存性PDHを産生することができる菌(以下、「PQQ依存性PDH産生菌」とも称する)が生成するいずれのPQQ依存性PDHも好適に使用することができる。これらの中でも特に、グルコノバクター属に由来するPQQ依存性PDHを好適に使用することができる。さらに、入手の容易さから、グルコノバクター・アルビダス(Gluconobacter albidus)NBRC 3250、3273、103509、103510、103516、103520、103521、103524;グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)NBRC 3267、3274、3275、3276;グルコノバクター・フラテウリ(Gluconobacter frateurii)NBRC 3171、3251、3253、3262、3264、3265、3268、3270、3285、3286、3290、16669、103413、103421、103427、103428、103429、103437、103438、103439、103440、103441、103446、103453、103454、103456、103457、103458、103459、103461、103462、103465、103466、103467、103468、103469、103470、103471、103472、103473、103474、103475、103476、103477、103482、103487、103488、103490、103491、103493、103494、103499、103500、103501、103502、103503、103504、103506、103507、103515、103517、103518、103519、103523;グルコノバクター・ジャポニカス(Gluconobacter japonicus)NBRC 3260、3263、3269、3271、3272;グルコノバクター・カンチャナブリエンシス(Gluconobacter kanchanaburiensis)NBRC 103587,103588;グルコノバクター・コンドニ(Gluconobacter kondonii)NBRC 3266;グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)NBRC 3130、3189、3244、3287、3292、3293、3294、3462、12528、14819;グルコノバクター・ロセウス(Gluconobacter roseus)NBRC 3990;グルコノバクター・エスピー(Gluconobacter sp)NBRC 3259、103508;グルコノバクター・スファエリカス(Gluconobacter sphaericus)NBRC 12467;グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)NBRC 3172、3254、3255、3256、3257、3258、3289、3291、100600、100601等を使用することができる。
また、PQQ依存性PDH産生菌であれば、これらの自然突然変異株または人為突然変異株を使用してもよい。人為突然変異処理方法は、当業者に周知の方法と同様にしてもしくは当業者に周知の方法を適宜修飾してまたはこれらの方法を適宜組合せて適用することができる。このような微生物の代表菌株として、グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)が使用され、特にグルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)NBRC 3291が好ましく使用される。
(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル)
本発明のポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、下記式1または式2:
本発明のポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、で示される。
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルのHLB値にも特に制限はないが、本発明の所期の目的を効果的に達成するとの観点から、好ましくは8〜20であり、より好ましくは9〜19であり、さらに好ましくは10〜18である。なお、本明細書においては、HLB値は、下記方法によって算出される実測値を採用するものとする。
実測HLB値の測定には、乳化剤(界面活性剤)の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(NLKKOL SS−10)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(NLKKOL TS−10)を組み合わせて使用する。被乳化物には流動パラフィンを使う。流動パラフィンは上記2種の乳化剤で乳化し、最適な乳化剤の割合を求め、流動パラフィンの所要HLB値(乳化されるHLB値)を求める。計算式は、以下の通りである。
通常流動パラフィンの所要HLB値は10.1〜10.3程度である。
次に、未知の乳化剤(界面活性剤)の測定は、HLB値を求めた流動パラフィンを使って測定する。未知の乳化剤が親水性であればSS−10と組み合わせ、親油性であれば、TS−10と組み合わせて、流動パラフィンを乳化し、安定性のあるところで最適割合を求め、未知の乳化剤のHLB値をxとして前記計算式にあてはめて算出する。
乳化の処方は流動バラフィン40%、使用する乳化剤は油相の10%、すなわち全体の4%、水が56%で行う。乳化剤4%は2つの乳化剤の全量であり、乳化剤の全量は一定にしておき、割合のみを変えて乳化できるところまで乳化する。乳化剤の割合は0.1%ずつ変えて行う。できたエマルションは水が蒸発しないようにふたをする。全部乳化が終わったならばできたエマルションをおのおの1%に希釈し、共栓付試験管に実質的に同量を取り、一昼夜放置し、クリーミング量、白濁度、下層の水分離などから判定し、最も安定性のよいものを最適割合とする。乳化剤最適割合の%を、前記式に入れて流動パラフィンのHLBを算出する。未知の界面活性剤も同じ方法で乳化剤の割合を変えて乳化し、最適割合を出して算出する。
ただし、本発明のポリエチレングリコール脂肪酸エステルのようにエステル型界面活性剤は、グリフィン法による値と、上記の方法によって算出する値とでは、実質的に差異はないので、本明細書におけるHLB値は、グリフィン法による値を採用してもよい。
R1〜R3におけるアルキル基の炭素数は、5〜30であるが、好ましくは7〜25であり、より好ましくは8〜22であり、さらに好ましくは10〜20である。アルキル基の炭素数がいくつであっても、HLB値が8〜20となるように選択することが好ましい。
炭素数5〜30のアルキル基としては特に制限はないが、ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、2−エチルヘキシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、イソステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基である。この場合も、HLB値が8〜20となるように選択することが好ましい。なお、市販品を購入する場合の入手性を考慮すると、前記化学式中のR1−CO、R2−CO、R3−COで表される基として、ラウロイル基(C11H23−CO−基)、ステアロイル基(C17H35−CO−基)を有するものなどが好適であるが、無論、これらに制限されない。
R1〜R3におけるアルケニル基の炭素数は、5〜30であるが、好ましくは7〜25であり、より好ましくは8〜22であり、さらに好ましくは10〜20である。アルキル基の炭素数がいくつであっても、HLB値が8〜20となるように選択することが好ましい。
炭素数5〜30のアルケニル基としては特に制限はないが、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基である。なお、市販品を購入する場合の入手性を考慮すると、前記化学式中のR1−CO、R2−CO、R3−COで表される基として、オレオイル基(C17H34−CO−基)を有するものなどが好適であるが、無論、これらに制限されない。
nは、10〜150の整数であるが、溶解性および溶解時に水に透明に溶解するとの観点で、好ましくは10〜120であり、より好ましくは10〜100であり、さらに好ましくは10〜80であり、さらに好ましくは10〜60であり、特に好ましくは10〜55である。10未満であると、溶解時に水に透明に溶解しない虞がある。150を超えると、酵素組成物を再溶解する際、溶けにくい又は、溶解後の粘度が高すぎる虞がある。
上記を纏めると、nが、好ましくは10〜120であり、より好ましくは10〜100であり、さらに好ましくは10〜80であり、さらに好ましくは10〜60であり、特に好ましくは10〜55である、ポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールジイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールジラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールモノオレイン酸エステル、ポリエチレングリコールジオレイン酸エステルなどが好ましい。
これらのポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、従来公知の方法を適宜参照し、あるいは組み合わせて合成して準備することができる。また、市販品を購入して準備してもよい。市販品としては、日光ケミカルズ株式会社の、NIKKOL MYS−25V(nが25であるポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル)、NIKKOL MYS−40V(nが40であるポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル)、NIKKOL MYS−55V(nが55であるポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル)などが例示できる。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、液状、乳液状等の溶液形態であっても、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体形態であっても、ペースト状等の半固体形態であってもよい。中でも、長期保存の安定性の理由で、本発明の効果が顕著に発揮されることから、固体状の形態であることが好ましい。溶液形態または半固体形態である本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、適当量の緩衝液等で調製されることによって準備してもよいし、また、固体形態である本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、かかる溶液形態または半固体形態である本発明のポリオール脱水素酵素組成物を従来公知の方法(例えば、凍結乾燥、スプレードライ)で乾燥させることによっても準備することができる。また、後述する「本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法」により得られたものを、そのまま溶液形態で、または、凍結乾燥などの従来公知の乾燥を施して粉末状になったものを用いてもよい。なお、本明細書でいう「半固体形態」とは、「溶液形態」「固体形態」の中間の形態を意味し、溶液形態の中に固体形態が含まれている状態を意味する。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれるポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、特に限定されないが、本発明のポリオール脱水素酵素組成物のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として(対蛋白量あたり)、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜15質量%である。さらに好ましくは0.5〜10質量%である。0.1質量%以上であれば、ポリオール脱水素酵素組成物の保存安定性を向上させることができるとの効果を十分に発揮でき、一方、10質量%以下であれば、全血を用いてポリオール脱水素酵素組成物を溶解させる際、溶血が起こらないとの効果の向上が認められる。また、バイオセンサに適用した際に、精度を有意に向上させることができる。
(緩衝剤)
また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、安定化剤として緩衝剤を含むと好ましい。緩衝剤を添加することにより、pHを酵素に好適な範囲と調節することができ、酵素の保存安定性を向上させることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(Tris)、酢酸、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、グリシン、グリシルグリシン、ホウ酸、またはイミダゾールなどが挙げられる。中でも、低濃度の安定化剤でPQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる点で、グリシルグリシンを使用することが好ましい。グリシルグリシンはアミノ酸系緩衝剤の一種であるが、グリシンなどの他のアミノ酸系緩衝剤やMOPSなどの他のよく知られている緩衝剤を含む酵素組成物に比べて、酵素の残存活性を飛躍的に向上させることができる。これらの緩衝剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、安定化剤として緩衝剤を含むと好ましい。緩衝剤を添加することにより、pHを酵素に好適な範囲と調節することができ、酵素の保存安定性を向上させることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(Tris)、酢酸、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、グリシン、グリシルグリシン、ホウ酸、またはイミダゾールなどが挙げられる。中でも、低濃度の安定化剤でPQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる点で、グリシルグリシンを使用することが好ましい。グリシルグリシンはアミノ酸系緩衝剤の一種であるが、グリシンなどの他のアミノ酸系緩衝剤やMOPSなどの他のよく知られている緩衝剤を含む酵素組成物に比べて、酵素の残存活性を飛躍的に向上させることができる。これらの緩衝剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれる緩衝剤の量は、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる量であれば特に限定されないが、本発明のポリオール脱水素酵素組成物中のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として(対蛋白量あたり)、好ましくは1〜200質量%、より好ましくは2〜150質量%、より好ましくは3〜100質量%、さらに好ましくは4〜75質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。1質量%以上であれば、安定化剤としての効果を十分に発揮でき、一方、200質量%以下であれば、添加に見合う安定化剤としての効果の向上が認められる。また、バイオセンサに適用した際に、精度を有意に向上させることができる。
(pH調整剤)
また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物において、緩衝剤に加えて酸またはアルカリなどのpH調整剤を含むことが好ましい。これにより、酵素組成物のpHを所望の範囲に調整することができる。本発明のポリオール脱水素酵素組成物のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくは6.0〜11.0、より好ましくは6.5〜10.5、最も好ましくは7.0〜10.0である。かようなpH調整剤としては、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリが挙げられる。pH調整剤の含有量は特に制限されず、所望のpHが実現される量を用いればよい。これらのpH調整剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物において、緩衝剤に加えて酸またはアルカリなどのpH調整剤を含むことが好ましい。これにより、酵素組成物のpHを所望の範囲に調整することができる。本発明のポリオール脱水素酵素組成物のpHは、酵素の安定pHから極端に外れていなければよく、好ましくは6.0〜11.0、より好ましくは6.5〜10.5、最も好ましくは7.0〜10.0である。かようなpH調整剤としては、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリが挙げられる。pH調整剤の含有量は特に制限されず、所望のpHが実現される量を用いればよい。これらのpH調整剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
緩衝剤を添加する方法は特に制限されず、緩衝剤をそのまま添加してもよいし、緩衝剤を予め水に溶解させた緩衝剤の形態で添加してもよい。なお、添加された緩衝剤は凍結乾燥等の処理により緩衝剤中の水分が除去され、かような場合には緩衝剤として酵素組成物中に存在する。
本発明で使用される具体的な緩衝剤としては、所望のpHを有するものであれば公知の緩衝剤が適宜使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸緩衝剤、トリス−HCl緩衝剤、酢酸緩衝剤、MOPSもしくはHEPESなどのGOOD緩衝剤、グリシン−NaOH緩衝剤、グリシルグリシン−NaOH緩衝剤やグリシルグリシン−KOH緩衝剤などのアミノ酸系緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、またはイミダゾール緩衝剤などが用いられる。これらの中でも、グリシルグリシン−NaOH緩衝剤またはグリシルグリシン−KOH緩衝剤のようなグリシルグリシン緩衝剤が好ましい。
(非還元糖)
本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、安定化剤としてさらに非還元糖を含むことが好ましい。非還元糖は、PQQ依存性PDHの保存安定性(特に、凍結乾燥時の保存安定性)を向上させ、また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の保存安定性を向上しうる。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、安定化剤としてさらに非還元糖を含むことが好ましい。非還元糖は、PQQ依存性PDHの保存安定性(特に、凍結乾燥時の保存安定性)を向上させ、また、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の保存安定性を向上しうる。
本発明において、「非還元糖」とは、遊離性のアルデヒド基やケトン基をもたないために還元性を有しない糖類を意味する。このような還元糖としては、上記したような性質を有するものであればよく、例えば、還元基同士の結合したトレハロース型小糖類、糖類の還元基および非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールなどがある。より具体的には、スクロース、トレハロース、ラフィノース等のトレハロース型小糖類;アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体等の配糖体;およびアラビトール、キシリトール、ソルビトール等の糖アルコールなどが挙げられる。中でも、トレハロース、ラフィノース、スクロースが好ましく、特にトレハロースおよびラフィノースが好ましい。また、これらのうち、PQQ依存性PDHの基質となる糖アルコールは、好ましくない場合がある。
これらの還元糖は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれる非還元糖の量は、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる量であれば特に制限されないが、本発明の酵素組成物中のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として、好ましくは1〜200質量%、より好ましくは5〜100質量%である。1質量%以上であれば、安定化剤としての効果を十分に発揮でき、一方、200質量%以下であれば、添加に見合う安定化剤としての効果の向上が認められる。
(2価の金属イオン)
本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、安定化剤としてさらに2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物を含んでもよい。本発明に用いられる2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物は、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上させ、また、本発明の組成物の保存安定性を向上させうる。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、安定化剤としてさらに2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物を含んでもよい。本発明に用いられる2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物は、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上させ、また、本発明の組成物の保存安定性を向上させうる。
本発明に用いられる2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物としては、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上でき、かつ、2価のイオンを形成する化合物であれば特に制限されない。上記2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物の具体的な例としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、鉄、銅、コバルト、ニッケル、水銀、鉛および亜鉛などの2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物が挙げられる。中でも、カルシウムを含む化合物およびマグネシウムを含む化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、上記2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物の形態は、PQQ依存性PDHの安定性を向上できるものであれば特に制限されないが、例えば、上記金属のフッ化物、塩化物、臭化物、もしくはヨウ化物などのハロゲン化物、上記金属の硫酸塩、上記金属の硝酸塩、または上記金属のリン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、塩化物、硫酸塩、および硝酸塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、これら2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物は単独で使用されても、また2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらの中で、好ましい具体例は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどである。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物に含まれる2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物の量は、PQQ依存性PDHの保存安定性を向上できる量であれば特に制限されないが、本発明のポリオール脱水素酵素組成物中のPQQ依存性PDHの総質量を100質量%として(対蛋白量あたり)、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。1質量%以上であれば、安定化剤としての効果を十分に発揮でき、一方、30質量%以下であれば、添加に見合う安定化剤としての効果の向上が認められ、また、本発明の組成物を緩衝剤等で再溶解する際、2価の金属イオンを形成する金属を含む金属化合物を溶解できる。
(LPL)
また、本発明のバイオセンサを中性脂肪センサとして使用する場合においては、本発明のポリオール脱水素酵素組成物に、脂質を構成するエステル結合を加水分解する酵素をさらに添加してもよい。かような酵素として、具体的には、リポプロテインリパーゼ(LPL)、リパーゼ、エステラーゼが好適に挙げられる。特に、反応性の観点で、リポプロテインリパーゼ(LPL)が好ましい。
また、本発明のバイオセンサを中性脂肪センサとして使用する場合においては、本発明のポリオール脱水素酵素組成物に、脂質を構成するエステル結合を加水分解する酵素をさらに添加してもよい。かような酵素として、具体的には、リポプロテインリパーゼ(LPL)、リパーゼ、エステラーゼが好適に挙げられる。特に、反応性の観点で、リポプロテインリパーゼ(LPL)が好ましい。
LPLの含有量については特に制限はなく、測定する試料の種類や試料の添加量、使用する親水性高分子の量や電子伝達体の種類などによって適宜選択することができる。一例を挙げると、中性脂肪の分解を迅速に行い、且つ反応層の溶解性を下げない酵素量(酵素活性量)という観点から、1センサあたり、0.1〜1000活性単位(U)、好ましくは1〜500U、より好ましくは10〜100Uである。なお、LPLの活性単位(U)の定義および測定方法は、WO2006/104077に記載の方法による。
また、本発明のバイオセンサにおける、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の含有量については特に制限はなく、測定する試料の種類や試料の添加量、後述する電子伝達体の種類や、後述する親水性高分子の量などによって適宜選択することができる。一例を挙げると、1センサあたり、ポリオール(例えば、グリセロール)の分解を迅速に行い、且つ反応層の溶解性を下げない酵素量(酵素活性量)という観点から、0.01〜100U、好ましくは0.05〜50U、より好ましくは0.1〜10Uの酵素が反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)に含まれるとよい。なお、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の活性単位(U)の定義および測定方法は、特開2006−271257号公報に記載の方法による。
なお、本発明の第2実施形態のバイオセンサにおいては、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、電子伝達体と同じ層に含まれなければ、第一の反応層8、第二の反応層9のいずれの反応層に含まれてもよいが、好ましくは第二の反応層9に含まれる。ここで、一般的なバイオセンサにおいては、電極に酵素が直接接触しないような構成を採る。それは、酵素はタンパク質から構成されているため、電極表面にそれが付着すると、電極表面が不動態化する虞があるからである。そのような一般的な常識があるため、例えば、本発明の第2実施形態のバイオセンサのように、反応層が2つある形態においては、電極に直接接しない第一の反応層8に本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含有させるのが一般と考えられる。しかしながら、本発明の第2実施形態のバイオセンサにおいては、電極に接する側の第二の反応層9に本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含有させると好ましい。それは、本発明においては、本発明のポリオール脱水素酵素組成物が電極に固着することが有意に防止することもできるからである。その理由は、後述する親水性高分子や界面活性剤の機能によるものと考えられる。逆に、第二の反応層9に本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含有させることで電極近傍での、酸化型電子伝達体の還元型電子伝達体への変換効率が高くなる、換言すれば、より試料液中の基質濃度との相関性が高くなるという利点がある。
<本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法>
続いて、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を製造する方法について詳説する。本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;
下記式1または式2:
続いて、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を製造する方法について詳説する。本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;
下記式1または式2:
前記式1および式2中、R1〜R3は、それぞれ独立して、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、nは、10〜150の整数である、
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含ませる方法であれば、特に制限されない。
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含ませる方法であれば、特に制限されない。
例えば、上記PQQ依存性PDH産生菌からPQQ依存性PDHを得る工程の途中で、または、得た後、式1または式2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有させればよい。
ここで、上記PQQ依存性PDH産生菌からPQQ依存性PDHを得るための具体的な方法は特に制限されず、例えば、上記PQQ依存性PDH産生菌を栄養培地にて培養し、該培養物からPQQ依存性PDHを抽出する方法が挙げられる。抽出方法は一般に使用される抽出方法を用いることができ、例えば超音波破砕法、フレンチプレス法、有機溶媒法、リゾチーム法等を用いることができる。抽出したPQQ依存性PDHの精製方法は特に制限されず、例えば、硫安やぼう硝などの塩析法、塩化マグネシウムや塩化カルシウムを用いる金属凝集法、ストレプトマイシンやポリエチレンイミンを用いる除核酸、またはDEAE(ジエチルアミノエチル)−セファロース、CM(カルボキシメチル)−セファロースなどのイオン交換クロマト法などを用いることができる。つまり、このように抽出したPQQ依存性PDHに、式1または式2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有させて本発明のポリオール脱水素酵素組成物としてもよいし、これらの精製方法における工程の途中で、上記式1および式2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを用いてPQQ依存性PDHを精製して、本発明のポリオール脱水素酵素組成物とすればよい。
以下、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法の好ましい実施形態を説明するが、本発明が、下記の実施形態に制限されないのは言うまでもない。
すなわち、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の好ましい実施形態は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を有する細胞から、界面活性剤を含む溶液を用いて、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を可溶化することによって、酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液を得る第1工程と、前記酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液をカラムにアプライした後、前記式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含む溶離液を送液することによって、可溶化時に使用した遊離している界面活性剤を除去する第2工程と、前記除去後、前記カラムから、前記ポリオール脱水素酵素組成物を含む溶液を溶出することによって、ポリオール脱水素酵素活性画分を得る第3工程と、を含む。
上記のように、ポリオール脱水素酵素は細胞膜結合型酵素であり、疎水性が高いために水溶媒系では不安定である。このため、溶液中におけるポリオール脱水素酵素の凝集を防ぎ、ポリオール脱水素酵素の安定性を向上させる目的で、酵素の安定化剤として界面活性剤を使用することが知られている。確かに酵素の安定化剤として界面活性剤を使用すると、酵素の保存安定性は向上する。一方で、本発明者は、かかる保存安定性が向上した酵素をバイオセンサに適用した場合であっても、バイオセンサの精度が不安定である場合があることを見出した。
本発明者らは、かかる問題の原因を追究すべく鋭意研究を行った結果、PQQ依存性PDHに、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有させることによって、バイオセンサに適用した際にも、測定結果のバラツキを抑制することができることを見出した。
なお、バラツキが生じていたメカニズムは必ずしも明らかではないが、酵素の安定化剤として使用していた界面活性剤が原因ではないかと考えられる。すなわち、従来安定化剤として使用していた界面活性剤(特に、TritonX-100など)が、ポリオール脱水素酵素組成物に少しでも含まれていると、バイオセンサの試料として全血を用いた場合、かかる界面活性剤の溶血促進作用によって、溶血が進んでしまい、結果として、バイオセンサの測定結果のバラツキを生じさせてしまうということがあるのではないかと考えられる。
一方で、界面活性剤(特に、TritonX-100など)は、細胞膜から抽出されたPQQ依存性PDHを可溶化させ、それを抽出するためには、工業的な観点からしても非常に好適である。
よって、本発明の製造方法の特に好ましい形態として、ポリオール脱水素酵素組成物を製造する際に、界面活性剤(特に、TritonX-100)を用いながらも、何とか溶血を防止することができないか、鋭意研究を行った。
そこで発明者らは、抽出したPQQ依存性PDHの精製方法の1つの工程として、界面活性剤(特に、TritonX-100)を用いてイオン交換クロマト法を行った後、1〜6回程度の限外ろ過を行うことによって、目的のPQQ依存性PDHは濃縮しながら、界面活性剤(特に、TritonX-100)の減量操作を行うことを試みた。
確かに、減量には成功するのであるが、減量される量が不十分であると、溶血は免れず、結果としてバイオセンサの精度が不安定であることを見出した。
本発明者らは、さらに研究を継続した。その過程の中で、界面活性剤(特に、TritonX-100)だけではなく、別の物質をさらに用いて、どうにか、かかる界面活性剤を無害化することができないかを研究した。その結果に想到した技術的思想が、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを用いるということである。
かような構成であることによって、上述した本発明の所期の効果を奏することができる。かかる所期の効果を奏することができる機構は、必ずしも明らかではないが、酵素と集合体を形成していた界面活性剤を特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルが内包することによって、溶血を促進する界面活性剤が無害化される(つまり、溶血が抑制される)ことが考えられる。また他に、酵素と集合体を形成していた界面活性剤が除去され、新たに、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルと集合体を形成する(つまり、界面活性剤が置き換わる)ことによって、本発明の所期の効果を奏することができるとも考えられる。また、酵素と集合体を形成していない、つまり、遊離している界面活性剤が除去されることは少なくとも本発明の効果に起因していると考えられる。
以下、各工程について詳説する。無論、本発明は各工程の実施形態に限定されない。
(第1工程)
本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法の第1工程は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を有する細胞(特には、細胞膜)から、界面活性剤を含む溶液を用いて、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を可溶化することによって、酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液を得ると好ましい。ここで、かかる集合体は、酵素を界面活性剤が内包するミセルのような状態となっていることが好ましい。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物の製造方法の第1工程は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を有する細胞(特には、細胞膜)から、界面活性剤を含む溶液を用いて、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を可溶化することによって、酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液を得ると好ましい。ここで、かかる集合体は、酵素を界面活性剤が内包するミセルのような状態となっていることが好ましい。
上記のように、本発明に用いられるPQQ依存性PDHとしては、従来公知の酵素をいずれも好ましく使用することができる。該酵素は例えば、グルコノバクター属、シュードモナス属など、様々な細菌が生成することが知られている。かかる菌は、上述のように、いずれの菌も好ましく使用することができるが、ポリオール脱水素酵素の生産量および精製のしやすさの観点で、グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)NBRC 3291が好ましい。
上記PQQ依存性PDHを産生する細菌からPQQ依存性PDHを得るための具体的な方法は、特に制限されず、例えば、かかる細菌を栄養培地にて培養し、該培養物からPQQ依存性PDHを抽出して得る方法が挙げられる。以下、具体的に説明する。
上記PQQ依存性PDHを産生する細菌を培養する培地は、使用菌株が資化しうる炭素源、窒素源、無機物、その他必要な栄養素を適量含むものであれば、合成培地であっても天然培地であってもよい。炭素源としては、例えば、コーンスティーブリカー、グルコース、グリセロール、ソルビトールなどが使用される。窒素源としては、例えば、尿素、ペプトン類(ポリペプトン)、肉エキス、酵母エキスなどの窒素含有天然物や、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウムなどの無機窒素含有物が使用される。無機物としては、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸ナトリウム、塩化カルシウム(2水和物)、硫酸マグネシウムなどが使用される。その他、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。上記の炭素源、窒素源、無機物、およびその他の必要な栄養素は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、かかる培地は、100〜140℃程度で10分〜60分、オートクレーブ処理を行うことが好ましい。
培養は、振とう培養(例えば、120〜160min−1)あるいは通気撹拌培養で行うことが好ましい。培養温度は20〜50℃、好ましくは22〜40℃、最も好ましくは25℃〜35℃である。培養pHは4〜9の範囲、好ましくは5〜8である。pHの調製は、例えば塩酸などで行えばよい。これら以外の条件下でも、使用する菌株が生育すれば実施される。培養期間は通常0.5〜5日が好ましい。かかる培養は、2度〜5度繰り返して行ってもよい。なお、これらのPQQ依存性PDHは、上記培養によって得られた酵素でも、PQQ依存性PDH遺伝子を大腸菌等に形質導入して得られた組換え酵素であってもよい。
次いで、培養により得られた液を遠心分離(500〜20,000×g、5〜30分、0〜10℃)で集菌する。具体的には、集菌されたものを緩衝剤に懸濁して、PQQ依存性PDHを抽出する。抽出方法は一般に使用される抽出方法を用いることができ、例えばフレンチプレス法、超音波破砕法等を用い、菌体を破砕する。続いて、得られた破砕液をさらに遠心分離(500〜20,000×g、5〜30分、0〜10℃)する。得られた上清を超遠心分離(20000を超えて1000000×g、30〜120分、0〜10℃)をすることによって、膜画分を沈殿物として得ることができる。
かかる膜画分の沈殿物から、界面活性剤を含む溶液を用いて、PQQ依存性PDHを可溶化する。
まず、膜画分の沈殿物に、緩衝剤(例えば、濃度2〜200mMのトリス塩酸緩衝液 pH7〜9程度)で懸濁し、終濃度が0.1〜5g/100ml程度になるように、界面活性剤を加えて、界面活性剤を含む溶液を調製し、一定条件下(例えば、0〜10℃で、10分〜48時間)で攪拌を行うことによって、PQQ依存性PDHを可溶化することによって、酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液を得る。
かかる酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液は、超遠心分離を施すことが好ましい。かかる超遠心分離の条件にも特に制限はないが、例えば、20000を超えて1000000×g、30〜120分、0〜10℃で行う。かかる操作によって得た上清を、0.1〜1g/100ml程度界面活性剤を含む緩衝剤(例えば、濃度2〜100mMのトリス塩酸緩衝液 pH7〜9程度)によって一晩透析することも好ましい。
かかる界面活性剤としては、工業的な観点からしても酵素の可溶化に適しているという観点から、ポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(オキシエチレン数=9,10)[(polyoxyethylene-p-t-octylphenol;TritonX-100)]、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖オレイン酸エステルなどが好適である。
上記のようにして、必要に応じて、超遠心分離や透析などが施された酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液を得ることができる。
(第2工程)
第2工程は、前記酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液をカラムにアプライした後、前記式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含む溶離液を送液することによって、可溶化時に使用した遊離している界面活性剤を除去すると好ましい。
第2工程は、前記酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液をカラムにアプライした後、前記式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含む溶離液を送液することによって、可溶化時に使用した遊離している界面活性剤を除去すると好ましい。
本発明で用いられるクロマトグラフィとしては、イオン交換クロマトグラフィ、疎水クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイト、アフィニティークロマトグラフィなどが好適である。
イオン交換クロマトグラフィとしては、界面活性剤の種類に応じて適宜選択することができ、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィなどがあるが、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィである。
クロマトグラフィに用いられるカラムにも特に制限はないが、ResourceQ、ResourceS(例えば、GEヘルスケア製のものが好適である)などが好適である。
前記酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液をカラムにアプライする前に、カラムの平衡化を行っておくことが好ましい。カラムの平衡化を行うための溶液は、緩衝剤(例えば、濃度5〜100mMのトリス塩酸緩衝液 pH7〜9程度)と、0.001〜0.005 g/100mlの前記式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと、を含む溶液であることが好ましい。かかる溶液には、濃度1〜20mMの2価の金属イオン(例えば、硫酸マグネシウム)をさらに添加してもよい。また、本工程で添加せずに、他の工程で必要に応じ添加してもよい。
前記酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液(可溶化膜画分)を上記カラムにアプライし、カラムの平衡化を行った溶液を、カラムの体積の、好ましくは2倍〜30倍、より好ましくは3倍〜20倍の量を送液することによって、少なくとも遊離している可溶化する際に用いた界面活性剤を除去することができる。
つまり、本工程を行うことによって、酵素と集合体を形成していない、つまり、遊離している可溶化する際に用いた界面活性剤が少なくとも除去されることができる。つまり、溶血を引き起こし、バイオセンサの精度の低下に繋がっていると考えられる界面活性剤の量が減り、本発明の効果を奏することができる。また、上記のように多量の前記式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含む溶離液を送液させることによって、酵素と界面活性剤の集合体を特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルが内包することによって、溶血を促進する界面活性剤が無害化される(つまり、溶血が抑制される)ことによって本発明の効果を奏することも考えられる。また、酵素と集合体を形成していた界面活性剤が除去され、新たに、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルと集合体を形成する(つまり、界面活性剤が置き換わる)ことによって本発明の効果を奏することも考えられる。無論、推測に過ぎず、本発明の技術的範囲がこれらによって制限されない。
なお、本工程において、酵素−界面活性剤の集合体を含む溶液(可溶化膜画分)を上記カラムにアプライし、カラムの平衡化を行った溶液を、カラムの体積の、好ましくは2倍〜30倍、より好ましくは3倍〜20倍の量を送液後のパス液の280nmにおける、可溶時に使用した界面活性剤(例えば、TritonX-100)の吸光度が0.01以下であることが好ましい。
なお、第1工程において、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素を可溶化するための界面活性剤として本発明の特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルを用いた場合は、第2工程の「式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含む溶離液を送液することによって、可溶化時に使用した遊離している界面活性剤を除去する」との工程は経ずに、ポリオール脱水素酵素組成物を含む溶液を溶出する第3工程に進んでもよい。第2工程の主たる特徴は、「工業的に可溶化する」ためには好適であるが、「溶血の防止」のためには必ずしも好ましくない、従来酵素の可溶化のために使用されていた界面活性剤(特に、TritonX-100)の過剰分(つまり、遊離している界面活性剤)を除去することであるが、そもそも、かかる界面活性剤を本工程で使用しない場合は、かような操作は不要である。
(第3工程)
第3工程は、前記除去後、前記カラムから前記ポリオール脱水素酵素組成物を含む溶液を溶出することによって、ポリオール脱水素酵素活性画分を得ると好ましい。
第3工程は、前記除去後、前記カラムから前記ポリオール脱水素酵素組成物を含む溶液を溶出することによって、ポリオール脱水素酵素活性画分を得ると好ましい。
溶出の方法にも特に制限されないが、グラジエント法、ステップワイズ法などが挙げられる。
例えば、カラムとして陰イオン交換体(ResourceQ)を用いる場合で、グラジエント法を採用する場合は、開始緩衝液として、0.001〜0.5 g/100mlの前記式1または2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含む1〜100mM 緩衝液(pH7〜12)が使用できる。なお、緩衝液の種類はpHが7〜12のものであれば何でもよい。溶出緩衝液は、開始緩衝液にさらに、塩(NaCl、KCl、MgSO4、CaCl2等)を含む。塩の濃度は、用いる塩にもよるが、0.05〜2Mがよい。なお、前記開始もしくは溶出緩衝液には、必要に応じて0.01〜20mMの2価の金属イオン(MgSO4、CaCl2)や還元剤(2−メルカプトエタノールやジチオスレイトール)を加えてもよい。グラジエント溶出は、カラム体積の1〜50倍量で行うことが好ましい。
(第4工程)
また、本発明の製造方法においては、前記工程により得られたポリオール脱水素酵素活性画分を、脱塩処理することによって、脱塩処理された酵素溶液を得る第4工程を含むと好ましい。かかる工程によって、溶離液に含まれていた塩を脱塩することができる。脱塩処理の方法としては特に制限はないが、透析、限外ろ過、脱塩カラムを使用する方法などが挙げられる。
また、本発明の製造方法においては、前記工程により得られたポリオール脱水素酵素活性画分を、脱塩処理することによって、脱塩処理された酵素溶液を得る第4工程を含むと好ましい。かかる工程によって、溶離液に含まれていた塩を脱塩することができる。脱塩処理の方法としては特に制限はないが、透析、限外ろ過、脱塩カラムを使用する方法などが挙げられる。
例えば、透析を例に挙げると、上記で得られた画分(ポリオール脱水素酵素活性画分)を、緩衝剤(例えば、グリシルグリシン−NaOH緩衝溶液 pH7〜9.5程度)で透析を行うことによって、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含む脱塩処理された酵素溶液を得ることができる。
(第5工程)
また、本発明の製造方法においては、前記脱塩処理された酵素溶液を、限外ろ過することによって、濃縮物を得る第5工程を含むと好ましい。限外ろ過は、酵素の失活が少なく、且つ簡便であるという点で好ましい。
また、本発明の製造方法においては、前記脱塩処理された酵素溶液を、限外ろ過することによって、濃縮物を得る第5工程を含むと好ましい。限外ろ過は、酵素の失活が少なく、且つ簡便であるという点で好ましい。
限外ろ過の方法にも特に制限はないが、前記脱塩処理された酵素溶液をそのまま、あるいは、緩衝剤(例えば、グリシルグリシン−NaOH緩衝溶液 pH7〜9.5程度)を加えた後、従来公知の方法によって行って、濃縮物を得る。限外ろ過の回数にも特に制限はないが、好ましくは1〜10回、より好ましくは1〜5回、特に好ましくは1〜3回で十分である。従来のように、界面活性剤(特に、TritonX-100のみ)で、酵素組成物を精製する場合、かかる界面活性剤の溶血性に着目できても、例えば、少なくとも6回〜10回程度、限外ろ過を行わなければ、バイオセンサの結果のバラツキが生じてしまう。本発明の組成物は、特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルが含まれているので、有意に少ない回数で十分であり、ひいては、酵素組成物の生産性という観点から見ても非常に好ましい。限外ろ過膜の分画分子量は好ましくは10,000〜50,000がよく、蛋白濃度(PQQ依存性PDH濃度)は1〜100mg/mlとなるようにすることが好ましい。なお、本工程の変形例によれば、各種クロマトグラフィ法、塩析法などによって濃縮物を得ることもできる。
(第6工程)
上記手順により液体形態の酵素組成物が得られるが、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は粉末状などの固体形態であってもよい。本発明のポリオール脱水素酵素組成物を粉末状とする場合は、限外ろ過されて得た酵素組成物を凍結乾燥すればよい。すなわち、本発明の製造方法は、前記濃縮物を含む濃縮調製物を、凍結乾燥することによって、ポリオール脱水素酵素組成物を得る第6工程を含むと好ましい。この際、凍結乾燥の方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。本発明により得られた凍結乾燥された酵素組成物においては、凍結乾燥時のPQQ依存性PDHの失活が抑制されるとともに、凍結乾燥後のPQQ依存性PDHの保存安定性が有意に向上する。なお、凍結乾燥をする前に、上記の非還元糖(例えば、トレハロース)などを添加しておいてもよい。
上記手順により液体形態の酵素組成物が得られるが、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は粉末状などの固体形態であってもよい。本発明のポリオール脱水素酵素組成物を粉末状とする場合は、限外ろ過されて得た酵素組成物を凍結乾燥すればよい。すなわち、本発明の製造方法は、前記濃縮物を含む濃縮調製物を、凍結乾燥することによって、ポリオール脱水素酵素組成物を得る第6工程を含むと好ましい。この際、凍結乾燥の方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。本発明により得られた凍結乾燥された酵素組成物においては、凍結乾燥時のPQQ依存性PDHの失活が抑制されるとともに、凍結乾燥後のPQQ依存性PDHの保存安定性が有意に向上する。なお、凍結乾燥をする前に、上記の非還元糖(例えば、トレハロース)などを添加しておいてもよい。
このようにして、PQQ依存性PDHと;前記式1または式2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含む、ポリオール脱水素酵素組成物を製造することができる。
なお、本発明ではPQQ依存性PDHを化学修飾しなくても、保存安定性が有意に向上した酵素組成物が得られるため、上記の方法で得られる部分精製酵素や精製酵素の溶液をそのままの形態で、すなわち、化学修飾されていないPQQ依存性PDH(非修飾PQQ依存性PDH)を使用することが好ましい。ただし、PQQ依存性PDHを化学修飾された形態で使用してももちろんよい。
上記において、ポリオール脱水素酵素組成物を製造するための好ましい実施形態を説明したが、上記のように、PQQ依存性PDHと;前記式1または式2で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;を含ませることができれば、他の方法であってもよい。
<電子伝達体>
本発明における反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)は、電子伝達体(「電子受容体」とも称する場合がある)を含む。
本発明における反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)は、電子伝達体(「電子受容体」とも称する場合がある)を含む。
電子伝達体は、バイオセンサの使用時において、酸化還元酵素の作用によって生成した電子を受け取る、すなわち還元される。そして、還元された電子伝達体は、酵素反応の終了後に電極への電位の印加によって電気化学的に酸化される。この際に流れる電流(以下、「酸化電流」とも称する)の大きさから、試料中の所望の成分の濃度が算出されうる。
本発明において使用される電子伝達体としては、従来公知のものを使用することができ、試料や使用する酸化還元酵素に応じて適宜決定できる。なお、電子伝達体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電子伝達体としては、より具体的には、フェリシアン化カリウム、フェリシアン化ナトリウム、フェロセンおよびその誘導体、フェナジンメトサルフェートおよびその誘導体、p−ベンゾキノンおよびその誘導体、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール、メチレンブルー、ニトロテトラゾリウムブルー、オスミウム錯体、ルテニウム錯体などを好適に使用することができる。
電子伝達体の含有量については特に制限はなく、試料の添加量などに応じて適宜調節されうる。一例を挙げると、1センサあたり、基質量に対して十分量を含有させるという観点から、1〜2000μg、好ましくは5〜1000μg、より好ましくは10〜500μgの電子伝達体が含まれるとよい。また、電子伝達体は、グリシルグリシンのような緩衝剤で調製しておくことも好ましい。
第2実施形態のバイオセンサおいては、電子伝達体は、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と同じ層に含まれなければ、第一の反応層8、第二の反応層9のいずれの反応層に含まれてもよいが、好ましくは第一の反応層8に含まれる。その理由は、電極に接する第二の反応層9に電子伝達体が存在すると、つまり、電極上に電子伝達体が存在すると、局部電池のような現象が生じ、電子伝達体が自動的に還元されてしまう虞がある。よって、より精度の向上されたバイオセンサを提供することを鑑みると、第一の反応層8(つまり、電極と接しない方)に含まれる。
<親水性高分子>
本発明における反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)は、さらに、親水性高分子を含んでもよい。
本発明における反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)は、さらに、親水性高分子を含んでもよい。
親水性高分子は、本発明のポリオール脱水素酵素組成物または電子伝達体などを電極上に固定化する機能を有する。また、反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)が親水性高分子を含むことにより、基板1および電極表面からの反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)の剥離が防止されうる。また、親水性高分子は、反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)表面の割れを防ぐ効果も有しており、バイオセンサの信頼性を高めるのに効果的である。さらに、タンパク質などの吸着性成分の電極への吸着もまた、抑制されうる。なお、反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)が親水性高分子を含む場合、反応層内に親水性高分子が含まれる形態を有していてもよく、または反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)を覆うように親水性高分子を含む親水性高分子層を形成させた形態を有してもよい。
本発明に用いることができる親水性高分子としては、従来公知のものを使用することができる。より具体的には、親水性高分子としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリリジンなどのポリアミノ酸、ポリスチレンスルホン酸、ゼラチンおよびその誘導体、アクリル酸の重合体またはその誘導体、無水マレイン酸の重合体またはその塩、スターチおよびその誘導体などが挙げられる。これらのうち、本発明のポリオール脱水素酵素組成物の酵素活性を失活させず、且つ溶解性が高いという観点から、カルボキシメチルセルロースが好ましい。なお、これらは、単独で用いても、混合物の形態で用いてもよい。
なお、このような親水性高分子の配合量は、1センサあたり、酵素や電子伝達体を固定化でき、且つ反応層の溶解性を下げないという観点から、好ましくは0.01〜100μgであり、より好ましくは0.05〜50μgであり、特に好ましくは0.1〜10μgである。親水性高分子は、後述もするが、例えば、グリシルグリシンのような緩衝液で調製しておくことも好ましい。
親水性高分子は、本発明の第2のバイオセンサにおいては、第一の反応層8、第二の反応層9のいずれに含有されてもよいが、好ましくは、第二の反応層9に本発明のポリオール脱水素酵素組成物が含まれるため、固定化の効果を勘案すると、酸化還元酵素が含まれる第二の反応層9に親水性高分子を含有させることが好ましい。
なお、本発明のバイオセンサにおいては、必要であれば、反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)に、本発明の所期の効果を阻害しない範囲内において、従来公知の界面活性剤を有してもよい。かかる界面活性剤としては、低溶血性の界面活性剤である、CHAPSや、Tween、エマルゲンPP290(花王製)(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)などが挙げられる。ただ、本発明のポリオール脱水素酵素組成物は、界面活性剤として認識される特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルが含まれるものであるので、バイオセンサにおける溶解性は有意に向上されているため、このような別途の界面活性剤を反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)に含ませることは必須ではない。
<バイオセンサの製造方法>
(第1実施形態のバイオセンサ)
第1実施形態のバイオセンサにおける反応層10を形成する方法にも特に制限はないが、例えば以下の方法が考えられる。
(第1実施形態のバイオセンサ)
第1実施形態のバイオセンサにおける反応層10を形成する方法にも特に制限はないが、例えば以下の方法が考えられる。
本発明のポリオール脱水素酵素組成物と、電子伝達体と、を含む反応層10を形成するための原料を、グリシルグリシン緩衝剤などで調製し、その調製した原料を、電極(作用部分)に、所定量滴下する。調製した試料を滴下した後、所定の温度に保った恒温槽内やホットプレート上にて乾燥させる。また、必要に応じ上記した他の成分を添加してもよい。また、必要に応じエタノール等の揮発性有機溶媒を添加しておいてもよい。揮発性有機溶媒を添加しておくことで、早く乾きやすく、結晶化が小さくて済む。最後に、反応層10にカバー7を覆うようにして、接着剤を介して張り合わせることにより、第1のバイオセンサを製造することができる。
(第2実施形態のバイオセンサ)
第2実施形態のバイオセンサにおける第一の反応層8、第二の反応層9を形成する方法にも特に制限はないが、例えば以下の方法が考えられる。
第2実施形態のバイオセンサにおける第一の反応層8、第二の反応層9を形成する方法にも特に制限はないが、例えば以下の方法が考えられる。
第一の反応層8については、電子伝達体(例えば、フェリシアン化カリウム)を含む第一の反応層8を形成するための原料を、グリシルグリシン緩衝剤などで調製し、その調製した原料を、カバー7に、所定量滴下する。なお、予めカバー7に接着剤を設置しておくとよい。調製した原料を滴下した後、所定の温度に保った恒温槽内やホットプレート上にて乾燥させる。このようにして、第一の反応層8を作製することができる。
一方で、第二の反応層9については、例えば、本発明のポリオール脱水素酵素組成物を含む第二の反応層9を形成するための原料を、グリシルグリシン緩衝剤などで調製し、その調製した原料を、電極に、所定量滴下する。この際、かかる原料には、リポプロテインリパーゼ(LPL)、親水性高分子(例えば、カルボキシメチルセルロース)などの少なくとも1種が含まれていてもよい。なお、予め基板1に接着剤を設置しておくとよい。調製した原料を滴下した後、所定の温度に保った恒温槽内やホットプレート上にて乾燥させる。このようにして、第二の反応層9を作製することができる。
最後に、第二の反応層9が形成されている基板1と、第一の反応層8が形成されているカバー7を、接着剤6a、6bを介して張り合わせることにより、第2のバイオセンサを製造することができる。
<バイオセンサの適用>
本発明において使用される試料は、好ましくは、溶液形態である。溶液形態における溶媒としても特に制限されず、従来公知の溶媒を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。
本発明において使用される試料は、好ましくは、溶液形態である。溶液形態における溶媒としても特に制限されず、従来公知の溶媒を適宜参照し、あるいは組み合わせて適用することができる。
試料としても、特に制限はされないが、例えば、全血、血漿、血清、唾液、尿、骨髄などの生体試料;ジュースなどの飲料水、醤油、ソースなどの食品類;排水、雨水、プール用水などが挙げられる。好ましくは、全血、血漿、血清、唾液、骨髄であり、より好ましくは全血である。
なお、試料は原液がそのまま用いられてもよいし、粘度などを調節する目的で適当な溶媒で希釈された溶液が用いられてもよい。試料に含まれる基質についても特に制限はなく、本発明のポリオール脱水素酵素組成物と反応しうる物質であればよい。
試料中の所望の成分(基質)としては、例えば、グルコースなどの糖類、グリセロール、ソルビトール、アラビトールなどの多価アルコール、中性脂肪、コレステロールなどの脂質、グルタミン酸や乳酸などの有機酸類、クレアチン、クレアチニンなどが挙げられる。上記と同様の理由から、中性脂肪やコレステロールなどの脂質が基質として選択されることが好ましい。
試料を試料供給部へ供給する形態は特に制限されず、例えば、毛細管現象を利用して、反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)に対して水平方向から試料を供給してもよい。
反応層10(第一の反応層8、第二の反応層9)へと試料が供給されると、試料中の所望の成分(基質)は、反応層に含まれる本発明のポリオール脱水素酵素組成物における酸化還元酵素の作用によって酸化され、自身の酸化と同時に電子を放出する。基質から放出された電子は、電子伝達体に捕捉され、これに伴って電子伝達体は酸化型から還元型へと変化する。試料の添加後、バイオセンサを所定時間放置することにより、酸化還元酵素によって基質が完全に酸化され、一定量の電子伝達体が酸化型から還元型へと変換される。
基質と酵素との反応を完結させるための放置時間については特に制限はないが、試料添加後、通常は1秒〜5分間、好ましくは3秒〜3分間、バイオセンサを放置すればよい。
その後、還元型の電子伝達体を酸化する目的で、電極を介して、作用極2と対極4との間に、所定の電位を印加する。これにより、還元型の電子伝達体が電気化学的に酸化され、酸化型へと変換される。この際に測定される電流(以下、「酸化電流」とも称する)の値から、電位印加前の還元型の電子伝達体の量が算出され、さらに、酵素と反応した基質の量が定量されうる。酸化電流を流す際に印加される電位の値は特に制限されず、従来公知の知見を参照して適宜調節されうる。一例を挙げると、−200〜700mV程度、好ましくは0〜500mVの電位を、対極4と作用極2との間に印加すればよい。電位を印加するための電位印加手段についても特に制限はなく、従来公知の電位印加手段が適宜用いられうる。
酸化電流値の測定、および当該電流値から基質濃度への換算の手法としては、所定の電位を印加してから一定時間後の電流値を測定するクロノアンペロメトリー法が用いられてもよいし、クロノアンペロメトリー法による電流応答を時間で積分して得られる電荷量を測定するクロノクーロメトリー法が用いられてもよい。簡単な装置系により測定されるという点で、クロノアンペロメトリー法が好ましく用いられうる。
以上、還元型の電子伝達体を酸化する際の電流(酸化電流)を測定することにより基質濃度を算出する形態を例に挙げて説明したが、場合によっては、還元されずに残存している酸化型の電子伝達体を還元する際の電流(還元電流)を測定することにより基質濃度を算出する形態が採用されてもよい。
本発明のバイオセンサは、いずれの形態で使用してもよく特に制限されない。例えば、
使い捨て用途としてのディスポーザブルタイプのバイオセンサ、少なくとも電極部分を人
体に埋め込んで連続的に所定の値を測定するためのバイオセンサなど、様々な用途に使用
できる。
使い捨て用途としてのディスポーザブルタイプのバイオセンサ、少なくとも電極部分を人
体に埋め込んで連続的に所定の値を測定するためのバイオセンサなど、様々な用途に使用
できる。
本発明のバイオセンサは、中性脂肪センサ、グルコースセンサ等の従来公知のセンサに適用することが可能である。
本発明におけるポリオール脱水素酵素組成物は、補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と、前記特定のポリエチレングリコール脂肪酸エステルと、を含むため、バイオセンサに適用した際に、全血由来の溶血が抑制され、ひいては、バイオセンサの精度が向上する。よって、本発明は、本発明におけるポリオール脱水素酵素組成物が含まれたバイオセンサを用い、全血由来の溶血が抑制することによって、バイオセンサの精度を向上させる方法も提供する。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、本発明において、PQQ依存性PDHの酵素活性は、下記方法により測定した。
(酵素活性)
50μM DCIP(2,6−ジクロロフェノールインドフェノール)、0.2mM PMS(5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート)、および450mM グリセロールを含む、0.1% Triton(登録商標)X−100を含む10mM リン酸緩衝液(pH 7.0)中に、酵素溶液を加えた。なお、かかる酵素溶液は、0.1% Triton(登録商標)X−100を含む10mM リン酸緩衝液(pH 7.0)で溶解する。この溶液中の酵素と基質の反応をDCIPの600nmの吸光度変化によって追跡し、その吸光度の減少速度を酵素の反応速度とした。ここで、1分間に1μmolのDCIPが還元される酵素活性を1単位(U)とした。なお、DCIPのpH 7.0におけるモル吸光係数は16.3mM−1とした。
50μM DCIP(2,6−ジクロロフェノールインドフェノール)、0.2mM PMS(5−メチルフェナジニウムメチルサルフェート)、および450mM グリセロールを含む、0.1% Triton(登録商標)X−100を含む10mM リン酸緩衝液(pH 7.0)中に、酵素溶液を加えた。なお、かかる酵素溶液は、0.1% Triton(登録商標)X−100を含む10mM リン酸緩衝液(pH 7.0)で溶解する。この溶液中の酵素と基質の反応をDCIPの600nmの吸光度変化によって追跡し、その吸光度の減少速度を酵素の反応速度とした。ここで、1分間に1μmolのDCIPが還元される酵素活性を1単位(U)とした。なお、DCIPのpH 7.0におけるモル吸光係数は16.3mM−1とした。
[調製例1:[ポリオール脱水素酵素を含む可溶化膜画分の調製例]
ソルビトール 1.5g/100mL、グルコン酸ナトリウム 0.5g/100mL、酵母エキス 0.3g/100mL、肉エキス 0.3g/100mL、コーンスティープリカー 0.3g/100mL、ポリペプトン 1g/100mL、尿素 0.1g/100mL、KH2PO4 0.1g/100mL、MgSO4・7H2O 0.02g/100mL、およびCaCl2・2H2O 0.1g/100mLからなり、塩酸でpHを5.5に調整した培地100mLを調製し、500mL容の坂口フラスコに該培地80mLを移し、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
ソルビトール 1.5g/100mL、グルコン酸ナトリウム 0.5g/100mL、酵母エキス 0.3g/100mL、肉エキス 0.3g/100mL、コーンスティープリカー 0.3g/100mL、ポリペプトン 1g/100mL、尿素 0.1g/100mL、KH2PO4 0.1g/100mL、MgSO4・7H2O 0.02g/100mL、およびCaCl2・2H2O 0.1g/100mLからなり、塩酸でpHを5.5に調整した培地100mLを調製し、500mL容の坂口フラスコに該培地80mLを移し、121℃、20分間オートクレーブ処理した。
上記培地に、種菌として、グルコノバクター・タイランディカス(Gluconobacter thailandicus)NBRC 3291を一白金耳植菌し、30℃で24時間、140min−1で振とう培養し、これを種培養液とした。
次に、上記と同じ組成で調製した培地5Lを8L容ジャーファーメンターに移し、121℃で50分間オートクレーブを行い、放冷後、種培養液240mLを移した。これを、400rpm、通気量5L/min、30℃の条件で26時間培養した。
所定時間培養した後、この培養液を遠心分離(8,000×g、10分、4℃)して集菌し、緩衝液で懸濁後、フレンチプレスにより菌体を破砕した。破砕液を遠心分離(4,000×g、10分、4℃)し、得られた上清を超遠心分離(40,000rpm、90分、4℃)して、膜画分を沈殿物として得た。
この膜画分を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で懸濁し、終濃度が0.5g/100mLとなるようにTriton(登録商標)X−100を加え、4℃で2時間撹拌した。超遠心分離(40,000rpm、90分、4℃)し、上清を0.1g/100mL Triton(登録商標)X−100を含む10mM MOPS−NaOH緩衝液(pH7.5)で一晩透析し、これを可溶化膜画分とした。
[実施例 ポリオール脱水素酵素の調製例]
得られた可溶化膜画分をFPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM Tris−HCl pH8 +0.005%ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(製品名:NIKKOL MYS−25V) +5mM MgSO4で行った。可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分(つまり、蛋白と結合していない遊離している可溶化に用いた界面活性剤および非吸着の蛋白)を、カラムの平衡化に用いた溶液にてカラム体積の10倍量で送液した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM Tris−HCl pH8 +0.005%ポリエチレングリコール脂肪酸エステル+5mM MgSO4 + 0.4M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.2M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は、64%であった。得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)で一晩透析することにより、蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これをPQQ依存性PDH溶液と称する。得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白) 20mlに10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5) 120mlを加えた後、限外ろ過(分画分子量:50,000)し、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した(限外ろ過は1回だけである)。濃縮後、ローリー法(BIO RAD社製、DC protein assay)により蛋白濃度を測定した。測定後、10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mLに調整した。調整後、対蛋白量あたり、30%となるようにトレハロースを添加後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、15U/mg・粉末であった。なお、かかる酵素組成物中のポリエチレングリコール脂肪酸エステルの量は、理論値で、対蛋白量あたり、5%である。また、緩衝剤の量は、対蛋白量あたり、26%である。ここで、「理論値」としたのは、かかる実施例で使用した「ポリエチレングリコール脂肪酸エステル」も「緩衝剤」も、上記透析、限外ろ過によっては、分子量が有意に大きいものであるので、除去されないものであるからである。
得られた可溶化膜画分をFPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM Tris−HCl pH8 +0.005%ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(製品名:NIKKOL MYS−25V) +5mM MgSO4で行った。可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分(つまり、蛋白と結合していない遊離している可溶化に用いた界面活性剤および非吸着の蛋白)を、カラムの平衡化に用いた溶液にてカラム体積の10倍量で送液した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM Tris−HCl pH8 +0.005%ポリエチレングリコール脂肪酸エステル+5mM MgSO4 + 0.4M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.2M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は、64%であった。得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)で一晩透析することにより、蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これをPQQ依存性PDH溶液と称する。得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白) 20mlに10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5) 120mlを加えた後、限外ろ過(分画分子量:50,000)し、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した(限外ろ過は1回だけである)。濃縮後、ローリー法(BIO RAD社製、DC protein assay)により蛋白濃度を測定した。測定後、10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mLに調整した。調整後、対蛋白量あたり、30%となるようにトレハロースを添加後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、15U/mg・粉末であった。なお、かかる酵素組成物中のポリエチレングリコール脂肪酸エステルの量は、理論値で、対蛋白量あたり、5%である。また、緩衝剤の量は、対蛋白量あたり、26%である。ここで、「理論値」としたのは、かかる実施例で使用した「ポリエチレングリコール脂肪酸エステル」も「緩衝剤」も、上記透析、限外ろ過によっては、分子量が有意に大きいものであるので、除去されないものであるからである。
[比較例 ポリオール脱水素酵素の調製例(従来法;界面活性剤にTritonX−100使用)]
得られた可溶化膜画分をFPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM Tris−HCl pH 8 +0.1%TritonX−100+5mM MgSO4で行った。可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分を前記緩衝液(10mM Tris−HCl pH 8 +0.1%TritonX−100+5mM MgSO4)にてカラム体積の10倍量で送液した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM Tris−HCl pH 8 +0.1%TritonX−100+5mM MgSO4 + 0.2M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.1M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は62%であった。なお、実施例と同じ界面活性剤濃度(0.005%)では、回収率が30%以下となり、精製に不適と判断した。得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)で一晩透析することにより、蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これをPQQ依存性PDH溶液と称する。得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白) 20mlに10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5) 120mlを加えた後、限外ろ過(分画分子量:50,000)した。濃縮後、さらに、200mlの10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)を加え、濃縮するという作業を5回繰り返した。最後の6回目の濃縮においては、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した。濃縮後、ローリー法(BIO RAD社製、DC protein assay)により蛋白濃度を測定した。測定後、10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mLに調整した。調整後、対蛋白量あたり、30%となるようにトレハロースを添加後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、10U/mg・粉末であった。
得られた可溶化膜画分をFPLC(Fast Protein Liquid Chromatography;GEヘルスケア製)にて精製した。カラムはResourceQ 6mL(GEヘルスケア製)を使用した。カラムの平衡化は、10mM Tris−HCl pH 8 +0.1%TritonX−100+5mM MgSO4で行った。可溶化膜画分をアプライ後、非吸着画分を前記緩衝液(10mM Tris−HCl pH 8 +0.1%TritonX−100+5mM MgSO4)にてカラム体積の10倍量で送液した。溶出緩衝液(溶離液)には、10mM Tris−HCl pH 8 +0.1%TritonX−100+5mM MgSO4 + 0.2M NaClを用い、カラム体積の10倍量でグラジエント溶出を行った。ポリオール脱水素酵素活性画分は、0.1M NaCl前後で溶出した。可溶化膜画分からの回収率は62%であった。なお、実施例と同じ界面活性剤濃度(0.005%)では、回収率が30%以下となり、精製に不適と判断した。得られたポリオール脱水素酵素活性画分を10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)で一晩透析することにより、蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白の酵素標品を得た。これをPQQ依存性PDH溶液と称する。得られたPQQ依存性PDH溶液(蛋白濃度1mg/mL、比活性30U/mg蛋白) 20mlに10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5) 120mlを加えた後、限外ろ過(分画分子量:50,000)した。濃縮後、さらに、200mlの10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)を加え、濃縮するという作業を5回繰り返した。最後の6回目の濃縮においては、蛋白濃度が5mg/mL以上となるように濃縮した。濃縮後、ローリー法(BIO RAD社製、DC protein assay)により蛋白濃度を測定した。測定後、10mM グリシルグリシン−NaOH緩衝液(pH 7.5)を加えることにより、PQQ依存性PDH溶液中の蛋白濃度を5mg/mLに調整した。調整後、対蛋白量あたり、30%となるようにトレハロースを添加後、−80℃にて凍結させた。凍結後、凍結乾燥を行い、粉末状の酵素組成物を得た。酵素組成物重量あたりの酵素活性は、10U/mg・粉末であった。
界面活性剤としてTritonX−100とポリエチレングリコール脂肪酸エステルを用いた場合、陰イオン交換カラム(カラム:ResourceQ 6ml)の回収率は同じであり、粉末あたりの酵素活性は、TritonX−100が10U/mg・粉末に対し、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルでは15U/mg・粉末であり、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの方が優れていることが分かった。
(溶血確認)
実施例および比較例で得られた酵素組成物の溶血確認を行った。すなわち、透明のプラスチックチューブに25U分の酵素組成物を加えた後、全血を20μl加え5分放置後、遠心分離(4000×g,4℃、1分)し、その上清の色を目視で確認した。実施例1でそれぞれ5回調製した酵素組成物は、いずれも上清が透明であり、溶血しなかった。しかし、比較例1でそれぞれ5回調製した酵素組成物では、上清が赤くなる(溶血が起こっている)現象が2ロット分起こった。
実施例および比較例で得られた酵素組成物の溶血確認を行った。すなわち、透明のプラスチックチューブに25U分の酵素組成物を加えた後、全血を20μl加え5分放置後、遠心分離(4000×g,4℃、1分)し、その上清の色を目視で確認した。実施例1でそれぞれ5回調製した酵素組成物は、いずれも上清が透明であり、溶血しなかった。しかし、比較例1でそれぞれ5回調製した酵素組成物では、上清が赤くなる(溶血が起こっている)現象が2ロット分起こった。
1 絶縁性基板、
2 作用極、
2−1 作用極作用部分、
3 参照極、
3−1 参照極作用部分、
4 対極、
4−1 対極作用部分、
5 絶縁層、
6(6a、6b) 接着剤、
7 カバー、
8 第一の反応層、
9 第二の反応層、
10 反応層、
S 空間部。
2 作用極、
2−1 作用極作用部分、
3 参照極、
3−1 参照極作用部分、
4 対極、
4−1 対極作用部分、
5 絶縁層、
6(6a、6b) 接着剤、
7 カバー、
8 第一の反応層、
9 第二の反応層、
10 反応層、
S 空間部。
Claims (4)
- 補欠分子族としてピロロキノリンキノンを含むポリオール脱水素酵素と;
下記式1または式2:
で示されるポリエチレングリコール脂肪酸エステルと;
を含む、ポリオール脱水素酵素組成物。 - 前記式1中、
R1が、炭素数5〜30のアルキル基または炭素数5〜30のアルケニル基であって、
nが、10〜55の整数である、請求項1に記載のポリオール脱水素酵素組成物。 - 前記ポリオール脱水素酵素は、グリセロール脱水素酵素である、請求項1または2に記載のポリオール脱水素酵素組成物。
- 絶縁性基板と、前記絶縁性基板上に形成されてなる、少なくとも作用極および対極を含む電極と、前記電極上に形成されてなる試料供給部と、を有するバイオセンサであって、
前記試料供給部が、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオール脱水素酵素組成物と、
電子伝達体と、
を含む反応層を有する、バイオセンサ。
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JP2010082226A JP2011211945A (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | ポリオール脱水素酵素組成物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012210173A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-11-01 | Cci Corp | ポリオール脱水素酵素を含む固形物の製造方法 |
JP2013205347A (ja) * | 2012-03-29 | 2013-10-07 | Cci Corp | トリスホウ酸を含むバイオセンサ |
-
2010
- 2010-03-31 JP JP2010082226A patent/JP2011211945A/ja active Pending
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