以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
<1.熱処理装置の構成>
<1−1.全体構成>
図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図であり、図2はその正面図である。熱処理装置100は基板として略円形の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。なお、図1および図2においては適宜部分的に断面図としており、細部については適宜簡略化している。また、図1,2および以降の各図においては、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を必要に応じて付している。
図1および図2に示すように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部101、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部130、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却を行う冷却部140、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施すフラッシュ加熱部160並びにアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160に対して半導体ウェハーWの搬送を行う搬送ロボット150を備える。また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
インデクサ部101は、複数のキャリアCA(本実施形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCAから未処理の半導体ウェハーWを取り出すとともに、各キャリアCAに処理済みの半導体ウェハーWを収納する受渡ロボット120とを備えている。未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCAは無人搬送車(AGV)等によって搬送されてロードポート110に載置されるともに、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCAは当該無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCAに対して任意の半導体ウェハーWの出し入れを行うことができるように、キャリアCAが図2の矢印CUにて示す如く昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCAの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
また、受渡ロボット120は、矢印120Sにて示すようなスライド移動、矢印120Rにて示すような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、2つのキャリアCAに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部130および冷却部140に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアCAに対する半導体ウェハーWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCAの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部130または冷却部140との半導体ウェハーWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
アライメント部130は、半導体ウェハーWを回転させて続くフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。受渡ロボット120からアライメント部130へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。アライメント部130では、インデクサ部101から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで回転させノッチやオリフラ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの位置決めを行う。また、アライメント部130は後述の光学測定ユニットを備えており、その光学測定ユニットによって処理対象となる半導体ウェハーWの反射光強度を測定する。
熱処理装置100の主要部であるフラッシュ加熱部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う処理部である。フラッシュ加熱部160およびアライメント部130の構成についてはさらに後述する。
冷却部140は、金属製の冷却プレートの上面に石英板を載置して構成されている。フラッシュ加熱部160にてフラッシュ加熱処理が施された直後の半導体ウェハーWは温度が高いため、冷却部140にて上記石英板上に載置されて冷却される。
搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされるとともに、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送アーム151a,151bが設けられる。これらの搬送アーム151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送アーム151a,151bを昇降移動させる。
また、搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬送空間として搬送ロボット150を収容する搬送室170が設けられており、アライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160が搬送室170に連結されて配置されている。搬送ロボット150がアライメント部130、フラッシュ加熱部160または冷却部140を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送アーム151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送アームが受け渡し相手と半導体ウェハーWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送アーム151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
また、インデクサ部101とアライメント部130および冷却部140との間にはそれぞれゲートバルブ181,182が設けられ、搬送室170とアライメント部130、冷却部140およびフラッシュ加熱部160との間にはそれぞれゲートバルブ183,184,185が設けられる。そして、アライメント部130、冷却部140および搬送室170の内部が清浄に維持されるようにそれぞれに窒素ガス供給部(図示省略)から高純度の窒素ガスが供給され、余剰の窒素ガスは適宜排気管から排気される。なお、半導体ウェハーWが搬送される際に適宜これらのゲートバルブが開閉される。
また、アライメント部130および冷却部140は、インデクサ部101と搬送ロボット150との間のウェハー搬送経路の往路および復路にそれぞれ位置し、アライメント部130では半導体ウェハーWの位置決めを行うために半導体ウェハーWが一時的に載置され、冷却部140では加熱処理後の半導体ウェハーWを冷却するために半導体ウェハーWが一時的に載置される。
<1−2.フラッシュ加熱部の構成>
次に、フラッシュ加熱部160の構成について詳細に説明する。図3は、フラッシュ加熱部160の構成を示す縦断面図である。フラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWを収容する略円筒形状のチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。
チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒状の内壁を有するチャンバー側部63、および、チャンバー側部63の下部を覆うチャンバー底部62によって構成される。また、チャンバー側部63およびチャンバー底部62によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。熱処理空間65の上方は上部開口60とされており、上部開口60にはチャンバー窓61が装着されて閉塞されている。
チャンバー6の天井部を構成するチャンバー窓61は、石英により形成された円板形状部材であり、ランプハウス5から出射された光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。チャンバー6の本体を構成するチャンバー底部62およびチャンバー側部63は、例えば、ステンレススチール等の強度と耐熱性に優れた金属材料にて形成されており、チャンバー側部63の内側面の上部のリング631は、光照射による劣化に対してステンレススチールより優れた耐久性を有するアルミニウム(Al)合金等で形成されている。
また、熱処理空間65の気密性を維持するために、チャンバー窓61とチャンバー側部63とはOリングによってシールされている。すなわち、チャンバー窓61の下面周縁部とチャンバー側部63との間にOリングを挟み込むとともに、クランプリング90をチャンバー窓61の上面周縁部に当接させ、そのクランプリング90をチャンバー側部63にネジ止めすることによって、チャンバー窓61をOリングに押し付けている。
チャンバー底部62には、保持部7を貫通して半導体ウェハーWをその下面(ランプハウス5からの光が照射される側とは反対側の面)から支持するための複数(本実施の形態では3本)の支持ピン70が立設されている。支持ピン70は、例えば石英により形成されており、チャンバー6の外部から固定されているため、容易に取り替えることができる。
チャンバー側部63は、半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部66を有し、搬送開口部66は、軸662を中心に回動するゲートバルブ185により開閉可能とされる。チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には熱処理空間65に処理ガス(例えば、窒素(N2)ガスやヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の不活性ガス、あるいは、酸素(O2)ガス等)を導入する導入路81が形成され、その一端は弁82を介して図示省略の給気機構に接続され、他端はチャンバー側部63の内部に形成されるガス導入バッファ83に接続される。また、搬送開口部66には熱処理空間65内の気体を排出する排出路86が形成され、弁87を介して図示省略の排気機構に接続される。
図4は、チャンバー6をガス導入バッファ83の位置にて水平面で切断した断面図である。図4に示すように、ガス導入バッファ83は、図3に示す搬送開口部66の反対側においてチャンバー側部63の内周の約1/3に亘って形成されており、導入路81を介してガス導入バッファ83に導かれた処理ガスは、複数のガス供給孔84から熱処理空間65内へと供給される。
また、チャンバー側部63における搬送開口部66とは反対側の部位には光測定部2が設けられている。光測定部2は、カロリーメータ24および光導出構造20を備え、チャンバー6内に照射された光を受光してそのエネルギーを算定するための電気信号を制御部3に送出する。光導出構造20は、第1石英ロッド21、プリズム22および第2石英ロッド23を備え、チャンバー6内に照射された光をチャンバー6の外部に設置されたカロリーメータ24へと導く。
第1石英ロッド21は、ガス導入バッファ83の上方にてチャンバー側部63を水平方向に貫通して設けられる。第1石英ロッド21が設置される高さ位置は、後述する処理位置に上昇した保持部7に保持される半導体ウェハーWと同じ高さ位置である。第1石英ロッド21は直径約10mmの石英の棒状部材である。また、第1石英ロッド21の熱処理空間65側の先端は、斜めに切断されてプリズムを形成するとともに、その上側は平坦な入射面とされている。
第1石英ロッド21の基端側(チャンバー6よりも外側)にはプリズム22が接着されている。さらに、プリズム22には第2石英ロッド23が接着されている。プリズム22は石英にて形成された三角柱部材であり、直角をなす一方の面に第1石英ロッド21が接着され、他方の面に第2石英ロッド23が接着される。第2石英ロッド23も第1石英ロッド21と同じく直径約10mmの石英の棒状部材である。第2石英ロッド23は鉛直方向に沿って設けられ、その上端はプリズム22に接着され、下端はカロリーメータ24に接続される。
チャンバー6内の熱処理空間65に上方から照射された光は、第1石英ロッド21の入射面に入射して先端の傾斜面で反射されて第1石英ロッド21内を基端側へと導かれる。そして、第1石英ロッド21内を導かれた光はプリズム22によって全反射されて第2石英ロッド23に入射する。さらに、第2石英ロッド23内を導かれた光はカロリーメータ24に入射する。
カロリーメータ24は、光を吸収する黒体(図示省略)を内蔵し、入射した光を吸収した黒体で発生した熱を電圧等の電気信号に変換する。本実施形態においては、カロリーメータ24は熱エネルギーを変換した電気信号を制御部3に送出し、制御部3のエネルギー測定部301(図12参照)がチャンバー6内に照射された光のエネルギー(厳密にはエネルギー密度)を算定する。
また、フラッシュ加熱部160は、チャンバー6の内部において半導体ウェハーWを水平姿勢にて保持しつつフラッシュ光照射前にその保持する半導体ウェハーWの予備加熱を行う略円板状の保持部7と、保持部7をチャンバー6の底面であるチャンバー底部62に対して昇降させる保持部昇降機構4と、を備える。図3に示す保持部昇降機構4は、略円筒状のシャフト41、移動板42、ガイド部材43(本実施の形態ではシャフト41の周りに3本配置される)、固定板44、ボールネジ45、ナット46およびモータ40を有する。チャンバー6の下部であるチャンバー底部62には保持部7よりも小さい直径を有する略円形の下部開口64が形成されており、ステンレススチール製のシャフト41は、下部開口64を挿通して、保持部7(厳密には保持部7のホットプレート71)の下面に接続されて保持部7を支持する。
移動板42にはボールネジ45と螺合するナット46が固定されている。また、移動板42は、チャンバー底部62に固定されて下方へと伸びるガイド部材43により摺動自在に案内されて上下方向に移動可能とされる。また、移動板42は、シャフト41を介して保持部7に連結される。
モータ40は、ガイド部材43の下端部に取り付けられる固定板44に設置され、タイミングベルト401を介してボールネジ45に接続される。保持部昇降機構4により保持部7が昇降する際には、駆動部であるモータ40が制御部3の制御によりボールネジ45を回転し、ナット46が固定された移動板42がガイド部材43に沿って鉛直方向に移動する。この結果、移動板42に固定されたシャフト41が鉛直方向に沿って移動し、シャフト41に接続された保持部7が図3に示す半導体ウェハーWの受渡位置と図7に示す半導体ウェハーWの処理位置との間で滑らかに昇降する。
移動板42の上面には略半円筒状(円筒を長手方向に沿って半分に切断した形状)のメカストッパ451がボールネジ45に沿うように立設されており、仮に何らかの異常により移動板42が所定の上昇限界を超えて上昇しようとしても、メカストッパ451の上端がボールネジ45の端部に設けられた端板452に突き当たることによって移動板42の異常上昇が防止される。これにより、保持部7がチャンバー窓61の下方の所定位置以上に上昇することはなく、保持部7とチャンバー窓61との衝突が防止される。
また、保持部昇降機構4は、チャンバー6の内部のメンテナンスを行う際に保持部7を手動にて昇降させる手動昇降部49を有する。手動昇降部49はハンドル491および回転軸492を有し、ハンドル491を介して回転軸492を回転することより、タイミングベルト495を介して回転軸492に接続されるボールネジ45を回転して保持部7の昇降を行うことができる。
チャンバー底部62の下側には、シャフト41の周囲を囲み下方へと伸びる伸縮自在のベローズ47が設けられ、その上端はチャンバー底部62の下面に接続される。一方、ベローズ47の下端はベローズ下端板471に取り付けられている。べローズ下端板471は、鍔状部材411によってシャフト41にネジ止めされて取り付けられている。保持部昇降機構4により保持部7がチャンバー底部62に対して上昇する際にはベローズ47が収縮され、下降する際にはべローズ47が伸張される。そして、保持部7が昇降する際にも、ベローズ47が伸縮することによって熱処理空間65内の気密状態が維持される。
図5は、保持部7の構成を示す断面図である。保持部7は、半導体ウェハーWを予備加熱(いわゆるアシスト加熱)するホットプレート(加熱プレート)71、および、ホットプレート71の上面(保持部7が半導体ウェハーWを保持する側の面)に設置されるサセプタ72を有する。保持部7の下面には、既述のように保持部7を昇降するシャフト41が接続される。サセプタ72は石英(あるいは、窒化アルミニウム(AIN)等であってもよい)により形成され、その上面には半導体ウェハーWの位置ずれを防止するピン75が設けられる。サセプタ72は、その下面をホットプレート71の上面に面接触させてホットプレート71上に設置される。これにより、サセプタ72は、ホットプレート71からの熱エネルギーを拡散してサセプタ72上面に載置された半導体ウェハーWに伝達するとともに、メンテナンス時にはホットプレート71から取り外して洗浄可能とされる。
ホットプレート71は、ステンレススチール製の上部プレート73および下部プレート74にて構成される。上部プレート73と下部プレート74との間には、ホットプレート71を加熱するニクロム線等の抵抗加熱線76が配設され、導電性のニッケル(Ni)ロウが充填されて封止されている。また、上部プレート73および下部プレート74の端部はロウ付けにより接着されている。
図6は、ホットプレート71を示す平面図である。図6に示すように、ホットプレート71は、保持される半導体ウェハーWと対向する領域の中央部に同心円状に配置される円板状のゾーン711および円環状のゾーン712、並びに、ゾーン712の周囲の略円環状の領域を周方向に4等分割した4つのゾーン713〜716を備え、各ゾーン間には若干の間隙が形成されている。また、ホットプレート71には、支持ピン70が挿通される3つの貫通孔77が、ゾーン711とゾーン712との隙間の周上に120°毎に設けられる。
6つのゾーン711〜716のそれぞれには、相互に独立した抵抗加熱線76が周回するように配設されてヒータが個別に形成されており、各ゾーンに内蔵されたヒータにより各ゾーンが個別に加熱される。保持部7に保持された半導体ウェハーWは、6つのゾーン711〜716に内蔵されたヒータにより加熱される。また、ゾーン711〜716のそれぞれには、熱電対を用いて各ゾーンの温度を計測する温度センサ710が設けられている。各温度センサ710は略円筒状のシャフト41の内部を通り制御部3に接続される。
ホットプレート71が加熱される際には、温度センサ710により計測される6つのゾーン711〜716のそれぞれの温度が予め設定された所定の温度になるように、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が制御部3により制御される。制御部3による各ゾーンの温度制御はPID(Proportional,Integral,Derivative)制御により行われる。ホットプレート71では、半導体ウェハーWの熱処理(複数の半導体ウェハーWを連続的に処理する場合は、全ての半導体ウェハーWの熱処理)が終了するまでゾーン711〜716のそれぞれの温度が継続的に計測され、各ゾーンに配設された抵抗加熱線76への電力供給量が個別に制御されて、すなわち、各ゾーンに内蔵されたヒータの温度が個別に制御されて各ゾーンの温度が設定温度に維持される。なお、各ゾーンの設定温度は、基準となる温度から個別に設定されたオフセット値だけ変更することが可能とされる。
6つのゾーン711〜716にそれぞれ配設される抵抗加熱線76は、シャフト41の内部を通る電力線を介して電力供給源(図示省略)に接続されている。電力供給源から各ゾーンに至る経路途中において、電力供給源からの電力線は、マグネシア(マグネシウム酸化物)等の絶縁体を充填したステンレスチューブの内部に互いに電気的に絶縁状態となるように配置される。なお、シャフト41の内部は大気開放されている。
次に、ランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53がチャンバー窓61と相対向することとなる。ランプハウス5は、チャンバー6内にて保持部7に保持される半導体ウェハーWにランプ光放射窓53およびチャンバー窓61を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することにより半導体ウェハーWを加熱する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
図8は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートにはIGBT制御部98が接続されている。IGBT制御部98は、IGBT96のゲートにパルス信号を印加してIGBT96をオンオフ駆動する回路である。IGBT制御部98がIGBT96をオンオフするタイミングは制御部3によって制御される。具体的には、制御部3の波形設定部305(図12参照)がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってIGBT制御部98がパルス信号をIGBT96のゲートに出力する。IGBT制御部98がIGBT96のゲートに所定値以上の電圧(パルス信号がオンのときのHi電圧)を印加するとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(パルス信号がオフのときのLow電圧)を印加するとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む回路はIGBT96によってオンオフされる。
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
また、図3のリフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。このような粗面化加工を施しているのは、リフレクタ52の表面が完全な鏡面であると、複数のフラッシュランプFLからの反射光の強度に規則パターンが生じて半導体ウェハーWの表面温度分布の均一性が低下するためである。
上記の構成以外にもフラッシュ加熱部160は、半導体ウェハーWの熱処理時にフラッシュランプFLおよびホットプレート71から発生する熱エネルギーによるチャンバー6およびランプハウス5の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6のチャンバー側部63およびチャンバー底部62には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱するための気体供給管55および排気管56が設けられて空冷構造とされている(図3,7参照)。また、チャンバー窓61とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、ランプハウス5およびチャンバー窓61を冷却する。
<1−3.アライメント部の構成>
次に、アライメント部130の構成について説明する。図9は、アライメント部130の構成を示す図である。アライメント部130は、チャンバー131にウェハ保持部132と光学測定ユニット230とを備えて構成されている。
チャンバー131は半導体ウェハーWを収容する金属製の筐体である。チャンバー131の側壁には受渡ロボット120および搬送ロボット150がアクセスするための開口(図示省略)がそれぞれ設けられており、それぞれの開口はゲートバルブ181,183によって開閉される。
チャンバー131の底部にはウェハ保持部132が設けられている。ウェハ保持部132は、回転テーブル133とアライメントモータ135とを備えている。回転テーブル133は半導体ウェハーWを下面から支持して載置する。回転テーブル133はアライメントモータ135によって鉛直方向軸まわりで回転可能とされている。
光学測定ユニット230は、測定光学系231と、この測定光学系231に対して投光用光ファイバ232を介して結合された投光器233と、測定光学系231に対して受光用光ファイバ234を介して結合された分光器235とを含む。光学測定ユニット230の構成要素のうち測定光学系231はチャンバー131の天井部分に固定設置されており、他の要素はチャンバー131の外部に設けられている。投光器233はハロゲンランプを内蔵しており、一定光量の光を発生する。投光器233から出射された光は投光用光ファイバ232を介して測定光学系231に導かれる。
図10は、測定光学系231の構成を説明するための図である。測定光学系231は、回転テーブル133に支持された半導体ウェハーWの主面にハロゲン光を照射するとともに、該主面からの反射光を受光する投受光部として機能するものである。測定光学系231は、下から順に、アクロマティックレンズ236、ハーフミラー237および全反射ミラー238を鉛直方向に沿って配列している。また、全反射ミラー238からの反射光が向かう方向に沿ってディフューザ239を配置している。
ハーフミラー237は、回転テーブル133に支持される半導体ウェハーWに対して45°の角度(水平面に対して45°の角度)をなす姿勢で設けられており、投光用光ファイバ232の出射端232aからの水平方向の光を受け、これを鉛直方向下方に向けて反射する。ハーフミラー237によって反射された光は、アクロマティックレンズ236を透過して下方に向かって進行する。こうして測定光学系231から下方に向けて出射された光は、回転テーブル133に半導体ウェハーWが支持されているときには、その半導体ウェハーWの主面に照射されることとなる。
半導体ウェハーWの表面にて反射された反射光は、アクロマティックレンズ236およびハーフミラー237を順に透過し、全反射ミラー238によってディフューザ239に向けて反射される。ディフューザ239に入射した反射光は拡散均一化処理を受けて、受光用光ファイバ234の入射端234aに入射する。
すなわち、ディフューザ239は、受光用光ファイバ234の入射端234aと全反射ミラー238との間に介挿されていて、その入射端面239aが全反射ミラー238に対向するとともに、その出射端面239bが受光用光ファイバ234の入射端234aに対向している。また、アクロマティックレンズ236は、半導体ウェハーWからの反射光をディフューザ239の入射端面239aに集束させる働きを有する。
受光用光ファイバ234に入射された光は、分光器235によってスペクトル分解処理を受け、この処理結果として分光器235から出力された信号が制御部3に入力される。制御部3の放射率比算定部303(図12参照)は、後述するようにして半導体ウェハーWの反射光強度から標準ウェハーの放射率と処理対象となる半導体ウェハーWの放射率との放射率比を算定する。
上述した構成要素以外にも、アライメント部130には回転テーブル133に支持されて回転する半導体ウェハーWの切り欠き部(φ300mmウェハーの場合はノッチ、φ200mmウェハーの場合はオリフラ)を検出する検出ヘッド、チャンバー131に窒素ガスを供給するガス供給部およびチャンバー131内の雰囲気ガスを排気する排気部等(いずれも図示省略)が設けられている。
<1−4.制御部の構成>
次に、制御部3の構成について説明する。制御部3は、熱処理装置100に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図11は、制御部3のハードウェア構成を示す図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
また、バスライン39には、保持部昇降機構4のモータ40、コンデンサ93を充電する電源ユニット95、トリガー電極91に高電圧を印加するトリガー回路97、IGBT96をオンオフ駆動するIGBT制御部98、光学測定ユニット230の投光器233および分光器235、カロリーメータ24、並びに、ホットプレート71の温度センサ710等が電気的に接続されている。さらに、バスライン39には、表示部35および入力部36が電気的に接続されている。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部36は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部35に表示された内容を確認しつつ入力部36からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部35と入力部36とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
図12は、第1実施形態の制御部3の機能ブロック図である。制御部3に設けられた印加電圧算定部300、エネルギー測定部301、相関関係取得部302、放射率比算定部303、波形設定部305、フラッシュ昇温算定部306、予備加熱温度算定部307、および、温度加算部308は、制御部3のCPU31が磁気ディスク34に格納された処理用ソフトウェアを実行することによって実現される機能処理部である。これら機能処理部の処理内容については熱処理装置100の処理動作とともに説明する。
<2.熱処理装置の処理動作>
次に、本発明に係る熱処理装置100による半導体ウェハーWの処理動作について説明する。この熱処理装置100において処理対象となる半導体ウェハーWは、パターン形成後にイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体ウェハーである。その不純物の活性化がフラッシュ加熱部160によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。ここでは、熱処理装置100全体におけるウェハーフローについて簡単に説明した後、フラッシュ加熱部160における処理内容および半導体ウェハーWの到達予想温度の算定について説明する。以下に説明する熱処理装置100の処理手順は、制御部3が熱処理装置100の各動作機構を制御することにより進行する。
<2−1.熱処理装置全体におけるウェハーフロー>
熱処理装置100では、まず、不純物注入後の半導体ウェハーWがキャリアCAに複数枚収容された状態でインデクサ部101のロードポート110に載置される。そして、受渡ロボット120がキャリアCAから半導体ウェハーWを1枚ずつ取り出し、アライメント部130に載置する。アライメント部130では、回転テーブル133に支持された半導体ウェハーWを、その中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで回転させノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの位置決めを行う。また、光学測定ユニット230による半導体ウェハーWの反射光強度測定も行われる。
アライメント部130にて位置決めが行われた半導体ウェハーWは搬送ロボット150の上側の搬送アーム151aにより搬送室170内へと取り出され、搬送ロボット150がフラッシュ加熱部160を向くように旋回する。搬送ロボット150がフラッシュ加熱部160に向くと、下側の搬送アーム151bがフラッシュ加熱部160から先行するフラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを取り出し、上側の搬送アーム151aが未処理の半導体ウェハーWをフラッシュ加熱部160へと搬入する。このときに搬送ロボット150は、フラッシュランプFLの長手方向と垂直に搬送アーム151a,151bをスライド移動させる。
フラッシュ加熱部160においては、半導体ウェハーWに予備加熱を行ってからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱を行う。フラッシュ加熱が終了した後、半導体ウェハーWは搬送ロボット150の下側の搬送アーム151bによって受け取られて搬出される。次に、搬送ロボット150は冷却部140に向くように旋回し、下側の搬送アーム151bがフラッシュ加熱処理済の半導体ウェハーWを冷却部140内に載置する。冷却部140にて冷却された半導体ウェハーWは受渡ロボット120によりキャリアCAへと返却される。
<2−2.発光波形の設定>
フラッシュ加熱処理およびウェハー到達予想温度の算定の説明に先立って、フラッシュランプFLの発光波形(発光強度の時間プロファイル)の設定について説明する。本実施形態においては、制御部3の波形設定部305がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってIGBT制御部98がパルス信号をIGBT96のゲートに出力することによりIGBT96がオンオフ制御される。そして、フラッシュランプFLを含む回路がIGBT96によってオンオフされることによりフラッシュランプFLの発光波形が規定されるのである。
このようなフラッシュランプFLの発光波形の設定は、IGBT制御部98が出力するパルス信号の波形を調整することによって行われる。具体的には、オペレータがパルス信号のパルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とを入力部36から制御部3に順次入力する。制御部3の波形設定部305は、その入力内容に従ってパルス信号の波形を設定する。なお、個々のパルス幅の時間およびパルス間隔の時間は概ね0.1ミリ秒〜数ミリ秒である。
波形設定部305によって設定されたパルス波形に従ってIGBT制御部98がIGBT96のゲートにパルス信号を出力する。これにより、IGBT制御部98から出力されたパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、オフのときにはIGBT96がオフ状態となる。その結果、フラッシュランプFLを含む回路がIGBT96によってオンオフされる。
また、IGBT制御部98がIGBT96を最初にオン状態とするタイミングと同期して制御部3がトリガー回路97を制御してトリガー電極91にトリガー電圧を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96がオン状態となり、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、コンデンサ93に蓄積された電荷がフラッシュランプFLのガラス管92内の両端電極間で電流として流れ始め、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。すなわち、フラッシュランプFLが発光を開始し、フラッシュランプFLを流れる電流値は時間とともに増大する。
一旦、フラッシュランプFLの通電が開始され、その電流値が所定値以上残っている状態で断続的にIGBT96がオンオフを繰り返す場合には、トリガー電極91に高電圧を印加しなくてもフラッシュランプFLに電流が流れ続ける。すなわち、最初にIGBT96がオン状態となるときのみトリガー電極91に高電圧を印加すれば、その後はトリガー電圧を印加せずともフラッシュランプFLに電流が継続して流れる。IGBT96がオン状態のときにはフラッシュランプFLのガラス管92内に流れる電流値が増加し、オフ状態のときには電流値が減少する。なお、パルス間隔の時間が長い場合やフラッシュランプFLを流れる電流値が低い場合には、IGBT96がオン状態となる毎にトリガー電極91に高電圧を印加しても良い。また、一定時間間隔にてトリガー電極91に高電圧を印加するようにしても良い。
このようにしてフラッシュランプFLを電流が流れ続け、IGBT96がオンオフを実行するパターンによって電流値の波形が規定される。フラッシュランプFLの発光強度は、フラッシュランプFLに流れる電流にほぼ比例する。従って、フラッシュランプFLの発光波形はフラッシュランプFLを流れる電流値の波形に近似したものとなる。
従来のように、IGBT96を使用することなく単純にフラッシュランプFLを発光させた場合には、コンデンサ93に蓄積されていた電荷が1回の発光で消費され、フラッシュランプFLからの出力波形は幅が0.1ミリセカンドないし10ミリセカンド程度のシングルパルスとなる。これに対して、本実施形態においては、フラッシュランプFLを含む回路中にIGBT96を接続してそのゲートにパルス信号を出力することにより、当該回路がIGBT96によって断続的にオンオフされる。その結果、いわばフラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷が分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。なお、電流値が完全に”0”になる前にIGBT96がオン状態となって電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光強度が完全に”0”になるものではない。
以上のように、入力部36からの入力内容に基づいて制御部3の波形設定部305がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってIGBT制御部98がパルス信号をIGBT96のゲートに出力する。そして、IGBT制御部98から出力されたパルス信号に従ってIGBT96がオンオフ制御され、フラッシュランプFLを含む回路がIGBT96によってオンオフされることによりフラッシュランプFLを流れる電流値の波形が規定され、その結果フラッシュランプFLの発光波形が規定される。すなわち、波形設定部305は直接的にはIGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形を設定するものの、間接的にフラッシュランプFLの発光波形を設定する。入力部36から入力するパルス幅の時間およびパルス間隔の時間を適宜調整することによって、IGBT制御部98がIGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形が変化し、フラッシュランプFLの発光波形も図14に例示するように自由に設定することができる。
図14は、フラッシュランプFLの発光波形の例を示す図である。図14(a)は、従来と同じく単純にフラッシュランプFLを発光させた場合の発光波形であり、IGBT96を長時間にわたってオン状態とした場合にはこのような発光波形となる。図14(b)は、フラッシュランプFLが暫時一定強度にて発光した後、その強度よりも高い最高到達強度の発光ピークを描くように発光する発光波形である。また、図14(c)は、フラッシュランプFLが暫時一定強度にて発光した後、その強度よりも高い最高到達強度の発光ピークを描くように発光し、さらにその後暫時一定強度にて発光する発光波形である。これらはいずれも、入力部36からの入力内容に従って波形設定部305が設定するフラッシュランプFLの発光波形の例であり、プロセスの目的(不純物の活性化、不純物の拡散防止、ウェハー割れの防止、不純物注入時に導入された欠陥の回復等)に応じて使い分けられる。
<2−3.フラッシュ加熱部での処理>
次に、フラッシュ加熱部160における半導体ウェハーWの処理動作について説明する。まず、保持部7が図7に示す処理位置から図3に示す受渡位置に下降する。「処理位置」とは、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWにフラッシュ光照射が行われるときの保持部7の位置であり、図7に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。また、「受渡位置」とは、チャンバー6に半導体ウェハーWの搬出入が行われるときの保持部7の位置であり、図3に示す保持部7のチャンバー6内における位置である。フラッシュ加熱部160における保持部7の基準位置は処理位置であり、処理前にあっては保持部7は処理位置に位置しており、これが処理開始に際して受渡位置に下降するのである。図3に示すように、保持部7が受渡位置にまで下降するとチャンバー底部62に近接し、支持ピン70の先端が保持部7を貫通して保持部7の上方に突出する。
次に、保持部7が受渡位置に下降したときに、弁82および弁87が開かれてチャンバー6の熱処理空間65内に常温の窒素ガスが導入される。続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150が処理対象となる半導体ウェハーWを保持する搬送アーム151aを搬送開口部66からチャンバー6内に進入させる。搬送ロボット150は、3本の支持ピン70の上方にまで搬送アーム151aを進出させた後、搬送アーム151aを若干下降させる。このときに、搬送アーム151aに保持されていた半導体ウェハーWは3本の支持ピン70に受け渡される。
半導体ウェハーWの搬入時におけるチャンバー6への窒素ガスのパージ量は約40リットル/分とされ、供給された窒素ガスはチャンバー6内においてガス導入バッファ83から図4中に示す矢印AR4の方向へと流れ、図3に示す排出路86および弁87を介してユーティリティ排気により排気される。また、チャンバー6に供給された窒素ガスの一部は、べローズ47の内側に設けられる排出口(図示省略)からも排出される。なお、以下で説明する各ステップにおいて、チャンバー6には常に窒素ガスが供給および排気され続けており、窒素ガスの供給量は半導体ウェハーWの処理工程に合わせて様々に変更される。
半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入されて3本の支持ピン70に載置されると、搬送ロボット150が搬送アーム151aをチャンバー6から退出させる。そして、ゲートバルブ185により搬送開口部66が閉鎖された後、保持部昇降機構4により保持部7が受渡位置からチャンバー窓61に近接した処理位置にまで上昇する。保持部7が受渡位置から上昇する過程において、半導体ウェハーWは支持ピン70から保持部7のサセプタ72へと渡され、サセプタ72の上面に載置・保持される。保持部7が処理位置にまで上昇するとサセプタ72に保持された半導体ウェハーWも処理位置に保持されることとなる。
ホットプレート71の6つのゾーン711〜716のそれぞれは、各ゾーンの内部(上部プレート73と下部プレート74との間)に個別に内蔵されたヒータ(抵抗加熱線76)により所定の設定温度となるように加熱されている。保持部7が処理位置まで上昇して半導体ウェハーWが保持部7と接触することにより、その半導体ウェハーWはホットプレート71に内蔵されたヒータによって予備加熱されて温度が次第に上昇する。
この処理位置にて半導体ウェハーWに約60秒間の予備加熱が行われる。半導体ウェハーWの予備加熱温度は、添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし700℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では500℃)。また、保持部7とチャンバー窓61との間の距離は、保持部昇降機構4のモータ40の回転量を制御することにより任意に調整することが可能とされている。
約60秒間の予備加熱時間が経過した後、保持部7が処理位置に位置したまま制御部3の制御によりランプハウス5のフラッシュランプFLから半導体ウェハーWへ向けてフラッシュ光が照射される。フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射を行うに際しては、後述のようにして設定入力された印加電圧Vsにて予め電源ユニット95がコンデンサ93を充電しておく。また、波形設定部305が設定するフラッシュランプFLの発光波形は、後述するウェハー到達予想温度の算定に用いた発光波形と同じにしておく。
コンデンサ93が印加電圧Vsにて充電された状態にてIGBT制御部98がIGBT96のゲートにパルス信号を出力し、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、コンデンサ93に蓄積された電荷がフラッシュランプFLのガラス管92内の両端電極間で電流として流れ始め、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射が実行される。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内の保持部7へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。フラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に1000℃以上の処理温度まで上昇し、半導体ウェハーWに添加された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。なお、フラッシュ加熱においては半導体ウェハーWの表面温度が極めて短時間の間に昇降するため、添加された不純物の熱拡散は抑制される。
フラッシュ加熱が終了し、処理位置における約10秒間の待機の後、保持部7が保持部昇降機構4により再び図3に示す受渡位置まで下降し、半導体ウェハーWが保持部7から支持ピン70へと渡される。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150が搬送アーム151bを搬送開口部66からチャンバー6内に進入させる。搬送ロボット150は、3本の支持ピン70によって支持される半導体ウェハーWの下方にまで搬送アーム151bを進出させた後、搬送アーム151bを上昇させる。これにより、支持ピン70に載置されていた半導体ウェハーWは搬送アーム151bに受け渡される。その後、搬送ロボット150は、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを支持した搬送アーム151bをチャンバー6から退出させる。
既述のように、フラッシュ加熱部160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスがチャンバー6に継続的に供給されており、その供給量は、保持部7が処理位置に位置するときには約30リットル/分とされ、保持部7が処理位置以外の位置に位置するときには約40リットル/分とされる。
<2−4.ウェハー到達予想温度の算定>
次に、フラッシュ加熱時に半導体ウェハーWの表面が到達する予想温度の算定について説明する。図13は、半導体ウェハーWの到達予想温度の算定手順を示すフローチャートである。まず、ある一つの発光波形(例えば、図14のいずれか)について複数の印加電圧にてフラッシュランプFLを発光させ、複数の印加電圧のそれぞれについてフラッシュランプから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーを測定する(ステップS11)。この測定作業は、チャンバー6内に半導体ウェハーWが存在していない状態で行われ、制御部3の波形設定部305によってフラッシュランプFLの新たな発光波形が設定された直後に行うことが好ましい。
ステップS11の測定についてさらに詳細に説明する。予め、制御部3の波形設定部305によってフラッシュランプFLの発光波形が設定されている。そして、電源ユニット95によってコンデンサ93に電圧V1が印加されると、その印加電圧V1に応じた電荷がコンデンサ93に充電され、フラッシュランプFLの両端電極間にも印加電圧V1が印加されることとなる。コンデンサ93に印加電圧V1に応じた電荷が蓄積された状態にてIGBT96がオン状態となり、かつ、それと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されると、コンデンサ93に蓄積された電荷がフラッシュランプFLのガラス管92内の両端電極間で流れ始め、フラッシュランプFLが発光を開始する。フラッシュランプFLの発光波形は波形設定部305によって設定された通りのものとなる。
フラッシュランプFLが発光すると、チャンバー6内の熱処理空間65にフラッシュ光が照射される。熱処理空間65に上方から照射されたフラッシュ光は、第1石英ロッド21の先端の入射面に入射して光導出構造20によってカロリーメータ24へと導かれる。カロリーメータ24は、入射したフラッシュ光を吸収した黒体で発生した熱のエネルギーを変換した電気信号を制御部3のエネルギー測定部301に出力する。エネルギー測定部301は、カロリーメータ24から出力された電気信号に基づいてチャンバー6内に照射されたフラッシュ光のフラッシュエネルギーE1を算定する。このようにして、印加電圧V1にて充電されたコンデンサ93からの電力供給によってフラッシュランプFLが発光したときに(つまり、印加電圧V1にてフラッシュランプFLが発光したときに)、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーE1が測定される。
印加電圧V1における測定が終了すると、同様にして印加電圧V2でのフラッシュエネルギーE2の測定を行う。すなわち、電源ユニット95によってコンデンサ93に電圧V2を印加して充電する。そして、印加電圧V2にて充電されたコンデンサ93からの電力供給によってフラッシュランプFLを発光させ、チャンバー6内に照射されたフラッシュ光のフラッシュエネルギーE2をカロリーメータ24から出力された電気信号に基づいてエネルギー測定部301が算定する。
以降、このような手順を繰り返し、複数の印加電圧V1、V2、V3・・・Vnにて充電されたコンデンサ93からの電力供給によってフラッシュランプFLが発光したときに(つまり、複数の印加電圧V1、V2、V3・・・VnにてフラッシュランプFLが発光したときに)、当該複数の印加電圧のそれぞれについてフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーE1、E2、E3・・・Enが測定される。この測定作業はチャンバー6内に半導体ウェハーWが存在していない状態で実行され、例えば処理ロット間において後述の相関関係を示す関係式のキャリブレーションを行う目的で実行するようにしても良い。なお、複数の印加電圧の全てについて、波形設定部305によって設定されたフラッシュランプFLの発光波形は共通である。また、波形設定部305が異なる発光波形を設定した場合には、設定されたフラッシュランプFLの発光波形毎に、複数の印加電圧にてフラッシュランプFLが発光したときのフラッシュエネルギーをエネルギー測定部301が測定する。
次に、このようにして得られた測定結果に基づいて、フラッシュランプFLへの印加電圧VとフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとの相関関係を示す関係式を取得する(ステップS12)。本実施形態においては、エネルギー測定部301によって得られた測定結果に基づいて、制御部3の相関関係取得部302が印加電圧VとフラッシュエネルギーEとの関係を線形近似(一次関数にて近似)する。
図15は、印加電圧VとフラッシュエネルギーEとの関係の線形近似の一例を示す図である。同図に示すように、フラッシュランプFLへの印加電圧VとフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとには概ね線形の関係が認められる。このため、これらの両パラメータに線形近似を行うのは妥当なものである。相関関係取得部302は、公知の手法(例えば、最小二乗法)を用いて、図15に示す如く印加電圧VとフラッシュエネルギーEとの関係を線形近似し、次の式(1)にて示される関係式を取得する。取得された関係式は制御部3の記憶部(ROM32、RAM33または磁気ディスク34)に格納される。
式(1)において、a,bは線形近似によって得られる定数である。定数a,bは、フラッシュランプFLの特性、チャンバー6内の形状や反射率等の種々の因子によって規定される。また、フラッシュランプFLの発光波形が異なると、印加電圧VとフラッシュエネルギーEとの相関関係も異なるものとなる。このため、波形設定部305が異なる発光波形を設定した場合には、設定されたフラッシュランプFLの発光波形毎に、印加電圧Vとフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとの相関関係を示す関係式を取得する。
次に、オペレータが処理対象となる半導体ウェハーWについての印加電圧Vsを入力部36から熱処理装置100に入力する(ステップS13)。具体的には、処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光照射を行うためのコンデンサ93を充電する印加電圧Vsをオペレータが設定入力するものであり、例えば表示部35に表示されているレシピ(半導体ウェハーWの処理手順および処理条件を記述したもの)の電圧の項目を入力部36から入力するようにすれば良い。この設定入力は、例えば処理対象となる未処理の半導体ウェハーWが受渡ロボット120によってインデクサ部101のキャリアCAから取り出される前に行えば良い。
次に、標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比を算定する(ステップS14)。本実施形態における標準ウェハーは、パターン形成のなされていない無地のベアウェハーである。標準ウェハーについては放射率が既知であり、放射率比の算定は処理対象となる半導体ウェハーWの反射光強度を測定することによって行われる。反射光強度の測定は、ステップS13にて印加電圧Vsが設定された処理対象となる半導体ウェハーWが受渡ロボット120によってアライメント部130に搬入され、回転テーブル133に載置されたときに実行される。具体的には、処理対象となる半導体ウェハーWが回転テーブル133に載置されたときに、測定光学系231から半導体ウェハーWの表面に光照射を行う。半導体ウェハーWの表面にて反射された反射光は、測定光学系231にて受光された後、分光器235によってスペクトル分解処理を受け、この処理結果として半導体ウェハーWの反射光強度の分光特性が制御部3に入力される。処理対象となる半導体ウェハーWの反射光強度は制御部3の記憶部に格納される。
一方、測定光学系231から光照射を行ったときの標準ウェハーの反射光強度についても制御部3の記憶部に記憶されている。標準ウェハーの反射光強度については、何れかのタイミングにて実際にアライメント部130にて標準ウェハーの反射光強度を実測した結果を制御部3の記憶部に格納するようにしておけば良い。また、標準ウェハーがベアウェハーであれば、その反射光強度は既知であり、そのデータを制御部3の記憶部に予め格納するようにしておいても良い。標準ウェハーの反射率を100%とし、標準ウェハーの反射光強度に対する処理対象となる半導体ウェハーWの反射光強度をその処理対象半導体ウェハーWの反射率R(%)として放射率比算定部303が算定する。
また、標準ウェハーの放射率εbは既知であり、この値についても予め制御部3の記憶部に記憶されている。本実施形態のように、標準ウェハーとして無地のベアウェハーを用いるのであれば、放射率εb=0.65である。そして、放射率比算定部303は、既知の標準ウェハーの放射率εbと処理対象となる半導体ウェハーWの反射率Rの実測値とに基づいて、処理対象となる半導体ウェハーWの放射率εsに対する標準ウェハーの放射率εbの比率である放射率比εrを次の式(2)に従って算定する。一般に、表面にパターンの形成されている処理対象半導体ウェハーWの放射率εsの方がパターンの形成されていない標準ウェハーの放射率εbよりも大きく、放射率比εrは1よりも小さくなる。但し、式(2)においては、放射率と反射率との和が1になることを前提としている。
次に、印加電圧Vsにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときに処理対象となる半導体ウェハーWが吸収するのと等量のエネルギーを標準ウェハーに吸収させるのに必要な印加電圧Vb(標準ウェハーについての相当印加電圧)を制御部3の印加電圧算定部300が算定する(ステップS15)。印加電圧算定部300は、相関関係取得部302によってステップS12で取得されたフラッシュランプFLへの印加電圧Vとフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとの相関関係を示す関係式および放射率比算定部303によってステップS14で算定された標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比εrに基づいて、標準ウェハーについての相当印加電圧Vbを算定する。なお、この算定処理のため、エネルギー測定部301および相関関係取得部302は印加電圧算定部300内にて実現される処理部としている。
フラッシュランプFLからフラッシュエネルギーEsにて処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光が照射されたときに当該半導体ウェハーWが吸収するのと等量のエネルギーを標準ウェハーに吸収させるためには、次の式(3)で求められるフラッシュエネルギーEbにてフラッシュランプFLから標準ウェハーにフラッシュ光を照射する必要がある。
パターンが形成されていない標準ウェハーの方がパターンが形成されている処理対象半導体ウェハーWよりも吸収率が低い(つまり放射率が低い)ため、処理対象半導体ウェハーWと等量のフラッシュエネルギーを標準ウェハーに吸収させるためには、処理対象半導体ウェハーWよりも照射するフラッシュ光のフラッシュエネルギーを大きくする必要がある。具体的には、式(3)に示すように、処理対象となる半導体ウェハーWに照射するフラッシュ光のフラッシュエネルギーEsを放射率比εrにて除して求められるフラッシュエネルギーEbにてフラッシュ照射を行う必要がある。
この式(3)と式(1)とから次の式(4)が導かれる。印加電圧算定部300は、この式(4)から印加電圧Vsにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときに処理対象となる半導体ウェハーWが吸収するのと等量のエネルギーを標準ウェハーに吸収させるのに必要な印加電圧Vbを算定する。なお、上述の通り、印加電圧Vsは入力部36からの入力によって与えられる数値であり、放射率比εrは式(2)より導き出されるパラメータである。
次に、印加電圧算定部300が算定した印加電圧Vbにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行ったときにフラッシュ光照射の寄与によって標準ウェハーの表面が昇温するフラッシュ昇温温度Tjumpを算定する(ステップS16)。本実施形態においては、非定常熱伝導解析の手法を用いてフラッシュ光照射時の標準ウェハーのフラッシュ昇温温度Tjumpを求める。
まず、半導体ウェハーWを無限平板とし、厚さ方向xの1次元のみを考える。そうすると、uを温度、tを時刻として1次元非定常熱伝導方程式は次の式(5)のように表される。但し、式(5)において、ρは密度、Cは比熱、λは熱伝導率、qは単位時間当たりの発熱量である。
式(5)をΔxの領域ごとに離散化する。領域Δxの中での熱発生をΔxgとすると、式(5)は結局式(6)のように表される。
ここで、式(6)を差分近似する。温度uは時刻tおよび座標xの関数であるためu(t,x)と表すと、時刻tm+1における温度u(tm+1,xn)は次の式(7)にて表される。
式(7)において、熱発生の項g(tm)はウェハー表面におけるフラッシュ光照射によるもののみと考え、ウェハー表面以外ではg(tm)=0とする。また、境界条件として、時刻tmにおけるウェハー裏面部での温度を与える必要がある。ここで、時刻tmにおけるウェハー表面の熱発生g(tm)は、その時刻tmにフラッシュランプFLに流れる電流値をi(tm)とすると次の式(8)で表される。
式(8)において、Aは熱処理装置100のフラッシュ加熱部160に固有の定数である。また、fは電流をエネルギーに変換する際のべき乗数(定数)であり、本実施形態ではf=1.5としている。装置固有の定数Aについては、予め実験等によって求めておけば良く、例えばフラッシュランプFLを含む回路(図8の回路)に流れる電流値をクランプメータによって実測するとともに、そのときのフラッシュ光照射によって発生する熱量をカロリーメータによって実測し、それらの実測結果から求めるようにすれば良い。
また、コンデンサ93に充電する印加電圧とフラッシュランプFLを含む回路に流れる電流値との相関関係も予め取得しておく。この相関関係はフラッシュランプFLの発光波形に依存するため、波形設定部305が設定したフラッシュランプFLの発光波形毎に、印加電圧VとフラッシュランプFLを流れる電流値iとの相関関係を取得しておくのが好ましい。
制御部3のフラッシュ昇温算定部306は、当該相関関係に基づいて、印加電圧算定部300によって算定された標準ウェハーに対する印加電圧Vbにて充電されたコンデンサ93から電力供給を行ったときに時刻tmにフラッシュランプFLに流れる電流値i(tm)を求め、その値を式(8)に適用して時刻tmにおけるウェハー表面の熱発生g(tm)を算定する。さらに、フラッシュ昇温算定部306は、熱発生g(tm)を式(7)に適用してフラッシュ光照射時における標準ウェハーの表面の上昇温度を時系列的に求める。そして、フラッシュ昇温算定部306は、標準ウェハーの表面における最高上昇温度をフラッシュ光照射の寄与によるフラッシュ昇温温度Tjumpとして算定する。
フラッシュ昇温算定部306が求めたフラッシュ昇温温度Tjumpは、印加電圧Vbにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って標準ウェハーにフラッシュ光を照射したときの上昇温度である。この印加電圧Vbは、印加電圧Vsにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときに処理対象となる半導体ウェハーWが吸収するのと等量のエネルギーを標準ウェハーに吸収させるのに必要な印加電圧である。つまり、印加電圧Vbにて標準ウェハーにフラッシュ光照射を行うのと、印加電圧Vsにて処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光照射を行うとではウェハーが吸収するエネルギーは等しく、温度上昇も等しくなる。従って、上記のようにして求められたフラッシュ昇温温度Tjumpは、印加電圧Vsにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射したときのそのフラッシュ光照射の寄与による上昇温度に他ならない。なお、フラッシュ昇温温度Tjumpを算定するに際して、設定入力された印加電圧Vsではなく、標準ウェハーについての印加電圧Vbを用いるのは上記算定の基礎となっている非定常熱伝導方程式が標準ウェハーを対象としたものであることに起因する。
一方、フラッシュ光照射の寄与によるフラッシュ昇温温度Tjumpとは別に、保持部7のホットプレート71によって予備加熱される処理対象半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferを予備加熱温度算定部307が算定する(ステップS17)。この算定のために、保持部7のホットプレート71の温度とその保持部7に保持される半導体ウェハーWの温度との相関関係を予め取得しておく。半導体ウェハーWは保持部7のサセプタ72によって面接触にて保持されるため、ホットプレート71の温度と半導体ウェハーWの温度とは概ね等しくなるのであるが、若干の相違が生じるため、両温度の相関関係を取得しておくのである。予備加熱温度算定部307は、その相関関係に基づいて、ホットプレート71の設定温度からフラッシュ光照射直前の処理対象半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferを算定する。
次に、温度加算部308が次の式(9)に従って処理対象となる半導体ウェハーWの表面の到達予想温度Tpeakを算定する(ステップS18)。すなわち、温度加算部308は、ホットプレート71による予備加熱温度Twaferにフラッシュ光照射の寄与によるフラッシュ昇温温度Tjumpを加算して処理対象となる半導体ウェハーWの表面が到達する予想温度Tpeakを算定する。
その後、算定された到達予想温度Tpeakの値を制御部3が表示部35に表示する(ステップS19)。このとき、単に到達予想温度Tpeak(最高到達温度)の数値を表示するのに代えて、表示部35に表面予想温度を逐次プロットして図16に示す如き処理対象半導体ウェハーWの表面予想温度の温度プロファイルを表示するようにしても良い。具体的には、式(7)から半導体ウェハーW表面の上昇温度を時系列的に求め、それに予備加熱温度Twaferを加算した値を逐次プロットする。
<3.第1実施形態の熱処理装置における利点>
第1実施形態においては、まず、処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光照射を行うフラッシュランプFLに電力供給を行うコンデンサ93に充電する印加電圧Vsをオペレータが設定入力する。熱処理装置100の制御部3は、その印加電圧Vsと半導体ウェハーWの反射光強度の実測値とからフラッシュ光照射の寄与によって半導体ウェハーWの表面が昇温するフラッシュ昇温温度Tjumpを算定し、それにホットプレート71による予備加熱温度Twaferを加算して半導体ウェハーWの表面が到達する予想温度Tpeakを算定している。これにより、オペレータは印加電圧Vsを入力するだけでフラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの到達予想温度を取得することができる。
また、第1実施形態においては、算定された予想温度Tpeakを表示部35に表示している。このため、オペレータはレシピ上の電圧を入力部36から入力するだけで簡単に処理対象半導体ウェハーWの到達予想温度を知ることができる。
表示部35に表示された到達予想温度が所望の値と異なる場合には、処理対象となる半導体ウェハーWをアライメント部130、搬送室170またはフラッシュ加熱部160にて待機させつつ、オペレータが印加電圧Vsを入力部36から再入力するようにしても良い。例えば、表示部35に表示された到達予想温度がプロセス上最適とされる到達温度よりも高い場合には、オペレータがより低い印加電圧Vsを再入力する。逆に、表示された到達予想温度が最適到達温度よりも低い場合には、オペレータがより高い印加電圧Vsを再入力する。表示部35には、新たに入力された印加電圧Vsから上述の手順に従って再計算されたTpeakが表示される。このようにすれば、処理対象となる半導体ウェハーWの表面の到達温度がプロセス上最適となるように、印加電圧Vsを容易に調整することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の構成は概ね第1実施形態と同じである。また、第2実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、制御部3の機能的構成とウェハー到達予想温度の算定手法である。
図17は、第2実施形態の制御部3の機能ブロック図である。なお、図17において、第1実施形態と同一の要素については図12と同一の符号を付している。第1実施形態においては、1次元の非定常熱伝導解析の手法を用いてフラッシュ光照射の寄与によるフラッシュ昇温温度Tjumpを求めていたが、第2実施形態ではフラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面到達温度とコンデンサ93への印加電圧との対応関係を示す対応テーブル315を作成し、その対応テーブル315から半導体ウェハーWの表面が到達する予想温度Tpeakを求めている。
フラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面が到達する予想温度Tpeakは理論的には第1実施形態のようにして求められるものであるが、本発明者等が鋭意調査を行ったところ、処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光照射を行うフラッシュランプFLに電力供給を行うコンデンサ93に充電する印加電圧Vsとその半導体ウェハーWの表面到達温度には強い相関関係があることを見出した。そこで、第2実施形態においては、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面到達温度とコンデンサ93への印加電圧との対応関係を示す対応テーブル315を作成し、その対応テーブル315を制御部3の磁気ディスク34に予め格納しておく。
対応テーブル315の作成は、複数の印加電圧Vsについて、第1実施形態の手法を用いて到達予想温度Tpeakを算定し、それらの対応関係をテーブル化して行う。但し、標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比εrが異なると、印加電圧Vsから導き出される標準ウェハーについての印加電圧Vbも異なることとなるため、最終的な到達予想温度Tpeakも異なる。このため、複数の放射率比εrについて、印加電圧Vsと到達予想温度Tpeakとの対応関係を取得し、それぞれの放射率比εrについて対応テーブル315を作成しておくのが好ましい。また、処理対象となる半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferについては所定の設定値としておく。
このようにして複数の放射率比εrのそれぞれについて印加電圧Vsと到達予想温度Tpeakとの対応関係を取得し、それらの対応関係をテーブル化した対応テーブル315を制御部3の磁気ディスク34に予め格納しておく。制御部3の予想温度算定部318は、入力部36から入力された印加電圧Vsと放射率比算定部303によって算定された放射率比εrとに基づいて、対応テーブル315からその印加電圧Vsに対応する到達予想温度Tpeakを取得して表示部35に表示する。
第2実施形態において、処理対象となる半導体ウェハーWの表面がフラッシュ加熱時に到達する予想温度を算定するときには、まず第1実施形態と同じく、オペレータが処理対象となる半導体ウェハーWについての印加電圧Vsを入力部36から熱処理装置100に入力する。また、第1実施形態と同様にして標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比εrを算定する。すなわち、印加電圧Vsが設定された処理対象となる半導体ウェハーWがアライメント部130に搬入されてその半導体ウェハーWの反射光強度が測定され、放射率比算定部303が式(2)より処理対象となる半導体ウェハーWの放射率εsに対する標準ウェハーの放射率εbの比率である放射率比εrを算定する。次に、予想温度算定部318が放射率比算定部303から伝達された放射率比εrに適合する対応テーブル315から設定入力された印加電圧Vsに対応する到達予想温度Tpeakを取得して表示部35に表示する。残余については第2実施形態は第1実施形態と全く同じである。
第2実施形態のように予め半導体ウェハーWの表面到達温度とコンデンサ93への印加電圧との対応関係を示す対応テーブル315を作成し、その対応テーブル315から処理対象となる半導体ウェハーWの表面が到達する予想温度を取得するようにしても、第1実施形態と同様に、オペレータは印加電圧Vsを入力するだけでフラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの到達予想温度を取得することができる。また、第2実施形態においても、取得された半導体ウェハーWの到達予想温度を表示部35に表示している。このため、オペレータはレシピ上の電圧を入力部36から入力するだけで簡単に処理対象半導体ウェハーWの到達予想温度を知ることができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の構成は概ね第1実施形態と同じである。また、第3実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第1および第2実施形態では、オペレータが印加電圧を入力し、その印加電圧から半導体ウェハーWの到達予想温度を算定するようにしていたが、第3実施形態においては、オペレータが半導体ウェハーWの目標温度を入力し、フラッシュ光照射時に処理対象となる半導体ウェハーWがその目標温度に到達する印加電圧を算定する。
図18は、第3実施形態の制御部3の機能ブロック図である。また、図19は、目標温度から印加電圧を算定する手順を示すフローチャートである。なお、図18において、第1実施形態と同一の要素については図12と同一の符号を付している。まず、ある一つの発光波形(例えば、図14のいずれか)について複数の印加電圧にてフラッシュランプFLを発光させ、複数の印加電圧のそれぞれについてフラッシュランプから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーをエネルギー測定部301が測定する(ステップS21)。この測定作業は、図13のステップS11と全く同じである。
次に、ステップS21にて得られた測定結果に基づいて、フラッシュランプFLへの印加電圧VとフラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとの相関関係を示す関係式を取得する(ステップS22)。この工程も図13のステップS12と全く同じである。すなわち、エネルギー測定部301によって得られた測定結果に基づいて、相関関係取得部302が印加電圧VとフラッシュエネルギーEとの関係を線形近似し、式(1)にて示される関係式を取得する。なお、第1実施形態と同じく、波形設定部305が異なる発光波形を設定した場合には、設定されたフラッシュランプFLの発光波形毎に、複数の印加電圧にてフラッシュランプFLが発光したときのフラッシュエネルギーをエネルギー測定部301が測定し、印加電圧Vとフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとの相関関係を示す関係式を相関関係取得部302が取得する。
次に、オペレータが処理対象となる半導体ウェハーWについての目標温度Tobjを入力部36から熱処理装置100に入力する(ステップS23)。具体的には、処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光照射を行ったときに当該半導体ウェハーWの表面が到達する目標温度Tobjをオペレータが設定入力するものであり、例えば表示部35に表示されているレシピにおいて目標温度を入力部36から入力するようにすれば良い。この設定入力は、例えば処理対象となる未処理の半導体ウェハーWが受渡ロボット120によってインデクサ部101のキャリアCAから取り出される前に行えば良い。
次に、予備加熱温度算定部307が保持部7のホットプレート71によって予備加熱される処理対象半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferを算定する(ステップS24)。この処理工程は図13のステップS17と同じである。すなわち、保持部7のホットプレート71の温度とその保持部7に保持される半導体ウェハーWの温度との相関関係が予め取得されている。半導体ウェハーWは保持部7のサセプタ72によって面接触にて保持されるため、ホットプレート71の温度と半導体ウェハーWの温度とは概ね等しくなるのであるが、若干の相違が生じるため、両温度の相関関係を取得しておくのである。予備加熱温度算定部307は、その相関関係に基づいて、ホットプレート71の設定温度からフラッシュ光照射直前の処理対象半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferを算定する。
続いて、フラッシュ昇温算定部311がフラッシュ光照射時における半導体ウェハーWの表面でのフラッシュ光照射の寄与によって温度上昇すべきフラッシュ昇温温度Tjumpを算定する(ステップS25)。フラッシュ昇温算定部311は次の式(10)に従ってフラッシュ光照射によるフラッシュ昇温温度Tjumpを算定する。すなわち、フラッシュ昇温算定部311は、ステップS23にて入力された目標温度TobjからステップS24にて求められた半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferを減算して処理対象となる半導体ウェハーWの表面おいてフラッシュ光照射によって昇温すべきフラッシュ昇温温度Tjumpを算定する。
次に、フラッシュ光照射によって標準ウェハーをフラッシュ昇温温度Tjumpだけ昇温させるのに必要なコンデンサ93への印加電圧Vbを標準電圧算定部312が算定する(ステップS26)。この算定は、第1実施形態において印加電圧Vbからフラッシュ昇温温度Tjumpを算定した(図13のステップS16)のと逆の演算を実行する。すなわち、標準電圧算定部312は、フラッシュ昇温温度Tjumpを式(7)の温度uに適用し、フラッシュ昇温温度Tjumpを得るために必要な標準ウェハーの表面における熱発生g(tm)を求める。さらに、標準電圧算定部312は、熱発生g(tm)を式(8)に適用し、熱発生g(tm)を得るために必要なフラッシュランプFLに流れる電流値をi(tm)を求める。コンデンサ93に充電する印加電圧とフラッシュランプFLを含む回路に流れる電流値との相関関係は予め取得されている。標準電圧算定部312は、当該相関関係に基づいて、フラッシュランプFLに電流値i(tm)の電流が流れるのに必要なコンデンサ93に対する印加電圧Vbを算定する。なお、第3実施形態の標準ウェハーは、第1実施形態と同じく、パターン形成のなされていない無地のベアウェハーである。
このように、第3実施形態においては、1次元の非定常熱伝導解析の手法を用いて標準ウェハーをフラッシュ昇温温度Tjumpだけ昇温させるのに必要なコンデンサ93への印加電圧Vbを算定している。なお、この算定の基礎となっている非定常熱伝導方程式が標準ウェハーを対象としたものであるため、ステップS26にて算定されるのは標準ウェハーをフラッシュ昇温温度Tjumpだけ昇温させるのに必要なコンデンサ93への印加電圧Vbである。
次に、標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比εrを算定する(ステップS27)。この処理工程は図13のステップS14と同じである。すなわち、処理対象となる半導体ウェハーWの反射光強度をアライメント部130にて測定光学系231を用いて測定して半導体ウェハーWの反射率R(%)を求める。そして、放射率比算定部303がその反射率Rと標準ウェハーの既知の放射率εb(標準ウェハーがベアウェハーであればεb=0.65)とに基づいて、処理対象半導体ウェハーWの放射率εsに対する標準ウェハーの放射率εbの比率である放射率比εrを式(2)に従って算定する。
次に、ステップS26にて算定された印加電圧Vb、および、処理対象となる半導体ウェハーWと標準ウェハーとの放射率比εrに基づいて、印加電圧Vbにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って標準ウェハーにフラッシュ光を照射したときに標準ウェハーが吸収するのと等量のエネルギーを処理対象となる半導体ウェハーWに吸収させるのに必要なコンデンサ93への印加電圧Vsを処理電圧算定部313が算定する(ステップS28)。この算定は、第1実施形態において処理対象となる半導体ウェハーWについての印加電圧Vsから標準ウェハーに対する印加電圧Vbを算定した(図13のステップS15)のと逆の演算を実行する。処理電圧算定部313は、相関関係取得部302によってステップS22で取得されたフラッシュランプFLへの印加電圧Vとフラッシュ光のフラッシュエネルギーEとの相関関係を示す関係式および放射率比算定部303によってステップS27で算定された標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比εrに基づいて、標準ウェハーについての印加電圧Vbに相当する処理対象半導体ウェハーWについての印加電圧Vsを算定する。なお、この算定処理のため、エネルギー測定部301および相関関係取得部302は処理電圧算定部313内にて実現される処理部としている。
フラッシュランプFLからフラッシュエネルギーEbにて標準ウェハーにフラッシュ光が照射されたときに当該標準ウェハーが吸収するのと等量のエネルギーを処理対象となる半導体ウェハーWに吸収させるためには、次の式(11)で求められるフラッシュエネルギーEsにてフラッシュランプFLから処理対象半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射する必要がある。
この式(11)と式(1)とから次の式(12)が導かれる。処理電圧算定部313は、この式(12)から印加電圧Vbにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給を行って標準ウェハーにフラッシュ光を照射したときに標準ウェハーが吸収するのと等量のエネルギーを処理対象となる半導体ウェハーWに吸収させるのに必要なコンデンサ93への印加電圧Vsを算定する。
その後、算定された印加電圧Vsの値を制御部3が表示部35(例えば、表示部35に表示されているレシピ上に)に表示するとともに、処理対象となる半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を行う際にはその印加電圧Vsにてコンデンサ93に対する充電が行われる(ステップS29)。具体的には、処理対象となる半導体ウェハーWに対してフラッシュ加熱部160にてフラッシュ光照射を行うときに、処理電圧算定部313によって算定された印加電圧Vsにて電源ユニット95がコンデンサ93を充電する。その結果、印加電圧Vsにて充電されたコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給が行われて半導体ウェハーWにフラッシュ光照射が実行され、半導体ウェハーWの表面が目標温度Tobjにまで昇温される。
以上のように、第3実施形態においては、概ね第1実施形態とは逆の演算を行って目標温度Tobjから印加電圧Vsを算定している。すなわち、まず、処理対象となる半導体ウェハーWについての目標温度Tobjをオペレータが設定入力する。熱処理装置100の制御部3は、その目標温度Tobjからホットプレート71による予備加熱温度Twaferを減算してフラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面が昇温すべきフラッシュ昇温温度Tjumpを算定し、標準ウェハーをフラッシュ昇温温度Tjumpだけ昇温させるのに必要な印加電圧Vbを算定する。そして、その印加電圧Vbと半導体ウェハーWの反射光強度の実測値とから処理対象となる半導体ウェハーWをフラッシュ昇温温度Tjumpだけ昇温させるのに必要な印加電圧Vsを算定している。このようにして、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射したときに処理対象となる半導体ウェハーWの表面が目標温度Tobjに到達するように、フラッシュランプFLに電力供給を行うコンデンサ93に充電する印加電圧Vsが設定される。これにより、オペレータは目標温度Tobjを設定入力するだけで、半導体ウェハーWの表面を目標温度Tobjにまで昇温させるのに必要な印加電圧Vsを設定することができる。
また、第3実施形態においては、算定された印加電圧Vsにて電源ユニット95がコンデンサ93を充電し、そのコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給が行われて半導体ウェハーWにフラッシュ光照射が行われるため、半導体ウェハーWの表面が目標温度Tobjにまで到達する。オペレータが設定入力する目標温度Tobjをプロセスの目的(不純物の活性化、不純物の拡散防止、ウェハー割れの防止、不純物注入時に導入された欠陥の回復等)に応じた適切な値としておけば、半導体ウェハーWの表面を適切な目標温度Tobjにまで昇温させるのに必要な印加電圧Vsを簡単に設定することができる。その結果、半導体ウェハーWの表面が適切な目標温度Tobjにまで到達することとなる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態の熱処理装置の構成は概ね第1実施形態と同じである。また、第4実施形態の熱処理装置における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第4実施形態においては、第3実施形態と同様に、オペレータが半導体ウェハーWの目標温度を入力し、フラッシュ光照射時に処理対象となる半導体ウェハーWがその目標温度に到達する印加電圧を算定する。但し、第4実施形態は、制御部3の機能的構成と印加電圧の算定手法において第3実施形態と相違する。
図20は、第4実施形態の制御部3の機能ブロック図である。なお、図20において、第1実施形態および第2実施形態と同一の要素については図12および図17と同一の符号を付している。第3実施形態においては、1次元の非定常熱伝導解析の手法を用いてフラッシュ昇温温度Tjumpだけ昇温させるのに必要なコンデンサ93への印加電圧Vbを算定していたが、第4実施形態ではフラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面到達温度とコンデンサ93への印加電圧との対応関係を示す対応テーブル315を作成し、その対応テーブル315から印加電圧Vsを求めている。
フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面を目標温度Tobjに到達させるのに必要な印加電圧Vsは理論的には第3実施形態のようにして求められるものであるが、第2実施形態にて述べた通り、処理対象となる半導体ウェハーWにフラッシュ光照射を行うフラッシュランプFLに電力供給を行うコンデンサ93に充電する印加電圧Vsとその半導体ウェハーWの表面到達温度には強い相関関係があることを本発明者等は見出した。そこで、第4実施形態においては、第2実施形態と同じく、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面到達温度とコンデンサ93への印加電圧との対応関係を示す対応テーブル315を作成し、その対応テーブル315を制御部3の磁気ディスク34に予め格納しておく。
対応テーブル315の作成は、第2実施形態と同様にして行えば良い。すなわち、複数の放射率比εrのそれぞれについて印加電圧Vsと到達予想温度Tpeakとの対応関係を取得し、それらの対応関係をテーブル化した対応テーブル315を制御部3の磁気ディスク34に予め格納しておく。制御部3の印加電圧設定部319は、入力部36から入力された目標温度Tobjと放射率比算定部303によって算定された放射率比εrとに基づいて、対応テーブル315からその目標温度Tobjに対応する印加電圧Vsを取得し、電源ユニット95に印加電圧Vsにてコンデンサ93に充電させる。
第4実施形態において、処理対象となる半導体ウェハーWを目標温度Tobjにまで到達させるのに必要な印加電圧Vsを算定するときには、第3実施形態と同じく、オペレータが処理対象となる半導体ウェハーWについての目標温度Tobjを入力部36から熱処理装置100に入力する。また、第1実施形態と同様にして標準ウェハーと処理対象半導体ウェハーWとの放射率比を算定する。すなわち、目標温度Tobjが設定された処理対象となる半導体ウェハーWがアライメント部130に搬入されてその半導体ウェハーWの反射光強度が測定され、放射率比算定部303が式(2)より処理対象となる半導体ウェハーWの放射率εsに対する標準ウェハーの放射率εbの比率である放射率比εrを算定する。次に、印加電圧設定部319が放射率比算定部303から伝達された放射率比εrに適合する対応テーブル315から設定入力された目標温度Tobjに対応する印加電圧Vsを取得する。処理対象となる半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を行う際にはその印加電圧Vsにてコンデンサ93に対する充電が行われる。残余については第4実施形態は第3実施形態と全く同じである。
第4実施形態のように予め半導体ウェハーWの表面到達温度とコンデンサ93への印加電圧との対応関係を示す対応テーブル315を作成し、その対応テーブル315から処理対象となる半導体ウェハーWの表面を目標温度Tobjにまで到達させるのに必要な印加電圧Vsを取得するようにしても、第3実施形態と同様に印加電圧Vsが設定される。すなわち、オペレータは目標温度Tobjを設定入力するだけで、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射したときに処理対象となる半導体ウェハーWの表面が目標温度Tobjに到達するように、フラッシュランプFLに電力供給を行うコンデンサ93に充電する印加電圧Vsが設定される。
また、第4実施形態においても、算定された印加電圧Vsにて電源ユニット95がコンデンサ93を充電し、そのコンデンサ93からフラッシュランプFLに電力供給が行われて半導体ウェハーWにフラッシュ光照射が行われるため、半導体ウェハーWの表面が目標温度Tobjにまで到達する。目標温度Tobjをプロセスの目的に応じた適切な値としておけば、半導体ウェハーWの表面を適切な目標温度Tobjにまで昇温させるのに必要な印加電圧Vsを簡単に設定することができる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態においては、相関関係取得部302が印加電圧VとフラッシュエネルギーEとの関係を線形近似していたが、これに限定されるものではなく、二次関数以上の高次関数にて近似して相関関係を示す関係式を取得するようにしても良い。
また、上記各実施形態においては、標準ウェハーとしてパターン形成のなされていない無地のベアウェハーを用いていたが、これに代えて反射光強度の分光特性が既知である他の種類のウェハーを用いるようにしても良い。例えば、標準ウェハーとしてベアウェハーにイオン注入法によって不純物を注入したブランケットウェハーを用いるようにしても良い。
また、IGBT96のゲートに出力するパルス信号の波形の設定は、入力部36から逐一パルス幅等のパラメータを入力することに限定されるものではなく、例えば、オペレータが入力部36から波形を直接グラフィカルに入力するようにしても良いし、以前に設定されて磁気ディスク等の記憶部に記憶されていた波形を読み出すようにしても良いし、或いは熱処理装置100の外部からダウンロードするようにしても良い。
また、半導体ウェハーWの素材であるシリコンの熱伝導率は、その温度で変化することも考えられる。そのため、半導体ウェハーWの予備加熱温度が異なれば、異なる予備加熱温度に予備加熱された半導体ウェハーWに対して、同じ電圧をフラッシュランプFLに印加してフラッシュ加熱を行っても半導体ウェハーW表面の温度の上昇幅が異なる場合が考えられる。そこで、その場合、各異なる予備加熱温度毎に、最終的な半導体ウェハーWの目標となる表面温度を得るためのフラッシュランプFLに付与すべき電圧値を求めてテーブル化し、メモリに記憶するようにすればよい。このようにしておけば、例え、予備加熱温度が異なっても、それに応じたフラッシュランプFLに付与すべき電圧を自動的に選択して、半導体ウェハーWの表面を所望の目標温度まで加熱することができる。
また、上記実施形態においては、ランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。
また、IGBT96に代えて、ゲートに入力された信号レベルに応じて回路をオンオフできる他のトランジスタを用いるようにしても良い。もっとも、フラッシュランプFLの発光には相当に大きな電力が消費されるため、大電力の取り扱いに適したIGBTやGTO(Gate Turn Off)サイリスタを採用するのが好ましい。
また、上記実施形態においては、ホットプレート71に載置することによって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしていたが、予備加熱の手法はこれに限定されるものではなく、ハロゲンランプを設けて光照射によって半導体ウェハーWを予備加熱するようにしても良い。ハロゲンランプによって予備加熱を行う場合には、ハロゲンランプへの出力と半導体ウェハーWとの温度の相関関係を予め取得しておき、その相関関係から処理対象となる半導体ウェハーWの予備加熱温度Twaferを求めるようにすれば良い。
また、搬送ロボット150の上側の搬送アーム151aを未処理の半導体ウェハーWを保持する専用のアームとして設計し、下側の搬送アーム151bを処理済の半導体ウェハーWを保持する専用のアームとして設計することにより、搬送ロボット150の小型化、および搬送の信頼性の向上を図ることができる。
また、光学測定ユニット230はアライメント部130に設置することに限定されず、インデクサ部101からフラッシュ加熱部160に半導体ウェハーWを搬送する経路上のいずれかの位置に設置するようにすれば良い。
また、本発明に係る熱処理装置によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、本発明に係る技術は、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化に適用するようにしても良い。