本発明のポリエステルフィルムは、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートユニットを90モル%以上含む結晶性ポリエステル樹脂と該樹脂に対して結晶化促進作用を有する添加剤(以下結晶化促進剤とも称する)を含むポリエステル層(P層)を有するポリエステルフィルムであって、該P層において該結晶化促進剤の含有量が0.5質量%以上30質量%以下であり、かつ該P層の示差走査熱量測定(以下DSC)の1stRUNにおける結晶融解熱ΔHmが20J/g以上、かつ結晶融解ピーク高さに対する半値幅が18℃以下であることを特徴とする。
以下、本発明について、以下に具体例を挙げつつ詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層における結晶性ポリエステル樹脂は、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートユニットを結晶性ポリエステル樹脂の全繰り返し単位の90モル%以上で含むことが必要である(以下、係る結晶性ポリエステル樹脂を本結晶性ポリエステル樹脂という)。より好ましくは93モル%以上、98モル%以下である。結晶性ポリエステル樹脂に含まれるシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートユニットが90モル%に満たない場合、ポリエステル樹脂の結晶性が低下する結果、耐湿熱性が低下して加水分解によるフィルムの脆化が進行しやすくなる。上限値は理論上100モル%であるが、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートユニットを98モル%以下とすることは製膜性をより安定させることが可能となるために望ましい。1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートユニット以外のユニットとしては、例えば、ジカルボン酸成分として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルインダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体、ジオール成分として、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオールなど、からの組合せによるユニットが代表例としてあげられるが、これらに限定されるものではない。但し、上記共重合成分はP層を構成するポリエステルの結晶性を損なわない範囲で用いることができる。中では、シクロヘキシレンジメチレンイソフタレートユニットであるのが好ましい。かかるユニットを共重合成分として2モル%以上7モル%以下含有させることで、結晶性を大きく低下させることなく、製膜性を高めることができる。なお、ここでいう結晶性とは、具体的には、JIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分でポリエステル樹脂を25℃から融点+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱、その状態で5分間保持後、得られた示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークが観測されることをいう。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層を構成する本結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸末端基数は20当量/t以下であることが好ましい。さらに好ましくは15当量/t以下、より好ましくは10当量/t以下である。20当量/tを超えると、カルボン酸末端基のプロトンによる触媒作用が強く、加水分解が促進されてしまう結果、湿熱雰囲気中での機械特性の低下が進行しやすくなる場合がある。なお、P層を構成する本結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸末端基数を20当量/t以下とするには、ジカルボン酸成分とジオール構成成分とをエステル化反応をさせ、溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化したのち、固相重合したポリエステル樹脂を用いることが挙げられる。この方法でカルボキシル基末端基量を25当量/t以下、より好ましくは20当量/t、さらには15当量/t以下とした樹脂を用いることなどが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層を構成する本結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は0.65以上であることが好ましい。より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.75以上である。IVが0.65に満たないと、分子量が低すぎて十分な耐熱性、耐湿熱性や機械物性が得られなかったりする場合がある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層を構成する本結晶性ポリエステル樹脂のIVを0.65以上とすることによって、高い耐熱性、耐湿熱性や機械特性を得ることができる。なお、IVの上限は特に限定されるものではないが、重合時間が長くなるためコスト的に不利となる場合がある。溶融押出が困難となるという点から好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。
なお、本結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.65以上とするには、1)溶融重合によって所定の溶融粘度になった時点で吐出、ストランド化、カッティングを行い、チップ化する方法と、2)目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行う方法などにより、固有粘度を0.7以上より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.80以上としたポリエステル樹脂を用いて、窒素雰囲気下、ポリエステルの融点+10℃以上、融点+30℃以下、更には融点+15℃以上、融点+25℃以下の温度範囲で押出すことにより得ることができる。これらのうち、熱劣化を抑えられ、かつカルボン酸末端基数を低減できるという点で、結晶性ポリエステル樹脂の重合方法としては前記2)の目標より低めの固有粘度で一旦チップ化し、その後固相重合を行うのがより好ましい。
P層には結晶化促進剤がP層総質量の0.5質量%以上30質量%以下含まれていることが必要である。ここでいう結晶化促進剤とは、結晶化促進剤と本結晶性ポリエステル樹脂との組成物と、結晶化促進剤を含まない本結晶性ポリエステル樹脂を、JIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から本結晶性ポリエステル樹脂の融点+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で本結晶性ポリエステルの融点+40℃まで昇温を行って得られた(2ndRUN)の示差走査熱量測定チャートを比較したとき、2ndRUNにおける結晶化ピークのピークトップが結晶化促進剤を含有しないときに比べて0.1℃以上低温側表れることが必要であり、より好ましくは0.5℃以上、更に好ましくは1℃以上である。かかるポリエステル組成物を用いることによって、結晶化は一層促進され、後述する特定の条件で延伸、熱処理により配向結晶化がより促進されて、フィルムの耐熱性、寸法安定性は一層高まるのである。
このポリエステル組成物の作用は詳細には判らないが、PCHT樹脂はシクロヘキサン骨格が嵩高い故に、結晶のパッキングが悪く、一軸や二軸延伸しても配向結晶化が起こりにくいため、機械特性と熱寸法安定性が低いところ、結晶化促進剤が含有されて上記特性を有することによって、PCHTの結晶化の促進がはかられるためであると考えられる。
本発明のポリエステルフィルムのポリエステル層(P層)に含まれる結晶化促進剤は、前記特性を与えるものであれば特に限定されるものではないが、無機粒子および有機粒子が好ましく用いることができ、またこれらを併用して用いることもできる。無機粒子としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム 等の金属酸化物、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム等の硫酸塩、その他タルクおよびカオリンなどを挙げることができる。また、有機粒子としては、例えば、カーボンブラック、フラーレン、カーボンファイバーなどの炭素系化合物等が挙げられ、さらにはポリエステル層(P層)を構成する結晶性ポリエステル樹脂と非相溶で、かつこれらポリエステル樹脂中に島状に分散する樹脂も結晶化促進剤として用いることができる。また、本発明においてP層に結晶化促進剤として無機粒子を用いた場合、その無機粒子の一次粒径から算出される数平均粒径は5nm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上3μm以下、特に好ましくは15nm以上2μm以下である。
本発明において、結晶化促進剤として無機粒子を用いた場合には耐熱性、寸法安定性をより高めることが可能となる。また、有機粒子を用いる場合は、耐熱性の付与に加えて、延伸時に気泡をP層中に形成して、絶縁性の指標である部分放電現象の発生する電圧(部分放電電圧)を向上させるという効果を付与できることもある。なお、前記結晶化促進剤以外の粒子をフィラー、滑剤、色調の改善、あるいは、紫外線吸収などの他の目的で併用することは差し支えない。
本発明のポリエステルフィルムのP層に含まれる結晶化促進剤の含有量は、P層総質量の0.5質量%以上、30質量%以下である。その含有量が0.5質量%未満の場合には、結晶化が不十分となり、耐熱性、寸法安定性が低下するため好ましくない。また、含有量が30質量%より多い場合、フィルムの機械特性が低下することがあるので好ましくない。また、結晶化促進剤が無機粒子の場合は、その含有量はより好ましくはP層総質量の10質量%以上20質量%以下である。一方、結晶化促進剤が有機粒子の場合、その含有量はより好ましくはP層総質量の6質量%以上24質量%以下がより好ましい。有機粒子の場合、その含有量が6質量%未満の場合は、結晶化が不十分となり、耐熱性が低下する場合がある。また含有量が24質量%より多い場合、フィルムの機械特性が低下する場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルムのP層には、本発明の効果が損なわれない範囲内でその他添加剤(例えば、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、有機の易滑剤、顔料、染料、充填剤、帯電防止剤、核剤など(但し、本発明にいう結晶化促進剤はここでいう添加剤には含意されない))が含有されていてもよい。例えば、添加剤として紫外線吸収剤を選択した場合には、本発明のポリエステルフィルムの耐紫外線性をより高めることが可能となる。例えば、ポリエステル樹脂に相溶な有機系紫外線吸収剤の例としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、トリアジン系の2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、その他として、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、その他として、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、および2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
有機系紫外線吸収剤の含有量は、P層総質量の0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.25質量%以上8質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。こうした範囲とすることで、着色などなく外観を損なわずに耐紫外線性を改善することができる
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層は、示差熱量測定(DSC)の1stRUNにおける結晶融解熱量ΔHmが20J/g以上であることが必要であり、より好ましくは30J/g以上45J/g以下である。ここでいう結晶融解熱量ΔHmとは、P層をJIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から本結晶性ポリエステル樹脂の融点+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し得られた示差走査熱量測定チャートにおいて、融解ピークの面積を求め、下記(1)式から求められる値である。
結晶融解熱量ΔHm=融解ピークの面積(J/g)/P層に占める本結晶性ポリエステル樹脂の含有量(質量%)×100 (1)式
上記(1)式で求められる結晶融解熱量ΔHmが20J/gに満たない場合はフィルム中の結晶量が少なく、耐湿熱性、寸法安定性に劣ることとなる。本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層の本結晶性ポリエステル樹脂の示差熱量測定(DSC)の1stRUNにおける結晶融解熱量ΔHmを20J/g以上とすることによって、耐湿熱性、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムとすることが可能となる。なお、上限は特に定められるものではないが、結晶融解熱量ΔHmを45J/g以下とすることによって、機械特性をより高めることが可能となるため好ましい。
なお、P層の本結晶性ポリエステル樹脂の結晶融解熱量ΔHmを20J/g以上とするためには、押出して得たキャスティングシートを本結晶性ポリエステル樹脂の結晶化温度(Tc)−10℃以下の温度で熱した後、長手方向及び幅方向に100%/分以上の速度で逐次二軸延伸、もしくは同時二軸延伸した後、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)−60℃以上の温度で熱処理することにより得ることができる。詳細は後述する。ここでいう結晶化温度(Tc)とは、ポリエステル層(P層)をJIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から融点(Tm)+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持後、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で融点(Tm)+40℃まで昇温を行って得られた(2ndRUN)示差走査熱量測定チャートにおいて、2ndRUNにおける結晶化ピークのピークトップの温度である。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)は、結晶融解ピーク高さに対する半値幅が18℃以下であることが必要である。より好ましくは、該半値幅が15℃以下である。ここでいう結晶融解ピーク高さに対する半値幅とは、ポリエステル層(P層)をJIS K7122(1987)に準じて、昇温速度20℃/分で樹脂を25℃から融点+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し得られた示差走査熱量測定チャートにおける融解ピークにおいて、ベースラインに平行でかつ融解ピークの高さに対して半分の高さを通る線を引き、融解ピークと交差する部分2点の温度をもとめ、高温側の温度から低温側の温度を引いた値でもって半値幅(℃)とした。結晶融解ピーク高さに対する半値幅が18℃を越える場合は、二軸延伸後の配向結晶化が不十分な状態となり、結晶がより低温側から融解する結果、耐熱性が低下するため好ましくない。本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層は、結晶融解ピーク高さに対する半値幅を18℃以下とすることによって耐熱性に優れたポリエステルフィルムとすることができる。
なお、ポリエステル層(P層)の本結晶性ポリエステル樹脂の結晶融解ピーク高さに対する半値幅を18℃以上とするためには、P層の本結晶性ポリエステル樹脂に0.5質量%以上の結晶化促進剤を含有させることにより得ることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層中の気泡含有率は3面積%以下であることが必要であり、より好ましくは2.5面積%以下である。ここでいう気泡含有率とは、ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく、薄膜切片状の観察サンプルを作製し、サンプルはフィルムの長手方向(MD)方向と平行な方向に沿ってフィルム表面に垂直に切断したMD垂直断面薄膜切片、幅方向(TD)方向と平行な方向に沿ってフィルム表面に垂直に切断したTD垂直断面薄膜切片の2種類を用意し、得られた断面薄膜切片を、電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”)を用いて10000倍に拡大観察し、この手法で得られた画像の中の空隙の面積の総和Nbと、画像全体に見えるP層の面積NからNb/Nとして算出される値である。気泡含有率が3面積%より大きいと、フィルム中に空気層を多く含むことにより、寸法安定性が低下してしまう。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)中の気泡含有率は3面積%以下とすることによって、寸法安定性に優れたポリエステルフィルムとすることが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層は、示差走査熱量測定(DSC)により得られるポリエステル層(P層)を構成する本結晶性ポリエステル樹脂の融点Tmpとポリエステル層(P層)の微少吸熱ピーク温度Tmetapとの差Tmp―Tmetapが、70℃以上120℃以下となることが好ましい。ここでいうポリエステル層(P層)のTmetap、ポリエステル層(P層)を構成する本結晶性ポリエステル樹脂の融点Tmpとは示差走査熱量測定により得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/分)における値である。具体的には、JIS K−7121(1987)に基づいた方法により、25℃から融点+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温を行って得られた1stRUNの示差走査熱量測定チャートにおける結晶融解ピーク前の微少吸熱ピーク温度でもってTmetap、また、2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもってポリエステル層(P層)を構成する本結晶性ポリエステル樹脂の融点Tmpとする。より好ましくは、Tmp−Tmetapが80℃以上110℃以下、更に好ましくは90℃以上100℃以下である。Tmp−Tmetapが120℃を越えると、延伸時の残留応力の解消が不十分であり、その結果フィルムの熱収縮が大きくなりすぎて、例えば、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いる場合は、組み込む際の、貼り合わせ工程にて、貼り合わせが困難となり、貼り合わせができたとしても、太陽電池に組み込んで長期間使用した際に太陽電池のそりが大きく発生する場合がある。また、例えば、本発明のポリエステルフィルムをLED光源用反射板として用いる場合は、回路を形成する際のはんだづけの工程フィルムのそりが大きくなったりする場合がある。また、Tmp−Tmetapが70℃に満たないと、初期の段階で非晶部が緩和された状態になり、耐湿熱性、耐湿熱性が低下したりする場合がある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、ポリエステル層(P層)を構成する本結晶性ポリエステル樹脂の融点TmpとP層の微少吸熱ピーク温度Tmetapとの差Tmp―Tmetapを、70℃以上120℃以下とすることによって、収縮率の低減と耐熱性、耐湿熱性を両立できる。
本発明のポリエステルフィルムは、上記P層のみからなるフィルムの場合、他の層との積層構成とする場合(以下、その他の層をP2層と称することがある)、何れも好ましく用いられる。積層構成とする場合には、上記P層の高い耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性、機械特性の効果を発揮するためには、P層の割合がポリエステルフィルム全体の厚みの40%以上とすることが好ましい。より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。P層の割合が40%に満たないと、P層による高い耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性、機械特性の効果が、発現されないことがある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、積層構成とした場合、P層の割合を40%以上とすることによって、従来のポリエステルフィルムと比べて高い耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性、機械特性の効果を得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層の厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは、25μm以上200μm以下である。厚みが10μm未満の場合、フィルムの耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性、機械特性が低下する場合がある。一方、500μmより厚い場合、例えば本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートやLED光源用反射板の厚みが厚くなりすぎて、その結果太陽電池全体、またはLED光源の厚みが大きくなりすぎることがある。また、総厚みに対するP層の厚みの割合は、20%以上50%以下、さらに好ましくは25%以上40%以下、最も好ましくは30%以上335%以下である。該割合が20%未満の場合には、耐湿熱性や、特に紫外線吸収能を持つ結晶化促進剤を用いた場合には耐紫外線性が劣る可能性がある。また、50%を越える場合、特に、2層フィルムで、かつ共押出/共延伸されてなる場合には、各層の機械特性(例えば、配向の仕方や延伸状態、熱収縮など)の違いにより、フィルムがカールしやすくなる場合がある。
また、本発明のポリエステルフィルム全体の厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは、25μm以上200μm以下である。厚みが10μm未満の場合、耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性、機械特性が低下する場合がある。一方、500μmより厚い場合、例えばこれを用いた太陽電池バックシートやLED光源用反射板の厚みが厚くなりすぎて、その結果太陽電池全体、またはLED光源の厚みが大きくなりすぎることがある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層に積層できるP2層の例として、機能付与するためのポリエステル層、帯電防止層、他素材との密着層、耐紫外線性を有するための耐紫外線層、難燃性付与のための難燃層、耐衝撃性や耐擦過性を高めるためのハードコート層など、用いる用途に応じて、任意の層を形成することができる。その具体例として、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いる場合は、他のシート材料、発電光源を埋包しているエチレンビニルアセテートとの密着性の改善のための易接着層、耐紫外線層、難燃層の他、部分放電電圧を向上させる、導電層導電層を形成させることが挙げられる。また、LED用反射フィルムにおいては、回路材料である金属との密着性を改善するための易接着層、機械特性を付与するためのポリエステル層、光反射性を高めるための光反射層、耐紫外線層などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P層に、P2層として他のポリエステル樹脂からなる層を形成する場合、P2層を構成するポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は0.65以上であることが好ましい。より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.75以上、特に好ましくは0.80以上である。IVが0.65に満たないと、分子量が低すぎて、熱雰囲気下に曝された場合には熱分解を、湿熱雰囲気下に曝された場合には加水分解がP2層においてそれぞれ進行し、脆化しやすくなる。その結果、フィルムに外的な力が働いたときにP2層に亀裂が入りやすくなり、それがP層に伝播してフィルムが破断しやすくなる場合がある。P2層を構成するポリエステル樹脂のIVを0.65以上とすることによって、P層により得られた高い耐湿熱性を損なうことなく、機能付与が可能となる。なお、IVの上限は特に決められるものではないが、重合時間が長くなりコスト的に不利である。溶融押出が困難となるという点から好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下である。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P2層を構成するポリエステル樹脂のカルボン酸末端基数は20当量/t以下が好ましい。さらには18当量/t以下、さらには16当量/t以下であることが好ましい。20当量/tを超えると、P層が高い耐湿熱性を有していても、P2層を構成するポリエステルのカルボン酸末端基のプロトンによる触媒作用が強く、P2層の加水分解が進行してP2層が脆化しやすくなる。また、P2層が脆化しなくても、P2層に発生したカルボキシル基のプロトンがP層に拡散し、P層の加水分解を促進させるため、好ましくない。P2層を構成するポリエステル樹脂のカルボン酸基末端量を20当量/t以下とすることによって、P層により得られた高い耐湿熱性を損なうことなく、機能付与が可能となる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、P2層としてポリエステル層を形成する場合は、必要に応じて本発明の効果が損なわれない範囲で、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系/無機系の易滑剤、有機系/無機系の粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等の添加剤や、気泡等を配合することによって、各種機能を付与することができる。
本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いる場合、P層の片側表面(以下この面をA面と称する)に表面比抵抗R0を107Ω/□以上1013Ω/□以下と制御された層をポリエステル層(P2層)として形成するのが好ましい。より好ましくは108Ω/□以上1013Ω/□以下、特に好ましくは、109Ω/□以上1012Ω/□以下である。この構成とすることによって、本発明のポリエステルフィルムの厚さ方向に高電圧が印加された時に、フィルムが受ける電界の一部をフィルム面方向に適度に導通させ、拡散させることが可能となる。それにより、フィルムの厚み方向に単位体積あたりに受ける電界量を低減させることが可能となる。その結果、高電圧を印加した場合においても、絶縁性能の劣る部分への電界の集中を抑えることが可能となり、部分放電現象の発生を抑制することができる。以上から、従来のフィルムでは困難であった、フィルム厚みを上げることなく部分放電電圧を高めることができる。
A面側の表面比抵抗R0が107Ω/□に満たないと、太陽電池バックシート用フィルムが電気を流しやすくなりすぎて厚み方向にも導通して、面方向に電界を緩和する効果が失われるため、部分放電電圧が向上しないことがある。また、リード線から電気エネルギーを取り出す際に、取り出し効率が低下して発電効率が低下することがある。また、A面側の表面比抵抗R0が1013Ω/□を超えると、導通性が小さすぎて面方向に電界を緩和する効果が失われ、部分放電電圧が向上しないことがある。本発明の太陽電池バックシート用において、表面比抵抗R0を107Ω/□以上1013Ω/□以下の範囲に制御することによって、高電圧印加時にフィルム厚み方向へ印加される電界の一部をフィルム面方向に適度に導通させ、厚み方向への電界集中を緩和する事が可能となり、フィルム厚みを上げることなく部分放電電圧を高めることが可能となる。またこのフィルムを用いたバックシートの部分放電特性、耐電気特性を飛躍的に向上させることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、破断伸度は50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。ここでいう破断伸度とはASTM−D882(1997)に基づいて、フィルムを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/分にて引っ張ったときの破断伸度であり、フィルムを長手方向、幅方向のそれぞれについてサンプル数n=5で測定した後、それらを平均値でもって破断伸度とした。破断伸度が50%に満たないと、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシート用フィルムやLED光源用反射板として用いた場合、そのバックシートまたは反射板の機械特性が低下してしまう場合がある。本発明のポリエステルフィルムの破断伸度を50%以上とすることで、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシートやLED光源用反射板として用いた場合に、機械特性の優れた太陽電池バックシートまたはLED光源用反射板とすることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%以上であることが好ましい。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のフィルムの破断伸度E0、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の破断伸度をE1とした時に、次の(2)式により得られた値である。
伸度保持率(%)=E1/E0×100 (2)式
なお、E1はフィルムを測定片の形状に切り出した後、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置して測定した値である。より好ましくは、上式による伸度保持率が60%以上、特に好ましくは80%以上である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%に満たないと、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシート用フィルムやLED光源用反射板として用いた場合、そのバックシートを搭載した太陽電池や反射板を搭載したLEDを長期間使用した際に湿熱によりバックシートまたは反射板の劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池やLEDに加わったときに、バックシートまたはLEDが破断することがある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%以上とすることで、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシートやLED用反射板として用いた場合に、太陽電池バックシートまたはLED用反射板の長期に渡っての機械特性を維持でき、特に耐湿熱性に優れた高耐久の太陽電池やLEDとすることができるので好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムは、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%以上であるのが好ましい。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のフィルムの破断伸度E0、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の破断伸度をE2とした時に、次の(3)式により得られた値である。
伸度保持率(%)=E2/E0×100 (3)式
なお、E2はフィルムを測定片の形状に切り出した後、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後測定した値である。より好ましくは、上式による伸度保持率が55%以上、特に好ましくは60%以上である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%に満たないと、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシート用フィルムとして用いた場合、その太陽電池バックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に内部から伝わる熱によりバックシートの劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがある。また、本発明のポリエステルフィルムを例えばLED光源用反射板に用いた場合、それを搭載したLED光源を長期間使用した際に光源から部材に伝わる熱により反射板の劣化が進行し、クラックが入る場合やフィルムが黄変して輝度ムラが発生する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%以上とすることで、例えば本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いた場合、その太陽電池バックシートは長期に渡って機械特性を維持でき、特に耐熱性に優れた高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。また、LED光源用反射板として用いた場合、長期に渡ってLED光源の輝度を維持することができるので好ましい。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%以上であるのが好ましい。なお、本発明のポリエステルフィルムに紫外線を照射する場合、特にポリエステルフィルムが積層フィルムの場合には、本発明のP層側が紫外線を照射する面となる。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のフィルムの破断伸度E0、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の破断伸度をE3とした時に、次の(4)式により得られた値である。
伸度保持率(%)=E3/E0×100 (4)式
なお、E3はフィルムを測定片の形状に切り出した後、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後測定した値である。より好ましくは、上式による伸度保持率が30%以上、特に好ましくは40%以上である。発明のポリエステルフィルムにおいて、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%に満たないと、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシート用フィルムとして用いた場合、その太陽電池バックシートを搭載した太陽電池を屋外で長期間使用した際に紫外線による劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがある。また、例えば本発明のポリエステルフィルムをLED光源用反射板に用いた場合、それを搭載したLED光源を長期間使用した際に光源からの紫外領域の光によりポリエステルフィルムの劣化が進行し、クラックが入る場合やフィルムが黄変して輝度ムラが発生する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%以上とすることで、例えば本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いた場合、その太陽電池バックシートは屋外暴露で長期に渡って機械特性を維持でき、耐紫外線性に優れた高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。また、LED光源用反射板として用いた場合は、長期に渡ってLED光源の輝度を維持することができる。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%以上かつ、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%以上かつ、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率を20%以上とすることがより好ましい。それにより、本発明のポリエステルフィルムを太陽電池バックシート用フィルムとして用いた場合、その太陽電池バックシートをより長期に渡っての機械特性を維持でき、耐湿熱性と耐熱性、耐紫外線性に優れたより高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。また、本発明のポリエステルフィルムをLED光源用反射板として用いた場合は、耐熱性と耐紫外線性の両立が可能となり、より長期に渡ってLED光源の輝度を維持することができるので好ましい。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度150℃雰囲気下で30分放置した後のフィルム長手及び幅方向の熱収縮率が2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1%以下である。ここでいう熱収縮率とは、処理前のフィルムの長さをL0、温度150℃の雰囲気下で30分放置した後の長さをL1とした時に、次の(4)式により得られた値である。
熱収縮率(%)=(L0―L1)/L0×100 (4)式
なお、L1はフィルムを測定片の形状に切り出した後、温度150℃の雰囲気下で30分放置して測定した値である。本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度150℃の雰囲気下で30分放置した後の熱収縮率が2%を超えると、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシートに用いた場合、その太陽電池バックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に、熱によるポリエステルフィルムの熱収縮が進行し、寸法変化によって太陽電池バックシートがカールして、太陽電池バックシートを張り合わせた部分で剥離が起こる場合がある。また、本発明のポリエステルフィルムを例えばLED光源用反射板に用いた場合は、LED光源の製造時のはんだ付けの工程で部材が変形してしまう場合がある。本発明のポリエステルフィルムにおいて、温度150℃の雰囲気下で30分放置した後の熱収縮率を2%以下とすることで、本発明のポリエステルフィルムを例えば太陽電池バックシート用に用いた場合は耐カール性に優れた太陽電池バックシートとすることができる、また本発明のポリエステルフィルムを例えばLED用反射板に用いた場合は、はんだ付け工程での部材の変形を抑えることができる。
本発明のポリエステルフィルムは波長380〜700nmの範囲の平均分光反射率が80%以上であることが好ましく。より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは100%以上である。ここでいう波長380〜700nmの範囲の平均分光反射率とは、フィルムを分光光度計U−3410(日立製作所(株)製)を用いて、波長380〜700nmの範囲の分光反射率を10nm間隔で測定し、その平均値である。本発明のポリエステルフィルムにおいて平均分光反射率が80%に満たない場合、本発明のポリエステルフィルムを例えばLED光源用反射板に用いた場合、反射性が劣り輝度が低下する場合がある。また本発明のポリエステルフィルムにおいて波長380〜700nmの範囲の平均分光反射率を80%以上とすることで、例えば本発明のポリエステルフィルムをLED光源用反射板に用いた場合、光源の輝度を高めることができる。その結果、消費電力を低減し、蛍光管の数を少なくすることによってコストダウンが可能となる。
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について例を挙げて説明する。
本発明において、P層に用いる結晶性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分もしくはそのエステル形成性誘導体(以下、「ジカルボン酸成分」と総称する)とジオール成分の重縮合により得ることができる。また、結晶性ポリエステル樹脂の重合は常法により行うことができる。
本発明では、高い耐湿熱性を有し、かつ二軸延伸して高配向化することで、高い機械特性や耐熱性、寸法安定性を得ることが可能となるという点で、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノールを1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートユニットとし90モル%以上を占めるように用いる。
また、重合に際して従来公知の反応触媒(重合触媒)(アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物など)を用いても良い。さらに色調調整剤としてリン化合物などを添加してもよい。より好ましくは、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
更に、重合で得られたチップを必要に応じて固相重合しても良い。固相重合によって結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を高めることによって、本発明のポリエステルフィルムの耐熱性と耐湿熱性をより向上させることができる。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法において、結晶化促進剤を本結晶性ポリエステル樹脂と混合する方法としては、1)フィルムの製膜時に本結晶性ポリエステル樹脂と結晶化促進剤を混合する方法、2)結晶化促進剤を予め本結晶性ポリエステル樹脂と混合した原料(チップ)としておく方法、などが挙げられる。2)の結晶化促進剤と本結晶性ポリエステル樹脂を予め混合する方法としては、例えば、本結晶性ポリエステル樹脂の重合工程に結晶化促進剤を加える方法や結晶性ポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥させ、それと結晶化促進剤を押出機に投入して加熱溶融/混練させたのち、口金から吐出させたものを細かく切断し、ペレットにしたものを用いても良い。なお、予め本結晶性ポリエステル樹脂と結晶化促進剤とをマスターチップ化させておく場合の本結晶性ポリエステル樹脂に対する結晶化促進剤の含有量は特に限定されないが、溶融混練時の押出性やペレットの取扱い性の点で、5質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。
次に、本発明のフィルムを作製する方法について例を挙げて述べる。まず、必要に応じて乾燥したポリエステル樹脂原料を押出機にて溶融押出し、それをダイから吐出して単層シートを製造する方法や、溶媒に溶解させたものを塗布・乾燥する方法(コーティング法)などが挙げられる。押出温度は、結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)+15℃以上、融点+25℃未満の温度とすることがよい。
上記の方法によってダイから吐出したシートを、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出し、冷却固化し、キャスティングシートを得る。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させることが好ましい。
このようにして得られたキャスティングシートを、二軸延伸することによって、本発明のポリエステルフィルムを得ることができる。ここでいう二軸延伸とは、縦方向(長手方向)および横方向(幅方向)に延伸することをいう。また二軸延伸したフィルムをさらに縦および/または横方向に再延伸を行ってもよい。ここで、縦方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に延伸したものでもよい。横方向への延伸とは、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、加熱された雰囲気中で、両端のクリップ幅を徐所に広げていくことによって、長手方向に直角な方向(幅方向)に延伸することを言う。延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ2.5〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6.5〜15倍であることが好ましい。面積倍率が6.5倍未満であると、得られる二軸延伸フィルムのフィルム強度が不十分となったり、厚みムラが激しくなったりする場合があり、逆に面積倍率が15倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
二軸延伸する方法としては、上述の様に長手方向と幅方向の延伸とを分離して行う逐次二軸延伸方法の他に、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、本結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tg以上融点Tm未満の温度で1秒間以上30秒間以下の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却する。一般に熱処理温度が低いとフィルムの熱収縮が大きいため、高い熱寸法安定性を付与するためには熱処理温度は高い方が好ましい。しかしながら、熱処理温度を高くすると非晶部が緩和され、分子運動性が高い状態となっており、加水分解が起こりやすくなり、湿熱雰囲気下において、加水分解後の熱結晶化が促進され脆化が進行しやすくなることがある。そのため、本発明のポリエステルフィルムにおいて熱処理温度は、本結晶性ポリエステル樹脂の融点Tmとの差が、60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下、更に好ましくは80℃以上90℃以下である。
ここで、本発明のポリエステルフィルムの結晶融解熱ΔHmを20J/g以上とするためには、前述する方法で得られたキャスティングシートを本結晶性ポリエステル樹脂の結晶化温度(Tc)−10℃以下、本結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tg以上の温度に熱せられたロールで加熱した後、長手方向に100%/分以上の速度で縦延伸し、続いて幅方向に本結晶性ポリエステル樹脂の結晶化温度(Tc)−10℃以下、本結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)+10℃以上の温度の雰囲気下で100%/分以上の速度で逐次二軸延伸、もしくは結晶化温度(Tc)−10℃以下、本結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tg以上の温度で長手方向及び幅方向に同時二軸延伸した後、本結晶性ポリエステル樹脂の融点(Tm)−60℃以上110℃以下の温度で熱処理する必要がある。
また、熱処理工程中では、必要に応じて幅方向あるいは長手方向に3〜12%の弛緩処理を施してもよい。続いて必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、巻き取ることにより、本発明のポリエステルフィルムのP層を得ることができる。
また、本発明のポリエステルフィルムのP層は、他の層(P2層)と積層することも好ましい。本発明において、ポリエステル層(P2層)と積層する方法としては、例えば、積層する各層の材料が熱可塑性樹脂を主たる構成材料とする場合は、二つの異なる材料をそれぞれ二台の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入して溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、各フィルムをそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、接着剤を介して貼り合わせる方法(接着法)、その他、溶媒に溶解させたものを塗布・乾燥する方法(コーティング法)、およびこれらを組み合わせた方法等を使用することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、上述の工程により形成することができ、得られたフィルムは、高い耐熱性、耐湿熱性、寸法安定性、機械特性を有するものである。本発明のポリエステルフィルムはその特長を生かして銅貼り積層板、太陽電池バックシート、LED光源用反射板、粘着テープ、フレキシブルプリント基板、メンブレンスイッチ、面状発熱体、もしくはフラットケーブルなどの電気絶縁材料、コンデンサ用材料、自動車用材料、建築材料を初めとした耐湿熱性、耐熱性、寸法安定性、機械特性が重視されるような用途に好適に使用することができる。これらの中で、太陽電池バックシート用フィルムとLED光源用反射板がより好適に用いられる。
(太陽電池用バックシート用フィルム)
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートとするには、例えば、本発明のポリエステルフィルムにエチレン−ビニルアセテート共重合体(以下EVAと略すことがある。)との密着性を向上させるEVA密着層、EVA密着層との密着性を挙げるためのアンカー層、水蒸気バリア層、紫外線を吸収するための紫外線吸収層、発電効率を高めるための光反射層、意匠性を発現させるための光吸収層、各層を接着するための接着層などから構成されるものであり、特に本発明のポリエステルフィルムは、紫外線吸収層、光反射層、光吸収層として好適に用いることができる。
太陽電池バックシートに紫外線吸収層として用いる場合の本発明のポリエステルフィルムは380nm以下の光線を遮断する機能を有していることがよい。また、光反射層として用いる場合の本発明のポリエステルフィルムは、紫外線を反射させることで内層の樹脂の劣化を防止することや、太陽電池セルに吸収されずにバックシートまで到達した光を反射してセル側に返すことで発電効率を高めることができる。また、光吸収層として用いる場合の本発明のポリエステルフィルムは、紫外線を吸収して内層の樹脂の劣化を防止させることや、太陽電池の意匠性を向上させることができる。
EVA密着層は発電光源を封止するEVA系樹脂との密着性を向上させる層であって、最も発電光源に近い側に設置され、バックシートとシステムとの接着に寄与する。その材料はEVA系の樹脂との密着性が発現されれば特に制限はなく、例えばEVAや、EVAとエチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などの混合物が好ましく用いられる。また、必要に応じてEVA密着層のバックシートへの密着性を向上させるため、アンカー層を形成することも好ましく行われる。その材料はEVA密着層との密着性が発現されれば特に制限はなく、例えばアクリル樹脂やポリエステル樹脂などの樹脂を主たる構成成分とする混合物が好ましく用いられる。
水蒸気バリア層は太陽電池を構成した際に発電光源の水蒸気の劣化を防ぐため、バックシート側からの水蒸気の進入を防ぐための層である。酸化珪素、酸化アルミニウム等の酸化物やアルミニウム等の金属層を真空蒸着やスパッタリングなどの周知の方法でフィルム表面に設けることにより形成される。その厚みは通常100オングストローム以上200オングストローム以下の範囲であるのが好ましい。この場合、本発明のポリエステルフィルム上に直接ガスバリア層を設ける場合と別のフィルムにガスバリア層を設け、このフィルムを本発明のフィルム表面に積層する場合のいずれもが好ましく用いられる。また、金属箔(たとえばアルミ箔)をフィルム表面に積層する方法も用いることができる。この場合の金属箔の厚さは10μm以上50μm以下の範囲が、加工性とガスバリア性から好ましい。
上記の各層と本発明のポリエステルフィルムとを組み合わせることで、本発明の太陽電池バックシートが形成される。なお、本発明の太陽電池バックシートにおいて、上述の層はすべて独立した層として形成する必要はなく、複数の機能を兼ね備えた機能統合層として形成するのも好ましい形態である。また、本発明のポリエステルフィルムがすでに必要な機能を有する場合は該機能を持たせるための他の層は省略することも可能である。例えば、本発明のポリエステルフィルムが白色顔料や気泡を含有した層を含む構成で、光反射性を有する場合は光反射層を、光吸収剤を含有した層を含む構成で光吸収性を有している場合には吸収層を、紫外線吸収剤を含有した層を含む構成の場合は紫外線吸収層を省略することができる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムは従来のポリエステルフィルムに比べて耐湿熱性と耐熱性、寸法安定性、機械特性に優れるものであるため、このフィルムを含む太陽電池バックシートは従来のバックシートに比べて高い耐湿熱性と耐熱性、耐カール性、高い機械特性を有するものとすることができる。ここで、太陽電池バックシートにおいて、本発明のポリエステルフィルムの高い耐湿熱性と寸法安定性の効果をバックシートに発揮させるためには、バックシート全体に対する本発明のポリエステルフィルムの体積割合が5%以上であることが好ましい。より好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上である。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、破断伸度は50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。ここでいう破断伸度とはASTM−D882(1999)に基づいて、バックシートを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/分にて引っ張ったときの破断伸度であり、バックシートを長手方向、幅方向のそれぞれについてサンプル数n=5で測定した後、それらを平均値でもって破断伸度とした。破断伸度が50%に満たないと、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートの機械特性が低下してしまう場合がある。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートの破断伸度を50%以上とすることで、機械特性の優れた太陽電池バックシートとすることができる。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率は50%以上であることが好ましい。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のバックシートの破断伸度E’0、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の破断伸度をE’1とした時に、次の(6)式により得られた値である。
伸度保持率(%)=E’1/E’0×100 (6)式
なお、E’1はバックシートを測定片の形状に切り出した後、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置して測定した値である。より好ましくは、上式による伸度保持率が60%以上、特に好ましくは80%以上である。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%に満たないと、そのバックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に湿熱によりバックシートの劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがある。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%以上とすることで、その太陽電池バックシートは長期に渡って機械特性を維持でき、特に耐湿熱性に優れた高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%以上であるのが好ましい。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のバックシートの破断伸度E’0、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の破断伸度をE’2とした時に、次の(7)式により得られた値である。
伸度保持率(%)=E’2/E’0×100 (7)式
なお、E’2はバックシートを測定片の形状に切り出した後、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後測定した値である。より好ましくは、上式による伸度保持率が55%以上、特に好ましくは60%以上である。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%に満たないと、その太陽電池バックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に内部から伝わる熱によりバックシートの劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがある。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%以上とすることで、その太陽電池バックシートは長期に亘って機械特性を維持でき、特に耐熱性に優れた高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%以上であるのが好ましい。なお、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートに紫外線を照射する場合、前述した紫外線吸収層、光反射層、光吸収層側が紫外線を照射する面となる。ここでいう伸度保持率とは、ASTM−D882(1999)に基づいて測定されたものであって、処理前のバックシートの破断伸度E’0、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の破断伸度をE’3とした時に、次の(8)式により得られた値である。
伸度保持率(%)=E’3/E’0×100 (8)式
なお、E’3はバックシートを測定片の形状に切り出した後、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後測定した値である。より好ましくは、上式による伸度保持率が30%以上、特に好ましくは40%以上である。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%に満たないと、その太陽電池バックシートを搭載した太陽電池を屋外暴露で長期間使用した際に紫外線によりバックシートの劣化が進行し、外部から何らかの衝撃が太陽電池に加わったとき(例えば、落石などが太陽電池に当たった場合など)に、バックシートが破断することがある。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%以上とすることで、その太陽電池バックシートは屋外暴露で長期に渡って機械特性を維持でき、耐紫外線性に優れた高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度125℃、相対湿度100%の雰囲気下で72時間放置した後の伸度保持率が50%以上かつ、温度190℃雰囲気下で55時間放置した後の伸度保持率が50%以上かつ、温度60℃、相対湿度50%の雰囲気下、強度100mW/cm2のメタルハライドランプ(波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)を48時間照射した後の伸度保持率が20%以上とすることがより好ましい。それにより、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートはより長期に渡っての機械特性を維持でき、耐湿熱性と耐熱性、耐紫外線性に優れたより高耐久の太陽電池とすることができるので好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度140℃雰囲気下で10分放置した後のカール高さは15mm以下が好ましく、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは5mm以下である。ここでいうカール高さとは、フィルムを150mm×幅100mmに切り出し、無風下140℃雰囲気下で10分間静置し、取り出して冷却したフィルム四隅浮き上がり高さを測長し、平均値を求めた値である。なお、測定はフィルムの長手方向を長辺に切り出した場合と、幅方向を長辺として切り出した場合とそれぞれについてフィルムの接地する面を両面それぞれの場合において測定し、それぞれ平均値を算出した。測定はn=5で実施し、より値の大きい方の値をカール高さとした。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度140℃の雰囲気下で10分放置した後のカール高さが15mmよりも大きくなると、その太陽電池バックシートを搭載した太陽電池を長期間使用した際に内部から伝わる熱によってバックシートのカールが進行し、バックシートを張り合わせた部分で剥離が起こる場合がある。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートにおいて、温度140℃雰囲気下で10分放置した後のカール高さを15mm以下とすることで、より長期耐久性高い太陽電池とすることができる。
本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートの厚みは30μm以上500μm以下が好ましく、50μm以上300μm以下がより好ましい。更に好ましくは100μm以上250μm以下であり、特に好ましくは125μm以上200μmである。厚みが30μm未満の場合、バックシートの平坦性を確保することが困難となる場合がある。一方、500μmより厚い場合、太陽電池に搭載した場合、太陽電池全体の厚みが大きくなりすぎることがある。
本発明の太陽電池は、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートを用いることを特徴とする。本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートは従来のバックシートより耐湿熱性とその他の機能、特に、機械特性、耐紫外線性、耐カール性に優れている特徴を生かして、従来の太陽電池と比べて耐久性を高めることや、薄くすることが可能となる。その構成の例を図1に示す。電気を取り出すリード線(図1には示していない)を接続した発電光源をEVA系樹脂などの透明な透明充填剤2で封止したものに、ガラスなどの透明基板4と、太陽電池バックシート1と呼ばれる樹脂シートを貼り合わせて構成されるが、これに限定されず、任意の構成に用いることができる。
発電光源3は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、結晶シリコン系、多結晶シリコン系、微結晶シリコン系、アモルファスシリコン系、銅インジウムセレナイド系、化合物半導体系、色素増感系など、目的に応じて任意の光源を、所望する電圧あるいは電流に応じて複数個を直列または並列に接続して使用することができる。
透光性を有する透明基板4は太陽電池の最表層に位置するため、高透過率のほかに、高耐候性、高耐汚染性、高機械特性を有する透明材料が使用される。本発明の太陽電池において、透光性を有する透明基板4は上記特性と満たせばいずれの材質を用いることができ、その例としてはガラス、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)、ポリフッ化ビニリデン樹脂などのフッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく挙げられる。ガラスの場合、強化されているものを用いるのがより好ましい。また樹脂製の透光基材を用いる場合は、機械特性の観点から、上記樹脂を一軸または二軸に延伸したものも好ましく用いられる。
また、これら基材には発電光源の封止材剤であるEVA系樹脂との接着性を付与するために、表面に、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、易接着処理を施すことも好ましく行われる。
発電光源を封止するための透明充填剤2は、発電光源の表面の凹凸を樹脂で被覆し固定し、外部環境から発電光源保護し、電気絶縁の目的の他、透光性を有する基材やバックシートと発電光源に接着するため、高透明性、高耐候性、高接着性、高耐熱性を有する材料が使用される。その例としては、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、およびこれらの混合物などが好ましく用いられる。これらの樹脂のうち、耐候性、接着性、充填性、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性のバランスが優れるという点で、エチレン−ビニルアセテートがより好ましく用いられる。
以上のように、本発明のポリエステルフィルムを用いた太陽電池バックシートを太陽電池システムに組み込むことにより、従来の太陽電池と比べて、高い耐久性および/または薄型の太陽電池システムとすることが可能となる。本発明の太陽電池は、太陽光発電システム、小型電子部品の電源など、屋外用途、屋内用途に限定されず各種用途に好適に用いることができる。
(LED光源用反射板)
本発明のポリエステルフィルムをLED光源用反射板として用いる場合は、波長380〜800nmの光線を反射する機能を有しているものを用いる。具体的には、380〜800nmの範囲の平均分光反射率が80%以上であるものを用いることが好ましく。より好ましくは90%以上であり、更に好ましくは100%以上の反射特性のものを用いることが好ましい。上記特性を満たすことによって、光源からの光を反射して輝度を向上させて消費電力を抑えると共に、従来の白色のポリエステルフィルムではできなかった、反射板上への直接配線加工なども可能となり工程を簡略化させることができる。また本発明のポリエステルフィルムは従来のポリエステルフィルムに比べて耐熱性と寸法安定性に優れるものであるため、このフィルムから得られるLED光源用反射板は従来のLED光源用反射板に比べて高い耐熱性と寸法安定性を有するものとすることができる。
また本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板において、温度180℃の雰囲気下で14時間放置した後の反射率保持率が55%以上であることが好ましい。より好ましくは60%以上である。ここでいう反射率保持率とは、処理前の試料の470nmにおける分光反射率をR0’、温度180℃の雰囲気下で14時間放置した後の分光反射率をR1’とした時に、次の(10)式により得られた値である。
反射率保持率(%)=R1’/R0’×100 (10)式
本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板において、温度180℃の雰囲気下で14時間放置した後の反射率保持率が55%に満たないと、例えば反射板を搭載したLED光源を長期間使用した際に光源からや部材から伝わる熱により、反射板の劣化が進行し、早期に反射性が損なわれる場合がある。本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板において、温度180℃の雰囲気下で14時間放置した後の反射率保持率が55%とすることで、長期間LED光源を使用した時、輝度低下を抑えることができる。
また本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板は、はんだリフロー性が優れていることが好ましい。はんだリフロー性が悪いとLED光源の製造時におけるはんだリフロー工程で部材が変形してしまう場合がある。ここでいうはんだリフロー性とは、フィルムを温度85℃、相対湿度85%で48時間処理した後、フィルムを260℃に設定したはんだ浴槽に1分間浮かべて、平面性の変化を目視にて確認することにより得られる。本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板がはんだリフロー性に優れていることで、LED光源を部材の変形によるトラブルなく製造することができる。
以上のように、本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板は従来のLED光源用反射板より反射性と反射率保持率、はんだリフロー性、耐湿熱性、機械特性に優れている特徴を生かして、従来のLED光源用反射フィルムと比べて、その製造工程での部材の変形によるトラブルを低減させることや、従来の白色のポリエステルフィルムではできなかった、反射板上への直接配線加工なども可能となり工程を簡略化させることが可能となる。また消費電力を低減や、LEDの設置数の低減によるコストダウンも可能となる。
また、本発明のポリエステルフィルムを用いたLED光源用反射板をLED光源に用いることにより、従来の従来のLED光源と比べて、高耐久及び高輝度で容易に製造可能なLED光源とすることが可能となる。
[特性の評価方法]
(1)ポリエステルフィルム若しくは層の結晶融解熱ΔHm、結晶融解ピーク半値幅及び、結晶性ポリエステル樹脂の融点Tm、結晶化温度Tc
JIS K7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用い、ポリエステルフィルムの結晶融解熱ΔHmと結晶融解ピーク半値幅、結晶性ポリエステル樹脂の融点Tm、結晶化温度Tcを測定した。測定は、試料5mgをサンプルパンに秤量し、昇温速度は20℃/分、1stRUNで樹脂を25℃から融点+40℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下まで急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温を行って測定を行った。得られた1stRUNの結晶融解ピークにおけるピーク面積を結晶融解熱ΔHm(J/g)、結晶融解ピークにおいてピーク前後のフラット部分を結んだベースラインに平行でかつ融解ピークの高さに対して半分の高さを通る線を引き、融解ピークと交差する部分2点の温度をもとめ、高温側の温度から低温側の温度を引いた値を半値幅(℃)とした(参考例を図2に示す)。また、得られた2ndRunの結晶化ピークにおけるピークトップの温度を結晶化温度Tc、結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を融点Tm(℃)とした。
(2)気泡含有率
ミクロトームを用いて、フィルム断面を厚み方向に潰すことなく、薄膜切片状の観察サンプルを作製した。サンプルはフィルムの長手方向(MD)方向と平行な方向に沿ってフィルム表面に垂直に切断したMD垂直断面薄膜切片、幅方向(TD)方向と平行な方向に沿ってフィルム表面に垂直に切断したTD垂直断面薄膜切片の2種類を用意した。
次に、得られた断面薄膜切片を、電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)電界放射走査型電子顕微鏡“JSM−6700F”)を用いて10000倍に拡大観察し、画像を得た。
この手法で得られた10000倍に拡大観察した画像の中の空隙の面積の総和Nbと、画像全体に見えるP層の面積NからNb/Nを気泡含有率として算出した。なお、ポリエステル層内において無作為に定めた5箇所の平均値を二種類の断面薄膜切片について求め、その平均を気泡含有率とした。
(3)破断伸度
ASTM−D882(1999)に基づいて、サンプルを1cm×20cmの大きさに切り出し、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/分にて引っ張ったときの破断伸度を測定した。なお、サンプル数はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、それらの平均値として求めた。
得られた破断伸度について、以下のように判定した。
破断伸度が70%以上の場合:A
破断伸度が60%以上70%未満の場合:B
破断伸度が50%以上60%未満の場合:C
破断伸度が50%未満の場合:D
機械特性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(4)耐湿熱性
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、タバイエスペック(株)製プレッシャークッカーにて、温度125℃、相対湿度100%の条件下にて72時間処理を行い、その後上記(3)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、その平均値を破断伸度E1とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(3)項に従って求め、破断伸度E0とした。得られた各破断伸度E0,E1を用いて、次の(2)式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E1/E0×100 (2)
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が80%以上の場合:A
伸度保持率が60%以上80%未満の場合:B
伸度保持率が50%以上60%未満の場合:C
伸度保持率が50%未満の場合:D
耐湿熱性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
また、バックシートの耐湿熱性は、上記と同様に処理前のバックシートの破断伸度E0’とし、温度125℃、相対湿度100%の条件下で72時間処理後の破断伸度E1’を求め、次の(6)式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E1’/E0’×100 (6)
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が80%以上の場合:A
伸度保持率が60%以上80%未満の場合:B
伸度保持率が50%以上60%未満の場合:C
伸度保持率が50%未満の場合:D
耐湿熱性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(5)耐熱性
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、ギアオーブンにて、温度190℃の条件下で55時間処理し、その後上記(3)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、その平均値を破断伸度E2とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(3)項に従って求め、破断伸度E0とした。こうして得られた各破断伸度E0、E2を用いて、次の式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E2/E0×100 (3)
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が60%以上の場合:A
伸度保持率が55%以上60%未満の場合:B
伸度保持率が50%以上55%未満の場合:C
伸度保持率が50%未満の場合:D
耐熱性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
また、バックシートの耐熱性は、上記と同様に処理前のバックシートの破断伸度E0’とし、温度190℃の条件下で55時間処理し、破断伸度E2’を求め、次の(7)式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E2’/E0’×100 (7)
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が60%以上の場合:A
伸度保持率が55%以上60%未満の場合:B
伸度保持率が50%以上55%未満の場合:C
伸度保持率が50%未満の場合:D
耐熱性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(6)耐紫外線性
試料を測定片の形状(1cm×20cm)に切り出した後、岩崎電気(株)製アイスーパー紫外線テスターS−W131にて、温度60℃、相対湿度60%、照度100mW/cm2(光源:メタルハライドランプ、波長範囲:295〜450nm、ピーク波長:365nm)の条件下で48時間照射し、その後上記(3)項に従って破断伸度を測定した。なお、測定はn=5とし、また、フィルムの縦方向、横方向のそれぞれについて測定した後、その平均値を破断伸度E3とした。また、処理を行う前のフィルムについても上記(3)項に従って求め、破断伸度E0とした。こうして得られた各破断伸度E0,E3を用いて、次の(4)式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E3/E0×100 (4)
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が40%以上の場合:A
伸度保持率が30%以上40%未満の場合:B
伸度保持率が20%以上30%未満の場合:C
伸度保持率が20%未満の場合:D
耐紫外線性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
またバックシートの耐紫外線性は、上記と同様に処理前のバックシートの破断伸度E0’とし、温度60℃、相対湿度60%、照度100mW/cm2(紫外線光源はメタルハライドランプを使用)の条件下で48時間照射し、破断伸度E3’を求め、次の(8)式により伸度保持率を算出した。
伸度保持率(%)=E3’/E0’×100 (8)
得られた伸度保持率について、以下のように判定した。
伸度保持率が40%以上の場合:A
伸度保持率が30%以上40%未満の場合:B
伸度保持率が20%以上30%未満の場合:C
伸度保持率が20%未満の場合:D
耐紫外線性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
なお、フィルムが積層フィルムである場合は、本発明のP層側から紫外線照射し、バックシートの場合は紫外線吸収層、光反射層、光吸収層側から紫外線を照射する。
(7)熱収縮率
JIS−C2318(1966)に規定された方法に従って、幅10mm、標線間隙約100mmのサンプルを、温度150℃、荷重0.5gで30分間熱処理した。その熱処理前後の標線間隙を(株)テクノニーズ製熱収縮率測定器(AMM−1号機)を用いて測定し、次式より熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(L0’―L1’)/L0’×100
L0’:加熱処理前の標線間隙
L1’ :加熱処理後の標線間隙
得られた熱収縮率について、長手方向、幅方向の平均値を算出し以下のように判定した。
熱収縮率が1%以下の場合:A
熱収縮率が1%を超え、1.5%以下の場合:B
熱収縮率が1.5%を超え、2%以下の場合:C
熱収縮率が2%よりも大きい場合:D
寸法安定性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(8)分光反射率
分光光度計U−3410(日立製作所(株)製)を用いて、波長380〜800nmの範囲の分光反射率を10nm間隔で測定し、その平均値を平均分光反射率とした。サンプル数はn=5とし、それぞれの平均分光反射率を測定して、その平均値を算出した。測定ユニットはφ60mmの積分球(型番130−0632)を使用し、10°傾斜スペーサーを取り付けた。また、標準白色板には酸化アルミニウム(型番210−0740)を使用した。
得られた平均分光反射率について、以下のように判定した。
平均分光反射率が90%以上の場合:A
平均分光反射率が80%以上90%未満の場合:B
平均分光反射率が80%未満の場合:C
反射性はA、Bが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(9)反射率保持率(LED光源用反射板としての耐熱性)
前記(9)項の分光反射率の測定方法にしたがって測定した波長470nmにおける分光反射率をR0’、温度180℃の雰囲気下で14時間放置した後の波長470nmにおける分光反射率をR1’とした時に、次の(10)式により求めた。
反射率保持率(%)=R1’/R0’×100 (10)
得られた反射率保持率について、以下のように判定した。
反射率保持率が60%以上の場合:A
反射率保持率が55%以上60%未満の場合:B
反射率保持率が55%未満の場合:D
反射率保持率はA、Bが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(10)はんだリフロー性(LED光源用反射板の寸法安定性)
湿熱オープンにて、試料を温度85℃、相対湿度85%で48時間処理した後、試料を260℃に設定したはんだ浴槽に1分間浮かべて、平面性の変化を目視にて確認し以下のように判定した。
平面性に変化が生じない:A
部分的に平面性の変化が観察される:B
フィルム全体に平面性の変化が生じる:C
フィルムが変形し、平面性を保持しない:D
はんだリフロー性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
(11)耐カール性(太陽電池バックシートの寸法安定性)
フィルムを150mm×幅100mmに切り出し、タバイエスペック(株)製真空乾燥機(LKV−122)を用いて、無風下、温度140℃雰囲気下で10分間静置し、取り出して冷却した。冷却後のフィルム四隅浮き上がり高さを測長し、平均値を求めた。なお、測定はフィルムの長手方向を長辺に切り出した場合と、幅方向を長辺として切り出した場合でフィルムの接地する面を両面それぞれの場合において測定し、それぞれ平均値を算出した。測定はn=5で実施し、より値の大きい方の値をカール高さとした。
得られたカール高さについて、以下のように判定した。
カール高さが5mm以下の場合:A
カール高さが5mmを超えて10mm以下の場合:B
カール高さが10mmを超えて15mm以下の場合:C
カール高さが15mmを超える、またはカールが大きく測定不可の場合:D
耐カール性はA〜Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸95mol%、イソフタル酸5mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、融点280℃のイソフタル酸5mol%共重合ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT/I 5mol%)(結晶性ポリエステル樹脂)を得た。更に、得られたポリエステル樹脂の融点Tm―30℃の温度条件下、真空度0.3Torrの減圧下で9時間の固相重合を行い固有粘度1.1の結晶性ポリエステル樹脂を得た。
上記によって得られた結晶性ポリエステル樹脂100重量部と、平均粒子径200nmのルチル型二酸化チタン粒子100重量部を、真空にベントした290℃の二軸押出機内で溶融混練し、溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングして酸化チタン原料(MB−TiO2)を作製した。
次いで、180℃で2時間真空乾燥した結晶性ポリエステル樹脂72重量部、180℃で2時間真空乾燥したMB−TiO2原料28重量部を300℃の押出機内で溶融混練し、Tダイ口金に導入した。
次いで、Tダイ口金よりシート状に溶融押出して表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて、未延伸単層フィルムを得た。続いて、該未延伸単層フィルムを110℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、115℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に200%/分の速度で3.3倍に延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に115℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に200%/分の速度で3.3倍に延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で200℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で150℃の熱処理を行い、熱処理ゾーン3で100℃の温度で熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、耐湿熱性、耐熱性、機械特性、寸法安定性に非常に優れるポリエステルフィルムであることがわかった。
得られたポリエステルフィルムに、厚さ125μm二軸延伸ポリエステルフィルム“ルミラー”(登録商標)X10S(東レ(株)製)を接着剤(“タケラック”(登録商標)A310(三井武田ケミカル(株)製)90質量部、“タケネート”(登録商標)A3(三井武田ケミカル(株)製)10重量部を混合したもの)にて貼り合わせた。さらに、厚さ12μmのガスバリアフィルム“バリアロックス”(登録商標)VM−PET1031HGTS(東レフィルム加工(株)製)を蒸着層が外側となるようにして、二軸延伸ポリエステルフィルム側に上記接着剤で貼り合わせ、厚さ188μmの太陽電池バックシートを作製した。得られたバックシートの耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた耐湿熱性、耐熱性、機械特性、耐カール性、耐紫外線性を有することがわかり、太陽電池バックシートとして好適に用いられるポリエステルフィルムであることがわかった。
また、得られたポリエステルフィルムをLED光源用反射板に用いるため、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた耐熱性、はんだリフロー性、反射性を有することがわかり、LED光源用反射板として好適に用いられるポリエステルフィルムであることがわかった。
(実施例2)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸90mol%、イソフタル酸10mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、更に実施例1と同様に固相重合を行うことによって得られた、融点266℃のイソフタル酸10mol%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT/I 10mol%)(結晶性ポリエステル樹脂)を得た。
上記によって得られた結晶性ポリエステル樹脂100重量部と、平均粒子径200nmのルチル型二酸化チタン粒子100重量部を、真空にベントした280℃の二軸押出機内で溶融混練し、酸化チタン原料(MB−TiO2)を作製した。
次いで、180℃で2時間真空乾燥した結晶性ポリエステル樹脂99重量部、180℃で2時間真空乾燥したMB−TiO2原料1重量部をポリエステル樹脂の融点Tm+20℃付近まで加熱した押出機内で溶融混練し、Tダイ口金に導入した。
次いで、Tダイ口金よりシート状に溶融押出して表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて、未延伸単層フィルムを得た。続いて、該未延伸単層フィルムを110℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、115℃の温度の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に100%/分の速度で3.3倍に延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に115℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に100%/分の速度で3.3倍に延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーン1で200℃の温度で20秒間の熱処理を施し、さらに熱処理ゾーン2で150℃の熱処理を行い、熱処理ゾーン3で100℃の温度で熱処理を行った。なお、熱処理に際し、熱処理ゾーン1−熱処理ゾーン2間で4%の弛緩処理を行った。次いで、均一に徐冷後、巻き取って、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた機械特性を有し、優れた耐熱性を示し、良好な耐湿熱性、寸法安定性を示すポリエステルフィルムであることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた機械特性を示し、優れた耐熱性、良好な耐湿熱性、耐カール性、耐紫外線性を有することが分かった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、優れた耐熱性、良好なはんだリフロー性、反射性を有することがわかった。
(実施例3)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸93mol%、イソフタル酸7mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、更に実施例1と同様に固相重合を行うことによって得られた、融点270℃のイソフタル酸7mol%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT/I 7mol%)を用いたこと以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、非常に優れた機械特性を有し、優れた耐熱性と耐湿熱性、良好な寸法安定性を示すポリエステルフィルムであることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた機械特性を示し、優れた耐湿熱性と耐熱性、良好な耐カール性、耐紫外線性を有することが分かった。
(実施例4)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸98mol%、イソフタル酸2mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、更に実施例1と同様に固相重合を行うことによって得られた、融点285℃のイソフタル酸2mol%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT/I 2mol%)を用いたこと以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、実施例1〜3に比べて製膜性が劣っていたが、問題ない範囲であった。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、非常に優れた機械特性を有し、優れた耐熱性を示し、良好な耐湿熱性、寸法安定性を示すポリエステルフィルムであることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた機械特性を示し、優れた耐湿熱性と耐熱性、良好な耐カール性、耐紫外線性を有することが分かった。
(実施例5)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、更に固相重合を行うことによって、融点290℃のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT)を用いたこと以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、実施例1〜4に比べて製膜性が劣っていたが、問題ない範囲であった。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、非常に優れた機械特性を有し、優れた耐熱性を示し、良好な耐湿熱性、寸法安定性を示すポリエステルフィルムであることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた機械特性を示し、優れた耐湿熱性と耐熱性、良好な耐カール性、耐紫外線性を有することが分かった。
(実施例6〜8)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を表1の通り変化させた以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、より結晶化促進剤の濃度が高く、半値幅が小さい方が、優れた耐熱性と寸法安定性を有することがわかった。また、最も結晶化促進剤の濃度が大きい実施例8は実施例1に比べて少し機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、より結晶化促進剤の濃度が高く、半値幅が小さい方が優れた耐熱性と耐カール性、耐紫外線性を有することがわかった。また、最も結晶化促進剤の濃度が大きい実施例8は実施例1に比べて少し機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、より結晶化促進剤の濃度が高く、半値幅が小さい方が優れた耐熱性、はんだリフロー性、良好な反射性を有することがわかった。
(実施例9)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を30%とする以外は、実施例3と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた耐湿熱性と寸法安定性を有し、良好な機械特性を有することがわかった。また、実施例1に比べて少し機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた耐熱性、耐カール性、耐紫外線性を有することがわかった。また、実施例1に比べて少し機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた耐熱性、はんだリフロー性、良好な反射性を有することがわかった。
(実施例10)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を30%とする以外は、実施例4と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、非常に優れた耐熱性と寸法安定性を有し、優れた耐湿熱性を有することがわかった。また、実施例1に比べて少し機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた耐熱性、耐カール性、耐紫外線性を有することがわかった。また、実施例1に比べて少し機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた耐熱性、はんだリフロー性、良好な反射性を有することがわかった。
(実施例11〜13)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を表1の通り変化させた以外は、実施例5と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、より結晶化促進剤の濃度が高く、半値幅が小さい方が、優れた耐熱性と寸法安定性を有することがわかった。また、最も結晶化促進剤の濃度が大きい実施例13は実施例1に比べて機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、より結晶化促進剤の濃度が高く、半値幅が小さい方が優れた耐熱性と耐カール性、耐紫外線性を有することがわかった。また、最も結晶化促進剤の濃度が大きい実施例13は実施例1に比べて機械特性が劣るが問題ない範囲であった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、より結晶化促進剤の濃度が高く、半値幅が小さい方が優れた耐熱性、はんだリフロー性を示し、また、何れのものも良好な反射性を有することがわかった。
(実施例14、15)
ポリエステルフィルムの製造工程において、延伸速度を表1の通り変更した以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例14は実施例15に比べて非常に優れた機械特性を有し、優れた耐湿熱性を有することがわかった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、実施例14は実施例15に比べて非常に優れた機械特性を有し、優れた耐湿熱性を有することがわかった。
(実施例16、17)
ポリエステルフィルムの製造工程において、延伸速度を表1の通り変更した以外は、実施例8と同様にポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例16は実施例17に比べて優れた耐湿熱性を有することがわかった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、施例16は実施例17に比べて優れた耐湿熱性を有することがわかった。
(実施例18、19)
ポリエステルフィルムの製造工程において、延伸速度を表1の通り変更した以外は、実施例5と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例18は実施例19に比べて非常に優れた耐湿熱性と機械特性を有することがわかった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、実施例18は実施例19に比べて非常に優れた耐湿熱性と機械特性を有することがわかった。
(実施例20、21)
ポリエステルフィルムの製造工程において、延伸速度を表1の通り変更した以外は、実施例13と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例20は実施例21に比べて非常に優れた耐湿熱性を有することがわかった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、実施例20は実施例21に比べて非常に優れた耐湿熱性を有することがわかった。
(実施例22)
P層中に含まれる結晶化促進剤として硫酸バリウム粒子を用いた以外は、実施例1と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、実施例1に比べて製膜性が劣っていたが、問題ない範囲であった。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例1に比べて多少、耐湿熱性、寸法安定性に劣るが問題ない範囲であった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、実施例1に比べて多少、耐湿熱性、耐カール性に劣るが問題ない範囲であった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、実施例1に比べて多少、はんだリフロー性に劣るが問題ない範囲であった。
(実施例23)
実施例1で得られた未延伸単層フィルム(最終的にP層となる)に、共押出法にてポリエチレンテレフタレートをポリエステル層(最終的にP2層となる)として両側表層に層厚みが50μmとるように、積層比1:8:1で積層した以外は、実施例1と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、実施例23は実施例1に比べて多少耐湿熱性、耐熱性、寸法安定性に劣るが問題ない範囲であった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、実施例1に比べて多少、耐湿熱性、耐熱性、耐紫外線性に劣るが問題ない範囲であった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、実施例1に比べて多少耐熱性が劣るが問題ない範囲であった。
(比較例1)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸89mol%、イソフタル酸11mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、更に実施例1と同様に固相重合を行うことによって得られた、融点264℃のイソフタル酸11mol%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT/I 11mol%)を用いたこと以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、耐湿熱性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、耐湿熱性が劣ることがわかった。
(比較例2)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸89mol%、イソフタル酸11mol%、ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール100mol%を用い、触媒として酢酸マグネシウム、三酸化アンチモン、亜リン酸を用いて重縮合反応を行い、更に実施例1と同様に固相重合を行うことによって得られた、融点264℃のイソフタル酸11mol%を含むポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCHT/I 11mol%)を用いたこと以外は、実施例8と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、耐湿熱性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、耐湿熱性が劣ることがわかった。
(比較例3)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を0.4%とする以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、耐熱性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、耐熱性が劣ることがわかった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、耐熱性と反射性が劣ることがわかった。
(比較例4)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を0.4%とする以外は、実施例5と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、耐熱性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、耐熱性が劣ることがわかった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、耐熱性と反射性が劣ることがわかった。
(比較例5)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を31%とする以外は、実施例8と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、機械特性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、機械特性が劣ることがわかった。
(比較例6)
P層中に結晶化促進剤として含まれる二酸化チタン粒子濃度を31%とする以外は、実施例13と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、反射率保持率の評価を行った。その結果、表1の通り、機械特性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、機械特性が劣ることがわかった。
(比較例7)
ポリエステルフィルムの製造工程において、縦延伸速度及び横延伸速度を60%/分、熱処理温度を240℃に変更した以外は、実施例2と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、耐湿熱性と寸法安定性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、耐湿熱性、耐カール性が劣ることがわかった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、はんだリフロー性が劣ることがわかった。
(比較例8)
ポリエステルフィルムの製造工程において、縦延伸速度及び横延伸速度を60%/分、熱処理温度を240℃に変更した以外は、実施例8と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1の通り、耐湿熱性が劣ることがわかった。
得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1の通り、耐湿熱性が劣ることがわかった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、多少はんだリフロー性が劣ることがわかった。
(比較例9)
P層中に含まれる結晶化促進剤として三井化学(株)製ポリメチルペンテン(PMP)樹脂“DX820”を結晶化促進剤濃度6%で用いた以外は、実施例1と同様に二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、実施例1に比べて製膜性が劣っていたが、問題ない範囲であった。
得られたポリエステルフィルムについて、実施例1と同様に耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、破断伸度、熱収縮率の評価を行った。その結果、表1に示す通り、寸法安定性が劣ることがわかった。
また、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に太陽電池バックシートを作製し耐湿熱試験後の伸度保持率、耐熱試験後の伸度保持率、耐候性試験後の伸度保持率、破断伸度、カール試験の評価を実施したところ、表1に示す通り、耐カール性と耐紫外線性が劣ることがわかった。
同じく、得られたポリエステルフィルムについて実施例1と同様に、反射率保持率、はんだリフロー試験、平均分光反射率の評価を実施したところ、表1の通り、非常に優れた反射性を示すが、はんだリフロー性が劣ることがわかった。