JP2011201800A - 減圧工程を必須とする有効微生物コーティング種子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、より効率的に、より短時間に、短い工程数で、経済的で安定な有効微生物コーティング種子を製造し、提供することを目的とする。さらに本発明は、安定した微生物菌数を保持している実用的な有効微生物コーティング種子を製造、提供することを目的とする。
【解決手段】種子を減圧条件において処理する工程、および減圧条件において処理された種子に有効微生物を減圧接種する工程を含む有効微生物コーティング種子の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、減圧工程を必須とする有効微生物コーティング種子の製造方法に関する。
従来より、拮抗微生物や植物生育促進微生物などの有効微生物を植物種子にコーティングする技術が知られており、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1は、ポリビニルアルコールやアラビアゴムなどを用いて有効微生物を種子にコーティングする方法を開示している。また、特許文献2は、種子を物理的、化学的に消毒し、その後有効微生物をコーティングする方法を開示している。特許文献3は、植物の全身獲得抵抗性を誘導する物質を有効微生物と共に種子にコーティングする方法を開示している。これらの方法は何れも常圧下で種子をコーティングするものである。
一方、特許文献4は、種子に有効微生物を接触させた後に、減圧条件に付す方法を開示している。この方法によれば、常圧下でコーティングした場合に比べ、有効微生物の生存率を高めることが可能である。同様に、特許文献5は種子と微生物の懸濁液とを混合し、真空浸透や圧力浸透させることにより微生物を種子中に導入する方法を開示している。また、特許文献6は種子を細菌の懸濁液に浸漬し、減圧処理する方法を開示している。
上記の通り、微生物を種子にコーティングする方法は数多く知られている。しかしながら、微生物コーティング種子は、実用的に製造販売までいたっている例は極めて少ない。なぜならば、微生物を種子へコーティングして乾燥・保存する場合に微生物は死滅しやすく、実用的な製造・販売が難しいという問題があるからである。特に、使用する微生物が、細菌類、その中でもグラム陰性細菌類(蛍光性シュードモナス属細菌、バリオボラックス属細菌など)の場合には、休眠体を持たない細菌類である為に、熱や乾燥などの環境ストレスに対して弱く非常に死滅しやすいという問題があった。
そのため、有効微生物を種子にコーティングする方法には更なる改善が必要とされている。
特開平11−4606号公報 特開2002−3322号公報 特開2003−034607号公報 特開2007−77118号公報 特開平3−501800号公報 米国特許第2,932,128号明細書
本発明は、より効率的に、より短時間に、短い工程数で、経済的で安定な有効微生物コーティング種子を製造し、提供することを目的とする。さらに本発明は、安定した微生物菌数を保持している実用的な有効微生物コーティング種子を製造、提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、種子への有効微生物のより効率的な導入方法と保存安定性およびその防除効果について検討を行った。その結果、常圧条件下では種子の周囲に空気または水が存在し、これが有効微生物の種子への接触・付着を妨げていることを見出した。そこで、種子をあらかじめ減圧条件下に置くことにより種子の周囲の空気あるいは水を取り除き、その後、有効微生物を減圧条件で接種(以下、単に「減圧接種」ともいう)することにより、より効率的に有効微生物の種子への導入ができることを見出した。
即ち本発明は、より具体的には、下記の発明を包含する。
(1)種子を減圧条件において処理する工程、および
減圧条件において処理された種子に有効微生物を減圧接種する工程
を含む有効微生物コーティング種子の製造方法。
(2)前記減圧条件が600hPa以下の条件である、(1)の方法。
(3)種子に有効微生物を減圧接種する工程が、種子に有効微生物の懸濁液を接触させる工程を含み、前記懸濁液の体積が種子の体積よりも小さい、(1)または(2)の方法。
(4)前記懸濁液の体積が種子の体積の0.1〜50%である、(3)の方法。
(5)種子に有効微生物の懸濁液を接触させる工程が、前記懸濁液を複数回に分けて種子に接触させる工程であり、1回あたりに使用される前記懸濁液の体積が種子の体積の0.1〜10%である、(3)または(4)の方法。
(6)種子に有効微生物を減圧接種する工程が、種子に乾燥粉末状の有効微生物を接触させる工程を含む、(1)または(2)の方法。
(7)有効微生物が減圧接種された種子に対して減圧条件における処理と常圧条件における処理とを交互にそれぞれ少なくとも1回施す工程を更に含む、(1)〜(6)のいずれかの方法。
(8)種子を、増粘安定剤、多糖類、親水性高分子化合物、タンパク質、アミノ酸およびアミノ酸塩から選択される少なくとも1種の微生物保護剤で処理する工程を更に含む、(1)〜(7)のいずれかの方法。
(9)増粘安定剤が、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、または寒天であり、多糖類が、セルロース、キチン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、キシログルカン、イヌリン、またはポリガラクツロン酸であり、親水性高分子化合物が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはポリビニルピロリドン(PVP)であり、タンパク質が、スキムミルク、脱脂粉乳、カゼイン、コラーゲン、ケラチン、またはフィブロインであり、アミノ酸が、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、リシン、アルギニン、またはヒスチジンであり、アミノ酸塩が前記アミノ酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩である、(8)の方法。
(10)種子に有効微生物を減圧接種する工程が、有効微生物と微生物保護剤とを含む混合物を種子に接触させる工程を含む、(8)または(9)の方法。
(11)有効微生物が減圧接種された種子を減圧乾燥する工程を更に含む、(1)〜(10)のいずれかの方法。
本発明は、有効微生物の導入率、病害防除効果、保存安定性などに優れた有効微生物コーティング種子の製造方法を提供する。さらに本発明によれば、有効微生物を種子にコーティングし、保存・輸送・使用する場面において、実用的な効果を維持できるだけの菌数を安定して保持することができる。
図1は種子に添加した水の分画を示す。 図2は撹拌抵抗測定装置を示す。 図3は減圧条件下の水添加が撹拌器の電流値に及ぼす影響を示す。 図4は微生物保護剤の効果を示す。 図5は種子処理した細菌の生存に及ぼす要因の効果を示す。 図6は微生物保護剤を添加した場合の、低温貯蔵したトマト種子における付着細菌の生存について示す。 図7はトマト種子に付着させたFPT菌の生存に及ぼす添加剤の効果を示す。 図8はライブコート種子における保存期間と有効菌の生存との関係を示す。 図9は細菌分散媒へのペクチンの添加効果を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いる種子は、一般的な種子で、乾燥して保存できるものであれば特に制限はない。例えば、タマネギ、ネギなどのユリ科の種子、ホウレンソウ、テンサイなどのアカザ科の種子、キャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、ダイコンなどのアブラナ科の種子、ソラマメ、エンドウなどのマメ科の種子、ニンジン、セルリー、ミツバなどのセリ科の種子、レタス、シュンギク、ゴボウなどのキク科の種子、トマト、ナス、ピーマンなどのナス科の種子、メロン、キュウリ、スイカ、カボチャなどのウリ科の種子、イネ、トウモロコシ、コムギ、オオムギなどのイネ科の種子などの作物種子; パンジー、ビオラ、ペチュニア、トルコギキョウ、ストック、アスター、シクラメン、プリムラ、キンギョソウ、ジニア、マリーゴールド、アサガオ、ヒマワリ、コスモス、ラナンキュラス、ラベンダー、ルピナス、ミムラス、ポピー、ベゴニア、ネメシア、ビンカ、トレニア、デルフィニューム、ダイアンサス、ゼラニューム、センニチコウ、スイートピー、サルビア、ガーベラ、ガザニア、カレンジュラ、グロキシニア、ケイトウ、インパチェンス、アネモネ、アゲラタムなどの花卉種子; その他には飼料作物種子、牧草、芝などの種子が挙げられる。
本発明において「種子を減圧条件において処理する」とは、種子を減圧条件下に置くことをいう(以下、単に「種子の減圧処理」ともいう)。この場合の「減圧条件」とは、常圧(通常、大気圧、1013hPa、760mmHg、760Torr、1.013barなどで表現される)以下であれば良く、好ましくは600hPa以下(例えば、1〜600hPa)、より好ましくは、100hPa以下(例えば、1〜100hPa)の条件である。
常圧から最高陰圧に達するまでの時間は特に制限されないが、1〜600秒であることが好ましい。また、最高陰圧を保持する時間も特に制限はないが、1〜60分間保持することが好ましい。最高陰圧から常圧に戻す時間も特に制限はないが、1〜600秒であることが好ましい。
減圧条件を作り出すためには、密閉容器を使用することが好ましい。密閉容器は、封をした状態で空気や水が流入しないものであれば良く、空気を通さないビニールなどの袋を用いても良いし、吸引ビンや耐圧ビンにゴム栓を付けたり、シールテープで塞ぐことにより密閉系としたものなどを作成して使用することができ、密閉系が保てる様になっていれば形状・材質などに特別な制限はない。真空予冷装置などのように部屋全体を真空にする設備を利用することもできる。
吸引機と連結した密閉容器を作成し、容器内部の空気および水などを吸引することにより陰圧条件を作り出だすことができる。吸引機としては、一般に広く使用されているものでよく、例えばアスピレーター(aspirator)、サッカー(sucker)、油回転真空ポンプ、ドライ真空ポンプなどを使用することができる。
吸引機と密閉容器をつなぐ連結部分は、密閉系が保て、かつ陰圧条件に耐えうる耐圧のパイプであればよく、種子や有効微生物に害を与えない材質のものであれば特に制限はない。吸引機と密閉容器との間に冷却トラップを挿入することは、種子や有効微生物の保持している水分を除去する上で有効であり、乾燥を速める効果も期待でき、また、吸引機への水の流入を防ぎ、装置の保守管理面からも有効と考えられる。装置を組み立てるのが難しければ、既存の減圧乾燥装置、低温減圧乾燥装置、ロータリーエバポレーター、凍結乾燥機、コニカルドライヤーなどを利用する事も可能である。真空予冷設備の中に混合容器、噴霧装置、加熱装置などを導入して行うことも可能である。
本発明における「有効微生物」とは、種子に対して有用な効果を与えるものであれば特に限定されないが、拮抗微生物、植物生育促進微生物、根粒菌、菌根菌のいずれかに属するものが好ましい。
拮抗微生物とは、植物病原菌に対して拮抗性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、バチルス(Bacillus)属細菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属放線菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、非病原性エルビニア(Erwinia)属細菌、バリオボラックス(Variovorax)属細菌、非病原性フザリウム(Fusarium)属糸状菌、トリコデルマ(Trichoderma)属糸状菌、グリオクラディウム(Gliocladium)属糸状菌、ペニシリウム(penicillium)属糸状菌、タラロマイセス(Talaromyces)属糸状菌、などが挙げられる。
植物生育促進微生物とは、植物に対して生育促進効果を示すものであれば特に限定されないが、例えば、蛍光性シュードモナス(Pseudomonas)属細菌(P. fluorescens, P. putida)、の他に、バチルス(Bacillus)属細菌(B.subtilis、B. polymyxa)、エンテロバクター(Enterobacter)属細菌(E.clocae)、セラチア(Serratia)属細菌(S. fonticola, S. liquefacience, S. marcescens )などの細菌類や、ユーペニシリウム(Eupenisillium)属糸状菌(E. javanicum)、ペニシリウム(Penicillium)属糸状菌(P. janthinellum, P. citreonigrum, P. citrium)、トリコデルマ(Trichoderma)属糸状菌、非病原性リゾクトニア(Rhizoctonia)属糸状菌、フォーマ(Phoma)属糸状菌、および胞子を形成しないステライル(sterile)菌と称されるグループ、などが上げられる。
根粒菌とは、大豆をはじめとしたマメ科植物に共生し、大気中の窒素を固定してアンモニア態窒素に変換し宿主植物へ提供する微生物であれば特に限定されないが、例えば、リゾビウム(Rhizobium)属細菌、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌、シノリゾビウム(Sinorhizobium)属細菌、メソリゾビウム(Mesorhizobium)属細菌などが挙げられる。
菌根菌とは、陸上植物の根の組織に侵入したり、あるいは根組織表面にしっかりと付着して、植物と菌の間で養分の授受などの相利的な関係の成立しいる菌根を形成する共生菌である。菌根は、菌糸が根皮層組織へ侵入する内生菌根、菌糸が根組織表面に付着し厚い菌糸層を形成する外生菌根、その中間的なタイプに分けられる。
有効微生物としては、例えば、エコホープ、エコホープドライ、エコホープDJ(クミアイ化学工業(株))、ソウカムテキ(日鉄環境エンジニアリング(株))などのトリコデルマ属の有効微生物を含む生物農薬製剤、フィールドキーパー(セントラル硝子(株))などのバリオボラックス属の有効微生物を含む生物農薬製剤、ボトキラー(セントラル硝子(株))などのバチルス属微生物を含む生物農薬製剤、モミ元気およびセラファーム(セントラル硝子(株))などのシュードモナス属の有効微生物を含む生物農薬製剤、およびタフブロック(出光興産(株))などのタラロマイセス属の有効微生物を含む生物農薬製剤など、市販の生物農薬や微生物資材やこれらの原材料としての微生物、その培養菌体、培養液、凍結乾燥菌体などを用いることができる。
本発明では種子に有効微生物を減圧接種する。「減圧接種」とは、減圧条件で種子と有効微生物とを接触させることをいう。好ましくは、種子の減圧処理後に、減圧条件を維持したまま連続して有効微生物を接種する。
種子と有効微生物とを接触させる方法としては、一般に行われる方法であればよく、例えば、有効微生物を含む懸濁液中に種子を浸す方法、有効微生物を含む懸濁液を種子に噴霧する方法、乾燥粉末状の有効微生物を種子に粉衣する方法などを挙げることができる。減圧接種することにより有効微生物の種子への定着率を向上させることができる。
減圧接種は、例えば、密閉容器を回転させるロータリーエバポレーター、コニカルドライヤーなどを使用するか、密閉容器内へ攪拌部を挿入することが可能なミキサーやスターラーを用いて行うことができる。
本発明における「有効微生物コーティング種子」とは、有効微生物を種子にコーティングしたものを言う。すなわち、有効微生物を種子にコーティングしさえすれば良く、裸種子、フィルムコート種子、ペレット種子、ゲル被覆種子、シーダーテープ、シードグラフ、プライミング処理種子など様々な種子の加工処理の有無を問わない。なお、有効微生物コーティング種子とは、種子全体が有効微生物でコーティングされているものだけではなく、種子の一部分のみがコーティングされているものも含む。また、有効微生物が種子表面にのみ存在しているものだけではなく、有効微生物が種子内部に導入されているものも含む。コーティングされた有効微生物の量は、101〜1010 cells/g種子の範囲内で含まれていれば良い。
有効微生物は、溶液状、懸濁液状、半固体状(例えば、ゲル状、ゼリー状、ペースト状など)、乾燥粉末状などのどのような形状で使用してもよいが、懸濁液状、乾燥粉末状で使用することが好ましい。
本発明における懸濁液状の有効微生物とは、有効微生物を水に懸濁したものであればよく、特に制限は無い。エコホープ製剤のように初めから水懸濁液のものを用いても良いし、エコホープドライ、エコホープDJ、フィールドキーパー、ボトキラー、セラファーム、タフブロックなど乾燥した粉末製剤を水に懸濁して使用しても良い。
有効微生物の懸濁液の体積は、種子の体積よりも少ないことが好ましい。ここで、「種子の体積」とは、種子間の空隙部を含む見かけの体積(嵩体積)を意味する。例えば、種子の体積が1リットルとは、1リットルの空容器に入る種子の量を意味する。なお、容器に種子を入れた後に容器を振動させることにより種子の嵩体積が減少する場合には、その減少後の嵩体積(つまり、密に充填された状態の嵩体積)を種子の体積とする。
有効微生物の懸濁液を使用した場合、種子に付着した液は網カゴで容易に除去できる形態の表面自由水、脱水機にかける事で容易に除去できる形態の表面付着水、および乾燥処理をしなければ除くことの困難な吸着水に分類することができる。種子との結合力の弱い表面自由水や表面付着水は、有効微生物を種子にコーティングする上で有効ではなく、種子への有効微生物の接触・付着を妨げてしまう。一方、種子としっかり結合した吸着水は有効微生物と種子との結合には有効と考えられる。従って、これらの液量を測定することにより、適正な液量を決定することは、過剰な液を使用しない点、乾燥に必要な時間を短縮できる点、更には有効微生物に対する水分ストレスを抑えることができ、乾燥工程における有効微生物に対する温度ストレスを抑えることができる点で有効である。これらの観点から、有効微生物の懸濁液の体積を種子の体積の0.1〜50%にすることが好ましく、1〜35%にすることが更に好ましく、5〜20%にすることが特に好ましい。
種子は液体と混合すると表面が濡れて転動性が悪化する場合がある。この場合、有効微生物の懸濁液を1回で全て接種するのではなく、複数回に分けて接種することにより1回に接種する液量を制限し、転動性を確保することが可能である。転動性を確保することにより、均一に有効微生物がコーティングされた種子を製造することができる。この観点から、微生物の懸濁液を分けて接種する場合の1回あたりの適正液量(体積)を種子の体積の0.1〜10%にすることが好ましく、0.5〜7%にすることが更に好ましく、1〜5%にすることが特に好ましい。また、接種回数は2〜10回であることが好ましく、2〜7回であることが更に好ましく、3〜5回であることが特に好ましい。
なお、1回に接種する適正な液量を調べるためには、攪拌装置にクランプメーターを取り付け、回転数と電流値の変化を読み取る方法を使用することができる。すなわち、種子の濡れによる攪拌抵抗の増大を、電流値の増加として捉えることができる。
本発明における乾燥粉末状の有効微生物とは、乾燥して保存可能な有効微生物を用いて、粉末状にしたものであれば特に制限はない。有効微生物粉末の粒径をより細かくすることは、種子への有効微生物の定着性を高める為に有効である場合がある。例えば、胞子が凝集してフロックを形成している場合など、個々の胞子に分散させることにより、より微細な粒子とすることが可能である。または、凝集したものをフィルターなどを用いて除去することも有効な場合がある。また、有効微生物の保存安定性を高める保護剤の施用を組み合わせることは、本発明の効果を高める上で有効な場合がある。しかし、乾燥粉末状の有効微生物を用いる場合において、ガラス製で球状の茄子型フラスコなどでは、種子が滑りやすいため、種子同士の攪拌混合がうまくいかず、有効微生物を含む粉剤は種子間の隙間から下へ移動するために、容易に分級してしまう場合がある。コニカル型(二重円錐型)の容器やV型容器、リボン型混合機など粉体を混合するために工夫された装置を用いることは、種子粒子の転動を均一に行う為に有効な場合がある。
乾燥粉末の有効微生物を使用することにより、水を介しないで有効微生物を種子にコーティングすることができ、より効率的に有効微生物を種子へ導入することができる。更にこの方法であれば、水を介さないために、有効微生物接種後の乾燥工程が必要なくなり、有効微生物が乾燥ストレスを受けることがない。
通常、単純に種子に有効微生物粉末を粉衣しただけでは、有効微生物粉末は容易に離れてしまう(分級する)ため、一時的には有効微生物が付着したとしても振動などにより容易に振り落とされることになり、十分な菌数を種子表面に保持できない。しかし、本発明によれば、種子の表面の微細な隙間や毛、溝、しわなどに有効微生物をより密着させることができる。
乾燥粉末状の有効微生物を用いる場合において、加湿処理を行うことが、種子と有効微生物の接着力を高める上で有効な場合がある。加湿処理とは、加湿器などを用いて、種子の入れてある容器内へ加湿した空気を導入することである。加湿器が無い場合には、水を沸騰させて出てくる水蒸気などを導入するなどの方法を考案して利用することもできる。
種子への有効微生物の導入率を向上させるために、超音波発生装置を使用することが有効な場合もある。超音波発生装置は超音波を発生するものであれば特に制限されず、例えば超音波洗浄機などを使用することができる。
有効微生物を接種した種子に対して減圧条件における処理と常圧条件における処理とを交互にそれぞれ少なくとも1回施すことも、有効微生物の種子への定着率を向上させる観点から好ましい。これは、例えば、吸引機と連結した密閉容器を作成し、容器内部の空気を吸引することにより陰圧条件を作成した後、次に密閉容器内へ空気を導入して常圧(約1013 hPa)に戻すという操作を繰り返すことを言う。この操作では必ずしも常圧まで圧力を回復させる必要はなく、異なる減圧条件下(例えば100hPaと900hPa)に種子を交互に置くことでもよい。
本発明における種子への定着率は、種子に定着している有効微生物の菌数を測定することにより求めることができる。具体的には、種子にリン酸生理食塩水(pH 7.0)を加えて乳鉢などで磨り潰した磨砕液を作成し、これを希釈して選択培地上に広げ、培養して出現してくる有効微生物の菌数を計測する。種子を磨砕する際にカーボランダムなどの助剤を加えることは、磨砕を効率よく行うために有効な場合がある。他にも目的の有効微生物の選択的な遺伝子マーカーなどが判っている場合には、PCR法等による遺伝子レベルでの検出法や抗体を用いた抗体検出法は、簡単迅速で、より高感度な検出法であり、利用可能である。
本発明において「微生物保護剤」とは、有効微生物コーティング種子の製造にあたって、有効微生物を保護し、その生存を助けるものをいう。微生物保護剤としては、例えば、増粘安定剤、多糖類、親水性高分子化合物、タンパク質、アミノ酸、アミノ酸塩などを挙げることができる。
本発明における「増粘安定化剤」とは、食品や飲料にとろみをつけるための食品添加物として使用されるものであり、糊の性質およびゲルの性質を兼ね備えたものをいう。成分は、天然由来の多糖類が多く用いられており、代表的なものとしては、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、寒天などが挙げられる。
本発明における「多糖類」とは、単糖分子がグリコシド結合によって多数重合した糖のことである。構成単位となる単糖とは異なる性質を示す。一般に親水性であり、水を吸着しやすいが、物性は様々であり、水に不溶性のもの(セルロース、キチンなど)と可溶性のもの(デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチンなど)がある。水中でゲルを作りやすいものが多く、食品または食品添加物(増粘安定剤)として用いられる。いずれも生物による生合成産物として得られ、細胞壁や外骨格(植物のセルロースやペクチン、節足動物や菌類のキチン、藻類のアガロースやカラギーナン)、エネルギー貯蔵物質(デンプン、グリコーゲン)、あるいは有効微生物が分泌するゲル状物質(キサンタンガム)などとして存在する。代表的なものとしては、セルロース、キチン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、キシログルカン、イヌリン、ポリガラクツロン酸などが挙げられる。
本発明における「親水性高分子化合物」とは、水に親和性のある高分子化合物であり、上記多糖類以外の例として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。
本発明における「タンパク質」とは、L-アミノ酸が多数連結(重合)してできた高分子化合物であり、生物の重要な構成成分のひとつである。その立体構造から球状タンパク質と繊維状タンパク質に分けられる。このタンパク質の代表的なものとしては、スキムミルク、脱脂粉乳、カゼイン、コラーゲン、ケラチン、フィブロインなどが挙げられる。
本発明における「アミノ酸」とは、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基をもつ有機化合物であり、タンパク質の重要な構成成分のひとつである。グリシンを除き光学活性を持ち、生物は特殊な例を除きL-型のアミノ酸をタンパク質の構成成分として使用している。タンパク質を構成するアミノ酸は20種類ある。20種類のアミノ酸とは、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、リシン、アルギニン、ヒスチジンである。
本発明における「アミノ酸塩」とは、上記20種類のアミノ酸の塩であり、アミノ酸中のカルボキシル基にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムのいずれかが結合したものである。
微生物保護剤を使用することで有効微生物コーティング種子の保存安定性を向上させることができる。なかでも乾燥・保存が難しい細菌類、特にグラム陰性細菌類を有効微生物として使用する場合に有効である。
微生物保護剤の使用方法は特に限定されないが、有効微生物と微生物保護剤の混合物、例えば、微生物保護剤の水溶液に有効微生物が懸濁したものを種子と接触させることが好ましい。微生物保護剤が水に溶解し難い場合には、加熱して溶解させたり、少量の有機溶媒、界面活性剤、乳化剤などを加えてもよい。微生物保護剤の濃度は、液中に保護剤の固形物が浮遊・沈殿しない範囲であれば特に制限は無いが、0.001〜20%の範囲であることが好ましい。更に好ましくは、0.01〜10%である。微生物保護剤は1種類の成分のみを使用してもよいし、2種類以上の成分を組合わせて使用してもよい。
微生物保護剤を使用する場合は、種子の減圧処理を行わなくとも有効微生物コーティング種子の保存安定性を飛躍的に向上させることができる。例えば、微生物保護剤の水溶液に有効微生物を混合・懸濁し、これを用いて種子に接種した後に減圧処理することで有効微生物コーティング種子の保存安定性を向上させることができる。この場合、種子の減圧処理は必ずしも必要ではないが、かかる処理をすることで有効微生物コーティング種子の保存安定性を更に向上させることができる。
本発明の方法により得られた有効微生物コーティング種子を減圧乾燥することも保存安定性を向上させるために有効である。例えば、種子の含水率を0.01〜20%にすることが好ましく、0.1〜10%にすることが特に好ましい。この範囲よりも含水率が高い場合には、貯蔵中に種子が発芽したり、カビなどの雑菌が種子に付着して増殖するなどの問題が発生する可能性がある。一方、この範囲よりも含水率が低い場合には、有効微生物の生存率が低下するなどの問題が生じる可能性がある。
減圧乾燥をする方法としては、種子を減圧条件下で乾燥することができればどのような方法を使用してもよい。例えば、種子の減圧処理と同様の条件下におくことにより乾燥を行ってもよい。
減圧乾燥した有効微生物コーティング種子は低温条件下で貯蔵することにより、更に安定して保存することができる。低温条件下とは、常温以下であれば特に制限されないが、−80〜25℃であることが好ましく、−20〜5℃であることが特に好ましい。
以下に本発明の実施例を掲げて、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。例えば、下記実施例で用いられる有効微生物および種子に対して本発明を適用することも可能である。
実施例1 有効微生物液剤を減圧接種する方法(湿式ロータリーエバポレーター法)
イネモミ(品種:コシヒカリ)70g(100ml)(水分5.74%)を500mlナス型フラスコに入れエバポレーターに取り付けた。真空ポンプで200hPa以下まで吸引したところで、有効微生物液剤(エコホープ)0.5mlを水で40倍に希釈した液(20ml)を導入した。常圧から100hPaまでの真空立上時間は、約43秒であった。その後更に減圧し、90hPaに5分間保持した。5分後速やかに空気を入れ、常圧に戻した。真空ブレーク時間(90hPa〜900hPaまでの時間)は、約3秒であった。モミを5分間脱水機にかけた。脱水直後の水分含量は14.39%であった。ナス型フラスコに戻し、ロータリーエバポレーターを用いて30℃、減圧乾燥を1時間行った。その結果、水分含量は10%以下になった。
種子へ導入された菌数を確認する為に、モミをモミすり機(藤原製作所製)にかけ、風力によりモミ殻と玄米を分離した。未分画のモミ、モミ殻、および玄米に少量の緩衝液とカーボランダムを添加し、乳鉢でよく粉砕し、希釈平板法により菌数を測定した。選択培地は、ローズベンガル寒天培地を用いた。その結果を表1に示した。
実施例2 有効微生物液剤を減圧接種する方法(温和な湿式ロータリーエバポレーター法)
実施例1よりも温和な条件下での試験を同様に行った。真空ポンプで600hPaまで吸引したところで、有効微生物液剤(エコホープ)40倍希釈液を導入した。常圧から600hPaまでの真空立上時間は、約30秒であった。600hPaで5分間保持した。5分後速やかに空気を入れ、常圧に戻した。真空ブレーク時間は約3秒であった。モミを5分間脱水機にかけた。脱水直後の水分含量は、11.42%であった。ナス型フラスコに戻し、ロータリーエバポレーターを用いて30℃、減圧乾燥を1時間行った。その結果、水分含量は10%以下になった。実施例1と同様に菌数測定を行った。その結果を表1に示した。
比較例1 有効微生物液剤を接種後、減圧処理・脱水・乾燥する方法(特開2007−77118号公報に基づく浸漬処理方法)
有効微生物液剤(エコホープ)0.5mlを水で200倍に希釈し、300mlビーカーに入れた。イネモミ(品種:コシヒカリ)70g(100ml)(水分5.74%)を網の袋に入れ、200倍希釈エコホープ液に浸した。デシケーターの中へ入れ、真空ポンプにより600hPaまで減圧し、5分間静置した。常圧から600hPaまでの減圧時間は、約60秒であった。モミの周辺に気泡が発生したため振動を与えてできるだけ除去した。減圧15分後、速やかに常圧に戻した。常圧への戻し時間は、約15秒であった。モミを5分間脱水機にかけた。脱水直後の水分含量は11.11%であった。15℃、湿度約30%の条件下(シリカゲル乾燥剤を通した空気を使用)で通風乾燥を3時間行った。その結果、水分含量は10%以下になった。
実施例1と同様に菌数測定を行った。その結果を表1に示した。
Figure 2011201800
比較例1と比べて実施例1、2では、導入菌数が大幅に増加し、導入効率が飛躍的に向上していることが明らかとなった。脱水直後の水分含量は、実施例1が最も高く、次いで実施例2であり、比較例では水がモミの中に入る量が最も少なかった。懸濁液状の有効微生物を使用する場合において、有効微生物の導入量は、モミ内へ入る水量とある程度の相関があると考えられた。
更に減圧条件下で乾燥を行ったために、製造時間が大幅に短縮され、比較例1に比べて約1/3の時間で製造できた。さらに、廃液量も1/5と大幅に削減できた。
実施例3 有効微生物粉剤を減圧接種する方法(乾式ロータリーエバポレーター法)
イネモミ(品種:コシヒカリ)70g(100ml)(水分5.74%)を500mlナス型フラスコに入れエバポレーターに取り付けた。真空ポンプで200hPa以下まで吸引したところで、有効微生物粉剤(エコホープDJ)0.5gを空気と共に導入した。常圧から100hPaまでの真空立上時間は、約43秒であった。その後空気を入れるコックを閉め、更に減圧し90hPaに5分間保持した。5分後速やかに空気を入れ、常圧に戻した。真空ブレーク時間(90hPa〜900hPaまでの時間)は、約3秒であった。接種後のモミの水分含量は、処理前と変わらなかった。
実施例1と同様に菌数測定を行った。その結果を表2に示した。
比較例2 有効微生物粉剤を減圧接種する方法(温和な乾式ロータリーエバポレーター法)
イネモミ(品種:コシヒカリ)70g(100ml)(水分5.74%)を500mlナス型フラスコに入れエバポレーターに取り付けた。真空ポンプで吸引開始と同時に有効微生物粉剤(エコホープDJ)0.5gを空気と共にゆっくり導入した。常圧から100hPaまでの真空立上時間は、約120秒であった。その後、空気を入れるコックを閉め、90hPaに5分間保持した。5分後ゆっくり空気を入れ、常圧に戻した。真空ブレーク時間は、約120秒であった。接種後のモミの水分含量は、処理前と変わらなかった。
実施例1と同様に菌数測定を行った。その結果を表2に示した。
Figure 2011201800
比較例1と比べて実施例3では、乾燥に要する時間が必要なくなり、大幅に時間が短縮され、工程が簡素化され、乾燥装置の削減が可能となり、製造時間は1/20以下に短縮された。しかも、モミの内側、玄米の部分にまで目的の有効微生物が導入されていることが明らかとなった。更に廃液量は、ゼロにすることができた。しかし、比較例2の様な温和な条件(ゆっくりした真空立上時間と真空ブレーク時間)の場合、玄米の部分で菌はほとんど検出されなかった。
実施例4 有効微生物粉剤を減圧噴霧接種する方法(減圧回数や超音波処理の影響)
実施例3と同様の実験で、減圧処理の回数を1〜3回、また減圧処理の際に超音波洗浄機による振動処理を加えた実験を行った。
結果を表3に示した。
Figure 2011201800
比較例1と比べて実施例4では、モミ殻、玄米への付着菌数はやや劣るものの、乾燥に要する時間が必要なくなり、大幅に時間が短縮され、工程が簡素化され、乾燥装置の削減が可能となり、製造時間は1/20以下に短縮された。しかも、モミの内側、玄米の部分にまで目的の有効微生物が導入されていることが明らかとなった。更に廃液量は、ゼロにすることができた。また、減圧の回数を増やすことにより、玄米およびモミ殻への菌の付着菌数が上昇することが判った。超音波処理の効果は、表3のように効果がある場合があった。しかし、超音波処理は、種子の粒子と有効微生物粉末とが分級しやすくなる場合があり、混合が不均一になった場合、モミの内部への菌の導入効率が低下する場合もあり再現性に問題を残した。
実施例5 イネモミ(バカ苗病汚染モミ)へ有効微生物粉剤を減圧接種の詳細条件検討
イネモミ(品種:コシヒカリ)のバカ苗病汚染モミ、70g(100ml)(水分5.74%)を500mlナス型フラスコに入れエバポレーターに取り付けた。有効微生物剤の減圧噴霧接種は、真空ポンプで200hPa以下まで吸引したところで、有効微生物粉剤(エコホープDJ)0.5gを空気と共に導入した。
下記(I)及び(II)の条件を変更して、モミ表面の菌数および玄米に付着した菌数を測定した。設定条件を表4に示した。
Figure 2011201800
各条件下で製造したサンプルを用いて、菌数測定を行った。
結果を表5に示した。
Figure 2011201800
減圧処理を行わないコントロールであるI11では、種子の表面には菌が付着していたが、付着菌はわずかな振動で落ちやすく、菌数は変動しやすかった。モミ殻を剥いた玄米上からは菌が検出されなかった。すなわち、減圧処理を行わない場合に、有効微生物は、種子の表面のみに緩やかに付着し、内部にまで入ることができなかった。一方、減圧噴霧接種を行った試験区(I1〜I10)は、いずれの区においても、種子の内側の玄米から目的の有効微生物を検出することができた。
実施例6 コニカルドライヤーによる減圧接種テスト
イネモミ(品種:コシヒカリ)5Literをコニカルドライヤー(東工機製:NRD-20型)に入れ、密閉状態にし、攪拌を開始した。コニカルドライヤーに冷却トラップと真空ポンプを連結した。真空ポンプにより減圧を10分間行った。この時の真空度は0.94kPa、缶内湿度は8.8%であった。真空容器の吸引口コックを閉じた後、有効微生物液剤(エコホープ)25mlを水で20倍希釈(Total 500ml = 種子容量の10%)した液を準備し、その1/3量(167ml = 種子容量の3.3%)を噴霧接種した。菌の導入により真空度は5.72kPaまで上昇し、缶内湿度は100%になった。10分間攪拌混合した。真空容器の吸引口コックを開き減圧を再開した。10分間吸引後の真空度は1.34kPa、湿度20.7%であった。吸引口コックを閉じ、有効微生物液剤(エコホープ)1/3量を噴霧接種し、10分間攪拌混合を行った。このときの真空度は、5.31kPaまで上昇し、湿度は100%になった。吸引口コックを開き、10分間減圧を行った。真空度は、1.49kPa、湿度24.9%になった。再度吸引口コックを閉じ、3回目の噴霧接種を行い、10分間攪拌混合した。この時の真空度は、6.54kPa、湿度100%であった。コニカルドライヤーのジャケットに36℃の温水を通し、加熱しながら乾燥を開始した。40分間の減圧乾燥を行った。終了時は、ジャケット入口温度と出口温度は35℃、コニカルドライヤーの缶内中心部の温度は、20.8℃、湿度13.7%、真空度1.09kPaであった。
真空ポンプを止め、常圧に戻して、ふたを開けてサンプルを回収した。菌数および水分、発芽率を調査した。結果を表6に示した。
比較例3 コニカルドライヤーによる常圧接種テスト
イネモミ(品種:コシヒカリ)4Literをコニカルドライヤー(東工機製:NRD-20型)に入れ、常に常圧を保てるようにコックは開いた状態で、攪拌を開始した。コニカルドライヤーに冷却トラップと真空ポンプを連結した。有効微生物液剤(エコホープ)20mlを水で20倍希釈(Total 400ml = 種子容量の10%)した液を準備し、その1/5量(80ml = 種子容量の2%)を噴霧接種した。噴霧は、コンプレッサーの圧力により行った。常圧にて10分間攪拌し、密閉容器のコックを閉じ、減圧を開始した。5分間減圧後、コックを開き常圧に戻した後、有効微生物液剤(エコホープ)1/5量を噴霧接種、常圧下での攪拌混合10分、減圧5分の操作を5回反復することにより、有効微生物液剤(エコホープ)全量(400ml)を投入した。各反復時の真空度と湿度は、以下のように推移した。1回目:1.57kPa、32.4%、2回目:1.75kPa、38.1%、3回目:1.79kPa、38.6%、4回目:1.82kPa、41.3%、5回目:2.02kPa、48.0%。コニカルドライヤーのジャケットに36℃の温水を通し、加熱しながら乾燥を開始した。60分間の減圧乾燥を行った。真空ポンプを止め、常圧に戻して、ふたを開けてサンプルを回収した。菌数および水分、発芽率を調査した。結果を表6に示した。
比較例4 有効微生物投入時に大量の水の存在が、菌の付着率を低下させる事例
イネモミ(品種:コシヒカリ)5Literを東工機製コニカルドライヤー(NRD-20)に入れ、密閉状態にし、攪拌を開始した。コニカルドライヤーに冷却トラップと真空ポンプを連結した。真空ポンプにより減圧を10分間行った。この時の真空度は0.94kPa、缶内湿度は8.8%であった。真空容器の吸引口コックを閉じた後、有効微生物液剤(エコホープ)25mlを水で200倍希釈(Total 5000ml = 種子容量と同量)した液を準備し、1000mlずつ5回に分けて噴霧接種した。菌の導入により真空度は4.24kPaまで上昇し、缶内湿度は99.9%になった。大量の水が流入しているため、モミの過剰水を脱水機にかけて5分間脱水した。再度モミをコニカルドライヤーへ導入し、コニカルドライヤーのジャケットに36℃の温水を通し、加熱しながら乾燥を開始した。90分間の減圧乾燥を行った。終了時は、ジャケット入口温度と出口温度は35℃、コニカルドライヤーの缶内中心部の温度は、17.5℃、湿度17.1%、真空度1.21kPaであった。
真空ポンプを止め、常圧に戻して、ふたを開けてサンプルを回収した。菌数および菌の定着率、水分、発芽率を調査した。結果を表6に示した。尚、定着率の算出は下記のように行った。
有効微生物剤(エコホープ液またはエコホープDJ)に含まれる有効微生物菌数:1*108 (cfu/ml) または (cfu/g)
モミ(種子)粒数:約2万粒/Literより、
種子1粒当りに約2.5万cfuの有効微生物を接種していると仮定。
種子1粒当りから検出された菌数を2.5万で割ることによりその割合を算出した。
Figure 2011201800
実施例6は、常圧で接種した比較例3に比べて明らかに付着菌数が上昇し、有効微生物が効率よく種子に定着していることが明らかとなった。比較例4は、同様に減圧条件下で接種したにもかかわらず大量の水の存在が種子への有効微生物の定着を阻害した。また、大量の廃液が発生すること、さらに大量の水の存在は乾燥時間の増加にもつながるなどの問題があった。
実施例7 バカ苗汚染モミを用いた減圧接種テスト(バカ苗病に対する防除検定)
実施例6と同様の条件で、バカ苗病汚染モミを用いてサンプル製造を行った。試作サンプルの防除効果検定を日本植物防疫協会研究所、兵庫県農林水産総合技術センターおよび高知県農業技術センターに送付し、多地点同時評価を行った。
比較例5 バカ苗汚染モミを用いた常圧接種テスト(バカ苗病に対する防除検定)
比較例4と同様の条件で、バカ苗病汚染モミを用いてサンプル製造を行った。試作サンプルの防除効果検定を日本植物防疫協会研究所、兵庫県農林水産総合技術センターおよび高知県農業技術センターに送付し、多地点同時評価を行った。
Figure 2011201800
実施例7では、比較例5と比較して明らかにバカ苗病に対する防除価が上昇しており、効果が優れたものであることが示された。
以上のように、種子をあらかじめ減圧条件に置くことにより、種子の周囲の空気や水を除去してから有効微生物を噴霧接種する方法は、有効微生物の種子への定着率を高め、種子の防除効果を高めるなど、高品質な有効微生物コーティング種子の製造に有効であった。
実施例8 種子へ添加した水の分画
種子に水を添加した場合に、網カゴに入れて滴り落ちるような水(表面自由水)と、脱水機にかける事で除くことのできる種子の表面に軽く付着している水(表面付着水)、および乾燥器で処理しなければ除去できないような種子にしっかり吸着されている水(吸着水)の3種類に分けることができる。そこで、モミを用いて、少量ずつ水を添加し、添加した水が上記3種の形態の水のどれに当てはまるかについて調べた。その結果を図1に示した。
その結果、図1に示したように、モミ体積の9%までは、吸着水の量が増加した。8%からは表面付着水が現れるようになり、更に9%からは、表面自由水も出現した。液体状の有効微生物を添加する場合において、種子から容易に離脱してしまう表面自由水や表面付着水中の有効微生物は、種子との結合力が弱いことが容易に推察される。種子にしっかりと結合・吸着している水(吸着水)中の有効微生物は種子との結合力が強く容易に離脱しないと考えられる。従って、有効微生物を種子にコーティングする上で必要で損失の少ない液量は、9%であると考えられた。
実施例9 濡れによる種子の攪拌抵抗の変化
種子は濡れると攪拌抵抗が増大し、混合しにくくなる。このことは、種子に有効微生物を付着させる場合に不均一になる原因となる。従って、水を添加しても攪拌抵抗が増大しない程度の少量の水であれば、均一に混合することが可能である。そこで、モミをビーカーに入れ、攪拌装置にクランプメーターを取り付け、攪拌装置の回転数と電流値を読み取ることにより、攪拌抵抗の増大を調べた。装置を図2に示した。モミを、エバポレーターに入れ、水を添加し、減圧条件下で5分間処理後、ビーカーに入れて攪拌抵抗を調べた。結果を図3に示した。その結果、3%の水添加までは、攪拌抵抗に大きな変化は無いものの、4%の水添加で攪拌抵抗が大きくなった。従って、液体状の有効微生物を添加する場合に、1回に添加する液量を攪拌抵抗が変化しない4%以下に設定することが、種子の攪拌混合を制御しやすく、均一な有効微生物コーティング種子製造につながると考えられた。
実施例10 保護剤(スキムミルク+グルタミン酸ソーダ)添加と低温保存の組み合わせ試験
細菌(シュードモナス フルオレッセンス FPT-9601株(FPT))および同FPH-9601株(FPH)を所定の保護剤液(スキムミルク10%+グルタミン酸ソーダ1%)または水に縣濁し、トマト(品種名:ろくさんまる)種子を浸漬、真空デシケーターに入れ、減圧処理を行った。処理後の種子を乾燥後、5℃または25℃の温度条件で保存した。その後、経時的に種子に付着した生菌数を調査した。菌数調査は、任意に採取した5粒を1サンプルとし、各区2サンプルを採取、リン酸緩衝生理食塩水とともに乳鉢で磨砕して低速遠心分離(2500rpm、5℃で5分間)した後、上清を採って段階希釈、ストレプトマイシン200ppm添加King-B平面培地に展開して30℃で3〜4日後のコロニー数を数える方法で行った。これから種子1個あたりの生菌数を算出した。結果を図4に示した。
図4に示したように、保護剤添加と低温での保存がなければ、細菌が死滅することが分かった。
実施例11 統計的手法による複数の要因についての効果解析試験
ライブコート種子の製造工程中、細菌の付着量及び付着した細菌が生存する上で影響を及ぼす可能性のある要因を取り上げ、直交表を用いた要因配置によって統計的手法で要因効果を明らかにした。すなわち、トマト(品種名:ろくさんまる)種子を供試し、細菌2菌株(FPT株およびFPH株)を蒸留水に懸濁、所定の方法で種子を浸漬し、減圧した。処理後の種子を乾燥後、所定の条件で保存した。その後、経時的に種子に付着した生菌数を調査した。菌数調査は、任意に採取した5粒を1サンプルとし、各区2サンプルを採取、リン酸緩衝生理食塩水とともに乳鉢で磨砕して低速遠心分離(2500rpm、5℃で5分間)した後、上清を採って段階希釈、ストレプトマイシン200ppm添加King-B平面培地に展開して30℃で3〜4日後のコロニー数を数える方法で行った。これから種子1個あたりの生菌数を算出し、対数変換して統計解析を行った。
試験した要因は以下の通り。A:トマト種子のポリッシングの有無;B:菌株の違い(FPT vs. FPH);C:保護剤(スキムミルク+グルタミン酸ソーダ)添加の有無;D:減圧―加圧処理の有無;E:保存袋への酸素吸収剤(アイ.エス.オー社製、A-500HS)添加の有無;F:保存時の乾燥剤(アイ.エス.オー社製、合成ゼオライトAZ-10G)添加の有無;G:保存温度の違い(5℃ vs. 25℃)。
結果を図5に示した。菌液処理を行い、1日後の生存菌数を調べ、その対数値を使って生菌数に及ぼす要因効果を解析した結果、細菌懸濁液への保護剤添加が最も重要であり、次いで保存温度であった。すなわち、保護剤添加と低温での保存がなければ、他の条件に関係なく細菌が死滅することが分かった(図4、5)。
実施例12 保存安定性試験
図4、5の結果より、最も好適な条件、すなわち、保護剤添加、保存袋への酸素吸着剤添加、低温(5℃)で貯蔵した場合の生菌数の経時変化を調べた。
その結果、211日経過後も種子から数個程度の有効細菌が検出された(図6)。
実施例13 保護剤の探索
種子の乾燥、保存中に起こる細菌の死滅を最小限に抑える保護剤を探索するため、上記スキムミルク(SM)、グルタミン酸ソーダ(GA)の他、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ペクチン(P)、キサンタンガム(K)等を供試して保護効果を調べた。
実施例10〜12の結果から、保護剤:グルタミン酸ソーダ1%+スキムミルク10%(以下GA-SM保護剤)が有効微生物の生存率を高めるのに有効であったが、これを対照として数種高分子化合物を供試して比較した。その結果、対照区とほぼ同等の効果が認められたのは、GA-1%に以下の化合物:PVP−K30(10%)、PEG-6000(10%)およびPEG-4000(10%)、キサンタンガム(0.2%)のいずれかを加えたものであった。
実施例14 保護剤の探索2
その後、さらに対象を広げて保護剤の探索を進めた。ペクチンについても調べた結果、GA-1%加用ペクチン1%及び0.5%がさらに優れていることがわかった(図7)。ペクチンの場合、いったん溶解しても沈殿する性質があり、キサンタンガムを加えるとこれを阻止することがわかった。ペクチンの溶解方法を検討した結果、ペクチンとGAを入れた懸濁液を115℃、10分間、オートクレーブで加熱することにより、滅菌を兼ねて完全に溶解することがわかった。
実施例15 保存安定性試験
GA-1%加用ペクチン1%及び0.5%を保護剤として用い、実施例10の製造法で有効微生物コーティング種子を製造し、その保存安定性を調べた。結果を図8に示した。図8に示したように2009年1月に製造した有効微生物コーティング種子の生菌数は、9ヵ月後でも104 cfu/種子以上を維持しており、安定して保存できることがわかった。
これらの結果から、有効微生物を種子に減圧接種する際において、保護剤を添加することが有効微生物の死滅を防ぐ上で非常に有効であることがわかった。
実施例16 保護剤の探索
ハクサイのライブコート種子製造工程においても、本細菌(バリオボラックス属細菌Variovorax paradoxusCGF4526株)でも保護剤の添加が不可欠と考え、GA-1%加用スキムミルク10%液を標準の分散媒として用いた。基本的な実験条件は、以下の方法で行った。すなわち、本菌の真空凍結乾燥製剤(開発名CGC2006水和剤)から分離し、King-B斜面培地で培養した細菌をリン酸緩衝生理食塩水に懸濁、超音波振動で分散させた後、分散媒に懸濁(3.0E+7 cfu/ml)した。U字底マイクロプレートの各ウエルにハクサイ“舞風”の種子10粒ずつ入れ、細菌懸濁液を30μlずつ添加し(種子重量:液量は1:1;菌数:9.0E+5)、よくかき混ぜ、5分間静置後、真空チャンバーに入れ、減圧下で急速に乾燥した。湿度が6%まで下がった段階で真空ポンプを止めた。酸素吸収剤および乾燥剤にはISO社製A-500HSおよび合成ゼオライト乾燥剤AZ-10Gを用い、30粒ずつ入れた保存袋(ISO社製ハイバリア専用保存袋AP-1522)に各1個入れ、袋を押さえて余分な空気を抜いた後、シーラーで密封した。保存には温度勾配恒温槽(EYELA社製 MTI-202B)を用い、上記の4温度を設定した。なお、実際の温度は、低温度区で-0.5〜+3℃、高温度区では±0.5℃の幅で変動した。所定日数保存後、各試料から1区5粒ずつ3反復採取し、リン酸緩衝生理食塩水とともに乳鉢で磨砕、その段階希釈液をKing-B平面培地に展開し、30℃―3日後、形成されたコロニー数を数えた。これから種子1個あたりの生菌数を算出、対数変換して統計処理を行った。
トマトの試験結果から、従来のスキムミルクのほか、PVP、PEG、キサンタンガム、ペクチンなどの添加が種子の乾燥・保存時における細菌の減少を抑制することが分かったので、ハクサイ・バリオボラックス菌の場合についても検討した。すなわち、PVP―K30(重合度によりK=30、K=90などがある・関東化学)、PEG#4000、キサンタンガム(KELZEN(商品名)(三昌(株)), KELZEN-T(商品名) (三昌(株))、ペクチン、及び対照のスキムミルクについて、それぞれ2濃度を設定、各々にGAの1%添加、無添加区を設け、ハクサイ“舞風”種子に菌液を付着、乾燥、保存(5℃)後に種子1個あたりの生菌数を調べた。この実験ではVariovorax paradox CGF4526製剤(公式菌濃度2 x 1010 cfu/g)を使用し、リン酸緩衝生理食塩水に懸濁、希釈して供試する分散媒に懸濁した(細菌濃度:1.3E+09cfu/ml)。これをペトリ皿に拡げた種子に、十分にぬれる程度に上から噴霧した。これらの種子をろ紙上に拡げ、減圧チャンバーに入れ、急速な減圧乾燥を行った。
種子乾燥後、5℃で保存し、13−20日の間に3回、菌数を調べた結果、ペクチン1%及び0.5%添加区では種子1個当たり、数百から千個以上の有効細菌が検出されたが、他の処理区では10個以下と極端に少なかった。GA(1%)の添加は、いずれの保護剤の場合も有効であった(図9)。本実験で菌数が少なかった原因は、他の実験結果から推定して噴霧法を使ったため、と考えられた。
これらの結果から、有効微生物を種子に減圧接種する際において、保護剤を添加することが有効微生物の死滅を防ぐ上で非常に有効であることがわかった。
減圧処理後有効微生物を接種する方法、その圧力条件、添加する液量、処理の反復、さらに乾燥粉末有効微生物を接種する方法、保護剤添加する方法などの有効微生物コーティング種子の製造方法の改良を行った。

Claims (11)

  1. 種子を減圧条件において処理する工程、および
    減圧条件において処理された種子に有効微生物を減圧接種する工程
    を含む有効微生物コーティング種子の製造方法。
  2. 前記減圧条件が600hPa以下の条件である、請求項1の方法。
  3. 種子に有効微生物を減圧接種する工程が、種子に有効微生物の懸濁液を接触させる工程を含み、前記懸濁液の体積が種子の体積よりも小さい、請求項1または2の方法。
  4. 前記懸濁液の体積が種子の体積の0.1〜50%である、請求項3の方法。
  5. 種子に有効微生物の懸濁液を接触させる工程が、前記懸濁液を複数回に分けて種子に接触させる工程であり、1回あたりに使用される前記懸濁液の体積が種子の体積の0.1〜10%である、請求項3または4の方法。
  6. 種子に有効微生物を減圧接種する工程が、種子に乾燥粉末状の有効微生物を接触させる工程を含む、請求項1または2の方法。
  7. 有効微生物が減圧接種された種子に対して減圧条件における処理と常圧条件における処理とを交互にそれぞれ少なくとも1回施す工程を更に含む、請求項1〜6のいずれかの方法。
  8. 種子を、増粘安定剤、多糖類、親水性高分子化合物、タンパク質、アミノ酸およびアミノ酸塩から選択される少なくとも1種の微生物保護剤で処理する工程を更に含む、請求項1〜7のいずれかの方法。
  9. 増粘安定剤が、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、または寒天であり、多糖類が、セルロース、キチン、デンプン、グリコーゲン、アガロース、ペクチン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、キシログルカン、イヌリン、またはポリガラクツロン酸であり、親水性高分子化合物が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはポリビニルピロリドン(PVP)であり、タンパク質が、スキムミルク、脱脂粉乳、カゼイン、コラーゲン、ケラチン、またはフィブロインであり、アミノ酸が、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、トリプトファン、メチオニン、セリン、トレオニン、システイン、リシン、アルギニン、またはヒスチジンであり、アミノ酸塩が前記アミノ酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、またはマグネシウム塩である、請求項8の方法。
  10. 種子に有効微生物を減圧接種する工程が、有効微生物と微生物保護剤とを含む混合物を種子に接触させる工程を含む、請求項8または9の方法。
  11. 有効微生物が減圧接種された種子を減圧乾燥する工程を更に含む、請求項1〜10のいずれかの方法。
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