JP2011201711A - ディスプレイ用カバーガラスおよびディスプレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質かつ機械強度の高い薄板状のカバーガラス及び前記カバーガラスを備えるディスプレイを提供する。
【解決手段】組成が、酸化物基準のモル%表示にて、SiO2:60〜75%、Al23:0〜12%(ただし、SiO2およびAl23の合計含有量が68%以上)、B23:0〜10%、Li2OおよびNa2Oを合計で5〜26%、K2O:0〜8%(ただし、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量が26%以下)、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOを合計で0〜18%、ZrO2、TiO2およびHfO2を合計で0〜5%、を含み、さらに、Sn酸化物およびCe酸化物を外割り合計含有量で0.1〜3.5質量%含み、(Sn酸化物の含有量/(Sn酸化物の含有量+Ce酸化物の含有量))が0.01〜0.99であり、Sb酸化物の含有量が0〜0.1%であり、板厚が1.0mm以下のガラスを用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ディスプレイ用のカバーガラスおよび前記カバーガラスを備えるディスプレイに関する。
携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末装置やその他の携帯機器において、ディスプレイに衝撃や外力が加わることを防止するために、保護板が配設されている(例えば、特許文献1)。近年、携帯端末装置や携帯機器の薄型化に伴い、撓みを抑えつつ、しかも薄板であっても強度のある化学強化ガラスを使った保護板が提案されている(例えば、特許文献2)。
特開2004−299199号公報 特開2007−099557号公報
上記保護板としてガラスを使用する場合、保護板はカバーガラスと呼ばれる。前述のようにカバーガラスの薄板化が進んでいるが、今後、厚さ1.0mm以下の超薄板化も必要になると考えられる。
ところで、カバーガラスの厚さを1.0mm以下にすることにより、これまでには顕在化していなかった問題が明らかになってきた。
薄板状ガラスに、ガラス製造時に発生する気泡が残存していると、その泡がたとえ微小なものであったとしても、機械強度が著しく低下してしまう。従来、ガラスを化学強化することにより、機械強度を維持する方法が取られてきたが、極めて薄いガラスに残留泡が含まれていると、泡が存在する部分の実効的な厚さがさらに薄くなってしまう。
また、残留泡を含むガラスを化学強化すると、泡の周辺で応力の面内分布が不均一になって、局所的な歪が生じ、カバーガラスを通して見る表示画像の画質が低下するという問題も生じる。
本発明は、カバーガラスの薄板化に伴って生じる上記問題を解決するためになされた発明であって、高品質かつ機械強度の高い薄板状のカバーガラス及び前記カバーガラスを備えるディスプレイを提供することを目的とする。
本発明者は、カバーガラスに好適な所定の組成範囲を有するガラスに、Sn酸化物とCe酸化物の両方を添加することにより、両酸化物による相乗効果によって、極めて優れた清澄効果が得られること、ガラス中に残留する泡を極めて少ないレベルにまで低減することによって、カバーガラスを板厚1.0mm以下にしても十分な機械強度を維持することができること、を見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するための手段として、
(1)ディスプレイの画面表示部をカバーしつつ、前記画像表示部が表示する画像を透過するために用いるカバーガラスにおいて、
酸化物基準に換算し、モル%表示にて、
SiO2 60〜75%、
Al23 0〜12%
(ただし、SiO2およびAl23の合計含有量が68%以上)、
23 0〜10%、
Li2OおよびNa2Oを合計で5〜26%、
2O 0〜8%
(ただし、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量が26%以下)、
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOを合計で0〜18%、
ZrO2、TiO2およびHfO2を合計で0〜5%、
を含み、さらに、Sn酸化物およびCe酸化物を外割り合計含有量で0.1〜3.5質量%含み、Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量に対するSn酸化物の含有量の比(Sn酸化物の含有量/(Sn酸化物の含有量+Ce酸化物の含有量))が0.01〜0.99であり、Sb酸化物の含有量が0〜0.1%であるガラスにより構成され、板厚が1.0mm以下であることを特徴とするカバーガラス、
(2)前記カバーガラスは表面に圧縮応力層を有する上記(1)項に記載のカバーガラス。
(3)前記圧縮応力層は化学強化により形成されたものである上記(2)項に記載のカバーガラス、
(4)表面に飛散防止フィルムを備える上記(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載のカバーガラス、
(5)上記(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載のカバーガラスを備え、表示画面をカバーするように前記カバーガラスが装着されているディスプレイ、
を提供するものである。
本発明によれば、機械強度の高い板厚1.0mm以下のカバーガラスおよび前記カバーガラスを備えるディスプレイを提供することができる。
本発明のカバーガラスを装着した携帯情報端末の一部を模式的に示す断面図である。
本発明は、ディスプレイの画面表示部をカバーしつつ、前記画像表示部が表示する画像を透過するカバーガラスにおいて、酸化物基準に換算し、モル%表示にて、
SiO2 60〜75%、
Al23 0〜12%
(ただし、SiO2およびAl23の合計含有量が68%以上)、
23 0〜10%、
Li2OおよびNa2Oを合計で5〜26%、
2O 0〜8%
(ただし、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量が26%以下)、
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOを合計で0〜18%、
ZrO2、TiO2およびHfO2を合計で0〜5%、
を含み、さらに、Sn酸化物およびCe酸化物を外割り合計含有量で0.1〜3.5質量%含み、Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量に対するSn酸化物の含有量の比(Sn酸化物の含有量/(Sn酸化物の含有量+Ce酸化物の含有量))が0.01〜0.99であり、Sb酸化物の含有量が0〜0.1%であるガラスにより構成され、板厚が1.0mm以下であることを特徴とする。
以下、本発明のカバーガラスを構成するガラスをガラスAと呼ぶ。
ガラス熔融時、Snは主として1400〜1600℃程度の温度域で酸素ガスを積極的に放出して清澄を促進させる働きが強く、Ceは1200〜1400℃程度の温度域でガラス融液中の酸素ガスを取り込んでガラス成分として定着させる働きが強い。ガラス中にSnとCeを共存させ、Snの酸素ガス放出効果とCeの酸素ガス取り込み効果を協働させることにより、優れた清澄効果を得ることができ、薄板化したカバーガラスの機械強度の低下を防止することができる。
SnとCeの共存効果を得るには、ガラス熔融時の温度を1400℃より高温で保持した後、1400℃より低温で保持するプロセスが求められる。さらに、Snの清澄作用温度域とCeの清澄作用温度域が接する1400℃におけるガラスの粘性が清澄効率に大きな影響を与える。1400℃における粘度が高いと、ガラス融液中の泡の移動が阻害されやすくなり、清澄効率が低下傾向を示す。そのため、ガラス組成を1400℃における粘度が5×103dPa・s以下、より好ましくは1×103dPa・s以下となるように調整することが望まれる。こうした観点から、ガラスAの組成は好適である。
また、ガラスAは、非晶質性(アモルファス)のガラスであって、結晶化ガラスに比べて優れた可視光透過性と加工性を備える。また、優れた化学的耐久性を備えるともに、化学強化に好適なガラスでもある。
以下、ガラスAの組成について詳説するが、特記しない限り、Sn酸化物、Ce酸化物、Sb酸化物の含有量は、外割り添加量(Sn酸化物、Ce酸化物および後述するSn酸化物以外のガラス成分の合計含有量を100質量%とし、前記添加量は、この100質量%に対する質量比)とし質量%にて表示し、その他、成分の含有量、合計含有量はモル%にて表示する。
SiO2は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラス安定性、化学的耐久性、特に耐酸性を向上させる働きをする必須成分である。SiO2の含有量が60%未満だと上記働きを十分得ることができず、75%を超えるとガラス中に未熔解物が生じたり、清澄時のガラスの粘性が高くなりすぎて泡切れが不十分になる。未熔解物を含むガラスでは、未溶解物が光の散乱源となって、ディスプレイの画質を低下させる。泡を含むガラスについても、泡が光散乱源となって画質を低下させる他、ガラスの機械強度を低下させる要因になる。以上より、SiO2の含有量は60〜75%とする。SiO2の含有量の好ましい範囲は60〜70%、より好ましい範囲は62〜68%、さらに好ましい範囲は63〜67%である。
Al2O3もガラスのネットワーク形成に寄与し、ガラス安定性、化学的耐久性を向上させる働きをするとともに、化学強化時のイオン交換速度を増加させる働きもする。Al2O3の含有量が12%を超えるとガラスの熔融性が低下し、未熔解物が生じやすくなる。したがって、Al2O3の含有量は0〜12%とする。Al2O3の含有量の好ましい範囲は0.5〜11%、より好ましい範囲は4〜11%である。なお、化学的耐久性を改善する上から、SiO2とAl2O3の合計含有量を68%以上とする。SiO2とAl2O3の合計含有量の好ましい範囲は70%以上である。
B2O3は、脆さを低下させるとともに、熔融性を向上させる働きをするが、過剰導入により化学的耐久性が低下するため、B2O3の含有量を0〜10%とする。化学的耐久性の改善を重視する場合は、B2O3の含有量の好ましい範囲は0〜5%、より好ましい範囲は0〜2%、さらに好ましくは0〜1%、導入しないことが一層好ましい。
Li2O、Na2Oは、アルカリ金属酸化物の中でもガラスの熔融性および成形性を向上させる働きをする。また、化学強化用のガラスとする場合は、化学強化時のイオン交換を担う成分でもある。Li2OおよびNa2Oの合計含有量が5%未満であると、上記働きを十分得ることができない。特に、前述のように、化学的耐久性を向上させるために比較的多くのSiO2、Al2O3を導入している場合、Li2OとNa2Oの合計含有量が5%未満であると清澄時のガラスの粘性が高すぎるため、十分な清澄効果が得られない。一方、Li2OおよびNa2Oの合計含有量が26%を超えると化学的耐久性、特に耐酸性が低下する。したがって、Li2OおよびNa2Oの合計含有量は5〜26%の範囲とする。Li2OおよびNa2Oの合計含有量の好ましい範囲は10〜25%、より好ましい範囲は15〜25%、さらに好ましい範囲は20〜24%である。
K2Oも、ガラスの熔融性および成形性を向上させる働きをする。ただし、K2Oの含有量が8%を超えると化学的耐久性、特に耐酸性が低下する。したがって、K2Oの含有量は0〜8%とする。K2Oの含有量の好ましい範囲は0〜5%、より好ましい範囲は0〜2%である。
MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、ガラスの熔融性、成形性およびガラス安定性を良化し、熱膨張係数を大きくする働きをする。しかし、過剰に導入すると化学的耐久性が低下するため、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量を0〜18%とする。MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量の好ましい範囲は0〜15%である。MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOは、化学強化の際、イオン交換速度を低下させる作用があるため、化学強化の効率を重視する場合は、これら成分の含有量を低く抑えることが望ましい。その場合、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの合計含有量の好ましい範囲は0〜7%、より好ましい範囲は0〜5%である。
MgO、CaOは上記作用に加え、剛性、硬度を高める働きをする。したがって、化学強化の効率よりも剛性、硬度の改善を重視する場合は、MgOおよびCaOの合計含有量を4〜14%の範囲にすることが好ましい。この場合、MgOの含有量の好ましい範囲は2〜7%、CaOの含有量の好ましい範囲は2〜9%である。
ZrO2、TiO2、HfO2は、剛性、破壊靭性を高め、化学的耐久性、特に耐アルカリ性を向上させる働きをするが、過剰に導入すると熔融性が低下する。そのため、ZrO2、TiO2およびHfO2の合計含有量を0〜5%とする。ZrO2、TiO2およびHfO2の合計含有量の好ましい範囲は1〜5%、より好ましい範囲は1〜4%である。
ZrO2、TiO2、HfO2の中で、ZrO2は化学的耐久性の改善効果が大きく、化学強化時のイオン交換効率を高める働きにも優れているため、ZrO2を含有させることが好ましい。ZrO2の含有量の好ましい範囲は1〜5%、より好ましくは1〜4%である。TiO2はガラスを水に浸漬したときにガラス表面に付着物を生成するため、TiO2の含有量を0〜2%の範囲にすることが好ましく、0〜1%の範囲にすることがより好ましく、導入しないことがさらに好ましい。HfO2は希少成分であり、コスト面から、その含有量を0〜2%の範囲にすることが好ましく、0〜1%の範囲にすることがより好ましく、導入しないことがさらに好ましい。
P2O5も発明の目的を損なわない範囲で少量導入することができるが、過剰導入により化学的耐久性が低下するため、その含有量を0〜1%とすることが好ましく、0〜0.5%とすることがより好ましく、0〜0.3%とすることがさらに好ましく、導入しないことが一層好ましい。
SiO2、Al2O3を比較的多く含むガラスAは、アルカリ金属成分を含むものの清澄時のガラスの温度が高い。このようなガラスにおいて、Sb酸化物はSn酸化物、Ce酸化物と比較すると清澄効果が劣り、Sn酸化物が添加されたガラスにおいては、むしろ清澄効果を低下させてしまう。Sb酸化物の含有量が0.1%を超えるとSn酸化物との共存においてガラス中の残留泡が急速に増加してしまう。したがって、Sb酸化物の含有量を0.1%以下に制限する。Sb酸化物の含有量の好ましい範囲は0〜0.05%であり、より好ましい範囲は0〜0.01%であり、一層好ましい範囲は0〜0.001%であり、Sb酸化物を添加しないこと(Sbを含有しないガラス)が特に好ましい。Sbを含有しない(Sbフリー化する)ことによりガラス中の残留泡の密度は数分の一から百分の一程度にまで激減する。ここでSb酸化物とはSbの価数によらず、ガラス中に溶け込んでいるSb2O3、Sb2O5などの酸化物を意味する。
なお、Sb酸化物はSn酸化物やCe酸化物と比べて環境への影響も大きいから、Sb酸化物の使用量を低減、ゼロにすることにより環境への影響を低減する上からも好ましい。
Asは強力な清澄剤ではあるが、毒性のためフリー化が望まれる。また、Fも清澄効果を示すが、ガラス製造中に揮発してガラスの性質、特性が変動してしまい、安定した熔融、成形を行う上で問題がある。また、揮発によってガラス中に脈理と呼ばれる不均質部が生じてしまう。ガラス中に脈理があると研磨した場合、脈理部分と均質な部分とのガラスの削られるスピードが僅かに異なることによって研磨加工された面に凹凸が生じ、高い平坦性が要求されるカバーガラスとしては望ましくない。したがって、ガラスAでは、As、Fを導入しないことが好ましい。
ガラスAには、F以外のハロゲン、すなわち、Cl、Br、Iを添加しないことが好ましい。これらハロゲンも熔融ガラスから揮発して脈理の原因となり、ディスプレイの画質低下の要因となる。
また、ガラスAでは、Pb、Cdなどは環境に悪影響を与える物質なので、これらの導入も避けることが好ましい。
Sb、Asを含まないガラスは、フロート法による成形も良好に行うことができる。
ガラスAは、ガラス原料を熔解する工程、熔解して得られた熔融ガラスを清澄する工程、清澄した熔融ガラスを均質化する工程、均質化した熔融ガラスを流出して成形する工程を経て作られる。このうち、清澄工程は比較的高温で行われ、均質化工程は比較的低温で行われる。清澄工程では、ガラス中に積極的に泡を発生させて、ガラス中に含まれる微小な泡を取り込んで大きな泡にすることで浮上しやすくすることにより清澄を促す。一方、流出に向けてガラスの温度を低下させた状態では、ガラス中にガスとして存在する酸素をガラス成分として取り込むことにより泡を消す手法が有効である。
ガラスAにおいて、Sn酸化物は、高温で酸素ガスを放出し、ガラス中に含まれる微小な泡を取り込んで大きな泡にすることで浮上しやすくすることにより清澄を促す働きに優れている。一方、Ce酸化物は、低温でガラス中にガスとして存在する酸素をガラス成分として取り込むことにより泡を消す働きに優れている。泡の大きさ(固化したガラス中に残留する泡(空洞)の大きさ)が0.3mm以下の範囲で、Sn酸化物は比較的大きな泡も極小の泡も除く働きが強い。Sn酸化物とともにCe酸化物を添加すると、50μm〜0.3mm程度の大きな泡の密度が数十分の一程度にまで激減する。このように、Sn酸化物とCe酸化物を共存させることにより、高温域から低温域にわたり広い温度範囲でガラスの清澄効果を高めることができ、Sb酸化物、As、Fの導入が制限されたガラスでも十分な泡切れが可能になる。
Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量が0.1%未満だと十分な清澄効果が期待できず、3.5%を超えるとSn酸化物やCe酸化物が溶け残り、異物となってガラス中に混入するおそれが生じる。微小かつ少量の異物でも光散乱源となってディスプレイの画質が低下してしまう。SnやCeは結晶化ガラスを作る場合には結晶核を生成する働きをする。しかし、ガラスAは非晶質性ガラスであるので、加熱によって結晶を析出しないことが望ましい。Sn、Ceの量が過剰になると、こうした結晶の析出がおこりやすくなる。そのため、Sn酸化物、Ce酸化物とも過剰の添加は避けるべきである。こうした理由から、ガラスAでは、Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量を0.1〜3.5%とする。Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量の好ましい範囲は0.1〜2.5%、より好ましい範囲は0.1〜1.5%、さらに好ましい範囲は0.5〜1.5%である。
ガラスAでは、Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量に対するSn酸化物の含有量の比(Sn酸化物の含有量/(Sn酸化物の含有量+Ce酸化物の含有量))を0.01〜0.99の範囲とする。前記比の好ましい範囲は0.02以上であり、より好ましい範囲は1/3以上、さらに好ましい範囲は0.35〜0.99、一層好ましい範囲は0.45〜0.99、より一層好ましい範囲は0.45〜0.98、さらに一層好ましい範囲は0.45〜0.85である。
前記比が0.01未満になったり、0.99を超えると、Sn酸化物の高温における清澄作用とCe酸化物の低温における清澄作用の相乗効果が得られにくくなる。また、Sn酸化物、Ce酸化物のいずれかに偏った添加になるため、Sn酸化物、Ce酸化物のうち多量に導入したほうの酸化物が溶け残りやすくなり、ガラス中に未熔解物が生じやすくなる。
また、Snは、ガラス中で赤外光を吸収する性質があり、カバーガラスとして使用する際、熱線、例えば、太陽光中の赤外光成分を吸収し、ディスプレイ内部への熱線照射によるダメージを軽減する働きもする。
Ceは、紫外光ランプなどを使用し、高強度の紫外光を照射すると青色の蛍光を発する。Ceを含むガラスAに紫外光を照射することにより蛍光を発生させ、青色の蛍光の有無により、同一の外観を呈し、目視では判別困難なガラスAとCe非添加ガラスとを容易に判別することができる。このようにガラスA、あるいはガラスAからなるカバーガラスおよびガラス母材は識別機能を有する。
この識別機能を利用すれば、複数種のガラスが混在するカバーガラスの生産工程、ディスプレイの生産工程において、ガラスの組成を分析するまでもなく、ガラスAからなるカバーガラスであるかどうかを迅速に検査することができ、ガラスAと他のガラスの間での混入を避けることができる。
また、カバーガラスに何らかのトラブルがあった場合、ガラスの識別が容易にできるので、トラブルの原因、問題の解決を迅速に行うこともできる。
さらに、カバーガラス表面に飛散防止フィルムの貼りあわせる際や、カバーガラス表面や前記フィルム表面に品名、品番、製造元などを印刷する際、上記のように紫外光を照射し、Ceが発する蛍光を利用し、カバーガラスの端部を検出し、フィルムの位置合わせや印刷位置の位置合わせ作業を効率よく行うこともできる。
こうした理由からSn酸化物とCe酸化物の合計含有量に加え、Sn酸化物とCe酸化物の含有量の配分を上記のように定めることが重要である。
Sn酸化物は、上記清澄効果と赤外光吸収効果を得る上からその含有量を0.1%以上にすることが好ましいが、3.5%を超えるとガラス中に異物として析出し、ディスプレイの画質を低下させる要因になる。したがって、Sn酸化物の含有量は0.1〜3.5%とすることが好ましい。上記観点からSnの含有量のより好ましい範囲は0.1〜2.5%、さらに好ましい範囲は0.1〜1.5%、一層好ましい範囲は0.5〜1.0%である。ここでSn酸化物とはSnの価数によらず、ガラス中に溶け込んでいるSnO、SnO2などの酸化物を意味する。Sn酸化物の含有量とは、SnO、SnO2などの酸化物の合計含有量である。
Ce酸化物は、上記清澄効果と紫外光吸収効果を得る上から、その含有量を0.1%以上にすることが好ましいが、3.5%を超えると熔融容器を構成する耐火物や白金との反応や、ガラスを成形するための成形器具との反応が大きくなって、不純物が増加し、ガラスの内部品質が低下したり、着色が増大する傾向を示す。さらに、Ce酸化物の過剰添加により、可視光、特に可視短波長域の光が吸収され、Ce自体によりガラスが着色する傾向を示す。したがって、Ce酸化物の含有量は0.1〜3.5%とすることが好ましい。Ceの含有量のより好ましい範囲は0.5〜2.5%、より好ましい範囲は0.5〜1.5%、さらに好ましい範囲は0.5〜1.0%である。ここでCe酸化物とはCeの価数によらず、ガラス中に溶け込んでいるCeO2、Ce2O3などの酸化物を意味する。Ce酸化物の含有量とは、CeO2、Ce2O3などの酸化物の合計含有量である。
カバーガラスの母材であるシートガラスの成形は、例えば、ダウンドロー法やフロート法などにより行われる。Sn酸化物を含むガラスAは、上記方法により安定して薄板状に成形する点で好ましい。シート成形時、高温状態の熔融ガラスから熱輻射が発せられるが、ガラス中のSnは赤外光を吸収するため、ガラス中で熱輻射の吸収がおこり、熱輻射による冷却スピードが減少し、ガラスの粘度上昇スピードが僅かながら減少し、薄板化に有利に働く。
また、Sn酸化物およびCe酸化物を含むガラスAにより構成されるカバーガラスを、撮像素子を搭載するディスプレイ装置に取り付けることにより、カバーガラスを透過して撮影する画像が、カバーガラスの赤外光および紫外光カットフィルター効果により、鮮明にすることが可能になる。
なお、ガラスAには、清澄剤として硫酸塩を0〜1%の範囲で添加することもできる。硫酸塩としては、芒硝(Na2SO4)、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4などを使用することができる。
ガラスAにおいて、清澄効果を一層高める上から、1400℃における粘度を103dPa・s以下とすることが好ましく、102.7dPa・s以下とすることがより好ましい。
このようにすることにより、単位質量のガラス中に含まれる残留泡の密度を60個/kg以下、好ましくは40個/kg以下、より好ましくは20個/kg以下、さらに好ましくは10個/kg以下、一層好ましくは2個/kg以下、より一層好ましくは0個/kgにすることができる。そのため、カバーガラスに好適なガラスを高い生産性のもとに量産することができる。
次に、ガラスAの製造方法について説明する。
まず、ガラスAが得られるように、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物などと、SnO2、CeO2などの清澄剤を秤量、混合して、ガラス原料を調合し、前記ガラス原料を熔融し、得られた熔融ガラスを清澄、成形してガラスAを得る。
ガラスAの製法における好ましい態様は、熔融ガラスを1400〜1600℃に保持した後、降温して1200〜1400℃に保持した後、成形する方法である。熔融ガラスを1400〜1600℃に保持することにより、ガラスの粘性を低くしてガラス中の泡が浮上しやすい状態にするとともに、Snの酸素放出による清澄促進効果を得、その後、熔融ガラスの温度を低下させて1200〜1400℃に保持することにより、Ceの酸素取り込みを利用して泡切れを飛躍的に改善することができる。
熔融ガラス中にSnとCeが共存する上記ガラスの製法では、1400℃における粘度が5×103dPa・s以下、より好ましくは1×103dPa・s以下というガラスの特性と、SnとCeの共存による相乗効果によって、泡切れが格段に改善される。
1400〜1600℃に保持する時間をTH、1200〜1400℃に保持する時間をTLとすると、TL/THを0.5以下にすることが好ましく、0.2以下にすることがより好ましい。上記のようにTLに対し、THを長くすることにより、ガラス中のガスをガラス外へと排除しやすくなる。ただし、Ceによるガラス中のガス取り込み効果を促進する上から、TL/THを0.01より大きくすることが好ましく、0.02より大きくすることがさらに好ましく、0.03より大きくすることが一層好ましく、0.04より大きくすることがより一層好ましい。
1400〜1600℃の範囲から1200〜1400℃の範囲へ降温する際の温度差は、SnとCeそれぞれの泡切れ効果を高める上から30℃以上にすることが好ましく、50℃以上にすることがより好ましく、80℃以上にすることがさらに好ましく、100℃以上にすることが一層好ましく、150℃以上にすることがより一層好ましい。なお、温度差の上限は400℃である。
上記ガラスの製法においては、ガラス中の残留泡の密度が60個/kg以下となるようにSnおよびCeの添加量を定めることが好ましい。1400℃における粘度が103dPa・s以下というガラスの特性を利用することにより、ガラス中の残留泡の密度をさらに減少させることができる。さらに、ガラス中の残留泡の密度が40個/kg以下になるようにSnおよびCeの添加量を定めることが好ましく、20個/kg以下になるようにSnおよびCeの添加量を定めることがより好ましく、10個/kg以下になるようにSnおよびCeの添加量を定めることがさらに好ましく、2個/kg以下になるようにSnおよびCeの添加量を定めることが一層好ましく、0個/kgになるようにSnおよびCeの添加量を定めることが特に好ましい。なお、残留泡が存在しても、泡の大きさをすべて0.3mm以下にすることができる。
上記ガラスの製法において、ガラス原料を加熱、ガラス化する熔融槽、清澄槽は、電鋳煉瓦あるいは焼成煉瓦などの耐火物で構成し、作業槽や清澄槽と作業槽を連結する連結パイプ、あるいは流出パイプは白金あるいは白金合金(白金系材料という。)で構成することが好ましい。原料のガラス化が行われる熔融槽内の熔融物と、ガラス製造工程中、最も高い温度になる清澄槽内の熔融ガラスとは、ともに高い侵蝕性を示す。白金系材料は優れた耐侵蝕性を示すものの、侵蝕性の高いガラスに触れると、ガラスによって侵蝕され、白金固形物としてガラス中に混入する。白金固形物は耐侵蝕性を示すため、一旦、固形物としてガラス中に混入した白金はガラスに完全に溶けることなく、成形したガラス中に異物として残る。一方、耐火物は侵蝕されてガラス中に混入してもガラス中の溶け込んで、異物として残りにくい。したがって、熔融槽、清澄槽を耐火物製とすることが望まれる。一方、作業槽を耐火物製とすると、耐火物表面が熔融ガラスに溶け込むことにより均質化中のガラスに脈理が生じ、不均質になってしまう。作業槽の温度は1400℃以下になっており、ガラスの侵蝕性も低減していることから、ガラスに溶け込みにくい白金系材料により作業槽や連結パイプ、流出パイプを構成することが望ましく、作業槽内の熔融ガラスを攪拌、均質化する攪拌器も白金系材料で構成することが望ましい。
[シート成形]
本発明のカバーガラスは、例えば、ガラス原料を加熱、熔融し、ダウンドロー法、フロート法などによりシート形状に成形し、ガラス母材を得た後、このガラス母材を加工して作製することができる。ここでガラスの熔融については、ガラスAの製法において説明したとおりである。
ダウンドロー法では、上部に熔融ガラスを導く溝を備えたZrO2系耐火物製の樋状成形体を使用する。そして、上記溝から両側に熔融ガラスをオーバーフローさせることにより、ガラスを分流させ、成形体表面に沿って下降させた後、成形体下方で合流させ、下方に引っ張ってシート状に成形する。なお、成形中のガラスの幅方向の収縮を防ぐとともに、シートガラスの平坦性を改善するため、成形体下方で合流し、ガラスの下方への移動を妨げないように、シート状になったガラスの両サイドを各々一対のナールロールで挟み、局所的に冷却してもよい。
フュージョン法とも呼ばれるこの方法では、成形体に接した面は成形体下方におけるガラスの合流で貼り合わされるため、成形体との接触痕は消滅し、シートガラスの主表面にこうした痕跡は生じない。したがって、フュージョン法により成形したガラス母材の主表面を研磨しなくても、後述するようにエッチングなどによりガラス母材から必要形状のガラスを切り取り、カバーガラスを作ることができる。ただし、ガラス母材の主表面は、適宜、研磨してもよい。
フロート法では、熔融ガラスをフロートバスの溶融金属上に流し出し、水平方向に引っ張ってシート状に成形する。フロート法でもダウンドロー法と同様、成形中のガラスの両サイドを各々一対のナールロールで挟んで局所的に冷却してもよい。
ダウンドロー法、フロート法のいずれにおいても、シート形状にしたガラスを成形ゾーンからアニールゾーンへと連続的に移動させ、アニールを行う。シート状ガラスは、成形から冷却する過程で、面内の温度分布をガラスの平坦性が損なわれないように公知の方法により制御することが好ましい。成形からアニールに至るまで連続する長尺のシートガラスは、アニール後、所要の長さに切断され、後工程へと送られる。
[カバーガラスへの加工]
アニールによって歪を低減したシート状ガラスを、必要に応じてカバーガラスに加工しやすい大きさに切断する。このようにして得たガラス板をガラス母材と呼ぶ。
カバーガラスの輪郭形状は必ずしも直線のみによって構成されるわけではなく、曲線を含む形状など複雑な輪郭線によって構成されることが多い。また、厚さが1.0mm以下と薄いため、加工工程で大きな力がかかると破損しやすいという問題もある。こうした問題に対処するため、ガラス母材からカバーガラスをエッチングによって切り抜く方法が好ましい。それには、まず、レジストを用いて、公知の方法により、ガラス母材の主表面に得ようとするカバーガラスの輪郭に相当する部分のガラス表面を露出させ、前記輪郭により囲まれる領域はレジストにより覆われた状態にする。このようにレジストパターンを形成した後、このパターンをマスクとして、エッチャントでガラス母材をエッチングし、ガラス母材からカバーガラスを切り抜く。
ガラスAは、化学的耐久性に優れているため、切り抜かれたカバーガラスの端面はエッチングによる荒れを抑えることができ、端面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を10nm以下にすることができる。この方法によれば、カバーガラスの端面は、非常に高い平滑性を有し、機械的な切断など形成されるマイクロクラックが生じない。端面のマイクロクラックは、破壊の起点になることが多く、端部の平滑化によって、機械強度を高めることができる。なお、ガラス母材をエッチングする方法は、湿式エッチング(ウェットエッチング)、乾式エッチング(ドライエッチング)どちらでも構わない。加工コストを低くする点からは、ウェットエッチングが好ましい。ウェットエッチングに使用するエッチャントは、ガラス基板を食刻できるものであれば、何でも良い。例えば、フッ酸を主成分とする酸性溶液や、フッ酸に、硫酸、硝酸、塩酸、ケイフッ酸のうち少なくとも一つの酸を含む混酸などを用いることができる。また、ドライエッチングに使用するエッチャントは、ガラス基板を食刻できるものであれば何でも良いが、例えばフッ素系ガスを使用することができる。
カバーガラスの加工は、公知のレーザ切断、機械加工によって実施することも可能である。機械加工はウォータージェット、サンドブラスト、レーザ及びメカニカルスクライブによって所定の形状に切り出したガラスを、例えば#400〜800程度のダイヤモンドを電着した砥石を用いて研削加工を行い、所望の形状にすることができる。これらのレーザならびに機械加工を行ったガラスの加工面については無数のマイクロクラックが残存しているが、これらのガラス基板を上記のウェットエッチングし、マイクロクラックを除去することによって、エッチング加工した基板と同様の機械的強度を得ることができる。
本発明のカバーガラスは厚さが、1.0mm以下であり、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。本発明のカバーガラスの厚さの下限は、本発明のカバーガラスが有する機械的強度と用途を考慮して適宜設定できるが、例えば、0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.25mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。
[化学強化]
ガラスAは化学強化用ガラスとして好適である。ガラスAの化学強化は、例えば所望のカバーガラス形状に加工したガラスAをアルカリ熔融塩に浸漬することにより行う。熔融塩としては、硝酸ナトリウム熔融塩、硝酸カリウム熔融塩、または前記2種の熔融塩を混合したものを使用することができる。ガラスAは、ガラス成分として、Li2OまたはNa2Oの少なくとも一方を含む。ガラスAがLi2O成分を含む場合は、ナトリウム熔融塩、あるいはナトリウム熔融塩とカリウム熔融塩を使用して化学強化し、ガラスAがLi2Oを含まない場合、すなわち、Li2O、Na2OのうちNa2Oのみ含む場合は、カリウム熔融塩を使用して化学強化すればよい。
なお、化学強化処理とは、化学強化処理液(熔融塩)にガラス表面を接触させることにより、ガラス中に含まれる一部のイオンを、該化学強化処理液中に含まれている上記イオンよりも大きなイオンに置換して該ガラス基板を化学強化することである。ガラスを熔融塩に浸漬するとガラス表面近傍のLiイオンが熔融塩中のNaイオン、Kイオンと、ガラス表面近傍のNaイオンが熔融塩中のKイオンとそれぞれイオン交換し、ガラス表面に圧縮応力層が形成される。なお、化学強化時の熔融塩温度はガラスの歪点より高温かつガラス転移温度よりも低温で、熔融塩が熱分解しない温度範囲とすることが好ましい。熔融塩は繰り返し使用するため、次第に熔融塩中の各アルカリイオン濃度が変化するとともに、Li、Na以外のガラス成分も微量ながら溶け出す。その結果、前述のように処理条件が最適範囲からずれる。このような熔融塩の経時変化による化学強化のばらつきは前述のようにガラスAの組成を調整することによって低減できるが、その上で熔融塩中のKイオンの濃度を高く設定することによっても、上記ばらつきを低減することができる。なお、化学強化処理が施されていることは、ガラスの断面(処理層を切る面)をバビネ法により観察して確認する方法、ガラス表面からアルカリイオン(例えばLi+、Na+、K+)の深さ方向の分布を測定する方法(セルナモン法)等によって確認することができる。
本発明のカバーガラスは厚さが1.0mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下と極めて薄いものの、ガラス熔融時の残留泡が極めて低レベルに抑えられていることから、化学強化により形成する圧縮応力層は5μm以上あればよい。圧縮応力層の厚みの好ましい範囲は50μm以上、より好ましい範囲は100μm以上である。圧縮応力層の厚さの上限は、板厚を目処にして決めればよい。カバーガラスの圧縮応力層は表裏とも等しい厚さとなるが、圧縮応力層間に引っ張り応力層が存在しないと化学強化にならないため、圧縮応力層の厚さの上限は、板厚を目処にして決めればよい。
[蛍光による判別機能]
前述のように、本発明のカバーガラスは、Ceを含むため、紫外光ランプなどを用いて強い紫外光を照射すると青色の蛍光を発生する。この現象を利用し、同一の外観を呈し、目視では判別困難なガラスAからなるガラス母材あるいはカバーガラスと、Ce非添加ガラスからなるガラス母材あるいはカバーガラスとを容易に判別することができる。すなわち、紫外光を照射し、蛍光発生の有無を確認することで、ガラス組成を分析するまでもなく、ガラスAからなるガラス母材あるいはカバーガラスかどうかを確認することができる。蛍光発生の有無を容易に確認するため、上記検査は暗室状態で行うことが好ましい。紫外光ランプは市販品を使用すればよい。
複数種のガラスを使用する場合、上記紫外光照射による検査を行うことにより異種のガラスが混入するといったトラブルを回避することができる。また、複数種のカバーガラスを用いてディスプレイを生産する際、特定種のカバーガラスにトラブルが発生した場合、蛍光の有無でカバーガラスの製造元を容易に特定することができるため、トラブルの原因、問題の解決を迅速に行うこともできる。さらに、他製品との識別機能にもなる。
また、強い紫外光を照射し、暗室状態でガラス表面を観察すると、Ceが発する蛍光によりガラス表面上の異物の有無を容易に検査することもできる。
[飛散防止フィルム付カバーガラス]
本発明のカバーガラスの一態様は、表面に飛散防止フィルムを備えたカバーガラスである。カバーガラスの超薄板化に伴い、カバーガラスの端部位置の認識が容易でなくなってきている。例えば、カバーガラス表面に飛散防止フィルムの貼りあわせる際、ガラス端部に上記フィルムを位置合わせし、貼り合わせる。このような作業を行う際、ガラスに紫外光を照射してCeによる蛍光を発生させることにより、カバーガラスの輪郭を浮き立たせることにより上記位置合わせが容易になる。
また、カバーガラス表面や飛散防止フィルム表面に品名、品番、製造元などを印刷する際、紫外光を照射し、Ceが発する蛍光を利用してカバーガラス端部の検出を容易にし、印刷位置の位置合わせ作業を効率よく行うこともできる。
[ディスプレイ]
本発明のディスプレイは、上記本発明のカバーガラスを備え、表示画面をカバーするように上記本発明のカバーガラスが装着されているディスプレイである。
本発明のディスプレイの好ましい態様は、携帯情報端末、携帯電話、カーナビゲーションなど、携帯性に優れた、あるいは屋外で使用するディスプレイである。
本発明に装着されているカバーガラスは1.0mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下と薄く、機械強度に優れているため、小型化が要請され、しかも、過酷な環境で使用する上記ディスプレイに好適である。
特に、携帯情報端末や携帯電話は、取り扱い時にカバーガラス表面が傷つきやすく、タッチパネル式のディスプレスでは、操作のたびにカバーガラス表面を押さえたり、こするなどする。また、一部の携帯電話のように折りたたみ式のものや、開閉式のものでは、折りたたんだり、開閉するたびに衝撃や外力が加わる。その他の形式では、携帯時、カバーガラスを露出した状態で持ち運ぶため、カバーガラスに強い衝撃が加わる、カバーガラス表面が摩擦を受けるなどの負荷がかかる。こうした用途においても、本発明のディスプレイは、優れた耐久性を示す。
さらに、本発明のカバーガラスにおいて、化学強化されたものは、抗折強度がさらに高まり、破壊耐性が一層改善される。
図1は、本発明のカバーガラスを装着した携帯用ディスプレイの一部を示す断面図である。図1に示すディスプレイにおいて、液晶表示パネル2の上方に間隔Dをおいてカバーガラス1が配設されている。この液晶表示パネル2は、一対のガラス基板21,22が液晶層23を挟持して構成されている。なお、図1では、液晶表示パネルに通常用いられる他の部材、例えば、バックライト光源などは省略している。光源としては、白色LED、近紫外LEDと蛍光体を組合わせたもの、EL素子などを用いることができる。
本発明のカバーガラスは、赤外光を吸収するSn酸化物と紫外光を吸収するCe酸化物を含むため、紫外光および赤外光をカットする機能を有する。そのため、太陽光など紫外光や赤外光を含む光にディスプレイ画面を晒してもカバーガラスによって紫外光と赤外光が吸収され、紫外光、赤外光照射によるディスプレイ内部の消耗を軽減することができる。
本発明のディスプレイの一態様であって、カメラ付き携帯電話のように、画像表示部と撮像素子とを備え、画像表示部と撮像レンズがカバーガラスによってカバーされているものは、カバーガラスを薄板化することにより、撮影画像の画質低下を防ぐことができるほか、カバーガラスが紫外光および赤外光吸収フィルターとして機能するため、シャープな画像を撮影することができる。
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
(1)ガラスの熔融
表1に示す基本組成1〜8の各組成に、表2のNo.1〜No.36に示す各量のSnO2、CeO2を外割り添加した組成のガラスが得られるように酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などの原料とSnO2、CeO2などの清澄剤を秤量し、混合して288種のガラスを得るための調合原料とした。この原料を熔融容器に投入して1400〜1600℃の範囲で6時間、加熱、熔融し、清澄、攪拌して泡、未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製した。未熔解物を含まない均質な熔融ガラスを作製した。上記1400〜1600℃の範囲に6時間保持した後、熔融ガラスの温度を低下(降温)させて1200〜1400℃の範囲に1時間保持することにより、清澄効果を格段に高めることができる。特にSnおよびCeが共存する熔融ガラスにおいて、こうした清澄効果は極めて顕著であることを上記のように確認した。なお、表1、表2に示すガラス組成は、酸化物のモル%表示(ただし、SnO2、CeO2などの清澄剤は外割り添加による質量%表示)した組成が基準である。
Figure 2011201711
Figure 2011201711
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得られた288種のガラスの表面を平坦かつ平滑に研磨し、研磨面からガラス内部を光学顕微鏡で拡大観察(40〜100倍)し、残留泡の数をカウントした。拡大観察した領域に相当するガラスの質量で、カウントした残留泡の数を割ったものを残留泡の密度とした。
残留泡が0〜2個/kgのものをランクA、残留泡が3〜10個/kgのものをランクB、残留泡が11〜20個/kgのものをランクC、残留泡が21〜40個/kgのものをランクD、残留泡が41〜60個/kgのものをランクE、残留泡が61〜100個/kgのものをランクF、残留泡が101個/kg以上のものをランクGとし、表2に各ガラスの基本組成1を代表例として該当するランクを示す。基本組成が違っても、外割り添加したSnO2、CeO2の量が同一であれば、ほぼ同様の結果が得られた。
なお、上記各ガラスの残留泡の大きさはすべて0.3mm以下の大きさであった。
こうして得たガラス内部には結晶、原料の熔け残りは認められなかった。
次に、表2に比較例1〜9として示す量のSnO2、CeO2を基本組成1〜8にそれぞれ添加し、ガラスを熔融、成形し、ガラス中の残留泡と熔け残りを調べた。その結果を表2に示す。SnO2、CeO2の添加量が適正な範囲になっていないと、ガラス中の残留泡が著しくなる、あるいは熔け残りが生じるなどガラスの品質が低下することがわかる。
上記結果に基づき、Sn、Ceの添加量と残留泡の密度とを関係付けて、残留泡の密度は所要の値以下になるようにSn、Ceの添加量を調整し、ガラスを生産することにより、残留泡の密度を所望のレベルに抑えることができる。
次に、1400〜1600℃に15時間保持した熔融ガラスを降温して1200〜1400℃に1〜2時間保持した後、成形する点を除き、上記方法と同様の方法により、ガラスを作製し、残留泡の密度、大きさ、結晶の有無、原料の熔け残りの有無を調べたところ、上記結果と同じ結果を得た。なお、1400〜1600℃に保持する時間をTH、1200〜1400℃に保持する時間をTLとすると、上記いずれの方法においても、TL/THを0.5以下にすることが好ましく、0.2以下にすることがより好ましい。上記のようにTLに対し、THを長くすることにより、ガラス中のガスをガラス外へと排除しやすくなる。ただし、Ceによるガラス中のガス取り込み効果を促進する上から、TL/THを0.01より大きくすることが好ましく、0.02より大きくすることがさらに好ましく、0.03より大きくすることが一層好ましく、0.04より大きくすることがより一層好ましい。
1400〜1600℃の範囲から1200〜1400℃の範囲へ降温する際の温度差は、SnとCeそれぞれの泡切れ効果を高める上から30℃以上にすることが好ましく、50℃以上にすることがより好ましく、80℃以上にすることがさらに好ましく、100℃以上にすることが一層好ましく、150℃以上にすることがより一層好ましい。なお、温度差の上限は400℃である。
基本組成1〜8の各ガラスの1400℃における粘度を、JIS 規格Z8803、共軸二重円筒型回転粘度計による粘度測定方法により測定した。測定結果を表1に示す。なお、1400℃におけるガラスの粘度は、表2に示す範囲のSnO2、CeO2を添加してもほとんど変化しない。
Ceの添加量を増加させていくとガラスの短波長域における吸収が増加傾向を示すが、こうした傾向とともに、ガラスに紫外光を照射したときの蛍光強度も増加する。紫外光照射によって発生する蛍光を利用してガラスを判別あるいは識別したり、ガラス表面の異物の有無を検査上で、十分な強度の蛍光を発生させる量のCeを添加することが望ましい。
上記蛍光を利用した判別や検査を容易にするという観点から、CeO2の添加量を0.1質量%以上とすることが好ましく、0.2質量%以上とすることがより好ましく、0.3質量%以上とすることがさらに好ましい。蛍光を利用した判別や検査を行う上で、CeO2の添加量が上記範囲外であると、十分な蛍光強度が得られず、上記判別や検査が困難になる。
(2)ガラスの成形
次に、上記各ガラスをオーバーフローダウンドロー法(フュージョン法)またはフロート法によりシート状に成形した。いずれの方法においても、成形に引き続きガラスをアニールして歪を除き、平坦かつ均一な厚さ(0.5mm)のシート状のガラス母材を得た。なお、フュージョン法により成形したガラス母材の主表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を、原子間力顕微鏡により調べたところ0.2nmと極めて平滑であり、マイクロクラックなどの破壊の起点となる欠陥も認められなかった。
同様にして、厚さ0.45mm、0.40mmなど、さらに薄いシート材を成形し、ガラス母材とした。
(3)ガラス母材の加工
次にガラス母材の両主表面上にネガ型の耐フッ酸性レジストを厚さ30μmでコーティングし、この耐フッ酸性レジストに対して150℃で30分のベーキング処理を施した。次いで、カバーガラスの輪郭形状に相当するパターンを有するフォトマスクを介してレジストに対し両面から露光し、その後、レジストを現像液(Na2CO3溶液)を用いて現像してガラス母材上の被エッチング領域以外の領域にレジストが残存するようにレジストパターンを形成した。
次いで、エッチャントとしてフッ酸と塩酸の混酸水溶液を用いて、レジストパターンをマスクにして、両主表面側からガラス母材の被エッチング領域をエッチングして、カバーガラスを切り抜いた。その後、NaOH溶液を用いてガラス上に残存した耐フッ酸性レジストを膨潤させてから剥離し、リンス処理を行った。
得られたカバーガラスの主表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を原子間力顕微鏡で測定したところ、0.2nmであり、ダウンドロー法で形成した直後の表面状態と変わらず、高い平滑性を有していた。また、カバーガラスの端面の表面粗さ(算術平均粗さRa)を原子間力顕微鏡で測定したところ、外形全体にわたって1.2〜1.3nmであった。このように、端面の表面粗さを小さくできたのは、エッチングによる加工のためである。
カバーガラスの端面のマイクロクラックの有無を、走査型電子顕微鏡で確認したところ、マイクロクラックは発見されなかった。
(4)化学強化
次に上記カバーガラスのうち、基本組成1〜4に表2のNo.1〜36のいずれかの量のSn、Ceを添加した144種類のカバーガラスを385〜405℃に保った硝酸カリウム(KNO3)60%と硝酸ナトリウム(NaNO3)40%の混合溶融塩の処理浴中に4時間浸漬して、イオン交換処理し、化学強化を施した。カバーガラス表面に形成された圧縮応力層の深さ(厚さ)は、バビネ法により測定した結果、概ね150μm前後であった。
同様にして基本組成5〜8にSn、Ceを添加したカバーガラスを硝酸カリウム(KNO3)の処理浴中に浸漬して、イオン交換処理し、化学強化を施した。カバーガラス表面に上記ガラスと同様、圧縮応力層が形成されていることを確認した。
化学強化後のカバーガラスの主表面、及び端面の表面粗さを測定したところ、それぞれ、0.3nm、1.4〜1.5nmであった。また、端面にはマイクロクラックは認められなかった。
(5)カバーガラスの機械強度評価試験
カバーガラスの主表面における外周縁部3mmで当接する支持台にカバーガラスをセットし、支持台に当接した反対側の主表面側から、カバーガラスの中心部に対して加圧部材で押圧させて静圧強度試験を行った。加圧部材は、先端がφ5mmのステンレス合金からなるものを使用した。
その結果、上記の各カバーガラスでは、破壊された時点の破壊加重は、50kgfを超え、非常に高い機械的強度を有していた。
(6)ガラス基板への印刷
上記の化学強化した各カバーガラス表面に印刷を行う前、ガラス表面に異物の付着がないか、暗室にてカバーガラス表面に紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、蛍光によって照らし出されるガラス表面を観察した。このような検査により、表面が清浄であることを確認した後、カバーガラス表面にインク層を形成した印刷する。
一般にカバーガラスに施される印刷は、少なくとも1層、多いもので10層にも及ぶインク層を塗り重ねるが、前面に印刷を施すことは無く、ディスプレイの光透過部分にインクをはじめとする異物の付着の無いことが必要である。印刷には、一般に熱硬化タイプのインクを使用するが、乾燥前のインクは容易に除去することができるが、ベーク処理と呼ばれる加熱による乾燥工程を経た後は、インク層を除去することが困難となる。
インク層を重ねて塗る場合は、1層のインク層を形成した後に乾燥工程を行い、次いで、2層目のインク層を形成、以下同様の作業を繰り返して多層のインク層を形成する。その際に、蛍光を利用してガラス表面の不要箇所にインクが付着していないか、あるいは、付着したインクを完全に除去できているか容易に確認することができ、印刷作業による歩留まりを飛躍的に向上することができる。
(7)飛散防止フィルムの貼り付け
上記の化学強化した各カバーガラス表面に飛散防止フィルムを貼り付ける前、ガラス表面に異物の付着がないか、暗室にてカバーガラスに紫外光ランプを用いて紫外光を照射し、蛍光によって照らし出されるガラス表面を観察した。このような検査により、表面が清浄であることを確認した後、カバーガラス表面に飛散防止フィルムを貼り付けた。
まず、カバーガラスに紫外光ランプから発せられた紫外光を照射し、カバーガラスが発する青色の蛍光を観察する。可視域の照明を落とすと、青色の蛍光を発するカバーガラスと背後のコントラストにより、カバーガラスの輪郭が明瞭になる。この状態で飛散防止フィルムをカバーガラスに位置合わせし、その表面に貼りつける。このような作業により、厚さ0.5mm以下の極めて薄いカバーガラスに、比較的容易に飛散防止フィルムを貼り合わせることができた。なお、飛散防止フィルムは透明であって、ディスプレイの表示する画像を透過するものである。
(8)ディスプレイへの装着
このようにして作製した各種カバーガラスを、携帯情報端末(PDA)の表示パネルをカバーするように装着し、携帯情報端末を作製した。図1に携帯情報端末の表示パネルの一部の断面を模式的に示す。カバーガラス1は、液晶層3とこの液晶パネルを挟むように配置された2枚のガラス基板を有する液晶表示パネルと間隔Dのスペースを隔ててパネル表面全体を覆うように装着する。なお、図1には示さない撮像レンズも覆うようにカバーガラスを設けてもよい。このような装置では、カバーガラスが紫外光および赤外光をカットしてシャープな画像を撮影することができた。
同様に、各種カバーガラスを使用して携帯電話やカーナビゲーションを作製した。
上記各ディスプレイは、小型でありながら優れた強度、耐久性を有する。また、ディスプレイの表示画像には、歪などはなく、高画質が得られることを確認した。
本発明によれば、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末装置やその他の携帯機器に装着し、表示画面を保護するカバーガラスを提供することができる。
1 カバーガラス
2 液晶表示パネル
21,22 ガラス基板
23 液晶層

Claims (5)

  1. ディスプレイの画面表示部をカバーしつつ、前記画像表示部が表示する画像を透過するために用いるカバーガラスにおいて、
    酸化物基準に換算し、モル%表示にて、
    SiO2 60〜75%、
    Al23 0〜12%
    (ただし、SiO2およびAl23の合計含有量が68%以上)、
    23 0〜10%、
    Li2OおよびNa2Oを合計で5〜26%、
    2O 0〜8%
    (ただし、Li2O、Na2OおよびK2Oの合計含有量が26%以下)、
    MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOを合計で0〜18%、
    ZrO2、TiO2およびHfO2を合計で0〜5%、
    を含み、さらに、Sn酸化物およびCe酸化物を外割り合計含有量で0.1〜3.5質量%含み、Sn酸化物とCe酸化物の合計含有量に対するSn酸化物の含有量の比(Sn酸化物の含有量/(Sn酸化物の含有量+Ce酸化物の含有量))が0.01〜0.99であり、Sb酸化物の含有量が0〜0.1%であるガラスにより構成され、板厚が1.0mm以下であることを特徴とするカバーガラス。
  2. 前記カバーガラスは表面に圧縮応力層を有する請求項1に記載のカバーガラス。
  3. 前記圧縮応力層は化学強化により形成されたものである請求項2に記載のカバーガラス。
  4. 表面に飛散防止フィルムを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のカバーガラス。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のカバーガラスを備え、表示画面をカバーするように前記カバーガラスが装着されているディスプレイ。
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