本発明のおむつカバーについて、図面を参照して説明する。なお、本発明のおむつカバーは、図面に示された実施態様に限定されるものではない。図1は、本発明のおむつカバーの一例を表す。図では、矢印xを幅方向、矢印yを前後方向と定義付ける。
おむつカバー1は、前後方向yと幅方向xとを有する。前後方向yとは、おむつカバーを着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味する。図1において、下側が前方に相当し、上側が後方に相当する。幅方向xとは、おむつカバーと同一面上にあり、前後方向yと直交する方向を意味する。幅方向xは、おむつカバーを着用者が着用した際、着用者の左右方向に相当する。おむつカバー1は、また、おむつカバーを着用した際の着用者側に位置する内面と、おむつカバーを着用した際の着用者とは反対側に位置する外面とを有する。
おむつカバー1は、前後方向yに前方部Fと後方部Bとこれらの間に位置する中間部Mとを有する。前方部Fとは、おむつカバー1の前後方向yの一方端に形成され、おむつカバー着用時に着用者の腹側に当てる部分を意味する。後方部Bとは、おむつカバー1の前後方向yの他方端に形成され、おむつカバー着用時に着用者の背側に当てる部分を意味する。中間部Mとは、前方部Fと後方部Bとの間に位置し、着用者の股間に当てる部分を意味する。なお、本発明において、前方部F、中間部M、後方部Bは、後記する右ウェスト部2、左ウェスト部3、右フラップ部4、左フラップ部5を含まない部分と規定する。図1では、前方部F、中間部M、後方部B、右ウェスト部2、左ウェスト部3、右フラップ部4、左フラップ部5を、便宜的に点線で区分して表示している。
前方部F、中間部M、および後方部Bは、例えば、それぞれおむつカバー1の前後方向yの長さの30%、30%、および40%の領域を占める。図1に示されるおむつカバー1では、前方部F、中間部M、および後方部Bは、このような割合で分割されている。
おむつカバー1は、後方部Bから幅方向xに延在する右ウェスト部2と左ウェスト部3とを有する。右ウェスト部2と左ウェスト部3は、おむつカバー1の着用時にそれぞれ着用者の右側と左側の腰回りに当てる部分である。図1では、図面の右側が、おむつカバーの着用時に着用者の左側に位置し、図面の左側が、おむつカバーの着用時に着用者の右側に位置する。従って、図1では、おむつカバーの内面が見えるように、おむつカバーが示されている。おむつカバー1は、着用時、右ウェスト部2と左ウェスト部3と後方部Bとで着用者の腰回りを覆う。おむつカバー1は、着用の際、右ウェスト部2と左ウェスト部3が幅方向xに重なる部分の長さが、着用者の腰回りの周長の10%〜60%程度(より好ましくは、20%〜50%程度)となるように着用することが好ましい。
おむつカバー1は中間部Mが最も幅方向xに狭く形成される。左右ウェスト部2,3は、中間部Mの最も幅狭な部分の外縁より幅方向xの外方に位置する部分に相当する。右ウェスト部2と左ウェスト部3は、少なくとも後方部Bから幅方向xに延在していればよく、さらに中間部Mから幅方向xに延在していてもよい。
おむつカバー1は、前方部Fに、幅方向xに延在する右フラップ部4と左フラップ部5とを有する。右フラップ部4と左フラップ部5は、おむつカバー1の着用時に、前方部Fとともに着用者の腹部を覆う部分である。右フラップ部4と左フラップ部5は、おむつカバー1の着用時、着用者の背側にまで達する。左右フラップ部4,5は、中間部Mの最も幅狭な部分の外縁より幅方向xの外方に位置する部分に相当する。左右フラップ部4,5は、少なくとも前方部Fから幅方向xに延在していればよく、さらに中間部Mから幅方向xに延在してもよい。
右フラップ部4と左フラップ部5には、各々第1留め具6が設けられる。以下、右フラップ部に設けられる第1留め具を表す符号として「6R」を用い、左フラップ部に設けられる第1留め具を表す符号として「6L」を用いる場合がある。おむつカバー1を着用する際は、着用者の腰回りに装着された左右ウェスト部2,3または後方部Bに、左右フラップ部4,5を第1留め具6により接合する。
左右フラップ部4,5の第1留め具6は、左右ウェスト部2,3または後方部Bの外面に接合可能に設けられることが好ましい。第1留め具は、例えば、左右フラップ部4,5の内面に設けられたり、左右フラップ部4,5の幅方向xの端部から延出するように設けられてもよい。左右フラップ部4,5の取り扱い性を高める点からは、第1留め具は、図1に示すように、右フラップ部4の内面と左フラップ部5の内面に設けられることが好ましい。
第1留め具6が左右フラップ部4,5の内面に設けられる場合、第1留め具6は、左右フラップ部4,5の幅方向xの端部から100mm以内(より好ましくは80mm以内であり、さらに好ましくは50mm以内)の領域に設けられることが好ましい。このように第1留め具6が設けられれば、左右フラップ部4,5の幅方向xの端部を掴みながら、第1留め具6を左右ウェスト部2,3または後方部Bに接合することができ、おむつカバー1の着用が容易になる。また、左右フラップ部4,5の幅方向xの端部を掴んで、左右フラップ部4,5を着用者の左右方向に引っ張ることが容易になるため、おむつカバー1を着用する際、おむつカバー1の着用者へのフィット性を高めやすくなる。
第1留め具としては、フック・ループ・ファスナーのフック部材やループ部材、粘着剤(例えば、粘着テープ、粘着剤層)、フック(例えば、金属製のフックやプラスチック製のフック)等を用いればよい。第1留め具としてフックファスナー(フック・ループ・ファスナーのフック部材)を用いる場合は、左右ウェスト部および/または後方部にフック・ループ・ファスナーのループ部材を設けたり、左右ウェスト部および/または後方部をループ部材として機能する材料(例えば、不織布、織布、編布等)で構成することが好ましい。第1留め具として粘着剤を用いる場合は、左右ウェスト部および/または後方部にプラスチックフィルムを設けたり、左右ウェスト部および/または後方部をプラスチックフィルムで構成することが好ましい。第1留め具としてフックを用いる場合は、左右ウェスト部および/または後方部にフックが係合可能なループ形状の部材を設けたり、左右ウェスト部および/または後方部にフックが係合可能なスリットを形成することが好ましい。この場合、ループ形状の部材やスリットを複数設け、着用者の体型に合わせてフックの係合箇所が調整可能となることが好ましい。これらの中でも、第1留め具としては、フックファスナーを用いることが好ましい。フックファスナーとしては、例えば、錨形や鉤形やきのこ型等の形状のフックを多数表面に有する部材を採用すればよい。
第1留め具の形状、すなわち左右フラップ部の第1留め具が設けられる部分の領域の形状は特に限定されないが、前後方向yに長い形状であることが好ましい。第1留め具が前後方向yに長い形状であるとは、第1留め具の前後方向yの長さが幅方向xの長さよりも長いことを意味する。第1留め具は前後方向yに平行に設けられる必要はなく、前後方向yに対し斜めに設けられていてもよい。第1留め具が前後方向yに長い形状であれば、左右フラップ部が幅広く留められ、左右フラップ部を着用者の背側に安定して固定しやすくなる。第1留め具の形状としては、例えば、直線、長方形、楕円形、角の丸まった長方形、不定形等が挙げられ、所定の幅を有する略直線形状が好ましい。
図1に示されるように、第1留め具6は所定の幅を有する略直線形状であり、第1留め具6は、略直線形状が、おむつカバー1の前後方向yの前方かつ幅方向xの内方に向かうように設けられていることが好ましい。すなわち、第1留め具6は、略直線形状が、前後方向yの前方側が幅方向xの内方に位置するように設けられることが好ましい。このように第1留め具6が設けられることにより、着用者が左右フラップ部4,5を第1留め具6の略直線形状が延びる方向と垂直方向に引っ張った場合、着用者は、左右フラップ部4,5を着用者の左右方向に拡張させながら左右フラップ部4,5を着用者の上方向に引っ張り上げやすくなり、着用者の股間から腹側のそけい部周辺を通って着用者の背側にかけて、おむつカバー1に張力を付与しやすくなる。
第1留め具は、右フラップ部と左フラップ部に各々複数設けられてもよい。このように第1留め具が設けられることにより、第1留め具の全ての接合が一度には外れにくくなり、左右フラップ部が着用者の背側に安定して固定されやすくなる。
図2(a)〜(e)には、図1のおむつカバー1の右フラップ部4を例に挙げ、第1留め具6が複数設けられる場合の設置例を示す。図2(a)では、前後方向yに長い形状の第1留め具6が幅方向xに並んで複数設けられている。図2(b)に示すように、第1留め具6は各々が幅方向xに長い形状を有し、これらが前後方向yに並んで複数設けられてもよい。図2(c),(d)に示すように、第1留め具6は右フラップ部4の端部の縁に沿って複数設けられてもよい。また、図2(e)に示すように、所定形状の第1留め具6が右フラップ部4の端部に縦横に並んで設けられてもよい。
第1留め具はまた、図2(f)に示されるように、右フラップ部の端部または左フラップ部の端部の縁に沿って弧を描くように設けられてもよい。第1留め具がこのような形状で設けられることにより、左右フラップ部の端部に設けられた第1留め具が不用意に他の部材に接合したり、着用者の肌に当たったりしにくくなり、左右フラップ部の取り扱い性が向上する。
おむつカバー1は、右フラップ部4と左フラップ部5が伸縮可能であり、第1留め具6が、右フラップ部4と左フラップ部5が伸張した状態で着用者の背側に固定可能に設けられる。すなわち、右フラップ部4と左フラップ部5は、伸張状態で第1留め具6が着用者の背側まで達するだけの長さを有する。右フラップ部4と左フラップ部5は、少なくとも幅方向xに対して伸張可能であることが好ましい。
右フラップ部4の第1留め具6Rは着用者の右側の背側に固定可能であり、左フラップ部5の第1留め具6Lは着用者の左側の背側に固定可能である。着用者の背側とは、着用者の背骨(具体的には、背骨の中心線)から着用者の胴回りの長さの25%未満の領域(すなわち、左右合わせて50%未満の領域)を意味する。なお、背骨の中心線とは、着用者が起立した状態で、上下方向に伸びる中心線を意味する。
おむつカバー1は、右フラップ部4と左フラップ部5とに加え、中間部Mが伸縮可能である。右フラップ部4と左フラップ部5と中間部Mが伸縮可能であれば、左右フラップ部4,5を着用者の背側に固定することで、着用者の股間から腹側のそけい部周辺を通って着用者の背側にかけて、おむつカバー1に張力が付与される。中間部Mは、少なくとも前後方向yに対して伸張可能であることが好ましい。また、右フラップ部4と左フラップ部5と中間部Mは、着用者の大腿部を囲む部分が伸縮可能であることが好ましい。さらに、前方部Fも伸縮可能であってもよい。
本発明のおむつカバーは、右フラップ部と左フラップ部と中間部が伸縮可能であり、第1留め具が、右フラップ部と左フラップ部が伸張状態で着用者の背側に固定可能であるため、着用者の脚の付け根付近から腹側のそけい部周辺を通って腰の背側付近にかけて、張力が付与される。その結果、着用者の腸腰筋がおむつカバーにより補強される。腸腰筋は、大腰筋や腸骨筋等から構成され、腰椎と大腿骨の小転子とを結ぶ筋肉群である。すなわち、腸腰筋は、脚の付け根付近から骨盤で囲まれる空間を通って腰の背側および背中にかけて延びている。腸腰筋は、直立姿勢、歩行、走行に重要な役割を果たし、腸腰筋の機能が低下すると、例えば、体幹を起立させることが困難となったり、1人での歩行が困難となったり、階段の上り下りに支障を来したりする。特に、おむつの着用が必要な高齢者では、腸腰筋の機能低下により足腰が弱ったりして、日常生活に支障を来す場合が多々見られる。本発明のおむつカバーは、着用者が起立した状態では骨盤を前傾位置に保つように作用するとともに、腸腰筋をサポートして着用者が直立姿勢をとりやすいように補助する。着用者が上体を前後左右に折り曲げたりした場合には、おむつカバーが腰の動きに対して負荷として作用し、腸腰筋が鍛えられる。そのため、おむつが必要な高齢者であっても、本発明のおむつカバーを着用することにより、足腰の衰えを抑えることができる。
第1留め具は、好ましくは、着用者の背側の骨盤上で固定可能に設けられる。第1留め具が、右フラップ部と左フラップ部の伸張状態で、着用者の背側の骨盤上で固定されれば、おむつカバーの張力により着用者の脚の付け根付近から腰の背側付近にかけての骨盤の領域が確実にサポートされ、着用者が起立状態を保ちやすくなる。
第1留め具はまた、着用者の背側に、背骨から着用者の胴回りの長さの5%以上20%以下の領域に固定可能であることが好ましい。第1留め具を前記領域に固定すれば、おむつカバーによって腸腰筋を確実にサポートしやすくできる。第1留め具は、より好ましくは、背骨から着用者の胴回りの長さの8%以上15%以下の領域に固定可能である。
本発明のおむつカバーにおいて、左右フラップ部や中間部のような伸縮可能な部分は、引張荷重に対し変形し、その変形を元に戻そうとする力を示すものであれば、特に限定されない。伸縮可能な部分は、少なくとも1.1倍(より好ましくは、1.2倍、さらに好ましくは1.5倍)に伸張しても、ほぼ元の長さに戻ることが好ましく、前記伸張範囲で降伏点を有しないものが好ましい。
左右フラップ部および中間部は、JIS L 1018 8.14に規定される伸び率が5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。左右フラップ部および中間部の伸び率が5%〜60%の範囲にあれば、おむつカバーの装着時の操作性が向上するとともに、左右フラップ部および中間部により着用者のそけい部周辺から腰の背側にかけての部分が補強される効果が発揮されやすくなる。
前記伸び率は、定荷重時伸び率を意味し、カットストリップ法により測定される。伸び率は、幅2.5cm、長さ20cmの試験片を、引張試験機により引っ張ることにより測定する。具体的には、試験片を、つかみ間隔10cm(L0)となるように、引張試験機の上下方向に配置されたつかみ具に固定し、22.1N(2.25kgf)の荷重を加えて1分間放置した後の試験片のつかみ間隔の距離(L1)を測定する。伸び率Ep(%)は、Ep=(L1−L0)/L0×100により算出する。
おむつカバーは、右フラップ部と左フラップ部が中間部よりも伸び率が大きいことが好ましい。右フラップ部と左フラップ部が中間部よりも伸び率が大きければ、おむつカバーは、着用者の股間部分に比べそけい部周辺で張力が高くなる。従って、おむつカバーの股間部分の着用感が向上するとともに、おむつカバーが、着用者のそけい部周辺から腰の背側にかけて効果的にサポートできるようになる。また、おむつカバーを着用する際、中間部に、尿パッド等のおむつを、縒れたり折れ曲がることなく固定することが容易になる。
右フラップ部と左フラップ部と中間部は、前後方向yの伸び率が幅方向xの伸び率よりも大きいことが好ましい。右フラップ部と左フラップ部と中間部の前後方向yの伸び率が幅方向xの伸び率よりも大きければ、着用者のそけい部周辺から腰の背側にかけての部分が、おむつカバーにより効果的にサポートされるようになる。
右フラップ部と左フラップ部と中間部の、幅方向xと前後方向yに対するそれぞれの伸び率の好ましい範囲の一例を示すと、左右フラップ部の、幅方向xの伸び率は5%〜30%の範囲にあることが好ましく、前後方向yの伸び率は15%〜30%の範囲にあることが好ましい。
右ウェスト部2と左ウェスト部3の一方または両方には、第2留め具7が設けられることが好ましい。以下、右ウェスト部に設けられる第2留め具を表す符号として「7R」を用い、左ウェスト部に設けられる第2留め具を表す符号として「7L」を用いる場合がある。おむつカバー1は、右ウェスト部2と左ウェスト部3とが、第2留め具7により互いに連結されることにより着用可能に形成されることが好ましく、その結果、左右ウェスト部2,3が着用者の腰回りに固定されることとなる。図1では、右ウェスト部2にのみ第2留め具7Rが設けられる実施態様を示しており、右ウェスト部2を第2留め具7Rにより左ウェスト部3または後方部Bに接合することにより、左右ウェスト部2,3が着用者の腰回りに固定される。
右ウェスト部2の第2留め具7Rは、左ウェスト部3の外面または後方部Bの外面に接合可能に設けられることが好ましい。また、左ウェスト部3の第2留め具7Lは、右ウェスト部2の外面または後方部Bの外面に接合可能に設けられることが好ましい。第2留め具は、例えば、左右ウェスト部2,3の内面に設けられたり、左右ウェスト部2,3の幅方向xの端部から延出するように設けられてもよい。左右ウェスト部の取り扱い性を高める点からは、第2留め具は、右ウェスト部の内面および/または左ウェスト部の内面に設けられることが好ましい。
第2留め具7が左右ウェスト部2,3の内面に設けられる場合、第2留め具7は、左右ウェスト部2,3の幅方向xの端部から100mm以内(より好ましくは80mm以内であり、さらに好ましくは50mm以内)の領域に設けられることが好ましい。このように第2留め具7が設けられれば、左右ウェスト部2,3の幅方向xの端部を掴みながら、第2留め具7を左右ウェスト部2,3または後方部Bに接合することができ、おむつカバー1の着用が容易になる。
第2留め具としては、第1留め具に使用可能な部材を用いることができ、フックファスナーを用いることが好ましい。第2留め具の接合対象となる左右ウェスト部2,3または後方部Bに設けられる部材、または左右ウェスト部2,3または後方部Bを構成する材料は、第1留め具の接合対象に用いられる部材または材料を用いることができる。
第2留め具の形状、すなわち左右ウェスト部2,3の第2留め具が設けられる領域の形状は特に限定されないが、前後方向yに長い形状であることが好ましい。第2留め具が前後方向yに長い形状であるとは、第2留め具の前後方向yの長さが幅方向xの長さよりも長いことを意味する。第2留め具は前後方向yに平行に設けられる必要はなく、前後方向yに対し斜めに設けられていてもよい。第2留め具が前後方向yに長い形状であれば、左右ウェスト部が幅広く留められ、左右ウェスト部を着用者の腰回りに安定して固定しやすくなる。第2留め具の形状としては、例えば、直線、長方形、楕円形、角の丸まった長方形、不定形等が挙げられ、所定の幅を有する略直線形状が好ましい。
第2留め具は、右ウェスト部および/または左ウェスト部に、各々複数設けられてもよい。このように第2留め具が設けられることにより、第2留め具の全ての接合が一度には外れにくくなり、左右ウェスト部が着用者の腰回りに安定して固定されやすくなる。第2留め具を左右ウェスト部に各々複数設ける場合の実施態様例は、図2(a)〜(e)に示した第1留め具の設置例と同様である。また、第2留め具は、図2(f)に示されるように、右ウェスト部の端部または左ウェスト部の端部の縁に沿って弧を描くように設けられてもよい。
おむつカバーは、右ウェスト部と左ウェスト部が伸縮可能であることが好ましく、おむつカバーを着用の際、右ウェスト部と左ウェスト部が着用者の腸骨陵を覆って、第2留め具により互いに連結されることが好ましい。この際、右ウェスト部と左ウェスト部は、伸張状態で着用者の腸骨陵を覆うように、着用者の腰回りに固定されることが好ましい。その結果、左右ウェスト部により骨盤の両側が覆われて骨盤が固定され、おむつカバーにより、腰痛の原因となる骨盤の開きや歪みが矯正されたり防止されやすくなる。
左右ウェスト部は、左右フラップ部と同程度の伸び率を有することが好ましい。すなわち、左右ウェスト部は、JIS L 1018 8.14に規定される伸び率が5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。左右ウェスト部の伸び率が5%〜60%の範囲にあれば、おむつカバーの装着時の操作性が向上するとともに、左右ウェスト部により骨盤を固定する効果が発揮されやすくなる。伸び率の測定方法等の詳細については、前記説明した通りである。より好ましくは、幅方向xの伸び率が35%〜50%の範囲にあり、前後方向yの伸び率が15%〜30%の範囲にある。
後方部は伸縮可能であっても、そうでなくてもよいが、右ウェスト部と左ウェスト部は後方部よりも伸び率が大きいことが好ましい。詳細には、幅方向xについての伸び率が、後方部よりも左右ウェスト部の方が大きいことが好ましい。おむつカバーは、着用時、左右フラップ部が後方部かその近辺に固定されることが好ましいことから、後方部が左右ウェスト部よりも伸び率が小さければ、左右フラップ部の第1留め具を後方部かその近辺に固定することで、第1留め具を着用者の背側の所望する位置に固定させることが容易になる。その結果、着用者の腸腰筋が、おむつカバーにより確実に補強されやすくなる。
図1に示すおむつカバーの着用方法の一例について、図3を用いて説明する。図3に示すおむつカバー1は、第2留め具7が右ウェスト部2にのみ設けられており、左右ウェスト部2,3と後方部Bが、第1留め具6と第2留め具7が接合可能な材料から構成されている。
おむつカバー1は、後方部Bを着用者の背側に当てながら、右ウェスト部2を着用者の右側の腰回りに当て、左ウェスト部3を着用者の左側の腰回りに当てる。次いで、右ウェスト部2を引っ張りながら、右ウェスト部2の第2留め具7Rを左ウェスト部3の外面に接合する(図3(a),(b)参照)。その結果、左右ウェスト部2,3を着用者の腰回りに固定することができる。次いで、前方部Fと左右フラップ部4,5を、着用者の股間を通して着用者の腹側に持ってきて、左右フラップ部4,5を着用者の左右方向に拡張させながら着用者の上方向に引っ張って、左右フラップ部4,5を着用者の背側に固定する(図3(b),(c)参照)。その結果、おむつカバー1を着用することができる。
図4には、図1に示すおむつカバーの着用時の形状を表す。図4(a)は着用者の前側から見たおむつカバーを表し、図4(b)は着用者の後側から見たおむつカバーを表す。おむつカバー1は、図4(b)に示されるように、右フラップ部4と左フラップ部5が伸張状態で、第1留め具6が着用者の背側に固定される。そのため、おむつカバー1を着用すると、図4(a)に示すように、着用者の前側が左右フラップ部4,5と前側部Fとからなる一枚の布で覆われるように見える。従って、おむつカバー1は、着用者の前側から見るとショーツをはいているように見え、見栄えが良い。
左右ウェスト部により着用者の腸骨陵を覆って骨盤を固定しやすくするために、おむつカバーは、右ウェスト部と左ウェスト部の両方を引っ張りながら、着用者の腰回りに固定できる形状を有していることが好ましい。例えば、おむつカバーは、右ウェスト部と左ウェスト部の両方に第2留め具が設けられ、右ウェスト部と左ウェスト部の一方の端部が、他方の端部よりも前後方向の前方に位置することにより、右ウェスト部と左ウェスト部が前後方向にずれて固定可能であってもよい。また、おむつカバーは、右ウェスト部と左ウェスト部の両方に第2留め具が設けられ、右ウェスト部の第2留め具より幅方向内方に左ウェスト部が挿通可能である開口、および/または、左ウェスト部の第2留め具より幅方向内方に右ウェスト部が挿通可能である開口が設けられていてもよい。これらの実施態様について、下記に説明する。なお、下記の説明において、図1〜図3に示した実施態様と重複する部分の説明は省略する。
図5には、右ウェスト部と左ウェスト部の両方に第2留め具が設けられ、右ウェスト部と左ウェスト部の一方の端部が、他方の端部よりも前後方向の前方に位置することにより、右ウェスト部と左ウェスト部が前後方向にずれて固定可能なおむつカバーを示す。
図5に示されるおむつカバー11は、右ウェスト部12と左ウェスト部13の一方の端部が、他方の端部よりも前後方向yの前方に位置するように形成されている。図5では、右ウェスト部12の端部が左ウェスト部13の端部よりも前後方向yの前方に位置している。その結果、おむつカバー11は、右ウェスト部12と左ウェスト部13が前後方向yにずれて固定可能となる。そのため、おむつカバー11は、右ウェスト部12の端部と左ウェスト部13の端部を掴みながら、右ウェスト部12と左ウェスト部13の両方を着用者の左右方向に引っ張ることができる。その結果、左右ウェスト部12,13により腰回りのフィット性を高めることが容易になり、左右ウェスト部12,13により骨盤を固定しやすくできる。
おむつカバー11は、着用時、右ウェスト部12と左ウェスト部13と後方部とで着用者の腰回りを覆い、右ウェスト部12と左ウェスト部13が着用者の腹側で前後方向yにずれて固定される。着用者が起立した状態においては、右ウェスト部12と左ウェスト部13が上下方向にずれて固定される。
右ウェスト部12の幅と左ウェスト部13の幅は、第2留め具17の接合を容易にするために、端部に向かって狭くなっていることが好ましい。なお、右ウェスト部12の幅と左ウェスト部13の幅とは、前後方向yに対する長さを意味する。このように左右ウェスト部12,13が形成されていれば、右ウェスト部12の第2留め具17Rを、左ウェスト部13の幅方向xの内方に位置する部分に接合しやすくなり、左ウェスト部13の第2留め具17Lを、右ウェスト部12の幅方向xの内方に位置する部分に接合しやすくなる。また、右ウェスト部12と左ウェスト部13により着用者の臀部が広く覆われ、おむつカバー11の着用感が向上する。
左右ウェスト部12,13は、例えば、幅方向xの端部に形成された外方部と、外方部と後方部との間に形成された内方部とを有し、おむつカバー11の幅方向xの中心線に対し、内方部が左右対称に形成され、外方部が左右非対称に形成されてもよい。このように左右ウェスト部12,13が形成されていても、右ウェスト部12の第2留め具17Rを左ウェスト部13の内方部に接合しやすくなり、左ウェスト部13の第2留め具17Lを右ウェスト部12の内方部に接合しやすくなる。左右ウェスト部の外方部と内方部の幅方向xに対する長さの比率は、外方部:内方部=3:7〜7:3程度が好ましい。
図5に示したおむつカバーの着用方法の一例について、図6を用いて説明する。図6に示すおむつカバー11は、左右ウェスト部12,13と後方部が、第1留め具16と第2留め具17が接合可能な材料から構成されている。おむつカバー11は、後方部を着用者の背側に当てながら、右ウェスト部12を着用者の右側の腰回りに当て、左ウェスト部13を着用者の左側の腰回りに当てる。次いで、右ウェスト部12と左ウェスト部13の両方を引っ張りながら、右ウェスト部12の第2留め具17Rを左ウェスト部13の外面に接合し、左ウェスト部13の第2留め具17Lを右ウェスト部12の外面に接合する。この際、右ウェスト部12と左ウェスト部13は、前後方向yにずらして、着用者の腰回りに固定する(図6(a),(b)参照)。次いで、前方部と左右フラップ部14,15を、着用者の股間を通して着用者の腹側に持ってきて、左右フラップ部14,15を着用者の左右方向に拡張させながら着用者の上方向に引っ張って、左右フラップ部14,15を着用者の背側に固定する(図6(b),(c)参照)。その結果、おむつカバー11を着用することができる。
図7には、右ウェスト部と左ウェスト部の両方に第2留め具が設けられ、右ウェスト部の第2留め具より幅方向内方に、左ウェスト部が挿通可能である開口、および/または、左ウェスト部の第2留め具より幅方向内方に、右ウェスト部が挿通可能である開口が設けられたおむつカバーを示す。
図7に示されるおむつカバー21は、左ウェスト部23の第2留め具27Lより幅方向xの内方に、右ウェスト部22が挿通可能である開口28Lが設けられている。また、図7には示されていないが、おむつカバー21は、右ウェスト部22の第2留め具27Rより幅方向xの内方に、左ウェスト部23が挿通可能である開口28R(図示せず)が設けられてもよい。なお、開口28Rと開口28Lのいずれか、または両方を、開口28と称する場合がある。右ウェスト部22に開口28Rが設けられていれば、左ウェスト部23を開口28Rに挿通することにより、右ウェスト部22と左ウェスト部23の両方を引っ張りながら、おむつカバー21を着用することができる。左ウェスト部23に開口28Lが設けられていれば、右ウェスト部22を開口28Lに挿通することにより、右ウェスト部22と左ウェスト部23の両方を引っ張りながら、おむつカバー21を着用することができる。従って、おむつカバー21は、開口28Rおよび/または開口28Lが設けられることにより、右ウェスト部22の端部と左ウェスト部23の端部の両方を引っ張りながら、おむつカバー21を着用することができる。その結果、左右ウェスト部22,23により腰回りのフィット性を高めることが容易になり、左右ウェスト部22,23により骨盤を固定しやすくできる。
おむつカバー21には、開口28Rと開口28Lの少なくとも一方が設けられればよく、開口28Rと開口28Lの両方が設けられてもよい。開口28Rと開口28Lの両方がおむつカバー21に設けられる場合は、着用者は開口28Rと開口28Lのいずれかに右ウェスト部22または左ウェスト部23を挿通しておむつカバー21を着用でき、おむつカバー21の着用が容易になる。
開口28の形状は、右ウェスト部22または左ウェスト部23が挿通可能な形状であれば特に限定されないが、前後方向yに長い形状であることが好ましい。開口28が前後方向yに長い形状であるとは、開口28の前後方向yの長さが幅方向xの長さよりも長いことを意味する。開口28が前後方向yに長い形状であれば、開口28に右ウェスト部22または左ウェスト部23を挿通しやすくなる。
開口28の形状としては、例えば、直線、長方形、楕円形、角の丸まった長方形、不定形等が挙げられる。例えば、開口28が直線形状や長方形、楕円形である場合、開口28は前後方向yに平行に設けられる必要はなく、前後方向yに対し斜めに設けられていてもよい。開口28としては、前後方向yに長い略直線形状のスリットであることが好ましい。このように開口28が設けられることにより、右ウェスト部22や左ウェスト部23が開口28周辺で幅の狭い部分が少なくなり、強度低下が低く抑えられ、おむつカバーの取り扱い性が向上する。
開口28の周囲には、補強材29が設けられていることが好ましい。開口28の周囲に補強材29が設けられることにより、左右ウェスト部22,23を幅方向xに引っ張った際、おむつカバー21が開口28を起点として破断しにくくなる。また、開口28に右ウェスト部22または左ウェスト部23を挿通しやすくなる。
補強材29は、おむつカバー21が開口28を起点として破断しにくくするために、開口28に最も近い縁が、開口28の周縁から10mm以内(より好ましくは5mm以内)に位置するように設けられることが好ましい。また、補強材29は、広い領域で設けすぎても破断抑制効果が高まらず、かえって左右ウェスト部22,23の取り扱い性が低下するおそれがあることから、補強材29は、開口28から最も遠い縁が開口28の周縁から50mm以内(より好ましくは30mm以内)に位置するように設けられることが好ましい。
補強材29としては、開口28が設けられる左右ウェスト部22,23と同じまたは異なる材料を、開口28の周囲に取り付けてもよい。また、開口28の周囲のみ、おむつカバー21を構成する材料の目付を増やしてもよい。あるいは、補強材29に相当する部分を、その周囲よりも高強度の材料で構成してもよい。おむつカバー21の製造容易性の点からは、補強材29は、左右ウェスト部22,23と同じまたは異なる材料を、開口28の周囲に取り付けることが好ましい。
右ウェスト部22および左ウェスト部23の形状は特に限定されないが、右ウェスト部22に開口28Rが設けられている場合は、左ウェスト部23の幅がその端部に向かって狭くなっていることが好ましく、左ウェスト部23に開口28Lが設けられている場合は、右ウェスト部22の幅がその端部に向かって狭くなっていることが好ましい。すなわち、右ウェスト部22に開口28Rが設けられているとともに、左ウェスト部23の幅がその端部に向かって狭くなっている、および/または、左ウェスト部23に開口28Lが設けられているとともに、右ウェスト部22の幅がその端部に向かって狭くなっていることが好ましい。このように右ウェスト部22と左ウェスト部23が形成されていれば、右ウェスト部22または左ウェスト部23を開口に挿通しやすくなる。なお、右ウェスト部22の幅および左ウェスト部23の幅とは、前後方向yに対する長さを意味する。
図7に示したおむつカバーの着用方法の一例について、図8を用いて説明する。図8に示すおむつカバー21は、開口28が左ウェスト部23にのみ設けられており、左右ウェスト部22,23と後方部が、第1留め具26と第2留め具27が接合可能な材料から構成されている。
おむつカバー21は、後方部を着用者の背側に当てながら、右ウェスト部22を着用者の右側の腰回りに当て、左ウェスト部23を着用者の左側の腰回りに当てる。次いで、右ウェスト部22を左ウェスト部23の開口28Lに挿通し、右ウェスト部22と左ウェスト部23の両方を引っ張りながら、右ウェスト部22の第2留め具27Rを左ウェスト部23の外面に接合し、左ウェスト部23の第2留め具27Lを右ウェスト部22の外面に接合する(図8(a),(b)参照)。その結果、左右ウェスト部22,23を着用者の腰回りに固定することができる。次いで、前方部と左右フラップ部24,25を、着用者の股間を通して着用者の腹側に持ってきて、左右フラップ部24,25を着用者の左右方向に拡張させながら着用者の上方向に引っ張って、左右フラップ部24,25を着用者の背側に固定する(図8(b),(c)参照)。その結果、おむつカバー21を着用することができる。
おむつカバーを構成する材料は特に限定されない。おむつカバーを構成する材料としては、不織布、織布、編布、プラスチックフィルム、およびこれらの積層体等を使用できる。おむつカバーを構成する材料として不織布、織布、編布等の布材料を用いる場合、布材料を構成する繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、パルプ、絹等の天然繊維を用いればよい。おむつカバーを構成する材料としてプラスチックフィルムを用いる場合は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂を用いればよい。おむつカバーは、液透過性であっても、液不透過性であってもよい。
おむつカバーの伸縮可能な部分(以下、「伸縮可能部」と称する場合がある)は、伸縮材料から形成されてもよい。伸縮材料としては、天然ゴム;スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン等の合成ゴム;ポリウレタン、ポリエーテル・ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の合成樹脂等を用いることができる。伸縮材料を含む繊維を用いて、不織布、織布、編布等に形成し、伸縮可能部に用いてもよい。また、伸縮材料をフィルム状に形成し、伸縮可能部に用いてもよい。
伸縮可能部は、非伸縮材料から形成されてもよい。この場合、非伸縮材料から形成された繊維を織布、編布等に形成し、織布の織り方または編布の編み方により、織布や編布に伸縮性を付与してもよい。
伸縮可能部は、伸縮材料と非伸縮材料とから形成されてもよい。この場合、非伸縮性材料から形成された非伸縮な部分(以下、「非伸縮部分」と称する場合がある)に、弾性部材等の伸縮材料が取り付けられてもよい。伸縮材料は伸張状態で非伸縮部分に取り付けられることが好ましい。また、伸縮材料から形成された繊維と非伸縮材料から形成された繊維とを用いて、あるいは伸縮材料と非伸縮材料とから形成された複合繊維を用いて、不織布、織布、編布等に形成し、伸縮部に用いてもよい。
おむつカバーは、通気性を確保して、着用時の蒸れを低減する点から、不織布、織布、編布等から構成されることが好ましい。より好ましくは、第1留め具と第2留め具を除きおむつカバー全体が不織布、織布、編布等から構成される。この場合、第1留め具と第2留め具はフックファスナーを用いることが好ましい。
おむつカバーが幅方向と前後方向で異なる伸び率を有する場合、おむつカバーは織布から構成されることが好ましい。この場合、織布の経糸と緯糸とで使用する糸を変えることにより、幅方向と前後方向で伸び率の差を出せばよい。例えば、経糸と緯糸とで繊度を変えたり、素材を変えたり、織りの密度を変えればよい。織布を構成する糸としては、ポリウレタン糸を用いることが好ましい。また、ポリウレタン糸を含む織布の肌触りを改善するために、織布を構成する糸としては、ポリウレタン糸を含む複合糸を用いることがより好ましい。例えば、ポリウレタン糸と綿等の天然繊維との複合糸を用いることが好ましく、ポリウレタン糸が綿等の天然繊維で被覆されたコアスパンヤーンを用いることがより好ましい。