以下では、磁気記録媒体の一例として磁気テープの製造手順とそれに用いる製造装置の概略的な構成を説明する。
図1は、製造される磁気テープの断面を概略的に示す図である。
製造される磁気テープMTは、支持体B上に、非磁性層1と、磁性層2とが積層されている。
図2は、磁気テープの製造装置を示す図である。
製造装置10は、長尺帯状の支持体Bが巻回された送り出しロール11と、非磁性層と磁性層とが順に形成された支持体Bを巻き取る、巻き取りロール19を有している。この製造装置10は、送り出しロール11から送り出された支持体Bを搬送経路に沿って搬送しながら、磁気テープを製造するものである。
製造装置10は、搬送される支持体Bの搬送方向の上流側から順に、非磁性塗布液塗布部12と、非磁性塗布液乾燥部13と、磁性塗布液塗布部14と、磁性塗布液乾燥部15とを備えている。また、支持体Bの搬送経路には、搬送される支持体Bの記録面(磁性層及び非磁性層が設けられている側の面)の反対側を支持するガイドローラが適宜設けられている。
非磁性塗布液塗布部12は、非磁性粒子を含む非磁性塗布液を支持体Bの上面に塗布し、非磁性塗布層を形成する。非磁性塗布液の塗布は、エクストルージョン型の塗布方法が好ましい。しかし、非磁性塗布液の塗布としては、エクストルージョン型に限らず、グラビアコート方式、ロールコート方式、ディップコート方式、スライドコート方式、バーコート方式、カーテンコート方式等が利用できる。
非磁性塗布液乾燥部13は、非磁性塗布液塗布部12で形成された非磁性塗布層を乾燥させる。非磁性塗布層は、非磁性塗布液乾燥部13で乾燥されることで非磁性層になる。非磁性層が形成された支持体Bは、下流側の磁性塗布液塗布部14へ搬送される。
磁性塗布液塗布部14は、非磁性層上に、磁性粒子を含む磁性塗布液を塗布し、磁性塗布層を形成する。磁性塗布層は、湿潤状態のまま下流側へ搬送される。磁性塗布液の塗布としては、非磁性塗布液と同じ上述の塗布方法を利用できる。
磁性塗布液乾燥部15は、湿潤状態の磁性塗布層を乾燥させる。
配向部16は、磁性塗布層に含まれる磁性粒子を永久磁石等の磁界をかけることで配向する。また、配向部16は、配向と同時に、磁性塗布層の乾燥を促すため乾燥風を噴きつける構成としてもよい。磁性塗布層は、乾燥して固化することで磁性層となる。
磁性層及び非磁性層が形成された支持体Bは、巻き取りロール19に巻き取られる。
図示しないが、支持体Bは、巻き取りロール19に一回巻き取られた後で、ロールで表面を平滑化するカレンダ工程や非磁性層及び磁性層を熱硬化させるためのサーモ工程に送られ、スリッター工程において所望のテープ幅に裁断され、磁気テープが完成する。
また、磁性層が形成された後で、支持体Bの記録面とは反対側の面にバックコート層が形成されてもよい。
次に、ウェット・オン・ドライ方式の塗布方法において、非磁性層及び磁性層に生じうる現象とその影響について説明する。
ウェット・オン・ウェット方式よりも界面均一な膜面を形成させることができるが、粉体を主成分とする非磁性層の場合、乾燥状態において多孔質(ポーラス)構造となるため、磁性塗布液に含まれる溶媒である溶剤が非磁性層に浸透していくという現象が発生する。非磁性層への溶剤の浸透量は、非磁性層の空隙率が小さいほど浸透は少ない。非磁性層の空隙率は、23〜50%である。非磁性層の空隙率を小さくするために、非磁性層を形成した後に一旦ロールに巻き上げ、カレンダ処理を行い、再度、塗布工程において磁性塗布液を塗布し、磁性塗布層の配向及び乾燥を行う方法があるが、生産性の向上の観点では非磁性塗布液を乾燥させて非磁性層を形成した後で連続して、この非磁性層上に磁性塗布液を塗布することが好ましい。この場合には、非磁性層の空隙率は約25%以上である。
また、磁性塗布層から非磁性層に浸透してしまう溶剤の浸透量は、非磁性層の厚みによっても変化する。また、非磁性層に含まれる結合剤と磁性塗布液に含まれる溶剤との組み合わせによっては、非磁性層への浸透ととともに、非磁性層の膨潤が起こり、実質的に非磁性層の厚みが増加し、更に浸透量が増加する。非磁性層への溶剤の浸透量が増加すると磁性塗布液の固形分濃度が高く、粘度が高くなる。また、磁性塗布液の粘度が変化すると磁性塗布層の厚みムラが発生する。
配向工程において、磁性塗布液の固形分濃度が高すぎる場合には磁界における配向操作が阻害され、配向不良が起こる。
また、非磁性層の厚みにバラツキがある場合には、厚みの厚い部分では磁性塗布層の溶剤の浸透量が局所的に多くなるため、磁性層の配向不良の要因となる。
そこで、この製造方法では、磁性層形成工程において、塗布される磁性塗布液の固形分濃度が10%以上であり、乾燥後の非磁性層の厚みを0.5μm以上、かつ、非磁性層の厚み分布を10%以内であるとした。こうすることで、乾燥した非磁性層上に磁性材料を含む磁性塗布液を塗布し、磁性塗布液を乾燥させて磁性層を形成すると、磁性塗布層に含まれる溶剤が非磁性層に浸透することや、また、磁性層の厚みムラが生じることを抑えることができる。したがって、磁性層の配向不良や電磁変換特性の劣化を抑制することができる。
次に、支持体、非磁性塗布層の非磁性塗布液、磁性塗布層の磁性塗布液のそれぞれについて説明する。
非磁性塗布層の非磁性塗布液に含まれる非磁性材料の構成は制限されないが、通常、少なくとも樹脂からなり、好ましくは、粉体、例えば、無機粉末又は有機粉末が樹脂中に分散されたものが挙げられる。無機粉末は、通常、好ましくは非磁性粉末であるが、この層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよい。
非磁性粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の無機化合物から選択することができる。無機化合物としては、例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独又は組合せで使用される。
非磁性粉末の表面には表面処理が施され、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnO、Y2O3が存在することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、更に好ましくはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナを存在させた後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般的には好ましい。
非磁性粉末は結合剤に対して重量比率で20〜0.1、体積比率で10〜0.2の範囲で用いられる。又、特開昭59‐142741号、同61‐214127号、同63‐140420号には非磁性塗布層にSnO2を含むことを規定している。これらは磁性塗布層に酸化鉄、若しくはBaFeを用いており、SnO2より比重は小さいものであるが、いずれも磁性塗布層の下塗処方であり、その厚みは磁性塗布層に比べてはるかに薄いものであり、本発明とは別の発明である。
磁性層に使用する磁性粒子としては、特に制限されるべきものではないが、α‐Feを主成分とする強磁性金属粉末、γ‐FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ‐FeOx(x=1.33〜1.5)、Fe又はNi又はCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金微粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、窒化鉄など公知の強磁性粉末が使用できる。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。これらの強磁性微粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44‐14090号、同45‐18372号、同47‐22062号、同47‐22513号、同46‐28466号、同46‐38755号、同47‐4286号、同47‐12422号、同47‐17284号、同47‐18509号、同47‐18573号、同39‐10307号、同48‐39639号、米国特許第3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
上記強磁性粉末の中で強磁性合金微粉末については少量の水酸化物、又は酸化物を含んでもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe‐Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
磁性塗布層の強磁性粉末をBET法による比表面積で表したとき、25〜80m2/gであり、好ましくは35〜60m2/gである。25m2/g以下ではノイズが高くなり、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。強磁性粉末の結晶子サイズは450〜100オングストロームであり、好ましくは350〜150オングストロームである。酸化鉄磁性粉末のσ Sは50emu/g以上、好ましくは70emu/g以上であり、強磁性金属微粉末の場合は100emu/g以上が好ましい。
強磁性粉末のr1500は1.5以下であることが好ましい。更に好ましくはr1500は1.0以下である。r1500とは磁気記録媒体を飽和磁化したのち反対の向きに1500Oeの磁場をかけたとき反転せずに残っている磁化量の%を示すものである。強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0.5g/cc以上が好ましく、0.8g/cc以上が更に好ましい。
γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20%であり、更に好ましくは5〜10%である。鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。強磁性粉末のpHの範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。
また、強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は20容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。強磁性粉末の形状は、先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状、板状いずれでもかまわない。強磁性粉末のSFD0.6以下を達成するためには、強磁性粉末の抗磁力(保持力)Hcの分布を小さくする必要がある。そのためには、ゲータイトの粒度分布をよくする、γ‐ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を遅くするなどの方法がある。
磁性粒子としては、板状六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、六方晶Co粉末が使用できる。バリウムフェライトを用いる場合、その粒子サイズは0.001〜1μmの直径で厚みが直径の1/2〜1/20である。比重は4〜6g/ccで、比表面積は1〜60m2/gである。
非磁性塗布層及び磁性塗布層に使用される結合剤としては、従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が‐100〜150℃、数平均分子量が1000〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテルなどを構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ‐ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。
これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を非磁性塗布層、又は磁性塗布層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62‐256219号に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独又は組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体の群から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、又はこれらにポリイソシアネートを組合せたものがあげられる。
ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、COOM、SO3M、OSO3M、P=O(OM)2、O‐P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属塩基)、OH、NR2、N+R3、Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
結合剤の具体的な例としては、ユニオンカーバイト社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYES、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC、PKFE、日信化学工業社製:MPR‐TA、MPR‐TA5、MPR‐TAL、MPR‐TSN、MPR‐TMF、MPR‐TS、MPR‐TM、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83、日本ゼオン社製:MR110、MR100、400X110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製:パンデックスT‐5105、T‐R3080、T‐5201、バーノックD‐400、D‐210‐80、クリスボン6109、7209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフエラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製:サンプレンSP‐150、旭化成社製:サランF310、F210などがあげられる。
結合剤は強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、5〜30重量%、ポリウレタン樹脂合を用いる場合は2〜20重量%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組合せて用いるのが好ましい。
ポリウレタン樹脂を用いる場合はガラス転移温度が‐50〜100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/cm2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。磁気記録媒体は二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性塗布層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ非磁性塗布層と磁性塗布層とで変えることはもちろん可能である。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4‐4’‐ジフエニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン‐1,5‐ジイソシアネート、o‐トルイジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製:タケネートD‐102、タケネートD‐110N、タケネートD‐200、タケネートD‐202、住友バイエル社製:デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬化反応性の差を利用して二つ若しくはそれ以上の組合せで非磁性塗布層、磁性塗布層ともに用いることができる。
磁性塗布層に使用されるカーボンブラックはゴム用フアーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、粒子径は5mμm〜300mμm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。カーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製:BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、700、VULCAN XC‐72、旭カーボン社製:♯80、♯60、♯55、♯50、♯35、三菱化成工業社製:♯2400B、♯2300、♯900、♯1000、♯30、♯40、♯10B、コンロンビアカーボン社製:CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理してもよく、又は、樹脂でグラフト化して使用してもよく、又は、表面の一部をグラフアイト化したものを使用してもよい。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、又は組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性塗布層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、カーボンブラックは非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることは当然可能である。例えば、非磁性層に導電性の高いカーボンブラックを用いることにより帯電を防止し、磁性塗布層に粒子径の大きいカーボンブラックを用い摩擦係数を下げるなどがあげられる。磁性塗布層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
磁性塗布層に用いられる研磨剤としては、α化率90%以上のα‐アルミナ、β‐アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α‐酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素など主としてモース硬度6以上の公知の材料が単独又は組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物又は元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組合せてもよいし、単独の研磨剤で粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、が好ましい。研磨剤の形状は針状、球状、又はサイコロ状のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものは研磨性が高く、好ましい。
研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製:AKP‐20,AKP‐30,AKP‐50,HIT‐50、日本化学工業社製:G5,G7,S‐1、戸田工業社製:100ED,140EDなどがあげられる。研磨剤は非磁性塗布層、磁性塗布層で種類、量及び組合せを変え、目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。これらの研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわない。磁気記録媒体の磁性塗布層の表面及びその端面に存在する研磨剤は5個/100μm2以上が好ましい。
添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などを有するものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル及びそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、ポリフエニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステル及びそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、及び、これらの金属塩(Li,Na,K,Cuなど)又は、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステル又はジ脂肪酸エステル又はトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、があげられる。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又は燐酸エステル類、アルキルベダイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。
潤滑剤、界面活性剤は非磁性塗布層、磁性塗布層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、非磁性塗布層、磁性塗布層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、ここに示した例のみに限られるものではない。
添加剤のすべて又はその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製:NAA‐102,NAA‐415,NAA‐312,NAA‐160,NAA‐180,NAA‐174,NAA‐175,NAA‐222,NAA‐34,NAA‐35,NAA‐171,NAA‐122,NAA‐142,NAA‐160,NAA‐173K,ヒマシ硬化脂肪酸,NAA‐42,NAA‐44,カチオンSA,カチオンMA,カチオンAB,カチオンBB,ナイミーンL‐201,ナイミーンL‐202,ナイミーンS‐202,ノニオンE‐208,ノニオンP‐208,ノニオンS‐207,ノニオンK‐204,ノニオンNS‐202,ノニオンNS‐210,ノニオンHS‐206,ノニオンL‐2,ノニオンS‐2,ノニオンS‐4,ノニオンO‐2,ノニオンLP‐20R,ノニオンPP‐40R,ノニオンSP‐60R,ノニオンOP‐80R,ノニオンOP‐85R,ノニオンLT‐221,ノニオンST‐221,ノニオンOT‐221,モノグリMB,ノニオンDS‐60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレート,ブチルラウレート,エルカ酸、関東化学社製:オレイン酸、竹本油脂社製:FAL‐205,FAL‐123、新日本理化社製:エヌジエルブLO,エヌジョルブIPM,サンソサイザーE4030、信越化学社製:TA‐3,KF‐96,KF‐96L,KF‐96H,KF410,KF420,KF965,KF54,KF50,KF56,KF‐907,KF‐851,X‐22‐819,X‐22‐822,KF‐905,KF‐700,KF‐393,KF‐857,KF‐860,KF‐865,X‐22‐980,KF‐101,KF‐102,KF‐103,X‐22‐3710,X‐22‐3715,KF‐910,KF‐3935、ライオンアーマー社製:アーマイドP,アーマイドC,アーモスリップCP、ライオン油脂社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA‐41G、三洋化成社製:プロフアン2012E,ニューポールPE61,イオネットMS‐400,イオネットMO‐200,イオネットDL‐200,イオネットDS‐300,イオネットDS‐1000,イオネットDO‐200などがあげられる。
有機溶媒は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N‐ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以下である。有機溶媒は必要ならば磁性塗布層と非磁性塗布層でその種類、量を変えてもかまわない。非磁性塗布層に揮発性の高い溶媒を用い表面性を向上させる、磁性塗布層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、磁性塗布層の溶解性パラメータの高い溶媒を用い充填度を上げるなどがその例としてあげられるが、これらの例に限られない。
磁気記録媒体の厚み構成は支持体が1〜100μm、好ましくは5〜20μm、非磁性層の厚みが0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm、磁性層の厚みは0.05μm以上、1.0μm以下、好ましくは0.05μm以上0.6μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.3μm以下である。磁性層と非磁性層を合わせた厚みは支持体の厚みの1/100〜2倍の範囲で用いられる。
ここで、磁性層のドライ厚み(単に厚みという。)を0.3μm以下にするには、磁性塗布液の塗布直後の膜厚(ウェット厚み)を小さくすることで可能である。このとき、浸透の影響のよる固形分濃度の変化が大きくなる。
実施例の磁性層の厚みを0.3μmより大きく、0.8μm以下にすることは、ウェット厚みを大きくすることで可能である。
実施例の磁性層の厚みを0.8μmより大きく、1.0μm以下にする場合は、ウェット厚みがほぼ変わらない。
実施例の磁性層の厚みを1.0μmより大きくするためには、ウェット厚みをそれに伴い大きくする必要があり、ウェット厚みを大きくしていくと、浸透の影響による固形分濃度変化の変化が小さくなり、記録密度の向上につながらない。
支持体の磁性層が形成される側とは反対側にバックコート層を設ける場合には、バックコート層の厚みを0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μmとする。バックコート層は公知のものが使用できる。
支持体は、ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどの公知のフイルムが使用できる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理などをおこなってもよい。支持体は、中心線平均表面粗さが0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、更に好ましくは0.01μm以下のものを使用する必要がある。また、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa,Si,Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末があげられる。支持体のテープ走行方向のF−5値は好ましくは5〜50Kg/mm2、テープ幅方向のF‐5値は好ましくは3〜30Kg/mm2であり、テープ長手方向のF−5値がテープ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
支持体の熱収縮率は、テープ走行方向及び幅方向に100℃30分で、好ましくは3%以下、更に好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。破断強度は両方向とも5〜100Kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2が好ましい。
磁気記録媒体の磁性塗料(磁性材料を含む塗布液)を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。
従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することにより、磁気記録媒体の高い残留磁化密度(Br)を得ることができる。連続ニーダ又は加圧ニーダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)及び強磁性粉末100部に対し、15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号、特開平1−79274号に記載されている。
逐次重層構成の磁気記録媒体の製造装置に用いる塗布装置には、従来の公知の製造技術を用いることができる。例えば、磁性塗料の塗布で一般的に用いられる、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等が挙げられる。
なお、強磁性粉末の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62‐95174号や特開平1‐236968号に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液に剪断を付与することが望ましい。更に、磁性塗料の粘度については、特開平3‐8471号に開示されている数値範囲を満足することが好ましい。
配向の磁界を発生させる磁石としては、1000G以上のソレノイドと2000G以上のコバルト磁石を併用することが好ましく、更には乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好ましい。
磁気記録媒体の表面平滑化処理を行うカレンダ処理ロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールを使用する。また、金属ロール同志で処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm、更に好ましくは300kg/cm以上であり、その速度は20m/分以上700m/分以下の範囲である。
製造された磁気記録媒体の磁性層及びその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は好ましくは0.5以下、更に0.3以下、表面固有抵抗は好ましくは10−5〜10−12オーム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは100〜2000Kg/mm2、破断強度は好ましくは1〜30Kg/cm2、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、長手方向とも好ましくは100〜1500Kg/mm2、残留のびは好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
製造された磁気記録媒体の磁性層に含まれる残留溶媒は、好ましくは100mg/m2以下、更に好ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層及び非磁性層が有する空隙率は、ともに好ましくは30容量%以下、更に好ましくは10容量%以下である。磁性層の空隙率が非磁性層の空隙率より大きいほうが好ましいが、非磁性層の空隙率が磁性層の空隙率より大きい場合には、非磁性層の空隙率を20%以下とする。
(実施例)
本発明者は、磁性塗布液の固形分濃度、非磁性層の厚み、非磁性層の厚み分布をそれぞれ変えて磁気テープを製造した際の、磁性層の表面状態及び厚みムラの状態を調べるため、次のような測定を行った。
本測定では、図2に示す製造装置10を使用した。
非磁性層の厚み分布が5%、10%、20%のそれぞれについて、磁性塗布液の固形分濃度(Nv)と非磁性層の厚みとの関係を評価した。各評価では、磁性塗布液の固形分濃度(Nv)を8%、10%、12%、15%、20%としたそれぞれの場合について、非磁性層の厚みを、0.25μm、0.5μm、1.5μm、2.0μmと変えて評価した。なお、以下の評価ではいずれも、磁性塗布層が乾燥した後の磁性層の膜厚(ドライ厚み)を0.3μmとした。
各評価では、同じ支持体を使用し、支持体上に形成する磁性塗布層及び非磁性塗布層はいずれも同じ材料を用いて製造した。支持体は、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートを使用した。
非磁性塗布液は、以下のものを用いた。なお、下記の「部」とは「重量部」を意味する。
非磁性粉体 α−Fe2O3 80部
平均長軸長 0.1μm
BET法による比表面積 48m2/g
pH8
Fe2O3含有量 90%以上
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面被覆化合物 Al2O3
カーボンブラック 20部
平均一次粒子径 16mμ
DBP吸油量 80ml/100g
pH 8.0
BET法による比表面積 250m2/g
揮発分 1.5%
塩化ビニル共重合体 10部
日本ゼオン社製MR−110
ポリエステルポリウレタン樹脂 5部
分子量 35000
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0.9/2.6/1
−SO3Na基 1×10−4eq/g含有
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
上記塗料について、各成分を連続ニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを非磁性塗布液に3部を加え、更にそれぞれにメチルエチルケトン、シクロヘキサノンの1:1混合溶媒40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性塗布液を調製した。
磁性塗布液は、以下のものを用いた。なお、下記の「部」とは「重量部」を意味する。
強磁性金属微粉末 Fe/Co=80/20 100部
Hc 183 kA/m(2300Oe)、
BET法による比表面積 54m2/g
結晶子サイズ 165Å、
表面被覆化合物 Al2O3、
粒子サイズ(長軸径) 0.1μm
針状比 8
σs:150 A・m2/kg(emu/g)
塩化ビニル系共重合体 5部
日本ゼオン社製MR−110
ポリエステルポリウレタン樹脂 3部
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI=0.9/2.6/1
−SO3Na基 1×10−4eq/g含有
α−アルミナ(粒子サイズ0.1μm) 5部
カ−ボンブラック(粒子サイズ0.10μm 0.5部
ブチルステアレート 1.5部
ステアリン酸 0.5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
上記塗料について、各成分を連続ニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液に、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの1:1混合溶媒を200部〜500部まで加え、性塗布液を作成し、それぞれの上層液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗布液を調製した。
また、塗布には塗布ヘッドを支持体に押し付けるタイプのエクストルージョン型の塗布装置を使用した。塗布方法としては、搬送される支持体に非磁性塗布液を塗布し、乾燥させて非磁性層を形成し、この非磁性層上に磁性塗布液を塗布速度300m/minで塗布した。
非磁性層の厚み分布は、支持体幅方向の厚み分布とする。非磁性層の厚み分布は、塗布ヘッドのスリット間隔を調節することで制御した。
磁性層の面あれの評価では、表面形状荒さ測定機を用いた粗さ測定を行い、Raが5nm以下のものを「○」とし、5nmよりも大きく、かつ7nm以下のものを「△」とし、7nmよりも大きいものを「×」とした。
磁性層の厚みムラの評価では、磁性層の厚み分布が5%以下のものを「○」とし、磁性層の厚み分布が5%より大きく、かつ10%以下のものを「△」とし、磁性層の厚み分布が10%以上のものを「×」とした。
また、面荒れの評価と磁性層の厚みムラとの総合の評価基準としては、面荒れ及び磁性層の厚みムラが両方とも「×」の場合、及び、いずれか一方が「×」の場合には総合評価を「×」とし、面荒れ及び磁性層の厚みムラが両方とも「△」の場合、及び、いずれか一方が「△」でかつ他方が「○」の場合、総合評価を「△」とし、面荒れ及び磁性層の厚みムラが両方とも「○」の場合には、総合評価を「○」とした。
表1,3,5に、非磁性の厚み分布を5%,10%,20%とした場合それぞれについて、磁性塗布液の固形分濃度(Nv)と非磁性層の厚みとを変えて面荒れ及び磁性層の厚みムラを評価した結果を示す。表2,4,6に、非磁性の厚み分布を5%,10%,20%とした場合における、磁性塗布液の固形分濃度(Nv)と非磁性層の厚みとの関係の総合評価を示す。
非磁性層厚みが分布20%の場合、非磁性層厚みを2μmとしたとき、磁性塗布液の固形分濃度が8%〜15%では総合評価は、「○」又は「△」であったが、固形分濃度が20%では総合評価は「×」であった。
非磁性層厚みを1.5μmとしたとき、固形分濃度が8%〜12%では総合評価が「△」であったが、固形分濃度が15%、20%では総合評価は「×」であった。
非磁性層厚みを0.25μm、及び、0.5μmとしたとき、固形分濃度が10%では総合評価が「△」であったが、固形分濃度が8%、12%、15%、20%ではいずれも総合評価は「×」であった。
非磁性層厚みが分布10%の場合、非磁性層厚みを2μmとしたとき、磁性塗布液の固形分濃度が10%〜15%では総合評価は「○」であり、固形分濃度が8%、20%では総合評価は「△」であった。
非磁性層厚みを1.5μmとしたとき、固形分濃度が10%〜12%では総合評価は「○」であり、固形分濃度が8%、15%、20%では総合評価は「△」であった。
非磁性層厚みを0.5μmとしたとき、固形分濃度が10%〜20%では総合評価は「△」であり、固形分濃度が8%では総合評価は「×」であった。
非磁性層厚みを0.25μmとしたとき、固形分濃度が10%〜15%では総合評価は「△」であり、固形分濃度が8%,20%では総合評価は「×」であった。
つまり、非磁性層厚みが分布10%の場合、非磁性層厚みを0.5μm以上、固形分濃度を10%以上とすれば総合評価が良いことがわかった。
非磁性層厚みが分布5%の場合、非磁性層厚みを2μmとしたとき、磁性塗布液の固形分濃度が10%〜20%では総合評価は「○」であり、固形分濃度が8%では総合評価は「△」であった。
非磁性層厚みを1.5μmとしたとき、固形分濃度が10%〜20%では総合評価は「○」であり、固形分濃度が8%では総合評価は「△」であった。
非磁性層厚みを0.5μmとしたとき、固形分濃度が12%〜20%では総合評価は「○」であり、固形分濃度が10%では総合評価は「△」であり、固形分濃度が8%では総合評価は「×」であった。
非磁性層厚みを0.25μmとしたとき、固形分濃度が12%〜15%では総合評価は「○」であり、固形分濃度が10%,20%では総合評価は「△」であり、固形分濃度が8%では総合評価は「×」であった。
つまり、非磁性層厚みが分布5%の場合、非磁性層厚みを0.5μm以上、固形分濃度を10%以上とすれば総合評価が良いことがわかった。
上記評価によれば、塗布される磁性塗布液の固形分濃度が10%以上とし、非磁性層の厚みを0.5μm以上とし、かつ、非磁性層の厚み分布を10%以内とすれば、面荒れと磁性層厚みムラがともに十分に抑えられることがわかった。
なお、固形分濃度が20%よりも高くなると、ウェット状態の磁性層を薄く塗布することができなくなる。そのため、乾燥後の磁性層の厚みが1.0μm以上となってしまい、磁気記録の高密度化が達成できなくなる。下層厚み分布の低減によって、磁性層の平滑性を得ることができる可能性はあるが、固形分濃度が高い場合は、高密度記録可能な磁気記録媒体は得られない。このため、高密度記録に適した磁気記録媒体を製造する観点では、磁性塗布液の固形分濃度を20%以下とすることが好ましい。
本明細書は、以下の事項を開示する。
(1)帯状の支持体と、前記支持体上に形成された非磁性層と、該非磁性層上に形成された磁性層とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
搬送される前記支持体に非磁性塗布液を塗布し、乾燥させることで、前記非磁性層を形成する非磁性層形成工程と、
乾燥された前記非磁性層上に磁性材料を含む磁性塗布液を塗布し、該磁性塗布液を乾燥させることで前記磁性層を形成する磁性層形成工程と、を有し、
前記磁性層形成工程において、塗布される前記磁性塗布液の固形分濃度が10%以上であり、乾燥後の前記非磁性層の厚みを0.5μm以上、かつ、前記非磁性層の厚み分布を10%以内とする磁気記録媒体の製造方法。
(2)(19に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁性層の厚みは、0.05μm以上、1.0μm以下である磁気記録媒体の製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法であって、
前記磁性塗布液の固形分濃度が20%以下である磁気記録媒体の製造方法。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の磁気記録媒体の製造方法で得られる磁気記録媒体であって、
前記磁性層形成工程後の前記支持体を所定の幅寸法となるように切断して得られる磁気記録媒体。