JP2011195429A - ゼロ膨張係数の高強度で低誘電率のβ−ユ−クリプタイトセラミックス - Google Patents

ゼロ膨張係数の高強度で低誘電率のβ−ユ−クリプタイトセラミックス Download PDF

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俊夫 荻原
Osamu Kimura
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Abstract

【課題】ゼロ膨張係数で、高強度、低誘電率の、低温で焼結したβ−ユ−クリプタイトセラミックスを提供する。
【解決手段】β−ユ−クリプタイトセラミックスの組成の原料粉末を十分混合し、低温で仮焼して、焼結助剤を加えると共に、微粉砕することによって、ゼロ膨張係数で、高強度、低誘電率のβ−ユ−クリプタイトセラミックス焼結体。
【選択図】図3

Description

発明の詳細な説明
本発明は請求項2で発明されたβ−ユ−クリプタイトセラミックスの仮焼微粉末に、適当な焼結助剤を使用して、1100℃以下の低温で焼結することによって、十分に小さい膨張係数を有するβ−ユ−クリプタイトセラミックスの焼結体を製造する方法に関するものである。さらに、この方法によって、実用上十分に高い強度を有し、かつ、低誘電率のβ−ユ−クリプタイトセラミックスの焼結体を得ることが可能となる。
シリカを含有するセラミックス、たとえば、コーディエライトセラミックスは極めて小さい膨張係数(1.8×10−6/K)を有するセラミックスとして知られている。しかし、この材料の機械的強度は100MPa程度と低く、かつ、焼結温度が1400℃以上と高いため、実用には供せられていない。また、電子材料の基板に用いられているアルミナセラミックスは機械的強度は400MPaと高いが、膨張係数は9×10−6/Kと高い。しかも、電子機器用の基板材料としては、誘電率が8〜10と高く、高周波用には不適当である。一方、これまで得られているβ−ユ−クリプタイトセラミックスは膨張係数が負の大きい値−6×10−6/Kを有するセラミックスとして知られているが、機械的強度は40MPaと低いため、実用には供せられていない。
発明が解決しようとする課題
本発明は従来の技術では実現できなかった2×10−6/Kから−2×10−6/K以下の膨張係数を有するセラミックス、いわゆるゼロ膨張係数セラミックスで、かつ、十分に高い強度と破壊靱性値を有し、かつ、低誘電率のセラミックスを工業的に大量生産可能な方法で、作製することによって、アルミナセラミックスでは不可能な課題である低膨張係数と低誘電率を有するセラミックスを提供するものである。このことによって、電子基板材料の問題点を解決することが可能となる。
課題を解決するための手段
本発明はβ−ユ−クリプタイトセラミックスの粉末冶金法による仮焼方法と粉砕方法を改善し、かつ、適切な焼結助剤を添加することによって、十分に低い温度で焼結を可能にすることによって、上記の課題を解決するものである。
すなわち、本発明は仮焼粉末の粉砕方法を改善することによって、β−ユ−クリプタイトセラミックスの単相の0.3マイクロメーター以下の微粉を作製し、適切な焼結助剤を添加することによって、ゼロ膨張係数、すなわち、絶対値の極めて小さい膨張係数を有し、かつ、極めて高密度化されたβ−ユ−クリプタイトセラミックスを十分に低い温度で作製することを可能とならしめることに、特徴を有するものである。その結果、膨張係数が極めて小さく、高強度で低誘電率の電子基板用セラミックスを製作することが可能となる。
作用
すなわち、本発明は仮焼粉末の粉砕方法を改善することによって、β−ユ−クリプタイトセラミックス単相の0.3マイクロメーター以下の微粉を作製し、適切な焼結助剤を添加することによって、β−ユ−クリプタイトセラミックスを1100℃以下の温度で、実用的に十分高い機械的強度240MPaと真密度(2.39g/cm)に極めて近い高密度を有するゼロ膨張係数で低誘電率のβ−ユ−クリプタイトセラミックスを焼結可能とするものである。従って、この材料を用いることによって、従来実現できなかったゼロ膨張係数でかつ低誘電率の基板材料を工業的に使用することが可能となる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例の一つとして、β−ユ−クリプタイトセラミックス(組成がLiO・Al・2SiO)について、焼結助剤としてLiO・GeOを用いた場合について説明する。原材料粉末は、純度99.9%以上のLiCO,Al、SiOの粉末を使用し、上記組成になるように正確に秤量した後、約3ミリメーター径のジルコニアボールを入れたボールミルにより、IPA(イソプロピルアルコール)を溶媒とし、分散剤を適量加え、約48時間混合して均質化する。
次に、ボールと分散溶液を分離し、60℃オーブン中で1時間乾燥し、混合粉末を回収する。これを950℃で2時間、仮焼して反応させる。その結果、混合量に応じた組成比のβ−ユ−クリプタイトセラミックスが得られた。図1の仮焼粉末のX線回折図に示されるように、本実施形態の製造方法によれば、950℃と低温での加熱処理においても、得られた仮焼粉末は、β−ユ−クリプタイトセラミックス単相であることが判明した。
したがって、焼結性を向上させるため、50℃低い900℃で仮焼したβ−ユ−クリプタイトセラミックスの仮焼粉に、焼結助剤として3重量%のLiO・GeO(重量比1:9)を添加し、約3ミリメーター径のジルコニアボールを入れたボールミルにより、IPA(イソプロピルアルコール)を溶媒とし、分散剤を適量加え、約48時間粉砕して微粉砕し、解砕した。原材料粉を混合した場合と同様に、ボールと分散溶液を分離し、60℃オーブン中で1時間乾燥し、微粉砕粉末を回収した。図2に、粉砕された仮焼微粉の走査型電子顕微鏡写真像を示す。約0.3マイクロメーターと極めて微粉化され、よく分散している仮焼粒子が得られた。
次に、30MPaの加圧下で金型で成型し、200MPaの加圧下でCIP成型し、大気中で1020℃で2時間加熱して焼結体を作製した。この試料を表面研磨し、加工した後、機械的および電気的特性を調べた。図3のこの焼結体の破断面の走査型電子顕微鏡写真像に示されるように、空孔は殆ど見いだされず、極めて緻密な焼結体が得られた。また、アルキメデス法によって測定した密度は2.37g/cmと真密度の99%に達する極めて高い値を示した。まず、膨張係数は1.2×10−6/K(室温から800℃まで)と極めて低く、低膨張セラミックスとして知られているコーディエライトセラミックスの値1.8×10−6/K(室温から800℃まで)よりも小さく、これまで報告されていたような負の大きな値とは異なる。誘電率は5.5とアルミナの8〜10に比較すれば、十分小さい。また、曲げ強度は214MPaに達し、これまで報告されていた40MPaよりはるかに高い。このことは、仮焼粉末の微粉化と焼結助剤の添加によって、低温焼結が可能となり、結晶成長が抑制されたためである。
発明の効果
本発明によって、ゼロ膨張係数で、高強度、低誘電率のβ−ユ−クリプタイトセラミックスが得られたことによって、電子基板材料の問題点が解消された。しかも、1100℃以下の低温で焼結可能であり、銀−パラヂウムとの電極材料との一体化焼結が可能となり、積層部品への応用が可能となる。さらに、非酸化性雰囲気中での焼成が可能であるので、ニッケルや銅等の安価な金属も電極材料として、使用可能である。
本発明によるβ−ユ−クリプタイトセラミックス混合微粉を950℃で仮焼した粉末のX線回折図 本発明によるβ−ユ−クリプタイトセラミックスを900℃で仮焼した粉末を、さらにボールミルで粉砕した粉末の走査型電子顕微鏡写真像 本発明によるβ−ユ−クリプタイトセラミックス仮焼粉末に焼結助剤としてLiO・GeO粉末を3重量%添加し、ボールミルで粉砕した粉末を1020℃で本焼成した試料の断面の走査型電子顕微鏡写真像

Claims (3)

  1. 膨張係数が極めて小さく、高強度で低誘電率のβ−ユークリプタイトセラミックス焼結体の製造方法。
  2. 単相のβ−ユークリプタイトセラミックスの仮焼微粉末を、適当な粉砕方法を用いることによって、製造する方法
  3. 請求項2で作製されたβ−ユ−クリプタイトセラミックスの微粉末に適当な添加物(酸化リチウムと酸化ゲルマニウムの化合物、もしくは酸化リチウムと酸化ビスマスの化合物などの低温で融解する化合物)を少量添加することによって、低温でβ−ユークリプタイトセラミックスを焼結する方法。
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