JP2011195416A - 合わせガラスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な外観を有する合わせガラスを提供すること。
【解決手段】第1のガラス基板2、第1の接着シート3、透明樹脂フィルム41の一方の主面に熱線反射膜42が形成された熱線反射フィルム4、第2の接着シート5、および第2のガラス基板6を有し、これらがこの順に積層された合わせガラスの製造方法であって、前記第1のガラス基板2と前記第1の接着シート3とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第1の接着構体とすると共に、前記第2のガラス基板6と前記第2の接着シート5とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第2の接着構体とする接着構体製造工程と、前記第1の接着構体、前記熱線反射フィルム4、および前記第2の接着構体をこの順に重ね合わせて真空雰囲気下で加熱して予備圧着構体とする予備圧着工程と、前記予備圧着構体を加熱加圧して合わせガラスとする本圧着工程とを有するもの。
【選択図】図1
【解決手段】第1のガラス基板2、第1の接着シート3、透明樹脂フィルム41の一方の主面に熱線反射膜42が形成された熱線反射フィルム4、第2の接着シート5、および第2のガラス基板6を有し、これらがこの順に積層された合わせガラスの製造方法であって、前記第1のガラス基板2と前記第1の接着シート3とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第1の接着構体とすると共に、前記第2のガラス基板6と前記第2の接着シート5とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第2の接着構体とする接着構体製造工程と、前記第1の接着構体、前記熱線反射フィルム4、および前記第2の接着構体をこの順に重ね合わせて真空雰囲気下で加熱して予備圧着構体とする予備圧着工程と、前記予備圧着構体を加熱加圧して合わせガラスとする本圧着工程とを有するもの。
【選択図】図1
Description
本発明は、合わせガラスの製造方法に係り、特に良好な外観を有する合わせガラスを製造するための製造方法に関する。
従来から、熱線遮蔽ガラスとして、対向する一対のガラス基板間に太陽光線中の赤外線(熱線)の透過を遮断する熱線反射フィルムを配置した合わせガラスが用いられている。熱線反射フィルムは基材となる透明樹脂フィルム上に熱線反射膜を形成したものであり、例えば透明樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレート等からなるものとされ、また熱線反射膜が酸化物層と金属層とを交互に積層したもの、または高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したものとされている。
このような熱線反射フィルムは、一対のガラス基板間にポリビニルブチラール樹脂等からなる一対の接着層を介して接着されている。すなわち、熱線遮蔽ガラスは、ガラス基板、接着シート、熱線反射フィルム、接着シート、およびガラス基板をこの順に積層して積層体とした後、予備圧着、本圧着を行うことにより製造している(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような熱線遮蔽ガラスについては、表面がメラメラとした感じに反射して見える反射ムラ、いわゆるオレンジピールが発生し、必ずしも良好な外観とならないことがある。この原因については必ずしも明らかではないが、予備圧着や本圧着の際の加熱により接着シートが収縮し、これにより隣接する熱線反射フィルムが収縮し、その表面にうねりが発生するためと考えられる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、良好な外観を有する合わせガラスを製造するための製造方法を提供することを目的としている。
本発明の製造方法は、第1のガラス基板、第1の接着シート、透明樹脂フィルムの一方の主面に熱線反射膜が形成された熱線反射フィルム、第2の接着シート、および第2のガラス基板を有し、これらがこの順に積層された合わせガラスの製造方法であって、第1のガラス基板と第1の接着シートとを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第1の接着構体とすると共に、第2のガラス基板と第2の接着シートとを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第2の接着構体とする接着構体製造工程と、第1の接着構体、熱線反射フィルム、および第2の接着構体をこの順に、かつ第1の接着シートと第2の接着シートが熱線反射フィルムと接するように重ね合わせて真空雰囲気下で加熱して予備圧着構体とする予備圧着工程と、予備圧着構体を加熱加圧して合わせガラスとする本圧着工程とを有することを特徴とする。
透明樹脂フィルムの厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。また、接着構体製造工程における加熱は、100kPa以下の真空雰囲気下、90℃以上150℃以下の温度で15分以上50分以下行うことが好ましい。
さらに、予備圧着工程における加熱は、100kPa以下の真空雰囲気下、90℃以上150℃以下の温度で20分以上60分以下行うものであることが好ましく、本圧着工程における加熱加圧は、1MPa以上1.6MPa以下の圧力下、110℃以上160℃以下の温度で30分以上90分以下行うことが好ましい。
本発明によれば、第1のガラス基板に第1の接着シートを接着すると共に、第2のガラス基板に第2の接着シートを接着する接着構体製造工程を行った後、予備圧着工程および本圧着工程を行うことで、反射ムラが抑制された良好な外観を有する合わせガラスを製造することができる。
以下、本発明の合わせガラスの製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る合わせガラス1を示す断面図である。本発明に係る合わせガラス1は、第1のガラス基板2、第1の接着シート3、熱線反射フィルム4、第2の接着シート5、および第2のガラス基板6を有し、これらがこの順に積層されることにより構成されている。また、熱線反射フィルム4は、透明樹脂フィルム41の一方の主面に熱線反射膜42が形成されることにより構成されている。
図1は、本発明に係る合わせガラス1を示す断面図である。本発明に係る合わせガラス1は、第1のガラス基板2、第1の接着シート3、熱線反射フィルム4、第2の接着シート5、および第2のガラス基板6を有し、これらがこの順に積層されることにより構成されている。また、熱線反射フィルム4は、透明樹脂フィルム41の一方の主面に熱線反射膜42が形成されることにより構成されている。
図2は、本発明の製造方法を示す説明図である。本発明の製造方法は、第1のガラス基板2と第1の接着シート3とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第1の接着構体11とすると共に、第2のガラス基板6と第2の接着シート5とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第2の接着構体12とする接着構体製造工程と、第1の接着構体11、熱線反射フィルム4、および第2の接着構体12をこの順に重ね合わせて真空雰囲気下で加熱して予備圧着構体とする予備圧着工程と、予備圧着構体を加熱加圧して合わせガラス1とする本圧着工程とを有している。
本発明の製造方法は、特に予備圧着工程や本圧着工程に先立ち、接着構体製造工程を行うことを特徴としている。このようなものとすることで、表面がメラメラとした感じに反射して見える反射ムラ、いわゆるオレンジピールの発生が抑制された良好な外観を有する合わせガラス1を製造することができる。
すなわち、合わせガラス1の製造に用いられる第1の接着シート3や第2の接着シート5は、一般に熱収縮率が大きく、予備圧着工程や本圧着工程のような加熱を伴う工程で収縮しやすい。また、予備圧着工程や本圧着工程では、第1の接着シート3と第2の接着シート5との間に熱線反射フィルム4が配置されるために、第1の接着シート3や第2の接着シート5の収縮により熱線反射フィルム4が中心方向に引っ張られ、熱線反射フィルム4にうねりが発生しやすい。
本発明では、接着構体製造工程において、予備圧着工程及び本圧着工程の前にあらかじめ、第1のガラス基板2に第1の接着シート3を接着すると共に、第2のガラス基板6に第2の接着シート5を接着する。このようにすることで、予備圧着工程及び本圧着工程における加熱による、第1の接着シート3や第2の接着シート5の収縮を抑制することができる。すなわち、一般に第1のガラス基板2や第2のガラス基板6の熱収縮率は第1の接着シート3や第2の接着シート5の熱収縮率に比べて小さいことから、第1のガラス基板2に第1の接着シート3を接着し、また第2のガラス基板6に第2の接着シート5を接着することで、予備圧着工程及び本圧着工程における加熱による第1の接着シート3や第2の接着シート5の収縮を抑制することができる。
このようにして得られる第1の接着構体11や第2の接着構体12を用いて予備圧着工程や本圧着工程を行うことで、第1の接着シート3や第2の接着シート5が収縮することにより熱線反射フィルム4が中心方向に引っ張られることを抑制することができる。結果として、熱線反射フィルム4におけるうねりの発生を抑制することができ、反射ムラが抑制された良好な外観を有する合わせガラス1を製造することができる。
接着構体製造工程は、第1のガラス基板2と第1の接着シート3とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより、また第2のガラス基板6と第2の接着シート5とを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより行うことができる。具体的には、第1のガラス基板2と第1の接着シート3とを重ね合わせたもの、および第2のガラス基板6と第2の接着シート5とを重ね合わせたものを、それぞれ排気系に接続されたゴムバッグのような真空バッグに入れて加熱することにより行うことができる。
接着構体製造工程における加熱は、例えば100kPa以下の真空雰囲気下、90℃以上150℃以下の温度で15分以上50分以下行うことが好ましい。
加熱時の雰囲気圧力が100kPa以下である場合、第1のガラス基板2と第1の接着シート3との間、または第2のガラス基板6と第2の接着シート5との間の脱気を十分に行うことができ、最終的に得られる合わせガラス1は白濁等が発生せず、外観の優れたものとすることができる。
また、加熱時の温度が90℃以上の場合、あるいは時間が15分以上の場合、第1のガラス基板2と第1の接着シート3との接着、または第2のガラス基板6と第2の接着シート5との接着を十分に行うことができ、その後の予備圧着工程や本圧着工程における第1の接着シート3や第2の接着シート5の収縮を十分に抑制することができる。
一方、加熱時の温度は150℃以下、時間は50分以下であれば、第1のガラス基板2と第1の接着シート3との接着、および第2のガラス基板6と第2の接着シート5との接着を十分に行うことができ、これ以下とすることで、第1の接着シート3や第2の接着シート5の特性を維持でき、生産性に優れる。
接着構体製造工程における加熱は、第1のガラス基板2と第1の接着シート3との接着、および第2のガラス基板6と第2の接着シート5との接着を十分に行いつつ、また第1の接着シート3や第2の接着シート5の特性、生産性等の低下を抑制する観点から、100℃以上140℃以下の温度で20分以上40分以下行うことがより好ましい。
予備圧着工程は、主として部材間の脱気を目的として行うものであり、接着構体製造工程で得られた第1の接着構体11および第2の接着構体12と熱線反射フィルム4とを用い、これらを第1の接着構体11、熱線反射フィルム4、第2の接着構体12の順に重ね合わせて、真空雰囲気下で加熱することにより行うことができる。
予備圧着工程における加熱は、従来の予備圧着工程における加熱と略同様にして行うことができ、例えば第1の接着構体11、熱線反射フィルム4、および第2の接着構体12を重ね合わせた積層体を排気系に接続されたゴムバッグのような真空バッグに入れて行うことができる。予備圧着工程における加熱は、例えば100kPa以下の真空雰囲気下、90℃以上150℃以下の温度で時間20分以上60分以下行うことが好ましい。
加熱時の雰囲気圧力が100kPa以下である場合、第1の接着構体11または第2の接着構体12と熱線反射フィルム4との間の脱気を十分に行うことができ、最終的に得られる合わせガラス1に白濁等が発生せず、外観の優れたものとすることができる。
また、加熱時の温度が90℃以上の場合、あるいは時間が20分以上の場合、予備圧着を十分に行うことができる。一方、加熱時の温度は150℃程度、時間は60分程度もあれば、予備圧着を十分に行うことができ、これ以下とすることで、熱線反射フィルム4にクラック等が発生せず、また部材の特性を維持でき、生産性に優れる。
予備圧着工程における加熱は、予備圧着を十分に行いつつ、熱線反射フィルム4におけるクラック等の発生、部材の特性や生産性等の低下を抑制する観点から、100℃以上140℃以下の温度で30分以上50分以下行うことがより好ましい。
本圧着工程は、予備圧着構体を確実に接着して合わせガラス1とするために行うものであり、予備圧着構体を加熱加圧することにより行うことができる。本圧着工程における加熱加圧は、例えば予備圧着構体をオートクレーブに入れ、1MPa以上1.6MPa以下の圧力下、110℃以上160℃以下の温度で30分以上90分以下行うことが好ましい。
加熱時の圧力が1MPa以上、温度が110℃以上、または時間が30分以上の場合、本圧着を十分に行うことができる。一方、加熱時の圧力は1.6MPa程度、温度は160℃程度、時間は90分程度もあれば、本圧着を十分に行うことができ、これ以下であると熱線反射フィルム4にクラック等が発生せず、また部材の特性を維持でき生産性等が優れる。
本圧着工程における加熱加圧は、本圧着を十分に行いつつ、熱線反射フィルム4におけるクラック等の発生、部材の特性や生産性等の低下を抑制する観点から、1.1MPa以上1.5MPa以下の圧力下、120℃以上150℃以下の温度で40分以上80分以下行うことが好ましい。
合わせガラス1の製造に用いる各部材は、基本的に従来の合わせガラスと同様のものを用いることができる。すなわち、熱線反射フィルム4における透明樹脂フィルム41としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ナイロン、シクロオレフィンポリマー等からなるものを用いることができる。
これらの中でも、比較的に高強度であり、合わせガラス1を製造する際の損傷を抑制しやすいことから、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるものを用いることが好ましい。透明樹脂フィルム41の厚さは、必ずしも限定されるものではないが、一般に5μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上70μm以下である。
透明樹脂フィルム41の厚さが5μm以上であれば、熱線反射膜42の成膜の際の熱による変形が低減されたり、フィルムにある程度の剛性をもたせることができるためフィルムに折り目ができるなどの不具合がおきにくいので好ましい。また、200μm以下であれば、成形性が良好となり、合わせガラスにした際のエッジ部分のエアライン(フィルムエッジ部に入り込んだ空気が抜けず、白い線のように見える不具合)も発生しないことから好ましい。
本発明の製造方法は、特に透明樹脂フィルム41の厚さが100μm以下の場合、すなわち厚さが薄いために第1の接着シート3や第2の接着シート5の収縮による影響を受けやすい場合に、顕著な効果を発揮することができる。
熱線反射膜42は、光の干渉を利用して赤外領域(波長域:780nm〜10,000nm)の光を選択的に反射するものであり、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したもの、または酸化物層と金属層とを交互に積層したものとすることができる。
高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層したものについては、通常、高屈折率層と低屈折率層との合計した層数が3以上であることが好ましい。層数は、製造の手間やコスト等の観点から9層以下であることが好ましい。より好ましい層数は、5層以上7層以下である。
高屈折率層の厚さは、透明樹脂フィルム41から最も離れた層は、5nm以上25nm以下であることが好ましく、7nm以上20nm以下であることがより好ましい。透明樹脂フィルム41から最も離れた層以外の層においては、70nm以上150nm以下とすることが好ましく、80nm以上120nm以下とすることがより好ましい。
また、低屈折率層の厚さは、透明樹脂フィルム41から最も離れた層は、10nm以上50nm以下であることが好ましく、15nm以上35nm以下であることがより好ましい。透明樹脂フィルム41から最も離れた層以外の層においては、100nm以上200nm以下であることが好ましく、130nm以上170nm以下であることがより好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の厚さは、前記範囲内であると、反射色度が赤色に変化することが少なく、良好な遮熱性能が得られるので好ましい。
高屈折率層は、屈折率(波長550nmでの屈折率、以下同様)が1.9以上、特に1.9以上2.5以下の誘電体からなるものが好ましく、例えば酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化ハフニウム等の高屈折率材料の中から選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましい。
低屈折率層は、屈折率が1.5以下、特に1.2以上1.5以下の誘電体からなるものが好ましく、例えば酸化シリコン、およびフッ化マグネシウム等の低屈折率材料の中から選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましい。
一方、酸化物層と金属層とを交互に積層したものについては、透明樹脂フィルム41側から酸化物層と金属層とが交互に(2n+1)層(但し、nは1以上4以下の整数)積層されたものが好ましい。
酸化物層は、屈折率が1.7以上2.6以下、特に1.8以上2.6以下のものが好ましく、例えば酸化ビスマス、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等の金属酸化物を主成分とするもの、あるいはこれらの混合物が好ましい。
特に、酸化亜鉛を主成分とするもの、または酸化インジウムを主成分とするものが好ましい。酸化亜鉛を主成分とするものとしては、酸化亜鉛のみからなるもの、またはスズ、アルミニウム、クロム、チタン、シリコン、ホウ素、マグネシウム、インジウムおよびガリウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有する酸化亜鉛が挙げられる。また、酸化インジウムを主成分とするものとしては、スズを含有する酸化インジウムが挙げられる。
これらの中でも、金属層を安定的に、かつ高い結晶性を有しながら形成できる点から、酸化亜鉛を主成分とするものが好ましく、特にアルミニウムおよび/またはチタンを含有する酸化亜鉛が好ましい。なお、各酸化物層は、単層であってもよいし、多層であってもよい。
金属層は、銀を主成分とするものであり、銀のみからなるもの、または銀を主成分とする合金からなるものである。金属層における銀以外の構成成分は、例えばパラジウム、金、銅等であり、これら銀以外の構成成分の含有量は合計で0.3原子%以上10原子%以下であることが好ましい。
酸化物層や金属層の厚さは、全体の層数や各層の構成材料によっても異なるが、例えば各酸化物層は5nm以上100nm以下、各金属層は5nm以上20nm以下、全ての酸化物層と金属層とを合わせた全体の層厚は50nm以上400nm以下、より好ましくは150nm以上300nm以下である。
このような熱線反射膜42は、公知の成膜方法を適用して形成することができ、例えばマグネトロンスパッタリング法、電子線蒸着法、真空蒸着法、化学蒸着法等により形成することができる。
第1の接着シート3、第2の接着シート5は、通常、熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂組成物をシート状に成形したものである。第1の接着シート3、第2の接着シート5の厚さは必ずしも限定されるものではないが、例えば0.1mm以上1.5mm以下が好ましく、0.2mm以上1.0mm以下がより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、および遮音性等の諸特性のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適なものとして挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、例えば可塑剤の添加により可塑化されたものである。その他の可塑化樹脂についても同様である。
ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えばポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」という)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール樹脂、PVAとn−ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」という)等が挙げられ、特に透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、および遮音性等の諸特性のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリビニルアセタール系樹脂の合成に用いられるPVAとしては、一般に平均重合度が200以上5000以下であるものが好ましく、500以上3000以下であるものがより好ましい。また、ポリビニルアセタール系樹脂としては、一般にアセタール化度が40モル%以上85モル%以下であるものが好ましく、50モル%以上75モル%以下であるものがより好ましく、また残存アセチル基量が30モル% 以下であるものが好ましく、0.5モル%以上24モル%以下であるものがより好ましい。
可塑剤としては、例えば一塩基性有機酸エステル系、多塩基性有機酸エステル系等の有機酸エステル系可塑剤、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の添加量は、熱可塑性樹脂の平均重合度、ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度やアセタール化度および残存アセチル基量等によっても異なるが、熱可塑性樹脂100質量部に対し、10質量部以上80質量部以下であることが好ましい。可塑剤の添加量が10質量部未満の場合、熱可塑性樹脂の可塑化が不十分となり、成形が困難となることがある。また、可塑剤の添加量が80質量部を超える場合、接着層3、5の強度が不十分となることがある。
なお、熱可塑性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂の他、例えば接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上を含有させることができる。
第1のガラス基板2、第2のガラス基板6としては、公知のガラス板を用いることができ、例えばクリアガラス板、グリーンガラス板、UVグリーンガラス板等の無機透明ガラス板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板等の有機透明ガラス板を用いることができる。
第1のガラス基板2、第2のガラス基板6の厚さは、必ずしも限定されるものではないが、1mm以上4mm以下が好ましく、1.8mm以上2.5mm以下がより好ましい。なお、ガラス基板2、6には、撥水機能、親水機能、防曇機能等を付与するコーティングが施されていてもよい。
このようにして製造される合わせガラス1は、自動車、鉄道、船舶等に好適に用いることができ、特に自動車のフロントガラス等に好適に用いることができる。本発明の合わせガラス1は、表面の反射ムラが抑制された良好な外観を有することから、自動車のフロントガラス等に好適に用いることができる。
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に説明する。
(実施例1)
合わせガラスの製造に先立ち、まず透明樹脂フィルムの一方の主面に高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された熱線反射膜が形成された熱線反射フィルムを製造した。まず、透明樹脂フィルムとして、片面のみに易接着処理が施されたPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100、厚さ50μm)を用意した。そして、PETフィルムを真空チャンバーに投入し、その易接着処理が施されていない主面上に、マグネトロンスパッタリング法により高屈折率層となるNb2O5層と低屈折率層となるSiO2層とを交互に合わせて9層積層して熱線反射膜を形成し、熱線反射フィルムを製造した。
合わせガラスの製造に先立ち、まず透明樹脂フィルムの一方の主面に高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された熱線反射膜が形成された熱線反射フィルムを製造した。まず、透明樹脂フィルムとして、片面のみに易接着処理が施されたPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100、厚さ50μm)を用意した。そして、PETフィルムを真空チャンバーに投入し、その易接着処理が施されていない主面上に、マグネトロンスパッタリング法により高屈折率層となるNb2O5層と低屈折率層となるSiO2層とを交互に合わせて9層積層して熱線反射膜を形成し、熱線反射フィルムを製造した。
なお、各Nb2O5層は、NBOターゲット(AGCセラミック社製、商品名:NBO)を用いて、アルゴンガスに5体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しつつ、0.1Paの圧力で周波数20kHz、電力密度5.1W/cm2、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行って形成した。
また、各SiO2層は、Siターゲットを用いてアルゴンガスに27体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しつつ、0.3Paの圧力で周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行って形成した。
各Nb2O5層、SiO2層の厚さは、成膜時間を変更することにより調整し、PETフィルム側から順にNb2O5層(95nm)/SiO2層(153nm)/Nb2O5層(95nm)/SiO2層(153nm)/Nb2O5層(95nm)/SiO2層(153nm)/Nb2O5層(95nm)/SiO2層(25nm)/Nb2O5層(10nm)とした。
次に、厚さ2mmの一対のガラス基板上にそれぞれ接着シートとして厚さ0.38mmのPVBシート(積水化学工業株式会社製)を重ね合わせた後、これらをそれぞれ真空バッグに入れ、圧力計の表示が100kPa以下となるように脱気した後、120℃で30分間の加熱処理を行い、ガラス基板上にPVBシートが接着された一対の接着構体を製造した(接着構体製造工程)。
そして、先に製造した熱線反射フィルムの両主面に一対の接着構体を重ね合わせて積層体とした。なお、一対の接着構体は、それぞれ接着シート側を熱線反射フィルムに向けて重ね合わせた。この積層体を真空バッグに入れ、圧力計の表示が100kPa以下となるように脱気し、120℃で40分間の加熱処理を行って予備圧着構体とした(予備圧着工程)。さらに、予備圧着構体をオートクレーブに入れ、1.3MPaの圧力下、135℃で60分間の加熱加圧処理を行って合わせガラスを製造した(本圧着工程)。
(実施例2)
実施例1の合わせガラスの製造において、PETフィルム上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された熱線反射膜を形成する代わりに、酸化物層と金属層とを交互に合わせて7層積層して熱線反射膜を形成すると共に、この熱線反射膜上に保護層を形成し、熱線反射フィルムを製造した。この熱線反射フィルムを用いて、実施例1と同様に予備圧着工程、本圧着工程を行って合わせガラスを製造した。
実施例1の合わせガラスの製造において、PETフィルム上に高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層された熱線反射膜を形成する代わりに、酸化物層と金属層とを交互に合わせて7層積層して熱線反射膜を形成すると共に、この熱線反射膜上に保護層を形成し、熱線反射フィルムを製造した。この熱線反射フィルムを用いて、実施例1と同様に予備圧着工程、本圧着工程を行って合わせガラスを製造した。
なお、各酸化物層は、酸化チタンを10質量%添加した酸化亜鉛を焼結することにより作製したターゲットを用いて、アルゴンガスに5体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しつつ、0.1Paの圧力で周波数20kHz、電力密度3.8W/cm2、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行うことにより形成した。
また、各金属層は、金を0.25質量%添加した銀を主成分とする銀合金ターゲットを用いて、アルゴンガスを導入しながら、0.1Paの圧力で周波数20kHz、電力密度2.5W/cm2、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行うことにより形成した。
さらに、保護層は、ガリウム、インジウム、およびスズの酸化物ターゲット(AGCセラミックス株式会社製、商品名:GITターゲット)を用いてアルゴンガスに5体積%の酸素ガスを混合した混合ガスを導入しながら、0.1Paの圧力で周波数20kHz、電力密度2.5W/cm2、反転パルス幅5μsecのパルススパッタを行うことにより形成した。
各酸化物層、金属層、保護層の厚さは、成膜時間を変更することにより調整し、PETフィルム側から順に酸化物層(35nm)/金属層(10nm)/酸化物層(70nm)/金属層(12nm)/酸化物層(70nm)/金属層(10nm)/酸化物層(35nm)/保護層(5nm)とした。
(実施例3)
実施例1の合わせガラスの製造において、透明樹脂フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用いて合わせガラスを製造した。
実施例1の合わせガラスの製造において、透明樹脂フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用いて合わせガラスを製造した。
(実施例4)
実施例1の合わせガラスの製造において、透明樹脂フィルムとして厚さ188μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用いて合わせガラスを製造した。
実施例1の合わせガラスの製造において、透明樹脂フィルムとして厚さ188μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用いて合わせガラスを製造した。
(比較例1)
実施例1の合わせガラスの製造において、接着構体製造工程を行わずに、直接、予備圧着工程、本圧着工程を行って合わせガラスを製造した。すなわち、実施例1と同様の熱線反射フィルム、一対のガラス基板、および一対の接着シートを用い、これらをガラス基板、接着シート、熱線反射フィルム、接着シート、ガラス基板の順に重ね合わせて積層体とした。この積層体を真空バッグに入れ、圧力計の表示が100kPa以下となるように脱気し、120℃で40分間の加熱処理を行って予備圧着構体とした(予備圧着工程)。さらに、予備圧着構体をオートクレーブに入れ、1.3MPaの圧力下、135℃、60分間の加熱加圧処理を行って合わせガラスを製造した(本圧着工程)。
実施例1の合わせガラスの製造において、接着構体製造工程を行わずに、直接、予備圧着工程、本圧着工程を行って合わせガラスを製造した。すなわち、実施例1と同様の熱線反射フィルム、一対のガラス基板、および一対の接着シートを用い、これらをガラス基板、接着シート、熱線反射フィルム、接着シート、ガラス基板の順に重ね合わせて積層体とした。この積層体を真空バッグに入れ、圧力計の表示が100kPa以下となるように脱気し、120℃で40分間の加熱処理を行って予備圧着構体とした(予備圧着工程)。さらに、予備圧着構体をオートクレーブに入れ、1.3MPaの圧力下、135℃、60分間の加熱加圧処理を行って合わせガラスを製造した(本圧着工程)。
(比較例2)
比較例1の合わせガラスの製造において、透明樹脂フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用いて合わせガラスを製造した。
比較例1の合わせガラスの製造において、透明樹脂フィルムとして厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:コスモシャイン A4100)を用いて合わせガラスを製造した。
次に、実施例および比較例の合わせガラスについて、目視により反射ムラ(オレンジピール)の評価を行った。表1に、合わせガラスの構成と共に、反射ムラの評価結果を示す。なお、表中、反射膜の種類の欄における「A」は反射膜が高屈折率層と低屈折率層との積層体を示し、「B」は反射膜が酸化物層と金属層との積層体を示す。また、反射ムラ(オレンジピール)の欄における「×」は反射ムラが発生したことを示し、「△」は反射ムラが発生したが、わずかであることを示し、「○」は反射ムラが発生しなかったことを示す。
また、合わせガラスにした際のエッジ部分のエアライン(フィルムエッジ部に入り込んだ空気が抜けず、白い線のように見える不具合)の発生の有り無しを目視で観察した。表1のエアラインの欄における「×」はエアラインが発生したことを示し、「○」はエアラインが発生しなかったことを示す。
表1から明らかなように、接着構体製造工程を経ずに作製された比較例の合わせガラスについては、PETフィルムの厚さが小さくなるにつれて反射ムラの発生が多くなることが認められた。一方、接着構体製造工程を経て作製された実施例の合わせガラスについては、反射膜の種類やPETフィルムの厚さによらず、反射ムラの発生が抑制されることが認められた。これらの結果から、本発明は特にPETフィルムの厚さが100μm以下の場合に顕著な効果を有することが分かる。
1…合わせガラス、2…第1のガラス基板、3…第1の接着シート、4…熱線反射フィルム、5…第2の接着シート、6…第2のガラス基板、11…第1の接着構体、12…第2の接着構体、41…透明樹脂フィルム、42…熱線反射膜
Claims (5)
- 第1のガラス基板、第1の接着シート、透明樹脂フィルムの一方の主面に熱線反射膜が形成された熱線反射フィルム、第2の接着シート、および第2のガラス基板を有し、これらがこの順に積層された合わせガラスの製造方法であって、
前記第1のガラス基板と前記第1の接着シートとを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第1の接着構体とすると共に、前記第2のガラス基板と前記第2の接着シートとを重ね合わせて真空雰囲気下で加熱することにより接着して第2の接着構体とする接着構体製造工程と、
前記第1の接着構体、前記熱線反射フィルム、および前記第2の接着構体をこの順に、かつ前記第1の接着シートと前記第2の接着シートが前記熱線反射フィルムと接するように重ね合わせて真空雰囲気下で加熱して予備圧着構体とする予備圧着工程と、
前記予備圧着構体を加熱加圧して合わせガラスとする本圧着工程と
を有することを特徴とする合わせガラスの製造方法。 - 前記透明樹脂フィルムの厚さが10μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記接着構体製造工程における加熱は、100kPa以下の真空雰囲気下、90℃以上150℃以下の温度で15分以上50分以下行うことを特徴とする請求項1または2記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記予備圧着工程における加熱は、100kPa以下の真空雰囲気下、90℃以上150℃以下の温度で20分以上60分以下行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の合わせガラスの製造方法。
- 前記本圧着工程における加熱加圧は、1MPa以上1.6MPa以下の圧力下、110℃以上160℃以下の温度で30分以上90分以下行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の合わせガラスの製造方法。
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WO2013058384A1 (ja) * | 2011-10-21 | 2013-04-25 | 旭硝子株式会社 | ガラス積層体 |
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