JP2011190325A - 異形ウレタン系樹脂粒子、その製造方法及び光拡散フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】表面に凹凸部を有する異形ウレタン系樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物由来の重合体成分を含み、非反応性有機溶媒を実質的に含まず、かつ表面に凹凸部を有することを特徴とする異形ウレタン系樹脂粒子により上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、異形ウレタン系樹脂粒子、その製造方法及び光拡散フィルムに関する。更に詳しくは、その製造工程において非反応性有機溶媒を用いない異形ウレタン系樹脂粒子、その製造方法及び光拡散フィルムに関する。
(メタ)アクリルウレタン樹脂粒子等のウレタン系樹脂粒子は、プラスチック、塗料、接着剤、化粧品、光学フィルム等のフィラーとして用いることができる。例えば、塗料のフィラーとして用いた場合に、(メタ)アクリルウレタン樹脂粒子等のウレタン系樹脂粒子は触感改良剤、艶消し剤、意匠性付与着色剤等として機能して、塗膜に柔らか味やソフト感等を与えることができる。
(メタ)アクリルウレタン樹脂粒子の製造方法としては、懸濁安定剤を含む水中にトルエンのような非反応性有機溶媒に溶解、希釈したポリイソシアネートプレポリマーと(メタ)アクリレート単量体を混合し、粒子状に分散させて反応させることで粒子を得る方法が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1による方法では、懸濁安定剤の種類、添加量等を調整することにより、粒子径を調整することができる。従って、この方法によれば、用途に応じて、適切な粒子径を持った(メタ)アクリルウレタン樹脂粒子を製造することができる。
特開平4−185645号公報
しかし、特許文献1においては、末端にイソシアネート基を有するジイソシアネートとポリオールの反応物であるポリイソシアネートプレポリマーの粘度が高いため、予めトルエンのような非反応性有機溶媒に溶解、希釈して粘度を低下させるという調整工程が別途必要である。また、溶剤を回収する工程も必要となる。そのため、製造工程に調整工程及び溶剤回収工程という余分な工程が加わることとなり、生産性の低下及び生産コストの増加という課題が生じていた。また、得られたウレタン系樹脂粒子において、残留溶剤の影響により、変色や臭気等の品質劣化が生ずるという課題が生じていた。更に、光拡散性等種々の付加価値を持たせるべく、球形以外の他の形状の粒子の提供が望まれていた。
本発明の発明者等は、活性水素(メタ)アクレート単量体を含むビニル単量体、多官能ラジカル重合性単量体、多官能イソシアネートを所定の割合で含む重合性組成物を水性媒体中で反応させることで、非反応性有機溶媒を実質的に含まず、かつ表面に凹凸部を有する異形ウレタン系樹脂粒子が得られることを見出して本発明に至った。
かくして本発明によれば、活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物由来の重合体成分を含み、非反応性有機溶媒を実質的に含まず、かつ表面に凹凸部を有することを特徴とする異形ウレタン系樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、活性水素(メタ)アクレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物、ラジカル重合開始剤及びウレタン硬化触媒とを含む重合性組成物を、懸濁安定剤の存在下かつ非反応性有機溶媒の不存在下、水性媒体中で重合を行うことで表面に凹凸部を有する異形ウレタン系樹脂粒子を得ることを特徴とする異形ウレタン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
更に、本発明によれば、基材フィルムとその上の光拡散層とを有し、前記光拡散層が、上記の異形ウレタン系樹脂粒子とそれを分散させたバインダー樹脂の層とから構成される光拡散フィルムが提供される。
本発明による異形ウレタン系樹脂粒子は、適度な硬さ、弾力性及びソフトフィール性を兼ね備え、かつ残留溶剤による品質の劣化もないので、有機フィラーとして光拡散フィルム、化粧品関係の添加剤、塗料、プラスチック、接着剤等の用途に好適に用いることができる。また、熱可塑性のタイプのウレタン系樹脂粒子は、ホットメルト接着剤として好適に用いることができる。
また、活性水素(メタ)アクリレート単量体が、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有する場合、硬さ、弾力性及びソフトフィール性において更に優れた異形ウレタン系樹脂粒子が得られる。
また、多官能ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又は芳香族系単量体からなる場合、光拡散性において更に優れた異形ウレタン系樹脂粒子が得られる。
また、多官能イソシアネートが、分子内に3個以上のイソシアネート基を有する、ビュレット型、イソシアヌレート型又はアダクト型のイソシアネートである場合、硬さ、耐候性及びソフトフィール性において更に優れた異形ウレタン系樹脂粒子が得られる。
また、本発明による異形ウレタン系樹脂粒子の製造方法により、ポリイソシアネートプレポリマーを別途調整する工程が必要なく、また、粘調なポリイソシアネートプレポリマーの粘度調整に使用される非反応性有機溶媒の回収工程という余分な工程を経ずに、低コストで生産性よく異形ウレタン系樹脂粒子を製造することができる。
また、懸濁安定剤が、難水溶性無機塩である場合、更に低コストで生産性よく異形ウレタン系樹脂粒子を製造することができる。
また、本発明による光拡散フィルムは、表面に凹凸部を有する粒子が光拡散層に分散されていることにより、高輝度で光拡散性に優れている。
本発明の実施例1による異形ウレタン系樹脂粒子のSEM像である。 本発明の実施例4による異形ウレタン系樹脂粒子の断面のTEM像である。 本発明の実施例5による異形ウレタン系樹脂粒子のSEM像である。
本発明による異形ウレタン系樹脂粒子(以下、単に異形粒子ともいう)は、活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物由来の重合体成分を含んでいる。また、異形粒子は、非反応性有機溶媒を実質的に含まず、かつ表面に凹凸部を有している。(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを示す。
本発明において、異形とは表面に凹凸部を有するものであって、真球状でないもの全てを示す。表面に凹凸部を有する粒子の一例としては、図1又は図3に示されるように表面に複数の凹凸部を有するものがあるが、本発明の異形粒子はこれらのみに限定されるものではない。本発明の異形粒子は、吸油量が75ml/100g以上であり、球状粒子と比べて吸油量が大きい。なお、吸油量の測定方法については、実施例で述べる。
活性水素(メタ)アクリレート単量体とは、分子内に1個以上の活性水素を有する(メタ)アクリレート単量体のことをいう。粒子は通常懸濁重合により得られるが、本発明において、活性水素(メタ)アクリレート単量体は重合系で希釈溶剤としても働く。そのため、比較的粘稠の多官能イソシアネートと混合することで、単量体混合物の粘度調整ができる。その結果、重合時における単量体混合物の懸濁液の粘度が高くなることによる、取り扱い難さを解消することができる。従って、本発明においてトルエン等の非反応性有機溶媒は用いられない。
なお、非反応性有機溶媒の非反応とは、ビニル単量体、多官能イソシアネートに含まれるビニル基やイソシアネート基との重合性を有しないという意味である。具体的な非反応性有機溶媒としては、例えば、ブタン、ヘキサン、シクロヘキサン、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、イソオクタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等が挙げられる。
活性水素(メタ)アクリレート単量体としては、分子内に1個以上の活性水素を有するものであれば特に限定されるものではない。ここで活性水素とは、ヒドロキシル基、アミノ基(1級又は2級)、カルボキシル基等のイソシアネート基と反応し得る水素原子を意味する。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類又は2−アミノエチル(メタ)アクリレート等の−NH2又は−NH基を含有した(メタ)アクリル酸アミノエステル類、メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基を含有した(メタ)アクリル酸類等が挙げられる。
また、ビニル単量体には、活性水素(メタ)アクリレート単量体の他に、活性水素非含有(メタ)アクリレート単量体が用いられてもよい。活性水素非含有(メタ)アクリレート単量体とは、分子内にイソシアネート基と反応し得る水素原子(活性水素)を与える基を含まない(メタ)アクリレート単量体のことを言う。
活性水素非含有(メタ)アクリレート単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル単量体における活性水素(メタ)アクリレート単量体の割合は、ビニル単量体100重量部中の5〜95重量部が好ましい。より好ましくは、10〜90重量部である。
(メタ)アクリレート単量体以外の他のビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタリン塩、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。
耐候性に優れることから、活性水素非含有(メタ)アクリレート単量体が好ましい。
多官能ラジカル重合性単量体とは、ラジカル重合性二重結合を二つ以上含む単量体を指す。多官能ラジカル重合性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシビバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系多官能単量体、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びこれらの誘導体である芳香族多官能ビニル単量体が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル系多官能単量体が好ましい。これらの単量体は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
異形粒子には、活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物由来の重合体成分が含まれる。混合物に含まれる多官能ラジカル重合性単量体の量は、5〜200重量部であることが、より好ましい。2重量部未満の場合及び250重量部を超える場合には、粒子の形状が表面に凹凸部を有する異形状から球状になってしまうことがある。
多官能イソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、芳香族、鎖状脂肪族又は脂環式の2官能イソシアネート、3官能以上のイソシアネート等が挙げられる。
2官能イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルー4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル等が挙げられる。これらのうち、1種のみで用いても、又は2種以上を併用してもよい。
3官能以上のイソシアネートとしては、一般的に使用されるジイソシアネートを3量体化したイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネートや、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI(ジフェニルメタン・ジ・イソシアネート)等が挙げられる。これらのうち、1種のみで用いても、又は2種以上を併用してもよい。
異形粒子に含まれる混合物由来の重合体成分において、混合物に含まれる多官能イソシアネートの量は、活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、10〜400重量部である。好ましくは、20〜300重量部である。混合物に含まれる多官能イソシアネートの量が10重量部未満の場合、ウレタンの触感が得られない場合がある。一方、400重量部より多い場合、異形粒子の耐溶剤性が低くなる場合があり、また、異形粒子が一次粒子として得られ難い場合がある。
なお、異形粒子中のビニル単量体、多官能ラジカル重合性単量体及び多官能イソシアネート混合物由来の重合体成分の含有量と、対応する単量体の使用量とは、ほぼ一致している。
本発明においては、異形粒子の製造工程に希釈のための溶剤として非反応性有機溶媒を用いないので、得られる異形粒子は実質的に非反応性有機溶媒を含まない。仮に、非反応性有機溶媒が含まれる場合、それは異形粒子製造のために調達する原料(の製造時に用いられたもの)に由来するものであると考えられる。なお、得られる異形粒子が実質的に非反応性有機溶媒を含まないことは、ヘッドスペースサンプラ付ガスクロマトグラフ(HTA社製:ヘッドスペースオートサンプラHT200H、島津製作所社製:ガスクロマトグラフGC−18A)による非反応性有機溶媒の濃度測定値が、(検出限界値である)1ppm以下であることにより示される。
異形ウレタン系樹脂粒子を得るための重合性組成物を重合する方法としては、公知の重合方法、例えば懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等を用いることができる。以下懸濁重合法による異形ウレタン系樹脂粒子の製造方法の一例について説明するが、本発明は、この製造方法のみに限定されるものではない。
活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体、多官能ラジカル重合性単量体、多官能イソシアネート、ラジカル重合開始剤、ウレタン硬化触媒及び任意に他の単量体を添加、混合することにより重合性組成物が得られる。得られた重合性組成物は、水系分散媒に懸濁される。ここで、重合性組成物100重量部に対して、水系分散媒は100〜1000重量部使用するのが好ましい。なお、水系分散媒としては、水、又は水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合物が挙げられる。
懸濁安定剤は、重合性組成物の添加前に水系分散媒へ添加することが好ましい。懸濁重合は、水系分散媒を、例えば40〜100℃、好ましくは45〜90℃の温度に加熱することにより行うことができる。懸濁重合が完了した後、得られたウレタン系樹脂粒子を水系分散媒中より分離、洗浄、乾燥した後、必要に応じて分級工程を経て、所望粒径の異形ウレタン系樹脂粒子を得ることができる。
懸濁安定剤としては、目的とする異形ウレタン系樹脂粒子が得られるものであれば何ら制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール等の高分子型安定剤、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等の難水溶性無機塩が挙げられる。なかでも、重合終了後に系のpHを調整することにより容易に溶解し、除去可能な無機塩を用いるのがよい。例えば、第三リン酸カルシウムや複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムを使用すると、目的とする異形ウレタン系樹脂粒子をより安定的に得ることができるため好ましい。
懸濁安定剤は、得られる異形ウレタン系樹脂粒子の粒子径が所定の大きさになるようにその組成や使用量を適宜調節して使用される。懸濁安定剤の添加量は、重合性組成物100重量部に対して、0.05〜30重量部が好ましい。より好ましくは0.1〜20重量部である。
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の添加量は、活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましい。特に、0.3〜5重量部が好ましい。
ウレタン硬化触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、DBU[1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7]、DBUフェノール塩、DBUオクチル酸塩、DBUギ酸塩等のDBU系、モノアミン(トリエチルアミン等)、ジアミン(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等)、トリアミン(テトラメチルグアニジン等)、環状アミン(トリエチレンジアミン等)、アルコールアミン(ジメチルアミノメタノール等)、エーテルアミン[ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等]等のアミン系、Sn系(ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等)、Pb系(オクチル酸鉛等)、Zn系(オクチル酸亜鉛等)、Ti系(オクチル酸チタン、チタンテトラブトキシド、チタンアセチルアセトンキレート等)、Zr系(ステアリル酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムアセチルアセトンキレート等)等の有機金属化合物、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等のイミダゾール系が挙げられる。
ウレタン硬化触媒の添加量は、多官能イソシアネート100重量部に対して0.001〜50重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜10重量部である。添加量が0.001重量部未満だと、付加反応を促進できない場合がある。一方、50重量部を超えると、後の(懸濁重合等の)重合工程において容易に重合反応を制御できなくなるため、粒子径を容易に調整できない場合がある。
水系分散媒には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤が添加されてもよい。界面活性剤の添加量は、重合性組成物100重量部に対して、0.002〜10重量部が好ましい。より好ましくは0.005〜5重量部である。
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
また、上記重合工程において水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤が用いられてもよい。
重合完了後、異形ウレタン系樹脂粒子は、必要に応じて遠心分離されて水性媒体が除去され、水及び溶剤で洗浄された後、乾燥、単離される。本発明で行われる懸濁重合により、得られる異形ウレタン系樹脂粒子の水系分散媒からの単離方法は、特に限定されるものではないが、公知の方法として例えば、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法又は凍結乾燥法が挙げられる。
得られる異形ウレタン系樹脂粒子は、適度な硬さ、弾力性及びソフトフィール性を兼ね備え、また希釈溶剤として非反応性有機溶媒を使用しないので品質の劣化もない。このような粒子は、有機フィラーとして光拡散フィルム、化粧品関係の添加剤、塗料、プラスチック、接着剤等の用途に好適に用いることができる。また、熱可塑性のタイプのウレタン系樹脂粒子は、ホットメルト接着剤として好適に用いることができる。
上記の製造方法又はその他の製造方法により得られる異形ウレタン系樹脂粒子は、粒子内でビニル重合体からなる相とウレタン系重合体からなる相との相分離構造を有する。この構造には、粒子内で主体となるマトリックス相とマトリックス相内に存在する分散相からなる海島構造、地層のような交差積層状構造等がある。ビニル重合体とウレタン系重合体は、それぞれマトリックス相と分散相に成り得る。また、それぞれの相は、重合体単独であっても、少量のもう一方の重合体成分との混合体であってもよい。マトリックス相及び分散相からなる海島構造の形態としては、マトリックス相内に分散相が粒状に存在するもの(図2)や不定形状のもの等がある。
分散相の平均最長径(r)は、概ね、異形ウレタン系樹脂粒子の平均粒子径(R)/500≦(r)≦異形ウレタン系樹脂粒子の平均粒子径(R)/10の範囲となる。なお、最長径とは、分散相が球状ではなく不定形状をしている場合、分散相が九十九折状等の重ね合わさった形状をしている場合(重ね合わさる層の端部から反対側端部までの距離が粒子径を超える場合)等においては、分散相の輪郭面上の2点間で、その2点間を結ぶ直線距離が最大となる長さを示す。
(光拡散フィルムの製造)
上記異形ウレタン系樹脂粒子を用いた光拡散フィルムの製造方法の一例を以下に述べるが、この方法のみに限定されるものではない。
上記の製造方法又はその他の製造方法により得られた異形ウレタン系樹脂粒子をバインダー樹脂及び溶剤とともに混合・撹拌して光拡散フィルム用樹脂組成物を調整する。
バインダー樹脂としては、透明性、樹脂微粒子分散性、耐光性、耐湿性及び耐熱性等の要求される特性に応じて、当該分野において使用されるものであれば特に限定されるものではない。バインダー樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、メラミン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル系樹脂等の変性シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、熱可塑性でもよいし、熱硬化性樹脂、温気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。
また、上記の他に合成ゴムや天然ゴム等の有機系バインダー樹脂や、無機系結着剤等を用いることもできる。有機系バインダー樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。無機系結着剤のバインダー樹脂としては、シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド及びそれらの(加水分解)縮合物ならびにリン酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
このようなバインダー樹脂は、光拡散フィルム用樹脂組成物の耐久性を向上させる観点から、架橋反応により架橋構造を形成できる硬化性樹脂が好ましい。バインダー樹脂は、種々の硬化条件で硬化させることができる。硬化のタイプとしては、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線又は電子線硬化型等を採用できる。
光拡散フィルム用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、含有することによって、後述する基材フィルムへの塗工が容易になるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤及びジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
また、光拡散フィルム用樹脂組成物は、硬化剤、架橋剤、硬化触媒等の架橋剤成分を含有してもよい。光拡散フィルム用樹脂組成物に架橋剤成分を含有させることにより、バインダー樹脂中の重合体を架橋剤成分によって架橋できる。架橋剤成分の使用量、添加及び分散方法等については特に限定されない。
更に、光拡散フィルム用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、顔料、染料、可塑剤、重合安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いられても、また2種以上が併用されてもよい。
光拡散フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、前述の光拡散フィルム用樹脂組成物の層を塗布等の手段により形成することにより得られる。塗布方法としては、ロールコート法、スプレーコーティング法等各種の方法により行われるが特に限定されるものではない。
基材フィルムの材質としては、透明性を有するものであれば特に限定されるものではなく。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。基材フィルムの厚さは、5〜300μmの範囲が好ましい。5μmより薄い場合、塗工、印刷、二次加工時の取り扱いが困難となり、作業性が低下することがある。一方、300μmより厚い場合は、基材そのものの可視光透過率が低下し、バックライトユニットの輝度を低下させてしまうことがある。基材フィルムの表面のうち少なくとも一方の面には、光拡散フィルム用樹脂組成物の層との密着性を向上させるため、易接着処理剤を塗布する、あるいはコロナ処理を施す等、易接着処理が施されていればより好ましい。
前述の製造方法により得られた光拡散フィルムは、ヘイズ値が好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。なお、ヘイズ値は、日本電色工業社製 NDH−2000を使用してJISK7136に準拠した測定法、又は日本電色工業社製 NDH−1001DPを使用してJISK7105に準拠した測定法等により測定できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、平均粒子径の測定方法、粒子断面の観察方法、粒子内における分散相の平均最長径の測定方法、含まれる非反応性有機溶媒の測定方法、吸油量の測定方法、光拡散フィルムの評価方法について説明する。
(平均粒子径の測定方法)
ウレタン系樹脂粒子0.1gとノニオン系界面活性剤(花王社製:レオドールTW−L120)0.3%水溶液10mlを試験管に投入する。これをタッチミキサー(ヤマト科学社製:TOUCHMIXER MT−31)及び超音波洗浄器(ULTRASONIC CLEANER VS−150)を用いて予備分散させる。これを本体備え付けのISOTONII(ベックマンコールター社製:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く撹拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次に、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製:測定装置)本体にアパチャーをセットし、Current、Gain、Polarityをアパチャーサイズに合わせた所定の条件で測定を行う。測定中は気泡が入らない程度にビーカー内を緩く撹拌しておき、樹脂粒子を10万個測定した点で測定を終了する。体積加重の平均径(体積%モードの算術平均径:体積メヂアン径)を樹脂粒子の平均粒子径として算出する。使用するアパチャーの細孔径サイズは、100μmのものを用いる。
(粒子表面の凹凸の有無の観察方法)
走査型電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−6360LV)を用いて、倍率500〜5000倍で任意の樹脂粒子を観察して、樹脂粒子表面の凹凸の有無を観察する。
(粒子断面の観察方法)
エポキシ樹脂にウレタン系樹脂粒子を埋設した後、エポキシ樹脂を硬化させて、粒子含有エポキシ樹脂片を作製する。この粒子含有エポキシ樹脂片に四酸化ルテニウム染色を施したうえで、超薄切片を作製して透過型電子顕微鏡(日立製作所社製:H−7600)にて断面を観察し、相分離構造の有無及びその形状について観察する。
(粒子内における分散相の平均最長径(r)の測定方法)
分散相の平均最長径(r)は、透過型電子顕微鏡(日立製作所社製:H−7600)を用い、倍率500〜10000倍で任意のウレタン系樹脂粒子の断面を観察し、分散相の最長径を20個測定して、これらを平均した値を算出する。
(含まれる非反応性有機溶媒の測定方法)
20mlバイヤル管中に、ウレタン系樹脂0.1gと125ppmジエチルベンゼン入りジメチルホルムアミド溶液1mlを加え、24時間放置した。その後、バイヤル管をヘッドスペースサンプラ(HTA社製:HT200H)に設置し、90℃で加熱を1時間行った。バイヤル管中の空気層2mlをガスクロマトグラフ(島津製作所社製:GC−18A)に注入し、含まれる非反応性有機溶媒(トルエン等)を定量する。
測定装置:ヘッドスペースサンプラ付ガスクロマトグラフ(HTA社製:ヘッドスペースオートサンプラHT200H、島津製作所社製:ガスクロマトグラフGC−18A)
使用カラム:ZB−WAX(0.25μm×0.25mmΦ×30m)(phenomenex社製)
検出器:PID
測定条件:カラム温度(60℃で3分間、20℃/分で100℃まで昇温、40℃/分で220℃まで昇温、220℃で30秒間)、注入口温度(150℃)、検出器温度(250℃)、カラム流量(1.6ml/min(ヘリウムガスを使用))
(吸油量の測定方法)
平滑なガラス板の上に樹脂粒子約1gを精秤し(W)、ビュレットよりアマニ油を滴下し、金属製のヘラで練り込む。これを繰り返して、最後にヘラで押さえた時にアマニ油がにじみ出す直前のアマニ油の滴下量(V)を測定する。下記の式より吸油量を算出する。
[式] 吸油量=100×V/W(ml/100g)
(光拡散フィルムの評価方法)
光拡散フィルムは、全光線透過率及びヘイズにより評価する。全光線透過率は、JISK7361により測定される。また、ヘイズは、JISK7136により測定される。なお、測定には日本電色工業社製NHD−2000を使用する。
(実施例1)
(a−1)粒子の製造
2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(活性水素(メタ)アクリレート単量体)100重量部にアクリル酸ブチル(活性水素非含有(メタ)アクリレート単量体)100重量部、多官能ラジカル重合性単量体としてエチレングリコールジメタクリレートを15重量部、3官能のイソシアヌレート型多官能イソシアネート(旭化成社製 デュラネートTM TPA−100)を150重量部、ラジカル重合開始剤としてアゾビスバレロニトリルを1重量部、ウレタン硬化触媒として有機チタン化合物(マツモトファインケミカル社製:TC−700)0.05重量部を混合して重合性組成物とした。
水相としてイオン交換水1000重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.07重量部、懸濁安定剤としてピロリン酸マグネシウム35重量部添加した。
この水相中に重合性組成物を入れてホモジナイザーにて7000rpmで10分間攪拌を行った。その後、窒素雰囲気下55℃で3時間、その後、100℃に昇温して2時間、反応を行った。その後、塩酸を加え、ピロリン酸マグネシウムを溶解させ、固液分離、洗浄、乾燥することにより目的の粒子が得られた。
(b−1)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は10μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は、図1のSEM像のとおり、粒子表面に多数の凹凸部を有する異形状であった。TEM像により粒子内部を観察したところ、粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.3μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は94ml/100gであった。
(c−1)光拡散フィルムの製造
得られた粒子100重量部とアクリルバインダー(三菱レイヨン社製 ダイナールLR−102)140重量部とを混合した。得られた混合物に、トルエンとメチルエチルケトンを1:1の重量比で混合した溶剤を260重量部添加して分散液を得た。得られた分散液を遠心撹拌機により3分間撹拌して、その後、3時間放置した。放置後の分散液に硬化剤(旭化成ケミカルズ社製 デュラネートTKA100)30重量部を添加して、遠心撹拌機により3分間撹拌した。撹拌後の分散液を、塗布膜厚75μmに設定したコーターを用いてPETフィルム上に塗布することにより、PETフィルム上に塗膜を形成した。塗膜が形成されたPETフィルムを乾燥機により70℃に保った状態で1時間乾燥することにより、光拡散フィルムを得た。
(d−1)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は93.0%であった。また、ヘイズ値は96.4%であった。
(実施例2)
(a−2)粒子の製造
2−ヒドロシキシプロピルメタクリレート30重量部、アクリル酸ブチル100重量部、3官能のイソシアヌレート型多官能イソシアネート(旭化成社製 デュラネートTM TPA−100)150重量部を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−2)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は10μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は表面に凹凸部を有する異形状であった。粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.4μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は87ml/100gであった。
(c−2)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−2)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は93.1%であった。また、ヘイズ値は95.9%であった。
(実施例3)
(a−3)粒子の製造
アクリル酸ブチルをメタクリル酸メチルに変更したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−3)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は11μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は表面に凹凸部を有する異形状であった。粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.3μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は89ml/100gであった。
(c−3)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−3)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は92.8%であった。また、ヘイズ値は95.7%であった。
(実施例4)
(a−4)粒子の製造
エチレングリコールジメタクリレートの使用量を40重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−4)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は10μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は表面に凹凸部を有する異形状であった。図2のTEM像のとおり、粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.3μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は90ml/100gであった。
(c−4)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−4)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は92.7%であった。また、ヘイズ値は95.6%であった。
(実施例5)
(a−5)粒子の製造
エチレングリコールジメタクリレートの使用量を200重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−5)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は11μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は、図3のSEM像のとおり、表面に凹凸部を有する異形状であった。粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.2μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は86ml/100gであった。
(c−5)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−5)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は92.8%であった。また、ヘイズ値は95.7%であった。
(実施例6)
(a−6)粒子の製造
エチレングリコールジメタクリレートの使用量を3重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−6)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は11μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は表面に凹凸部を有する異形状であった。粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.4μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は84ml/100gであった。
(c−6)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−6)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は93.0%であった。また、ヘイズ値は94.9%であった。
(比較例1)
(a−7)粒子の製造
多官能ラジカル重合性単量体270重量部を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−7)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は10μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は表面に凹凸のない球状であった。粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ0.2μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は67ml/100gであった。
(c−7)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−7)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は92.7%であった。また、ヘイズ値は93.0%であった。
(比較例2)
(a−8)粒子の製造
アクリル酸ブチル92重量部、メタクリル酸メチル8重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.1重量部を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。
(b−8)粒子の評価
得られた粒子の粒子径は11μmであった。走査型電子顕微鏡で粒子を観察した結果、粒子の形状は表面に凹凸のない球状であった。粒子内には相分離構造が確認され、マトリックス相(連続相)中に分散相が粒状に存在していた。分散相の最長径を測定したところ1.1μmであった。粒子の非反応性有機溶媒の残留濃度を測定したところ1ppm以下であった。粒子の吸油量は69ml/100gであった。
(c−8)光拡散フィルムの製造
実施例1と同様の方法で光拡散フィルムを得た。
(d−8)光拡散フィルムの評価
得られた光拡散フィルムの全光線透過率は92.9%であった。また、ヘイズ値は94.0%であった。
実施例1〜6及び比較例1〜2の結果について、表1にまとめて示す。
AB:アクリル酸ブチル(活性水素非含有アクリレート)
HPA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(活性水素含有メタクリレート)
MMA:メタクリル酸メチル(活性水素非含有メタクリレート)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
ABN−V:アゾビスバレロニトリル
TPA−100:3官能のイソシアヌレート型多官能イソシアネート(旭化成社製 デュラネートTM TPA−100)
比較例1の評価は、多官能ラジカル重合性単量体の使用量を250重量部より多く使用したことが原因だと考えられる。
比較例2の評価は、多官能ラジカル重合性単量体の使用量を2重量部未満としたことが原因だと考えられる。
(異形粒子の使用例)
実施例1〜6で得られた異形粒子を塗料に使用した例を以下に述べる。
(塗料の製造)
実施例1〜6で得られたそれぞれの異形粒子5重量部と、市販の水系樹脂バインダー液(固形分30%、ALBERDINGK社製:U330)25重量部とを撹拌脱泡装置を用いて10分間混合の後、1分間脱泡することにより塗料を得た。
(塗膜の製造)
得られた塗料をクリアランス100μmのブレードをセットした塗工装置を用いて黒色ABS板上に塗布後、5時間乾燥することにより塗膜を得た。

Claims (7)

  1. 活性水素(メタ)アクリレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物由来の重合体成分を含み、非反応性有機溶媒を実質的に含まず、かつ表面に凹凸部を有することを特徴とする異形ウレタン系樹脂粒子。
  2. 前記活性水素(メタ)アクリレート単量体が、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有する請求項1に記載の異形ウレタン系樹脂粒子。
  3. 前記多官能ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又は芳香族系単量体からなる請求項1又は2に記載の異形ウレタン系樹脂粒子。
  4. 前記多官能イソシアネートが、分子内に3個以上のイソシアネート基を有する、ビュレット型、イソシアヌレート型又はアダクト型のイソシアネートである請求項1〜3のいずれか1つに記載の異形ウレタン系樹脂粒子。
  5. 活性水素(メタ)アクレート単量体を含むビニル単量体100重量部に対して、多官能ラジカル重合性単量体2〜250重量部及び多官能イソシアネート10〜400重量部の割合で含む混合物、ラジカル重合開始剤及びウレタン硬化触媒とを含む重合性組成物を、懸濁安定剤の存在下かつ非反応性有機溶媒の不存在下、水性媒体中で重合を行うことで表面に凹凸部を有する異形ウレタン系樹脂粒子を得ることを特徴とする異形ウレタン系樹脂粒子の製造方法。
  6. 前記懸濁安定剤が、難水溶性無機塩である請求項5に記載の異形ウレタン系樹脂粒子の製造方法。
  7. 基材フィルムとその上の光拡散層とを有し、前記光拡散層が、請求項1〜4のいずれか1つに記載の異形ウレタン系樹脂粒子とそれを分散させたバインダー樹脂の層とから構成される光拡散フィルム。
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