JP2011187935A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
水または含水有機溶媒と導電性高分子を含み、表面張力を67mN/m未満の導電性組成物を用いて、下記工程1および2を有する固体電解コンデンサの製造方法。
[工程1] 前記導電性組成物を、表面に陽極酸化皮膜を形成した多孔質の弁作用金属体上に塗布する工程
[工程2]塗布された前記導電性組成物を乾燥し、前記皮膜上に導電性高分子層を形成する工程
【選択図】図1
Description
このような固体電解コンデンサは、固体電解質として二酸化マンガンを用いた従来の固体電解コンデンサと比較して、固体電解質の導電率が10〜100倍高く、またESR(等価直列抵抗)を大きく減少させることが可能であり、小型電子機器の高周波ノイズの吸収用など様々な用途への応用が期待されている。
化学酸化重合法は、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリンなどの導電性高分子のモノマーと、酸化剤やドーパント(導電補助剤)を含む溶液に、表面に陽極酸化皮膜が形成された金属体(陽極体)を浸漬させ、陽極酸化皮膜上においてモノマーと酸化剤とを直接反応させて導電性高分子層を形成させる方法である。
一方、電解重合法は、予め陽極酸化皮膜上に導電性の下地層を形成しておき、該下地層上に導電性高分子のモノマーおよびドーパントを含む電解質液を塗布して塗膜を形成し、該塗膜と下地層との間に電圧を印加して導電性高分子層を形成する方法である。
また、特許文献2には、化学酸化重合法により形成されたポリピロールもしくはポリアニリンの導電性高分子層を下地とし、該下地の表面に同質の導電性高分子層を電解重合法によってさらに形成する方法が開示されている。
そこで、陽極酸化皮膜上で化学酸化重合を行わずに導電性高分子層を形成するスラリーポリマー塗布法が提案されている。スラリーポリマー塗布法は、予めモノマーを重合させてポリマー(導電性高分子)とし、該ポリマーを含む分散液を陽極酸化皮膜上に含浸させて乾燥し、塗膜とすることにより導電性高分子層を形成する方法である。
スラリーポリマー塗布法は、化学酸化重合法や電解重合法とは異なり、陽極酸化皮膜上で重合反応を進行させるのではなく、予めモノマーと酸化剤とドーパントを化学酸化させて重合反応が完了した導電性高分子を用いる。従って、重合反応を陽極酸化皮膜上で行う必要がないため、製造工程の制御が比較的容易であるという特徴を有する。
布法によって形成される塗膜の導電率は、導電性高分子の分子量に比例する傾向がある。
従って、スラリーポリマー塗布法により導電性高分子層を形成する場合に、その導電率を上げてESRを低下させるためには、分子量の大きな導電性高分子を用いればよい。
また、ポリジオキシチオフェンは、分子量は小さいものの水や有機溶剤に難溶であり、分散液中で凝集しやすく、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しにくかった。
しかし、近年、多孔質の金属体はさらに微細化されていたり、様々な形態の微細孔を有していたりする。従って、このような金属体の表面に形成された陽極酸化皮膜も内部はより微細で複雑であり、該陽極酸化皮膜の内部に導電性高分子を含浸させるには、上述したポリマー溶液を単に用いるだけでは不十分であった。
そこで、さらに検討を重ねた結果、ポリマー溶液の表面張力を規定することで、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明において、「含浸(性)」とは、可溶性導電性高分子が、コンデンサ素子の陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に浸漬(浸透)すること、あるいは、該陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部にどの程度浸漬(浸透)しているかを示すものである。
含浸性は、例えば、コンデンサ素子の断面を、走査型電子顕微鏡等で観察することにより、相対的に評価することができる。
[工程1]前記導電性組成物を、表面に陽極酸化皮膜を形成した多孔質の弁作用金属体上に塗布する工程
[工程2]塗布された前記導電性組成物を乾燥し、前記陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程
[工程1] 表面に陽極酸化皮膜を形成した多孔質の弁作用金属体上に、有機溶剤を含む溶液を塗布する工程
[工程2] 前記導電性組成物を、前記弁作用金属体上に塗布する工程
[工程3] 塗布された前記導電性組成物を乾燥し、前記陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程
弁作用金属体は、導電性を有し、かつ多孔質である。このような弁作用金属体としては、固体電解コンデンサに用いられる通常の電極を使用でき、具体的にはアルミニウム、タンタル、ニオブ、ニッケル等の金属材料(被膜形成金属)からなる電極が挙げられる。その形態としては、金属箔、金属焼結体などが挙げられる。
なお、本発明において「導電性」とは、109Ω・cm以下の体積抵抗率を有することである。
陽極酸化皮膜は、弁作用金属体を陽極酸化して形成されたものである。
多孔質の弁作用金属体を陽極酸化して形成される陽極酸化皮膜は、図1に示すように弁作用金属体の表面状態を反映し、表面が微細な凹凸状となっている。この凹凸の周期は、弁作用金属体の種類などに依存するが、通常、200nm以下程度である。また、凹凸を形成する凹部(微細孔)の深さは、弁作用金属体の種類などに特に依存しやすいので一概には決められないが、例えばアルミニウムを用いる場合、凹部の深さは数十nm〜1μm程度である。
導電性高分子層は、水または有機溶剤に可溶な導電性高分子(以下、「可溶性導電性高分子」という。)を含む。
可溶性導電性高分子としては、水または有機溶剤に溶解するものであれば特に限定されないが、スルホン酸基(−SO3H)および/またはカルボキシ基(−COOH)を有するものが、溶解性の観点で好ましく用いられる。なお、可溶性導電性高分子において、スルホン酸基、カルボキシ基は、それぞれ、酸の状態(−SO3H、−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO3 −、−COO−)で含まれていてもよい。
本発明において「可溶」とは、10gの水または有機溶剤(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。
ここで、酸性基とはスルホン酸基またはカルボキシ基である。つまり、式(1)中、R1〜R4のうちの少なくとも一つは、−SO3 −、−SO3H、−COOHまたは−COO−である。特に、製造が容易な点で、R1〜R4のうち、いずれか一つが炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルコキシ基であり、他のいずれか一つが−SO3 −または−SO3Hであり、残りがHであるものが好ましい。
また、可溶性導電性高分子は、導電性に優れる観点で、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
なお、可溶性導電性高分子の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定し、ポリエチレングリコール換算した値である。
他の導電性高分子としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどが挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などが挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどが挙げられる。
ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。
これら界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グラファイト層は、グラファイト液を導電性高分子層上に塗布、または陽極酸化皮膜および導電性高分子層が順次形成された弁作用金属体をグラファイト液に浸漬して形成されたものである。
金属層としては、接着銀などの銀層の他、アルミ電極、タンタル電極、ニオブ電極、アルミニウム電極、チタン電極、ジルコニウム電極、マグネシウム電極、ハフニウム電極などが挙げられる。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属体上に形成された陽極酸化皮膜上に、導電性高分子層を形成する工程を有する。
本発明においては、導電性高分子層を形成する工程以外の工程は、公知の技術により行われる。例えば、図1に示す固体電解コンデンサを製造する場合、アルミニウム箔などの弁作用金属体の表層近傍をエッチングにより多孔質体化した後、陽極酸化により陽極酸化皮膜を形成する。ついで、陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成した後、これをグラファイト液に浸漬させて、またはグラファイト液を塗布して導電性高分子層上にグラファイト層を形成し、さらにグラファイト層上に金属層を形成する。さらに、陰極部および陽極部(いずれも図示略)に外部端子(図示略)を接続して外装し、固体電解コンデンサとする。
導電性高分子層は、弁作用金属体上に形成された陽極酸化皮膜上に、上述した可溶性導電性高分子を含む溶液(導電性組成物)を塗装し、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に可溶性導電性高分子を含浸させた後、乾燥することで形成できる。
本発明で、塗布とは膜を形成させる事を指し、塗装や浸漬も塗布に含まれる。
本発明の一実施態様において、導電性組成物は、表面張力が67mN/m未満になるように調整する。
導電性組成物の表面張力が67mN/m未満であれば、陽極酸化皮膜が形成された弁作用金属体に対する濡れ性が向上するため、分子量の大きい可溶性導電性高分子を用いても、可溶性導電性高分子は陽極酸化皮膜の表面に堆積することなく、微細な凹凸の内部へ含浸させることができる。
導電性組成物の表面張力は、含浸性の観点から、67mN/m未満、特に、60mN/m以下が好ましい。
導電性組成物に用いる溶媒としては、詳しくは後述するが、水、有機溶剤、水と有機溶剤の混合溶媒を用いる。例えば溶媒として混合溶媒を用いる場合、有機溶剤の割合が多くなるに連れて、導電性組成物の表面張力は低くなる傾向にある。
また、導電性組成物の表面張力は、前記界面活性剤を配合することでも調整できる。特に、溶剤として水のみを用いる場合は、導電性組成物の表面張力が高くなる傾向にある。そのような場合は、界面活性剤を配合することで表面張力を低下させることができる。
すなわち、測定子(白金プレート)を測定溶液につけて、測定子が溶液に引っ張られる力(表面張力)と測定子を固定しているバネの力がつりあったときの、測定子が溶液に沈んだ変位から、表面張力を測定した。
有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類やγ-ブチロラクトンなどが挙げられる。これら有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。導電性高分子の溶解性の観点から、有機溶剤の含有量として、好ましくは4質量%〜70質量%、更に好ましくは10質量%〜50質量%である。
水への可溶性及び取り扱いの観点から、好ましくはメタノールやイソプロプルアルコールなどのアルコール類が好ましい。
ディップコート法により導電性組成物を塗装する場合、導電性組成物への浸漬時間は、作業の効率性から1〜30分が好ましい。
本発明の更なる態様は、弁作用金属体上に形成された陽極酸化皮膜上に、有機溶剤を塗布(先漬け)し、その後、上記導電性組成物を、弁作用金属体上に形成された陽極酸化皮膜上に塗布し、次いで、塗布された前記導電性組成物を乾燥し、前記陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する方法である。
当該方法を用いる場合には、導電性組成物は、表面張力が67mN/m未満である必要はない。有機溶剤を先漬けすることにより、表面張力が67mN/mを超える導電性組成物を用いても、可溶性導電性高分子は陽極酸化皮膜の表面に堆積することなく、微細な凹凸の内部へ含浸させることができる。
なお、当該方法に用いられる有機溶剤は、上述した導電性組成物に用いられる有機溶剤と同様のものを用いることができる。
しかし、本発明であれば、前記導電性組成物を用いて塗装を行うので、可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しやすい。従って、スプレーコート法などを用いなくても、操作が容易で、初期投資がかかりにくく、しかも可溶性導電性高分子を無駄なく利用できるディップコート法を使用でき、経済的にも有益である。
また、乾燥条件は、可溶性導電性高分子や溶媒の種類により決定されるが、通常、乾燥温度は溶媒を乾燥させる観点から20〜190℃が好ましく、乾燥時間は1〜30分が好ましい。
a−1:ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)の合成
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolを、25℃で100mmolのトリエチルアミンを含む水に攪拌溶解し、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別洗浄後乾燥し、粉末状のポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)(a−1)15gを得た。得られたa−1の体積抵抗値は9.0Ω・cmであった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリエチレングリコール換算で求めた質量平均分子量は約10000であった。
B−1:a−1(5質量部)と、溶媒として水(100質量部)を混合した。
B−2:a−1(5質量部)と、溶媒として水(90質量部)とメタノール(10質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−3:a−1(5質量部)と、溶媒として水(75質量部)とメタノール(25質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−4:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とメタノール(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−5:a−1(5質量部)と、溶媒として水(100質量部)と、界面活性剤としてジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王株式会社製の「ペレックスOT−P」(c−1)を0.5質量部)とを混合した。
B−6:a−1(5質量部)と、溶媒として水(90質量部)とイソプロピルアルコール(IPA)(10質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−7:a−1(5質量部)と、溶媒として水(75質量部)とイソプロピルアルコール(IPA)(25質量部)の混合溶媒とを混合した。
B−8:a−1(5質量部)と、溶媒として水(50質量部)とイソプロピルアルコール(50質量部)の混合溶媒とを混合した。
導電性組成物(B−1〜B−8)を調整し、各々の表面張力を測定した。結果を表1に示す。
陽極酸化皮膜を有するタンタル素子(株式会社高純度物質研究所製、「タンタルコンデンサ陽極素子(ペレット)」)を、導電性組成物(B−2)に5分間浸漬させた。その後、タンタル素子を取出し、130℃×15分の条件で加熱乾燥させて、陽極酸化皮膜上に導電性高分子層(陽極酸化皮膜の表面からの厚さは10μm程度)を形成し、これを試験片とし、含浸性および浸漬性を評価した。評価結果を表2に示す。
試験片を縦方向(積層方向)に切断し、これを走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、「S−4300SE/N」、)にて、観察倍率1000〜30000倍で観察して、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への可溶性導電性高分子の含浸状態を確認した。そして、以下に示す評価基準にて含浸性の評価を行った。結果を表2に示す。
○:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に十分含浸している。
△:可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸している。
×:可溶性導電性高分子の陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部への含浸が不十分である。
本発明において、「浸漬(浸透)性」とは、可溶性導電性高分子(溶液)が、コンデンサ素子の陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に浸漬する特性で、短時間に浸漬するほど、浸漬性が優れていることを示す。
陽極酸化皮膜を有するタンタル素子(株式会社高純度物質研究所製、「タンタルコンデンサ陽極素子(ペレット)」)の上部に導電性組成物B−1〜10の溶液を一定量垂らして、上部からマイクロスコープ(株式会社キーエンス、「デジタルマイクロスコープVHX-200」)にて、観察倍率100倍で浸漬する様子を観察した。同量の溶液をタンタル素子に垂らしてから、浸漬し終わるまでの時間を計測した。
結果を表2に示す。表中の変化なしとは、デジタルマイクロスコープで5分以上観察しても、溶液の状態が変化していない事を示す。
表1に示す種類の導電性組成物(実施例2〜7:B―3〜B−7、比較例1:B−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成し、含浸性及び浸漬性の評価を行った。結果を表2に示す。
陽極酸化皮膜を有するタンタル素子にイソプロピルアルコールを浸漬させた後に、B−1の溶液を浸漬させ、タンタル素子の表面で混合を行った。その後、タンタル素子を130℃×15分の条件で加熱乾燥させて、陽極酸化皮膜上に導電性高分子層(陽極酸化皮膜の表面からの厚さは10μm程度)を形成し、これを試験片とし、含浸性および浸漬性を評価した。評価結果を表3に示す。
陽極酸化皮膜を有するタンタル素子にメタノールを浸漬させた後に、B−1の溶液を浸漬させ、タンタル素子の表面で混合を行った。その後、タンタル素子を130℃×15分の条件で加熱乾燥させて、陽極酸化皮膜上に導電性高分子層(陽極酸化皮膜の表面からの厚さは10μm程度)を形成し、これを試験片とし、含浸性および浸漬性を評価した。評価結果を表3に示す。
また、表3から明らかなように、表面張力が67.0mN/mと高い導電性組成物(B−1)を用いた場合でも、先に弁作用金属体上に有機溶剤を含む溶液を塗布<有機溶剤塗布(先漬け)工程>することで、可溶性導電性高分子を陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部へ含浸させることが可能となる。
一方、表面張力が67.0mN/mと高い導電性組成物(B−1)を用いた比較例1の場合、可溶性導電性高分子が陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部に含浸しにくかった。
したがって、本発明であれば、陽極酸化皮膜の微細な凹凸の内部にまで十分に導電性高分子層を形成できる。
1:固体電解コンデンサ
2:弁作用金属体
3:陽極酸化皮膜
4:導電性高分子層
5:グラファイト層
6:金属層
Claims (5)
- 水または含水有機溶媒と導電性高分子を含み、表面張力を67mN/m未満の導電性組成物を用いて、下記工程1および2を有する固体電解コンデンサの製造方法。
[工程1]前記導電性組成物を、表面に陽極酸化皮膜を形成した多孔質の弁作用金属体上に塗布する工程
[工程2]塗布された前記導電性組成物を乾燥し、前記陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成する工程 - 前記含水有機溶媒が、有機溶剤の含有量が4質量%以上70質量%未満である、請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 水または含水有機溶媒と導電性高分子を含む導電性組成物を用いて、下記工程1〜3を有する固体電解コンデンサの製造方法。
[工程1] 表面に陽極酸化皮膜を形成した多孔質の弁作用金属体上に、有機溶剤を含む溶液を塗布する工程
[工程2] 前記導電性組成物を、前記弁作用金属体上に塗布する工程
[工程3]塗布された前記導電性組成物を乾燥し、前記陽極酸化皮膜上に導電性高分子層
を形成する工程 - 前記導電性高分子が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する請求項1または請求項2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記導電性高分子が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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