JP2011187455A - 色素増感光電変換素子、色素増感光電変換素子の製造方法、光電変換素子モジュール、電子機器、移動体および発電システム - Google Patents

色素増感光電変換素子、色素増感光電変換素子の製造方法、光電変換素子モジュール、電子機器、移動体および発電システム Download PDF

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Abstract

【課題】会合体を作りやすいカルボン酸などの酸官能基を吸着基とした色素を増感色素として用いた場合においても高い光電変換効率を得ることができる色素増感光電変換素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有する色素増感光電変換素子において、増感色素の分子として多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有するものを用い、これらの酸官能基の一部を、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和し、酸官能基の中和量を増感色素の分子内の酸官能基の数に対して0.35〜0.65とする。
【選択図】図12

Description

この発明は、色素増感光電変換素子、色素増感光電変換素子の製造方法、光電変換素子モジュール、電子機器、移動体および発電システムに関し、例えば、色素を担持した半導体微粒子からなる色素増感多孔質半導体層を用いた色素増感太陽電池およびこの色素増感太陽電池を用いる各種の機器、装置、システムなどに適用して好適なものである。
エネルギー源として石炭や石油などの化石燃料を使用する場合、その結果発生する二酸化炭素のために、地球の温暖化をもたらすと言われている。また、原子力エネルギーを使用する場合には、放射線による汚染の危険性が伴う。環境問題が取り沙汰される現在、これらのエネルギーに依存していくことは大変問題が多い。
一方、太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
太陽電池の材質としては様々なものがあるが、シリコンを用いたものが多数市販されており、これらは大別して単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池と、非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池とに分けられる。従来、太陽電池には、単結晶または多結晶のシリコン、すなわち結晶シリコンが多く用いられてきた。
しかし、結晶シリコン系太陽電池では、光(太陽)エネルギーを電気エネルギーに変換する性能を表す光電変換効率が、アモルファスシリコン系太陽電池に比べて高いものの、結晶成長に多くのエネルギーと時間とを要するため生産性が低く、コスト面で不利であった。
また、アモルファスシリコン系太陽電池は、結晶シリコン系太陽電池と比べて光吸収性が高く、基板の選択範囲が広い、大面積化が容易であるなどの特徴があるが、光電変換効率が結晶シリコン系太陽電池より低い。さらに、アモルファスシリコン系太陽電池は、生産性は結晶シリコン系太陽電池に比べて高いが、製造に真空プロセスが必要であり、設備面での負担は未だに大きい。
一方、太陽電池のより一層の低コスト化に向けて、シリコン系材料に代えて有機材料を用いた太陽電池が多く研究されてきた。しかし、この太陽電池の光電変換効率は1%以下と非常に低く、耐久性にも問題があった。
こうした中で、色素によって増感された半導体微粒子を用いた安価な太陽電池が報告された(例えば、非特許文献1参照。)。この太陽電池は、増感色素にルテニウム錯体を用いて分光増感した酸化チタン多孔質薄膜を光電極とする湿式太陽電池、すなわち電気化学光電池である。この色素増感太陽電池の利点は、安価な酸化チタンを用いることができ、増感色素の光吸収が800nmまでの幅広い可視光波長域にわたっていること、光電変換の量子効率が高く、高いエネルギー変換効率を実現できることである。また、製造に真空プロセスが必要ないため、大型の設備なども必要ない。
なお、酸化チタン(TiO2 )微粒子が分散されたTiO2 ペーストの作製方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。
Nature,353,p.737-740,1991 荒川裕則「色素増感太陽電池の最新技術」(シーエムシー)p.45-47(2001)
しかしながら、太陽電池はエネルギーソースが太陽光であり、太陽光は時刻、季節、天候などにより光量や入射角度が変化するため、発電量はいつも一定ではない。実際、シリコン系太陽電池は入射光量と発電量との間に比例関係があることが知られており、光量の変化に対して発電量も大きく変化してしまう。
この問題は、色素増感太陽電池でも、程度の差こそあれ同様に存在するものであり、その解決が望まれる。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、構造の最適化により、光の入射角度に対する発電量の変化を大幅に低減することができ、しかも耐久性が高い色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子およびその製造方法ならびにそのような色素増感光電変換素子を用いた光電変換素子モジュール、電子機器、移動体および発電システムを提供することである。
上記課題を解決するために、第1の発明は、
透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、上記管の中央部に対極が挿入された構造を有する
ことを特徴とする色素増感光電変換素子である。
透明材料からなる管の断面形状は問わず、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)などでも、これらの一部または全部を変形した形状でもよく、さらには長手方向の一部または全部の断面形状が変化してもよい。この管は直線状でも、曲線状でもよく、直線部と曲線部とが混在してもよい。また、この管の長さ、外径、内径も問わず、必要に応じて決めることができる。
透明材料の種類は特に制限されず、透明であれば種々の材料を用いることができる。この透明材料は、光電変換素子外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性などに優れているものが好ましく、具体的には、石英、ガラスなどの透明無機基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルフォン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチックが挙げられ、これらの中でも特に可視光領域の透過率が高いものを用いるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。この透明材料としては、加工性、軽量性などを考慮すると透明プラスチックを用いるのが好ましい。また、この透明材料の厚さ(管の肉厚に相当)は特に制限されず、光の透過率、光電変換素子の内部と外部との遮断性などによって自由に選択することができる。
透明導電層の材質としては公知のものを用いることが可能であり、具体的には、インジウム(In)−スズ(Sn)複合酸化物(ITO)、SnO2 (フッ素(F)、アンチモン(Sb)などがドープされたものも含む)、インジウム(In)−亜鉛(Zn)複合酸化物(IZO)、ZnOなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを二種類以上組み合わせて用いることもできる。
ところで、色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子においては通常、n型半導体からなる色素増感多孔質半導体層に液体のホール(正孔)移動層である電解質を染み込ませた構造になっていることから、電解質が透明導電性層と直接接する部位が存在し、透明導電性層から電解質への逆電子移動反応による漏れ電流が問題となる。この漏れ電流は色素増感光電変換素子のフィルファクターおよび開放電圧を低下させるため、光電変換効率の向上には大きな問題となる。そこで、この透明導電性層から電解質への逆電子移動反応による漏れ電流を大幅に低減することが重要である。このためには、管の内面に透明導電層および金属酸化物からなる透明な保護層を順次設け、この保護層の内面に色素増感多孔質半導体層を設けた構造とすることが有効である。こうすることで、透明導電層が金属酸化物からなる保護層により覆われ、電解質から遮断された構造になり、透明導電層が電解質と直接接しないため、漏れ電流を大幅に低減することが可能となる。そして、このような構造を有する色素増感光電変換素子はフィルファクターおよび開放電圧が高く、光電変換効率に優れた色素増感光電変換素子の実現が可能となる。この保護層を構成する金属酸化物は、具体的には、例えば、Nb2 5 、Ta2 5 、TiO2 、Al2 3 、ZrO2 、TiSrO3 およびSiO2 からなる群より選ばれた少なくとも一つの金属酸化物である。この保護層の厚さに特に制限はないが、薄すぎる場合は透明導電層と電解質との遮断性が悪く、逆に厚すぎる場合は透過率の減少および透明導電層への電子注入のロスが生じてしまうため、好ましい厚さが存在することになる。この厚さは通常、0.1〜500nmであり、1〜100nmが特に好ましい。
透明材料からなる管の内面に透明導電層を形成する方法は特に制限されず、各種のコーティング法を用いることができるが、透明導電物質の前駆体を湿式コーティングし、加熱分解させる方法が好ましい。この湿式コーティング法としては、スプレーコート法、ディップコート法、スピンコート法などの種々の方法を用いることができる。また、透明導電物質の前駆体のコーティング後には、不純物の分解と導電性を高めるための結晶成長とを目的とした加熱を行うことが好ましい。また、塗布と加熱とを同時に行ってもよく、このためにはスプレー熱分解法を用いることが簡便であり特に好ましい。このスプレー熱分解法は、ディップコート法やスピンコート法などに比べて、一回のコーティングで形成することができる層の厚さが数十倍程度も大きい点で極めて有利である。このスプレー熱分解法による一回のコーティングで形成することができる層の厚さは具体的には例えば数百nm程度であり、500nm以上も可能である。
透明材料からなる管の内面に透明導電層を形成するためには、この管の内面に、使用する透明材料に導電性を付与することができる不純物をドープすることにより透明導電層を形成するようにしてもよい。
色素増感多孔質半導体層(色素増感半導体電極)は、典型的には、色素を担持した半導体微粒子からなる。この半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体のほかに、各種の化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などを使用することができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。これらの半導体は、具体的に例示すると、TiO2 、ZnO、WO3 、Nb2 5 、TiSrO3 、SnO2 などであり、これらの中でもアナターゼ型のTiO2 が特に好ましい。半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、また、これらを二種類以上混合して用いることもできる。さらに、半導体微粒子は粒子状、チューブ状、棒状など必要に応じて様々な形態を取ることが可能である。
半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、この平均粒径の半導体微粒子にこの平均粒径より大きい平均粒径の半導体微粒子を混合し、平均粒径の大きい半導体微粒子により入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する半導体微粒子の平均粒径は20〜500nmであることが好ましい。
半導体微粒子からなる多孔質半導体層は多くの色素を吸着することができるように、表面積の大きいものが好ましい。このため、この多孔質半導体層を支持体上に形成した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限に特に制限はないが、通常1000倍程度である。多孔質半導体層は一般に、その厚さが増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、多孔質半導体層には好ましい厚さが存在するが、その厚さは一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。半導体微粒子からなる多孔質半導体層は支持体に形成した後に半導体微粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために、焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると支持体の抵抗が高くなってしまい、溶融することもあるため、通常は40〜700℃であり、より好ましくは40〜650℃である。また、焼成時間も特に制限はないが、通常は10分〜10時間程度である。焼成後、多孔質半導体層の表面積を増大させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば四塩化チタン水溶液や直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルのディップ処理を行ってもよい。結着剤を含むペーストを透明導電層上に塗布し、加熱プレスによる透明導電層への圧着を行うことも可能である。
半導体微粒子からなる多孔質半導体層の作製方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合には湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一分散したペーストを調製し、管の内面に設けた透明導電層上に塗布する方法が好ましい。塗布は、その方法に特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷など様々な方法により行うことができる。半導体微粒子の材料として結晶酸化チタン(TiO2 )を用いる場合、その結晶型は、アナターゼ型が光触媒活性の点から好ましい。アナターゼ型酸化チタンは市販の粉末、ゾル、スラリーでもよいし、あるいは、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを作ってもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、塗布液調製時に乳鉢やボールミルなどを使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解かれた粒子が再度凝集するのを防ぐため、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などを添加することができる。また、増粘の目的でポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、セルロース系の増粘剤など、各種の増粘剤を添加することもできる。
多孔質半導体層に担持させる色素としては、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、具体的には、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ルテニウム(Ru)ビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素などが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属の錯体の増感色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする増感色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、色素はこれらのものに限定されるものではなく、また、これらの色素を二種類以上混合して用いてもよい。
ところで、色素増感太陽電池の色素としては、カルボン酸類を吸着基とした色素分子が一般的である。カルボン酸類は酸化物表面に吸着しやすく、特別な処理なしに、例えば色素溶液へ多孔質半導体層を浸漬させるだけで色素を担持させることができる。しかしながら、上記のようにカルボン酸類を吸着基とした色素分子を増感色素として用いる色素増感太陽電池においては、カルボン酸は会合体を作りやすいことから、色素が半導体表面で会合を起こした場合、それらの色素間の電子トラップによって半導体への電子注入が妨げられ、光電変換効率の低下が避けられないという欠点がある。そこで、この欠点を解消し、会合体を作りやすいカルボン酸などの酸官能基を吸着基とした色素を増感色素として用いた場合においても高い光電変換効率を得ることができるようにする方法について検討を行った。いま、一例として、増感色素の分子が酸官能基としてカルボキシ基(−COOH)を複数個有する場合を考える。図12Aに示すように、この色素の分子のカルボキシ基同士が水素結合(点線で示す)することにより会合が起きる。この会合を防止するために、増感色素の分子の酸官能基をアルカリ化合物、例えばNaOHで中和することを考えた。この中和により、増感色素分子のCOOHがCOO- となったものにNa+ が結合してCOO- Na+ となるが、溶液中では解離しているためCOO- の状態となっている。こうして中和され、解離したCOO- はアニオンであるため、増感色素分子同士はこのアニオンの負電荷間に働く斥力(電荷反発)により会合が起こりにくくなる(図12B)。このため、例えばこの色素溶液に多孔質半導体層を浸漬させて色素を担持させる場合、色素分子が半導体表面で会合を起こしにくくなり、それらの色素間の電子トラップを大幅に低減することができる。以上のことは、リン酸基などの他の酸官能基およびKOHなどの他のアルカリ化合物の場合にも基本的には成立し得るものである。すなわち、上記の欠点を解消するためには、色素の分子として多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有するものを用い、これらの酸官能基の一部を、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和するようにする。これらの金属または化合物の中でも、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム化合物が好ましく、この中でも無機アルカリ(アルカリ金属)であるNa、Kが特に好ましい。これらの無機アルカリは、酸化チタンなどからなる多孔質半導体層の導電性を向上させる効果があるほか、イオン半径が小さいため、多孔質半導体層への色素の吸着密度を増加させることが可能になる。色素分子の中和方法に特に制限はないが、例えば、色素とアルカリ化合物とのモル数による規定量混合、pHによる滴定などにより行うことができる。色素の部分中和は色素溶液調製前に行っても構わないし、色素溶液中にアルカリを所定量混合して中和しても構わない。色素分子の中和を色素溶液中で行う場合は中和による水分が発生するため、別途水分除去の操作を行うようにしてもよい。色素分子は複数個の酸官能基を有し、その中の一部が中和されることになるが、色素分子の部分中和量が少なすぎる場合は色素分子間の会合抑制が不十分であり、逆に多すぎる場合は色素分子の吸着力の低下から十分な光電変換を行うことができなくなってしまうため、適当な中和量が存在することになる。具体的な中和量は、色素分子内の酸官能基数に対して0.25〜0.75であることが好ましく、0.35〜0.65であることが特に好ましい。この中和量は、色素分子全体の全酸官能基数に対する割合と言い換えることもできる。
多孔質半導体層への色素の担持(吸着)方法に特に制限はないが、上記の色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに多孔質半導体層を浸漬させたり、色素溶液を多孔質半導体層上に塗布したりすることができる。また、色素分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。さらには、紫外線吸収剤を併用してもよい。
多孔質半導体層に色素を吸着させた後に、過剰に吸着した色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて多孔質半導体層の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
ところで、色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子においては通常、電解液中の逆電子移動を防ぐために、色素増感多孔質半導体層と結合する物質からなる添加剤が加えられる。この添加剤としては、tert−ブチルピリジン、1−メトキシベンゾイミダゾール、長鎖アルキル基(C=13程度)を持つホスホン酸などが用いられる。これらの添加剤の特徴は電解液に均一に混合できること、色素増感多孔質半導体層に結合できる官能基を有することである。しかし、本発明者の知見によれば、従来の色素増感太陽電池においては、電解液封入後に多孔質半導体層の表面に予め吸着させていた色素が溶出してしまい、光電変換効率が急速に劣化してしまうことが確認された。そこで、逆電子移動反応を防止しつつ、多孔質半導体層に予め吸着させておく色素の溶出を防止し、光電変換効率の向上を図ることが必要である。このためには、電解液に添加剤を加えるのではなく、多孔質半導体層に予め色素および添加剤を吸着させ、このとき添加剤は色素の間の隙間の部分に吸着させ、しかも電解液には添加剤が含まれないようにすることが有効である。その方法としては、例えば、色素が吸着した多孔質半導体層を添加剤を含む溶液に浸漬することにより色素の間の隙間の部分の多孔質半導体層の表面に添加剤を吸着させた後、この色素および添加剤が吸着した多孔質半導体層と対極との間に添加剤を含まない電解液を封入する。こうすることで、色素増感多孔質半導体層に吸着した添加剤により逆電子移動反応を防止しつつ、電解液による色素の溶出を防止することができ、光電変換効率の経時劣化を効果的に防止することができる。添加剤としては、多孔質半導体層に結合する官能基(イミダゾリル基、カルボキシ基、ホスホン基など)を有し、結合の結果脱着を起こさず、かつ吸着の結果、多孔質半導体層の表面の露出を抑えることができる分子が用いられ、具体的には、例えば、tert−ブチルピリジン、1−メトキシベンゾイミダゾール、デカンリン酸などの長鎖アルキル基(C=13程度)を持つホスホン酸などが用いられる。
対極は導電性物質であれば任意のものを用いることができるが、絶縁性の物質でも、色素増感多孔質半導体層に面している側に導電層が設置されていれば、これも使用可能である。ただし、対極の材料としては電気化学的に安定である材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、導電性ポリマーなどを用いることが望ましい。また、酸化還元の触媒効果を向上させる目的で、色素増感多孔質半導体層に面している側は微細構造で表面積が増大していることが好ましく、例えば、白金であれば白金黒状態に、カーボンであれば多孔質状態になっていることが望まれる。白金黒状態は白金の陽極酸化法、塩化白金酸処理などによって、また多孔質状態のカーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法により形成することができる。また、透明導電性基体上に白金など酸化還元触媒効果の高い金属を配線するか、表面を塩化白金酸処理することにより、透明な対極として使用することもできる。この対極の形状に制限はなく、棒状、管状、ワイヤー状などのいずれでもよいが、透明基材の内面に沿った形状であることが好ましい。
電解質は、ヨウ素(I2 )と金属ヨウ化物もしくは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br2 )と金属臭化物あるいは有機臭化物との組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノンなどを用いることができる。上記金属化合物のカチオンとしてはLi、Na、K、Mg、Ca、Csなど、上記有機化合物のカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの4級アンモニウム化合物が好ましいが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上混合して用いることもできる。この中でも、I2 とLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3Mである。I2 やBr2 の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.1Mである。また、開放電圧、短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやカルボン酸などの各種添加剤を加えることもできる。
上記電解質組成物を構成する溶媒として水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上混合して用いることもできる。さらに、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
光電変換素子の漏液、電解質の揮発を低減する目的で、上記電解質組成物へゲル化剤、ポリマー、架橋モノマーなどを溶解させ、ゲル状電解質として使用することも可能である。ゲルマトリクスと電解質組成物との比率は、電解質組成物が多ければイオン導電率は高くなるが、機械的強度は低下し、逆に電解質組成物が少なすぎると機械的強度は大きいがイオン導電率は低下するため、電解質組成物はゲル状電解質の50〜99wt%が望ましく、80〜97wt%がより好ましい。また、上記電解質と可塑剤とをポリマーに溶解させ、可塑剤を揮発除去することで全固体型の光電変換素子を実現することも可能である。
光電変換素子の製造方法は特に限定されないが、例えば電解質組成物が液状、もしくは光電変換素子内部でゲル化させることが可能であり、導入前は液状の電解質組成物の場合、色素を担持させた管状の色素増感多孔質半導体層の内部に棒状、管状、ワイヤー状などの対極を挿入し、これらの二つの電極が互いに接しないように、この色素増感多孔質半導体層が形成されていない部分を利用して封止する。このとき、色素増感多孔質半導体層と対極との隙間の大きさに特に制限はないが、通常1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。これらの電極間の距離が長すぎると、導電率の低下から光電流が減少してしまう。封止方法は特に制限されないが、耐光性、絶縁性、防湿性を備えた材料を用いることが好ましく、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、変性ポリエチレン(プロピレン)、セラミック、各種熱融着フィルムなどを用いることができ、また、種々の溶接法を用いることができる。また、電解質組成物の溶液を注液する注入口が必要であるが、色素増感多孔質半導体層およびそれに対向する部分の対極上でなければ、注入口の場所は特に限定されない。注液方法に特に制限はないが、予め封止され、溶液の注入口を開けられた素子の内部に注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、ポリマーなどを用いたゲル状電解質、全固体型の電解質の場合、色素が吸着した多孔質半導体層上で電解質組成物と可塑剤とを含むポリマー溶液をキャスト法により揮発除去させる。可塑剤を完全に除去した後、上記方法と同様に封止を行う。この封止は真空シーラーなどを用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧中で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質を色素増感多孔質半導体層へ十分に含漬させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
色素増感光電変換素子はその用途に応じて様々な形状で作製することが可能であり、その形状は特に限定されない。
色素増感光電変換素子は、最も典型的には色素増感太陽電池として構成される。この色素増感太陽電池は、およそ電力が必要なもの全てに用いることができ、大きさも問わないが、例えば、電子機器、移動体、動力装置、建設機械、工作機械、発電システムなどに用いることができ、用途などによって出力、大きさ、形状などが決められる。ただし、色素増感光電変換素子は、色素増感太陽電池以外のもの、例えば色素増感光センサーなどであってもよい。
第2の発明は、
透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、上記管の中央部に対極が挿入された構造を有する色素増感光電変換素子の製造方法であって、
上記管の内面に湿式コーティング法により上記透明導電層を形成するようにした
ことを特徴とするものである。
第2の発明においては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
第3の発明は、
複数の光電変換素子を並べて配線した光電変換素子モジュールにおいて、
少なくとも一つの上記光電変換素子が、
透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、上記管の中央部に対極が挿入された構造を有する色素増感光電変換素子である
ことを特徴とするものである。
この場合、複数の光電変換素子は、その全てが上記の色素増感光電変換素子であってもよいし、上記の色素増感光電変換素子と他の光電変換素子、具体的には従来の一般的な平面構造の色素増感光電変換素子やシリコン系光電変換素子などとの組み合わせであってもよい。光の入射角度に対する発電量の変化を大幅に低減し、しかも太陽光スペクトルのより広い波長帯の光を有効に利用するために、好適には、互いに異なる波長帯の光を光電変換可能な少なくとも二種類の上記色素増感光電変換素子を含むようにする。
この光電変換素子モジュールの形態は特に制限されず、必要に応じて決めることができる。また、複数の光電変換素子の配置方法も特に制限されず、必要に応じて決めることができるが、具体的には、例えば、二次元的に並列配置したり、これを複数段積層して三次元的に配置したりすることができる。光電変換素子モジュールを形成するためには、具体的には、例えば、これらの複数の光電変換素子を配置し、これを二枚の透明基板(ガラス基板など)の間に挟み込み、これらの光電変換素子間を配線した後、素子間の隙間にシリコーン樹脂などを充填し、硬化させる。複数の光電変換素子間の配線の仕方は、直列、並列のいずれであってもよい。
第3の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
第4の発明は、
色素増感光電変換素子を用いた電子機器において、
上記色素増感光電変換素子が、
透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、上記管の中央部に対極が挿入された構造を有する
ことを特徴とするものである。
この電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品などである。
第4の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
第5の発明は、
色素増感光電変換素子を用いた移動体において、
上記色素増感光電変換素子が、
透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、上記管の中央部に対極が挿入された構造を有する
ことを特徴とするものである。
この移動体は、基本的にはどのようなものであってもよく、具体例を挙げると、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船などである。
第5の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
第6の発明は、
色素増感光電変換素子を用いた発電システムにおいて、
上記色素増感光電変換素子が、
透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、上記管の中央部に対極が挿入された構造を有する
ことを特徴とするものである。
この発電システムは、基本的にはどのようなものであってもよく、その規模も問わない。
第6の発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、第1の発明に関連して説明したことが成立する。
上述のように構成されたこの発明においては、色素増感光電変換素子が、透明材料からなる管の内面に透明導電層、色素増感多孔質半導体層および電解質層が順次設けられ、この管の中央部に対極が挿入された構造を有することにより、色素増感多孔質半導体層自身がその内部の極微小な空隙に光を閉じ込めやすい構造であることに加えて、どの方向から管に入射する光も光電変換可能であるため、光の入射角度に対する発電量の変化を大幅に低減することができる。
また、この色素増感光電変換素子においては、電解質が外部に漏れるのを防止するためには、例えば、管の内部に対極を挿入し、管の両端部と対極との間を封止部材により封止すれば足りる。このため、従来の平面構造の色素増感光電変換素子のように、色素増感多孔質半導体層を形成した透明導電性基板と対極を形成した基板とを対向させ、その外周部を封止部材により封止する場合に比べて、封止部の面積を大幅に減少させることが可能である。これによって、色素増感光電変換素子の耐久性、特に屋外における耐久性を格段に向上させることができる。
この発明によれば、色素増感光電変換素子の構造の最適化により、光の入射角度に対する発電量の変化を大幅に低減することができ、しかも耐久性の向上を図ることができる。そして、このような優れた色素増感光電変換素子を用いることにより、高性能の光電変換素子モジュール、電子機器、移動体および発電システムを得ることができる。
この発明の第1の実施形態による色素増感光電変換素子を示す側面図である。 この発明の第1の実施形態による色素増感光電変換素子を示す縦断面図である。 この発明の第1の実施形態による色素増感光電変換素子を示す横断面図である。 この発明の実施例2による光電変換素子モジュールを示す平面図である。 この発明の実施例2による光電変換素子モジュールを示す断面図である。 この発明の実施例1および比較例1による色素増感光電変換素子ならびに実施例2および比較例2による光電変換素子モジュールの光電変換効率の維持率の光の入射角度依存性を示す略線図である。 この発明の実施例1および比較例1による色素増感光電変換素子ならびに実施例2および比較例2による光電変換素子モジュールの光電変換効率の維持率の屋外暴露日数依存性を示す略線図である。 この発明の実施例3による光電変換素子モジュールを示す断面図である。 この発明の第3の実施形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。 この発明の第4の実施形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。 この発明の第4の実施形態による色素増感光電変換素子の製造方法を説明するための模式図である。 従来の色素増感太陽電池の問題点およびこの問題点の解決方法を説明するための略線図である。
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
図1〜図3はこの発明の第1の実施形態による色素増感光電変換素子を示し、図1は側面図、図2は縦断面図、図3は横断面図を示す。
図1〜図3に示すように、この色素増感光電変換素子は、透明材料からなる円形断面の管1の内面に、透明導電層2、色素を担持した半導体微粒子からなる色素増感多孔質半導体層3(色素増感半導体電極)および電解質層4が順次設けられ、この管1の中央部にこの管1の中心軸に沿って延在するように対極5が挿入された構造を有する。この対極5は、例えば棒状、管状あるいはワイヤー状の形状を有する。この場合、この対極5は管1よりも少し長く、その一端部5aは管1の一端部1aとほぼ一致しており、他端部5bは管1の他端部1bから少し突き出ている。管1の一端部1aと対極5の一端部5aとの間および管1の他端部1bと対極5の他端部5bとの間は封止部材6により封止されており、電解質層4が外部に洩れないようになっている。対極5および透明導電層2には、それぞれリード線7、8が接続されている。
管1を構成する透明材料、透明導電層2、色素増感多孔質半導体層3、電解質層4および対極5としては、すでに挙げたものの中から、必要に応じて選択することができる。
また、この色素増感光電変換素子の長さや直径に特に制限はなく、この色素増感光電変換素子の用途、出力などに応じて適宜決められる。
次に、この色素増感光電変換素子の製造方法について説明する。
まず、透明材料からなり、所定の長さ、外径および内径を有する管1を用意する。次に、この管1の内面に透明導電層2を形成する。この透明導電層2の形成には、例えば湿式コーティング法、好適にはスプレー熱分解法が用いられる。次に、この透明導電層2の内面に、半導体微粒子が分散されたペーストを所定の厚さに塗布する。次に、管1および透明導電層2の全体を所定温度に加熱して半導体微粒子を焼結する。次に、この半導体微粒子が焼結された管1および透明導電層2の全体を色素溶液に浸漬するなどして半導体微粒子に色素を担持させる。こうして色素増感多孔質半導体層3が形成される。
一方、所定の長さおよび直径を有する対極5を用意する。そして、この対極5を管1の中央部に挿入し、対極5と管1とを、この対極5と管1の内面に形成された色素増感多孔質半導体層3とが所定の間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔をおいて互いに対向するように保持するとともに、管1の一端部1aと対極5の一端部5aとの間および管1の他端部1bと対極5の他端部5bとの間を封止部材6により封止して電解質層4が封入される空間を作り、この空間に予め形成された注入口から電解質層4を注入する。その後、この注入口を塞ぐ。次に、対極5および透明導電層2にそれぞれリード線7、8を接続する。こうして、色素増感光電変換素子が製造される。
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
外部から管1に入射した光は、この管1および透明導電層2を透過して色素増感多孔質半導体層3に入射し、この色素増感多孔質半導体層3の色素を励起して電子を発生する。この電子は、速やかに色素から色素増感多孔質半導体層3の半導体微粒子に渡される。一方、電子を失った色素は電解質層4のイオンから電子を受け取り、電子を渡した分子は再び対極5の表面で電子を受け取る。この一連の反応により、色素増感多孔質半導体層3と電気的に接続された透明導電層2と対極5との間に起電力が発生する。こうして光電変換が行われる。
以上のように、この第1の実施形態によれば、色素増感光電変換素子が、透明材料からなる管1の内面に透明導電層2、色素増感多孔質半導体層3および電解質層4が順次設けられ、この管1の中央部に対極5が挿入された構造を有することにより、管1の表面にどの方向から光が入射しても光電変換が可能であり、このため光の入射角度に対する発電量の変化を大幅に低減することができる。また、この色素増感光電変換素子は封止部の面積が極めて小さいため、屋外における耐久性も極めて優れている。
実施例1
半導体微粒子としてTiO2 微粒子を用いた。TiO2 微粒子が分散されたペーストを非特許文献2を参考にして以下のように作製した。125mlのチタンイソプロポキシドを750mlの0.1M硝酸水溶液に室温で撹拌しながらゆっくり滴下した。滴下が終了したら、この溶液を80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌して、白濁した半透明のゾル溶液を得た。このゾル溶液を室温まで放冷し、ガラスフィルターでろ過した後、700mlにメスアップした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱処理を行った後、1時間超音波処理を行うことにより分散処理した。次に、この溶液をエバポレーターにより40℃で濃縮し、TiO2 の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、ペースト中のTiO2 に対して20wt%のポリエチレングリコール(分子量50万)とペースト中のTiO2 に対して30wt%の粒径200nmのアナターゼ型TiO2 を添加し、これらを撹拌脱泡機で均一に混合し、増粘したTiO2 ペーストを得た。
透明材料からなる管1として石英管(内径2.5mmφ、長さ50mm)を用い、フッ化アンモニウムとジブチルスズジアセテートのエタノール溶液とを用いたスプレー熱分解法により、この石英管の内壁に透明導電層2としてフッ素ドープSnO2 膜を形成した。また、この石英管には電解液注入用の注入口として0.5mmφの穴を2箇所開けた。
次に、石英管の外周面をマスク材によりマスキングし、上記のように得られたTiO2 ペーストを、石英管の内面に形成された透明導電層2としてのフッ素ドープSnO2 膜上にディップコート法により塗布した後、450℃に30分間保持し、このフッ素ドープSnO2 膜上にTiO2 を焼結した。次に、こうしてTiO2 の焼結を行った石英管を0.05MのTiCl4 水溶液中に浸漬させ、70℃に30分間保持した後、洗浄を行い、その後再び450℃で30分間焼成を行った。
次に、こうして作製したTiO2 焼結体の不純物を除去し、活性を高める目的で、紫外線照射装置により30分間、紫外線露光を行った。
次に、0.3mMのシス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2' −ジピリジル−4,4' −ジカルボン酸)−ルテニウム(II)ジテトラブチルアンモニウム塩(cis-bis(isothiocyanato)bis(2,2'-bipyridyl-4,4'-dicarboxylato)-ruthenium(II)bis-tetrabutylammonium salt) (N719色素)を溶解したtert−ブチルアルコール/アセトニトリル混合溶媒(体積比1:1)に上記のTiO2 焼結体を室温下、24時間浸漬させ、色素を担持させた。このTiO2 焼結体を4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液、アセトニトリルの順で洗浄し、暗所で乾燥させた。
対極5として、2.4mmφ、長さ60mmのTi棒にPtめっき(厚さ200nm)を施したものを用いた。
次に、上記のように準備された石英管の内部に上記のPtめっきTi棒を挿入し、石英管の端部を、封止部材6にアクリル系UV硬化樹脂を用いて封止した。
一方、メトキシアセトニトリル3gにヨウ化ナトリウム(NaI)0.04g、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨーダイド0.479g、ヨウ素(I2 )0.0381g、4−tert−ブチルピリジン0.2gを溶解させ、電解質組成物を調製した。
上記混合溶液を予め石英管に形成した注入口から送液ポンプを用いて注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。次に、注入口にアクリル系UV硬化樹脂を滴下し、ガラス基板を被せて硬化させ、色素増感光電変換素子を得た。
この色素増感光電変換素子の有効面積は、光の入射方向に対して1cm2 (0.25cm(石英管の内径)×4cm(TiO2 焼結体の長さ)である。
実施例2
図4および図5に示すように、実施例1で作製した色素増感光電変換素子10を用いて光電変換素子モジュールを作製した。ここで、図4および図5はそれぞれこの光電変換素子モジュールの平面図および横断面図である。
すなわち、図4および図5に示すように、実施例1で作製した色素増感光電変換素子10を10本直列に接続し、二枚の50mm角のガラス基板11、12の間へ並べて挟み込み、その隙間へ2液混合型シリコーンゴム13を充填し、硬化させ、光電変換素子モジュール20を得た。この光電変換素子モジュール20の有効面積は、光の入射方向に対して10cm2 (0.25cm×4cm×10セル) である。
比較例1
透明基材として10mm×50mmの平坦な石英基板、対極としてPtめっき(厚さ200nm)を施した10mm×50mmの平坦なTi板を用いたこと以外は実施例1と同様に色素増感光電変換素子を作製した。この色素増感光電変換素子の有効面積は、光の入射方向に対して1cm2 (0.25cm×4cm)である。
比較例2
比較例1で作製した色素増感光電変換素子を10本直列に接続し、二枚の50mm角のガラス基板の間へ並べて挟み込み、その隙間へ2液混合型シリコーンゴムを充填し、硬化させ、光電変換素子モジュールを得た。この光電変換素子モジュールの有効面積は、光の入射方向に対して10cm2 (0.25cm×4cm×10セル) である。
以上のように作製した実施例1および比較例1の色素増感光電変換素子ならびに実施例2および比較例2の光電変換素子モジュールにおいて、擬似太陽光(AM1.5,100mW/cm2 )照射時に光の入射角度を90°から0°まで変化させた場合の光電変換効率の維持率を図6に示す。
上記の光電変換素子および光電変換素子モジュールを屋外に暴露し、10日おきに90日まで光電変換効率を測定した。図7にこのときの光電変換効率の維持率を示す。
図6から、実施例1の色素増感光電変換素子の光電変換効率は、光の入射角度依存性が全くないことが分かる。また、実施例2の光電変換素子モジュールも、比較例2の光電変換素子モジュールと比較して、光電変換効率の光の入射角度依存性が少なく、より広角において光電変換可能となった。
また、図7から、実施例1の色素増感光電変換素子および実施例2の光電変換素子モジュールは屋外暴露における光電変換効率の維持率が高いことが分かる。
実施例3
色素としてブラックダイ、すなわちトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2''−ターピリジン−4,4' ,4''−トリカルボン酸、トリス−テトラブチルアンモニウム塩(tris(isothiocyanato)-ruthenium(II)-2,2':6',2''-terpyridine-4,4',4''-tricarboxylic acid,tris-tetrabutylammonium salt)を用いたこと以外は実施例1と同様に色素増感光電変換素子を作製した。この色素増感光電変換素子の有効面積は、光の入射方向に対して1cm2 (0.25cm×4cm)である。
図8に示すように、実施例1で作製した色素増感光電変換素子10を10本直列に接続したものと、実施例3で作製した色素増感光電変換素子30を10本直列に接続したものとを上下に積層し、これを二枚の50mm角のガラス基板11、12の間へ並べて挟み込み、その隙間へ2液混合型シリコーンゴム13を充填し、硬化させ、光電変換素子モジュール40を得た。この光電変換素子モジュール40の有効面積は、光の入射方向に対して10cm2 (0.25cm×4cm×10セル) である。
この光電変換素子モジュール40では、実施例1の色素増感光電変換素子10で色素として使用しているN719は波長500nm付近に吸収ピークを有し、実施例3の色素増感光電変換素子30で色素として使用しているブラックダイは波長650nm付近に吸収ピークを有し、吸収帯の波長域が互いに異なるため、色素増感光電変換素子10だけ、あるいは色素増感光電変換素子30だけを用いた光電変換素子モジュールに比べて、太陽光スペクトルのより広い波長帯の光を光電変換することができ、より高い量子効率を得ることができる。このため、発電量を増加させることができる。
次に、この発明の第2の実施形態による色素増感光電変換素子について説明する。
この色素増感光電変換素子においては、色素増感多孔質半導体層3において、色素分子がその酸官能基により半導体微粒子に吸着しており、かつ、色素分子の一部の酸官能基が、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和されてアニオンとなっている。こうすることで、アニオン間に働く斥力により、色素分子同士の会合が抑制され、色素分子間の電子トラップの大幅な低減を図ることができる。その他のことは第1の実施形態による色素増感光電変換素子と同様である。
この色素増感光電変換素子の製造方法は、色素溶液において、例えば、予め、色素分子の一部の酸官能基をLi、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和してアニオンとしておくことを除いて、第1の実施形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点に加えて次のような利点を得ることができる。すなわち、色素の酸官能基の一部をアルカリ化合物により中和することでこの酸官能基はアニオンとなり、その負電荷間に働く斥力(電荷反発)により増感色素分子同士の会合が起こりにくくなるため、色素分子間の電子トラップの大幅な低減を図ることができ、これによって色素増感光電変換素子の電流、電圧を大きく増加させることができ、光電変換効率の向上を図ることができる。
実施例4
TiO2 焼結体の不純物を除去し、さらに紫外線露光を行った後に色素を担持させる際に下記のプロセスを用いること以外は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を作製した。
すなわち、十分に精製したシス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2' −ジピリジル−4,4' −ジカルボン酸)−ルテニウム(II)2水和物を1mMの濃度でメタノールに溶解させた。次に、この溶液にNaOHをカルボン酸数の0.5倍量添加し十分に撹拌し、カルボキシ基の中和を行った後、エバポレーターで濃縮し、ジエチルエーテルにて再結晶させた。この沈殿物をろ別し、ジエチルエーテルで洗浄後、50℃で24時間真空乾燥で乾燥させた。
次に、こうして得られたシス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2'
−ジピリジル−4,4' −ジカルボン酸)−ルテニウム(II)2Na塩を0.3mMの濃度で溶解したtert−ブチルアルコール/アセトニトリル混合溶媒(体積比1:1)に上記のTiO2 焼結体を室温下、24時間浸漬させ、色素を担持させた。このTiO2 焼結体を4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液、アセトニトリルの順で洗浄し、暗所で乾燥させた。
こうして作製した実施例4の色素増感光電変換素子では、部分中和なしの色素および完全中和の色素を用いたものと比較して、フィルファクターおよび開放電圧が飛躍的に向上し、光電変換効率に優れている。
次に、この発明の第3の実施形態による色素増感光電変換素子について説明する。
図9に示すように、この色素増感光電変換素子においては、透明導電層2上に透明な金属酸化物層9が設けられ、その上に色素増感多孔質半導体層3が設けられている。具体的には、例えば、透明導電層2を形成した後、湿式コーティング法、例えばスプレー熱分解法により金属酸化物層9として厚さが20nmのNb2 5 層を形成する。その他のことは、第1の実施形態による色素増感光電変換素子と同様である。
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点に加えて次のような利点を得ることができる。すなわち、金属酸化物層9により透明導電層2と電解質層4として用いられる電解液とが直接接することが防止されるため、逆電子移動反応による漏れ電流を大幅に低減することができ、それによってフィルファクターおよび開放電圧を高くすることができ、光電変換効率のより一層の向上を図ることができる。
次に、この発明の第4の実施形態による色素増感光電変換素子について説明する。
図10に示すように、この色素増感光電変換素子においては、色素増感多孔質半導体層3には色素51が吸着しているだけでなく、この色素51の間の隙間の部分に添加剤52も吸着している。そして、この場合、電解質層4を構成する電解液中には、従来と異なり添加剤が加えられていない。色素51および添加剤52は、例えば、すでに挙げたものの中から必要に応じて選択することができる。その他の構成は第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
次に、この色素増感光電変換素子の製造方法について説明する。
まず、第1の実施形態と同様にして管1の内面に透明導電層2および色素増感多孔質半導体層3を順次形成する。この状態の色素増感多孔質半導体層3を図11Aに模式的に示す。この色素増感多孔質半導体層3は第1の実施形態と同様に形成する。
次に、図11Bに示すように、容器53内に、添加剤52を溶媒に溶かした溶液54を入れておき、この溶液54中に色素増感多孔質半導体層3が形成された管1を浸漬し、さらに容器54に蓋55をし、色素増感多孔質半導体層3に添加剤52を吸着させる。具体例を挙げると、溶液54として、NaI0.1M、1−プロピル−2,3ジメチルイミダゾリウムヨウ化物(DMP II)0.6M、I2 0.05M、添加剤であるtert−ブチルピリジン(TBP)0.5Mのメトキシアセトニトリル(MeACN)溶液からなる電解液を調製し、この電解液に、色素増感多孔質半導体層3を5〜10分間浸漬し、色素が吸着できなかったサイトの色素増感多孔質半導体層3の表面に添加剤52としてtert−ブチルピリジンを吸着させた。その後、メトキシアセトニトリルにより、色素増感多孔質半導体層3に付着した電解液をすすぎ落とし、風乾させる。
こうして添加剤52を吸着させた後、色素増感多孔質半導体層3が形成された管1を容器53から取り出す。この後、色素増感多孔質半導体層3の表面を洗浄する。この状態の色素増感多孔質半導体層3を図11Cに模式的に示す。
この後、第1の実施形態と同様に、管1の中央部に対極5を挿入し、それらの間に電解質層4を封入し、図10に示す色素増感光電変換素子を製造する。
この第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点に加えて次のような利点を得ることができる。すなわち、色素増感多孔質半導体層3に添加剤52を予め吸着させておき、かつ電解質層4として添加剤52を加えていない電解液を用いているので、色素増感多孔質半導体層3の表面に予め吸着させた添加剤52により逆電子移動反応を防止しつつ、光電変換効率の経時劣化を防止することができ、寿命の向上を図ることができる。
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、構造、形状、材料、原料、プロセスなどはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材料、原料、プロセスなどを用いてもよい。
また、例えば、第2〜第4の実施形態の二つ以上を組み合わせてもよい。
1…管、2…透明導電層、3…色素増感多孔質半導体層、4…電解質層、5…対極、6…封止部材、7、8…リード線、9…金属酸化物層、51…色素、52…添加剤

Claims (11)

  1. 増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有し、
    上記増感色素の分子は上記多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有し、これらの酸官能基の一部が、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和されており、上記酸官能基の中和量は上記増感色素の分子内の上記酸官能基の数に対して0.35〜0.65である色素増感光電変換素子。
  2. 上記酸官能基はカルボキシ基である請求項1記載の色素増感光電変換素子。
  3. 上記増感色素の分子はRu、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属の錯体であり、そのリガンドがピリジン環またはイミダゾリウム環を含む分子である請求項1記載の色素増感光電変換素子。
  4. 上記増感色素の分子の基本骨格はシス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2"−ターピリジン−4,4'
    ,4" −トリカルボン酸である請求項1記載の色素増感光電変換素子。
  5. 上記多孔質半導体層が半導体微粒子からなる請求項1記載の色素増感光電変換素子。
  6. 上記色素増感光電変換素子が色素増感太陽電池である請求項1記載の色素増感光電変換素子。
  7. 増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有する色素増感光電変換素子を製造する場合に、
    上記増感色素の分子として上記多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有するものを用い、これらの酸官能基の一部を、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和し、上記酸官能基の中和量を上記増感色素の分子内の上記酸官能基の数に対して0.35〜0.65とするようにした色素増感光電変換素子の製造方法。
  8. 増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有し、
    上記増感色素の分子は上記多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有し、これらの酸官能基の一部が、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和されており、上記酸官能基の中和量は上記増感色素の分子内の上記酸官能基の数に対して0.35〜0.65である色素増感光電変換素子を少なくとも一つ有する光電変換素子モジュール。
  9. 増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有し、
    上記増感色素の分子は上記多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有し、これらの酸官能基の一部が、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和されており、上記酸官能基の中和量は上記増感色素の分子内の上記酸官能基の数に対して0.35〜0.65である色素増感光電変換素子を用いた電子機器。
  10. 増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有し、
    上記増感色素の分子は上記多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有し、これらの酸官能基の一部が、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和されており、上記酸官能基の中和量は上記増感色素の分子内の上記酸官能基の数に対して0.35〜0.65である色素増感光電変換素子を用いた移動体。
  11. 増感色素が吸着した多孔質半導体層と対極との間に電解質層を有し、
    上記増感色素の分子は上記多孔質半導体層に吸着するための酸官能基を複数個有し、これらの酸官能基の一部が、Li、Na、K、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、イミダゾリウム化合物およびピリジニウム化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属または化合物の水酸化物からなるアルカリ化合物により中和されており、上記酸官能基の中和量は上記増感色素の分子内の上記酸官能基の数に対して0.35〜0.65である色素増感光電変換素子を用いた発電システム。
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