JP2013161660A - 光電変換素子、光電変換素子の製造方法、電子機器および建築物 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来に比べて長時間使用後の光電変換効率の維持率の向上を図ることができる色素増感太陽電池などの光電変換素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光電変換素子は、多孔質電極3と対極6との間にヨウ素系の電解液からなる電解質層7が設けられた構造を有する。電解液に、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含ませる。色素増感光電変換素子においては、多孔質電極3の表面に光増感色素を結合させる。
【選択図】図1
【解決手段】光電変換素子は、多孔質電極3と対極6との間にヨウ素系の電解液からなる電解質層7が設けられた構造を有する。電解液に、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含ませる。色素増感光電変換素子においては、多孔質電極3の表面に光増感色素を結合させる。
【選択図】図1
Description
本開示は、光電変換素子、光電変換素子の製造方法、電子機器および建築物に関し、例えば色素増感太陽電池に用いて好適な光電変換素子およびその製造方法ならびにこの光電変換素子を用いる電子機器または建築物に関するものである。
太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
従来より、太陽電池としては、単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池および非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池が主に用いられている。
一方、1991年にグレッツェルらが提案した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を得ることができ、しかも従来のシリコン系太陽電池とは異なり製造の際に大掛かりな装置を必要とせず、低コストで製造することができることなどにより注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
この色素増感太陽電池は、一般的に、光増感色素を結合させた酸化チタンなどからなる多孔質電極と白金などからなる対極とを対向させ、それらの間に電解液からなる電解質層が充填された構造を有する。電解液としては、ヨウ素やヨウ化物イオンなどの酸化還元対を含む電解質を溶媒に溶解させたヨウ素系電解液が多く用いられる。
従来、上記のヨウ素系電解液のヨウ化物アニオン源としては、主としてイミダゾリウム系のヨウ化物塩が用いられてきた(例えば、特許文献1参照。)。
Nature,353,p.737-740,1991
Journal of Physical Chemistry B 2008,112, 13775-13781
しかしながら、ヨウ化物アニオン源としてイミダゾリウム系のヨウ化物塩を含む電解液を用いた色素増感太陽電池では、例えば1000時間程度以上の長時間使用すると光電変換効率が初期に比べて大幅に低下してしまうという問題があった。
なお、ヨウ化物アニオン源としてアミジン系ヨウ化物塩を含む非水電解液およびこれを用いた色素増感太陽電池も提案されているが、これは非水電解液の光劣化を防止することを目的とするものに過ぎない(特許文献2参照。)。また、溶融塩電解質において、窒素原子とともに5または6員環の芳香族カチオンを形成しうる原子団と置換または無置換のアルキル基とを含むヨウ化物、窒素またはリン原子とこれに結合した置換または無置換のアルキル基とを含むヨウ化物などを溶融塩として用いることが提案されているが、溶融塩電解質である点で本開示とは直接関係ない(特許文献2参照。)。
そこで、本開示が解決しようとする課題は、ヨウ素系電解液のヨウ化物アニオン源としてイミダゾリウム系のヨウ化物塩を用いた場合に比べて、長時間使用後の光電変換効率の維持率の向上を図ることができる色素増感太陽電池などの光電変換素子を提供することである。
本開示が解決しようとする他の課題は、ヨウ素系電解液のヨウ化物アニオン源としてイミダゾリウム系のヨウ化物塩を用いた場合に比べて、長時間使用後の光電変換効率の維持率の向上を図ることができる光電変換素子の製造方法を提供することである。
本開示が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた光電変換素子を用いた高性能の電子機器および建築物を提供することである。
上記課題および他の課題は、添付図面を参照した以下の明細書の記述より明らかとなるであろう。
上記課題を解決するために、本開示は、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である。
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である。
また、本開示は、
多孔質電極と対極との間に、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含むヨウ素系の電解液を含む電解質層が設けられた構造を形成する工程を有する光電変換素子の製造方法である。
多孔質電極と対極との間に、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含むヨウ素系の電解液を含む電解質層が設けられた構造を形成する工程を有する光電変換素子の製造方法である。
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子を有し、
上記光電変換素子が、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である電子機器である。
少なくとも一つの光電変換素子を有し、
上記光電変換素子が、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である電子機器である。
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子および/または複数の光電変換素子が電気的に接続されている光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子が、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である建築物である。
少なくとも一つの光電変換素子および/または複数の光電変換素子が電気的に接続されている光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子が、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である建築物である。
ヨウ化物アニオン源として用いられる上記の化合物の化学構造は下記の通りである。これらの化合物の合成方法としては従来公知の方法を用いることができる。
ヨウ化物アニオン源としては、より一般的には、下記の化合物1〜3を用いることも可能である。
化合物1は、4級化されたアンモニウムカチオンの炭化水素基のうち、少なくとも3つの炭化水素基が環構造を形成しているカチオンを有する。Aはアルキル鎖によって形成された環構造を示す。Bはヘテロ原子Nに結合するアルキル鎖を示す。炭素数やアルキル鎖の分岐構造は任意であるが、炭素数1〜8が望ましい。また、Bは、環A上の原子と結合し、環構造を形成していてもよい。Xはアニオンを示す。Xは系の酸化還元反応に寄与するアニオンであれば特に限定されない。環A中の炭素数は任意であるが、炭素数3〜6が望ましい。環A上の炭素原子、Bの炭素原子は適切な官能基によって置換されていてもよい。環A上の炭素原子は適切なヘテロ原子(O、N、Sなど)によって置換されていてもよい。
化合物2は、イオン化されたアミジニウムカチオンのうち、少なくとも一つの環構造が形成されているカチオンを有する。A1、A2はアルキル鎖によって形成された環構造を示し、A1、A2のうち少なくとも一つは環構造を形成している。Bはヘテロ原子Nに結合するアルキル鎖を示す。炭素数やアルキル鎖の分岐構造は任意であるが、炭素数1〜8が望ましい。Xはアニオンを示す。Xは系の酸化還元反応に寄与するアニオンであれば特に限定されない。環A1、A2中の炭素数は任意であるが、炭素数2〜5が望ましい。環A1、A2上の炭素原子、Bの炭素原子は適切な官能基によって置換されていてもよい。環A上の炭素原子は適切なヘテロ原子(O、N、Sなど)によって置換されていてもよい。Bは、環A1、A2上の原子と相互に結合し、環構造を形成していてもよい。
・化合物3
化合物3は、イオン化されたグアニジニウムカチオンのうち、少なくとも一つの環構造が形成されているカチオンを有する。A1、A2はアルキル鎖によって形成された環構造を示し、A1、A2のうち少なくとも一つは環構造を形成している。B1、B2はヘテロ原子Nに結合するアルキル鎖を示す。炭素数やアルキル鎖の分岐構造は任意であるが、炭素数1〜8が望ましい。Xはアニオンを示す。Xは系の酸化還元反応に寄与するアニオンであれば特に限定されない。環A1 、A2 中の炭素数は任意であるが、炭素数2〜5が望ましい。環A1、A2上の炭素原子、Bの炭素原子は適切な官能基によって置換されていてもよい。環A1 、A2 上の炭素原子は適切なヘテロ原子(O、N、Sなど)によって置換されていてもよい。B1、B2は、環A1、A2上の原子と相互に結合し、環構造を形成していてもよい。
光電変換素子は、典型的には、多孔質電極に光増感色素が結合(あるいは吸着)した色素増感光電変換素子である。この場合、光電変換素子の製造方法は、典型的には、多孔質電極に光増感色素を結合させる工程をさらに有する。この多孔質電極は、半導体からなる微粒子により構成される。半導体は、好適には、酸化チタン(TiO2 )、取り分けアナターゼ型のTiO2 を含む。
多孔質電極としては、いわゆるコア−シェル構造の微粒子により構成されたものを用いてもよく、この場合には光増感色素を結合させないでもよい。この多孔質電極としては、好適には、金属からなるコアとこのコアを取り巻く金属酸化物からなるシェルとからなる微粒子により構成されたものが用いられる。このような多孔質電極を用いると、この多孔質電極と対極との間に、電解液からなる電解質層を設けた場合、電解液の電解質が金属/金属酸化物微粒子の金属からなるコアと接触することがないことから、電解質による多孔質電極の溶解を防止することができる。このため、金属/金属酸化物微粒子のコアを構成する金属として、従来使用が困難であった、表面プラズモン共鳴の効果が大きい金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などを用いることができ、光電変換において表面プラズモン共鳴の効果を十分に得ることができる。また、電解液の電解質としてヨウ素系の電解質を用いることができる。金属/金属酸化物微粒子のコアを構成する金属としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などを用いることもできる。金属/金属酸化物微粒子のシェルを構成する金属酸化物としては使用する電解質に溶解しない金属酸化物が用いられ、必要に応じて選ばれる。このような金属酸化物としては、好適には、酸化チタン(TiO2 )、酸化スズ(SnO2 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )および酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属酸化物が用いられるが、これらに限定されない。例えば、酸化タングステン(WO3 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )などの金属酸化物を用いることもできる。微粒子の粒径は適宜選ばれるが、好適には1〜500nmである。また、微粒子のコアの粒径も適宜選ばれるが、好適には1〜200nmである。
光電変換素子は、最も典型的には、太陽電池として構成される。ただし、光電変換素子は、太陽電池以外のもの、例えば光センサーなどであってもよい。
電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品などである。この場合、光電変換素子は、例えばこれらの電子機器の電源として用いられる太陽電池である。
建築物は、光電変換素子および/または光電変換素子モジュールを設置可能な外壁面を有する建築物であれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には、例えば、ビルディング、マンション、戸建住宅、アパート、駅舎、校舎、庁舎、競技場、球場、病院、教会、工場、倉庫、小屋、橋などが挙げられる。建築物は、好適には、少なくとも一つの窓部(例えば、ガラス窓)あるいは採光部を有する。建築物に設置される光電変換素子および/または光電変換素子モジュールのうちの窓部あるいは採光部に設けられるものは、好適には2枚の透明板の間、典型的には2枚のガラス板の間に挟持され、必要に応じて固定される。
ところで、従来、色素増感太陽電池の初期光電変換効率を向上させる電解液用添加剤として、グアニジニウムチオシアネート(guanidinium thiocyanate,GuSCN)が知られている(非特許文献2参照。)。しかしながら、本発明者の検討によれば、電解液にGuSCNを添加した色素増感太陽電池は、暗所で85℃の耐久試験を行った結果、耐久性が大幅に低下する問題があることが分かった。本発明者の検討によれば、この問題は次のようにして解決することができる。すなわち、電解質層を構成する電解液に、GuOTf(グアニジニウム トリフルオロスルホネート(guanidinium trifluorosulfonate))、EMImSCN(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム チオシアネート(1-ethyl-3-methylimidazolium thiocyanate))、EMImOTf(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロスルホネート(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluorosulfonate))、EMImTFSI(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide))、EMImTfAc(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセテート(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluoroacetate))、EMImDINHOP(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジネオヘキシルホスフィネート(1-ethyl-3-methylimidazolium dineohexylphosphinate))、EMImMeSO3 (1−エチル−3−メチルイミダゾリウム メチルスルホネート(1-ethyl-3-methylimidazolium methylsulfonate))、EMImDCA(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアノアミド(1-ethyl-3-methylimidazolium dicyanoamide))、EMImBF4 (1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)) 、EMImPF6 (1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(1-ethyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate)) 、EMImFAP(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(1-ethyl-3-methylimidazolium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate))、EMImEt2 PO4 (1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジエチルホスフェート(1-ethyl-3-methylimidazolium diethylphosphate))およびEMImCB11H12(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム 1−カルバ−closo −ドデカボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium 1-carba-closo-dodecaborate))からなる群より選ばれた少なくとも一種の添加剤を添加する。このような添加剤を電解液に添加することにより、例えば暗所で85℃の耐久試験でも光電変換効率の維持率の大幅な向上を図ることができ、耐久性の大幅な向上を図ることができる。
ここで、上記のGuOTf、EMImSCN、EMImOTf、EMImTFSI、EMImTfAc、EMImDINHOP、EMImMeSO3 、EMImDCA、EMImBF4 、EMImPF6 、EMImFAP、EMImEt2 PO4 およびEMImCB11H12をカチオンとアニオンとを区分して表記すると、それぞれ、[Gu][OTf]、[EMIm][SCN]、[EMIm][OTf]、[EMIm][TFSI]、[EMIm][TfAc]、[EMIm][DINHOP]、[EMIm][MeSO3 ]、[EMIm][DCA]、[EMIm]BF4 、[EMIm]PF6 、[EMIm][FAP]、[EMIm][Et2 PO4 ]および[EMIm]CB11H12である。
上記の添加剤を構成するカチオンおよびアニオンの化学構造は下記の通りである。この添加剤の合成方法としては従来公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば次の通りである。すなわち、所望のカチオンの塩化物または臭化物塩を、所望のアニオンを有するリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムまたは銀塩と、水、酢酸エチル、アセトンまたはジクロロメタン中で反応させる。反応後の溶液を濃縮処理後、分液抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶化の処理を行い、減圧真空乾燥する。こうして、目的とする添加剤が得られる。後述の分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩も同様な方法で合成することができる。
(2)アニオン
・[OTf]
・SCN
・[TFSI]
・[TfAc]
・[DINHOP]
・[MeSO3 ]
・[DCA]
・BF4
・PF6
・[FAP]
・[Et2 PO4 ]
・CB11H12
・[OTf]
上記の添加剤の代わりに、下記の一般式(1)、(2)または(3)で表されるカチオンと下記のアニオンのうちのいずれか一つとからなる添加剤(GuSCNを除く)を少なくとも一種添加してもよい。
(2)アニオン
SCN、[DCA]、BF4 、PF6 、[TfAc]、[OTf]、[TFSI]、[MeSO3 ]、[MeOSO3 ]、[HSO4 ]、[FAP]、[DA]、[DPA]、[DINHOP]、[FSI]、[DEPA]、[cheno]、[Et2 PO4 ]、CB11H12、[COSAN]、[cyclicTFSI]、C2 F5 SO3 、C3 F7 SO3 、C4 F9 SO3 、N(C3 F7 SO2 )2 、N(C4 F9 SO2 )2 、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素
SCN、[DCA]、BF4 、PF6 、[TfAc]、[OTf]、[TFSI]、[MeSO3 ]、[MeOSO3 ]、[HSO4 ]、[FAP]、[DA]、[DPA]、[DINHOP]、[FSI]、[DEPA]、[cheno]、[Et2 PO4 ]、CB11H12、[COSAN]、[cyclicTFSI]、C2 F5 SO3 、C3 F7 SO3 、C4 F9 SO3 、N(C3 F7 SO2 )2 、N(C4 F9 SO2 )2 、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素
上記の添加剤を構成するアニオンのうちの[OTf]、SCN、[TFSI]、[TfAc]、[DINHOP]、[MeSO3 ]、[DCA]、BF4 、PF6 、[FAP]、[Et2 PO4 ]およびCB11H12以外のアニオンの化学構造は下記の通りである。
・[MeOSO3 ]
・[HSO4 ]
・[DA]
・[DPA]
・[FSI]
・[DEPA]
・[cheno]
・[COSAN]
・[cyclicTFSI]
・C2 F5 SO3
・C3 F7 SO3
・C4 F9 SO3
・N(C3 F7 SO2 )2
・N(C4 F9 SO2 )2
・フッ素
・塩素
・臭素
・ヨウ素
さらに、上記の添加剤の代わりに、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を添加してもよい。この分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンの具体例を挙げると次の通りであるが、これに限定されるものではない。
アニオン 分子量[g/mol]
[OTf] 149.07
[TFSI] 280.15
[TfAc] 113.02
[DINHOP] 233.31
[DCA] 66.04
BF4 86.81
PF6 144.96
[FAP] 445.01
[MeSO3 ] 95.1
[Et2 PO4 ] 153.09
CB11H12 143.03
[DfAc] 95.03
[2F] 139.1
[3F] 139.1
[Ph] 121.11
[OAc] 59.04
[OTf] 149.07
[TFSI] 280.15
[TfAc] 113.02
[DINHOP] 233.31
[DCA] 66.04
BF4 86.81
PF6 144.96
[FAP] 445.01
[MeSO3 ] 95.1
[Et2 PO4 ] 153.09
CB11H12 143.03
[DfAc] 95.03
[2F] 139.1
[3F] 139.1
[Ph] 121.11
[OAc] 59.04
分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩のカチオンとしては、既に挙げたカチオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
ここで、上記の各種の添加剤あるいは分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩は、下記の通り、典型的には、共役酸の水中のpKa が0.23≦pKa (水中)≦4.76の範囲内にあるカルボン酸系アニオンを有する塩である。あるいは、上記の各種の添加剤あるいは分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩は、下記の通り、典型的には、O−H酸またはN−H酸のアニオンまたは錯アニオンを有し、共役酸のアセトニトリル(AN)中のpKa が0.3≦pKa (AN中)≦23.51となる塩である。本発明者の知見によれば、pKa (水中)とpKa (AN中)との間には、概ね、pKa (AN中)=1.801×pKa (水中)+10.27の関係が成立する。
アニオン 酸のタイプ pKa (水中) pKa (AN中)
[SCN] 無機 0.85
[OTf] OH 0.7
[TFSI] NH 0.3
[TfAc] OH 0.23
[DCA] NH 2.6
BF4 錯体 1.8
[DfAc] OH 1.24
[2F] OH 3.27
[3F] OH 3.87
[Ph] OH 4.25 21.51
[OAc] OH 4.76 23.51
[SCN] 無機 0.85
[OTf] OH 0.7
[TFSI] NH 0.3
[TfAc] OH 0.23
[DCA] NH 2.6
BF4 錯体 1.8
[DfAc] OH 1.24
[2F] OH 3.27
[3F] OH 3.87
[Ph] OH 4.25 21.51
[OAc] OH 4.76 23.51
ところで、従来の色素増感太陽電池は一般的に、次のような方法により製造される。まず、透明導電性基板上に多孔質電極を形成する。次に、対極を用意し、透明導電性基板上の多孔質電極と対極とを互いに対向するように配置する。そして、透明導電性基板および対極の外周部に封止材を形成して電解質層が封入される空間を作る。次に、対極に予め形成された注液穴から電解液を注入し、電解質層を形成する。次に、対極の注液穴から外側にはみ出た電解液を拭き取る。その後、注液穴を塞ぐように対極上に封止板を貼り付ける。以上のようにして、目的とする色素増感太陽電池が製造される。しかしながら、この従来の色素増感太陽電池においては、色素増感太陽電池が何らかの原因で破損したりした際には、多孔質電極と対極との間に封入された電解質層から外部に電解液が漏れてしまうおそれがあった。本発明者らは、この問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、色素増感太陽電池、より一般的には光電変換素子を、多孔質電極と対極との間に、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層を設けた構造とすることが有効であることを見出した。このような光電変換素子の製造方法は、例えば、多孔質電極および対極のうちの一方の上に多孔質膜を設置する工程と、上記多孔質膜上に上記多孔質電極および上記対極のうちの他方を設置する工程とを有する。この光電変換素子の製造方法においては、多孔質電極および対極のうちの一方の上に設置する時点の多孔質膜は、電解液を含んでいても、含んでいなくてもよい。電解液を含む多孔質膜を用いる場合には、この電解液を含む多孔質膜が電解質層を構成する。電解液を含まない多孔質膜を用いる場合には、後の工程でこの多孔質膜に電解液を注入することができる。例えば、この多孔質膜を多孔質電極と対極との間に挟んだ状態でこの多孔質膜に電解液を注入することができる。典型的には、多孔質電極上に多孔質膜を設置した後、この多孔質膜上に対極を設置するが、これに限定されるものではない。この光電変換素子の製造方法は、必要に応じて、多孔質電極上に電解液を含む多孔質膜を設置した後、この多孔質膜上に対極を設置する前に、この多孔質膜を圧縮、典型的には多孔質膜を膜面に垂直な方向から押圧することにより圧縮する工程をさらに有する。こうすることで、多孔質膜が圧縮されて体積が減少したときに、多孔質膜の空隙部に含まれる電解液が押し出されて多孔質電極に浸透する。このため、電解液が多孔質膜から多孔質電極に行き渡った状態を容易に実現することができる。電解質層を構成する多孔質膜としては種々のものを用いることができ、構造や材質などは必要に応じて選ばれる。この多孔質膜としては、絶縁性のものが用いられるが、この絶縁性の多孔質膜は、絶縁材料からなるものであっても、例えば、導電性材料からなる多孔質膜の空隙部の表面を絶縁体化したり、空隙部の表面に絶縁膜をコーティングしたものであってもよい。この多孔質膜は、有機材料からなるものでも、無機材料からなるものでもよい。この多孔質膜としては、好適には各種の不織布が用いられ、その材料としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、セルロースなどの各種の有機高分子化合物を用いることができるが、これに限定されるものではない。この多孔質膜の空隙率は必要に応じて選ばれるが、多孔質電極と対極との間に設けられた状態における空隙率(実空隙率)は、好適には50%以上である。この実空隙率は、高い光電変換効率を得る観点からは、好適には、80%以上100%未満に選ばれる。電解質層を構成する多孔質膜に含まれる電解液は、その揮発を防止する観点からは、好適には、低揮発性の電解液、例えばイオン液体を溶媒に用いたイオン液体系電解液が用いられる。イオン液体としては、従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。
本開示によれば、ヨウ素系の電解液が、ヨウ化物アニオン源として上記の1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイドなどの化合物を含むことにより、ヨウ化物アニオン源としてイミダゾリウム系のヨウ化物塩を用いた場合に比べて、長時間使用後の光電変換効率の維持率の向上を図ることができる。そして、この優れた光電変換素子を用いることにより、高性能の電子機器や自家発電可能な建築物などを実現することができる。
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
2.第2の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
3.第3の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
4.第4の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
5.第5の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
6.第6の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
7.第7の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
8.第8の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
2.第2の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
3.第3の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
4.第4の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
5.第5の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
6.第6の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
7.第7の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
8.第8の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
〈1.第1の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
図1は第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す要部断面図である。
図1に示すように、この色素増感光電変換素子においては、透明基板1の一主面に透明電極2が設けられ、この透明電極2上にこの透明電極2より小さい所定の平面形状を有する多孔質電極3が設けられている。この多孔質電極3には一種または複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。一方、対向基板4の一主面に導電層5が設けられ、この導電層5上に対極6が設けられている。この対極6は多孔質電極3と同一の平面形状を有する。透明基板1上の多孔質電極3と対向基板4上の対極6との間に、電解液からなる電解質層7が設けられている。そして、これらの透明基板1および対向基板4の外周部が封止材8で封止されている。この封止材8は透明電極2および導電層5に接しているが、透明電極2を多孔質電極3と同一の平面形状に形成することにより透明基板1に接するようにしてもよいし、対極6を導電層5の全面に形成することによりこの導電層5に接するようにしてもよい。
[色素増感光電変換素子]
図1は第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す要部断面図である。
図1に示すように、この色素増感光電変換素子においては、透明基板1の一主面に透明電極2が設けられ、この透明電極2上にこの透明電極2より小さい所定の平面形状を有する多孔質電極3が設けられている。この多孔質電極3には一種または複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。一方、対向基板4の一主面に導電層5が設けられ、この導電層5上に対極6が設けられている。この対極6は多孔質電極3と同一の平面形状を有する。透明基板1上の多孔質電極3と対向基板4上の対極6との間に、電解液からなる電解質層7が設けられている。そして、これらの透明基板1および対向基板4の外周部が封止材8で封止されている。この封止材8は透明電極2および導電層5に接しているが、透明電極2を多孔質電極3と同一の平面形状に形成することにより透明基板1に接するようにしてもよいし、対極6を導電層5の全面に形成することによりこの導電層5に接するようにしてもよい。
多孔質電極3としては、典型的には、半導体微粒子を焼結させた多孔質半導体層が用いられる。光増感色素はこの半導体微粒子の表面に吸着している。半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する半導体などを用いることができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体であることが好ましい。具体的には、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化スズ(SnO2 )などの半導体が用いられる。これらの半導体の中でも、TiO2 、取り分けアナターゼ型のTiO2 を用いることが好ましい。ただし、半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて、二種類以上の半導体を混合または複合化して用いることができる。また、半導体微粒子の形態は粒状、チューブ状、棒状などのいずれであってもよい。
上記の半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を混合し、この粒子で入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均サイズは20〜500nmであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
多孔質電極3は、できるだけ多くの光増感色素を結合させることができるように、半導体微粒子からなる多孔質半導体層の内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましい。このため、多孔質電極3を透明電極2の上に形成した状態での実表面積は、多孔質電極3の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。この比に特に上限はないが、通常1000倍程度である。
一般に、多孔質電極3の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積に保持することができる光増感色素の量が増加するため、光吸収率が高くなる。一方、多孔質電極3の厚さが増加すると、光増感色素から多孔質電極3に移行した電子が透明電極2に達するまでに拡散する距離が増加するため、多孔質電極3内での電荷再結合による電子の損失も大きくなる。従って、多孔質電極3には好ましい厚さが存在するが、この厚さは一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。
この場合、電解質層7を構成する電解液としてはヨウ素系電解液が用いられ、このヨウ素系電解液には、酸化還元系(レドックス対)、具体的には、例えば、ヨウ素(I2 )と少なくとも化1〜化6のいずれか一種あるいは二種以上の化合物とが含まれる。
電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2M〜3Mである。ヨウ素(I2 )の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5Mである。また、開放電圧や短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることもできる。
電解液を構成する溶媒としては、一般的には、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが用いられる。
電解液を構成する溶媒としてはイオン液体を用いてもよく、こうすることで電解液の揮発の問題を改善することができる。イオン液体としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、具体例を挙げると次の通りである。
・EMImTCB:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラシアノボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetracyanoborate)
・EMImTFSI:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)
・EMImFAP:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(1-ethyl-3-methylimidazolium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate)
・EMImBF4 :1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)
・EMImOTf(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロスルホネート(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluorosulfonate) )
・P222 MOMTFSI(トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスホニル)イミド(triethyl(methoxymethyl)phosphonium bis(trifluoromethylsufonyl)imide)
・EMImTFSI:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)
・EMImFAP:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(1-ethyl-3-methylimidazolium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate)
・EMImBF4 :1−エチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)
・EMImOTf(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロスルホネート(1-ethyl-3-methylimidazolium trifluorosulfonate) )
・P222 MOMTFSI(トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスホニル)イミド(triethyl(methoxymethyl)phosphonium bis(trifluoromethylsufonyl)imide)
透明基板1は、光が透過しやすい材質と形状のものであれば特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができるが、特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、色素増感光電変換素子に外部から侵入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、また、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。具体的には、透明基板1の材料としては、石英やガラスなどの透明無機材料や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチックが挙げられる。透明基板1の厚さは特に制限されず、光の透過率や、光電変換素子内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。
透明基板1上に設けられる透明電極2は、シート抵抗が小さいほど好ましく、具体的には500Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがさらに好ましい。透明電極2を形成する材料としては公知の材料を用いることができ、必要に応じて選択される。この透明電極2を形成する材料は、具体的には、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO2 (FTO)、酸化スズ(IV)SnO2 、酸化亜鉛(II)ZnO、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)などが挙げられる。ただし、透明電極2を形成する材料は、これらに限定されるものではなく、二種類以上を組み合わせて用いることもできる。
多孔質電極3に結合させる光増感色素は、増感作用を示すものであれば特に制限はなく、有機金属錯体、有機色素、金属・半導体ナノ粒子などを用いることができるが、この多孔質電極3の表面に吸着する酸官能基を有するものが好ましい。光増感色素は、一般的には、カルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。光増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、トリフェニルメタン系色素、インドリン系色素、ペリレン系色素、ポリチオフェンなどのπ共役系高分子やそのモノマーの2〜20量体、CdS、CdSeなどの量子ドットなどが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、光増感色素は、これらに限定されるものではない。光増感色素としては、典型的には、これらのうちの一種類のものを用いるが、二種類以上の光増感色素を混合して用いてもよい。二種類以上の光増感色素を混合して用いる場合、光増感色素は、好適には、多孔質電極3に保持された、MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)を引き起こす性質を有する無機錯体色素と、この多孔質電極3に保持された、分子内CT(Charge Transfer)の性質を有する有機分子色素とを有する。この場合、無機錯体色素と有機分子色素とは、多孔質電極3に互いに異なる立体配座で吸着する。無機錯体色素は、好適には、多孔質電極3に結合する官能基としてカルボキシ基またはホスホノ基を有する。また、有機分子色素は、好適には、同一炭素に、多孔質電極3に結合する官能基としてカルボキシ基またはホスホノ基とシアノ基、アミノ基、チオール基またはチオン基とを有する。無機錯体色素は例えばポリピリジン錯体、有機分子色素は例えば、電子供与性の基と電子受容性の基とを併せ持ち、分子内CTの性質を有する芳香族多環共役系分子である。
光増感色素の多孔質電極3への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに多孔質電極3を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を多孔質電極3上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。
多孔質電極3に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて多孔質電極3の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
対極6の材料としては、導電性物質であれば任意のものを用いることができるが、絶縁性材料の電解質層7に面している側に導電層が形成されていれば、これも用いることが可能である。対極6の材料としては、電気化学的に安定な材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、導電性ポリマーなどを用いることが望ましい。
また、対極6での還元反応に対する触媒作用を向上させるために、電解質層7に接している対極6の表面は、微細構造が形成され、実表面積が増大するように形成されていることが好ましい。例えば、対極6の表面は、白金であれば白金黒の状態に、カーボンであれば多孔質カーボンの状態に形成されていることが好ましい。白金黒は、白金の陽極酸化法や塩化白金酸処理などによって、また多孔質カーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法によって形成することができる。
対極6は対向基板4の一主面に形成された導電層5上に形成されているが、これに限定されるものではない。対向基板4の材料としては、不透明なガラス、プラスチック、セラミック、金属などを用いてもよいし、透明材料、例えば透明なガラスやプラスチックなどを用いてもよい。導電層5としては、透明電極2と同様なものを用いることができるほか、不透明な導電材料により形成されたものを用いることもできる。
封止材8の材料としては、耐光性、絶縁性、防湿性などを備えた材料を用いることが好ましい。封止材8の材料の具体例を挙げると、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、各種熱融着フィルムなどである。
また、電解液を注入する場合、注入口が必要であるが、多孔質電極3およびこれに対向する部分の対極6上でなければ注入口の場所は特に限定されない。また、電解液の注入方法に特に制限はないが、外周が予め封止され、溶液の注入口を開けられた光電変換素子の内部に減圧下で注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、この方法以外にも、液晶パネルの液晶滴下注入(ODF;One Drop Filling)工程のように、電解液を基板上に滴下して減圧下で貼り合わせて封止することもできる。封止を行った後、電解液を多孔質電極3へ十分に含漬させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子の製造方法について説明する。
まず、透明基板1の一主面にスパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。
次に、この色素増感光電変換素子の製造方法について説明する。
まず、透明基板1の一主面にスパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。
次に、透明基板1の透明電極2上に多孔質電極3を形成する。この多孔質電極3の形成方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合、湿式製膜法を用いるのが好ましい。湿式製膜法では、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し、この分散液を透明基板1の透明電極2上に塗布または印刷する方法が好ましい。分散液の塗布方法または印刷方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
半導体微粒子の材料としてアナターゼ型TiO2 を用いる場合、このアナターゼ型TiO2 は、粉末状、ゾル状、またはスラリー状の市販品を用いてもよいし、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを形成してもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、ペースト状分散液の調製時に、乳鉢やボールミルなどを使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解消された粒子が再度凝集するのを防ぐために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などをペースト状分散液に添加することができる。また、ペースト状分散液の粘性を増すために、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいはセルロース系の増粘剤などの各種増粘剤をペースト状分散液に添加することもできる。
多孔質電極3は、半導体微粒子を透明電極2上に塗布または印刷した後に、半導体微粒子同士を電気的に接続し、多孔質電極3の機械的強度を向上させ、透明電極2との密着性を向上させるために、焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると、透明電極2の電気抵抗が高くなり、さらには透明電極2が溶融することもあるため、通常は40〜700℃が好ましく、40〜650℃がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分〜10時間程度である。
焼成後、半導体微粒子の表面積を増加させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば、四塩化チタン水溶液や直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルによるディップ処理を行ってもよい。透明電極2を支持する透明基板1としてプラスチック基板を用いる場合には、結着剤を含むペースト状分散液を用いて透明電極2上に多孔質電極3を製膜し、加熱プレスによって透明電極2に圧着することも可能である。
次に、多孔質電極3が形成された透明基板1を、光増感色素を所定の溶媒に溶解した溶液中に浸漬することにより、多孔質電極3に光増感色素を結合させる。
一方、対向基板4の全面に例えばスパッタリング法などにより導電層5を形成した後、この導電層5上に所定の平面形状を有する対極6を形成する。この対極6は、例えば、導電層5の全面に例えばスパッタリング法などにより対極6の材料となる膜を形成した後、この膜をエッチングによりパターニングすることにより形成することができる。
次に、透明基板1と対向基板4とを多孔質電極3と対極6とが所定の間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔をおいて互いに対向するように配置する。そして、透明基板1および対向基板4の外周部に封止材8を形成して電解質層7が封入される空間を作り、この空間に例えば透明基板1に予め形成された注液口(図示せず)から上記の第1の添加剤が添加された電解液を注入し、電解質層7を形成する。その後、この注液口を塞ぐ。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
この色素増感光電変換素子は、光が入射すると、対極6を正極、透明電極2を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3の材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定しているが、これに限定されるものではない。また、多孔質電極3に一種の光増感色素が結合していることを想定する。
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
この色素増感光電変換素子は、光が入射すると、対極6を正極、透明電極2を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3の材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定しているが、これに限定されるものではない。また、多孔質電極3に一種の光増感色素が結合していることを想定する。
透明基板1および透明電極2を透過し、多孔質電極3に入射した光子を多孔質電極3に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と多孔質電極3との間の電気的結合を介して、多孔質電極3を構成するTiO2 の伝導帯に引き出され、多孔質電極3を通って透明電極2に到達する。
一方、電子を失った光増感色素は、電解質層7中の還元剤、例えばI- から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層7中に酸化剤、例えばI3 - (I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極6に到達し、上記の反応の逆反応によって対極6から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
透明電極2から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極6に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層7にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
〈実施例1〉
色素増感光電変換素子を以下のようにして製造した。
多孔質電極3を形成する際の原料であるTiO2 のペースト状分散液は、「色素増感太陽電池の最新技術」(荒川裕則監修、2001年、(株)シーエムシー)を参考にして作製した。すなわち、まず、室温で撹拌しながらチタンイソプロポキシド125mlを0.1Mの硝酸水溶液750mlに徐々に滴下した。滴下後、80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌を続けたところ、白濁した半透明のゾル溶液が得られた。このゾル溶液を室温になるまで放冷し、ガラスフィルタでろ過した後、溶媒を加えて溶液の体積を700mlにした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱反応を行わせた後、1時間超音波処理して分散化処理を行った。次に、この溶液をエバポレータを用いて40℃で濃縮し、TiO2 の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、TiO2 の質量の20%分のポリエチレングリコール(分子量50万)と、TiO2 の質量の30%分の粒子直径200nmのアナターゼ型TiO2 とを添加し、撹拌脱泡機で均一に混合し、粘性を増加させたTi O2 のペースト状分散液を得た。
色素増感光電変換素子を以下のようにして製造した。
多孔質電極3を形成する際の原料であるTiO2 のペースト状分散液は、「色素増感太陽電池の最新技術」(荒川裕則監修、2001年、(株)シーエムシー)を参考にして作製した。すなわち、まず、室温で撹拌しながらチタンイソプロポキシド125mlを0.1Mの硝酸水溶液750mlに徐々に滴下した。滴下後、80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌を続けたところ、白濁した半透明のゾル溶液が得られた。このゾル溶液を室温になるまで放冷し、ガラスフィルタでろ過した後、溶媒を加えて溶液の体積を700mlにした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱反応を行わせた後、1時間超音波処理して分散化処理を行った。次に、この溶液をエバポレータを用いて40℃で濃縮し、TiO2 の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、TiO2 の質量の20%分のポリエチレングリコール(分子量50万)と、TiO2 の質量の30%分の粒子直径200nmのアナターゼ型TiO2 とを添加し、撹拌脱泡機で均一に混合し、粘性を増加させたTi O2 のペースト状分散液を得た。
上記のTiO2 のペースト状分散液を、透明電極2であるFTO層の上にブレードコーティング法によって塗布し、大きさ5mm×5mm、厚さ200μmの微粒子層を形成した。その後、500℃に30分間保持して、TiO2 微粒子をFTO層上に焼結した。焼結されたTiO2 膜へ0.1Mの塩化チタン(IV)TiCl4 水溶液を滴下し、室温下で15時間保持した後、洗浄し、再び500℃で30分間焼成を行った。この後、紫外光照射装置を用いてTiO2 焼結体に紫外光を30分間照射し、このTiO2 焼結体に含まれる有機物などの不純物をTiO2 の光触媒作用によって酸化分解して除去し、TiO2 焼結体の活性を高める処理を行い、多孔質電極3を得た。
光増感色素として、下記の構造式で表されるZ991を用いた。
光増感色素溶液は、アセトニトリル/ターシャルブタノール=1/1(体積%)に、十分に精製したZ991を0.2mM、1−デシルホスホン酸(DPA)を0.05mM溶解させることにより調製した。
次に、多孔質電極3をこの光増感色素溶液に室温下で24時間浸漬し、TiO2 微粒子表面に光増感色素を保持させた。次に、4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液およびアセトニトリルを順に用いて多孔質電極3を洗浄した後、暗所で溶媒を蒸発させ、乾燥させた。
対極6は、予め直径0.5mmの注液口が形成されたFTO層の上に厚さ50nmのクロム層および厚さ100nmの白金層を順次スパッタリング法によって積層し、その上に塩化白金酸のイソプロピルアルコール(2−プロパノール)溶液をスプレーコートし、385℃、15分間加熱することにより形成した。
次に、透明基板1と対向基板4とをそれらの多孔質電極3と対極6とが対向するように配置し、外周を厚さ30μmのアイオノマー樹脂フィルムとアクリル系紫外線硬化樹脂とによって封止した。
一方、1mol/Lの[MQ]Iに、ヨウ素(I2 )0.15mol/L、添加剤として0.5mol/LのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させ、電解液を調製した。
この電解液を予め準備した色素増感光電変換素子の注液口から送液ポンプを用いて注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。こうして電解質層7が形成される。次に、注液口をアイオノマー樹脂フィルム、アクリル樹脂およびガラス基板で封止し、色素増感光電変換素子を完成した。
ここで、上記の[MQ]Iは図2に示す合成方法に従って合成した。具体的には、まず図2に示すように、3口フラスコに、脱水および脱気処理を行った反応溶媒100mLを入れ、キヌクリジン6gを加えた後、溶解するまで攪拌した。これを0℃まで冷却し、ヨウ化メチル4mLを加え、一晩攪拌した。得られた固体をろ別し、適切な溶媒にて洗浄した後、加熱真空乾燥を一晩行い、[MQ]Iを得た。以上の全ての操作は窒素雰囲気下において行った。
〈実施例2〉
電解液に添加するヨウ化物アニオン源として[MDBU]Iを用いたことを除いて、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加するヨウ化物アニオン源として[MDBU]Iを用いたことを除いて、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
ここで、上記の[MDBU]Iは図3に示す合成方法に従って合成した。具体的には、まず図3に示すように、3口フラスコに、脱水および脱気処理を行った反応溶媒100mLを入れ、ジアザビシクロウンデセン6gを加えた後、溶解するまで攪拌した。これを0℃まで冷却し、ヨウ化メチル4mLを加え、一晩攪拌した。得られた固体をろ別し、適切な溶媒にて洗浄した後、加熱真空乾燥を一晩行い、[MDBU]Iを得た。以上の全ての操作は窒素雰囲気下において行った。
〈比較例1〉
電解液に含ませるヨウ化物アニオン源としてDMImI(ジメチルイミダゾリウムヨーダイド)を用いたことを除いて、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に含ませるヨウ化物アニオン源としてDMImI(ジメチルイミダゾリウムヨーダイド)を用いたことを除いて、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
実施例1、2および比較例1の色素増感光電変換素子の耐久性試験を行った。耐久性試験は、色素増感光電変換素子を暗所で85℃に保持し、光電変換効率の経時変化を測定することにより行った。実施例1、2および比較例1の色素増感光電変換素子の初期光電変換効率を100(%)としたときの168時間経過後、576時間経過後および1008時間経過後の光電変換効率の維持率(%)の測定結果を表1および図4に示す。
表1および図4より、実施例1、2の色素増感光電変換素子の光電変換効率の1008時間後の維持率は、比較例1の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率に比べると高いことが分かる。つまり、1000時間程度の長時間使用後の光電変換効率は、比較例1の色素増感光電変換素子に比べて、実施例1、2の色素増感光電変換素子の光電変換効率の方が高い。取り分け、実施例1の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率は、測定した全ての時間において、比較例1の色素増感光電変換素子の維持率を大きく上回っていることが分かる。これらの結果から、ヨウ素系電解液にヨウ化物アニオン源として[MQ]Iまたは[MDBU]Iを添加することにより、長時間使用後の光電変換効率の維持率の向上を図ることができることが分かる。
以上のように、この第1の実施の形態によれば、色素増感光電変換素子の電解質層7を構成するヨウ素系電解液が、ヨウ化物アニオン源として、[MQ]Iや[MDBU]Iなどの化1〜化6に示す化合物を含むため、ヨウ素系電解液にヨウ化物アニオン源としてイミダゾリウムヨーダイドなどを用いた従来の色素増感光電変換素子に比べて、例えば1000時間程度以上の長時間使用後の光電変換効率の維持率の向上を図ることができる。すなわち、色素増感光電変換素子の耐久性の向上を図ることができる。そして、この優れた色素増感光電変換素子を用いることにより、高性能の電子機器や自家発電可能な建築物などを実現することができる。
〈2.第2の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
図5Aは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す要部断面図である。ただし、図5Aにおいては、透明電極2および導電層5の図示は省略した。
[色素増感光電変換素子]
図5Aは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す要部断面図である。ただし、図5Aにおいては、透明電極2および導電層5の図示は省略した。
図5Aに示すように、この色素増感光電変換素子においては、電解質層7が、酸化還元対を含む電解液成分とこの電解液と混合しない他の液体成分とにより形成されたエマルション電解液からなり、他の液体成分により形成された微粒子7aを含む、このエマルション電解液は微粒子7aを含むことにより光散乱性を有する。
このエマルション電解液においては、二種類以上の相が分散しており、少なくとも一つの相に電気化学的に活性な種、すなわち酸化還元対が含まれている。また、エマルションを安定化したり、エマルションの微粒子7aの粒子径を調節したりする目的で、上記の相を形成する成分以外に界面活性剤を加えることもできる。
このエマルション電解液において、電解液以外の相としては、例えば、電解液と溶液の相分離を形成する有機溶媒やイオン液体などを用いることができる。有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの炭化水素系溶媒などを用いることができる。また、イオン液体としては、例えば、次に示す構造を有するトリヘキシルテトラデシルホスフニウム ビス(トリフルオロメタンスルホン)アミド([P66614 ][TFSI])を用いることができる。
界面活性剤の種類は特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などのいずれを用いてもよい。
エマルション電解液の組成は、必要に応じて選ばれるが、例えば、電解液成分は10重量%以上95重量%以下、電解液成分以外の成分は0重量%以上70重量%以下、界面活性剤を加える場合には界面活性剤は0重量%以上20重量%以下である。
エマルション(ナノエマルション、マイクロエマルションなど)の微粒子7aの粒子径は、色素増感光電変換素子に入射する光を効率的に散乱することができるように適宜選ばれる。微粒子7aの粒子径は、混合する液体成分の種類や、界面活性剤も使用する場合にはその種類によって調整することができる。微粒子7aの粒子径は、具体的には、例えば1nm以上10000nm以下、好適には10nm以上500nm以下である。
この色素増感光電変換素子の上記以外の構成は第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様である。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子の製造方法は、エマルション電解液を用いることを除いて第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
この色素増感光電変換素子の製造方法は、エマルション電解液を用いることを除いて第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、図5Bに示すように、電解質層7が電解液のみからなる色素増感光電変換素子においては、多孔質電極3に入射した光はこの多孔質電極3で光電変換されるが、一部の光はこの多孔質電極3を透過して電解質層8に到達するため、光電変換に寄与しない。従来は、この問題を解決するために、多孔質電極3を厚くする方法が用いられてきたが、多孔質電極3が厚すぎると、多孔質電極3の細孔内における電解液成分の拡散が妨げられることにより高い光電変換効率を得ることができないというトレードオフの関係があった。これに対し、図5Aに示すように、この第2の実施の形態によれば、電解質層7がエマルション電解液からなり、光散乱性を有するため、多孔質電極3を透過して電解質層8に入射した光はエマルション電解液中の微粒子7aにより散乱される結果、再び多孔質電極3に入射させることができる。このため、多孔質電極3に入射した光の有効利用を図ることができ、ひいては光電変換効率の向上を図ることができる。
〈3.第3の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
この色素増感光電変換素子においては、電解質層7を構成するヨウ素系電解液に、上述の種々の添加剤のうちの少なくとも一種が添加されている。この添加剤の組成は必要に応じて選ばれるが、例えば0.01M以上1M以下、典型的には0.05M以上0.5M以下である。
[色素増感光電変換素子]
この色素増感光電変換素子においては、電解質層7を構成するヨウ素系電解液に、上述の種々の添加剤のうちの少なくとも一種が添加されている。この添加剤の組成は必要に応じて選ばれるが、例えば0.01M以上1M以下、典型的には0.05M以上0.5M以下である。
この色素増感光電変換素子の上記以外の構成は第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様である。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子の製造方法は、電解質層7を構成するヨウ素系電解液に、上述の種々の添加剤のうちの少なくとも一種を添加することを除いて第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
この色素増感光電変換素子の製造方法は、電解質層7を構成するヨウ素系電解液に、上述の種々の添加剤のうちの少なくとも一種を添加することを除いて第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
〈実施例3〉
電解液に添加剤として0.1MのGuOTfを溶解させた、電解液を調製した。光増感色素として、十分に精製した、下記の構造式で表されるZ907 23.8mgを、アセトニトリルとtert−ブタノールとを1:1の体積比で混合した混合溶媒50mlに溶解させ、光増感色素溶液を調製した。この光増感色素溶液を用いてTiO2 微粒子表面に光増感色素を保持させた。その他は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加剤として0.1MのGuOTfを溶解させた、電解液を調製した。光増感色素として、十分に精製した、下記の構造式で表されるZ907 23.8mgを、アセトニトリルとtert−ブタノールとを1:1の体積比で混合した混合溶媒50mlに溶解させ、光増感色素溶液を調製した。この光増感色素溶液を用いてTiO2 微粒子表面に光増感色素を保持させた。その他は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例4〉
電解液に添加する添加剤としてEMImSCNを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImSCNを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例5〉
電解液に添加する添加剤としてEMImOTfを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImOTfを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例6〉
電解液に添加する添加剤としてEMImTFSIを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImTFSIを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例7〉
電解液に添加する添加剤としてEMImTfAcを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImTfAcを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例8〉
電解液に添加する添加剤としてEMImDINHOPを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImDINHOPを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例9〉
電解液に添加する添加剤としてEMImMeSO3 を用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImMeSO3 を用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例10〉
光増感色素として、Z991を用いた。また、電解液に添加する添加剤としてEMImSCNを用いた。その他は実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
光増感色素として、Z991を用いた。また、電解液に添加する添加剤としてEMImSCNを用いた。その他は実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例11〉
電解液に添加する添加剤としてEMImDCAを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImDCAを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例12〉
電解液に添加する添加剤としてEMImBF4 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImBF4 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例13〉
電解液に添加する添加剤としてEMImPF6 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImPF6 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例14〉
電解液に添加する添加剤としてEMImFAPを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImFAPを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例15〉
電解液に添加する添加剤としてEMImTFSIを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImTFSIを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例16〉
電解液に添加する添加剤としてEMImOTfを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImOTfを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例17〉
電解液に添加する添加剤としてEMImTfAcを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImTfAcを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例18〉
電解液に添加する添加剤としてEMImMeSO3 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImMeSO3 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例19〉
電解液に添加する添加剤としてEMImEt2 PO4 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImEt2 PO4 を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例20〉
電解液に添加する添加剤としてEMImCB11H12を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてEMImCB11H12を用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈比較例2〉
電解液に添加する添加剤としてGuSCNを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてGuSCNを用いたことを除いて、実施例3と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈比較例3〉
電解液に添加する添加剤としてGuSCNを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に添加する添加剤としてGuSCNを用いたことを除いて、実施例10と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に上記の添加剤を添加することによる効果をより明確に検証するために、実施例3〜20および比較例2、3の電解液の代わりに、溶媒としての3−メトキシプロピオニトリル(MPN)に、1.0Mの1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド(MPImI)、0.1Mのヨウ素I2 、そして添加剤として0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させることにより調製された電解液を用いた色素増感光電変換素子を製造した。これらの色素増感光電変換素子を実施例3〜20に対応させて参考例1〜18とする。
参考例1〜18および比較例2、3の色素増感光電変換素子の耐久性試験を行った。ただし、この耐久性試験を行った比較例2、3の色素増感光電変換素子においても、参考例1〜18と同様な電解液を用いた。耐久性試験は、色素増感光電変換素子を暗所で85℃に保持し、光電変換効率の経時変化を測定することにより行った。参考例1〜7および比較例2の色素増感光電変換素子の初期光電変換効率を100(%)としたときの150時間経過後および1000時間経過後の光電変換効率の維持率(%)の測定結果を表2に示す。表2には、比較例2の色素増感光電変換素子の150時間経過後の光電変換効率により参考例1〜7の色素増感光電変換素子の150時間経過後の光電変換効率を規格化した値(比較例2の色素増感光電変換素子の150時間経過後の光電変換効率を100とした)も示す。また、参考例8〜18および比較例3の色素増感光電変換素子の初期光電変換効率を100(%)としたときの150時間経過後の光電変換効率の維持率(%)の測定結果を表3に示す。表3には、比較例3の色素増感光電変換素子の150時間経過後の光電変換効率により参考例8〜18の色素増感光電変換素子の150時間経過後の光電変換効率を規格化した値(比較例3の色素増感光電変換素子の150時間経過後の光電変換効率を100とした)も示す。
表2より、参考例1〜7の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率は、比較例2の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率に比べると高くなっている。また、表3より、参考例8〜18の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率は、比較例2の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率に比べると高くなっている。これらの結果から、電解液に添加剤として、GuOTf、EMImSCN、EMImOTf、EMImTFSI、EMImTfAc、EMImDINHOP、EMImMeSO3 、EMImDCA、EMImBF4 、EMImPF6 、EMImFAP、EMImEt2 PO4 またはEMImCB11H12を添加することにより、光電変換効率の維持率の向上を図ることができることが分かる。
以上のように、この第3の実施の形態によれば、色素増感光電変換素子の電解質層7を構成するヨウ素系電解液に上記のような添加剤を添加することにより、電解液の添加剤としてGuSCNを用いた従来の色素増感光電変換素子に比べて、光電変換効率の維持率の向上を図ることができる。このため、色素増感光電変換素子の耐久性の向上を図ることができる。そして、この優れた色素増感光電変換素子を用いることにより、高性能の電子機器などを実現することができる。
〈4.第4の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
第4の実施の形態による色素増感光電変換素子においては、電解質層7が、第1の実施の形態と同様なヨウ素系電解液を含む、あるいはこのヨウ素系電解液が含浸された多孔質膜からなることが、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と異なる。
[色素増感光電変換素子]
第4の実施の形態による色素増感光電変換素子においては、電解質層7が、第1の実施の形態と同様なヨウ素系電解液を含む、あるいはこのヨウ素系電解液が含浸された多孔質膜からなることが、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と異なる。
電解質層7を構成する多孔質膜としては、 例えば、有機高分子化合物からなる各種の不織布が用いられる。表4に多孔質膜として用いられる不織布の具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
この色素増感光電変換素子の上記以外の構成は第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様である。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子の製造方法について説明する。
第1の実施の形態と同様に工程を進めて、図6Aに示すように、透明基板1上の透明電極2上に、光増感色素を結合させた多孔質電極3を形成する。
次に、この色素増感光電変換素子の製造方法について説明する。
第1の実施の形態と同様に工程を進めて、図6Aに示すように、透明基板1上の透明電極2上に、光増感色素を結合させた多孔質電極3を形成する。
次に、図6Bに示すように、透明基板1上の多孔質電極3上に、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層7を設置する。
次に、図6Cに示すように、電解質層7上に対向基板4を対極6側を下にして設置した後、透明基板1および対向基板4の外周部に封止材8を形成して電解質層7を封入する。必要に応じて、電解質層7上に対向基板4を設置した後、対向基板4を電解質層7に押し付けて電解質層7をその面に垂直な方向に圧縮してもよい。このようにすることにより、電解質層7を構成する多孔質膜の厚さが圧縮により減少する際に、この多孔質膜の空隙部に含まれる電解液が押し出されて電解液が多孔質電極3に浸透するため、電解液が多孔質電極3の全体に容易に行き渡るようにすることができる。最終的な電解質層7の厚さは、例えば1〜100μm、好適には1〜50μmである。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
〈実施例21〉
透明基板1上の多孔質電極3上に、予め電解液を含浸させたポリオレフィンからなる多孔質膜を設置する。そして、この多孔質膜をプレスにより膜面に垂直方向に圧縮して実空隙率を50%とすることにより電解質層7を形成した。次に、電解質層7の外周に封止材8としてアイオノマー樹脂フィルムとアクリル系紫外線硬化樹脂とを設けた。そして、対極6を電解質層7上に設置し、電解質層7の外周に設けられた封止材8と接着し、色素増感光電変換素子を完成した。その他は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
透明基板1上の多孔質電極3上に、予め電解液を含浸させたポリオレフィンからなる多孔質膜を設置する。そして、この多孔質膜をプレスにより膜面に垂直方向に圧縮して実空隙率を50%とすることにより電解質層7を形成した。次に、電解質層7の外周に封止材8としてアイオノマー樹脂フィルムとアクリル系紫外線硬化樹脂とを設けた。そして、対極6を電解質層7上に設置し、電解質層7の外周に設けられた封止材8と接着し、色素増感光電変換素子を完成した。その他は実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例22〉
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率70.7%、膜厚30μmのポリオレフィンからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率70.7%、膜厚30μmのポリオレフィンからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例23〉
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率70.5%、膜厚44μmのポリオレフィンからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率70.5%、膜厚44μmのポリオレフィンからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例24〉
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率79%、膜厚28μmのポリエステルからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率79%、膜厚28μmのポリエステルからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例25〉
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率72.8%、膜厚29.8μmのセルロースからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率72.8%、膜厚29.8μmのセルロースからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例26〉
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率78.3%、膜厚32μmのポリエステルからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率78.3%、膜厚32μmのポリエステルからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
〈実施例27〉
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率82.7%、膜厚22μmのポリエステルからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液を含浸させる多孔質膜として、空隙率82.7%、膜厚22μmのポリエステルからなる多孔質膜を用いて電解質層7を形成した。その他は実施例21と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
表4に、実施例21〜27の色素増感光電変換素子において電解質層7の形成に用いた多孔質膜の素材、空隙率、膜厚および実空隙率をまとめて示す。ここで、多孔質膜の実空隙率は次のように表される。
実空隙率(%)=100−(100−膜の空隙率(%))×膜の体積(m3 )/(電解質層7の体積(m3 )−多孔質電極3のかさ体積(m3 ))
電解質層7を、電解液を含む、あるいは電解液が含浸された多孔質膜により構成することによる効果をより明確に検証するために、実施例21〜27の電解液の代わりに、溶媒としての3−メトキシプロピオニトリル(MPN)に、1.0Mの1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド(MPImI)、0.1Mのヨウ素I2 、そして添加剤として0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させることにより調製された電解液を用いた色素増感光電変換素子を製造した。これらの色素増感光電変換素子を実施例21〜27に対応させて参考例19〜25とする。また、参考例19〜25の、ヨウ素系電解液を含む、あるいはヨウ素系電解液が含浸された多孔質膜からなる電解質層7の代わりに、ヨウ素系電解液だけからなる電解質層7を用いた色素増感光電変換素子を比較例4とする。これらの参考例19〜25および比較例4の色素増感光電変換素子の電流−電圧特性を測定した。測定は、色素増感光電変換素子に擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm2 )を照射して行った。図7および図8にこれらの色素増感光電変換素子の電流−電圧特性の測定結果を示す。また、表5にこれらの色素増感光電変換素子の開放端電圧Voc、電流密度Jsc、フィルファクター(FF)、光電変換効率(Eff)および内部抵抗(Rs )を示す。
図9に、参考例19〜25の色素増感光電変換素子において電解質層7の形成に用いた多孔質膜の実空隙率と、参考例19〜25の色素増感光電変換素子の光電変換効率を比較例4の色素増感光電変換素子の光電変換効率で規格化した規格化光電変換効率との関係を示す。
表5および図7〜図9より、参考例19〜25の色素増感光電変換素子の光電変換効率は、比較例4の色素増感光電変換素子の光電変換効率に比べると、総じて少し低い。しかしながら、実空隙率が50%以上の多孔質膜を電解質層7の形成に用いた参考例19、20、22〜25の色素増感光電変換素子の光電変換効率は、比較例4の色素増感光電変換素子の光電変換効率の80%以上である。そして、参考例19、20、22〜25の色素増感光電変換素子の光電変換効率は、電解質層7の形成に用いた多孔質膜の実空隙率が大きくなるにつれて増加し、実空隙率が80%以上100%未満では、比較例4の色素増感光電変換素子の光電変換効率に匹敵する値となる。
図10に、実空隙率が79%の多孔質膜を電解質層7の形成に用いた参考例25の色素増感光電変換素子および電解液のみから電解質層7を形成した比較例4の色素増感光電変換素子のIPCE(Incident Photon-to-current Conversion Efficiency)スペクトルの測定結果を示す。図10に示すように、参考例25の色素増感光電変換素子は、比較例4の色素増感光電変換素子に比べて、全波長領域において光電変換効率が増加していることが分かる。これは次のような理由によるものと考えられる。すなわち、図11Aに示すように、比較例4の色素増感光電変換素子においては、多孔質電極102に入射した光のうち光増感色素で吸収し切れなかった光は電解液のみからなる電解質層105を透過してしまう。これに対し、図11Bに示すように、参考例25の色素増感光電変換素子においては、多孔質電極3に入射した光のうち光増感色素で吸収し切れず、電解質層7に入射した光は、電解質層7を形成する多孔質膜が多くの空隙部を有することにより、この多孔質膜により効果的に散乱される。こうして電解質層7で散乱された光が多孔質電極3に裏面側から再び入射し、光増感色素で吸収される。この場合、この多孔質膜による散乱光は多孔質電極3の面に対して斜めに入射する成分が多いため、この多孔質電極3内部での光路長が大幅に長くなり、多孔質電極3による入射光の捕集率が高くなる。この結果、参考例25の色素増感光電変換素子においては、比較例4の色素増感光電変換素子に比べて、全波長領域において光電変換効率が増加する。
この第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、色素増感光電変換素子の電解質層7を電解液を含む多孔質膜により構成しているため、電解質層7が固体状であり、光電変換素子が破損した際に電解液が漏れるのを有効に防止することができる。また、多孔質電極3と対極6とが絶縁性の多孔質膜により分離されているため、色素増感光電変換素子が折れ曲がっても、多孔質電極3と対極6との電気的絶縁性が低下するのを防止することができる。また、従来の色素増感光電変換素子のように、電解液を注入するための注液穴を設けたり、電解液注入後に電解液を拭き取ったり、注液穴を塞いだりする必要がなくなるため、色素増感光電変換素子を容易にしかも簡単に製造することができる。また、実質的に電解液を膜として扱うことができるため、電解液の扱いが極めて簡単となる。このため、例えば、ロール・ツー・ロール(roll-to-roll)プロセスにより透明フィルム上に色素増感光電変換素子を製造する場合において、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層7を膜として透明フィルム上に貼り付けることが可能となる。さらに、この色素増感光電変換素子においては、多孔質電極3に吸着した光増感色素で吸収し切れなかった入射光は、電解質層7で散乱されて多孔質電極3に再び入射する。この結果、この色素増感光電変換素子は、電解質層7を電解液だけで構成する従来の色素増感光電変換素子に匹敵する高い光電変換効率を得ることができる。そして、この優れた色素増感光電変換素子を用いることにより、高性能の電子機器などを実現することができる。
〈5.第5の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
第5の実施の形態による色素増感光電変換素子は、第2の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様な構成を有する。
[色素増感光電変換素子]
第5の実施の形態による色素増感光電変換素子は、第2の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様な構成を有する。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
図12A〜Cは第5の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法を示す。
図12Aに示すように、この色素増感光電変換素子の製造方法においては、まず、第4の実施の形態と同様にして、多孔質電極3を形成する。
図12A〜Cは第5の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法を示す。
図12Aに示すように、この色素増感光電変換素子の製造方法においては、まず、第4の実施の形態と同様にして、多孔質電極3を形成する。
一方、図12Aに示すように、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層7の外周に例えば熱硬化性の封止材8を電解質層7と一体的に形成した一体型膜を用意する。この状態の電解質層7の厚さは最終的な電解質層7の厚さよりも大きい。封止材8の厚さはこの電解質層7の厚さよりも大きく、最終的にこの封止材8により十分な封止を行うことができる厚さになっている。
次に、図12Bに示すように、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層7の外周に封止材8を形成した一体型膜を多孔質電極3上に設置する。
次に、図12Cに示すように、電解質層7および封止材8の上に、対向基板4上に設けられた対極6を設置し、対向基板4を電解質層7に押し付けてこの電解質層7をその面に垂直な方向に圧縮するとともに、加熱により封止材8を硬化させ、封止を行う。この際、電解質層7を構成する多孔質膜の厚さは圧縮により減少するが、最終的な多孔質膜の実空隙率が所望の値になるようにする。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
一方、色素増感光電変換素子において、かさ(あるいは厚さ)のある、多孔質カーボンや多孔質金属などからなる対極6を用いる場合には、多孔質電極3のかさに加えて、この対極6のかさも考慮して、電解質層7と封止材8との一体型膜を形成する。図13AおよびBはそのような色素増感光電変換素子の製造方法を示す。
図13Aに示すように、この色素増感光電変換素子の製造方法においては、まず、第4の実施の形態と同様にして、多孔質電極3を形成する。
一方、図13Aに示すように、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層7の外周に例えば熱硬化性の封止材8を電解質層7と一体的に形成した一体型膜を用意する。この状態の電解質層7の厚さは最終的な電解質層7の厚さよりも大きい。封止材8の厚さはこの電解質層7の厚さよりも大きく、最終的にこの封止材8により十分な封止を行うことができる厚さになっている。加えて、対向基板4上に導電層5を介して対極6を設けたものを用意する。
次に、図13Bに示すように、電解液を含む多孔質膜からなる電解質層7の外周に封止材8を形成した一体型膜を多孔質電極3上に設置し、続いて電解質層7および封止材8の上に対向基板4上に設けられた対極6を設置し、対向基板4を電解質層7に押し付ける。こうして電解質層7をその面に垂直な方向に圧縮するとともに、加熱により封止材8を硬化させ、封止を行う。この際、電解質層7を構成する多孔質膜の厚さは圧縮により減少するが、最終的な多孔質膜の実空隙率が所望の値になるようにする。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
この第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様な利点に加えて、封止材8の形成プロセスを省略することができることにより、色素増感光電変換素子をより簡単に製造することができるという利点を得ることができる。
〈6.第6の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
第6の実施の形態による色素増感光電変換素子においては、多孔質電極13が金属/金属酸化物微粒子により構成され、典型的には、これらの金属/金属酸化物微粒子が焼結されたものからなる。図14にこの金属/金属酸化物微粒子11の構造の詳細を示す。図14に示すように、金属/金属酸化物微粒子11は、金属からなる球状のコア11aとこのコア11aの周りを取り囲む金属酸化物からなるシェル11bとからなるコア/シェル構造を有する。この金属/金属酸化物微粒子11の金属酸化物からなるシェル11bの表面に一種類または複数種類の光増感色素(図示せず)が結合(あるいは吸着)する。
[色素増感光電変換素子]
第6の実施の形態による色素増感光電変換素子においては、多孔質電極13が金属/金属酸化物微粒子により構成され、典型的には、これらの金属/金属酸化物微粒子が焼結されたものからなる。図14にこの金属/金属酸化物微粒子11の構造の詳細を示す。図14に示すように、金属/金属酸化物微粒子11は、金属からなる球状のコア11aとこのコア11aの周りを取り囲む金属酸化物からなるシェル11bとからなるコア/シェル構造を有する。この金属/金属酸化物微粒子11の金属酸化物からなるシェル11bの表面に一種類または複数種類の光増感色素(図示せず)が結合(あるいは吸着)する。
金属/金属酸化物微粒子11のシェル11bを構成する金属酸化物は、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化スズ(SnO2 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )、酸化亜鉛(ZnO)などが用いられる。これらの金属酸化物の中でも、TiO2 、取り分けアナターゼ型のTiO2 を用いることが好ましい。ただし、金属酸化物の種類はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて、二種類以上の金属酸化物を混合または複合化して用いることができる。また、金属/金属酸化物微粒子11の形態は粒状、チューブ状、棒状などのいずれであってもよい。
上記の金属/金属酸化物微粒子11の粒径に特に制限はないが、一般的には一次粒子の平均粒径で1〜500nmであり、取り分け1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、金属/金属酸化物微粒子11のコア11aの粒径は一般的には1〜200nmである。
この色素増感光電変換素子の上記以外の構成は第1の実施の形態と同様である。
この色素増感光電変換素子の上記以外の構成は第1の実施の形態と同様である。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子の製造方法は、多孔質電極3を金属/金属酸化物微粒子11により形成することを除いて、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
この色素増感光電変換素子の製造方法は、多孔質電極3を金属/金属酸化物微粒子11により形成することを除いて、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11は従来公知の方法により製造することができる(例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.46,No.4B,2007,pp.2567-2570参照)。一例として、コア11aがAu、シェル11bがTiO2 からなる金属/金属酸化物微粒子11の製造方法の概要を説明すると次の通りである。すなわち、まず、5×10-4M HAuCl4 500mLの加熱した溶液に脱水クエン酸3ナトリウムを混合・攪拌する。次に、メルカプトウンデカン酸をアンモニア水溶液に2.5重量%添加・攪拌した後、Auナノ粒子分散溶液に添加し、2時間保温する。次に、1M HClを添加して溶液のpHを3にする。次に、チタンイソプロポキシドおよびトリエタノールアミンを窒素雰囲気下でAuコロイド溶液に添加する。こうして、コア11aがAu、シェル11bがTiO2 からなる金属/金属酸化物微粒子11が製造される。
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
この色素増感光電変換素子は、光が入射すると、対極6を正極、透明電極2を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11のコア11aの材料としてAu、シェル11bの材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定している。ただし、これに限定されるものではない。
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
この色素増感光電変換素子は、光が入射すると、対極6を正極、透明電極2を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11のコア11aの材料としてAu、シェル11bの材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定している。ただし、これに限定されるものではない。
透明基板1および透明電極2を透過し、多孔質電極3に入射した光子を多孔質電極3に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と多孔質電極3との間の電気的結合を介して、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11のシェル11bを構成するTiO2 の伝導帯に引き出され、多孔質電極3を通って透明電極2に到達する。加えて、金属/金属酸化物微粒子11のAuからなるコア11aの表面に光が入射することにより局在表面プラズモンが励起され、電場増強効果が得られる。そして、この増強電場によりシェル11bを構成するTiO2 の伝導帯に電子が大量に励起され、多孔質電極3を通って透明電極2に到達する。このように、多孔質電極3に光が入射したとき、透明電極2には、光増感色素の励起により発生した電子が到達することに加えて、金属/金属酸化物微粒子11のコア11aの表面における局在表面プラズモンの励起によりシェル11bを構成するTiO2 の伝導帯に励起される電子も到達する。このため、高い光電変換効率を得ることができる。
一方、電子を失った光増感色素は、電解質層7中の還元剤、例えばI- から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層7中に酸化剤、例えばI3 - (I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極6に到達し、上記の反応の逆反応によって対極6から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
透明電極2から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極6に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層7にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
この第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、多孔質電極3は、金属からなる球状のコア11aとこのコア11aの周りを取り囲む金属酸化物からなるシェル11bとからなるコア/シェル構造を有する金属/金属酸化物微粒子11により構成されている。このため、この多孔質電極3と対極6との間に電解質層7を充填した場合、電解質層7の電解質が金属/金属酸化物微粒子11の金属からなるコア11aと接触することがなく、電解質による多孔質電極3の溶解を防止することができる。従って、金属/金属酸化物微粒子11のコア11aを構成する金属として表面プラズモン共鳴の効果が大きい金、銀、銅などを用いることができ、表面プラズモン共鳴の効果を十分に得ることができる。また、電解質層7の電解質としてヨウ素系の電解質を用いることができる。以上により、光電変換効率が高い色素増感光電変換素子を得ることができる。そして、この優れた色素増感光電変換素子を用いることにより、高性能の電子機器を実現することができる。
〈7.第7の実施の形態〉
[光電変換素子]
第7の実施の形態による光電変換素子は、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11に光増感色素が結合していないことを除いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様な構成を有する。
[光電変換素子]
第7の実施の形態による光電変換素子は、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11に光増感色素が結合していないことを除いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様な構成を有する。
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子の製造方法は、多孔質電極3に光増感色素を吸着させないことを除いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様である。
この光電変換素子の製造方法は、多孔質電極3に光増感色素を吸着させないことを除いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様である。
[光電変換素子の動作]
次に、この光電変換素子の動作について説明する。
この光電変換素子は、光が入射すると、対極6を正極、透明電極2を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11のコア11aの材料としてAu、シェル11bの材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定している。ただし、これに限定されるものではない。
次に、この光電変換素子の動作について説明する。
この光電変換素子は、光が入射すると、対極6を正極、透明電極2を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11のコア11aの材料としてAu、シェル11bの材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定している。ただし、これに限定されるものではない。
透明基板1および透明電極2を透過し、多孔質電極3を構成する金属/金属酸化物微粒子11のAuからなるコア11aの表面に光が入射することにより局在表面プラズモンが励起され、電場増強効果が得られる。そして、この増強電場によりシェル11bを構成するTiO2 の伝導帯に電子が大量に励起され、多孔質電極3を通って透明電極2に到達する。
一方、電子を失った多孔質電極3は、電解質層7中の還元剤、例えばI- から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層7中に酸化剤、例えばI3 - (I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極6に到達し、上記の反応の逆反応によって対極6から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
透明電極2から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極6に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層7にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈8.第8の実施の形態〉
[色素増感光電変換素子]
第8の実施の形態による色素増感光電変換素子は、電解質層7を構成するヨウ素系電解液が、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を含有することを除いて、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様な構成を有する。分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩の組成は必要に応じて選ばれるが、例えば0.01M以上1M以下、典型的には0.05M以上0.5M以下である。
[色素増感光電変換素子]
第8の実施の形態による色素増感光電変換素子は、電解質層7を構成するヨウ素系電解液が、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を含有することを除いて、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子と同様な構成を有する。分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩の組成は必要に応じて選ばれるが、例えば0.01M以上1M以下、典型的には0.05M以上0.5M以下である。
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子の製造方法は、電解質層7を構成するヨウ素系電解液に、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を添加する点を除いて、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
この色素増感光電変換素子の製造方法は、電解質層7を構成するヨウ素系電解液に、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を添加する点を除いて、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の製造方法と同様である。
〈実施例28〉
電解液に分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としての0.1MのEMImTfAc、0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させ、電解液を調製した。また、光増感色素としてZ991を用いた。その他は、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。EMImTfAcの化学構造は下記の通りである。
電解液に分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としての0.1MのEMImTfAc、0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させ、電解液を調製した。また、光増感色素としてZ991を用いた。その他は、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。EMImTfAcの化学構造は下記の通りである。
〈実施例29〉
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11TfAc(N,N’−ジメチルピロリジニウム トリフルオロアセテート(N,N’−dimethylpyrolidinium trifluoroacetate)) を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11TfAcの化学構造は下記の通りである。
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11TfAc(N,N’−ジメチルピロリジニウム トリフルオロアセテート(N,N’−dimethylpyrolidinium trifluoroacetate)) を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11TfAcの化学構造は下記の通りである。
〈実施例30〉
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11DfAc(N,N’−ジメチルピロリジニウム ジフルオロアセテート(N,N’−dimethylpyrolidinium difluoroacetate))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11DfAcの化学構造は下記の通りである。
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11DfAc(N,N’−ジメチルピロリジニウム ジフルオロアセテート(N,N’−dimethylpyrolidinium difluoroacetate))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11DfAcの化学構造は下記の通りである。
〈実施例31〉
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy112F(N,N’−ジメチルピロリジニウム 2−フルオロ安息香酸(N,N’−dimethylpyrolidinium 2-fluoro-benzoic acid))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py112Fの化学構造は下記の通りである。
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy112F(N,N’−ジメチルピロリジニウム 2−フルオロ安息香酸(N,N’−dimethylpyrolidinium 2-fluoro-benzoic acid))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py112Fの化学構造は下記の通りである。
〈実施例32〉
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy113F(N,N’−ジメチルピロリジニウム 3−フルオロ安息香酸(N,N’−dimethylpyrolidinium 3-fluoro-benzoic acid))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py113Fの化学構造は下記の通りである。
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy113F(N,N’−ジメチルピロリジニウム 3−フルオロ安息香酸(N,N’−dimethylpyrolidinium 3-fluoro-benzoic acid))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py113Fの化学構造は下記の通りである。
〈実施例33〉
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11Ph(N,N’−ジメチルピロリジニウム 安息香酸(N,N’−dimethylpyrolidinium benzoic acid)) を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11Phの化学構造は下記の通りである。
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11Ph(N,N’−ジメチルピロリジニウム 安息香酸(N,N’−dimethylpyrolidinium benzoic acid)) を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11Phの化学構造は下記の通りである。
〈実施例34〉
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11OAc(N,N’−ジメチルピロリジニウム アセテート(N,N’−dimethylpyrolidinium acetate))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11OAcの化学構造は下記の通りである。
電解液に添加する、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩としてPy11OAc(N,N’−ジメチルピロリジニウム アセテート(N,N’−dimethylpyrolidinium acetate))を用いたことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。Py11OAcの化学構造は下記の通りである。
〈比較例5〉
電解液にEMImTfAcを添加しないことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液にEMImTfAcを添加しないことを除いて、実施例28と同様にして色素増感光電変換素子を製造した。
電解液に上記の分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を添加することによる効果をより明確に検証するために、実施例28〜34および比較例5の電解液の代わりに、溶媒としての3−メトキシプロピオニトリル(MPN)に、1.0Mの1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド(MPImI)、0.1Mのヨウ素I2 、そして添加剤として0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させることにより調製された電解液を用いた色素増感光電変換素子を製造した。これらの色素増感光電変換素子を実施例28〜34に対応させて参考例26〜32とする。
参考例26〜32および比較例5の色素増感光電変換素子の耐久性試験を行った。ただし、この耐久性試験を行った比較例5の色素増感光電変換素子においても、参考例26〜32と同様な電解液を用いた。耐久性試験は、色素増感光電変換素子を暗所で85℃に保持し、光電変換効率の経時変化を測定することにより行った。参考例26〜32および比較例5の色素増感光電変換素子の初期光電変換効率を100(%)としたときの光電変換効率の維持率(%)の経時変化の測定結果を図15に示す。
図15より、参考例26〜32の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率は、比較例5の色素増感光電変換素子の光電変換効率の維持率に比べると高くなっている。この結果から、電解液にEMImTfAc、Py11TfAc、Py11DfAc、Py112F、Py113F、Py11PhまたはPy11OAcを含有させることにより、光電変換効率の維持率の向上を図ることができることが分かる。
この第8の実施の形態によれば、色素増感光電変換素子の電解質層7を構成する電解液が、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を含有することにより、第3の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子。
(2)上記電解質層は、酸化還元対を含む上記電解液成分と上記電解液成分と混合しない他の液体成分とにより形成されたエマルション電解液からなる前記(1)に記載の光電変換素子。
(3)上記エマルションの粒子径は1nm以上10000nm以下である前記(1)または(2)に記載の光電変換素子。
(4)上記エマルション電解液は少なくとも一種の界面活性剤を含む前記(2)または(3)に記載の光電変換素子。
(5)上記電解液が、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を含む前記(1)から(4)のいずれかに記載の光電変換素子。
(6)上記アニオンは、[OTf]、[TFSI]、[TfAc]、[DINHOP]、[DCA]、BF4 、PF6 、[FAP]、[MeSO3 ]、[Et2 PO4 ]、CB11H12、[DfAc]、[2F]、[3F]、[Ph]および[OAc]からなる群より選ばれた少なくとも一種である前記(5)に記載の光電変換素子。
(7)上記電解質層が上記電解液を含む多孔質膜からなる前記(1)から(6)のいずれかに記載の光電変換素子。
(8)上記多孔質膜が不織布からなる前記(7)に記載の光電変換素子。
(9)上記光電変換素子は上記多孔質電極に光増感色素が結合した色素増感光電変換素子である前記(1)から(8)のいずれかに記載の光電変換素子。
(10)上記多孔質電極は半導体からなる微粒子により構成されている前記(9)に記載の光電変換素子。
(1)多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子。
(2)上記電解質層は、酸化還元対を含む上記電解液成分と上記電解液成分と混合しない他の液体成分とにより形成されたエマルション電解液からなる前記(1)に記載の光電変換素子。
(3)上記エマルションの粒子径は1nm以上10000nm以下である前記(1)または(2)に記載の光電変換素子。
(4)上記エマルション電解液は少なくとも一種の界面活性剤を含む前記(2)または(3)に記載の光電変換素子。
(5)上記電解液が、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を含む前記(1)から(4)のいずれかに記載の光電変換素子。
(6)上記アニオンは、[OTf]、[TFSI]、[TfAc]、[DINHOP]、[DCA]、BF4 、PF6 、[FAP]、[MeSO3 ]、[Et2 PO4 ]、CB11H12、[DfAc]、[2F]、[3F]、[Ph]および[OAc]からなる群より選ばれた少なくとも一種である前記(5)に記載の光電変換素子。
(7)上記電解質層が上記電解液を含む多孔質膜からなる前記(1)から(6)のいずれかに記載の光電変換素子。
(8)上記多孔質膜が不織布からなる前記(7)に記載の光電変換素子。
(9)上記光電変換素子は上記多孔質電極に光増感色素が結合した色素増感光電変換素子である前記(1)から(8)のいずれかに記載の光電変換素子。
(10)上記多孔質電極は半導体からなる微粒子により構成されている前記(9)に記載の光電変換素子。
1…透明基板、2…透明電極、3…多孔質電極、4…対向基板、5…導電層、6…対極、7…電解質層、7a…微粒子、8…封止材、11…金属/金属酸化物微粒子、11a…コア、11b…シェル
Claims (14)
- 多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子。 - 上記電解質層は、酸化還元対を含む上記電解液成分と上記電解液成分と混合しない他の液体成分とにより形成されたエマルション電解液からなる請求項1記載の光電変換素子。
- 上記エマルションの粒子径は1nm以上10000nm以下である請求項2記載の光電変換素子。
- 上記エマルション電解液は少なくとも一種の界面活性剤を含む請求項3記載の光電変換素子。
- 上記電解液が、分子量が59.04[g/mol]以上のアニオンを有する塩を含む請求項1記載の光電変換素子。
- 上記アニオンは、[OTf]、[TFSI]、[TfAc]、[DINHOP]、[DCA]、BF4 、PF6 、[FAP]、[MeSO3 ]、[Et2 PO4 ]、CB11H12、[DfAc]、[2F]、[3F]、[Ph]および[OAc]からなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項5記載の光電変換素子。
- 上記電解質層が上記電解液を含む多孔質膜からなる請求項1記載の光電変換素子。
- 上記多孔質膜が不織布からなる請求項7記載の光電変換素子。
- 上記光電変換素子は上記多孔質電極に光増感色素が結合した色素増感光電変換素子である請求項1記載の光電変換素子。
- 上記多孔質電極は半導体からなる微粒子により構成されている請求項9記載の光電変換素子。
- 多孔質電極と対極との間に、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含むヨウ素系の電解液を含む電解質層が設けられた構造を形成する工程を有する光電変換素子の製造方法。
- 少なくとも一つの光電変換素子を有し、
上記光電変換素子が、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である電子機器。 - 少なくとも一つの光電変換素子および/または複数の光電変換素子が電気的に接続されている光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子が、
多孔質電極と、
対極と、
上記多孔質電極と上記対極との間に設けられたヨウ素系の電解液を含む電解質層とを有し、
上記電解液が、ヨウ化物アニオン源として、1−メチルキヌクリジニウム ヨーダイド、N−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム ヨーダイド、1,2,2,6,6−ペンタメチルキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−ヒドロキシキヌクリジニウム ヨーダイド、1−メチル−3−クロロキヌクリジニウム ヨーダイドおよび1−メチル−3−アミノキヌクリジニウム ヨーダイドからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合物を含む光電変換素子である建築物。 - 上記光電変換素子および/または上記光電変換素子モジュールは2枚の透明板の間に挟持されている請求項13記載の建築物。
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