JP2011185860A - 斜面安定化システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】土塊の移動に伴って抵抗力を発揮して斜面の不安定な土塊の移動の程度を小さくすることが可能な斜面安定化構造体を斜面に施工する。この場合、1.0超、1.2未満の安全率Fsにて施工する。斜面安定化構造体を構成する斜面安定化部材体に変位センサを取り付け、当該斜面の土塊が移動した時に前記変位センサが検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信手段を設け、この危険度信号発信部の発信情報を受信する危険度信号受信手段を設ける。
【選択図】図7
Description
しかし、その斜面下に住む住民にとっては、可能性が極めて低いといってもやはり不安であり、斜面安定化工法の施工を望むであろうし、また、行政機関等も放置することに不安を感じるケースが多々あると思われる。
この種の従来の斜面観測システムは、一般的には、斜面に何らかの変状が生じた時に始めてセンサを取り付けるシステムである。
また、従来の斜面観測システムでは一般に、センサが検知した情報は、行政機関には伝達されるが、住民に対する伝達手段は組み込まれておらず、住民に対する伝達手段は防災無線や拡声器や回覧板などの手段で行われるため、降雨時等にセンサーが検知した情報が地域住民にすぐに伝達されるということにはならず、遅れた伝達となる。
また、従来の斜面観測システムは一般に、センサが斜面にピンポイント的・局地的に設置されるので、対象とする斜面全体を把握した危険度判定がされないことも多い。
地中変位計測方法は、差動トランス方式又は歪ゲージ方式の地中変位計をボーリング孔に複数個、間隔をあけて挿入配置し、地中変位計が検出した変位に基づいて角度変位を演算して、地中変位を知るものである。
また、住民に対する伝達手段は組み込まれていないシステムでは、降雨時に検知情報が地域住民にすぐに伝達されるということにはならず、遅れた伝達となる。
また、センサが斜面にピンポイント的・局地的に設置されるシステムでは、対象とする斜面全体を把握した危険度判定がされない可能性がある。
上記斜面観測システムによる斜面対策が、斜面安定化工法を施工した上での対策であれば、十分安心できるが、その場合には、施工費が高額なので費用対効果の点で非効率であると言える。
一方、上記の斜面観測システムによる斜面対策が、斜面安定化工法を施工していない斜面での対策である場合は、斜面の挙動観測をしたり斜面崩壊を予測することで、警報を発したり避難誘導を図ったりして、被害を極力少なくするために一定の有効性があるが、斜面崩壊の可能性を検知して警報を発した時点では、斜面崩壊が始まるまでにあるいはその規模が大きくなるまでにあまり時間がなく、被害を最小限にとどめることができたとは言い難い場合も考えられる。
前記斜面安定化工法を施工するに際して、斜面の安全率Fs=1.0超、1.2未満、を満たす仕様で施工するとともに、
前記アンカー、支圧板、その他の斜面安定化部材のうちの選択した1つ又は複数の斜面安定化部材に、斜面に変状を生じたときにその変状を検知可能なセンサを取り付け、斜面に変状が生じた時に前記斜面安定化部材に取り付けられた前記変位センサが検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信手段を設け、この危険度信号発信部の発信情報を受信する危険度信号受信手段を設けたことを特徴とする。
土壌水分センサ又は温度センサの一方又はその両方が検出した土壌水分量又は温度の一方又はその両方に基づいて算出した土壌水分量又は温度の変化の速度を、前記危険度レベルを定める基準に含めることを特徴とする。
斜面に何らかの変状が生じてからセンサを取り付けるシステムと異なり、施工時から常時センシングしており、危険度信号発信手段により、変位センサが検知した信号に基づく危険度信号を発信して、地域の住民に状況を伝達することができるので、住民の対応が遅れることは少ない。
したがって、斜面崩壊の可能性が高まった時に住民が適切な対応をすることが可能となり、また、斜面崩壊が発生した場合の被害を最小限にとどめることが可能となる。
そして、本格的な斜面安定化工法と比べれば簡易な対策工とするので、施工費を安くできるので、費用対効果の点で優れたシステムとなる。
このように本発明の斜面安定化システムは、必ずしも十分な斜面安定化工法でなくても、土塊の移動に伴って抵抗力を発揮する何らかの斜面安定化構造体を斜面に施工すれば、降雨時や地震発生などに際に土塊移動の進行を少しでも遅くできる現象を活用するものであり、導入し易い簡易な対策工でもって、斜面崩壊が発生した場合の被害を最小限にとどめることを可能にし、また、斜面崩壊の可能性が高まった時に住民が適切な対応をすることを可能にするという、費用対効果の点で優れたシステムである。
そして、安全率Fsを1.2〜1.5とする従来の一般的な斜面安定化工法と比べて簡易であり、施工費を安くできるので、費用対効果の点で優れたシステムとなる。
また、斜面安定化工法の施工材料自体が対策工の一部であるとともにセンサであることから、対象斜面全体をセンシングすることができる。したがって、斜面にピンポイント的・局地的に設置したセンサで検知する従来方法と比べて、対象とする斜面全体を把握した危険度判定が可能となる。そして、地域住民に与える安心感が高いものとなる。
斜面に何らかの変状が生じてからセンサを取り付けるシステムと異なり、施工時から常時センシングしているので、対応が遅れることは少ない。
また、請求項20のように、危険度信号受信手段を、個人住宅などに設置し、かつ、行政機関などに設置して、連絡・補強・避難の体制を確保可能な警報システムを構築することで、例えば降雨時などに、住民に対する検知情報の伝達が速やかに行われ、対応が遅れることを防止できる。
また、簡易な斜面安定化工法を採用すれば、場合によっては地域住民の手で斜面安定化工法を施工することも考えられる。
したがって、斜面対策として、住民自身が施工して、住民に直ちに検知情報が伝達されるようにし、住民自身の判断で避難などの対応ができるような体制とすることも考えられる。
この実施例では、図1、2に示すような斜面安定化工法により斜面安定化構造体を施工する。そして、斜面安定化部材に変位センサを取り付ける。さらに、図3のようなシステムを構成する。この実施例では、図3におけるセンサが変位センサである。すなわち、当該斜面の土塊が移動した時に変位センサが検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信手段を設け、この危険度信号発信部の発信情報を受信する危険度信号受信手段を設けた斜面安定化システムを構成する。
図2(イ)は図1における1箇所のアンカー1の部分を拡大した図、図2(ロ)は断面図である。
図示例の支圧板2は、頂点部を面取りした形の概ね三角形の底板4の中心部に穴4aをあけ、この穴4aに合わせて円筒5を溶接固定し、円筒の三方に補強リブ6を溶接固定した構造である。補強リブ6にはワイヤロープを通す穴6aをあけている。
アンカー1の先端は地盤の不動層に埋め込まれ、アンカー1のネジが形成された頭部は、支圧板2の底板4の穴4a及び円筒5内を通って上に突出し、突出部に座金7を被せナット8をアンカー1のネジ部に螺合させ締め付けて、アンカー1の頭部に支圧板2を係合させている。これにより、ナット8を締め付けた時、アンカー1に作用する張力で支圧板2が地盤を押圧し、地盤安定化に寄与する。
なお、この斜面安定化構造体を施工する際、後述する安全率Fsという概念を特に考慮しなくてもよいが、本発明の大きな長所である費用対効果の観点から、実際には、安全率Fs=1.0超、1.2未満(1.0<Fs<1.2)を満たす仕様(施工内容)で施工する。
例えば変位センサとしてアンカー1の伸びを検知する変位センサをアンカー1に取り付ける場合として説明すると、図3におけるセンサ11が変位センサの場合であり、斜面の土塊が移動した時にアンカー1に取り付けたセンサ(変位センサ)11が検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信装置(危険度信号発信手段)12を設け、この危険度信号発信装置12からの発信情報を受信する危険度信号受信装置(危険度信号受信手段)13を複数箇所に設ける。
危険度信号受信装置12として、変位センサが検出した土塊の移動量に応じた複数の危険度レベル、例えば、注意を勧告する段階の危険度レベルと、退避が必要などと危険を勧告する段階の危険度レベルとの2段階の危険度信号を発信可能にすることができる(図4参照)。
また、危険度信号受信装置12として、変位センサが検出した土塊の移動量に基づいて算出した土塊の移動速度を、前記危険度レベルを定める基準に含めることもできる(図4参照)。
危険信号受信装置13を設置する箇所は、対象斜面下の作業場、個人住宅、共同住宅、さらに、行政機関、斜面危険度判定専門家所在箇所などとする。
これにより、例えば降雨時に、土塊の移動が発生してアンカー1に曲げ力が作用した時、センサ11がその曲げ歪を検知し、この検知した曲げ歪に基づいて、危険度信号発信装置12が危険度を判定するとともに、危険度が一定のレベルを超えた時に、危険度信号を各危険度信号受信装置13に送信する。例えば、図4のフロー図において、変位センサで土塊の移動量を時間と関連づけて計測(この実施例は土壌水分や温度は検出しない場合)し、変位センサが検知した土塊の移動量と、この移動量と時間とから算出した土塊の移動速度とを基礎データとして斜面崩壊の危険度レベルを定める。そして、例えば、その危険度レベルが、退避するまでもないが十分注意しておく必要があるというレベルの閾値に達した時は、注意情報を発信する。そらに、危険度が増大して例えば退避が必要なレベルの閾値に達した時は、危険情報を発信する。
図3では危険度信号発信装置12から危険度信号受信装置13への信号伝達を無線としたが、当然有線でもよい。
このように、斜面の危険度が直ちに、直接被害を受ける可能性のある住民などにすみやかに伝達されるとともに、行政機関や専門家にも伝達されるので、対応が遅れることなく、連絡・補強・避難の体制を確保することができる。
斜面に何らかの変状が生じてからセンサを取り付けるシステムと異なり、施工時から常時センシングしており、危険度信号発信手段により、変位センサが検知した信号に基づく危険度信号を発信して、地域の住民に状況を伝達することができるので、住民の対応が遅れることは少ない。
したがって、斜面崩壊の可能性が高まった時に住民が適切な対応をすることが可能となり、また、斜面崩壊が発生した場合の被害を最小限にとどめることが可能となる。
そして、本格的な斜面安定化工法と比べれば簡易な対策工とするので、施工費を安くできるので、費用対効果の点で優れたシステムとなる。
このように本発明の斜面安定化システムは、必ずしも十分な斜面安定化工法でなくても、土塊の移動に伴って抵抗力を発揮する何らかの斜面安定化構造体を斜面に施工すれば、降雨時や地震発生などに際に土塊移動の進行を少しでも遅くできる現象を活用するものであり、導入し易い簡易な対策工でもって、斜面崩壊が発生した場合の被害を最小限にとどめることを可能にし、また、斜面崩壊の可能性が高まった時に住民が適切な対応をすることを可能にするという、費用対効果の点で優れたシステムである。
また、斜面安定化構造体を構成する斜面安定化部材が対策工の一部であるとともにセンサであることから、対象斜面全体をセンシングしていることになる。したがって、斜面にピンポイント的・局地的に設置したセンサで検知する従来方法と比べて、対象とする斜面全体を把握した危険度判定が可能となる。そして、地域住民に与える安心感が高いものとなる。
斜面に何らかの変状が生じてからセンサを取り付けるシステムと異なり、施工時から常時センシングしているので、対応が遅れることは少ない。
また、簡易な斜面安定化構造体を採用すれば、場合によっては地域住民の手で斜面安定化工法を施工することも考えられる。
したがって、斜面対策として、住民自身が施工して、住民に直ちに検知情報が伝達されるようにし、住民自身の判断で避難などの対応ができるような体制とすることも考えられる。
すなわち、曲線Aは何ら斜面対策をとっていない場合、曲線Bは安全率Fs=1.0超、1.2未満の斜面対策を取った場合(本発明は施工時に安全率Fsを明確にした施工をする訳ではないが、実際にはこのように施工するので実質的に本発明の場合に相当する)、曲線Cは従来の一般的な安全率Fs1.2〜1.5の斜面対策を取った場合を示す。安全率Fsが大になるほど、土塊の移動開始時間が遅くなり、かつ、土塊の移動量が小さくなる。
斜面対策をとっていない場合は、土塊移動が始まると短い時間で急激に土塊移動量が増大し、斜面崩壊に到るので、連絡・補強・避難の体制を確保する余裕がない可能性がある。
これに対して、本発明の斜面安定化システムでは、土塊移動が始まると、例えばアンカーの曲げ抵抗などで移動に抵抗し移動速度を緩やかにするので、斜面崩壊に到るまでに、連絡・補強・避難の体制を確保する時間的余裕をもつことが可能である。図5で破線で示した土塊移動量になると危険な状態であるとすると、無対策の場合と比べて時間tだけ余裕を取れる。
なお、従来の一般的な安全率Fs1.2〜1.5の斜面対策が、土塊移動を一層緩やかにすることができるのは当然であり、連絡・避難・補強をするための時間的余裕を本発明よりさらに十分取ることができるが、請求項1の発明は、従来の一般的な施工と比べて簡易な施工であることを、センサによる斜面の土塊移動の検知で補うという考え方であり、また、費用対効果の点で、そこまでの時間的余裕を確保しなくても、被害を最小限にできる程度の時間的余裕を確保することができればよいのではないかという考え方であり、斜面崩壊の可能性が若干ある斜面に対してそのまま放置せずに斜面対策を実施できるようにするという考え方である。
すなわち、必ずしも十分な斜面安定化工法でなくても、土塊の移動に伴って抵抗力を発揮する何らかの斜面安定化構造体を斜面に施工すれば、降雨時や地震発生などに際に土塊移動の進行を少しでも遅くできる現象を活用するものであり、導入し易い簡易な対策工でもって、斜面崩壊が発生した場合の被害を最小限にとどめることを可能にし、また、斜面崩壊の可能性が高まった時に住民が適切な対応をすることを可能にするという、費用対効果の点で優れたシステムである。
この場合、斜面安定化工法を施工するに際して、安全率Fsを明確にした設計とする。 すなわち、例えばアンカーの設置間隔を調整するなどにより、安全率Fs=1.0超、1.2未満(1.0<Fs<1.2)を満たす仕様(現斜面の安全率Fsを0%超、20%未満だけ向上させる程度の仕様)で施工する。
一般に斜面崩壊に対する斜面対策は、現斜面の安全率Fsを20〜50%向上させる目的でその仕様が決定され、アンカーと支圧板とによる上記斜面安定化工法でも同様であるが、この場合は安全率Fsを前記の通り、安全率Fs=1.0超、1.2未満の施工をする。
安全率Fsは土塊に作用する力と土塊の抵抗力に関する指標であり、以下の式で表される。
(1)基本式
安全率Fs=(土塊が降雨や地震の影響を受けた後も抵抗している力)/(土塊が降雨や地震によってすべる力)
(2)斜面内の地下水位を考慮した斜面安全率評価式
安全率Fs=(C・L+(W・cosθ−μ)tanφ)/(W・sinθ)
μ;間隙水圧
L;すべり面長
C;粘着力
φ;せん断抵抗角
θ;斜面勾配
(3)変形を考慮した斜面安全率評価式
安全率Fs=(C’・L+W・cosθ・tanφ’)/(W・sinθ)
C’;ある移動量のときの粘着力
φ’;ある移動量のときのせん断抵抗角
アンカー1は、地盤10の移動層(図1の滑り面Sより上の土層)10bと不動層(滑り面Sより下の土層)10aを貫通するように挿入されている。
移動層の土塊が移動すると、移動した土塊中のアンカー1は大きく変形するが、アンカー1の不動層中の部分は殆ど変形しない。同図において、実線は土塊移動前の状態、破線は土塊移動した後の地表面、及び、アンカーと支圧板の状態を示す。
このときのアンカーの変形は概ね、すべり面Sとアンカー1の交点Pを中心とし移動層10b内のアンカー長さLを半径とする円弧を描くように回転する変形なので、その際に支圧板2が沈下する。
このときの挙動、すなわちアンカー1の曲げと伸び、及び、支圧板2の沈下の現象を、アンカー1や支圧板2の変位として直接、又は、それらの現象に伴うその他の斜面安定化部材の変位として変位センサで計測するのが、土塊移動を検知して斜面の変状を検知する斜面安定化システムの原理である。
まず、アンカーを設置する間隔を調整する方法がある。アンカーの斜面縦上下方向の間隔を調整するか、斜面横方向の間隔を調整する。
その場合、一般に、斜面の下部側が上部側より不安定である場合が多いので、斜面全体について同じ間隔に設置する場合に限らず、図6に示すように、アンカー1の間隔を斜面の下部側では間隔を狭くし、上部側では間隔を広くすることもできる。
また、アンカー材の剛性を調整する方法がある。この場合も、斜面の下部側に剛性の高いアンカーを用い、上部側に弱いアンカーを用いることもできる。
また、支圧板の面積を調整する方法がある。この場合も、斜面の下部側に広い支圧板を用い、上部側に狭い支圧板を用いることもできる。
また、アンカー頭部間を連結するワイヤロープ3を設けるか、設けないかの選択もあり、ワイヤロープの引張り強度を変えることもできる。
また、ネットを敷設するかしないかの選択があり、そのネットの仕様(網材の引張り強度、網目間隔その他)によっても、調整できる。
同図は土塊移動が生じた後の状態であり、支圧板2が沈下している。支圧板2の沈下量をhで示す。
図示のアンカー1は中空であり、その中空部にワイヤなどの引張り材21が挿入されている。この引張り材21は、一端(下端)が不動層中にあるアンカー先端に固定され、他端がアンカー1の上端に固定されており、上端近傍に、引張り材21の伸びを検知するための歪ゲージ(変位センサ)22が取り付けられている。引張り材21のアンカー下端への固定部を21a、上端への固定部を21bで示す。上端への固定部21bは、図示例ではアンカー1の上端に螺合させて被せたキャップ24の内面としている。
そして、歪ゲージ22を歪ゲージ出力受信装置23に接続してこの歪ゲージ出力受信装置23から外部の危険度信号発信装置12に検知信号を送信する、などの構成により、歪ゲージ22の検知信号を危険度信号発信装置12に送信可能にしている。
なお、歪ゲージ出力受信装置23として種々の装置が考えられるが、例えばICタグを利用することもできる。また、歪ゲージ22をICタグに直接組み込んで、歪ゲージ付きICタグを引張り材21に取り付けることも考えられる。
このように、アンカー1の中空部に挿入した引張り材21の伸び量を計測することにより、土塊の移動状況を判定することができる。
同図において、実線で示した地表面1cは土塊移動前の地表面を示し、破線で示した地表面1c’は土塊が移動した後の地表面を示している。なお、同図におけるアンカー1の変形態様は模式的なものである。
このアンカー1も中空であり、その中空部の下端位置に前記超音波センサ25を設置している。この超音波センサ25は、超音波を発信しその反射波を受信して、反射位置までの距離を演算により検知するものである。
そして、超音波センサ25の検知した距離信号を 超音波センサ出力受信装置33に接続してこの超音波センサ出力受信装置33から外部の危険度信号発信装置12に検知信号を送信する、などの構成により、超音波センサ25の検知信号を危険度信号発信装置12に送信可能にしている。
土塊が移動し、この土塊移動とともにアンカー1が曲がった時、このアンカー1が曲がった状態で超音波センサ25が発信した超音波が反射する位置は下方に移動する。したがって、超音波センサ25が検知する距離はL2となって短くなる。超音波センサ25が検知した距離の変化で、土塊の移動量を把握することができる。
なお、アンカーが真っ直ぐの時に超音波センサ25が検出する距離は、波長の短い超音波の直進性を利用した距離であり、図示例ではアンカー上端面という明確な反射面に基づくものであるが、アンカーが曲がった状態で超音波センサ25が検出する距離は、明確な反射面に基づいた距離ではない。しかし、波長の長い超音波の散乱特性を利用することで、アンカーの曲がりの状態を検知することができる。すなわち、散乱系の超音波は管内の壁面でも反射するので、壁面で反射した散乱系超音波の反射波により管の曲がりの状態を検知することが可能である。
図示例では、隣接するアンカー間を連結するワイヤロープ3のすべてのアンカー間に歪ゲージ(変位センサ)32を取り付けている場合である。
斜面が部分的に不安定になって一部のアンカー1が移動した時、安定部の移動していないアンカー1から不安定部の移動したアンカー1に繋がるワイヤロープ(破線で示す)3が引張られて伸び、その伸びたワイヤロープ3に取り付けた歪ゲージ32が伸びを検知する。
この場合も、歪ゲージ32の検知信号を、図8の実施例の場合と同様に外部の危険度信号発信装置12に送信可能にしている。
ワイヤロープ3に歪ゲージを取り付ける手段として、アンカー頭部間を連結するワイヤロープの中間にターバックルによる連結部を有する場合は、このターンバックルに歪ゲージを取り付けることができる。
斜面が崩壊する要因のほとんどが降雨によるものなので、地盤の土壌水分量の変化、又はそれに伴う温度変化、あるいはその両方を把握することができれば、斜面の異常状態を検知することができる。
斜面は図1、図2で説明した斜面安定化工法が、1.0超、1.2未満の安全率Fsにて施工されている。この斜面安定化工法における斜面安定化部材に土壌水分センサ又は温度センサが設置されている。これらのセンサは前述の図3のように、危険度信号発信装置12に接続されている。同図において、Wは施工時の地下水位レベルを示す。
図示例ではセンサ土壌水分センサ42が各アンカー1の下端部と中間部との2箇所に取り付けられている。下端部のセンサを42a、中間部のセンサを42bで示す。
斜面安定化工法を施工直後には、斜面の下部側のアンカーA、Bの下端部のセンサ42aは地下水を検知しているが、斜面安定化工法を施工したことで、安全率Fs=1.0超、1.2未満を確保している。
降雨等による地下水位の上昇とともに、次第に斜面の上部側のアンカーのセンサも地下水位を検知するようになる。地下水位が例えばW’の近くまで上昇すれば、アンカーC、Dの下端部のセンサ42aが地下水を感知するとともに、アンカーA、B、Cの中間部のセンサ42bも地下水を感知する。
あらかじめ、対象斜面の地下水の飽和度を考慮した安定解析により、地下水位の要注意レベルを定める。例えば、危険度信号発信装置12に、アンカーCの中間部のセンサ42bが地下水を検知すれば要注意と判定するように設定しておく。この場合、アンカーCの中間部のセンサ42bが地下水を検知すれば、危険度信号発信装置12が外部(危険度信号受信装置13)に要注意警報(危険度信号)を発信する。また、アンカーDの下端部のセンサ42aが感知すれば、危険領域に達したと判定し、避難警報(危険度信号)を発信する。
このアンカー1は、中空材であり、その中空部におけるアンカー下端部と中間部に例えば土壌水分センサ52を取り付けてなるセンサ付きアンカーである。下端部の土壌水分センサを52a、中間部の土壌水分センサを52bで示す。
中空のアンカー51の下端面は多孔質材54で被覆されている。この多孔質材54の上に前記土壌水分センサ52aが設けられている。
アンカー51の中間部の壁面に1つ又は複数のスリット51aが形成され、このスリット51aの近傍に中間部の土壌水分センサ52bが設置されている。
また、このアンカー51は、斜面に削孔した後に、その削孔55に挿入されたものであり、そして、アンカー51と削孔壁55aとの隙間に透水性のある注入剤56が注入されている。
これにより、図11で説明したように、降雨時等において地下水位が上昇して斜面が不安定になれば、土壌水分センサ52がそれを検知することができ、要注意警報(危険度信号)あるいは避難警報(危険度信号)を発信して、被害を最小限に抑えることができる。
上述では、土壌水分センサを配置する場合について述べたが、土壌水分センサと温度センサとの両方を設置してもよいし、また、温度変化で土壌水分の変状を検知することも可能なので、温度センサのみを配置してもよい。
2 支圧板
3 ワイヤロープ(線状体)
4 底板
10a (地盤の)不動層
10b (地盤の)移動層
11 センサ
12 危険度信号発信装置(危険度信号発信手段)
13 危険度信号受信装置(危険度信号受信手段)
21 引張り材
21a (引張り材21のアンカー下端への)固定部
21b (引張り材21のアンカー上部への)固定部
22 歪ゲージ
23 歪ゲージ出力受信装置
25 超音波センサ
33 超音波センサ出力受信装置
32 歪ゲージ
52 土壌水分センサ(又は温度センサ)
53 水分センサ出力受信装置
54 多孔質材
55 削孔
56 注入剤
S すべり面
W 地下水位
Claims (20)
- 土塊の移動に伴って抵抗力を発揮して斜面の不安定な土塊の移動の程度を小さくすることが可能な斜面安定化構造体を斜面に施工し、前記斜面安定化構造体を構成する斜面安定化部材体に変位センサを取り付け、当該斜面の土塊が移動した時に前記変位センサが検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信手段を設け、この危険度信号発信部の発信情報を受信する危険度信号受信手段を設けたことを特徴とする斜面安定化システム。
- 前記斜面安定化構造体を、斜面の安全率Fs=1.0超、1.2未満、を満たす仕様で斜面に設置することを特徴とする請求項1記載の斜面安定化システム。
- 前記斜面安定化構造体が、地盤の不動層に達するように斜面に設置された多数のアンカーと、各アンカーの頭部に取り付けられた支圧板と、必要に応じて斜面に設置した、斜面の安定化に寄与するその他の斜面安定化部材とからなるをことを特徴とする請求項1又は2記載の斜面安定化システム。
- 斜面に多数のアンカーを地盤の不動層に達するように設置し、各アンカーの頭部に支圧板を取り付け、必要に応じて斜面安定化に寄与するその他の斜面安定化部材を用いて斜面安定化構造体を構築する斜面安定化工法を採用するとともに、当該斜面にセンサを取り付けて斜面の危険度を伝達可能にした斜面安定化システムであって、
前記斜面安定化工法を施工するに際して、斜面の安全率Fs=1.0超、1.2未満、を満たす仕様で施工するとともに、
前記アンカー、支圧板、その他の斜面安定化部材のうちの選択した1つ又は複数の斜面安定化部材に、斜面に変状を生じたときにその変状を検知可能なセンサを取り付け、斜面に変状が生じた時に前記斜面安定化部材に取り付けられた前記センサが検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信手段を設け、この危険度信号発信部の発信情報を受信する危険度信号受信手段を設けたことを特徴とする斜面安定化システム。 - 前記センサが、土塊の移動を検知する変位センサであることを特徴とする請求項4記載の斜面安定化システム。
- 前記アンカーが中空材からなり、その中空部に引張り材が挿入され、この引張り材の一端がアンカーの土中先端に固定され、他端がアンカー地表部を通って支圧板に変位センサを介して固定されており、当該アンカーが設置された土塊が移動した時に、土塊移動とともにアンカーが変形する際に生じる引張り材の引張り力を変位センサが検知するようになっていることを特徴とする請求項5記載の斜面安定化システム。
- 前記その他の斜面安定化部材が、アンカー頭部間を連結する線状体、又は斜面に敷設した金属製又は樹脂製のネットであり、線状体又はネットの一方又は両方に変位センサを取り付け、斜面における一部の土塊が移動がした時に、移動しない土塊と移動した土塊との間に存在する前記線状体又はネットの一方又は両方の伸びを変位センサが検知して、土塊の移動量を検知するようにしたことを特徴とする請求項5又は6記載の斜面安定化システム。
- 前記センサが、土壌水分センサ又は温度センサの一方又はその両方であることを特徴とする請求項4記載の斜面安定化システム。
- 前記アンカーが中空材からなり、かつ中空部に土壌水分センサ及び温度センサのいずれか一方又は両方が取り付けられ、かつアンカーの土中先端が多孔質材で被覆されているセンサ付きアンカーであることを特徴とする請求項8記載の斜面安定化システム。
- 前記アンカーがその表面に複数のスリットのある中空材からなり、かつ中空部に土壌水分センサ及び温度センサのいずれか一方又は両方が取り付けられ、かつアンカーの土中先端が多孔質材で被覆されているセンサ付きアンカーであるとともに、斜面に削孔した後にその削孔に挿入された前記アンカーと削孔壁との隙間に透水性のある注入剤が注入されていることを特徴とする請求項8記載の斜面安定化システム
- 前記注入剤の透水係数が、周囲の地盤の透水係数の1倍〜1/10倍であることを特徴とする請求項10記載の斜面安定化システム。
- 同一の斜面に、請求項5〜7のいずれか1項に記載の斜面安定化システムと、請求項8〜11のいずれか1項に記載の斜面安定化システムとを合わせて施工したことを特徴とする斜面安定化システム。
- 前記危険度信号発信手段は、前記変位センサが検出した土塊の移動量に応じた複数の危険度レベルの危険度信号を発信可能であることを特徴とする請求項1、2、3、5、6又は7のいずれか1項に記載の斜面安定化システム。
- 前記危険度信号発信手段は、前記変位センサが検出した土塊の移動量に基づいて算出した土塊の移動速度を、前記危険度レベルを定める基準に含めることを特徴とする請求項13記載の斜面安定化システム。
- 前記危険度信号発信手段が、前記土壌水分センサ又は温度センサの一方又はその両方が検出した土壌水分量又は温度の一方又はその両方に応じた複数の危険度レベルの危険度信号を発信可能であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の斜面安定化システム。
- 前記危険度信号発信手段が、土壌水分センサ又は温度センサの一方又はその両方が検出した土壌水分量又は温度の一方又はその両方に基づいて算出した土壌水分量又は温度の変化の速度を、前記危険度レベルを定める基準に含めることを特徴とする請求項15記載の斜面安定化システム。
- 前記安全率Fs=1.0超、1.2未満、を満たす仕様の斜面安定化工法を施工する手段として、アンカー間隔を調整したことを特徴とする請求項2〜16のいずれか1項に記載の斜面安定化システム。
- 前記アンカーの間隔が、斜面の下部側において短く、上部側において長いことを特徴とする請求項17記載の斜面安定化システム。
- 前記支圧板の面積が、斜面の下部側において広く、上部側において狭いことを特徴とする請求項3〜18のいずれか1項に記載の斜面安定化システム。
- 前記危険度信号受信手段を、斜面下の作業場、個人住宅、共同住宅に設置するとともに、行政機関及び/又は斜面危険度判定専門家所在箇所に設置して、連絡・補強・避難の体制を確保可能な警報システムを構築することを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の斜面安定化システム。
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