JP6172825B1 - 斜面安定化工法、斜面安定化構造、土構造物の管理方法、及び土構造物の管理システム - Google Patents

斜面安定化工法、斜面安定化構造、土構造物の管理方法、及び土構造物の管理システム Download PDF

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Abstract

【課題】想定外の記録的な集中豪雨が生じても、斜面崩壊を未然に抑止することができるようにする。【解決手段】ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧P2を規定する過剰間隙水圧比αを、実測された土質パラメータと斜面の安全率Fsとに基づいて算出し、過剰間隙水圧比αから斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧PLを予測し、該限界過剰間隙水圧PLを超えないように斜面上に排水パイプ3を配し、該排水パイプ3により過剰間隙水圧P2を消散させる。排水パイプ3は、長手方向に多数の孔が設けられると共に、一端は開放端とされ、該開放端が斜面から露出している。過剰間隙水圧比αは、ソイルパイプが地下水で完全飽和状態のときの過剰間隙水圧をu、地下水が前記ソイルパイプから地中に浸透したときの水圧損失をΔuとしたときに、(u−Δu)/uで表される。【選択図】図1

Description

本発明は、斜面安定化工法、斜面安定化構造、土構造物の管理方法、及び土構造物の管理システムに関し、より詳しくは想定外の記録的な集中豪雨等が生じても自然斜面や法面等の斜面が崩壊するのを抑止できる斜面安定化工法とその構造、及び斜面崩壊を抑止するための土構造物の管理方法とその管理システムに関する。
山岳地や丘陵地の多いわが国では、自然斜面やその近傍に住宅等の多くの建物が建設されている。また、道路建設や宅地造成等に伴い地山掘削や切土、盛土等により人工的な斜面(法面)が形成されている。これら斜面では、通常の降雨程度では斜面崩壊は生じないが、ゲリラ豪雨等の想定外の記録的な集中豪雨が生じた場合、滑動面に沿って斜面崩壊を招くおそれがある。
そして、従来より、斜面の挙動や変状を検知するセンサを斜面に設け、斜面の状況を観測し、斜面崩壊を予測する斜面観測システムが知られている。
しかしながら、この種の斜面観測システムでは、斜面の挙動を観測したり斜面崩壊を予測して警報を発し、避難誘導することにより、人的被害を最小限に留めようとしているが、斜面自体を補強するものでなく、斜面崩壊を抑止するための根本的な解決を図るものではない。
そこで、特許文献1では、斜面に多数のアンカーを地盤の不動層に達するように設置し、各アンカーの頭部に支圧板を取り付け、必要に応じて斜面安定化に寄与するその他の斜面安定化部材を用いて斜面安定化構造体を構築する斜面安定化工法を採用するとともに、当該斜面にセンサを取り付けて斜面の危険度を伝達可能にした斜面安定化システムであって、 前記斜面安定化工法を施工するに際して、斜面の安全率Fs=1.0超、1.2未満、を満たす仕様で施工するとともに、前記アンカー、支圧板、その他の斜面安定化部材のうちの選択した1つ又は複数の斜面安定化部材に、斜面に変状を生じたときにその変状を検知可能なセンサを取り付け、斜面に変状が生じた時に前記斜面安定化部材に取り付けられた前記センサが検知した信号に基づいて危険度信号を発信する危険度信号発信手段を設け、この危険度信号発信部の発信情報を受信する危険度信号受信手段を設けた斜面安定化システムが提案されている。
この特許文献1では、斜面安定化構造体を安全率Fsが1.0<Fs<1.2を満たす斜面に設置して斜面安定化を図ることにより、単に斜面観測システムを設置した場合と比べて地域住民の安心感を得させようとしている。そして、施工時から常時センシングする危険度信号発信手段により、地域住民に状況を伝達することを可能とし、これにより斜面崩壊の可能性が高まった時に地域住民の適切な対応を可能にしようとしている。
特開2011−185860号公報(請求項4、段落〔0032〕、図4等)
しかしながら、特許文献1では、斜面安定化構造体を設けて斜面の安定化を向上させ、さらに施工時から常時センシングする危険度信号発信手段を備えているものの、斜面崩壊が高まったときは危険度信号発信手段からの危険度信号を受信してから避難行動を開始しなければならず、斜面崩壊の対策工としては不十分である。すなわち、集中豪雨時には斜面崩壊の危険性が高まることから極力事前に避難するのが望ましいが、避難所に逃げ込むには川のようになった道路や川と道路とを判別できないようなところを通過せざるを得ない場合もあり、却って屋外に避難する方が危険な場合もある。また、危険度信号を受信したときには避難のための猶予時間が殆どない場合も考えられることから、折角、危険度信号を受信しても事実上、避難行動を行えない事態が生じるおそれがある。
このように特許文献1は、斜面の崩壊抑止を根本的に解決するものではなく、斜面崩壊の対策工としては不十分であり、斜面崩壊の危険性を演繹的手法で解決して斜面崩壊を未然に防ぐ技術の開発が要請されている。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、想定外の記録的な集中豪雨が生じても、斜面崩壊を未然に抑止することができる斜面安定化工法、斜面安定化構造、斜面の崩壊を抑止するための土構造物の管理方法、及び土構造物の管理システムを提供することを目的とする。
従来、集中豪雨等により生じる斜面崩壊は、地下水位が上昇し、地表層に水が溜まって土のせん断抵抗力が低下し、滑動面上の土塊の引き留め力が減少することにより発生すると考えられていた。
しかしながら、本発明者の研究結果により、斜面崩壊の主たる原因は、単に地下水位の上昇によるせん断抵抗力の低下ではなく、地中に形成されたソイルパイプが地下水で飽和したときに発生する過剰間隙水圧であるという知見を得た。
斜面崩壊の原因が、従来のように地下水位の上昇によるせん断抵抗力の減少とした場合、間隙水圧は静水圧のみとなるが、粘着力や内部摩擦角等の土質パラメータを実測し、これら実測値に基づいて斜面の安定解析を行ったところ、間隙水圧が静水圧のみの場合、間隙水圧を地表層と同一の水頭に設定しても斜面の安全率が1.0以上になって斜面崩壊が生じないことが分かった。
そこで、本発明者が鋭意研究を行ったところ、ゲリラ豪雨等の集中豪雨では地下水がソイルパイプ内に充満して飽和し、過剰間隙水圧が発生して該過剰間隙水圧が地表層に印加され、それが主たる原因で斜面崩壊を招くことが分かった。
すなわち、雨水が地下水となって地中に浸透すると、土粒子が流出し、ソイルパイプと称される多数の血管状の「水みち」が形成される。このソイルパイプは、周辺の土砂に比べると透水性が良好であり、通常の降雨では地下水はソイルパイプ内に飽和しない。
しかしながら、本発明者の鋭意研究の結果、ゲリラ豪雨等の集中豪雨時では地下水がソイルパイプ内に充満して飽和し、その結果、ソイルパイプ内に過剰間隙水圧が発生し、静水圧に加え過剰間隙水圧が地表層に印加され、しかも、この過剰間隙水圧は斜面の下方方向に増大する圧力分布を有することが分かった。すなわち、斜面下方の裾部分に大きな過剰間隙水圧が発生することとなり、その結果、地表層のせん断抵抗力が過剰間隙水圧に抗しきれずに破壊してしまい、これが主たる原因で斜面崩壊を招くことが分かった。
したがって、斜面崩壊を抑止するためには、ソイルパイプ内で発生する過剰間隙水圧を低減するのが好ましく、そのためには斜面崩壊を招く限界過剰間隙水圧を超えないように、ソイルパイプ内の過剰間隙水圧を消散させる管状部材を斜面上に配し、該管状部材で過剰間隙水圧を一旦ゼロにリセットするのが好ましいと考えられる。
ところで、ソイルパイプの周辺の土砂は、ソイルパイプに比べると難透水性を有するものの透水性を有することから、ソイルパイプ内の地下水は周辺の土砂に浸透し、その結果、地下水がソイルパイプに完全飽和状態としたときに発生する過剰間隙水圧に対し水圧損失が生じる。このため実際の過剰間隙水圧は、ソイルパイプが地下水で完全飽和状態のときの過剰間隙水圧に比べ低下すると考えられる。
したがって、完全飽和状態の過剰間隙水圧に対する前記過剰間隙水圧と前記水圧損失との差を過剰間隙水圧比と定義し、斯かる過剰間隙水圧比を因子として上述した限界過剰間隙水圧を予測するのが望ましい。この過剰間隙水圧比は、既知データである土質パラメータや斜面の安全率から求めることが可能であり、斜面安定化に寄与する斜面上の管状部材の配設位置を技術者の経験や習熟度に依ることなく演繹的に求めることが可能となる。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る斜面安定化工法は、地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止する斜面安定化工法であって、前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧を規定する過剰間隙水圧比を、少なくとも粘着力及び内部摩擦角を含む土質パラメータと斜面の安全率とに基づいて算出し、前記過剰間隙水圧比から斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を予測し、該限界過剰間隙水圧を超えないように前記斜面上に管状部材を配し、該管状部材により前記過剰間隙水圧を消散させることを特徴としている。
また、本発明の斜面安定化工法では、前記管状部材は、長手方向に開口部が設けられると共に、少なくとも一端は開放端とされ、該開放端が前記斜面から露出しているのが好ましい。
さらに、本発明の斜面安定化工法では、前記過剰間隙水圧比は、前記ソイルパイプが前記地下水で完全飽和状態のときの過剰間隙水圧をu、地下水が前記ソイルパイプから前記地中に浸透したときの水圧損失をΔuとしたときに、(u−Δu)/uで表されるのが好ましい。
さらに、本発明の斜面安定化工法では、前記管状部材の設置個数を、前記過剰間隙水圧比に応じて設定するのが好ましい。
また、本発明に係る斜面安定化構造は、地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止する斜面安定化構造であって、長手方向に開口部が設けられかつ少なくとも一端が開放端とされた管状部材が、斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を超えないような位置に前記開放端が前記斜面上に露出して設けられると共に、前記限界過剰間隙水圧は、前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧を規定する過剰間隙水圧比に基づいて設定され、前記過剰間隙水圧比は、少なくとも粘着力及び内部摩擦角を含む土質パラメータの実測値と斜面の安全率とに基づいて算出されることを特徴としている。
さらに、本発明の斜面安定化構造は、前記土質パラメータが、地表層の土層厚さ、土及び水のそれぞれの単位体積重量を含むのが好ましい。
また、本発明の斜面安定化構造では、前記管状部材は、前記開口部が多数の孔からなると共に、前記開放端と反対側の他端は、略尖鋭状に閉塞され、地盤中に打設されているのが好ましい。
さらに、本発明の斜面安定化構造は、前記管状部材が、予め掘削された孔内に設けられているのも好ましい。
また、本発明の斜面安定化構造は、前記管状部材の設置個数が、前記過剰間隙水圧比に応じ設定されるのが好ましい。
また、粘着力や内部摩擦角等の土質パラメータは、これら土質パラメータが測定可能な土質パラメータで実測することができ、この実測値を使用して斜面安定化解析を行い、その解析結果に基づいて斜面に管状部材を配し、これにより土構造物を管理することができる。
すなわち、本発明に係る土構造物の管理方法は、地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止するための土構造物の管理方法であって、土質パラメータ測定具を使用し、前記斜面の所定位置で少なくとも粘着力と内部摩擦角とを含む土質パラメータを測定すると共に、前記斜面の安全率を設定し、前記土質パラメータと前記斜面の前記安全率とに基づいて過剰間隙水圧比を算出し、該過剰間隙水圧比に基づいて限界過剰間隙水圧を予測し、該限界過剰間隙水圧が超えないように前記斜面上に管状部材を配し、該管状部材により前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧を消散させることを特徴としている。
また、本発明に係る土構造物の管理システムは、地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止するための土構造物の管理システムであって、少なくとも粘着力及び内部摩擦角を含む土質パラメータを算出する手段と、算出された前記土質パラメータと斜面の安全率とに基づいて過剰間隙水圧比を算出する手段と、算出された前記過剰間隙水圧比に基づき、前記斜面の崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を算出する手段、前記限界過剰間隙水圧を超えないように前記斜面上に管状部材を配する手段とを備えていることを特徴としている。
本発明の斜面安定化工法及び斜面安定化構造によれば、土質パラメータと斜面の安全率とに基づいて算出された過剰間隙水圧比から斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を予測し、該限界過剰間隙水圧が超えないように前記斜面上に管状部材を配し、該管状部材により過剰間隙水圧を消散させているので、ゲリラ豪雨等の想定外の記録的な集中豪雨が生じても、ソイルパイプ内で発生する過剰間隙水圧が管状部材の配設位置で消散してしまうことから、過剰間隙水圧が過度に大きくなることはなく、斜面が崩壊するのを未然に抑止することができる。したがって、集中豪雨が生じても避難行動に伴う二次災害が生じるのを抑制することができ、地域住民の安全性を確保できる。また、道路や鉄道等においても安全性を確保することができる。
前記管状部材は、長手方向に開口部が設けられると共に、少なくとも一端は開放端とされ、該開放端が前記斜面から露出しているので、ソイルパイプ内の地下水を開口状の露出部から容易に放出させることができ、ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧が斜面の崩壊を招くような限界過剰間隙水圧を超えるのを回避することができる。
前記過剰間隙水圧比は、前記ソイルパイプが前記地下水で完全飽和状態とされたときの過剰間隙水圧をu、前記地下水が前記ソイルパイプから前記地盤中に浸透したときの水圧損失をΔuとした場合、(u−Δu)/uで表されるので、過剰間隙水圧比を因子として斜面の安定化設計を容易に行うことができる。
また、前記土質パラメータには、少なくとも粘着力や内部摩擦角を含むので、斜面崩壊を招かないような斜面安定化解析を容易に行うことが可能となる。
さらに、前記管状部材の設置個数を、前記過剰間隙水圧比に応じて設定するので、斜面安定化解析により適切な個数の管状部材を斜面に配することができ、良好な信頼性を有する斜面安定化工法及び斜面安定化構造を実現することができる。
また、前記管状部材は、斜面から水平方向に地盤中に打設してもよく、予め掘削された孔内に設けてもよく、これによりソイルパイプ内の地下水を容易に外部に放出することができ、過剰間隙水圧を消散させることができる。
また、本発明の土構造物の管理方法及び管理システムによれば、仮定に依ることなく、実測データに基づいて過剰間隙水圧比を演繹的に算出し、この過剰間隙水圧比に基づき、過剰間隙水圧が消散するように管状部材を斜面上に配することから、土構造物の保守管理を適切に行うことができ、斜面崩壊等を未然に予防することが可能となる。しかも、粘着力や内部摩擦角等の土質パラメータは容易かつ高精度に実測できることから、技術者の経験や習熟度を要することなく、低コストで斜面の安定性が向上し、斜面崩壊を抑止できる土構造物の管理方法及び管理システムを実現することができる。
本発明に係る斜面安定化工法を使用して施工された斜面安定化構造の一実施の形態を示す模式図である。 管状部材の一実施の形態としての排水パイプを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。 斜面の安定解析手法を説明するための図である。 間隙水圧として静水圧のみが斜面に印加された状態を示す模式図である。 間隙水圧として静水圧に加え過剰間隙水圧が斜面に印加された状態を示す模式図である。 土質パラメータ測定具の一実施の形態を示す正面図である。 図5の要部拡大正面図である。 土層パラメータ測定具の他の例を示す正面図である。 内部摩擦角φと粘着力cの算出方法を説明するための図である。 斜面安定化構造の他の実施の形態を示す模式図である。 参考例1のシミュレーション結果を示す図である。 参考例2のシミュレーション結果を示す図である。 実施例のシミュレーション結果を示す図である。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
図1は、本発明に係る斜面安定化工法を使用して施工された斜面安定化構造の一実施の形態を示す模式図である。
本斜面安定化構造は、地盤1の表面に土層厚さDの地表層2が形成され、地中にソイルパイプを有する高さHの斜面において、過剰間隙水圧P2が斜面崩壊を招く限界過剰間隙水圧Pを超えないように、排水パイプ3が地表層2の表面から水平方向に打設されている。
この斜面安定化構造によれば、ゲリラ豪雨等の想定外の記録的な集中豪雨が生じ、ソイルパイプが地下水で飽和状態になって過剰間隙水圧P2を発生しても、ソイルパイプ内の地下水は排水パイプ3から外部に排水されて過剰間隙水圧P2が消散し、これにより斜面が崩壊するのを抑止することができる。
排水パイプ3は、地下水が流入する開口部が長手方向に形成され、該地下水を外部に排水する機能を有するものであれば特に限定されるものではない。
図2は、排水パイプ3の一例を示す図であって、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図である。
すなわち、この排水パイプ3は、長手方向に多数の孔4が貫設されている。本実施の形態では、前記孔4は長穴形状に形成され且つ周方向に略千鳥状に列設されている。さらに、この排水パイプ3は、一端が開放端5とされると共に、他端は平面状に圧潰されて略尖鋭状に閉塞された閉塞部6を有している。
そして、排水パイプ3の閉塞部6を斜面の地表層2に当接させた後、排水パイプ3の開放端5にコンクリートブレーカー等の打設装置を当接させ、該打設装置を加振しながら排水パイプ3を地盤1方向に押圧する。すると、排水パイプ3は斜面の水平方向に地表層2から地盤1中に圧入される。このように排水パイプ3を地盤1中に打設することにより、ソイルパイプ内に発生した過剰間隙水圧P2は孔4から流入して開放端5から外部に排水され、これにより過剰間隙水圧P2は消散し、安全率Fsが1.0以上の斜面を確保することが可能となり、想定外の記録的な集中豪雨が発生しても斜面崩壊を抑止することが可能となる。
このように本斜面安定化構造によれば、長手方向に多数の孔4が設けられかつ一端が開放端5とされた排水パイプ3が、斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧Pを超えないような位置に前記開放端5が前記斜面上に露出して設けられると共に、後述するように限界過剰間隙水圧Pは、ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧P2を規定する過剰間隙水圧比αに基づいて設定され、前記過剰間隙水圧比αは、土質パラメータと斜面の安全率Fsとに基づいて算出されることから、斜面の安定化施工を技術者の経験や習熟度に依存することなく、演繹的解析でもって斜面崩壊を未然に抑止できる信頼性に優れた斜面安定化構造を実現することができる。
また、避難行動に伴う二次災害が発生するのを効果的に抑制することができ、地域住民の安全性を確保でき、更には法面を有する道路や鉄道等においても安全性を確保することができる。
次に、本発明に係る斜面安定化工法を詳述する。
従来より、斜面の安定化解析を行って斜面の安定性を評価することが広く行われている。
この種の斜面の安定化解析で広範に使用されている二次元の極限平衡法によれば、斜面の安全率Fsは、数式(1)で表すことができる。
Fs=R/T …(1)
ここで、Rは抵抗力、Tは滑動力である。
この極限平衡法では、図3に示すように、安定解析の対象となる滑動面7(斜面)を多数のスライス8に分割し、スライス8毎に抵抗力R及び滑動力Tを求め、これらを集計して安全率Fsを算出している。
そして、この極限平衡法では、フェレニウス法、修正フェレニウス法、ビショップ法等の各種安定解析法が提案されているが、本実施の形態ではより高精度な安定解析が可能なビショップ法で斜面の安定解析を行っている。
すなわち、スライス8の滑動力Tは、地表層2上の単位土塊重量X(kN/m)の接線分力であることから、滑動面7が水平方向に対してなす角度をθとすると、数式(2)で表すことができる。
T=Xsinθ …(2)
一方、抵抗力Rは、地表層2の滑りに抵抗するせん断強さで表されることから、数式(3)で表される。
R=cL+(N−μL)tanφ…(3)
ここで、cは土塊の粘着力(kPa)、φは土塊の内部摩擦角(°)であり、Lは滑動面の全長(m)を示している。また、μは間隙水圧(kPa)である。
また、Nは、地表層2に作用する単位土塊重量X(kN/m)の垂直分力であり、数式(4)で表すことができる。
N=Xcosθ …(4)
したがって、安全率Fsは、数式(5)で表すことができる。
Figure 0006172825
安全率Fsは、数式(6)に示すように、1.0以上であれば斜面崩壊を回避することができ、一方、数式(7)に示すように、1.0未満であれば、斜面は不安定であり、集中豪雨等により斜面崩壊の危険性を有することになる。
Fs≧1.0 … (6)
Fs<1.0 … (7)
そして、従来では、地表層2に印加される間隙水圧μは、図4に示すように、一般に静水圧P1のみと考えられていた。
ここで、静水圧P1は、地表面2の土層厚さをD、水の単位体積重量をγwとすると、数式(8)で表される。
P1=D・γw …(8)
すなわち、間隙水圧μを静水圧P1のみとした場合、間隙水圧μは、図4に示すように、滑動面である地表層2に均等に印加されることとなる。そしてこの場合、粘着力c、内部摩擦角φ、土層厚さDを実測し、これら土質パラメータを数式(5)に代入し、斜面安定化解析を行っても、通常は安全率Fsが1.0以上となり、斜面崩壊は生じない。
しかるに、雨水が地下水となって地表層2に浸透すると、土粒子が流出し、地表層2の内部にはソイルパイプと称される多数の血管状の「水みち」が形成される。
このソイルパイプは、周辺の土砂に比べると透水性が良好であり、通常の降雨程度では飽和しないが、ゲリラ豪雨等の想定外の記録的な集中豪雨が生じると、ソイルパイプ内に地下水が飽和し、図5に示すように、ソイルパイプの最高水頭位置を頂点とし斜面下方に架けて三角形状に分布する過剰間隙水圧P2が発生し、この過剰間隙水圧P2が地表層2に印加される。
この場合、周辺の土砂はソイルパイプに比べると難透水性であるが、それでも透水性を有することから周辺の土砂に浸透し、水圧損失が生じる。したがって、ソイルパイプが地下水で完全に飽和した完全飽和状態の過剰間隙水圧をuとし、地下水の周辺土砂への浸透による水圧損失をΔuとし、過剰間隙水圧比α(αは0≦α≦1)を数式(9)で定義すると、地表層2に印加される過剰間隙水圧P2は数式(10)で表すことができる。
α=(u−Δu)/u …(9)
P2=α・γw・Δh …(10)
したがって、間隙水圧μは、数式(11)に示すように、静水圧P1と過剰間隙水圧P2の合計となる。
μ=P1+P2=D・γw+α・γw・Δh…(11)
この数式(10)又は数式(11)から明らかなように、過剰間隙水圧P2は比高Δhに比例して大きくなり、特に、斜面下方の裾部分で過剰間隙水圧P2は最大となり、この過剰間隙水圧P2が地表層2に印加されることとなる。そしてその結果、地表層2は間隙水圧μに抗しきれずに破壊し、これにより斜面崩壊を招くと考えられる。
そこで、本発明では、土質パラメータと斜面の安全率Fsとに基づいて過剰間隙水圧比αを算出し、該過剰間隙水圧比αから斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧Pを予測し、該限界過剰間隙水圧Pが超えないように斜面上に排水パイプ3を配し、該排水パイプ3により過剰間隙水圧P2を消散させ、これにより斜面崩壊を抑止している。
すなわち、過剰間隙水圧比αから予測された限界過剰間隙水圧Pを超えないように比高Δhを設定し、この比高Δhに相当する斜面中腹に斜面の水平方向に1個以上の排水パイプ3を配し、ソイルパイプ内の地下水を排水パイプ3から外部に排水し、過剰間隙水圧を消散させ、ソイルパイプの最高水頭位置を頂点に三角形形状に分布する過剰間隙水圧P2を排水パイプ3の設置位置でゼロにリセットしている。
ここで、排水パイプ3の設置個数は、過剰間隙水圧比αに応じて設定される。すなわち、過剰間隙水圧比αに基づき限界過剰間隙水圧Pを超えないような比高Δhを上記数式(10)から求め、この比高Δhに基づいて排水パイプ3の設置個数が決定される。
尚、この排水パイプ3の配列ピッチは、限界過剰間隙水圧Pを超えないような比高Δhであればよく、施工現場の状況等に応じて適切に決定することができる。
このように本斜面安定化工法は、ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧P2を規定する過剰間隙水圧比αを、土質パラメータと斜面の安全率Fsとに基づいて算出し、前記過剰間隙水圧比αから斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧Pを予測し、該限界過剰間隙水圧Pを超えないように前記斜面上に排水パイプ3を配し、該排水パイプ3により過剰間隙水圧P2を消散させるので、ゲリラ豪雨等の想定外の記録的な集中豪雨が生じても、ソイルパイプ内の地下水が排水パイプ3を介して外部に排水され、ソイルパイプ内で発生する過剰間隙水圧が排水パイプ3で消散することから、斜面が崩壊するのを未然に抑止することができる。すなわち、斜面の安定化施工を技術者の経験や習熟度に依存することなく、演繹的手法でもって斜面崩壊を未然に抑止できる信頼性に優れた斜面安定化工法を実現することができる。
また、従来のように避難行動に伴う二次災害が発生するのを回避でき、地域住民の安全性を確保でき、また、法面を有する道路等においても安全性を確保することができる。
そして、本実施の形態では、上述した粘着力cや内部摩擦角φを仮定によることなく土質パラメータ測定具を使用して実測することができ、過剰間隙水圧比αは実測データ及び形状データから一義的に決定することができる。
以下、土質パラメータの測定方法を説明し、斜面崩壊を抑止するための土構造物の管理方法及び管理システムについて詳述する。
[土質パラメータの測定方法]
図6は、土質パラメータ測定具の一実施の形態を示す正面図である。
すなわち、この土質パラメータ測定具は、矢印A方向に回動可能なロッド部11と、該ロッド部11の先端に設けられた第1のコーン部(コーン部)12と、ロッド部11の中間に介装された円筒形状のテンションゲージ13と、ロッド部11の基端に設けられた把持部14とを有している。
また、ロッド部11は、表面がクロムメッキされた鉄等で形成され、螺子部11aを介して把持部14に着脱自在に装着されている。さらに、把持部14は、中空部14aを有しており、該中空部14aにトルクレンチ(図示せず。)を装着して該トルクレンチを矢印A方向に回動させることにより、回転トルクTの測定が可能とされている。
第1のコーン部12は、第1のコーン先端部15と、首部16と、軸部17とが一体形成され、軸部17の先端に形成された螺子部17aを介してロッド部11に着脱自在に装着されている。
第1のコーン先端部15は、図7に示すように、円錐形状に形成されたコーン本体部19と、該コーン本体部19の外周に等角度間隔で付設された複数枚の羽根18とが一体形成されてなり、本実施の形態では4枚の羽根18が前記コーン本体部19の外周母線に沿うように形成されている。また、第1のコーン先端部15は、コーン本体部19の基端から羽根18の先端までの高さがM、コーン本体部19の軸心Cに対する傾斜角度がψとなるように形成されている。
さらに、上記土質パラメータ測定具は、第1のコーン部12に代えて、羽根を有さない第2のコーン部と交換可能とされている。
図8は、第2のコーン部を備えた土質パラメータ測定具の正面図を示している。
すなわち、この第2のコーン部22は、羽根を有さない円錐形状の第2のコーン先端部23と、首部24と、軸部25とが一体形成され、軸部25の先端に形成された螺子部25aを介してロッド部11に着脱自在に装着されている。
そして、本実施の形態では、この土質パラメータ測定具を使用し、地表層の土層厚さDや斜面の所定位置で粘着力c、内部摩擦角ψを測定している。
<土層厚さDの測定>
第1のコーン部12又は第2のコーン部22をロッド部11に装着する。そして、把持部14を把持して第1のコーン先端部15又は第2のコーン先端部23を土層に押し込み、テンションゲージ13で深度方向荷重Wを測定し、その時のロッド部11の土層中の貫入量を測定する。すると、柔らかい土層と硬い土層又は岩盤との境界近傍では、深度方向荷重Wが急激に増加する。そして、この深度方向荷重Wの急激な増加が生じた時点でのロッド部1の貫入量を測定し、これにより地表層2の土層厚さDを得る。
このように土質パラメータ測定具を地表層2中に押し込むことにより、多数の地点で短時間かつ迅速に土層厚を計測することができ、土層厚分布を得ることが可能となる。
尚、この土層厚さは、事前調査を行って既知データがある場合は省略することができる。
<粘着力c及び内部摩擦角ψの測定>
第2のコーン部22を使用して固有摩擦に起因するトルク(固有摩擦トルク)Tを計測する。
すなわち、第2のコーン部22をロッド部11に装着し、所定位置までコーン先端部23を押し込んで停止させ、深度方向荷重Wが負荷されていない状態で把持部4にトルクレンチを装着し、ロッド部11を矢印A方向に回動させ、そのときの最大トルク、すなわちロッド部11等の測定系が有する固有摩擦トルクTを計測する。
次に、第2のコーン部22に代えて第1のコーン部12をロッド部11に装着し、把持部14を把持してコーン先端部15を上記原位置まで押し込み、深度方向荷重Wを負荷しながら、トルクレンチを矢印A方向に回動させ、回転トルクTを計測する。
そして、回転トルクTから固有摩擦トルクTを減算し、正味回転トルクTを算出する。
一方、下記特許文献2によれば、コーン先端具5の高さをH、軸心Cに対する傾斜角度をθとすると、せん断応力τ、及び直応力σは、それぞれ数式(12)、(13)で表すことができる。
Figure 0006172825
特許第3613591号公報
また、粘着力をc(N/m)、内部摩擦角をφ(°)とすると、せん断応力τ(N/m)と直応力σ(N/m)との間には数式(14)で示すクーロンの式が成立することが知られている。
τ=σ・tanφ+c …(14)
したがって、所定位置における深度方向荷重Wを種々異ならせ、そのときの回転トルクTをトルクレンチで逐次計測して、正味回転トルクT(=T−T)を求めることにより、数式(12)及び(13)に基づき、深度方向荷重Wに応じた各せん断応力τ及び直応力σを算出することができる。
図8は、せん断応力τと直応力σとの関係を示す図であり、横軸が直応力σ(N/m)、縦軸がせん断応力τ(N/m)である。
そして、数式(14)から明らかなように、直線の傾きが内部摩擦角φ(°)、直線とy軸とが交差する切片が粘着力c(N/m)となり、土構造物の内部摩擦角φ及び粘着力cを容易に求めることができる。
[過剰間隙水圧比αの算出]
安全率Fsは、上述したように数式(5)で表すことができる。そして、間隙水圧μは数式(11)で表すことができる。
したがって、安定解析の対象となる滑動面の長さL、比高Δhを設定し、土質パラメータ測定具で実測した粘着力c、内部摩擦角φ、地表層2の土層厚さD、及び別途測定した水の単位体積重量γw、単位土塊重量Xを使用し、対策を必要とする箇所に隣接するか、又は対策すべき条件が同等とみなせる場所の既崩壊地において、崩壊時の安全率Fsが1.0を若干下回るように例えば0.98〜0.99に設定する。そして、これらのデータを数式(5)に代入し、斜面の安全性が若干下回るときの過剰間隙水圧比αを算出する。
過剰間隙水圧比αは、地域によって同一の過剰間隙水圧比αを有することが多いことから、通常は代表地点や土質等から算出された過剰間隙水圧比αを当該地域の過剰間隙水圧比αとして使用することができる。
尚、上述のようにして求めた過剰間隙水圧比αを使用し、安全率Fsが0.98〜0.99のときの過剰間隙水圧P2が限界過剰間隙水圧Pとなる。
[排水パイプ3の打設]
上述のように求めた過剰間隙水圧比αを使用し、過剰間隙水圧P2(=α・γw・Δh)が限界過剰間隙水圧Pを超えないようにソイルパイプの最高水頭位置からの比高Δhを設定する。そして、比高Δhに相当する斜面の位置に水平方向に排水パイプ3を打設する。
さらに、滑動面(斜面)の長さLに応じ、適宜排水パイプ3の配設ピッチ(比高Δh)を決定し、同様にして排水パイプ3を配する。
このように本土構造物の管理方法及び管理システムによれば、土質パラメータ測定具を使用し、斜面の所定位置で少なくとも粘着力cと内部摩擦角φとを含む土質パラメータを測定すると共に、前記斜面の安全率Fsを設定し、土質パラメータと斜面の安全率Fsとに基づいて過剰間隙水圧比αを算出し、該過剰間隙水圧比αに基づいて限界過剰間隙水圧Pを予測し、該限界過剰間隙水圧Pが超えないように斜面上に排水パイプ3を配し、該排水パイプ3により前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧P2を消散させているので、過剰間隙水圧比αを、仮定に依ることなく実測データに基づいて演繹的に算出し、この過剰間隙水圧比αに基づき、過剰間隙水圧P2が消散するように排水パイプ3を斜面上に配していることから、土構造物の保守管理を適切に行うことができ、斜面崩壊等を未然に予防することが可能となる。しかも、粘着力や内部摩擦角等の土質パラメータは容易かつ高精度に実測できることから、技術者の経験や習熟度に依存することなく、低コストで斜面の安定性を向上させることが可能となる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図10に示すように、排水パイプ3を過剰間隙水圧比αや斜面の形状・大きさに応じ、多段にするのも好ましい。
また、上記実施の形態では、管状部材として図2にしめすような排水パイプを例示したが、長手方向に開口部を有しかつ一端が開放端を有していればよく、斜面を掘削して孔を形成し、両端が開放端とされた管状部材を埋設してもよい。また、管状部材の材質についても、鋼鉄製、塩化ビニルやポリエチレン等の樹脂製であってもよい。
さらに、土質パラメータ測定具についても、上記実施の形態に限定されるものでないのはいうまでもなく、例えば、施工現場でブロックサンプルを採取し、力学的な土質試験を行い、粘着力cや内部摩擦角φを得るようにしてもよい。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
図11〜図13に示すように、地盤51上に地表層52が形成された斜面モデルを構築し、極限平衡法を使用し、以下のように斜面安定化解析を行い、シミュレーションした。
図11は地表層52に静水圧P1のみが印加された場合を示し(参考例1)、図12は地表層に52に静水圧P1とソイルパイプからの過剰間隙水圧P2が印加されたが、排水パイプが設けられていない場合を示し(参考例2)、図13は地表層52に静水圧P1とソイルパイプからの過剰間隙水圧P2が印加され、かつ、排水パイプ53を設けた場合を示している(本発明実施例)。
(1)参考例1
図11は、本発明範囲外の参考例1のシミュレーション結果であり、地表層52に静水圧P1のみが印加されているとした場合である。
この参考例1では、土質パラメータとしての粘着力cを28.7kPa、内部摩擦角φを11.5°、土の単位体積重量Xを18.7kN/m、水の単位体積重量γwを10kN/m、地表層の土層厚さDを1.2〜1.9mとし、過剰間隙水圧αを「0」として円弧すべりの安全率Fsを、[発明の実施の形態]の項で記載した数式(5)に基づいて算出した。尚、斜面の形状データは解析ソフト上で表示される座標軸データを使用した。
その結果、間隙水圧μは静水圧P1(=D・γw)のみであることから、扇状の圧力分布を有するが安全率Fsは平均値で2.4となり、斜面崩壊が生じないことが分かった。
(2)参考例2
図12は、本発明範囲外の参考例2のシミュレーション結果であり、地表層52に静水圧P1とソイルパイプからの過剰間隙水圧P2が印加されたが、排水パイプが設けられていない場合である。
この参考例2では、参考例1と同様の既知データに加え、比高Δhを30m、過剰間隙水圧比を0.3として安全率Fsを求めた。
その結果、間隙水圧μは、静水圧P1と過剰間隙水圧P2との合計となり、図12に示すように、過剰間隙水圧P2は47〜74kPaの間で変動する圧力分布を有することが分かった。そして、過剰間隙水圧P2は限界過剰間隙水圧Pである69kPaを超えてしまい、安全率Fsは平均値で0.995と1.0未満となり、斜面崩壊を招くものと考えられる。
(3)実施例
図13は、本発明実施例のシミュレーション結果であり、地表層52に静水圧P1とソイルパイプからの過剰間隙水圧P2が印加され、かつ、比高Δhが17mの位置に排水パイプ53を設けた場合である。
この実施例では、参考例2と同様、過剰間隙水圧比αを0.3とし、斜面の安全率Fsを求めた。
その結果、間隙水圧μは、図13のような圧力分布を有することが分かった。すなわち、排水パイプ53を設置することにより過剰間隙水圧P2は「0」となって限界過剰間隙水圧P(=69kPa)を超えることもなく間隙水圧μは17kPa(=静水圧P1)に低下し、そこから再び過剰間隙水圧P2′(=α・γw・Δh′(Δh′は排水パイプ53の設置位置を基準とした比高))が生じるものと予測される。また、安全率Fsの平均値は1.8であり、斜面崩壊を未然に抑止できることが確認された。
演繹的解析によって斜面上の管状部材の配設位置を決定し、該管状部材で過剰間隙水圧を消散させ、これにより想定外の記録的な集中豪雨が生じても、斜面崩壊を効果的に未然に抑止することができる良好な信頼性を有する斜面安定化工法とその構造、土構造物の管理方法とその管理システムを実現する。
3 排水パイプ(管状部材)
4 孔(開口部)
5 開放端
11 ロッド部
15 コーン部

Claims (11)

  1. 地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止する斜面安定化工法であって、
    前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧を規定する過剰間隙水圧比を、少なくとも粘着力及び内部摩擦角を含む土質パラメータと斜面の安全率とに基づいて算出し、前記過剰間隙水圧比から斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を予測し、該限界過剰間隙水圧を超えないように前記斜面上に管状部材を配し、該管状部材により前記過剰間隙水圧を消散させることを特徴とする斜面安定化工法。
  2. 前記管状部材は、長手方向に開口部が設けられると共に、少なくとも一端は開放端とされ、該開放端が前記斜面から露出していることを特徴とする請求項1記載の斜面安定化工法。
  3. 前記過剰間隙水圧比は、前記ソイルパイプが地下水で完全飽和状態のときの過剰間隙水圧をu、前記地下水が前記ソイルパイプから前記地中に浸透したときの水圧損失をΔuとしたときに、(u−Δu)/uで表されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の斜面安定化工法。
  4. 前記管状部材の設置個数を、前記過剰間隙水圧比に応じて設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の斜面安定化工法。
  5. 地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止する斜面安定化構造であって、
    長手方向に開口部が設けられかつ少なくとも一端が開放端とされた管状部材が、斜面崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を超えないような位置に前記開放端が前記斜面上に露出して設けられると共に、
    前記限界過剰間隙水圧は、前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧を規定する過剰間隙水圧比に基づいて設定され、
    前記過剰間隙水圧比は、少なくとも粘着力及び内部摩擦角を含む土質パラメータの実測値と斜面の安全率とに基づいて算出されることを特徴とする斜面安定化構造。
  6. 前記土質パラメータは、地表層の土層厚さ、土及び水のそれぞれの単位体積重量を含むことを特徴とする請求項5記載の斜面安定化構造。
  7. 前記管状部材は、前記開口部が多数の孔からなると共に、前記開放端と反対側の他端は、略尖鋭状に閉塞され、地盤中に打設されていることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の斜面安定化構造。
  8. 前記管状部材は、予め掘削された孔内に埋設されていることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の斜面安定化構造。
  9. 前記管状部材の設置個数は、前記過剰間隙水圧比に応じて設定されることを特徴とする請求項乃至請求項8のいずれかに記載の斜面安定化構造。
  10. 地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止するための土構造物の管理方法であって、
    土質パラメータ測定具を使用し、前記斜面の所定位置で少なくとも粘着力と内部摩擦角とを含む土質パラメータを測定すると共に、前記斜面の安全率を設定し、前記土質パラメータと前記斜面の前記安全率とに基づいて過剰間隙水圧比を算出し、該過剰間隙水圧比に基づいて限界過剰間隙水圧を予測し、該限界過剰間隙水圧が超えないように前記斜面上に管状部材を配し、該管状部材により前記ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧を消散させることを特徴とする土構造物の管理方法。
  11. 地中にソイルパイプが形成された斜面の崩壊を抑止するための土構造物の管理システムであって、
    少なくとも粘着力及び内部摩擦角を含む土質パラメータを算出する手段と、
    算出された前記土質パラメータと斜面の安全率とに基づいて過剰間隙水圧比を算出する手段と、
    算出された前記過剰間隙水圧比に基づき、前記斜面の崩壊が生じ得る限界過剰間隙水圧を設定する手段と、
    前記限界過剰間隙水圧を超えないように前記斜面上に管状部材を配する手段とを備えていることを特徴とする土構造物の管理システム。
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