JP2022024264A - 堤防監視システム及び計測装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022024264000001
【課題】決壊予見性をもって堤防内の状態変化を監視することが可能な堤防監視システムを提供する。
【解決手段】堤防監視システムは、堤防7内に埋設されて、堤防7内の含水率とひずみを計測する計測装置1と、含水率とひずみの計測データに基づいて堤防内の状態変化を演算する演算装置とを備える。計測装置1は、高さ方向の少なくとも一部に曲げ荷重に対して変形容易な変形容易部32を有する長尺部3を有する。長尺部3には、高さ方向の互いに離間する位置に堤防7内の含水率を計測するための複数の含水率センサー4が設けられ、変形容易部32には、ひずみを計測するためのひずみセンサー5が設けられている。
【選択図】図2A

Description

本発明は河川の堤防を監視するシステム及び堤防の状態変化を計測する計測装置に関し、特に堤防の決壊を監視するシステム及び堤防決壊の予兆を示す堤防の状態変化を計測する計測装置に関する。
河川は、岩石や土砂を盛った堤防やコンクリート等の構造物で構成された堤防により、周囲への氾濫対策が施されている。しかしながら、想定を超える雨量や上流での土砂崩れ、長期間の降雨による土砂の緩み、経年劣化などにより、堤防が決壊して甚大な被害が生じることがある。
そこで、監視カメラを設置して、河川の水位が堤防を越水することに起因する越水決壊を監視することが行われている。しかしながら、堤防決壊は堤防内部の状態に係るメカニズムに起因する場合があり、その場合には、監視カメラで監視することは難しい。堤防の内部状態に起因する堤防決壊には、例えば、(1)河川の水が堤防の側面側から浸透し堤防外縁側(川裏側)が決壊する浸透決壊、(2)河川の水が堤防下部に浸透して徐々に浸食し堤防が滑って河川側(川面側)が滑り崩れる浸食・洗堀決壊、(3)河川底部から堤防の底部に沿って水が浸透し、河川縁部の底からすべり崩れるパイピング決壊などがある。
上記の(1)~(3)のような堤防の内部状態に起因する堤防決壊の予兆を監視する方法として、堤防の内部状態を監視するための仕組みが種々検討されている。例えば、特許文献1には、光ファイバケーブルを堤防内部に埋設し、外的要因による堤防の状態変化を、光ファイバの心線のひずみによる光散乱の変化に基づいて検知する技術が示されている。特許文献2には、堤防に河川の流れに沿って複数の検出器を設置する技術が示されている。特許文献2において、それぞれの検出器は、堤防の土中に埋め込む形で設置された、地中を伝搬する弾性波を検出する弾性波検出センサと、地中の含水率を監視する含水率検出センサとを含む。
特開2001-249035号公報 特開2000-046597号公報
しかしながら、特許文献1の技術において、浸透決壊、浸食・洗堀決壊及びパイピング決壊に幅広く対応しようとすると、堤防の外縁に沿う方向及び堤防の高さ方向に対して広い範囲で光ファイバーを敷設する必要があり、極めて大掛かりな工事が必要となる。また堤防の外側が、民家や工場等の建造物が隣接している場合には、光ファイバーを敷設するスペースがなかったり、重機が入らずに設置できなかったりすることがある。河川の法面側への設置も考えられるが、河川の流れを止めて河川に重機を運び入れた大規模な工事の必要があるため現実的ではない。さらに、光ファイバーで検知可能な程度まで堤防の外縁が歪んだときには、既に堤防の決壊が進行している可能性があり、堤防決壊の予兆検出が遅れて、各種対策が遅れるおそれがある。
特許文献2の技術は、堤防の天端が道路の場合に、堤防上を走る車輛などの影響により、堤防内における弾性波のノイズが大きくなるという問題がある。堤防上を走る車輌等の影響を低減するために、弾性波検出センサを地中深くに設けることもできるが、堤防決壊の予兆動作として堤防内の砂や石が動くときに発生した弾性波なのか、河川を流れる砂利によって生じた弾性波なのかを判別することが難しい。また、堤防の深い部分に弾性波検出センサを配置した場合には、比較的浅いところで生じる浸食・洗堀決壊の検知ができないおそれがある。含水率センサーの配置に関しても、同様の問題があり、堤防の浅い位置に含水率センサーを設置した場合、水が堤防内に流れ込んで浸水するまでにタイムラグがあるので、比較的堤防の深い位置での浸水に起因する浸透決壊やパイピング決壊における浸水を検知できなかったり、浸透決壊やパイピング決壊に起因する浸水の検知が遅れるおそれがある。一方で、堤防の深い位置に含水率センサーを設置すると、堤防の比較的浅いところで生じる浸食・洗堀決壊の検知ができなかったり、浸食・洗堀決壊に起因する浸水の検知が遅れるおそれがある。このように、いずれの従来技術においても種々の堤防内の状態に起因する決壊メカニズムに対して、予見性をもって堤防の決壊を監視するのには不十分であった。
そこで本発明は、決壊予見性をもって堤防内の状態変化を監視することが可能な堤防監視システムを提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る堤防監視システムは、堤防内に埋設されて、堤防内の含水率及び堤防のひずみを計測する計測装置と、前記含水率とひずみの計測データに基づいて堤防内の状態変化を演算する演算装置とを備え、前記計測装置は、堤防の高さ方向に沿って延び、当該高さ方向の少なくとも一部に曲げ荷重に対して変形容易な変形容易部を有する長尺部を備え、前記長尺部には、前記高さ方向の互いに離間する位置に前記堤防内の含水率を計測するための複数の含水率センサーが設けられ、前記変形容易部には、前記ひずみを計測するためのひずみセンサーが設けられている。
堤防監視システムが上記構成であることにより、堤防の深さ方向に対して複数の部位の含水率を監視することができ、堤防決壊メカニズムに共通した初期予兆である水分状態の変化を監視することができる。さらに、互いに高さ位置の異なる場所で含水率を計測するので、複数の堤防決壊メカニズムに対応した監視をすることができる。さらに、変形容易部には、ひずみセンサーを設けているので、堤防内土砂のひずみやすべりを検知することができる。このため、堤防天端に車輛が通る場合でも、堤防内土砂のひずみやすべりが生じない通常範囲で精度よく堤防内土砂の変動を監視することができ、堤防における水の浸透部位が含水率センサーに到達していなくても、土砂の動きによって堤防内部のひずみがセンサーに伝わる。これにより、互いに異なる決壊メカニズムについて、初期段階で堤防内状態の変化を検知することができる。すなわち、決壊予見性をもって堤防内の状態変化を監視することが可能となる。
本発明に係る堤防監視システムによれば、決壊予見性をもって堤防内の状態変化を監視することができる。
堤防監視システムの主要な構成を示す概略図 計測装置の構成例を示す概略図 計測装置の他の構成例を示す概略図 図2BのIIC枠内を拡大した図 堤防の状態変化の計測について説明するための図 堤防監視システムのブロック構成図 含水率センサーの検出回路図 計測装置の他の構成例を示す概略図 図6AのVIB枠内を拡大した図 計測装置の他の構成例を示す概略図 計測装置の他の構成例を示す概略図 堤防監視システムの他の構成例を示す概略図
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
図1に示すように、本実施形態の堤防監視システムAは、堤防7内に埋設されて、堤防7内の含水率とひずみを計測する計測装置1と、計測装置1で計測された含水率とひずみの計測データに基づいて堤防7内の状態変化を演算する演算装置80とを備える。
-計測装置-
図2(図2A~図2C)に示すように、計測装置1は、堤防7の高さ方向(以下、上下方向ともいう)に沿って延びる長尺部3と、長尺部3の上端に連続一体的に設けられた収容ケース21とを備える。計測装置1は、例えば、収容ケース21の天板22のみが地表に露出するように、堤防7の天端面に対して垂直になるように堤防7内に埋め込まれる。以下の説明では、収容ケース21、天板22及び収容ケース21に収容された電子機器や電子部品などをまとめて装置本体2と呼ぶ。
(装置本体)
図2Aに示すように、装置本体2の収容ケース21には、計測装置1を構成する電子部品などが実装された基板24と、計測装置1を構成する電子部品などに電源を供給するバッテリー23bとが収容されている。収容ケース21は、基板24やバッテリー23bを保護するために、防水ケースであることが好ましい。なお、図2Aに示すように、収容ケース21の天板22に、道路埋設用の太陽電池23aが設けられてもよい。そうすることで、電池交換なしに長期運用することができる。また、収容ケース21は、後述するマイコン26や電源部23(図4参照)のメンテナンスのために、堤防外または堤防表面付近に設置されていることが好ましい。図2Aでは、収容ケース21の天板22は、収容ケース21の本体部分よりも幅広に形成されている。これにより、降雨が収容ケース21や長尺部3を伝って下に流れて後述する含水率センサー4の計測に影響が出ないようにしている。なお、図2Aのような天板22の構成に加えてまたは代えて、収容ケース21の側面や長尺部3の上部付近に幅広の雨よけ(図示省略)等の防水処理を施してもよい。
(長尺部)
長尺部3は、上下方向の少なくとも一部に、側方からの曲げ荷重に対して変形容易な変形容易部32を有する。長尺部3を構成する材料は、特に限定されず、上下方向の少なくとも一部に、変形容易部32が設けられていればよい。
例えば、図2Aでは、長尺部3として、相対的に変形しにくい材料で形成された中空円筒状の剛性部31と、相対的に変形しやすい材料で形成された中空円筒状の変形容易部32とが交互に連結部材36を用いて連結された構造例を示している。すなわち、図2Aでは、上下方向において、剛性部31の間に変形容易部32を介在させ、それを上下に積み重ねている。剛性部31には、例えば、ステンレス、アルミ、銅などの金属が採用できる。変形容易部32には、例えば、塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネートなどの樹脂が採用できる。
また、図2Bでは、連結部材36を設けずに、上下方向において、2つの剛性部31の間に変形容易部32を介在させた構造例を示している。図2Bの例では、例えば、剛性部31を硬質の塩化ビニル管とし、変形容易部32を可撓性を有する樹脂管として、剛性部31と変形容易部32とを一体的に成型した例を示している。
なお、図2A、図2Bの例では、剛性部31と変形容易部32に、変形のしやすさが互いに異なる材料を用いた例を示しているが、これに限定されない。図示しないが、例えば、剛性部31と容易変形部32に同じ材料を用いる一方で、剛性部31と変形容易部32とで径の大きさを互いに異ならせてもよい。また、剛性部31と変形容易部32が中空円筒の場合に、パイプの肉厚寸法を互いに異ならせることで、剛性部31と変形容易部32の変形のしやすさを互いに異ならせるようにしてもよい。
長尺部3には、上下方向の互いに離間する位置に堤防7内の含水率を計測するための複数の含水率センサー4が設けられている。また、長尺部3の変形容易部32には、ひずみを計測するためのひずみセンサー5が設けられている。
長尺部3の管内には、含水率センサー4及びひずみセンサー5と装置本体2とを接続するための配線61が通されている。このような構成にすることで、配線61が土砂によって傷つけられたり、断線するのを防ぐことができる。なお、長尺部3は、円柱であってもよく、その場合には、例えば、後述する図6Bに示すように、フィルム基板37上に上下方向に延びる配線パターン64を形成し、そのフィルム基板37を長尺部3の表面に貼り付けるようにしてもよい。長尺部3は、例えば、ボーリング等により堤防内に埋設される。
(含水率センサー)
含水率センサー4は、堤防7の構成物(例えば、土砂)に含まれる水分量を計測することで堤防7内の含水率を計測する。前述の「浸透決壊」、「浸食・洗堀決壊」、及び、「パイピング決壊」に幅広く対応する及び/またはどの決壊の予兆かを区別するために、含水率センサー4は、長尺部3が堤防7内に埋設された状態で河川Rの底部に相当する高さ位置と、長尺部3の上下方向の中間位置、すなわち、堤防高さの中間位置とに設けられているのが好ましい。さらには、堤防7の下寄りの中間位置及び堤防7の天端寄りの中間位置に含水率センサー4を設けることで、「浸透決壊」の予兆と、「浸食・洗堀決壊」の予兆とを見分けやすいため好ましい。また、堤防7の天端寄りにも含水率センサー4を設けることで、監視カメラ(図示省略)を設けなくても、河川の水が堤防を越水する「越水決壊」を見分けやすくなるため好ましい。さらに、堤防7の天端寄りに降雨に含水率センサー4があると、長期降雨などの降雨量に応じて含水率の状態が変化するので、河川増水の予測をしやすくなるため好ましい。また、堤防7が決壊に至らない場合でも、堤防内部の水浸透深さを検知することができるので、堤防の強度把握や修繕必要箇所などの予測に寄与することができる。
図2Aの例では、河川Rの底部に相当する高さ位置に含水率センサー4cを設け、さらに、長尺部3の上下方向の中間位置に、互いに離間するように2つの含水率センサー4a,4bを設けている。含水率センサー4a~4cの間隔は、堤防の高さにもよるが、例えば10cm~10mの範囲で離間していることが好ましい。また、含水率センサー4a~4cは、等間隔で配置されてもよいし、河川や堤防の状況に応じて、含水率センサー4a,4b間の間隔と含水率センサー4b,4c間の間隔とが互いに異なっていてもよい。図2Aに示すように、堤防の高さにあわせて長尺部3の長さを設定した場合には、含水率センサー4cは、長尺部3の高さ方向の下端部に設けるとよい。そうすることで、河川Rの底部に相当する高さ位置に含水率センサー4cを設置するためにボーリング等で形成する縦穴の深さの調整が容易になる。
なお、図2Aに示すように、含水率センサー4は、剛性部31に設けてもよいし、変形容易部32に設けてもよい。また、含水率センサー4を設ける数は、3つに限定されず、4つ以上(図2Bでは4a~4dの4つの場合を例示)であってもよいし、2つであってもよい。なお、含水率センサー4の数を増やすことで、上下方向の計測網羅性を高めることができる。なお、含水率センサ4a~4dを特に区別しない場合、「含水率センサ4」と記載する。
本開示では、「含水率の計測」との用語を、含水率の定量的な測定に加え、堤防7内の含水率の状態変化を計測することを含む概念に用いる。すなわち、含水率センサー4は、含水率の定量的な測定を行うものであってもよいし、含水率の状態変化として、例えば、堤防7内の含水率が所定の閾値を超えたか否かを検知できるようなものであってもよい。具体的には、含水率センサー4として、電気抵抗式、静電容量式、電磁波式などの公知の水分センサーを用いることができる。なお、構造が単純でありかつ高耐久性を有するとの観点から、電気抵抗式の水分センサーを用いるのが好ましい。
電気抵抗式の水分センサーの構成は、特に限定されないが、例えば、図2Cに示すように、長尺部3の表面において、金属箔、金属板、金属棒などで形成された検知電極41,42を設け、検知電極41,42の対向する領域の一部または全部が露出されるように構成される。図2Cの例では、検知電極41は、変形容易部32の外周面に沿って周回し、その周回する周回電極から下に向かって櫛形に延びている。検知電極42は、検知電極41の下側において周回する周回電極から上に向かって櫛形に延びている。そして、検知電極41の櫛形部分と検知電極42の櫛形部分が、互いに組み合うように配置され、かつ、検知電極41と検知電極42とが導通しないようになっている。図2C及び後述する図3において、614は、検知電極41と装置本体2とを接続する配線であり、615は、検知電極42と装置本体2とを接続する配線である。
検知電極41,42に用いる材料の種類は、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅からなる群から選択される一種以上の金属材料またはこれらの合金材料を好適に用いることができる。より好ましくは、防食性の観点からステンレスが好ましく、ステンレスの中でもSUS304が防食性に優れるため好ましい。
なお、検知電極41,42として、アルミニウムを用いる場合、例えば、エッチングにより樹脂フィルムの表面にアルミニウムの電極パターンを形成し、それを長尺部3の表面に貼り付けるとよい。このときに用いるアルミニウムの組成は、特に限定されないが、腐食しにくさの観点から、例えば、0.5≦Mn≦3.0質量%のMnと、0.0001≦Cr<0.20質量%のCrと、0.2≦Mg≦1.8質量%のMgと、0.0001≦Ti≦0.6質量%のTiと、0<Cu≦0.005質量%のCuと、0<Si≦0.1質量%のSiと、0<Fe≦0.2質量%のFeとを含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物とからなるアルミニウム箔であるのが好ましい。
(ひずみセンサー)
長尺部3の変形容易部32には、堤防7のひずみを計測するためのひずみセンサー5が設けられている。ひずみセンサー5には、公知のひずみゲージを好適に用いることができる。ただし、ひずみセンサー5は、ひずみゲージに限定されず、例えば、光ファイバーを用いたひずみセンサーや赤外線センサーであってもよい。ひずみセンサー5として、光ファイバーを用いる場合、変形容易部32に沿って光ファイバーを設置し、変形容易部32が変形することによって光の経路が変化することで、ひずみとして計測される。ひずみセンサー5として、赤外線センサーを用いる場合、変形容易部32に、赤外線照射装置又は赤外線照反射部材又は赤外線受信装置を設置し、変形容易部32が変形することによって赤外線の経路が変化するので、赤外線の経路のずれからひずみを計測することができる。光ファイバーを用いたひずみセンサー及び赤外線センサーは、変形容易部32が中空管の場合には、中空管内に光の経路を設定することができるので、耐久性の点で好ましい。
以下の説明では、ひずみセンサー5として、ひずみゲージを用いた例について説明する。ひずみセンサー5は、図2Aに示すように、変形容易部32の上下方向の中央近傍に貼り付けてもよいし、変形容易部32の上下方向の端部に貼り付けてもよい。また、図2Cに示すように、変形容易部32を管状にし、変形容易部32の上下端部が剛性部31の外側を覆うように、剛性部31を変形容易部32の内側にはめ込んで、両者を互いに連結させるようにしてもよい。そうすると、変形容易部32のうち、上側の剛性部31の下端部から下側の剛性部31の上端部までの間の領域が、曲げ荷重に対して変形容易な変形容易部として機能する。図2Cでは、図2Bの剛性部31と変形容易部32との境界を破線で示し、管状の変形容易部32(剛性部31との嵌合部分を含む)にドットハッチングを施している。
そして、ひずみセンサー5のゲージ長が、変形容易部として機能する領域の上下方向の長さよりも長くなるように構成する。これにより、ひずみセンサー5は、堤防7のわずかな土砂の変動についても、感度良くひずみとして検知することができる。さらに、変形容易部32は、同じ材料を用いた場合に、管が細いほど、及び/又は、管の肉厚寸法が薄いほど変形容易性が増す。そこで、変形容易部32において、ひずみセンサー5を設置する部位の太さを他の部位(変形容易部32内の他の部位を含む)よりも細くしたり、変形容易部32の肉厚寸法を薄くしてもよい。
ひずみセンサー5は、少なくとも1つ設けられていればよいが、堤防7の上下方向の計測網羅性を高めて種々の堤防決壊の予兆を検知する観点から、堤防の深さに応じた個数が設けられているのが好ましい。例えば、ひずみセンサー5が、堤防7の高さ方向に対して所定の間隔おき(例えば、1m~10mおき)に設けられていることが好ましい。図2Aでは、ひずみセンサー5が、上下方向の中間位置に間隔をあけて2つ設けられた例を示している。図2Aでは、上側のひずみセンサー5に5aの符号を付し、下側のひずみセンサー5に5bの符号を付している。なお、ひずみセンサー5a,5bを特に区別しない場合、「ひずみセンサー5」と記載する。
図2Aのような構成にすることで、可撓性の低い材料に面として土砂の応力が加わった際に、変形容易部32に土砂の応力が集中し、広い範囲の土砂の僅かな動きを大きなひずみの変化として検知することができる(図3参照)。図2C及び図3において、611は、ひずみセンサー5の一方の電極51と装置本体2とを接続する配線であり、612は、ひずみセンサー5の他方の電極53と検知電極42と装置本体2とを接続する配線である。また、図2Cにおいて、52はひずみゲージのゲージ領域である。
なお、変形容易部32が中空状である場合に、ひずみセンサー5は、腐食を防ぐ観点から、変形容易部32の内壁に設けられているのが好ましい。ひずみセンサー5同士の距離が近すぎると、堤防の深さによっては、配線数が増えたり、回路が煩雑になる。一方でひずみセンサー5同士の距離が10m以上と遠すぎると、長尺部3のひずみセンサー5間の中央付近の領域において、土砂の変動があった場合に、その土砂の変動がひずみセンサー5まで伝搬されにくくなるおそれがある。
なお、含水率センサー4とひずみセンサー5との互いを設ける位置の関係は、特に限定されず、互いに近接するように設けてもよいし、互いに異なる位置に設けてもよい。好ましくは、メンテナンス性の観点から、含水率センサー4とひずみセンサー5とを近接させるのが好ましい。また、ここでは、計測装置1が、含水率センサー4とひずみセンサー5とを備える例について説明したが、含水率センサー4及びひずみセンサー5に加えて、温度センサー、pHセンサー、振動センサー、圧力センサー、加速度センサーの少なくともいずれかを設けてもよい。
図4は、堤防監視システムAの構成例を示すブロック図である。
計測装置1は、前述の含水率センサー4及びひずみセンサー5と、電源部23と、マイコン26と、ロガー27と、通信モジュール28とを備える。マイコン26、ロガー27及び通信モジュール28は、例えば、前述の基板24に実装される。図4では、道路埋設用の太陽電池23aとバッテリー23bとをあわせて、電源部23と呼んでいる。
なお、図示しないが、長尺部3または収容ケース21内にGPS(Global Positioning System)受信モジュールを備えていてもよい。GPS受信モジュールを備えることにより、堤防7の変状箇所の特定が容易になり、警報発令箇所の詳細把握やメンテナンス性が向上できる。また、堤防7の決壊が生じて、計測装置1が河川に流された場合に、位置情報を追跡して氾濫の状況を確認したり、計測装置1が盗難された際に位置情報を追跡して回収することができる。
(マイコン)
マイコン26は、含水率センサー4及びひずみセンサー5に計測用の電圧を印加したり、含水率センサー4及びひずみセンサー5の電圧変動を読み取ったりする。マイコン26が取得した含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測結果は、ロガー27に時系列に保存される。通信モジュール26は、外部の演算装置80と通信するためのものである。マイコン26は、例えば、所定期間ごとにロガー27から含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測結果を取り出し、通信モジュール28を介して演算装置80に送信する。マイコンが省電力型である場合、太陽電池23aを設けずに、電源部23を交換式または充電式の蓄電池のみで構成してもよい。例えば、1測定あたり10秒程度起動して150mAhの消費電流の市販のマイコンを用いる場合、1時間おきの測定としても、4000mAhのバッテリーを内蔵すれば一年以上メンテナンスフリーで動作させることができる。また、より低消費電流のマイコンを用い、測定間隔を延ばせば、より低容量のバッテリーで済み、より長期間の運用をメンテナスフリーで行うことができる。なお、マイコン26に代えて、他のコンピュータ(CPU)を用いてもよい。
(検出回路)
図5には、含水率センサー4の検出回路の一例を示している。図4の例では、電源部23から対をなす検知電極41,42のうちの一方(図5では検知電極41)に電圧を印加して、この電圧を印加する側の配線614から分圧して得られる電圧値(図5の電圧計位置の電圧)を読み取ることで、堤防の土砂内の抵抗値の変化すなわち水分量の変化に伴う電圧の変化として計測することができる。そして、図5の回路図において、土砂中の水分量が増えると計測電圧値が下がる一方で、土砂中の水分量が少ないと計測電圧値が上がる。なお、図5において、電源部23の印加電圧は、印加する電圧及び回路内抵抗は特に限定されず、任意の値でよいが、回路の小型化および省電力化を考慮して、1V以上10V以下であることが好ましい。また、回路内抵抗は、100Ω以上1MΩ以下であることが好ましく、水分量に対する応答性の観点から2.2kΩ以上20kΩ以下であることが好ましい。回路内抵抗は、分圧回路のための抵抗であって、例えば、収容ケース21の基板24に設けられ、マイコン26の電圧印加ピン(電源部23)と検知電極41との間に接続される。なお、回路構成は図5の構成に限定されず、例えば、グランド側に回路内抵抗を設けてもよい。ただし、図5の回路構成は、上記電圧計位置での計測値が、検知電極41,42間の距離に依存しない値となるので、設計の自由度が高くなるため好ましい。
図示しないが、ひずみセンサー5(ひずみゲージ)の検出回路は、公知のホイーストンブリッジ回路を用いることができる。また、電源部23からひずみセンサー5に印加する電圧は、特に限定されないが、センサーの小型化および省電力化を考慮して、1V以上10V以下であることが好ましい。
-演算装置-
図4に戻り、演算装置80の形態は、特に限定されず、例えば、インターネットなどのネットワークを介して接続されたサーバー装置などであってもよいし、作業者Pが所持している端末装置であってもよい。
演算装置80は、計測装置1と通信するための通信モジュール81と、演算処理部82と、メモリ83と、表示部84とを備える。演算装置80では、通信モジュール81を介して、計測装置1から含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測データを受信し、その計測データに基づいて堤防7内の状態変化を演算する。
(演算処理部)
演算処理部82は、例えば、メモリ83に格納されたプログラムを実行することで、含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測データに基づいて堤防内の状態変化を演算する。
演算処理部82による堤防7の状態変化の具体的な演算方法は、特に限定されないが、例えば、含水率とひずみのデータの少なくともいずれかが閾値を超えるか否かを演算する。このとき、堤防7の他の場所に埋設した計測装置1との相関関係を演算するために、演算処理部82は、複数の計測装置1からの情報を統括して堤防7の状態変化を演算してもよい。また、演算処理部82は、上記の堤防7の状態変化の演算結果に基づいて堤防決壊の確率を算出してもよい。これにより、広大な範囲で堤防の状態や河川の状態を、より正確に把握することができる。なお、通信モジュール28と通信モジュール81との間の通信方式は、特に限定されないが、例えば、低電力で遠方までデータ送信可能なLPWA(Low Power Wide Area)方式を好適に用いることができる。
なお、演算処理部82による堤防7の状態変化の演算方法として、(1)含水率センサー4の計測データが特定の値すなわち含水率センサー4に水が触れたかどうかを演算する方法、(2)ひずみセンサー5で所定のひずみ検知されたかどうかを演算する方法、(3)上下方向に複数配置された含水率センサー4のうち、どの高さ位置の含水率が変動したかを基に、どういった決壊メカニズムの進行が起こり得るかを演算により判断する方法、(4)ひずみと含水率のどちらが先に変動するか、すなわち、ひずみと含水率の変化順を基に着目し、どういった決壊メカニズムの進行が起こり得るかを演算により判断する方法、(5)複数の計測装置1を埋設した場合に、複数の計測装置1の計測データを基に、河川堤防のどの領域で堤防7の状態変動が起こり得るかを演算して決壊個所の推測を行う方法、等が挙げられる。また、演算処理部82において、含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測データをディープラーニングを始めとするAIアルゴリズムに入力し、決壊危険個所や降雨情報等と結び付けて規則性を見出し、堤防7の決壊についての未来予測、堤防7の堤体(以下、単に堤体ともいう)の強度把握や修繕必要箇所等の予測技術に用いることができる。上記の演算結果により、早期に河川Rの補強工事や周辺住民の退避勧告発令などの対策を講じることができる。
(表示部)
表示部84は、演算処理部82での演算結果に基づいて、堤防7内の状態変化を表示する。表示部84は、演算処理部82に接続されたモニタであってもよいし、通信モジュール81を介して外部のスマートフォンやタブレット等の端末装置からのアクセスを可能にし、これらの端末装置のディスプレイを表示部としてもよい。
図1に戻り、堤防監視システムAは、複数の計測装置1が河川に沿って互いに離間するように堤防7に埋設され、それぞれの計測装置1から得られた計測データを基に、堤防7内の状態を監視可能とすることが好ましい。この場合、例えば、演算装置80では、それぞれの計測装置1による含水率とひずみの計測データをネットワークを介して集約し、堤防7の状態変化を演算する。これにより、前述の(5)で示したように、河川堤防のどの領域で堤防7の状態変動が起こり得るかを演算して決壊個所の推測をすることができる。複数の計測装置1を設置した場合に、それぞれの計測装置1が独立して含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測データをサーバーに送信してもよいし、隣接する計測装置1の間でデータを送受信し、複数の計測装置1の計測データを取りまとめて演算装置80に送信するようにしてもよい。これにより、計測装置1と通信するためのゲートウェイの設置数を減らしたり、通信モジュール28としてインターネットに接続できる構成を実装させる計測装置1の数を減らすことができ、導入コストを低減することができる。
また、計測装置1は、間欠動作が可能に構成されていることが好ましい。例えば、30分毎、1時間毎、12時間毎、24時間毎というように、任意に設定された間隔で起動させて計測データの採取を行い、それ以外はスリープさせて消費電力を抑えることが好ましい。このとき、計測時間の間隔を、端末装置等から変更可能に構成されていることが好ましい。例えば、通常は12時間毎の起動とされている場合に、台風の接近や急の大雨等が予測されているときに、10分毎のように短い時間間隔に変更するようにしてもよい。このとき、例えば、端末装置から操作できるのが好ましい。一方で、降雨が少ない時期は、端末装置等から24時間毎の時間間隔に設定変更して消費電力を抑制するようにしてもよい。
また、例えば、含水率センサー4及び/又はひずみセンサー5には、常時電圧を印加し、それ以外の構成については、スリープ状態として待機させるようにしてもよい。この場合、例えば、含水率センサー4及び/又はひずみセンサー5があらかじめ定められた所定の電圧となった場合に、そのことをトリガにして、スリープ状態にしていた回路や部品などを起動させるようにする。これにより、時間間隔の設定に関わらず、消費電力の低減を実現しつつ、堤防内に変状が生じた時に速やかに計測装置1を起動させて、堤防7の状態変化を検知することができる。
<実施例>
発明者らは、実施例として以下の計測実験を行った。
まず、剛性部31として用いるために、直径2cmで長さ50cmのステンレス管を3本用意し、変形容易部32として用いるために、直径2cmで長さ50cmの塩ビ管を2本用意した。そして、ステンレス管、塩ビ管、ステンレス管、塩ビ管、ステンレス管の順に、市販のジョイント(連結部材36に相当)で連結させた。
それぞれの塩ビ管の中心位置には、ひずみセンサー5として、市販のひずみゲージ(120Ω)を接着剤で貼り付けた。また、ひずみセンサー5近くの塩ビ管に穴をあけて配線61(611,612)を通し、ここを光硬化樹脂で埋めた。ひずみセンサー5は、市販のセロハンテープで覆い、防水処理を施した。
次いで、含水率センサー4として、ステンレステープを用いて、検知電極41,42を作成した。具体的に、塩ビ管のひずみセンサー5から5cm離れたところに、櫛形にカットした市販のステンレステープを、塩ビ管を取り巻き、かつ、互いに導通しないように貼り付けて、検知電極41,42を作成した。ステンレステープの上下方向の高さは5cmとした。このステンレステープの櫛形部分は、隣接するテープ同士を5mm程度離し、互いに組み合うようにした。それぞれのステンレステープの一端に、はんだ付けにより配線61(614,615)を接続し、更に塩ビ管にドリルで穴を設けて配線614,615を通して光硬化樹脂で埋めた。
次いで、下端に位置するステンレス管の下端部にも、上記と同様にステンレステープを貼り付け、配線61を接続した。ひずみセンサー5と含水率センサー4のそれぞれに接続された配線61は束ねて長尺部3の上端から引き出し、防水性の収容ケース21内の基板24に接続した。具体的には、含水率センサー4に接続された配線61は、図4に示す回路に、ひずみセンサー5に接続された配線61は、ホイーストンブリッジ回路(図示省略)に、それぞれ接続した。マイコン26には、市販のマイコン(ESP32)を用意した。マイコン26のADCピンに、含水率センサー4及びひずみセンサー5の出力信号線を接続し、マイコン26の電源端子に、バッテリー23bを接続した。マイコン26は、スマートフォンと無線で接続し、ADCピンから取得した計測データをスマートフォンに送信可能にプログラムし、且つ、上記計測データが一定の値となった場合にスマートフォン上にアラートが出るようにした。また、マイコン26は、1時間毎に計測データを取得してスマートフォンに送信し、それ以外の時間はスリープするように設定した。バッテリー23bとして、市販の3.7Vの1000mAhのリチウムイオンポリマーバッテリーを使用した。また、マイコンやバッテリー等は防水ケースに収納した。
以上の堤防監視システムを、堤防を模した砂山に埋め込み、動作確認したところ、散水により含水率センサーの値は変動し、更に散水を続けることで砂山の一部が崩れ始め、ひずみセンサーの値も変動し、その後砂山の砂が流れ出して崩壊した。
<その他の実施形態>
図6~図9には、計測装置1の変形例を示している。図6~図9では、図2Aと対応する構成について共通の符号を付している。また、以下の変形例の説明では、図2の構成との違いを中心に説明するものとし、共通または類似の構成について、説明を省略する場合がある。
図6(図6A、図6B)は、図2Aと比較すると、長尺部3の構成が異なっている。
図6において、長尺部3は、上下方向に延びる矩形板状の3枚のプレート34を上下方向に間隔をあけて並べ、そのプレート34の表面に、3枚のプレート34の全体を覆うように上下方向に延びる長尺状の2枚のフィルム基板37,38を、37,38の順に重ねて貼り付けた構成になっている。3枚のプレート34及び2枚のフィルム基板37,38は、互いの幅が揃えられている(図6B参照)。
隣接するプレート34同士の上下方向の間隔は、特に限定されないが、変形容易部32と対応する位置に空間ができるように配置される。プレート34の材質は、特に限定されないが、例えば、アクリル板やSUS板が好適に使用できる。プレート34は、剛性部31を構成する。
フィルム基板37の表面には、上下方向の全体にわたって延びる配線パターン64が形成されている。図6Bでは、配線パターン64にドットハッチングを付している。フィルム基板37の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリイミドシートが好適に使用できる。また、配線パターン64は、アルミエッチングにより形成し、表面にはレジストコートが施されている。さらに、フィルム基板37の表面には、上下方向に隣接するプレート34同士の中間の空間位置と対応する位置に、ひずみセンサー5(5a,5b)が貼り付けられている。ひずみセンサー5の検知電極は、リード線65などを用いて配線パターン64に接続される。フィルム基板37のうち、上下方向に隣接するプレート34同士の中間の空間位置に対応する部位が、変形容易部32を構成する。
フィルム基板38の表面には、河川Rの底部に相当する高さ位置に含水率センサー4cが形成されている。また、フィルム基板表面の上下方向の中間位置には、互いに離間するように2つの含水率センサー4a,4bが形成されている。図6Bでは、含水率センサー4にドットハッチングを施している。フィルム基板38の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリイミドシートが好適に使用できる。また、含水率センサー4は、アルミエッチングにより形成されている。含水率センサー4の検知電極41,42には、フィルム基板38を前後に貫通するスルーホール43が形成され、検知電極41,42と配線パターン64とが半田等で接続されている。
図6の構成においても、上下方向の互いに離間する位置に複数の含水率センサー4が設けられ、フィルム基板37で形成された変形容易部32にひずみセンサー5が設けられており、上記実施形態と同様の効果が得られる。
なお、図2Bにおける長尺部3を、円柱状のものから図7(a)のような多角柱状の長尺部331にしてもよいし、図7(b)のように短い柱状部材332,333が連なったような構成としてもよい。図7(a)では、図2Bの場合と同様に、2つの剛性部31の間に変形容易部32を介在させ、そこにひずみセンサー5を貼り付けるようにする。また、図7(b)では、剛性部31として、硬質の柱状部材332を連ならせるとともに、一部の柱状部材332の間に変形容易な柱状部材333(変形容易部に相当)を介在させ、そこに、含水率センサー4及びひずみセンサー5を設けている。このような構成にすることで、上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、図7(c)示すように、装置本体2に対して、カプセル状の樹脂球や鉄球等の構造物334をケーブルのような紐状、鎖状または棒状の接続部材335を用いて連なるように吊り下げて、全体として上下方向に延びる長尺形状の長尺部3を形成するようにしてもよい。図7(c)では、例えば、含水率センサー4を構造物334の表面に設け、ひずみセンサー5を構造物334と接続部材335の接続部分または接続部材335上に設けるとよい。このような構成にすることで、上記実施形態と同様の効果が得られる。さらに、図7(c)のような構造の場合、堤防7内の元来の構造との相違が少なく、計測装置1を埋設させることによる堤防7の強度変化への影響を低減させることができる。さらに、それぞれの構造物334が独立しているため、構造物334の相互間での振動が伝播しにくくなり、地表からひずみセンサー5に対して振動等のノイズが伝播することを抑制することができる。
図8(a),(b)では、図7(b)をさらに変形させた構成になっている。図8(a)では、図7(b)の柱状部材333に代えて、フィルム基板336を柱状部材332の間に介在させている。なお、フィルム基板336は、フィルム基板37,38と同じような構成であってもよいし、1枚のフィルム基板上に含水率センサー4及びひずみセンサー5を設けるようにしてもよい。図8(b)では、図7(b)の柱状部材333に代えて、自在継手構造337を柱状部材332の間に介在させている。自在継手構造337の構成は、特に限定されないが、例えば、図8(b)に示すボールベアリングや、ユニバーサルジョイントを採用できる。また、図示しないが、図7(b)の柱状部材333に代えて、変形容易部32を蛇腹形状としてもよい。図8(a),(b)の構成においても、上記実施形態と同様の効果が得られる。フィルム基板336及び自在継手構造337は、変形容易部の一例である。
なお、上記の実施形態では、堤防7の天端面に対して長尺部3を垂直に埋め込む例について示したが、これに限定されない。例えば、図9に例示する様に、堤防7の法面に新たに盛り土やコンクリート等の構造物73を設けて、その構造物73に計測装置1を埋設してもよい。図9の構成の場合、例えば、河川端に土嚢により一部の水を堰き止めて工事をすることができるので、既存の堤防7に対して容易に計測装置1を設置することができる。さらに、図9の構成にすることで、堤防そのものにセンサーを埋設する場合と比較して、堤防7の強度への影響を考慮する必要がない。なお、図9の構成においても、構造物73の天端から、収容ケース21の天板22を露出させ、そこに太陽電池23aを設けてもよい。
上記の実施形態では、計測装置1の外部に設けられた演算処理部82が、含水率センサー4及びひずみセンサー5の計測データに基づいて堤防内の状態変化を演算するものとしたが、演算処理部82における堤防内の状態変化の演算機能を計測装置1に取り込むようにしてもよい。この場合に、演算処理部82とマイコン26の機能を統合し、1または2つ以上のマイコンやCPUで実現してもよい。そして、通信モジュール28からは、堤防内の状態変化についての演算結果が、外部のサーバーや端末装置に送信される。
また、計測装置1側に表示部84を設けるようにしてもよい。この場合、表示部84には、例えば、LCDやLED等が用いられ、収容ケース21の天板22の外表面に設けられ、堤防7の状態変化の有無を表示させるようにする。
また、収容ケース21と長尺部3とが一体的に設けられているものとしたが、長尺部3を埋設した後に、収容ケース21の取り外し/取り付けができるように構成されていてもよい。このような構成にすることで、普段は長尺部3のみが堤防7に埋設され、計測が必要なときに収容ケース21を長尺部3に接続して含水率およびひずみを計測することができるようになる。これにより、堤防監視システムAの導入コストを削減することができる。一方で、堤防7の経時的な監視を行うためには、収容ケース21と長尺部3とを一体的に構成して常時埋設しておくことが好ましい。
河川の流れる方向と直交する方向において、計測装置1の埋設箇所は特に限定されない。例えば、図1に示すように計測装置1を堤防7の川表側と川裏側の両方に埋設してもよいし、堤防7の川表側と川裏側のいずれか一方であってもよいし、河川の流れる方向に対して堤防7の川表側と川裏側とが交互になるように埋設させてもよい。堤防7の川表側に計測装置1を設置すると、堤防の変状可能性が早期段階で検知可能となり、堤防の川裏側に計測装置1を設置すると、堤防の崩壊の進行度が正確に検知可能となる。
上記の実施形態およびその他の実施形態で説明した構成や変形例は、それぞれ、組み合わせてもよい。
例えば、図2Aや図2Bなどでは、収容ケース21と長尺部3とが連続一体的に設けられた例を示したが、図7(c)に示すような接続部材335を用いて収容ケース21に長尺部3を吊り下げたような構成としてもよい。これにより、堤防7の天端面を車輛や歩行者等が通過した場合に、振動由来のノイズがひずみセンサー5に伝搬するのを抑制することができる。なお、図示しないが、収容ケース21をエラストマーで保護したり、収容ケース21と長尺部3との間にエラストマー等の緩衝材を配置したり、長尺部3の変形容易部32よりも上側の位置にエラストマー等の緩衝材を配置したりすることにより、地表からひずみセンサー5に振動等のノイズが伝播することを抑制するようにしてもよい。
本発明は、堤防内の状態変化を決壊予見性をもって監視することが可能であり、極めて有用である。
A 堤防監視システム
3 長尺部
4 含水率センサー
5 ひずみセンサー
7 堤防
10 計測装置
26 マイコン(演算部)
28 通信モジュール
31 剛性部
32 変形容易部
80 演算装置

Claims (8)

  1. 堤防内に埋設されて、堤防内の含水率及び堤防のひずみを計測する計測装置と、
    前記含水率とひずみの計測データに基づいて堤防内の状態変化を演算する演算装置とを備え、
    前記計測装置は、
    堤防の高さ方向に沿って延び、当該高さ方向の少なくとも一部に曲げ荷重に対して変形容易な変形容易部を有する長尺部を備え、
    前記長尺部には、前記高さ方向の互いに離間する位置に前記堤防内の含水率を計測するための複数の含水率センサーが設けられ、前記変形容易部には、前記ひずみを計測するためのひずみセンサーが設けられていることを特徴とする、堤防監視システム。
  2. 前記演算装置は、前記含水率とひずみの計測データに基づいて、前記堤防内の状態変化を演算し、当該演算結果に基づいて堤防決壊の確率を算出することを特徴とする、請求項1に記載の堤防監視システム。
  3. 堤防内に埋設されて、該堤防内の状態変化を計測するための計測装置であって、
    堤防の高さ方向に沿って延び、当該高さ方向の少なくとも一部に曲げ荷重に対して変形容易な変形容易部を有する長尺部を有し、
    前記長尺部には、前記高さ方向の互いに離間する位置に前記堤防内の含水率を計測するための複数の含水率センサーが設けられ、前記変形容易部には、ひずみセンサーが設けられていることを特徴とする、計測装置。
  4. 前記含水率センサーは、電気抵抗式の水分センサーであり、前記ひずみセンサーはひずみゲージであることを特徴とする、請求項3に記載の計測装置。
  5. 前記含水率センサーは、堤防内に埋設された状態で該堤防に沿って流れる河川の底部に相当する高さ位置と、前記長尺部の高さ方向の中間位置とに設けられていることを特徴とする、請求項3または4に記載の計測装置。
  6. 前記含水率センサーは、前記長尺部の高さ方向の下端部と、前記長尺部の高さ方向の中間位置とに設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の計測装置。
  7. 前記長尺部は、前記堤防の高さ方向に沿って延び、前記変形容易部よりも変形しにくい素材で形成された剛性部を有し、当該剛性部の高さ方向の中間位置に前記変形容易部を介在させた構造を有することを特徴とする、請求項3~6のいずれかに記載の計測装置。
  8. 前記含水率センサーで計測された含水率と前記ひずみセンサーで計測されたひずみとに基づいて堤防内の状態変化を演算する演算部と、
    前記演算部での演算結果を前記計測装置の外部に送信する通信モジュールとを備えることを特徴とする、請求項3~7のいずれかに記載の計測装置。
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