以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付している。なお、発明の実施の形態は、本発明が実施される特に有用な形態としてのものであり、本発明がその実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの全体構成を示す概念図である。図2は、図1に示す光ファイバ式洗掘検出システムにおける1ラインの洗掘検出装置の一部の洗掘検出ユニットを拡大して示す平面図、図3は、図1に示す光ファイバ式洗掘検出システムにおける1ラインの洗掘検出装置の一部の洗掘検出ユニットを拡大して示す正面図、図4は、図2に示す一の洗掘検出ユニットに保護カバーを取り付けた状態を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその側面側から見た斜視図である。 図5は、図2に示す一の洗掘検出ユニットの保護カバーを取り外した状態を示す平面図、図6は、図2に示す一の洗掘検出ユニットの重錘に光ファイバ固定用のアンカーを打ち込んだ状態を示す斜視図、図7は、光ファイバ固定用金具を示す斜視図、図8は、図2に示す一の洗掘検出ユニットにおいて光ファイバ固定用金具により光ファイバを固定した状態を示す平面図、図9は、図2に示す一の洗掘検出ユニットにおいて光ファイバ固定用金具により光ファイバを固定した状態を示す斜視図、図10は、図2に示す一の洗掘検出ユニットの保護カバーとスペーサを示す図であり、(a)はその正面側から見た斜視図、(b)はその底面側から見た斜視図、(c)はその側面図、図11は、図2に示す一の洗掘検出ユニットの保護カバーへのスペーサの溶接方法を示す図である。図12は、図2に示すダブルフレキシブルチューブの一部を示す図であり、(a)はその断面図、(b)はその取り付けイメージを示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、河川101の棚部(高水敷)103を監視対象物とする。このような棚部(高水敷)103は、堤防104の法面104Aに連続して川底102と水平に数十メートル(m)の幅に亘って形成されることが多い。本実施形態では、棚部(高水敷)103の河川101の水流105と平行な方向及び水流105と垂直な方向の洗掘を広域に亘って検出する。即ち、棚部(高水敷)103において、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、図1に示すように、例えば、水流105と平行な方向に100〜200m、水流105と垂直な方向に30〜50mの広い領域に亘って敷設され、その河川101の水流105に対して水平(平行)及び垂直方向の洗掘の深度を、かかる広域に亘って検出するものである。
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、光ファイバ13をその内部に挿通させた複数(3ライン)の洗掘検出装置100が河川101の棚部(高水敷)103に、内側、中側、外側に所定の間隔ごとに設けられている。これら洗掘検出装置100は、光ファイバを用いて監視対象物としての棚部(高水敷)103に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置であって、図1乃至図3に示すように、それぞれ1メートル(m)の間隔をおいて洗掘検出ユニット111が多数配置された構成を有している。即ち、洗掘検出装置100は、多数の洗掘検出ユニット111が同一ライン上に配置されて構成されている。
各洗掘検出ユニット111は、図2乃至図9に示すように、それぞれ内部を各ラインを構成する光ファイバ13が挿通された金属管光ファイバケーブル130と、金属管光ファイバケーブル130が鉢巻状に巻回されると共に、その固定点及び負荷点となる複数の重錘150と、金属管光ファイバケーブル130及び重錘150を固定するために、重錘150に埋め込まれたアンカー160と、金属管光ファイバケーブル130と重錘150とを固定すると共に金属管光ファイバケーブル130に曲げ変形または破断を生じさせる固定金具170とを有している。尚、金属管光ファイバケーブル130内の光ファイバ13は、0.9mm乃至1.0mmのビニール被覆光ファイバである。
上述したように、本発明では、金属管光ファイバケーブル130は、重錘150上で鉢巻状に巻回される。施工の作業性を考慮すれば、金属管光ファイバケーブル130を鉢巻状に巻回しないで、直線状に形成した方が良いが、直線状に形成して重錘150に固定した場合には、金属管にある程度の強度があるため、洗掘が発生し、重錘150の下方が削られた結果、重錘150が沈んだり動いたりしても、両側の重錘150が未だ土中に埋まって定常位置にある場合には、金属管光ファイバケーブル130は曲がらないで重錘150の面外に浮いてしまう虞がある。
これに対して、本実施形態のように、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136を鉢巻状に巻回して形成することにより、両側の重錘150が未だ土中に埋まって定常位置にある場合には、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の両端側が引っ張られるので、比較的小さな力により固定部で曲げが発生し損失を生じさせることが可能となる。
上述したセンサ部136の曲げ半径は80mm(直径160mm)、従って、周長約500mmとする。この結果、重錘150間は1mであるが光ファイバ長は1.5mとなるので、OTDRのファイバ測定長である1mとの間に差異が生じるので、換算を行うようにする。尚、センサ部136の曲げを作る成形は、後述するように、型を用いて据付現場で行う。
また、金属管光ファイバケーブル130は、塑性変形可能に構成されている。更に、各洗掘検出ユニット111は、図2乃至図5に示すように、外部からのカ(重機の重さや整地後の土圧が、小石等の凹凸を介して金属管光ファイバケーブルに変形を生じさせる)による重錘150部での局所的変形を防止するための保護カバー190と、重錘150間部分での曲げ変形を防止するための保護用割型ダブルフレキシブルチューブ180とを有している。
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置は、金属管光ファイバケーブル130の保護カバー190を有しているので、後述するように、組み立てが完了した洗掘検出装置100を溝に埋め戻した後に整地する際に、重機の重さや整地後の土圧が小石等の凹凸を介して金属管光ファイバケーブル130に変形を生じさせるのを有効に防止することができる。
金属管光ファイバケーブル130における金属管の材質は、銅、アルミニウム、ステンレス、インコネル等がある。本実施形態では、ステンレス製のものを用いた。海岸線に近い河川の場合には水流に若干塩分を含む場合があるので、インコネル等腐食に強いものを用いても良い。
尚、金属管光ファイバケーブル130(内の光ファイバ13)は、図1に示すように、洗掘検出装置100の端部で屋外配線用光ケーブル16内の光ファイバ(芯線)13に融着され、これら屋外配線用光ケーブル16により観測小屋109内の光監視装置としてのOTDR112(図15及び図16参照)に接続されている。
重錘150は、洗掘が発生し、当該重錘150が水流105中に露出した場合に、水中に沈み込んで金属管光ファイバケーブル130に塑性変形を与える程度の重量のものであることを要する。従って、材質は金属材、石材等を問わないが、例えば、樹脂製で水中で浮いてしまうものでは採用できない。
重錘150は、本実施形態では、敷石等として用いられる、大きさが30cm角、厚さが30mm、重さが6Kg程の通常の敷石様のコンクリート石材を用いた。このように当該敷石は、コンクリート製の安価のものを使用することができる。尚、自然石によるものを使用しても良い。重錘150に金属板を用いることも勿論可能であるが、洗掘が発生し、重錘150の下方の土砂等が削られて重錘150が河川101の水流105中に流れ出す可能性が高いので、金属よりは石材の方が河川の環境に優しいという利点もある。
アンカー160は、図6に示すように、重錘150を構成する敷石に打ち込んで形成されており、後述する固定金具170をボルトで止められるようにするものである。
固定金具170は、図7に示すように、長手方向が30mm、短手方向が12mm、高さが4mmの直方体状の金属材から構成し、アンカー160にボルトで固定するための貫通穴172が2個形成されている。また、固定金具170には、図7に示すように、金属管光ファイバケーブル130を通すための溝174が形成されている。溝174は、本実施形態では、矩形状の溝に形成したが、例えば、V字型の溝に形成しても良い。
尚、金属管光ファイバケーブル130を重錘150に固定金具170により2点で固定する場合のその2点は、図9に示すように、重錘150において等距離の中心から片側略30度の位置にくるような2点とした(かかる2点に対応した位置にアンカー160を打ち込んで形成する)。尚、固定金具170で固定する角度は、片側20度乃至40度程度が望ましい。本実施形態では、上記のように片側略30度とした。
保護カバー190は、ステンレス製であり、図4及び図10に示すように、金属管光ファイバケーブル130の鉢巻状に巻回されたセンサ部136を収納する約14mm程の隙間を形成する。洗掘検出装置及びシステムを組み立てて埋め戻した後に、上部を重機等が通っても、この隙間がつぶされないように、図10に示すように、この隙間にはスペーサ200を挿入するようにした。
スペーサ200は、図10及び図11に示すように、金属製のパイプを輪切りにした円筒状のものを用い、その円筒上部の4箇所を保護カバー190に溶接するようにした。図11において、符号202は、これら溶接箇所を示す。尚、スペーサ200には、円筒形のものに代えて断面矩形のものを用いることもできる。但し、円筒形ならば、比較的安価なパイプ材様のものを使えるメリットがある。
また、本実施形態では、スペーサ200を溶接した保護カバー190は、重錘150を構成する敷石には固定せず、重機等の圧力からセンサ部136を保護するために、ただ重錘150の上に載置しておくだけにした。重錘150に固定してしまうと、保護カバー190との隙間に小石等が詰まって動かない状態になることも考えられ、センサ部136での曲げの発生へ影響を与える可能性を無くすため、重錘150には固定しないようにした。
保護用割型ダブルフレキシブルチューブ180は、図2及び図12に示すように、蛇腹状に形成された樹脂製の可撓性チューブであり、金属管光ファイバケーブル130を保護する機能を有している。即ち、重錘150間が金属管光ファイバケーブル130だけだと、小砂利等により金属管が曲がって中の光ファイバ13に損失が発生してしまう虞があるためであり、本実施形態では、保護用割型ダブルフレキシブルチューブ180で重錘150間の金属管光ファイバケーブル130を保護することで誤検出を有効に防止することができる。
また、保護用割型ダブルフレキシブルチューブ180は、図12に示すように、2つ割に構成され、後述するように、金属管光ファイバケーブル130と重錘150をシステムの全長に亘って敷設した後、重錘150間の金属管光ファイバケーブル130に後からかぶせるようにして取り付けることができるので、作業性に優れている。
以上のように、本実施形態では、金属管に小石等の凹凸が直接当たり曲げ損失を発生させるのを防止するために保護用割型ダブルフレキシブルチューブ180を用いた。割型としたので、金属管光ファイバケーブル130を敷設した後に重錘150間に装着できる。ただの割型ではなく、ダブル(2重)のものを用いたのは、十分な強度を確保し、重錘150間で金属管光ファイバケーブル130が曲げ変形を生じてしまうのを確実に防止するためである。フレキシブルとしたのは、洗掘が生じて土砂が削られた時に沈み込んでいくはずの重錘150を支えてしまわないようにするためである。
ここで、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの設置及び組み立て方法を説明する。
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、河川の洗掘を広域に亘り検出するため、その組み立ては現地で行う。尚、図1では、各洗掘検出装置100は河川101の棚部(高水敷)103上に置かれたように示したが、本実施形態では、各洗掘検出装置100は棚部(高水敷)103上に、例えば、数十センチメートル(cm)から1m程度の深さの溝を掘り、各洗掘検出装置100の組み立てが完了したら、それらの溝に埋め戻した後、整地することで、棚部(高水敷)103上には露出させないで用いるようにする。かかる設置構成をとることで、人や動物が洗掘検出装置100(の各洗掘検出ユニット111)に衝突等することによる誤検出を防止し易くなる。
まず、整地された高水敷103に、あらかじめアンカー160を埋め込んである重錘150を一定間隔で敷設する。即ち、図1に示した河川101の棚部(高水敷)103に、各洗掘検出ユニット111の重錘150を、その金属管光ファイバケーブル130を固定する側を天側にして所定の間隔(例えば、1m間隔)で複数個並べる。この間隔が深度検出の分解能になる。そして金属管光ファイバケーブル130を型を用いて鉢巻状に巻回したセンサ部136を形成し、これらセンサ部136を各重錘150部分にそれぞれ2つの固定金具170で2点固定する。なお重錘150には金属管光ファイバケ一ブル130の巻回したセンサ部136の配置位置の罫書き線をあらかじめ書いておくようにする。また、センサ部136の巻回の曲率は、巻回したことによる光の損失が無い程度の曲率で行う。
その後、重錘150間部分の金属管光ファイバケーブル130には保護用割型ダブルフレキシブルチュ一ブ180を取り付け、重錘150部分の巻回したセンサ部136にはステンレス製の保護カバー190をかぶせる。最後に埋め戻して整地する。保護用割型ダブルフレキシブルチュ一ブ180はチユーブ長手方向に切り込みがあり、そこから金属管光ファイバケーブル130を挿入することができるので、取り付けが容易である。また保護カバー190の中央部には重錘150との間にスペーサ200を設けてあり、外力に対するカバーとしての保護強度は十分である。
さて、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによる洗掘の検出原理を述べる。図13は、図2に示す一の洗掘検出ユニット111における金属管光ファイバケーブル130の屈曲の生じ方を示す図、図14は、図2に示す一の洗掘検出ユニット111に洗掘による変位が生じた場合の重錘150及び金属管光ファイバケーブル130の動きを説明するための図であり、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
洗掘が生じた場合、図14(b)に示すように、重錘150は水流105中に露出するようになる。露出した重錘150は、自重または水流105の抗力により、図13及び図14(a)、(b)に示すように、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の固定箇所Fに負荷を与える。図13及び図14(a)、(b)には図示していないが、露出していない重錘150は金属管光ファイバケーブル130の固定点となる。
露出した重錘150の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働き、図13及び図14(a)、(b)に示すように、センサ部136の固定箇所Fで曲げ変形あるいは破断を生じる。金属管光ファイバケーブル130は巻回してセンサ部136を形成し重錘150に固定してあるので張力が働いた場合、容易に金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136に変形を生じさせることができる。
金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の変形によって、金属管光ファイバケーブル130を伝播する光にも変化が生じる。曲げ変形の場合、後述するように、曲げの発生箇所以降で光の損失が発生する。破断の場合、フレネル反射の位置が最初の位置から破断位置にまで変化する。このトレース波形の変化をOTDR112で測定することによって、洗掘の度合いを検出することができる。
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによれば、以下の効果が得られる。
まず、金属管光ファイバケーブル130を直線的に重錘150に固定した場合、金属管光ファイバケーブル130に曲げ変形を生じさせるのは容易ではない。この問題を解決するために金属管光ファイバケーブル130は巻回してセンサ部136を形成し、このセンサ部136を重錘150に固定した。これによって比較的小さな張力で金属管光フアイバケーブル130のセンサ部136は変形する。
次に、巻回したセンサ部136を固定金具170の1点で固定した場合、洗掘により金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136が破断した場合に金属管光フアイバケーブル130は重錘150から分離してしまう虞があり、そのようになった場合、重錘150は負荷点の機能を失い金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136に変形を生じさせることができずに正確な検出ができなくなる。
更に、固定金具170の1点で固定した場合には、センサ部136を含む金属管光ファイバケーブル130は重錘150の面外に出てしまい、容易に保護カバー190をかぶせることができない。そこで、このような問題を解決するために、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136を固定金具170を用いて2点で固定した。これによって巻回したセンサ部136を含む金属管光ファイバケーブル130は設置の段階では重錘150の面外に出ることはないので、保護カバー190をかぶせるのが容易であり、作業性が向上する。
また、洗掘によって金属管光ファイバケーブル130が破断した場合でも、片側の固定箇所では重錘150と金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136は固定されたままなので、重錘150は負荷点の機能を失わず金属管光ファイバケーブル130に曲げ変形を生じさせることができ、正確な洗掘の検出が可能になる。
また、1点で固定した場合、金属管光ファイバケーブル130が曲がった状態で、中の光ファイバ(芯線)13だけがするすると動いてしまう虞がある。これに対して、本実施形態のような2点で固定した場合には、洗掘が発生した箇所の重錘150が沈んだり動いたりすると、鉢巻状のセンサ部136に両側から張力が働く結果、金属管光ファイバケーブル130は、図13に示すように、固定部の両側で確実に屈曲するので、その状態で中の光ファイバ(芯線)13だけが動いてしまう虞は無くなる。
更に、広域に亘って洗掘を検出する場合、現地で組み立てることは避けられない問題である。このとき、センサの構造が複雑であっては設置作業に多大の労力を要してしまう。この問題を改善するためにセンサの構造は非常に簡単なもので、且つ確実に金属管光ファイバケーブル130に変形を生じさせ、正確に洗掘を検出することができるようにした。
ここで、洗掘検出装置100を用いて河川101の棚部(高水敷)103の洗掘の度合いを検出する方法について詳細に述べる。
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、光ファイバ13を伝播する光の損失を監視する光監視装置としてのOTDR112(図15及び図16参照)を備えており、増水等に伴う河川101の棚部(高水敷)103の洗掘が生じた場合、図14(a)及び(b)に示したように、洗掘によって土砂が洗われることで、水流中に露出した重錘150の負荷によって金属管光ファイバケーブル130に張力が働き、固定箇所Fで曲げ変形あるいは破断を生じ、この曲げ変形あるいは破断によるトレース波形の変化をOTDR112で測定することにより洗掘の水平及び垂直方向の度合いを検出する。
図15は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムにおけるOTDR112を用いた洗掘の検出方法を説明するための図である。即ち、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、図15に示すように、パルス発振器121により駆動されたレーザダイオード(LD)122は、光パルスを出力し、光パルスは方向性結合器123を経て金属管光ファイバケーブル130内の光ファイバ13に入射する。各洗掘検出ユニット111内の光ファイバ13で生じた後方レーリ散乱光、あるいはフレネル反射光は入射端に戻ってくる。
入射端に戻ってきた光は、方向性結合器123を通して受光素子(PD)124に入射し、電気信号に変換される。変換された電気信号は、増幅器125により所要のレベルまで増幅された後、解析処理部/表示部126により時間領域で解析され、解析結果が表示される。1m間隔ごとに各洗掘検出ユニット111を設置し、OTDR112に接続することにより洗掘の計測システムを構成しているので、洗掘の発生の有無と発生した洗掘の度合いを同時に検出することが可能である。尚、光監視装置であるOTDR112としては、例えば、試験光波長1310nm、パルス幅10ns以上(できるだけ細かく)、空間分解能1m以上(できるだけ短かく)の高分解能形のOTDRを用いることが可能である。
図16は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示す機能ブロック図である。図16に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムは、観測小屋109内に設けられた観測セクション110と、棚部(高水敷)103等に設けられた計測セクション120から構成される。観測セクション110は、光監視装置としてのOTDR112と、このOTDR112に接続された制御用PC(Personal Computer)114と、OTDR112に接続され各光ファイバ(芯線)13より構成される光チャンネルを選択する光チャンネルセレクタ(30チャンネル)116とを有している。計測セクション120は、光ファイバ13をその内部に挿通させた金属管光ファイバケーブル130と重錘150等を含む多数の洗掘検出ユニット111から成る内側、中側、外側(3ライン)の洗掘検出装置100を含んでおり、各ラインは、それぞれ1メートル(m)の間隔をおいて洗掘検出ユニット111が多数配置された構成を有している。
本実施形態では、OTDR112による測定は1つのラインにおいて双方向からの測定を行う。測定時間は1ライン約10秒で、1エリア1分で、最大5エリアまで適用する。5エリアで測定時間5分となる。
双方向から測定するのは、図1に示すような配置をした場合には、片方向では、例えば、X1で破断した場合にX2の箇所の曲げや破断を検出できなくなるからである。反対に、X2で破断した場合にX1の箇所の曲げや破断を検出できなくなるのも同様である。尚、後述する本発明の第3の実施形態のような場合は、片方向で十分である。以上の測定において、決壊箇所は、OTDR112で測定した光損失又は破断面からの反射光量が所定の閾値を超えた箇所をもって決壊箇所と判断する。
さて、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘は、河川101の水流部分105の増水等により、図1にそのイメージを示すように、棚部(高水敷)103を段階的に侵食する形で発生していく。かかる洗掘(侵食)をどこでどの程度まで発生したかを検知する必要があり、更には、どのぐらいの速さで洗掘(侵食)が進んでいるかまで検知できるのが望ましい。
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、増水等に伴って河川101の棚部(高水敷)103に洗掘が生じた場合、図1にそのイメージを示すように、洗掘が生じた箇所に設置された外側のラインと中側のラインの該当する箇所の重錘150は水流中に露出する。そして、露出した重錘150の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働き、図13及び図14(a)、(b)に示したように、固定箇所Fで曲げ変形あるいは破断を生じる。これをOTDR112により検出することで、当該洗掘の発生箇所を検出する。
この場合、図1に示すような洗掘(侵食)が進んでいく場合、まず、外側のラインの重錘150が順番に水流中に露出していき、更に、洗掘(侵食)が進んだ場合は、中側のラインの重錘150が順番に水流中に露出していくようになる。従って、OTDR112を用いたトレースデータをモニターしていれば、洗掘(侵食)の進み具合を観測可能となる。
図17は、OTDR112を用いたトレースデータの一例を示す図であり、その設置時のトレース波形を示すグラフである。図18は、OTDR112を用いたトレースデータの一例を示す図であり、その光ファイバに曲げが発生した時のトレース波形を示すグラフである。図19は、OTDR112を用いたトレースデータの一例を示す図であり、その光ファイバに破断が発生した時のトレース波形を示すグラフである。
図17に示すように、設置時には光の損失は全く発生していない。尚、ファイバ長が570m付近でトレース波形がパルス状に上昇しているのは、ファイバ終端面のフレネル反射によるものである(ファイバ終端をコネクタ等で接続している場合には、コネクタ等による反射)。
一方、図18に示すように、例えば、475m付近で光ファイバに曲げが発生した時には、当該箇所以降から10dB程度の光の損失が発生する。これにより、曲げが発生した箇所を特定することができる。尚、この段階では曲げは発生したが破断には至っていないので、ファイバ長が570m付近では、ファイバ終端面のフレネル反射により、損失分だけ下がった値でトレース波形がパルス状に上昇している。
更に、図19に示すように、例えば、475m付近で光ファイバの破断に至った時には、当該箇所に破断したファイバ端面が存在するため、この475m付近でフレネル反射によりトレース波形がパルス状に上昇し、当該箇所以降からは、上記の曲げ発生時よりも更に大きな光の損失が発生する。そして、ファイバ終端面のフレネル反射によるトレース波形の上昇部分は観察できなくなる。これにより、当該箇所で光ファイバが破断に至ったことを確認することができる。
尚、上述したように、金属管光ファイバケーブル130に双方向から光を入射して検出を行うので、図1に示したような洗掘が生じた場合、外側のラインと中側のラインでそれぞれXで示す2箇所で曲げ或いは破断が検出される。従って、これら2箇所間の距離を確認することで発生した洗掘の大きさを知ることができる。
図20は、図1に示す1ラインの洗掘検出装置における洗掘の検出動作を説明するための図である。ここで、図20を用いて、金属管光ファイバケーブル130の鉢巻状のセンサ部136を重錘150に2点で固定することが隣り合う重錘150(洗掘検出ユニット111)との関係で意味があることを説明する。尚、図20において、(a)は、洗掘が生じていない状態、(b)は、1つの洗掘検出ユニット111で洗掘が生じ、その重錘150が水流105中に露出して沈み又は動いた状態、(c)は、更に、その隣の洗掘検出ユニット111まで洗掘が進み、その重錘150も水流105中に露出して沈み又は動いた状態を示している。
図20(a)に示すように、全ての洗掘検出ユニット111で洗掘が生じていない状態では、全ての重錘150は水流105中に露出することは無く、高水敷103の土砂中に埋まったままである。
これに対して、図20(b)に示すように、1つの洗掘検出ユニット111−1で洗掘が生じると、その重錘150―1は水流105中に露出し、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の固定箇所Fに負荷を与える。そして、露出した重錘150−1の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働き、センサ部136の固定箇所Fで曲げ変形あるいは破断を生じる。図20(b)では、露出した重錘150−1が、矢印で示すように、やや左側にずれるような形で沈み又は動いた場合を想定している。
この結果、重錘150−1の2つの固定箇所Fで曲げ変形を生じ、左隣の重錘150−2の固定箇所F2でも曲げ変形を生じ、右隣の重錘150−3の固定箇所F3では破断を生じた場合を示している。同図から分かるように、金属管光ファイバケーブル130は巻回してセンサ部136を形成し重錘150に固定してあるので張力が働いた場合、容易に金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136に変形を生じさせることができる。
更に、図20(c)に示すように、右隣りの洗掘検出ユニット111―3まで洗掘が進み、その重錘150−3も水流105中に露出すると、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、更に右隣りの重錘150−4のセンサ部136―4の固定箇所F4に負荷を与える。そして、露出した重錘150−3の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働き、センサ部136−4の固定箇所F4で曲げ変形あるいは破断を生じる。図20(c)では、更に右隣りの重錘150−4のセンサ部136―4の固定箇所F4でも曲げ変形を生じた場合を示している。
ここで、同図から分かるように、仮に、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−3を1点で重錘150−3に固定していたとすると、前述したように、重錘150−3の固定箇所F3で破断していると、破断した先端部130Hは、図20(c)に示すように重錘150−3が自重または水流105の抗力により沈み又は動く時に、するするとその1つの固定点(1つの固定金具)をすり抜けて、重錘150−3から外れてしまう。従って、この場合には、重錘150−3は、更に右隣りの重錘150−4のセンサ部136−4の固定箇所F4に負荷を与える重錘(重り)としての機能を果たすことが無くなる。
これに対して、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムでは、上述したように2点で固定しているので、このような事態を防止できる。従って、重錘150−3の固定箇所F3で金属管光ファイバケーブル130が破断した場合でも、なお重錘150−4のセンサ部136−4の固定箇所F4で曲げ変形を生じたことを検出可能となる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムについて述べる。図21は、本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムにおける洗掘の検出動作を説明するための図である。尚、第1の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの構成と同様の部分は同様の参照符号を付し、その説明は省略する。
この第2の実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムでは、洗掘検出ユニット111が上述したスペーサ200に相当する部材を一対(2つ)有していることを特徴としている。
即ち、上述した第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムでは、洗掘検出ユニット111が上述したスペーサ200を1つ有しており、スペーサ200は、面圧に対する保護カバー190の強度の向上、即ち、重機等による上からの面圧に保護カバー190が耐えられるようにすることを主眼とするものであったが、本実施形態では、一対(2つ)のスペーサ部材は、このような保護カバー190の補強機能だけでなく、洗掘が生じていない(水中に露出していない)隣の洗掘検出ユニット111において金属管光ファイバケーブル130に不必要に曲げ変形が生じてしまうのを防止する機能、従って、検出の分解能を高める機能、をも有していることを大きな特徴としている。
即ち、一対(2つ)のスペーサ部材を有しているので、隣の洗掘検出ユニット111において金属管光ファイバケーブル130に張力が加わっても、当該固定金具170側の(一方の)スペーサ部材に規制されて、当該固定金具170による固定端にはそれ以上の張力がかからなくなるので、固定金具170による固定端での曲げが発生しにくくなる。
かかる構成と作用効果について図21を用いて説明する。尚、図21において、(a)は、洗掘が生じていない状態、(b)は、1つの洗掘検出ユニット111で洗掘が生じ、その重錘150が水流105中に露出して沈み又は動いた状態、(c)は、更に、その重錘150で金属管光ファイバケーブル130が破断した状態、(d)は、更に、その隣の洗掘検出ユニット111まで洗掘が進み、その重錘150も水流105中に露出して沈み又は動いた状態、(e)は、更に、その重錘150で金属管光ファイバケーブル130が破断した状態を示している。
図21(a)において、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムでは、洗掘検出ユニット111は、一対(2つ)のスペーサ部材202、204を有している。これらスペーサ部材202、204は、上述した第1の実施形態と同様に、保護カバー190に溶接により固定されている。
尚、一対(2つ)のスペーサ部材202、204は、上述した保護カバー190の補強機能だけでなく、当該洗掘検出ユニット111では洗掘が生じておらず土砂中に埋まった状態において、両隣の洗掘検出ユニット111で洗掘が生じ、その重錘150が沈み又は動いた場合でも、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の当該洗掘検出ユニット111の重錘150における固定点(固定金具170による固定点)には、不必要な曲げが発生しないように金属管光ファイバケーブル130の動きを規制する規制部材として機能するように、大きさ及びそれらの固定箇所を決定している。
まず、図21(a)に示すように、全ての洗掘検出ユニット111で洗掘が生じていない状態では、全ての重錘150は水流105中に露出することは無く、高水敷103の土砂中に埋まったままである。
これに対して、図21(b)に示すように、1つの洗掘検出ユニット111−1で洗掘が生じると、その重錘150―1は水流105中に露出し、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の固定箇所Fに負荷を与える。これと同時に、上述したように保護カバー190−1は重錘150―1に載置してあるだけなので、保護カバー190−1は重錘150―1から分離していく。
この図21(b)に示す場合において、露出した重錘150−1の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働くが、隣の洗掘検出ユニット111−3では洗掘が生じておらず土砂中に埋まった状態にあり、保護カバー190−3は重錘150―3に載置されたままなので、隣の重錘150−1の負荷によって金属管光ファイバケーブル130に張力が働いたとしても、金属管光ファイバケーブル130の動きはスペーサ部材204−3により規制され、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−3の固定箇所F3には、不必要な曲げが発生しなくなる。
更に、図21(c)は、重錘150―1が更に沈み又は動いた結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の固定箇所Fで破断した様子を示している。このように、重錘150―1が更に沈み又は動いた結果金属管光ファイバケーブル130が破断に至った場合でも、金属管光ファイバケーブル130の動きはスペーサ部材204−3により規制され続けるので、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−3の固定箇所F3には、不必要な曲げは発生しない。
続いて、図21(d)に示すように、右隣りの洗掘検出ユニット111―3まで洗掘が進み、その重錘150−3も水流105中に露出すると、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、そのセンサ部136−3の固定箇所F3に負荷を与える。そして、露出した重錘150−3の負荷によってセンサ部136−3の固定箇所F3で曲げ変形を生じる。この時、洗掘検出ユニット111−3でも洗掘が生じて、その重錘150−3も保護カバー190−3も土砂中に埋まった状態から水流105中に露出するので、保護カバー190−3は重錘150―3に載置された状態に留まらず、重錘150―3から分離する。
従って、この段階では、スペーサ部材204−3も(202−3も)規制部材としては機能することは無くなる。この図21(d)に示す場合において、露出した重錘150−3の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働くが、隣の洗掘検出ユニット111−4では洗掘が生じておらず土砂中に埋まった状態にあり、保護カバー190−4は重錘150―4に載置されたままなので、隣の重錘150−3の負荷によって金属管光ファイバケーブル130に張力が働いたとしても、金属管光ファイバケーブル130の動きはスペーサ部材204−4により規制され、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−4の固定箇所F4には、不必要な曲げが発生しないのは、図21(b)に示した場合と同様である。
更に、図21(e)は、重錘150―3が更に沈み又は動いた結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−3の固定箇所F3で破断した様子を示している。このように、重錘150―3が更に沈み又は動いた結果金属管光ファイバケーブル130が破断に至った場合でも、金属管光ファイバケーブル130の動きはスペーサ部材204−4により規制され続けるので、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−4の固定箇所F4には、不必要な曲げは発生しないのも図21(c)に示した場合と同様である。
このように、本実施形態では、一対(2つ)のスペーサ部材202、204を有し、それらスペーサ部材202、204を金属管光ファイバケーブル130の動きを規制する規制部材として機能するように、その大きさ及び固定箇所を決定しているので、保護カバー190の補強機能だけでなく、洗掘が生じていない(水中に露出していない)隣の洗掘検出ユニット111において金属管光ファイバケーブル130に不必要に曲げ変形が生じてしまうのを防止することができる。
従って、洗掘が生じた(水中に露出した)洗掘検出ユニット111においてのみ重錘150への金属管光ファイバケーブル130(のセンサ部136)の固定箇所で曲げ変形或いは破断を発生させることが可能となる。よって、洗掘検出の分解能を高めることができる。
尚、スペーサ部材202等は、上述した保護カバー190の補強機能だけでなく、当該洗掘検出ユニット111では洗掘が生じておらず土砂中に埋まった状態において、両隣の洗掘検出ユニット111で洗掘が生じ、その重錘150が沈み又は動いた場合でも、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の当該洗掘検出ユニット111の重錘150における固定点(固定金具170による固定点)には、不必要な曲げが発生しないように金属管光ファイバケーブル130の動きを規制する規制部材として機能するように、大きさ及びその固定箇所を規定されていれば良く、1個又は3個以上でも良い。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態では、図1に示したように、光ファイバ13をその内部に挿通させた複数(3ライン)の洗掘検出装置100を河川101の棚部(高水敷)103に、内側、中側、外側にループ状に形成し、双方向から測定を行うようにしたが、本発明はこれらの形態に限られず、単方向から測定を行う形態も適用可能である。
以下、このような単方向から測定を行う本発明の第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムについて述べる。図22は、本発明の第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの全体構成を示す概念図である。図23は、本発明の第3の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示す機能ブロック図である。図24は、本発明の第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置における洗掘の検出動作を説明するための図である。尚、第1及び第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの構成と同様の部分は同様の参照符号を付し、その説明は省略する。
図22に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、1本のラインを構成する金属管光ファイバケーブル130(とその内部の光ファイバ13)をその内部に挿通させた複数(3ライン)の洗掘検出装置100が河川101の棚部(高水敷)103に水流105の方向に沿った所定の間隔ごとに設けられている。これら金属管光ファイバケーブル130は、それぞれ内部を光ファイバ13が挿通されており、各光ファイバ13は洗掘検出装置100の端部で屋外配線用光ケーブル16内の光ファイバ(芯線)13に融着され、これら屋外配線用光ケーブル16により接続(ジョイント)ボックス108を介して観測小屋109内の光監視装置としてのOTDR112(図23参照)に接続されている。
また、図23に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムは、観測小屋109内に設けられた観測セクション110と、棚部(高水敷)103等に設けられた計測セクション120から構成される。観測セクション110は、光監視装置としてのOTDR112と、このOTDR112に接続された制御用PC(Personal Computer)114と、OTDR112に接続され多芯光ファイバケーブル50の各光ファイバ(芯線)13より構成される光チャンネルを選択する光チャンネルセレクタ(3ポート)116とを有している。計測セクション120は、多芯光ファイバケーブル50の光ファイバ(芯線)13を3ラインに分岐する接続(ジョイント)ボックス108と、ライン1、ライン2及びライン3の各ラインから成る洗掘検出装置100とを有している。即ち、ライン1、ライン2及びライン3におけるそれぞれの洗掘検出装置100は、先端側のNo.1ユニットから基端側(接続ボックス108側)のNo.30ユニットまで合計30の洗掘検出ユニット111を有している。各洗掘検出ユニット111の構成は、上述した第1及び第2の実施形態のものと同様である。
尚、本実施形態では、1ラインの洗掘検出装置100における洗掘検出ユニット111の個数は30個としたが、30個よりも少なくすることや多くすることは勿論可能である。
さて、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘は、河川101の水流部分105の増水等により、図22に破線81、82、83で示すように、棚部(高水敷)103を段階的に侵食する形で発生していく。かかる洗掘(侵食)をどこでどの程度まで発生したかを検知する必要があり、更には、どのぐらいの速さで洗掘(侵食)が進んでいるかまで検知できるのが望ましい。
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、増水等に伴って河川101の棚部(高水敷)103に水平方向の洗掘が生じた場合、図22にそのイメージを示すように、洗掘が生じた箇所に設置された各ラインの先端側のNo.1ユニットから順番に水流中又はその上に露出するようになる。そして、露出した各洗掘検出ユニット111における重錘150が、自重または水流105の抗力により、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の固定箇所Fに負荷を与え曲げ変形あるいは破断を生じさせるのも上述した第1及び第2の実施形態のものと同様である。
例えば、棚部(高水敷)103に、図22に破線81で示すような洗掘(侵食)が進んだ場合、ライン1とライン2において、先端側のNo.1ユニットから順番にNo.3ユニットまでが水流中等に露出したことが検知されるが、ライン3ではユニットの露出は全く検知されない。この結果、ライン1とライン2の2箇所で略3m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン3の箇所では、未だ、殆ど洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
次に、棚部(高水敷)103に、図22に破線82で示すような洗掘(侵食)まで進んだ場合、ライン1において、更にNo.4ユニットが水流中等に露出したことが検知され、これにより、ライン1の箇所で破線81で示した場合よりも更に1m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン2において、更にNo.4ユニット及びNo.5ユニットが水流中等に露出したことが検知され、これにより、ライン2の箇所では破線81で示した場合よりも更に2m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。尚、ライン3では、依然としてユニットの分離は全く検知されないので、ライン3の箇所では、依然として洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
続いて、棚部(高水敷)103に、図22に破線83で示すような洗掘(侵食)まで進んだ場合、ライン1において、更にNo.5ユニットが水流中等に露出したことが検知され、これにより、ライン1の箇所で破線82で示した場合より、更に1m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン2において、その後のユニットの露出は検知されない。これにより、ライン2の箇所では破線82で示した場合より洗掘(侵食)が進んではいないことが分かる。尚、ライン3では、依然としてユニットの露出は全く検知されないので、ライン3の箇所では、依然として洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
以上のように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによれば、OTDR112で計測することにより金属管光ファイバケーブル130(光ファイバ13)の曲げ又は破断を検出することで、河川101の水流105に対して垂直方向の洗掘の度合いを広域に亘って検出することができる。
ここで、図24に示すように、本実施形態においても、上述した第2の実施形態と同様に、各洗掘検出ユニット111は、一対(2つ)のスペーサ部材202、204を有し、それらスペーサ部材202、204を金属管光ファイバケーブル130の動きを規制する規制部材として機能するように、その大きさ及び固定箇所を決定しているので、洗掘検出の分解能が高められている。従って、河川101の水流105に対して垂直方向の洗掘の度合いを高精度に検出することができる。
また、本実施形態においては、ライン1、ライン2、ライン3のそれぞれにおける最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)では、金属管光ファイバケーブル130が破断しても、その長さは変わらないので、破断を検出できない可能性が考えられる。そこで、本実施形態では、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)における重錘150上で金属管光ファイバケーブル130をその分だけ長く巻回してセンサ部136を形成しておくようにした。
かかる構成及び作用効果を図24を用いて説明する。尚、図24において、(a)は、洗掘が生じていない状態、(b)は、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)で洗掘が生じ、その重錘150が水流105中に露出して沈み又は動いた状態、(c)は、更に、その重錘150が完全に分離して無くなった(流れ又は沈んでしまった)状態、(d)は、更に、その次の洗掘検出ユニット111(No.2ユニット)まで洗掘が進み、その重錘150も水流105中に露出して沈み又は動いた状態、(e)は、更に、その重錘150が完全に分離して無くなった(流れ又は沈んでしまった)状態を示している。尚、(b)及び(c)は、1m洗掘(侵食)が進んだ場合、(c)及び(d)は、2m洗掘(侵食)が進んだ場合を示している。
図24(a)において、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムでは、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)において、重錘150上で金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の曲げ半径は80mm(直径160mm)として第1及び第2の実施形態のものと同様としたが、周長約500mmのところを、4周巻回するようにして3周分の約1500mm、即ち、1.5m分だけ長く巻回するようにした。このように最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)だけ約1.5m分長く巻回するようにしたが、その作業は、型を用いて据付現場で巻回する時に、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)だけ、型の周りに4周巻回するようにすれば良いので、簡単である。
さて、図24(a)に示すように、当該ラインにおいて、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)においても洗掘が生じていない状態では、当該洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)の重錘150は水流105中に露出することは無く、高水敷103の土砂中に埋まったままである。
これに対して、1m洗掘(侵食)が進み、図24(b)に示すように、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)において洗掘が生じると、その重錘150―1は水流105中に露出し、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136の固定箇所Fに負荷を与える。これと同時に、上述したように保護カバー190−1は重錘150―1に載置してあるだけなので、保護カバー190−1は重錘150―1から分離していく。ここで、重錘150−1が水流105中に露出すると、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、そのセンサ部136−1の固定箇所F1に負荷を与える。
そして、露出した重錘150−1の負荷によってセンサ部136−1の固定箇所F1で曲げ変形を生じる。従って、OTDR112で金属管光ファイバケーブル130(光ファイバ13)の曲げによる光の損失を計測することにより、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)において洗掘が生じたこと、即ち、当該ラインの最先端部で約1mの洗掘が発生したことを検出することができる。尚、保護カバー190−1は重錘150―1から分離するので、スペーサ部材202−1も(204−1も)センサ部136−1の固定箇所F1での曲げ変形を規制する部材として機能することは無い。
この図24(b)に示す場合において、露出した重錘150−1の負荷によって金属管光ファイバケーブル130には張力が働くが、次の洗掘検出ユニット111(No.2ユニット)では洗掘が生じておらず土砂中に埋まった状態にあり、保護カバー190−2は重錘150―2に載置されたままなので、隣の重錘150−1の負荷によって金属管光ファイバケーブル130に張力が働いたとしても、金属管光ファイバケーブル130の動きはスペーサ部材202−2により規制され、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−2の固定箇所F2に不必要な曲げが発生しなくなるのは、上述した第2の実施形態と同様である。
更に、図24(c)は、重錘150―1が更に沈み又は動いた結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−1の固定箇所F1で破断した様子を示している。
ところで、このように重錘150―1が更に沈み又は動いた結果金属管光ファイバケーブル130が破断に至った場合でも、仮に、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)における重錘150上で金属管光ファイバケーブル130を巻回する長さがNo.2ユニット以降と変わらなければ、金属管光ファイバケーブル130が破断しても、その長さは変わらないので、この破断を検出できない虞がある。
しかしながら、本実施形態では、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)における重錘150上で金属管光ファイバケーブル130を約1.5m分だけ長く巻回してセンサ部136−1を形成してあるので、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−1の固定箇所F1で破断すれば、OTDR112のトレースデータ上も端面のフレネル反射による立ち上がりの位置(図17乃至図19参照)が1.5m分だけずれるので、これを確実に検出することが可能である。
続いて、図24(d)に示すように、次の洗掘検出ユニット111―2(No.2ユニット)まで洗掘が進み、その重錘150−2も水流105中に露出すると、自重または水流105の抗力により沈み又は動く結果、そのセンサ部136−2の固定箇所F2に負荷を与える。そして、露出した重錘150−2の負荷によってセンサ部136−2の固定箇所F2で曲げ変形を生じるので、OTDR112で金属管光ファイバケーブル130(光ファイバ13)の曲げによる光の損失を計測することにより、更に、次の洗掘検出ユニット111―2(No.2ユニット)において洗掘が生じたこと、即ち、当該ラインの最先端部から約2m分まで洗掘が進んだことを検出することができる。
更に、図24(e)は、重錘150―2が更に沈み又は動いた結果、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−2の固定箇所F2で破断した様子を示している。
このように、本実施形態では、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)における重錘150上で金属管光ファイバケーブル130を約1.5m分だけ長く巻回してセンサ部136−1を形成してあるので、金属管光ファイバケーブル130のセンサ部136−1の固定箇所F1で破断すれば、この破断をOTDR112のトレースデータ上確実に検出することができる。尚、最先端の洗掘検出ユニット111(No.1ユニット)における重錘150上で金属管光ファイバケーブル130は、少なくとも1.25m分程度余分に巻いておけば足りる。
以上、第1乃至第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによれば、河川101の棚部(高水敷)103に対する取り付け・設置等の施工性に優れると共に、監視対象物である棚部(高水敷)103に生じた洗掘を光ファイバの伝播光量の変化に効率良く作用させ得る構造を有している。また、比較的低コストでシステムを設置可能であるという大きな利点を有している。即ち、本実施形態では、洗掘検出装置100は構造が簡単であるため比較的安価に製作することができ、また、測定にも比較的安価なOTDR112を用いているため、広範囲に亘る洗掘検出システムを低コストで構築することができる。
尚、本発明の光ファイバ式洗掘検出システムを河川堤防等における災害防止対策に用いても、センサ部が光ファイバのため、誘導及び耐雷対策をとる必要が無い。
このように、第1乃至第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによれば、河川101の水流105と平行(水平)な方向或いは垂直な方向における洗掘を有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化も可能となる。特に、大規模なエリアに亘って敷設する場合に、構成の簡単さ、作業性、コスト等の点で本発明の意義は大変大きくなる。
以上、本発明について実施の形態をもとに説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。