JP2011181847A - パワーモジュール用基板、パワーモジュール用基板の製造方法、ヒートシンク付パワーモジュール用基板及びパワーモジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミックス基板11の一面に、アルミニウムからなる回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10であって、回路層12は、本体層12Bと、前記一方の面側に露呈するように配置された表面硬化層12Aと、を有しており、回路層12の前記一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定され、このインデンテーション硬度Hsの80%以上の領域が表面硬化層12Aとされており、本体層12Bのインデンテーション硬度Hbが、前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされている。
【選択図】図2
Description
また、例えば特許文献2−4に示すように、セラミックス基板の上にアルミニウム合金部材を溶湯接合法によって接合して回路層を形成したパワーモジュール用基板が提案されている。
このようなパワーモジュール用基板においては、回路層の上に、はんだ層を介してパワー素子としての半導体素子が搭載され、パワーモジュールとして使用される。
特に、最近では、パワーモジュールの小型化・薄肉化が進められるとともに、その使用環境も厳しくなってきており、半導体素子等の電子部品からの発熱量が大きくなっているため、熱サイクルの温度差が大きく、回路層の表面にうねりやシワが発生するおそれがある。
H=37.926×10−3×(荷重〔mgf〕÷変位〔μm〕2)
の式で定義されるものである。
なお、前記表面硬化層がSi,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を含有しているので、これらの添加元素によってアルミニウムを硬化させることで前記表面硬化層を形成することが可能となる。
この場合、表面硬化層の厚さが1μm以上300μm以下とされていることから、回路層の一方の面にうねりやシワが発生することを確実に防止することができる。また、本体層の厚さが100μm以上1500μm以下とされているので、熱サイクル負荷時の熱応力を本体層で確実に吸収することができる。
この場合、表面硬化層が、上述の添加元素を合計で0.2atom%以上10atom%以下含有していることから、これらの添加元素によって確実にアルミニウムを硬化させることができ、前述のインデンテーション硬度を有する表面硬化層を形成することが可能となる。
この場合、セラミックス基板が絶縁性に優れていることから、絶縁信頼性の高いパワーモジュール用基板を提供することができる。
また、この加熱工程において、金属板の一方の面側に固着されたSi,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を拡散させて表面硬化層を形成することができる。よって、表面硬化層を形成するために別途加熱処理を行う必要がなく、このパワーモジュール用基板の製造コストを削減することができる。
この場合、前記添加元素とともにAlを固着させているので、添加元素を確実に固着されることができる。また、添加元素としてCa,Liなどを用いても、これらの元素の酸化を防止することができる。なお、前記添加元素とともにAlを固着させるには、前記添加元素とAlとを同時に蒸着してもよいし、前記添加元素とAlの合金をターゲットとして用いてスパッタリングを行ってもよい。
この場合、めっき、蒸着、CVD、スパッタリング、コールドスプレー、又は、前記添加元素を含有する粉末が分散されたペースト若しくはインクの塗布によって、前記添加元素を前記金属板の一方の面に確実に固着でき、前述の固着層を形成することができる。また、前記添加元素の固着量を精度良く調整することが可能となる。
この構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板によれば、パワーモジュール用基板を冷却するヒートシンクを備えているので、パワーモジュール用基板に発生した熱をヒートシンクによって効率的に冷却することができる。
この構成のパワーモジュールによれば、セラミックス基板と回路層との接合強度が高く、かつ、回路層と半導体素子との間に形成されたはんだ層におけるクラックの発生を抑制できるので、使用環境が厳しい場合であっても、その信頼性を飛躍的に向上させることが可能となる。
図1に、本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールを示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク40とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層12とはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
また、本実施形態においては、ヒートシンク40の天板部41と金属層13との間には、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる緩衝層15が設けられている。
表面硬化層12Aは、回路層12の一方の面に露呈し、この一方の面から他方の面側(図2において下側)に向けて延在しており、回路層12の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsに対して80%以上のインデンテーション硬度を有する領域である。ここで、本実施形態では、回路層12の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定されている。
本体層12Bは、そのインデンテーション硬度Hbが前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされた領域となる。
ここで、本実施形態では、表面硬化層12Aの厚さtsが1μm以上300μm以下とされ、本体層12Bの厚さtbが100μm以上1500μm以下、界面近傍層12Cの厚さtcが50μm以上300μm以下とされている。
回路層12においては、図3に示すように、その一方の面が最も添加元素の含有量が高くなっており、他方の面側に向かうにしたがい含有量が低くなるように構成されている。この添加元素によって回路層12の一部が硬化され、上述の表面硬化層12Aが形成されているのである。
なお、セラミックス基板11側に位置する界面近傍層12Cにおいては、セラミックス基板11と金属板22との接合において利用される元素が拡散することで、本体層12BよりもAlの純度が低くなっている。
まず、図5に示すように、回路層12となる金属板22の一方の面に、スパッタリングによって、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層22Aを形成する。
本実施形態では、添加元素としてNiを固着しており、その固着量を0.05mg/cm2以上2.0mg/cm2以下に設定している。
次に、図5に示すように、セラミックス基板11の一面側に、回路層12となる金属板22(4Nアルミニウムの圧延板)が、厚さ5〜50μm(本実施形態では14μm)のろう材箔24を介して積層され、セラミックス基板11の他面側に、金属層13となる金属板23(4Nアルミニウムの圧延板)が厚さ5〜50μm(本実施形態では14μm)のろう材箔25を介して積層される。このとき、金属板22は、固着層22Aが形成された面とは反対の面がセラミックス基板11側を向くように積層される。このようにして積層体20を形成する。
なお、本実施形態においては、ろう材箔24、25は、融点降下元素であるSiを含有したAl−Si系のろう材とされている。
次に、積層工程S02において形成された積層体20を、その積層方向に加圧(圧力1〜5kgf/cm2)した状態で加熱炉内に装入して加熱する。この加熱工程S03によって、ろう材箔24、25と金属板22、23の一部とが溶融し、図6に示すように、金属板22、23とセラミックス基板11との界面にそれぞれ溶融金属領域26、27が形成される。ここで、加熱温度は550℃以上650℃以下、加熱時間は30分以上180分以下とされている。
また、この加熱工程S03により、金属板22の固着層22Aに含有された添加元素(本実施形態ではNi)が金属板22の他方の面側に向けて拡散していく。
次に、積層体20を冷却することによって溶融金属領域26、27を凝固させ、セラミックス基板11と金属板22及び金属板23とを接合する。このとき、ろう材箔24、25に含まれる融点降下元素(Si)が金属板22、23側へと拡散していくことになる。
また、回路層12においては、固着層22Aに含有された添加元素が拡散することで表面硬化層12A及び本体層12Bが形成される。また、ろう材箔24に含まれるSiが拡散することで接合近傍層12Cが形成される。
よって、熱サイクル負荷時において、回路層12の表面のうねりやシワの発生を抑制でき、はんだ層2におけるクラックの発生を抑制できる。また、セラミックス基板11と回路層12との接合界面に熱応力が作用することを抑制でき、熱サイクル信頼性を向上させることができる。
このパワーモジュール101は、回路層112が配設されたパワーモジュール用基板110と、回路層112の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク140とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層112とはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
セラミックス基板111は、回路層112と金属層113との間の電気的接続を防止するものである。本実施形態では、セラミックス基板111は絶縁性の高いAl2O3(アルミナ)で構成されている。また、セラミックス基板111の厚さは、0.2〜0.8mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.32mmに設定されている。
また、金属層113は、セラミックス基板111の他方の面に金属板123が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層113は、回路層112と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板123がセラミックス基板111に接合されることで形成されている。
なお、ヒートシンク140(天板部141)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、本実施形態においては、A3003(アルミニウム合金)で構成されている。
表面硬化層112Aは、回路層112の一方の面に露呈し、この一方の面から他方の面側(図8において下側)に向けて延在しており、回路層112の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsに対して80%以上のインデンテーション硬度を有する領域である。ここで、本実施形態では、回路層112の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定されている。
本体層112Bは、そのインデンテーション硬度Hbが前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされた領域となる。
ここで、本実施形態では、表面硬化層112Aの厚さtsが1μm以上300μm以下とされ、本体層112Bの厚さtbが100μm以上1500μm以下、界面近傍層112Cの厚さtcが50μm以上300μm以下とされている。
一方、本体層112Bでは、上述の添加元素の含有量が少ないことからAlの純度が高く、変形抵抗が小さいままである。
詳述すると、界面近傍層112Cにおいては、Si、Cu、Ag及びGeから選択される1種又は2種以上の第2添加元素が固溶している。ここで、この界面近傍層112Cの接合界面側の前記第2添加元素濃度の合計が、0.05質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、界面近傍層112Cの前記第2添加元素濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)で、接合界面から50μmまでの範囲内を5点測定した平均値である。このEPMA分析では、スポット径の全体が接合界面から50μmまでの範囲内に入るようにして分析を実施した。
ここで、接合界面130部分には、図9に示すように活性金属であるHfと酸素とを含む酸素化合物からなる酸化物層132が形成されている。この酸化物層132は、活性金属であるHfとAl2O3からなるセラミック基板111の酸素とが反応することによって生じたものである。この酸化物層132の厚さHは、例えば0.1μm以上5μm以下とされている。
まず、図11に示すように、回路層112となる金属板122の一方の面に、スパッタリングによって、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層122Aを形成する。
本実施形態では、添加元素としてNiを固着しており、その固着量を0.05mg/cm2以上2.0mg/cm2以下に設定している。
次に、金属板122、123のそれぞれの接合面に、スパッタリングによって、第2添加元素であるCu及びGe、並びに、活性元素であるHfを固着し、第2固着層124、125を形成する。
本実施形態では、第2固着層124、125におけるCu量は0.08mg/cm2以上2.7mg/cm2以下、Ge量は0.002mg/cm2以上2.5mg/cm2以下、Hf量は0.1mg/cm2以上6.7mg/cm2以下に設定されている。
次に、金属板122をセラミックス基板111の一方の面側に積層し、かつ、金属板123をセラミックス基板111の他方の面側に積層する。このとき、図11に示すように、金属板122、123のうち第2固着層124、125形成された面がセラミックス基板111を向くように積層する。すなわち、金属板122、123とセラミックス基板111との間に第2固着層124、125を介在させているのである。このようにして積層体120を形成する。
次に、積層工程S13において形成された積層体120を、その積層方向に加圧(圧力1〜5kgf/cm2)した状態で加熱炉内に装入して加熱し、金属板122、123とセラミックス基板111との界面にそれぞれ溶融金属領域を形成する。この溶融金属領域1は、第2固着層124、125のCu及びGeが金属板122、123側に拡散することによって、金属板122、123の第2固着層124、125近傍のCu濃度、Ge濃度が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
また、この加熱工程S14により、金属板122の固着層122Aに含有された添加元素(本実施形態ではNi)が金属板122の他方の面側に向けて拡散していく。
なお、本実施形態では、加熱炉内の雰囲気をN2ガス雰囲気としており、加熱温度は、550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、溶融金属領域中のCu、Geが、さらに金属板122、123側へと拡散していくことになる。これにより、溶融金属領域であった部分のCu濃度、Ge濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していくことになる。つまり、セラミックス基板111と金属板122、123とは、いわゆる等温拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
また、回路層112においては、固着層122Aに含有された添加元素が拡散することで表面硬化層112A及び本体層112Bが形成される。また、第2固着層124に含まれるCu及びGeが拡散することで接合近傍層112Cが形成される。
そして、セラミックス基板111がAl2O3で構成されており、金属板122,123とセラミックス基板111との接合界面130に、活性元素としてHfが介在しており、より具体的には、接合界面130にHfと酸素とを含む酸素化合物からなる酸化物層132が形成されているので、この酸化物層132によってセラミックス基板111と金属板122,123との接合強度の向上を図ることができる。なお、この酸化物層132は、活性元素であるHfとセラミックス基板111の酸素との反応によって生成していることからセラミックス基板111との接合強度は極めて高い。
本実施形態であるパワーモジュール用基板210は、セラミックス基板211と、このセラミックス基板211の一方の面(図12において上面)に配設された回路層212と、セラミックス基板211の他方の面(図12において下面)に配設された金属層213とを備えている。
金属層213は、セラミックス基板211の他方の面に金属板が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層213は、回路層212と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板がセラミックス基板211に接合されることで形成されている。
表面硬化層212Aは、回路層212の一方の面に露呈し、この一方の面から他方の面側(図12において下側)に向けて延在しており、回路層212の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsに対して80%以上のインデンテーション硬度を有する領域である。ここで、本実施形態では、回路層212の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定されている。
本体層212Bは、そのインデンテーション硬度Hbが前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされた領域となる。
ここで、本実施形態では、表面硬化層212Aの厚さtsが1μm以上300μm以下とされ、本体層212Bの厚さtbが100μm以上1500μm以下、界面近傍層212Cの厚さtcが50μm以上300μm以下とされている。
一方、本体層212Bでは、上述の添加元素の含有量が少ないことからAlの純度が高く、変形抵抗が小さいままである。
詳述すると、界面近傍層212Cにおいては、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca及びLiから選択される1種又は2種以上の第2添加元素が固溶している。ここで、この界面近傍層212Cの前記第2添加元素濃度の合計が、0.05質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、界面近傍層212Cの前記第2添加元素濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)で、接合界面から50μmまでの範囲内を5点測定した平均値である。このEPMA分析では、スポット径の全体が接合界面から50μmまでの範囲内に入るようにして分析を実施した。
まず、回路層212となる金属板の一方の面に、スパッタリングによって、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する。
本実施形態では、添加元素としてNiを固着しており、その固着量を0.05mg/cm2以上2.0mg/cm2以下に設定している。
次に、回路層212となる金属板及び金属層213となる金属板のそれぞれの接合面に、スパッタリングによって、第2添加元素であるSi,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca及びLiから選択される1種又は2種以上の第2添加元素を固着し、第2固着層を形成する。
本実施形態では、第2添加元素としてCu及びSiを用いており、第2固着層におけるCu量は0.08mg/cm2以上2.7mg/cm2以下、Si量は0.002mg/cm2以上1.2mg/cm2以下に設定されている。
次に、セラミックス基板211と金属板を積層する。このとき、金属板のうち第2固着層が形成された面がセラミックス基板211を向くように積層する。すなわち、金属板とセラミックス基板211との間に第2固着層を介在させているのである。このようにして積層体を形成する。
次に、積層工程S23において形成された積層体を、その積層方向に加圧(圧力1〜5kgf/cm2)した状態で加熱炉内に装入して加熱し、金属板とセラミックス基板211との界面にそれぞれ溶融金属領域を形成する。この溶融金属領域は、第2固着層のCu及びSiが金属板側に拡散することによって、金属板の第2固着層近傍のCu濃度、Si濃度が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
そして、この加熱工程S24により、回路層212となる金属板の固着層に含有された添加元素(本実施形態ではNi)が金属板の他方の面側に向けて拡散していく。
なお、本実施形態では、加熱炉内の雰囲気をN2ガス雰囲気としており、加熱温度は、550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく。すると、溶融金属領域中のCu、Siが、さらに金属板側へと拡散していくことになる。これにより、溶融金属領域であった部分のCu濃度、Si濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していくことになる。つまり、セラミックス基板211と金属板とは、いわゆる等温拡散接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)によって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
また、回路層212においては、固着層に含有された添加元素が拡散することで表面硬化層212A及び本体層212Bが形成される。また、第2固着層に含まれるCu及びSiが拡散することで接合近傍層212Cが形成される。
本実施形態であるパワーモジュール用基板310は、セラミックス基板311と、このセラミックス基板311の一方の面(図14において上面)に配設された回路層312と、セラミックス基板311の他方の面(図14において下面)に配設された金属層313とを備えている。
金属層313は、セラミックス基板311の他方の面に金属板が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層313は、回路層312と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板がセラミックス基板311に接合されることで形成されている。
表面硬化層312Aは、回路層312の一方の面に露呈し、この一方の面から他方の面側(図14において下側)に向けて延在しており、回路層312の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsに対して80%以上のインデンテーション硬度を有する領域である。ここで、本実施形態では、回路層312の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定されている。
本体層312Bは、そのインデンテーション硬度Hbが前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされた領域となる。
ここで、本実施形態では、表面硬化層312Aの厚さtsが1μm以上300μm以下とされ、本体層312Bの厚さtbが100μm以上1500μm以下、界面近傍層312Cの厚さtcが50μm以上300μm以下とされている。
一方、本体層312Bでは、上述の添加元素の含有量が少ないことからAlの純度が高く、変形抵抗が小さいままである。
詳述すると、界面近傍層312Cにおいては、Al−Si系のろう材に含まれるSiが固溶している。
まず、セラミックス基板311の一面側に、回路層312となる金属板を、厚さ15〜30μm(本実施形態では20μm)のろう材箔を介して積層し、セラミックス基板311の他面側に、金属層13となる金属板を厚さ15〜30μm(本実施形態では20μm)のろう材箔を介して積層して、積層体を形成する。なお、本実施形態においては、ろう材箔は、融点降下元素であるSiを含有したAl−Si系のろう材とされている。
次に、積層工程S31において形成された積層体を、その積層方向に加圧(圧力1〜5kgf/cm2)した状態で加熱炉内に装入して加熱し、金属板とセラミックス基板311との界面にそれぞれ溶融金属領域を形成する。
なお、本実施形態では、加熱炉内の雰囲気をN2ガス雰囲気としており、加熱温度は、550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
次に、積層体を冷却することによって溶融金属領域を凝固させ、セラミックス基板311と金属板とを接合する。このようにして、回路層312及び金属層313となる金属板とセラミックス基板311とが接合される。このとき、ろう材箔に含まれるSiが拡散することで、回路層312には、接合近傍層312Cが形成される。
次に、回路層312の一方の面に、スパッタリングによって、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する。
本実施形態では、添加元素としてNiを固着しており、その固着量を0.05mg/cm2以上2.0mg/cm2以下に設定している。
そして、固着層が形成された回路層312を、接合されたセラミックス基板311及び金属層313とともに、加熱炉によって加熱する。このときの加熱温度は、上述の接合加熱工程S32よりも低い温度とされる。
この加熱工程S35により、金属板の固着層に含有された添加元素(本実施形態では )が金属板の他方の面側に向けて拡散していく。これにより、回路層312には、固着層に含有された添加元素が拡散することで表面硬化層312A及び本体層312Bが形成され、本実施形態であるパワーモジュール用基板310が製出される。
本実施形態であるパワーモジュール用基板410は、セラミックス基板411と、このセラミックス基板411の一方の面(図16において上面)に配設された回路層412と、セラミックス基板411の他方の面(図16において下面)に配設された金属層413とを備えている。
回路層412は、セラミックス基板411の一方の面に導電性を有する金属板が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、回路層412は、純度が99.99%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板がセラミックス基板411に接合されることにより形成されている。
金属層413は、セラミックス基板411の他方の面に金属板が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層413は、回路層412と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板がセラミックス基板411に接合されることで形成されている。
表面硬化層412Aは、回路層412の一方の面に露呈し、この一方の面から他方の面側(図16において下側)に向けて延在しており、回路層412の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsに対して80%以上のインデンテーション硬度を有する領域である。ここで、本実施形態では、回路層412の一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定されている。
本体層412Bは、そのインデンテーション硬度Hbが前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされた領域となる。
ここで、本実施形態では、表面硬化層412Aの厚さtsが1μm以上300μm以下とされ、本体層412Bの厚さtbが100μm以上1500μm以下、界面近傍層412Cの厚さtcが50μm以上300μm以下とされている。
一方、本体層412Bでは、上述の添加元素の含有量が少ないことからAlの純度が高く、変形抵抗が小さいままである。
まず、固着層となる金属板の一方の面に、スパッタリングによって、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する。
本実施形態では、添加元素としてNiを固着しており、その固着量を0.05mg/cm2以上2.0mg/cm2以下に設定している。
次に、固着層が形成された金属板を加熱炉によって加熱する。このときの加熱温度は、150℃〜600℃に設定されている。
この加熱工程S42により、金属板の固着層に含有された添加元素(本実施形態ではNi)が金属板の他方の面側に向けて拡散していく。これにより、回路層となる金属板には、表面硬化層412A、本体層412Bが形成されることになる。
次に、セラミックス基板411の一面側に、添加元素を拡散させた金属板を、厚さ15〜30μm(本実施形態では20μm)のろう材箔を介して積層し、セラミックス基板311の他面側に、金属層413となる金属板を厚さ15〜30μm(本実施形態では20μm)のろう材箔を介して積層して、積層体を形成する。なお、本実施形態においては、ろう材箔は、融点降下元素であるSiを含有したAl−Si系のろう材とされている。
次に、積層工程S43において形成された積層体を、その積層方向に加圧(圧力1〜5kgf/cm2)した状態で加熱炉内に装入して加熱し、金属板とセラミックス基板411との界面にそれぞれ溶融金属領域を形成する。
なお、本実施形態では、加熱炉内の雰囲気をN2ガス雰囲気としており、加熱温度は、550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。すなわち、前述の加熱工程S42よりも低い温度とされているのである。
次に、積層体を冷却することによって溶融金属層を凝固させ、セラミックス基板411と金属板とを接合する。このようにして、回路層412及び金属層413となる金属板とセラミックス基板411とが接合される。このとき、ろう材箔に含まれるSiが拡散することで、回路層412には、接合近傍層412Cが形成される。
このようにして、本実施形態であるパワーモジュール用基板410が製出される。
例えば、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素をスパッタによって固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、めっき、蒸着、CVD、コールドスプレー、又は、前記添加元素を含有する粉末が分散されたペースト若しくはインクの塗布によって添加元素を固着させてもよい。
まず、厚さ0.6mmの4Nアルミニウムからなる金属板の一方の面に、表1に示す添加元素を固着し、加熱することで表面硬化層及び本体層を形成した。表1に、添加元素の固着量、加熱条件を示す。
また、表面硬化層を形成しない4Nアルミニウムからなる金属板を比較例1とした。さらに、Siを1質量%含むアルミニウム合金からなる金属板を比較例2とした。これら比較例1A、2Aについても、上述の表面硬化層の一方の面に相当する位置、及び、本体層に相当する位置で、それぞれインデンテーション硬度を測定した。結果を表2に示す。
ここで、表1及び表2の試料2、9の金属板を用いて回路層を形成したものを本発明例1、2とした。
また、表2の比較例1Aの金属板を用いて回路層を形成したものを比較例1Bとした。さらに、表2の比較例2Aの金属板を用いて回路層を形成したものを比較例2Bとした。
なお、うねりについては、半径が2μmの球状先端を有し、テーパ角が90°の円錐を触針として用い、2.5(mm/基準長さ)×5区間の距離を、荷重4mN,速度1mm/sで表面を走査して区間平均の粗さ曲線を測定し、その十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)を算出した。
また、接合率は、以下の式で算出した。ここで、「初期接合面積」とは、接合前における接合すべき面積のことである。
接合率 = (初期接合面積−剥離面積)/初期接合面積
これに対して、表面硬化層を形成した本発明例1、2においては、回路層表面のうねりが抑制され、かつ、接合率も高かった。
3 半導体チップ(電子部品)
10、10、210、310、410 パワーモジュール用基板
11、111、211、311、411 セラミックス基板
12、112、212、312、412 回路層
12A、112A、212A、312A、412A 表面硬化層
12B、112B、212B、312B、412B 本体層
40、140 ヒートシンク
Claims (12)
- セラミックス基板の一面に、アルミニウムからなる回路層が配設され、この回路層の一方の面上に電子部品が配設されるパワーモジュール用基板であって、
前記回路層は、本体層と、前記一方の面側に露呈するように配置された表面硬化層と、を有しており、
前記回路層の前記一方の面におけるインデンテーション硬度Hsが50mgf/μm2以上200mgf/μm2以下の範囲内に設定され、
前記回路層のうち、前記インデンテーション硬度Hsの80%以上のインデンテーション硬度を有する領域が前記表面硬化層とされており、
前記表面硬化層は、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を含有しており、
前記本体層のインデンテーション硬度Hbが、前記インデンテーション硬度Hsの80%未満とされていることを特徴とするパワーモジュール用基板。 - 前記表面硬化層の厚さが1μm以上300μm以下とされており、前記本体層の厚さが100μm以上1500μm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板。
- 前記表面硬化層における前記添加元素の含有量の合計が0.2atom%以上10atom%以下とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
- 前記セラミックス基板がAlN,Si3N4又はAl2O3で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたパワーモジュール用基板を製造するパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記回路層となる金属板の前記一方の面に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する固着工程と、
前記回路層を加熱して、前記回路層の内部に向けて前記添加元素を拡散させることにより、前記回路層の前記一方の面に表面硬化層を形成する加熱工程と、
を備えていることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたパワーモジュール用基板を製造するパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記回路層となる金属板の一方の面に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する固着工程と、
前記金属板の他方の面側に、ろう材を介して前記セラミックス基板を積層する積層工程と、
積層された前記セラミックスと前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板と前記金属板との界面に溶融金属領域を形成する加熱工程と、
この溶融金属領域を凝固させることによって、前記セラミックス基板と前記金属板とを接合する凝固工程と、を有し、
前記加熱工程において、前記固着層の前記添加元素を、前記回路層の内部に向けて拡散させることにより、前記回路層の前記一方の面に表面硬化層を形成することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたパワーモジュール用基板を製造するパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記回路層となる金属板の一方の面に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する固着工程と、
前記金属板の他方の面又は前記セラミックス基板の一面のうちの少なくとも一方に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca及びLiから選択される1種又は2種以上の第2添加元素を固着して第2固着層を形成する第2固着工程と、
前記第2固着層を介して、前記セラミックス基板と前記金属板とを積層する積層工程と、
積層された前記セラミックス基板と前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板と前記金属板との界面に溶融金属領域を形成する加熱工程と、
この溶融金属領域を凝固させることによって、前記セラミックス基板と前記金属板とを接合する凝固工程と、を有し、
前記加熱工程において、前記固着層の前記添加元素を、前記回路層の内部に向けて拡散させることにより、前記回路層の前記一方の面に表面硬化層を形成することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたパワーモジュール用基板を製造するパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記回路層となる金属板の一方の面に、Si,Cu,Zn,Ge,Ag,Mg,Ca,Li及びNiから選択される1種又は2種以上の添加元素を固着し、この添加元素を含有する固着層を形成する固着工程と、
前記金属板の他方の面又は前記セラミックス基板の一面のうちの少なくとも一方に、Si,Cu,Ag及びGeから選択される1種又は2種以上の第2添加元素と、Ti,Zr,Hf,Ta,Nb及びMoから選択される1種又は2種以上の活性元素と、を固着し、これら第2添加元素及び活性元素を含有する第2固着層を形成する第2固着工程と、
前記第2固着層を介して、前記セラミックス基板と前記金属板とを積層する積層工程と、
積層された前記セラミックスと前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板と前記金属板との界面に溶融金属領域を形成する加熱工程と、
この溶融金属領域を凝固させることによって、前記セラミックス基板と前記金属板とを接合する凝固工程と、を有し、
前記金属板に前記添加元素を拡散させることにより、前記金属板の表層に金属硬化層を形成することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 - 前記固着工程では、前記添加元素とともにAlを固着させることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
- 前記固着工程は、めっき、蒸着、CVD、スパッタリング、コールドスプレー、又は、前記添加元素を含有する粉末が分散されたペースト若しくはインクの塗布によって前記添加元素を固着し、前記固着層を形成することを特徴とする請求項5から請求項9のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板を冷却するヒートシンクと、を備えたことを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板上に搭載される電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
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