JP2008047803A - パワー素子搭載用基板およびパワー素子搭載用基板の製造方法並びにパワーモジュール - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミックス板11の表面に回路層12がろう付けされるとともに、この回路層12の表面12bに純Cu若しくはCu合金からなるヒートブロック13がはんだ接合されてなり、このヒートブロック13の表面にパワー素子17がはんだ接合されるパワー素子搭載用基板15であって、回路層12は、全体の平均純度が98.0wt%以上99.9wt%以下のAl合金で形成されるとともに、ヒートブロック13がはんだ接合された表面12b側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上とされ、かつセラミックス板11がろう付けされた裏面12a側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満となっている。
【選択図】図1
Description
この発明によれば、回路層の前記裏面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満となっているので、熱サイクル使用時に、セラミックス板および回路層の各熱膨張係数の差に起因して、これらの接合界面に応力が生じようとした場合においても、回路層の裏面側を塑性変形させることによりこの応力を吸収させることが可能になる。これにより、前記接合界面に作用する応力を抑えることが可能になり、熱サイクル使用時におけるセラミックス板と回路層との接合信頼性を向上させることができる。
一方、回路層の前記表面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上となっているので、熱サイクル使用時に回路層が繰り返し熱変形するのに伴い、徐々にこの表面側を硬化させることが可能になり、この部分に発生する塑性変形量を抑えることができる。これにより、回路層の表面とヒートブロックとを接合するはんだ層に作用する、熱サイクル使用時の回路層の塑性変形に起因した負荷を低減することが可能になり、熱サイクル使用時に、このはんだ層にクラックが発生してもその進展を抑えることができる。
また、回路層とパワー素子との間にヒートブロックが介在しているので、パワー素子からはんだ層を介してヒートブロックに伝導した熱を即座にその沿面方向に分散させることが可能になり、熱サイクル使用時に、このパワー素子の温度が上昇するのを抑えることができる。
この場合、前記の作用効果が確実に奏効されることになる。
この発明では、前記積層体を積層方向に加圧してろう付けするので、セラミックス板の表面と回路層部材とを良好にろう付けすることが可能になり、回路層部材においてセラミックス板とのろう付け面側に含まれるFeを、前記接合界面で溶融しているろう材中に良好に溶解させることができる。したがって、回路層の前記表面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上とされ、かつ回路層の前記裏面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満とされたパワー素子搭載用基板を確実に形成することができる。
このパワーモジュール10は、セラミックス板11の表面に回路層12がろう付けされるとともに、この回路層12の表面12bに純Cu若しくはCu合金からなるヒートブロック13が第1はんだ層14を介してはんだ接合されたパワー素子搭載用基板15と、ヒートブロック13の表面に第2はんだ層16を介してはんだ接合された半導体チップ(パワー素子)17とを備えている。
そして、このようにして特定された前記裏面12a側および前記表面12b側それぞれについて、EPMA装置において加速電圧を15kVとし、かつ電流値を5×10−8Aとして、スポットサイズを30μmに設定し、前記断面における任意の10箇所で測定し、得られた測定値の平均値を算出することにより、前記裏面12a側および前記表面12b側それぞれに含まれるFeの濃度を求めた。
また、回路層12全体の平均純度は、まず、回路層12を、水、フッ化水素酸および硝酸がそれぞれ同量ずつ混入された水浴中(約100℃)に浸して分解し、その後、この分解した試料を、ICP−AES法(誘導結合プラズマ−発光分析法)を用いることにより測定した。
まず、回路層12と同形同大の回路層部材を形成する。ここで、回路層部材は、その全体の平均で、Feを0.05wt%以上1.0wt%以下含有する純度が98.5wt%以上99.95wt%以下のAl合金からなっている。その後、セラミックス板11の表面にろう材箔と回路層部材とをこの順に配置する。また、セラミックス板11の裏面にろう材箔を介して冷却器18を配置する。
以上より、セラミックス板11において、その表面にろう材箔と回路層部材とがこの順に配置され、裏面に前記ろう材箔と冷却器18とがこの順に配置された積層体を形成する。
その後、回路層12の表面12bにヒートブロック13を第1はんだ層14を介してはんだ接合することにより、パワー素子搭載用基板15を形成する。
例えば、回路層部材は、母材を打ち抜いて形成したり、あるいはいわゆるエッチング法により形成してもよい。
また、前記実施形態では、パワー素子搭載用基板15の冷却器18として、その内部に複数の冷媒供給路18aを有する、いわゆる多穴管を示したが、これに代えて、例えば、冷媒供給路18aを形成しなくてもよいし、あるいは冷媒供給路18aを1つだけ形成してもよいし、さらには冷媒供給路18aの内面に冷却フィンを設けてもよい。さらにまた、パワー素子搭載用基板に冷却器18を設けなくてもよい。
まず、材質については、回路層部材および冷却器18を、Feを約0.3wt%含有する純度が99.5wt%のAl合金、ヒートブロック13を純度が99.99wt%のOFC(無酸素銅)、回路層部材および冷却器18とセラミックス板11とを接合するろう材をAl−Si系(Alが92.5wt%、Siが7.5wt%)、第1はんだ層14をSn−Ag−Cu系、セラミックス板11をAlNでそれぞれ形成した。
厚さについては、回路層部材(回路層12)を0.6mm、ろう材箔を約30μm、セラミックス板11を0.635mm、ヒートブロック13を1.5mmとした。なお、回路層部材(回路層12)は平面視四角形とされ、縦および横の寸法をそれぞれ、17mmおよび36mmとした。また、セラミックス板11も平面視四角形とされ、縦および横の寸法をそれぞれ、20mmおよび40mmとした。さらに、ヒートブロック13も平面視四角形とされ、縦および横の寸法をそれぞれ、15mmおよび30mmとした。
そして、前記積層体を600℃〜650℃の真空中(真空度1×10−5Torr(1.33×10−3Pa)以下)に置いて、約1時間、積層方向に0.098MPa〜0.294MPaで加圧し、セラミックス板11の表面に回路層部材をろう付けして回路層12を形成するとともに、セラミックス板11の裏面に冷却器18をろう付けした。
その後、回路層12の表面12bに第1はんだ層14を介してヒートブロック13を接合してパワー素子搭載用基板15を形成した。
この図より、回路層12においてその裏面12aから表面12bに向かって0.15mmまでの領域(回路層12の厚さの約25%に相当)ではFeの濃度が0.1wt%未満で低くなっており、それより表面12b側ではFeの濃度が0.1wt%以上で高くなっていることが確認される。
回路層を形成する回路層部材において、Alの純度、厚さおよびFeの濃度のうち少なくとも1つを異ならせて7種類のパワー素子搭載用基板を形成し、各パワー素子搭載用基板の回路層において、セラミックス板がろう付けされた裏面側に含まれるFeの濃度、ヒートブロックがはんだ接合された表面側に含まれるFeの濃度、前記裏面側の厚さ、および前記表面側の厚さのうち少なくとも1つを異ならせた。そして、これらのパワー素子搭載用基板それぞれのヒートブロックの表面に、同一の性能を有する半導体チップをSn−Ag−Cu系の無鉛はんだではんだ接合したものを、−40℃から105℃に約3分間で昇温した後、105℃から−40℃に約10分間で降温する温度履歴を1サイクルとした熱サイクルを2000サイクル付与した。
また、前記撮像データに基づいて、回路層の表面とヒートブロックとを接合する第1はんだ層の横断面積に対するクラック進展面積の比率、つまりクラック進展率を算出した。
さらに、前記撮像データに基づいて、ヒートブロックと半導体チップとを接合する第2はんだ層の横断面積に対するクラック進展面積の比率、つまりクラック進展率を算出した。
結果を表1に示す。
11 セラミックス板
12 回路層
12a 裏面
12b 表面
13 ヒートブロック
15 パワー素子搭載用基板
16 半導体チップ(パワー素子)
Claims (4)
- セラミックス板の表面に回路層がろう付けされるとともに、この回路層の表面に純Cu若しくはCu合金からなるヒートブロックがはんだ接合されてなり、このヒートブロックの表面にパワー素子がはんだ接合されるパワー素子搭載用基板であって、
前記回路層は、全体の平均純度が98.0wt%以上99.9wt%以下のAl合金で形成されるとともに、前記ヒートブロックがはんだ接合された表面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%以上とされ、かつ前記セラミックス板がろう付けされた裏面側に含まれるFeの濃度が0.1wt%未満とされていることを特徴とするパワー素子搭載用基板。 - 請求項1記載のパワー素子搭載用基板において、
前記回路層の厚さは0.4mm以上とされるとともに、前記回路層の裏面側は、回路層において、この裏面から前記表面に向けて0.04mm以上かつ回路層の厚さの半分以下までに位置する部分とされ、残部が前記回路層の表面側となっていることを特徴とするパワー素子搭載用基板。 - セラミックス板の表面に回路層がろう付けされるとともに、この回路層の表面に純Cu若しくはCu合金からなるヒートブロックがはんだ接合されてなり、このヒートブロックの表面にパワー素子がはんだ接合されるパワー素子搭載用基板の製造方法であって、
セラミックス板の表面に、Al系のろう材箔と、Feを0.05wt%以上1.0wt%以下含有する純度が98.5wt%以上99.95wt%以下のAl合金からなる回路層部材とをこの順に配置して積層体とした後に、
この積層体を積層方向に加圧した状態で加熱し、ろう材箔を溶融させて、セラミックス板の表面に回路層部材をろう付けして前記回路層を形成し、
その後、前記回路層の表面に前記ヒートブロックをはんだ接合することにより、請求項1または2に記載のパワー素子搭載用基板を形成することを特徴とするパワー素子搭載用基板の製造方法。 - セラミックス板の表面に回路層がろう付けされるとともに、この回路層の表面に純Cu若しくはCu合金からなるヒートブロックがはんだ接合されたパワー素子搭載用基板と、前記ヒートブロックの表面にはんだ接合されたパワー素子とを備えたパワーモジュールであって、
前記パワー素子搭載用基板が請求項1または2に記載のパワー素子搭載用基板であることを特徴とするパワーモジュール。
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