以下、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置について説明する。まず、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする処理の概略について説明する。図1には、補器毎配線情報に記述された電気部品を繋ぐ回路線の概略図(図1(a))、および部位毎コネクタ・配線情報に記述された電気部品を繋ぐ電線の接続の概略図(図1(b)〜図1(f))を示している。図2には、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする処理のフローチャートを示している。
[多階層検査の概要]
[背景技術]において説明したように、補器毎配線情報には、信号線、電源線およびアース線の電線の始点と終点がどの電気部品のどの端子に接続されるか、および、どの電線に結線されるのか、などの回路線としての接続情報が示されている。図1(a)には、電気部品である2つのECUが記述されており、うち一方のECUの端子「A01」が他方のECUの端子「B01」に回路線を介して接続されることが記述されている。本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、まず、補器毎配線情報に記述されている、回路線によって繋がれた第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)を、該補器毎配線情報から参照する(参照ステップ:S201)。
他方、[背景技術]において説明したように、部位毎コネクタ・配線情報には、実体配線図に記述された電線を含みつつ(すなわち、求められる仕様を満たしつつ)、対象となる車両の分割領域毎に配索可能なワイヤハーネスが記述されている。本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、部位毎コネクタ・配線情報を参照して、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に基づいて、該部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)に一端が接続された第1番目の電線を特定する(第1特定ステップ:S202)。尚、部位毎コネクタ・配線情報から第1番目の電線を特定することができない場合も想定されるが(S210、N)、この場合については後述する〔単階層検査のアルゴリズム〕を参照されたい。[多階層検査の概要]では、部位毎コネクタ・配線情報から第1番目の電線を特定することができた場合について以降説明する。
図1(b)〜図1(f)では、第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)に一端が接続された電線の線幅を、図1(a)の回路線よりも広くしている。これにより、図1では、回路線と電線とを区分けしている。ところで、2つの電気部品は複数の分割領域を跨いで配置されることが多々あり、この場合、各分割領域に配索された各ワイヤハーネスを繋ぎ合わせてその2つの電気部品の端子間を接続することになる。このため、第1特定ステップにて特定した第1番目の電線W1の他端が、図1(b)に示すように同一の分割領域1内において第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)に接続されているとは限らない。
そこでこのような事情を踏まえ、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、まず、第1番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致するか否かを判別する(第1判別ステップ:S203)。図1(b)に示すように、第1番目の電線W1の他端が同一の分割領域1内において第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)に接続されており、補器毎配線情報に記述されている第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致すると判別されれば(S203、Y)、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)は導通が図られているとみなし(導通成功:S207)、図1(a)の回路線に関する正否判定工程を終了する。
他方、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第1判別ステップにて、第1番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致しない場合(S203、N)がある。この場合、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、部位毎コネクタ・配線情報を参照して、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に基づいて、該部位毎コネクタ・配線情報に記述されている該第1番目の電線の他端に一端が接続された第2番目の電線を特定する(第2特定ステップ:S204)。第2特定ステップを具体的に説明すると、例えば、図1(c)に示すように、第1番目の電線W1の他端に接続された補器(図1(c)では電線W1の他端に端子「C01」が接続され、その端子「C01」がコネクタC1に収容されている。)を分割領域1に配索されるワイヤハーネスの情報から特定し、コネクタC1に嵌合される補器(図1(c)ではコネクタC2)を、分割領域1に隣り合う分割領域2に配索されるワイヤハーネスの情報から特定し、コネクタC2に収容された端子のうちの端子「C01」に接続される端子「C02」が一端に接続された第2番目の電線W2を特定する。
さらに、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第2番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致するか否かを判別する(第2判別ステップ:S205)。図1(c)に示すように、第2番目の電線W2の他端が、分割領域2において第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)に接続されており、補器毎配線情報に記述されている第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致すると判別されれば(S205、Y)、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)は導通が図られているとみなし(導通成功:S207)、図1(a)の回路線に関する正否判定工程を終了する。
ところで、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第2判別ステップにて、第2番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致しない場合もある。この場合、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、部位毎コネクタ・配線情報を参照して、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に基づいて、該部位毎コネクタ・配線情報に記述されている該第2番目の電線の他端に一端が接続された第3番目の電線を特定する(第3特定ステップ:S204)。第3特定ステップを具体的に説明すると、例えば、図1(d)に示すように、第2番目の電線W2の他端に接続された補器(図1(d)では電線W2の他端に端子「C03」が接続され、その端子「C03」がコネクタC3に収容されている。)を分割領域2に配索されるワイヤハーネスの情報から特定し、コネクタC3に嵌合される補器(図1(d)ではコネクタC4)を、分割領域2に隣り合う分割領域3に配索されるワイヤハーネスの情報から特定し、コネクタC4に収容された端子のうちの端子「C03」に接続される端子「C04」が一端に接続された第3番目の電線W3を特定する。
さらに、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第3番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致するか否かを判別する(第3判別ステップ:S205)。図1(d)に示すように、第3番目の電線W3の他端が、分割領域3において第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)に接続されており、補器毎配線情報に記述されている第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致すると判別されれば、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)は導通が図られているとみなし(導通成功:S207)、図1(a)の回路線に関する正否判定工程を終了する。
第3判別ステップ(S205)にて、第3番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致しない場合には、以降、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に第W4、W5、・・・Wn番目の電線W4、W5、・・・Wnについての情報がある限り、第4、第5、・・・第n特定ステップ(S204)、および、第4、第5、・・・第n判別ステップ(S205)をnを繰り上げ(S209)、順次実施する(ただし、nは2以上の整数。)。
一方、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に電線W(n−1)に接続される電線Wnについての情報が無くなり(S206、N。ただし、nは2以上の整数)、第n特定ステップにて第n番目の電線Wnを特定できず、したがって、第(n−1)番目の電線W(n−1)が補器毎配線情報に記述されている第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致しない場合には、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)は導通が図られていないとみなし(導通失敗:S208)、図1(a)の回路線に関する正否判定工程を終了する。
尚、図1(a)〜図1(d)では、主に、各分割領域に配索された各ワイヤハーネスのコネクタを繋ぎ合わせて複数の分割領域に跨って連結された電線を形成し、2つの電気部品の端子間を該電線によって接続する場合についてその概略を説明した。このようにコネクタによって複数の分割領域に跨って電線を連結させる以外に、JBまたはJCを介して、電線を連結させる場合もある(図1(e)参照)。また、一つの分割領域内においても複数本の電線が連結されている場合もある(図1(f)参照)。この2つの場合についても、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする処理の概略について説明する。まず、JBを介して電線を連結させる場合について説明する。第1特定ステップ(S202)および第1判別ステップ(S203)は、上述した、コネクタによって複数の分割領域に跨って電線を連結させる場合と同様であるため、その説明を省略する。また、JCを介して電線を連結させる場合も、JBを介して電線を接続させる場合と考え方は共通であるため、その説明を省略する。
本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第1判別ステップ(S203)にて、第1番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致しない場合(S203、N)を説明する。この場合、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、部位毎コネクタ・配線情報を参照して、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に基づいて、該部位毎コネクタ・配線情報に記述されている該第1番目の電線の他端に一端が接続された第2番目の電線を特定する(第2特定ステップ:S204)。第2特定ステップを具体的に説明すると、図1(e)に示すように、第1番目の電線W1の他端に接続された補器(図1(e)では電線W1の他端に端子「#01」が接続され、その端子「#01」がコネクタCaに収容されている。)を分割領域1に配索されるワイヤハーネスの情報から特定し、コネクタCaに嵌合されるコネクタ嵌合位置Aを備えるJBを対応表(対応表の詳細については〔JB検査の詳細〕にて後述する。)から特定し、そのJB内で電線やバスバーなどを介してコネクタ嵌合位置Aに接続されるコネクタ嵌合位置B、Dを特定し、各コネクタ嵌合位置B、Dが嵌合する各コネクタCb、Cdに収容された端子「%01」、「#03」が一端に接続された第2番目の電線W21、W22を特定する。
さらに、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第2番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致するか否かを判別する(第2判別ステップ:S205)。図1(e)に示すように、第2番目の電線W21またはW22の他端のいずれかが、分割領域2において第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)に接続されており、補器毎配線情報に記述されている第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致すると判別されれば、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)は導通が図られているとみなし(導通成功:S207)、図1(e)の回路線に関する正否判定工程を終了する。
JB(またはJC)を介して電線を連結させる場合は、一つの電線に連結される電線が複数あるため、これらの複数の電線それぞれにおいて、その他端が回路線の終点に一致しないか判別する必要がある。この点が、コネクタによって複数の分割領域に跨って電線を連結させる場合とは異なる。
続いて、一つの分割領域内においても複数本の電線が連結されている場合に、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする処理の概略について説明する。第1特定ステップ(S202)および第1判別ステップ(S203)は、上述した、コネクタによって複数の分割領域に跨って電線を連結させる場合と同様であるため、その説明を省略する。
本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第1判別ステップ(S203)にて、第1番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致しない場合(S203、N)を説明する。この場合、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、部位毎コネクタ・配線情報を参照して、部位毎コネクタ・配線情報に記述されたこのワイヤハーネスの情報に基づいて、該部位毎コネクタ・配線情報に記述されている該第1番目の電線の他端に一端が接続された第2番目の電線を特定する(第2特定ステップ:S204)。第2特定ステップを具体的に説明すると、例えば、図1(f)に示すように、第1番目の電線W1の他端に接続された連結箇所(図1(f)では電線W1の他端は、例えば溶接や突き合わせ圧着されることによって他の電線の一端と連結されており、その溶接や突き合わせ圧着箇所を識別する番号として「%E1」が割り当てられている。)を分割領域1に配索されるワイヤハーネスの情報から特定し、連結箇所「%E1」が一端に接続された第2番目の電線W2を特定する。
さらに、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、第2番目の電線の他端に接続された端子が第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致するか否かを判別する(第2判別ステップ:S205)。図1(f)に示すように、第2番目の電線W2の他端が、分割領域1において第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)に接続されており、補器毎配線情報に記述されている第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)と一致すると判別されれば、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている第1の電気部品(ECU)の第1の端子(「A01」)と第2の電気部品(ECU)の第2の端子(「B01」)は導通が図られているとみなし(導通成功:S207)、図1(f)の回路線に関する正否判定工程を終了する。
以上、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする処理の概略について説明した。本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、図1(a)〜図1(f)を参照して説明したように、補器毎配線情報を参照して回路線の始点−終点を特定し、部位毎コネクタ・配線情報を参照して特定した、回路線の始点に一端が接続された第1番目の電線の他端、または、第(n−1)番目の電線の他端に一端が接続された第n番目の他端(ただし、nは2以上の整数。)が回路線の終点に一致するか、あるいは、第n番目の電線Wnが存在せず、したがって第(n−1)番目の電線W(n−1)が回路線の終点に一致しないか、を帰納的に解析するものである。このように、第1番目の電線W1、第2番目の電線W2、・・・、第N番目の電線WNと電線を特定しながらそれらの電線の他端が回路線の終点に一致するか否かを判別する処理を総して「多階層検査」と称する。また、その「多階層検査」のうち、回路線の始点に一端が接続された第1番目の電線W1を特定し(第1特定ステップ:S202)、その電線W1の他端が回路線の終点に一致するか否かを判別する(第1判別ステップ:S203)処理を「単階層検査」と称し、第n番目の電線Wn(ただし、nは2以上の整数。)を特定し(第n特定ステップ:S204)、その電線Wnの他端が回路線の終点に一致するか否かを判別する(第n判別ステップ:S205)処理をS206およびS209の処理を含めて「n階層検査」と称する。例えば、図1(b)の場合は単階層検査で第1番目の電線W1の他端が回路線の終点に一致したことになり、図1(c)、図1(e)および図1(f)の場合は2階層検査で検査が第2番目の電線W2(図1(e)の場合は第2番目の電線W22)の他端が回路線の終点に一致したことになり、図1(d)の場合は3階層検査で第3番目の電線W3の他端が回路線の終点に一致したことになる。
以降、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行する多階層検査の詳細について説明する。まず、図3に示す、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置の機能ブロック図を参照して、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置の構成を説明する。
[ワイヤハーネス導通検査装置の構成]
本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置は、入力部311、データベース部312、プログラム記憶部313、データ記憶部314、表示部315、処理部316を含んで構成される。本発明のワイヤハーネス導通検査装置は、例えば汎用PCによって構成される場合、入力部311はキーボード、マウス、テンキーなどの各種入力インタフェースによって実現され、データベース部312及びプログラム記憶部313は、ハードディスクドライブ(HDD)によって実現され、データ記憶部314はRAM(Random Access Memory)によって実現され、表示部315はCRTディスプレイ、液晶ディスプレイなどの各種出力デバイスによって実現され、処理部316は、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。データベース部312には、補器毎配線情報のデータ、および部位毎コネクタ・配線情報のデータ(必要に応じて、該補器毎配線情報に基づいて作成された実体配線図のデータ)が記憶されているとともに、補器仕様表のデータが記憶されている。また、プログラム記憶部313には、上述の多階層検査、および後述する[事前電線結合工程]を処理部316に実行するためのプログラムが記録されている。また、データ記憶部314には、多階層検査および事前電線結合工程を実行している処理部316から入出力されるデータが記録される。本発明のワイヤハーネス導通検査装置に多階層検査を実行させようとする者は、表示部315を視認しながら入力部311を使って、処理部316に演算させるための各種操作を行う。
続いて、多階層検査のアルゴリズムの詳細について説明する。多階層検査は、単階層検査とn階層検査に分かれるが、まずは単階層検査のアルゴリズムの詳細について説明する。
[単階層検査の詳細]
〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕
単階層検査を実行するにあたり、まず、補器毎配線情報、および部位毎コネクタ・配線情報から一部の情報を抽出する。図4に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)の一例を参照して、補器毎配線情報および部位毎コネクタ・配線情報から抽出した情報について説明する。
補器毎配線情報は、図4(a)に示すように、システム名、F部品名称と端子、および、T部品名称と端子、の3つの要素から構成される。F部品名称の列と、そのF部品名称の列に隣り合う端子の列と、は一対であり、同様に、T部品名称の列と、そのT部品名称の列に隣り合う端子の列と、は一対である。補器毎配線情報を形成する配列は、その一行が、補器毎配線情報に記述されている一つの回路線の始点−終点を表している。図4(a)の一行目を例に挙げると、該一行目は、システム「ABS」について記述された補器毎配線情報における、電気部品「MAIN_ECU」の端子「A01」を始点とし(以上、F部品名称と端子を参照。)、電気部品「ABS_SWITCH」の端子「A02」を終点とする回路線を表している。このように、システム名は、車両に搭載されるシステムの名称を、F部品名称と端子は、始点(From)となる電気部品の名称とその電気部品の端子の識別番号を、T部品名称と端子は、終点(To)となる電気部品の名称とその電気部品の端子の識別番号を、それぞれ情報として保持している。
また、図4(a)の一行目から三行目にかけては、システム「ABS」について記述された補器毎配線情報における回路線を表しており、四行目から六行目にかけては、システム「A/C」について記述された補器毎配線情報における回路線を表しており、七行目から九行目にかけては、システム「METER」について記述された補器毎配線情報における回路線を表している。このような要素から構成される補器毎配線情報は、補器毎配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。このとき、一つの補器毎配線情報に複数のシステムにおける回路線が含まれていることからも分かるように、補器毎配線情報は、該当車両についての複数の補器毎配線情報データ(補器毎配線情報は一つのシステムにつき一つ。)から構築される。作成された補器毎配線情報はデータ記憶部314に記憶される。
一方、部位毎コネクタ・配線情報は、図4(b)に示すように、図面品番、Fコネクタ名称とコネクタ品番と端子とキャビティナンバー(Cavity Number。以下、単にC/Nと略す)とF部品品番、および、Tコネクタ名称とコネクタ品番と端子とC/NとT部品品番、の3つの要素から構成される。Fコネクタ名称からF部品品番にかけての五列は一組であり、同様に、Tコネクタ名称からT部品品番にかけての五列は一組である。部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列は、その一行が、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている一つの電線の両端に接続された端子を表している。図4(b)の二行目を例に挙げると、該二行目は、識別番号「E11」によって識別される分割領域に配索された、識別番号「111」によって識別されるワイヤハーネスにおける、コネクタ名称「WtoW−E53」、コネクタ品番「111−000−111」によって識別されるコネクタのC/N「9」に収容された端子「Z03」が一端に接続され(以上、Fコネクタ名称とコネクタ品番と端子とC/Nを参照。F部品品番には、該端子がJCに収容される場合に情報が保持されており、その用途については〔JC検査の詳細〕にて後述する。)、コネクタ名称「WtoW−E51」、コネクタ品番「111−000−111」によって識別されるコネクタのC/N「9」に収容された端子「Z02」が他端に接続された(以上、Tコネクタ名称とコネクタ品番と端子とC/Nを参照。T部品品番には、該端子がJCに収容される場合に情報が保持されており、その用途については〔JC検査の詳細〕にて後述する。)電線を表している。このように、図面品番は、「−」より前の部分が該当車両における分割領域の識別情報を、後の部分がワイヤハーネスの識別情報を(尚、図面品番の情報が分割領域の識別情報とワイヤハーネスの識別情報の2つの情報から構成されるようにしたが、図面品番を用いる代わりに、分割領域の識別情報とワイヤハーネスの識別情報とを別々の情報として部位毎コネクタ・配線情報に記述するようにしてもよい。)、Fコネクタ名称とコネクタ品番と端子とC/Nは、電線の一端に接続された補器の識別情報を、Tコネクタ名称とコネクタ品番と端子とC/Nは、該電線の他端に接続された補器の識別情報を、それぞれ情報として保持している。尚、電線の端部が補器に接続されている場合にはFコネクタ名称およびTコネクタ名称にはその補器の名称が情報として保持されるが、該端部が電気部品に接続されている場合にはその電気部品の名称が情報として保持される。例えば、部位毎コネクタ・配線情報の一行目のFコネクタ名称には電気部品の名称「J/C−1」が情報として保持されている。
また、図4(b)の上段の配列は、図面品番「E11−111」によって特定されるワイヤハーネスに含まれる電線の両端に接続された端子を表しており、中段の配列は、図面品番「E21−111」によって特定されるワイヤハーネスに含まれる電線の両端に接続された端子を表しており、下段の配列は、図面品番「E41−111」によって特定されるワイヤハーネスに含まれる電線の両端に接続された端子を表している。このような要素から構成される部位毎コネクタ・配線情報は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成された部位毎コネクタ・配線情報はデータ記憶部314に記憶される。
〔単階層検査のアルゴリズム〕
次に、単階層検査のアルゴリズムの詳細について図4を参照して説明する。[多階層検査の概要]で説明したように、単階層検査は、回路線の始点に一端が接続された第1番目の電線W1を特定し(第1特定ステップ:S202)、その電線W1の他端が回路線の終点に一致するか否かを判別する(第1判別ステップ:S203)処理のことを指す。この処理を実現するために、〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕で説明した補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報を利用する。
まず、補器毎配線情報を参照して、該補器毎配線情報の配列を構成する任意の一行を抽出する。以降では、単階層検査のアルゴリズムをより分かり易く説明するために、図4(a)の一行目を抽出した場合について説明する。尚、該当する行の正否判定工程を終えれば、別の行の正否判定工程を行い、全ての行の正否判定工程を行う。
続いて、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうち、F部品名称とその端子の情報、およびT部品名称とその端子の情報、を参照する。図4(a)に示すように、F部品名称は「MAIN_ECU」であり、その端子は「A01」である。また、T部品名称は「ABS_SWITCH」であり、その端子「A02」である。以降、F部品名称と対の端子のことをF側端子と称する。他方、T部品名称と対の端子のことをT側端子と称する。
続いて、部位毎コネクタ・配線情報の配列全体を参照して、Fコネクタ名称と同じ組の端子、またはTコネクタ名称と同じ組の端子の中に、F側端子「A01」に一致するものがないか照合する。ここで、F側端子「A01」に一致するものがなければ、第1番目の電線が無いとみなし(図2のS210、N)、導通失敗と判定する(この判別の後に実行されるS211の処理「逆追い検査」については、後述する[逆追い検査]を参照されたい。)。なぜなら、補器毎配線情報に記述されているF側端子そのものが、部位毎コネクタ・配線情報に記述されていないためである。
F側端子「A01」に一致する端子があれば、続いて、該端子と同じ組のFコネクタ名称またはTコネクタ名称の中に、F部品名称「MAIN_ECU」に一致するものがないか照合する。ここで、F部品名称「MAIN_ECU」に一致するものがなければ、第1番目の電線が無いとみなし(図2のS210、N)、導通失敗と判定する(この判別の後に実行されるS211の処理「逆追い検査」については、後述する[逆追い検査]を参照されたい。)。なぜなら、補器毎配線情報に記述されているF部品名称「MAIN_ECU」によって識別される電気部品そのものが、部位毎コネクタ・配線情報に記述されていないためである。図4(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目が、F部品名称「MAIN_ECU」に一致するFコネクタ名称を有し、且つ、F側端子「A01」に一致する、Fコネクタ名称と同じ組の端子を有していることがわかる。
F部品名称「MAIN_ECU」に一致するFコネクタ名称またはTコネクタ名称があれば、続いて、そのFコネクタ名称またはTコネクタ名称を含む部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「A02」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「A02」に一致しなければ、2階層検査に移行する。図4(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「A02」と一致することがわかる。
T側端子「A02」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のTコネクタ名称またはFコネクタ名称が、T部品名称「ABS_SWITCH」に一致しないか照合する。ここで、T部品名称「ABS_SWITCH」に一致しなければ、2階層検査に移行する。図4(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目において、Tコネクタ名称がT部品名称「ABS_SWITCH」と一致することがわかる。
尚、補器毎配線情報のF部品名称またはT部品名称に記述されている名称と、部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称またはTコネクタ名称に記述されている名称と、は、同一の電気部品や補器を指している場合であってもその名称の記述が異なる場合が考えられる。その際には、その名称同士の対応を表す名称ライブラリを別途作成しておき、その名称ライブラリを参照して、補器毎配線情報のF部品名称またはT部品名称に一致するものを部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称またはTコネクタ名称から特定するようにする。あるいは、正否判定工程を実施する前に、補器毎配線情のF部品名称またはT部品名称、または部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称またはTコネクタ名称を、その名称ライブラリを参照して他方の名称に置き換えておき、その後、正否判定工程を実施するようにする。後述するn階層検査や後述する逆追い検査においてもこれは同様である。
尚、2階層検査に移行する場合、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく必要がある。なぜなら、これらの情報は単階層検査で特定した第1番目の電線W1の他端に関する情報であり、2階層検査で第2番目の電線W2の一端を特定するためにこれらの情報が必要になるためである。
以上の処理を経て、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうちの、F部品名称とその端子の情報、およびT部品名称とその端子の情報が、Fコネクタ名称とその端子の情報、およびTコネクタ名称とその端子の情報に含まれた部位毎コネクタ・配線情報の配列の一行を検索する。図4に示すように一致したものがみつかれば(図4(a)の補器毎配線情報の一行目と図4(b)の部位毎コネクタ・配線情報の下段の一行目が一致)、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は、部位毎コネクタ・配線情報の該当する一行によって表される電線によって導通されているとみなすことができる(導通成功)。他方、一致するものがみつからない場合には、上述したように、その検査途中において、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は導通が図られていないとみなす(導通失敗)、あるいは、2階層検査に移行する、ことになる。
ところで、上述したように、単階層検査は、回路線の始点に一端が接続された第1番目の電線W1を特定し(第1特定ステップ:S202)、その電線W1の他端が回路線の終点に一致するか否かを判別する(第1判別ステップ:S203)処理である。この処理は、回路線の始点及び終点となるそれぞれの電気部品と第1番目の電線W1の一端及び他端とがコネクタによって確実に嵌合し、電気部品側の端子と第1番目の電線W1の一端または他端とが電気的に導通していることが前提となっている。この前提が誤っていれば、すなわち、回路線の始点及び終点となるそれぞれの電気部品と第1番目の電線W1の一端及び他端とのコネクタの組み合わせが誤っていれば、第1特定ステップ及び第1判別ステップを経て導通成功と判別されたとしても、実際には電気的に導通していないことになる。そこで、以降では、回路線の始点及び終点となるそれぞれの電気部品と第1番目の電線W1の一端及び他端とのコネクタの組み合わせの正否を、図4を参照して説明した処理に加えた単階層検査のアルゴリズムについて、図14を参照して説明する。図14に、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)と品番対応表(c)の他例を示す。なお、図14(b)の部位毎コネクタ・配線情報は、図4(a)と同一であるため説明を省略する。
補器毎配線情報は、図14(a)に示す、システム名、F部品名称と部品品番と端子とC/N、および、T部品名称と部品品番と端子とC/N、の3つの要素から構成される。図4(a)に示す補器毎配線情報に、F部品名称に対応する部品品番とC/N、および、T部品名称に対応する部品品番とC/N、を追加したものである。F部品名称の列と、そのF部品名称の列の右に並ぶ部品品番と端子とC/Nの列と、は一対であり、同様に、T部品名称の列と、そのT部品名称の列の右に並ぶ部品品番と端子とC/Nの列と、は一対である。補器毎配線情報を形成する配列は、その一行が、補器毎配線情報に記述されている一つの回路線の始点−終点を表している。図14(a)の一行目を例に挙げると、該一行目は、システム「ABS」について記述された補器毎配線情報における、電気部品「MAIN_ECU」に設けられた部品品番「K−000−111」により識別される電気部品側コネクタのC/N「4」に収容された端子「A01」を始点とし(以上、F部品名称と部品品番と端子とC/Nを参照。)、電気部品「ABS_SWITCH」に設けられた部品品番「K−000−112」のC/N「4」に収容された端子「A02」を終点とする回路線を表している。このように、システム名は、車両に搭載されるシステムの名称を、F部品名称と部品品番と端子とC/Nは、始点(From)となる電気部品の名称とその電気部品に設けられたコネクタの識別番号とそのコネクタが備える端子及びC/Nの識別番号を、T部品名称と部品品番と端子とC/Nは、終点(To)となる電気部品の名称とその電気部品に設けられたコネクタの識別番号とそのコネクタが備える端子及びC/Nの識別番号を、それぞれ情報として保持している。
また、図14(a)の一行目から三行目にかけては、システム「ABS」について記述された補器毎配線情報における回路線を表しており、四行目から六行目にかけては、システム「A/C」について記述された補器毎配線情報における回路線を表しており、七行目から九行目にかけては、システム「METER」について記述された補器毎配線情報における回路線を表している。このような要素から構成される補器毎配線情報は、補器毎配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。このとき、一つの補器毎配線情報に複数のシステムにおける回路線が含まれていることからも分かるように、補器毎配線情報は、該当車両についての複数の補器毎配線情報データ(補器毎配線情報は一つのシステムにつき一つ。)から構築される。作成された補器毎配線情報はデータ記憶部314に記憶される。
さらに、品番対応表について説明する。品番対応表は、図14(c)に示すように、部品品番およびコネクタ品番を一対とする配列2つから構成される。部品品番には電気部品に設けられたコネクタの識別番号が、コネクタ品番には部品品番によって特定されるコネクタに嵌合可能なコネクタ品番がそれぞれ情報として保持されている。隣り合う部品品番とコネクタ品番は嵌合する関係にあることを表している。図14(c)の一行目を例に挙げると、該一行目は、部品品番「K−000−111」によって識別される電気部品側のコネクタと、コネクタ品番「111−000−111」によって特定されるコネクタと、は嵌合する関係にあることを表している。このような要素から構成される品番対応表は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成されたコネクタ名称対応表はデータ記憶部314に記憶される。
続いて、回路線の始点及び終点となるそれぞれの電気部品と第1番目の電線W1の一端及び他端とのコネクタの組み合わせの正否を、図4を参照して説明した処理に加えた単階層検査のアルゴリズムについて説明する。
まず、上述した補器毎配線情報を参照して、該補器毎配線情報の配列を構成する任意の一行を抽出する。以降では、単階層検査のアルゴリズムをより分かり易く説明するために、図14(a)の一行目を抽出した場合について説明する。尚、該当する行の正否判定工程を終えれば、別の行の正否判定工程を行い、全ての行の正否判定工程を行う。
補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうち、F部品名称とその部品品番とその端子とそのC/Nの情報、およびT部品名称とその部品品番とその端子とそのC/Nの情報、を参照する。図14(a)に示すように、F部品名称は「MAIN_ECU」であり、その部品品番は「K−000−111」であり、その端子は「A01」であり、そのC/Nは「4」である。また、T部品名称は「ABS_SWITCH」であり、その部品品番は「K−000−111」であり、その端子は「A02」であり、そのC/Nは「4」である。以降、F部品名称と対の部品品番、端子及びC/NのことをF側部品品番、F側端子及びF側C/Nと称する。他方、T部品名称と対の部品品番、端子及びC/NのことをT側部品品番、T側端子及びT側C/Nと称する。
続いて、部位毎コネクタ・配線情報の配列全体を参照して、Fコネクタ名称と同じ組の端子、またはTコネクタ名称と同じ組の端子の中に、F側端子「A01」に一致するものがないか照合する。ここで、F側端子「A01」に一致するものがなければ、第1番目の電線が無いとみなし(図2のS210、N)、導通失敗と判定する(この判別の後に実行されるS211の処理「逆追い検査」については、後述する[逆追い検査]を参照されたい。)。なぜなら、補器毎配線情報に記述されているF側端子そのものが、部位毎コネクタ・配線情報に記述されていないためである。
F側端子「A01」に一致する端子があれば、続いて、該端子と同じ組のC/Nの中に、F側C/N「4」に一致するものがないか照合する。ここで、F側C/N「4」に一致するものがなければ、第1番目の電線が無いとみなし(図2のS210、N)、導通失敗と判定する(この判別の後に実行されるS211の処理「逆追い検査」については、後述する[逆追い検査]を参照されたい。)。なぜなら、補器毎配線情報に記述されているF部品名称「MAIN_ECU」によって識別される電気部品そのものが、部位毎コネクタ・配線情報に記述されていないためである。
F側C/N「4」に一致する端子があれば、F側部品品番「K−000−111」を参照し、この識別情報「K−000−111」に部品品番が一致する行が品番対応表にないか照合する。図14(c)をみると、一行目の部品品番に「K−000−111」が含まれ、その部品品番「K−000−111」に対になったコネクタ品番が「111−000−111」であることがわかる。そして、この部品品番「K−000−111」に対になったコネクタ品番が「111−000−111」に一致するものが、該端子と同じ組のコネクタ品番の中にないか照合する。この照合によって、電気部品側のコネクタと電線側のコネクタとの嵌合を照合している。
コネクタ品番「111−000−111」に一致する端子があれば、続いて、該端子と同じ組のFコネクタ名称またはTコネクタ名称の中に、F部品名称「MAIN_ECU」に一致するものがないか照合する。ここで、F部品名称「MAIN_ECU」に一致するものがなければ、第1番目の電線が無いとみなし(図2のS210、N)、導通失敗と判定する(この判別の後に実行されるS211の処理「逆追い検査」については、後述する[逆追い検査]を参照されたい。)。なぜなら、補器毎配線情報に記述されているF部品名称「MAIN_ECU」によって識別される電気部品そのものが、部位毎コネクタ・配線情報に記述されていないためである。図14(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目が、F部品名称「MAIN_ECU」に一致するFコネクタ名称を有し、且つ、コネクタ品番「111−000−111」に一致するコネクタ品番を有し、且つ、F側端子「A01」及びF側C/N「4」に一致する端子を有していることがわかる。
F部品名称「MAIN_ECU」に一致するFコネクタ名称またはTコネクタ名称があれば、続いて、そのFコネクタ名称またはTコネクタ名称を含む部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「A02」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「A02」に一致しなければ、2階層検査に移行する。図14(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「A02」と一致することがわかる。
T側端子「A02」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のC/Nの中に、T側C/N「4」に一致するものがないか照合する。ここで、T側C/N「4」に一致しなければ、2階層検査に移行する。図14(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目において、C/NがT側C/N「4」と一致することがわかる。
T側C/N「4」に一致する端子があれば、該端子と同じ組のコネクタ品番「111−000−112」を参照し、このコネクタ品番「111−000−112」にコネクタ品番が一致する行が品番対応表にないか照合する。図14(c)をみると、二行目のコネクタ品番に「111−000−112」が含まれ、そのコネクタ品番「111−000−112」に対になった部品品番が「K−000−112」であることがわかる。そして、このコネクタ品番「111−000−112」に対になった部品品番「K−000−112」に一致するものが、該端子と同じ組のコネクタ品番の中にないか照合する。この照合によって、電気部品側のコネクタと電線側のコネクタとの嵌合を照合している。
部品品番「K−000−112」に一致する端子があれば、続いて、該端子と同じ組のFコネクタ名称またはTコネクタ名称の中に、T部品名称「ABS_SWITCH」に一致するものがないか照合する。ここで、T部品名称「ABS_SWITCH」に一致しなければ、2階層検査に移行する。図14(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の配列における一行目において、Tコネクタ名称がT部品名称「ABS_SWITCH」と一致することがわかる。
以上のようにして、回路線の始点及び終点となるそれぞれの電気部品と第1番目の電線W1の一端及び他端とのコネクタによる嵌合状態をも照合しつつ、導通検査を実施することができる。これにより、導通検査の精度をさらに向上させることができる。
尚、補器毎配線情報のF部品名称またはT部品名称に記述されている名称と、部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称またはTコネクタ名称に記述されている名称と、は、同一の電気部品や補器を指している場合であってもその名称の記述が異なる場合が考えられる。その際には、その名称同士の対応を表す名称ライブラリを別途作成しておき、その名称ライブラリを参照して、補器毎配線情報のF部品名称またはT部品名称に一致するものを部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称またはTコネクタ名称から特定するようにする。あるいは、正否判定工程を実施する前に、補器毎配線情のF部品名称またはT部品名称、または部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称またはTコネクタ名称を、その名称ライブラリを参照して他方の名称に置き換えておき、その後、正否判定工程を実施するようにする。後述するn階層検査や後述する逆追い検査においてもこれは同様である。
続いて、n階層検査のアルゴリズムの詳細について説明する。
[n階層検査の詳細]
〔n階層検査の要点〕
ここでは、単階層検査から2階層検査に移行した場合の詳細について主に説明する。これは、3階層検査以降は、2階層検査の繰り返しとなるためである。単階層検査を実行する場合には一本の電線が対象であったが、n階層検査を実行する場合には端部同士が接続された少なくとも2本の電線が対象となる。部位毎コネクタ・配線情報から1本の電線の他端に一端が接続された他の電線を特定するためには、その接続を実現した接続手段に応じた処理を実行する必要がある。この接続手段には、(1)コネクタによる接続(図1(c)を参照。)、(2)JBによる接続(図1(e)を参照)、(3)JCによる接続、(4)溶接や突き合わせ圧着による接続(図1(f)を参照)、がある。2階層検査において第2番目の電線W2を特定するためには、これらの接続手段に応じた電線の特定手法を用いる必要がある。以降、(1)の接続手段に対応する電線の特定手法を「WtoW検査」、(2)の接続手段に対応する電線の特定手法を「JB検査」、(3)の接続手段に対応する電線の特定手法を「JC検査」、(4)の接続手段に対応する電線の特定手法を「W/S(Weld Splice)検査」および「B/S(Butt Splice)検査」と称する。2階層検査において、これらの「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」を行うが、これらの電線の特定手法のいずれかを実行して第2番目の電線W2を特定することができて初めて、第1番目の電線W1の他端と第2番目の電線W2の一端との接続手段がその特定手法に対応する上記(1)から(4)のいずれかであることを特定することができる(要は、第1番目の電線W1の他端と第2番目の電線W2の一端との接続手段を事前に把握できないため、第2番目の電線W2を特定できるまで、上記の電線の特定手法を逐次実行する必要がある。)。このため、ここでは、WtoW検査、JB検査、JC検査、W/S検査、B/S検査の順に逐次、電線の特定手法を用いることとする。尚、本発明において電線の特定手法を用いる順序は、WtoW検査、JB検査、JC検査、W/S検査、B/S検査の順に限られない。例えば、電線の接続手段として用いられる頻度の高い順に電線の特定手法を用いるようにしてもよい。この結果、より少ない演算量によって第2番目の電線W2を特定することができる。以降、WtoW検査、JB検査、JC検査、W/S検査、B/S検査の順にその電線の特定手法の詳細を説明する。蛇足ながら、n階層検査では「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」が実行され、同様に(n+1)階層検査でも「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」が実行される。言い換えれば、例えばWtoW検査からJB検査への移行は、階層を繰り上げる移行ではなく、同一階層での移行である。この点に注意されたい。
〔WtoW検査の詳細〕
図5に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)とコネクタ名称対応表(c)とコネクタ品番対応表(d)の一例を参照して、WtoW検査の詳細を説明する。補器毎配線情報(a)及び部位毎コネクタ・配線情報(b)については、[単階層検査の詳細]における〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
まず、コネクタ名称対応表について説明する。コネクタ名称対応表は、図5(c)に示すように、部位名称およびコネクタ名称を一対とする配列2つから構成される。部位名称にはワイヤハーネスが配索される分割領域の識別番号が、コネクタ名称にはそのワイヤハーネスに含まれる電線の一端に接続された補器の識別情報が、それぞれ情報として保持されている。一方の部位名称およびコネクタ名称、およびそれに隣り合う他方の部位名称およびコネクタ名称は、そのコネクタ名称によって特定される補器が嵌合する関係にあることを表している。図5(c)の一行目を例に挙げると、該一行目は、識別番号「E11」によって識別される分割領域に配索されたワイヤハーネスの、コネクタ名称「WtoW−E12」によって特定される補器と、識別番号「E12」によって識別される分割領域に配索されたワイヤハーネスの、コネクタ名称「WtoW−E11−1」によって特定される補器と、は嵌合する関係にあることを表している。このような要素から構成されるコネクタ名称対応表は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成されたコネクタ名称対応表はデータ記憶部314に記憶される。
次に、コネクタ品番対応表について説明する。コネクタ品番対応表は、図5(d)に示すように、2つのコネクタ品番を一対とする配列から構成される。コネクタ品番には補器の識別情報が、情報として保持されている。一方のコネクタ品番、及びそれに隣り合う他方のコネクタ品番は、そのコネクタ品番によって特定される補器が嵌合する関係にあることを表している。図5(d)の一行目を例に挙げると、該一行目は、コネクタ品番「999−111−101」によって特定される補器と、コネクタ品番「999−111−102」によって特定される補器と、は嵌合する関係にあることを表している。このような要素から構成されるコネクタ品番対応表は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成されたコネクタ品番対応表はデータ記憶部314に記憶される。
続いて、WtoW検査のアルゴリズムの詳細について説明する。WtoW検査を実行する前には、単階層検査(2階層検査におけるWtoT検査の場合)または(n−1)階層検査(n階層検査におけるWtoT検査の場合)が実行されているため、それらの検査によって、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報(図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番)がデータ記憶部314に記録されている(〔単階層検査のアルゴリズム〕を参照。)。n階層検査におけるWtoW検査を実行するにあたって、まず、データ記憶部314に記録された第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報を参照する。これにより、図5(b)をみると、第1番目の電線W1の他端に関する情報として、Tコネクタ名称「WtoW−E11−8」、コネクタ品番「999−111−102」、端子「A01」、C/N「4」が得られる。このようにして特定された第1番目の電線W1の他端から、以降の処理によって第2番目の電線W2の一端を特定する。
まず、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、図面品番「E41−111」のうちの分割領域の識別情報「E41」を参照し、この識別情報「E41」に部位名称が一致する行がコネクタ名称対応表にないか照合する。図5(c)をみると、2つの行の部位名称に「E41」が含まれていることがわかる。さらに、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、コネクタ名称「WtoW−E11−8」を参照し、このコネクタ名称に一致する行がコネクタ名称対応表にないか照合する。このとき、部位名称およびコネクタ名称を一対とするそれぞれの配列に対して照合する。図5(c)をみると、最下行のコネクタ名称に「WtoW−E11−8」が含まれていることがわかる。
同様に、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、コネクタ品番「999−111−102」を参照し、このコネクタ品番に一致する行がコネクタ品番対応表にないか照合する。このとき、2つのコネクタ品番それぞれの配列に対して照合する。図5(d)をみると、一行目のコネクタ品番に「999−111−102」が含まれていることがわかる。
このようにしてコネクタ名称対応表およびコネクタ品番対応表からそれぞれ特定した行の情報を参照して、続いて部位毎コネクタ・配線情報に対して照合を行う。まず、コネクタ名称対応表から特定した行の相手側の部位名称「E11」に図面品番のうちの分割領域の識別情報が一致する行を抽出する。そして、その行のなかから、コネクタ名称対応表から特定した行の相手側のコネクタ名称「WtoW−E41−2」にFコネクタ名称またはTコネクタ名称が一致するものを抽出する。さらに、コネクタ品番対応表から特定した行の相手側のコネクタ品番「999−111−101」にFコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番またはTコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番が一致するものを抽出する。図5(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の三行目の図面品番、Fコネクタ名称、およびFコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番にこれらの情報が含まれていることがわかる。さらに、嵌合するコネクタ同士でC/Nの一致を確認する。このようにして特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行(図5(b)では部位毎コネクタ・配線情報の上段の三行目)が、第1番目の電線W1の他端に一端が接続された第2番目の電線W2である。尚、該当する行が存在しない場合には、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(1)コネクタによる接続ではないとみなし、JB検査に移行する。
このようにして第2番目の電線W2が特定されれば(ここまでの処理が図2のS204に相当)、続いて、特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「A02」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「A02」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図5(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の三行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「A02」と一致することがわかる。
T側端子「A02」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のTコネクタ名称またはFコネクタ名称が、T部品名称「ABS_SWITCH」に一致しないか照合する。ここで、T部品名称「ABS_SWITCH」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図5(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の三行目において、Tコネクタ名称がT部品名称「ABS_SWITCH」と一致することがわかる。こうして、第2番目の電線W2の他端が、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線の終点と一致することがわかる(図2のS205、Y)。このとき、図14を参照して説明した処理を実施することで、回路線の終点となる電気部品と第2番目の電線W2の他端とのコネクタによる嵌合状態をも照合するようにして、導通検査の精度をさらに向上させてもよい。この結果、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られているとみなし(図2のS207)、正否判定工程を終了する。
尚、3階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく必要がある。なぜなら、これらの情報は単階層検査で特定した第2番目の電線W2の他端に関する情報であり、3階層検査で第3番目の電線W3の一端を特定するためにこれらの情報が必要になるためである。
以上の処理を経て、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうちのT部品名称とその端子の情報が、Fコネクタ名称とその端子の情報、またはTコネクタ名称とその端子の情報に含まれた部位毎コネクタ・配線情報の配列の一行を検索する。図5に示すように一致したものがみつかれば(図5(a)の補器毎配線情報の一行目と図5(b)の部位毎コネクタ・配線情報の上段の三行目が一致)、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は、部位毎コネクタ・配線情報の該当する二行(2階層検査の場合は2行であるが、n階層検査の場合はn行)によって表される、コネクタによって接続された電線によって導通されているとみなすことができる(導通成功)。他方、一致するものがみつからない場合には、上述したように、そのWtoW検査途中において、JB検査に移行する、あるいは3階層検査に移行することになる。
〔JB検査の詳細〕
JB検査は、WtoW検査において、電線を特定できなかった場合に実行される。図6に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)とJB−コネクタ対応表(c)とJB端子接続対応表(d)の一例を参照して、JB検査の詳細を説明する。補器毎配線情報(a)及び部位毎コネクタ・配線情報(b)については、[単階層検査の詳細]における〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
まず、JB−コネクタ対応表について説明する。JB−コネクタ対応表は、図6(c)に示すように、本体品番、場所、コネクタ品番、およびコネクタ名称から構成される。本体品番にはJBを識別する識別情報が、場所(コネクタ嵌合位置と称することがある。)にはコネクタが差し込まれるJBのコネクタ嵌合位置を指定する情報が、コネクタ品番にはそのコネクタ嵌合位置に差し込み可能なコネクタの識別番号が、コネクタ名称にはそのコネクタ嵌合位置に差し込み可能なコネクタの名称が、それぞれ情報として保持されている。このJB−コネクタ対応表では、これらの4つの情報が一組となっており、コネクタ品番およびコネクタ名称によって特定されるコネクタが、本体品番によって識別されるJBにおける指定のコネクタ嵌合位置に差し込み可能であることが表されている。図6(c)の一行目を例に挙げると、該一行目は、識別番号「888−000−111」によって識別されるJBにおけるコネクタ嵌合位置「A」には、コネクタ品番「111−000−114」、コネクタ名称「J/B−4」によって識別されるコネクタが差し込み可能であることが表されている。このような要素から構成されるJB−コネクタ対応表は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成されたJB−コネクタ対応表はデータ記憶部314に記憶される。
次に、JB端子接続対応表について説明する。JB端子接続対応表は、図6(d)に示すように、本体品番およびキャビティの接続から構成される。本体品番にはJBを識別する識別情報が、キャビティの接続にはJB内での端子−端子間の接続状況に関する情報が、それぞれ保持されている。このJB端子接続対応表では、これらの2つの情報が一組となっており、本体品番によって識別されるJBにおける、指定の少なくとも2つのキャビティ位置の端子間が導通していることが表されている。図6(d)の八行目を例に挙げると、該八行目は、識別番号「888−000−111」によって識別されるJBにおいて、コネクタ嵌合位置「A」におけるキャビティ位置「33」と(キャビティの接続の「A33」を参照。)、コネクタ嵌合位置「B」におけるキャビティ位置「23」と(キャビティの接続の「B23」を参照。)、コネクタ嵌合位置「D」におけるキャビティ位置「32」と(キャビティの接続の「D32」を参照。)、はJB内で導通している(キャビティ−キャビティ間が導通していることが「&」で表されている。尚、図6(d)では、キャビティ−電気素子(リレーやヒューズなど)間が導通していることが「+」で表されている。)ことが表されている。このような要素から構成されるJB端子接続対応表は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成されたJB端子接続対応表はデータ記憶部314に記憶される。
続いて、JB検査のアルゴリズムの詳細について説明する。JB検査を実行する前には、単階層検査(2階層検査におけるJB検査の場合)または(n−1)階層検査(n階層検査におけるJB検査の場合)が実行されているため、それらの検査によって、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報(図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番)がデータ記憶部314に記録されている(〔単階層検査のアルゴリズム〕を参照。)。n階層検査におけるJB検査を実行するにあたって、まず、データ記憶部314に記録された第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報を参照する。これにより、図6(b)をみると、第1番目の電線W1の他端に関する情報として、Tコネクタ名称「J/B−4」、コネクタ品番「999−111−104」、端子「##1」、C/N「33」が得られる。このようにして特定された第1番目の電線W1の他端から、以降の処理によって第2番目の電線W2の一端を特定する。
まず、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、Tコネクタ名称「J/B−4」およびコネクタ品番「999−111−104」を参照し、コネクタ名称がTコネクタ名称「J/B−4」に一致し、且つ、コネクタ品番がコネクタ品番「999−111−104」に一致する行がJB−コネクタ対応表にないか照合する。図6(c)をみると、コネクタ名称「J/B−4」およびコネクタ品番「999−111−104」が一行目に含まれていることがわかる。
続いて、コネクタ品番およびコネクタ名称が一致したJB−コネクタ対応表の一行における本体品番およびコネクタ嵌合位置、および、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうちのC/Nを参照し、これらの本体品番、コネクタ嵌合位置、およびC/Nが含まれた行がJB端子接続対応表にないか照合する。図6(d)をみると、JB端子接続対応表の八行目に、本体品番「888−000−111」、コネクタ嵌合位置「A」およびC/N「33」が含まれていることがわかる(コネクタ嵌合位置「A」およびC/N「33」については、キャビティの接続「A33&B23&D32」のうち、「A33」を参照した。)。JB端子接続対応表に所望の行があれば、第1番目の電線W1の他端がJBのどのキャビティ位置におけるどの端子に導通しているか特定することができる。図6(d)のJB端子接続対応表の八行目を例に挙げると、本体品番「888−000−111」によって識別されるJBにおけるコネクタ嵌合位置「A」のキャビティ位置「33」は(第1番目の電線W1の他端に相当)、当該JBにおけるコネクタ嵌合位置「B」のキャビティ位置「23」と、当該JBにおけるコネクタ嵌合位置「D」のキャビティ位置「32」と、に導通している。これを踏まえ、第1番目の電線W1の他端に導通するJBのキャビティ位置(ただし、第1番目の電線W1の他端が直接接続している端子(図6(d)では「A33」)を除く。)に一端が接続された第2番目の電線W2を、以後検査の対象とする。このため、この時点では、第2番目の電線W2として複数の候補が存在することになる。例えば、図6(d)の場合は、コネクタ嵌合位置「B」におけるキャビティ位置「23」に一端が接続された第2番目の電線W21と、コネクタ嵌合位置「D」におけるキャビティ位置「32」に一端が接続された第2番目の電線W22と、が第2番目の電線W2の候補となる(図1(e)を参照。)。
続いて、JB端子接続対応表の該当行における本体品番およびキャビティの接続を参照し、そのキャビティの接続に保持されているいずれか一つのキャビティ位置が含まれた行がJB−コネクタ対応表にないか照合する。図6(c)をみると、JB−コネクタ対応表の二行目に、本体品番「888−000−111」、コネクタ嵌合位置「B」が含まれたものが、また、JB−コネクタ対応表の四行目に、本体品番「888−000−111」、コネクタ嵌合位置「D」が含まれたものが、それぞれあることがわかる。
このようにしてJB−コネクタ対応表から特定した行の情報およびJB端子接続対応表から特定したコネクタ嵌合位置のキャビティ位置を参照して、続いて部位毎コネクタ・配線情報に対して照合を行う。まず、JB−コネクタ対応表から特定した一行のコネクタ品番およびコネクタ名称を参照し、Fコネクタ名称および該Fコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番、または、Tコネクタ名称および該Tコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番が一致する行が部位毎コネクタ・配線情報にないか照合する。該当する行があった場合、さらに、JB端子接続対応表から特定したコネクタ嵌合位置のキャビティ位置を参照し、C/Nが一致する行が部位毎コネクタ・配線情報にないか照合する。図6(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目に、JB−コネクタ対応表の二行目のコネクタ品番「111−000−113」、コネクタ名称「J/B−1−2−3」、キャビティ位置「23」に一致するFコネクタ名称、コネクタ品番およびC/Nが含まれていることがわかる。また、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目に、JB−コネクタ対応表の四行目のコネクタ品番「111−000−116」、コネクタ名称「J/B−6」、キャビティ位置「32」に一致するFコネクタ名称、コネクタ品番およびC/Nが含まれていることがわかる。このようにして特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行(図6(b)では部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目および五行目)が、第1番目の電線W1の他端に一端が接続された第2番目の電線W2の候補となる。尚、該当する行が存在しない場合には、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(2)JBによる接続ではないとみなし、JC検査に移行する。
このようにして第2番目の電線W2の候補が特定されれば(ここまでの処理が図2のS204に相当)、続いて、特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「B02」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「B02」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図6(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子「E01」がT側端子「B02」と一致しないため、3階層検査に移行する。他方、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「B02」と一致することがわかる。
T側端子「B02」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のTコネクタ名称またはFコネクタ名称が、T部品名称「MAIN_ECU」に一致しないか照合する。ここで、T部品名称「MAIN_ECU」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図6(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目において、Tコネクタ名称がT部品名称「MAIN_ECU」と一致することがわかる。こうして、第2番目の電線W2の他端が、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線の終点と一致することがわかる(図2のS205、Y)。このとき、図14を参照して説明した処理を実施することで、回路線の終点となる電気部品と第2番目の電線W2の他端とのコネクタによる嵌合状態をも照合するようにして、導通検査の精度をさらに向上させてもよい。この結果、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られているとみなし(図2のS207)、正否判定工程を終了する。
尚、3階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく必要がある。なぜなら、これらの情報は単階層検査で特定した第2番目の電線W2の他端に関する情報であり、3階層検査で第3番目の電線W3の一端を特定するためにこれらの情報が必要になるためである。
ところで、図6(b)の場合、部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子「E01」がT側端子「B02」と一致しないため、3階層検査に移行する。他方、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「B02」と一致した。仮に、部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目に対して先にT側端子「B02」との照合を実施した場合、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目に対してT側端子「B02」との照合を実施する前に、3階層検査に移行することとなる。この場合、部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目を第2番目の電線W2とみたて(実際には第2番目の電線W2ではない。)、3階層検査以降の検査を実施することになるが、T側端子「B02」に一致することはなく、次の電線を特定できなくなる。この場合には、JC検査にすぐさま移行するのではなく、JBによって最初に分岐されたところまで遡り、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目を第2番目の電線W2とみたて、部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目に対してT側端子「B02」との照合を実施する。そして、T側端子「B02」およびT部品名称「MAIN_ECU」に一致する行が部位毎コネクタ・配線情報に存在しない場合には(つまり、第2番目の電線W2の候補全てに関して導通成功しなかった場合)、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(2)JBによる接続ではないとみなし、JC検査に移行する。
ここで、JBに分岐が存在し、最初に多階層検査を実施した電線がT側端子に一致しなかったために分岐まで遡り、次の電線に対して多階層検査を実施する場合の具体例を図15を参照して説明する。図15は、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする多階層検査の分岐までの遡りを説明する図である。なお、図15において、矢印は、多階層検査におけるn階層検査を実行していることを示している。また、その矢印の上方に位置する数字「1」、「2−1」、「2−2」または「2−3」のうちの「−」より前の数字「2」、及び「3−1」、「3−2」または「3−3」のうちの「−」より前の数字「3」は、実行されている多階層検査の階層nを示し、「−」より後の数字「1」、「2」及び「3」は、分岐された電線毎に実施される多階層検査を識別する情報を示している。
図15(a)に示すように、単階層検査により、第1番目の電線W1の他端がJBの端子Aに接続されていることが特定されたとすると、2階層検査では、端子AとJB内部で導通している端子Bが一端に接続された第2番目の電線W21、端子AとJB内部で導通している端子Cが一端に接続された第2番目の電線W22、及び端子AとJB内部で導通している端子Dが一端に接続された第2番目の電線W23それぞれについて、導通検査を実施することになる。このとき、分岐された電線W21に対する2−1多階層検査が実施された後、分岐された電線W22に対する2−2多階層検査が実施される。さらに、分岐された電線W22に対する2−2多階層検査が実施された後、分岐された電線W23に対する2−3多階層検査が実施される。このように、電線W21を第2番目の電線W2とみたて、3階層検査以降の検査を実施したもののT側端子に一致することはなく次の電線を特定できなかった場合、電線W22、W23を順次、第2番目の電線W2とみたて、3階層検査以降の検査を実施する。こうすることで、単階層検査が繰り返し実行されることがなくなり、多階層検査に伴う処理が簡略化される。
なお、上述の端子Bが一端に接続された第2番目の電線W21の他端に、別のJBの端子Fが接続されている場合がある(図15(b)を参照。)。このような場合も、3階層検査では、端子FとJB内部で導通している端子Gが一端に接続された第3番目の電線W31、端子FとJB内部で導通している端子Hが一端に接続された第3番目の電線W32、及び端子FとJB内部で導通している端子Iが一端に接続された第3番目の電線W33それぞれについて、導通検査を実施する。そして、電線W31を第3番目の電線W3とみたて、4階層検査以降の検査を実施したもののT側端子に一致することはなく次の電線を特定できなかった場合、電線W32、W33を順次、第3番目の電線W3とみたて、4階層検査以降の検査を実施する。こうすることで、単階層検査が繰り返し実行されることがなくなり、多階層検査に伴う処理が簡略化される。
以上の処理を経て、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうちのT部品名称とその端子の情報が、Fコネクタ名称とその端子の情報、またはTコネクタ名称とその端子の情報に含まれた部位毎コネクタ・配線情報の配列の一行を検索する。図6に示すように一致したものがみつかれば(図6(a)の補器毎配線情報の四行目と図6(b)の部位毎コネクタ・配線情報の下段の五行目が一致)、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は、部位毎コネクタ・配線情報の該当する二行(2階層検査の場合は2行であるが、n階層検査の場合はn行)によって表される、JBによって接続された電線によって導通されているとみなすことができる(導通成功)。他方、一致するものがみつからない場合には、上述したように、そのJB検査途中において3階層検査に移行、あるいはJB検査終了後にJC検査に移行することになる。
〔JC検査の詳細〕
JC検査は、JB検査において、電線を特定できなかった場合に実行される。図7に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)とJC端子接続対応表(c)の一例を参照して、JC検査の詳細を説明する。補器毎配線情報(a)及び部位毎コネクタ・配線情報(b)については、[単階層検査の詳細]における〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
次に、JC端子接続対応表について説明する。JC端子接続対応表は、図7(c)に示すように、本体品番およびキャビティの接続から構成される。本体品番にはJCを識別する識別情報が、キャビティの接続にはJC内での端子−端子間の接続状況に関する情報が、それぞれ保持されている。このJC端子接続対応表では、これらの2つの情報が一組となっており、本体品番によって識別されるJCにおける、指定の少なくとも2つのキャビティ間が導通していることが表されている。図7(c)の一行目を例に挙げると、該一行目は、識別番号「800−200−100」によって識別されるJCにおいて、キャビティ「1」と(キャビティの接続「1&2&3」のうちの「1」を参照。)、キャビティ「2」と(キャビティの接続「1&2&3」のうちの「2」を参照。)、キャビティ「3」と(キャビティの接続「1&2&3」のうちの「3」を参照。)、はJC内で導通している(導通していることが「&」で表されている。)ことが表されている。このような要素から構成されるJC端子接続対応表は、部位毎コネクタ・配線情報データから上述の要素についての情報を抽出し、作成することができる。作成されたJC端子接続対応表はデータ記憶部314に記憶される。
続いて、JC検査のアルゴリズムの詳細について説明する。JC検査を実行する前には、単階層検査(2階層検査におけるJC検査の場合)または(n−1)階層検査(n階層検査におけるJC検査の場合)が実行されているため、それらの検査によって、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報(図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番)がデータ記憶部314に記録されている(〔単階層検査のアルゴリズム〕を参照。)。n階層検査におけるJC検査を実行するにあたって、まず、データ記憶部314に記録された第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報を参照する。これにより、図7(b)をみると、第1番目の電線W1の他端に関する情報として、Tコネクタ名称「J/C−4」、コネクタ品番「999−111−102」、端子「A01」、C/N「4」、T部品品番「800−200−100」が得られる。このようにして特定された第1番目の電線W1の他端から、以降の処理によって第2番目の電線W2の一端を特定する。
まず、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、T部品品番を参照する。T部品品番には、そのT部品品番と同じ組の端子がJCに収容される場合に、そのJCを識別する識別番号が情報として保持されている。このため、T部品品番のデータの有無を判別することで、第1番目の電線W1の他端がJCによって第2番目の電線W2に接続されているか否かがわかる。T部品品番にデータが無ければ、「W/S検査」に移行する。図7(b)をみると、T部品品番に「800−200−100」が保持されていることがわかる。
T部品品番にデータが有れば、そのT部品品番に本体品番が一致する行がJC端子接続対応表にないか照合する。図7(c)をみると、本体品番「800−200−100」が二行目に含まれていることがわかる。
続いて、T部品品番が本体品番に一致したJC端子接続対応表の一行におけるキャビティの接続を参照し、本体品番によって識別されるJCの該当するキャビティ間の導通についての情報を参照する。図7(c)のJC端子接続対応表の二行目を例に挙げると、本体品番「800−200−100」によって識別されるJCにおけるキャビティ「4」と、当該JCにおけるキャビティ「5」と、は導通している。尚、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、C/Nが「4」であることから、第1番目の電線W1の他端に接続されているキャビティは「4」以外である。
このようにしてJC端子接続対応表から特定した行の情報を参照して、続いて部位毎コネクタ・配線情報に対して照合を行う。まず、JC端子接続対応表の該当する行の本体品番にF部品品番またはT部品品番が一致する行が部位毎コネクタ・配線情報にないか照合する。該当する行があった場合、さらに、JC端子接続対応表の該当する行のキャビティの接続を参照し、C/Nが一致する行が部位毎コネクタ・配線情報にないか照合する。該当する行があった場合、さらに、それらのTコネクタ名称、およびコネクタ品番が一致するか照合する。図7(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の二行目に、キャビティの接続「5」に一致するC/Nが含まれていることがわかる。また、部位毎コネクタ・配線情報の下段の一行目と二行目のTコネクタ名称およびコネクタ品番は、「J/C−4」および「999−111−102」と一致していることがわかる。このようにして特定した部位毎コネクタ・配線情報の二行(図7(b)では部位毎コネクタ・配線情報の下段の二行目)が、第1番目の電線W1の他端に一端が接続された第2番目の電線W2となる。尚、該当する行が存在しない場合には、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(2)JCによる接続ではないとみなし、W/S検査に移行する。
このようにして第2番目の電線W2が特定されれば(ここまでの処理が図2のS204に相当)、続いて、特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「C04」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「C04」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図7(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の二行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「C04」と一致することがわかる。
T側端子「C04」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のTコネクタ名称またはFコネクタ名称が、T部品名称「METER」に一致しないか照合する。ここで、T部品名称「METER」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図7(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の二行目において、Tコネクタ名称がT部品名称「METER」と一致することがわかる。こうして、第2番目の電線W2の他端が、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線の終点と一致することがわかる(図2のS205、Y)。このとき、図14を参照して説明した処理を実施することで、回路線の終点となる電気部品と第2番目の電線W2の他端とのコネクタによる嵌合状態をも照合するようにして、導通検査の精度をさらに向上させてもよい。この結果、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られているとみなし(図2のS207)、正否判定工程を終了する。
尚、3階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく必要がある。なぜなら、これらの情報は単階層検査で特定した第2番目の電線W2の他端に関する情報であり、3階層検査で第3番目の電線W3の一端を特定するためにこれらの情報が必要になるためである。
ここまでは、JCによって2本の電線が連結されている場合を説明した。しかし、JCによって3本以上の電線が連結されている場合も想定される。その場合には、JC端子接続対応表のキャビティの接続に、その本数に応じた記述がなされる。例えば図7(c)のJC端子接続対応表の一行目は、JCによって3本の電線が連結されていることを表している。JCによって3本以上の電線が連結されている場合、JB検査と同様に、第2番目の電線W2の候補が複数存在することになる。このため、〔JB検査の詳細〕にて説明したように、第2番目の電線W2の候補(実際には第2番目の電線W2ではない)に対して3階層検査以降の検査を実施し、次の電線を特定できなくなった場合には、「W/S検査」にすぐさま移行するのではなく、JCによって最初に分岐されたところまで遡り、別の第2番目の電線W2の候補を第2番目の電線W2とみたて、補器毎配線情報の該当行のT側端子との照合を実施する(JC検査において分岐まで遡り次の電線に対して多階層検査を実施する処理は、JB検査において図15を参照して説明した処理と同様である。)。そして、第2番目の電線W2の候補全てに関して導通成功しなかった場合、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(3)JCによる接続ではないとみなし、「W/S検査」に移行する。
以上の処理を経て、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうちのT部品名称とその端子の情報が、Fコネクタ名称とその端子の情報、またはTコネクタ名称とその端子の情報に含まれた部位毎コネクタ・配線情報の配列の一行を検索する。図7に示すように一致したものがみつかれば(図7(a)の補器毎配線情報の八行目と図7(b)の部位毎コネクタ・配線情報の下段の二行目が一致)、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は、部位毎コネクタ・配線情報の該当する二行(2階層検査の場合は2行であるが、n階層検査の場合はn行)によって表される、JCによって接続された電線によって導通されているとみなすことができる(導通成功)。他方、一致するものがみつからない場合には、上述したように、そのJC検査途中において3階層検査に移行、あるいはJC検査終了後にW/S検査に移行することになる。
〔W/S検査の詳細〕
W/S検査は、JC検査において電線を特定できなかった場合に実行される。図8に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)の一例を参照して、W/S検査の詳細を説明する。補器毎配線情報(a)及び部位毎コネクタ・配線情報(b)については、[単階層検査の詳細]における〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
W/S検査のアルゴリズムの詳細について説明する。W/S検査を実行する前には、単階層検査(2階層検査におけるW/S検査の場合)または(n−1)階層検査(n階層検査におけるW/S検査の場合)が実行されているため、それらの検査によって、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報(図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番)がデータ記憶部314に記録されている(〔単階層検査のアルゴリズム〕を参照。)。n階層検査におけるW/S検査を実行するにあたって、まず、データ記憶部314に記録された第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報を参照する。このとき、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端と第n番目の電線Wnの一端がW/Sによって接続されている場合、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報には、W/Sによる接続に固有の情報が含まれている。すなわち、Tコネクタ名称に「W/S−1」、コネクタ品番に「SSS−000−000」、端子に「%%1」、と固有の文字列が記述されている。この固有の文字列の有無を判別することにより、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端と第n番目の電線Wnの一端がW/Sによって接続されているか否かを判別することができる。図8(b)をみると、第1番目の電線W1の他端に関する情報として、Tコネクタ名称「W/S−1」、コネクタ品番「SSS−000−000」、端子「%%1」、C/N「1」が得られる。このようにして特定された第1番目の電線W1の他端から、以降の処理によって第2番目の電線W2の一端を特定する。一方、第1番目の電線W1の他端に関する情報にW/Sによる接続に固有の情報が含まれていない場合、「B/S検査」に移行する。
まず、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、Tコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番およびC/Nを参照する。電線の端部の接続がW/Sである場合、Tコネクタ品番には「SSS−000−000」が、C/Nには「1」が情報として保持されている。このため、Tコネクタ名称およびC/Nのデータを判別することで、第1番目の電線W1の他端がW/Sによって第2番目の電線W2に接続されているか否かがわかる。Tコネクタ名称およびC/Nに該当するデータが無ければ、「B/S検査」に移行する。図8(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の四行目において、Tコネクタ品番には「SSS−000−000」が、C/Nには「1」が、それぞれ保持されていることがわかる。
上述のTコネクタ名称およびC/Nに該当するデータが有れば、第1番目の電線W1に関する情報のうち、図面品番「E11−111」のうちの分割領域の識別情報「E11」を参照し、その識別情報「111」を図面品番に有する部位毎コネクタ・配線情報の行のなかで、コネクタ品番およびC/Nが「SSS−000−000」および「1」である行がないか照合する。該当する行があれば、さらに、その行のFコネクタ名称および端子が、第1番目の電線W1に関する情報のうちのTコネクタ名称および端子に一致するか照合する。尚、部位毎コネクタ・配線情報の行の中で図面品番の識別情報で対象行を絞ることができるのは、W/Sが同一分割領域内に位置する電線の端部の接続に限られるためである(図1(f)参照)。図8(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の二行目において、Tコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番およびC/Nが「SSS−000−000」および「1」であることがわかる。さらに、部位毎コネクタ・配線情報の上段の二行目のFコネクタ名称および端子は、第1番目の電線W1に関する情報のうちのTコネクタ名称「W/S−1」および端子「%%1」に一致する。
このようにして第2番目の電線W2が特定されれば(ここまでの処理が図2のS204に相当)、続いて、特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「B04」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「B04」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図8(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の二行目において、Tコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「B04」と一致することがわかる。
T側端子「B04」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のTコネクタ名称またはFコネクタ名称が、T部品名称「MAIN_ECU」に一致しないか照合する。ここで、T部品名称「MAIN_ECU」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図8(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の二行目において、Tコネクタ名称がT部品名称「MAIN_ECU」と一致することがわかる。こうして、第2番目の電線W2の他端が、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線の終点と一致することがわかる(図2のS205、Y)。このとき、図14を参照して説明した処理を実施することで、回路線の終点となる電気部品と第2番目の電線W2の他端とのコネクタによる嵌合状態をも照合するようにして、導通検査の精度をさらに向上させてもよい。この結果、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られているとみなし(図2のS207)、正否判定工程を終了する。
尚、3階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく必要がある。なぜなら、これらの情報は単階層検査で特定した第2番目の電線W2の他端に関する情報であり、3階層検査で第3番目の電線W3の一端を特定するためにこれらの情報が必要になるためである。
ここまでは、W/Sによって2本の電線が連結されている場合を説明した。しかし、W/Sによって3本以上の電線が連結されている場合も想定される。W/Sによって3本以上の電線が連結されている場合、JB検査およびJC検査と同様に、第2番目の電線W2の候補が複数存在することになる。このため、〔JB検査の詳細〕にて説明したように、第2番目の電線W2の候補(実際には第2番目の電線W2ではない)に対して3階層検査以降の検査を実施し、次の電線を特定できなくなった場合には、「B/S検査」にすぐさま移行するのではなく、W/Sによって最初に分岐されたところまで遡り、別の第2番目の電線W2の候補を第2番目の電線W2とみたて、補器毎配線情報の該当行のT側端子との照合を実施する(W/S検査において分岐まで遡り次の電線に対して多階層検査を実施する処理は、JB検査において図15を参照して説明した処理と同様である。)。そして、第2番目の電線W2の候補全てに関して導通成功しなかった場合、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(4)溶接(W/S)による接続ではないとみなし、「B/S検査」に移行する。
以上の処理を経て、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうちのT部品名称とその端子の情報が、Fコネクタ名称とその端子の情報、またはTコネクタ名称とその端子の情報に含まれた部位毎コネクタ・配線情報の配列の一行を検索する。図8に示すように一致したものがみつかれば(図8(a)の補器毎配線情報の五行目と図8(b)の部位毎コネクタ・配線情報の上段の二行目が一致)、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は、部位毎コネクタ・配線情報の該当する二行(2階層検査の場合は2行であるが、n階層検査の場合はn行)によって表される、W/Sによって接続された電線によって導通されているとみなすことができる(導通成功)。他方、一致するものがみつからない場合には、上述したように、そのW/S検査途中において3階層検査に移行、あるいはW/S検査終了後にB/S検査に移行することになる。
〔B/S検査の詳細〕
B/S検査は、W/S検査において電線を特定できなかった場合に実行される。図9に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)の一例を参照して、B/S検査の詳細を説明する。補器毎配線情報(a)及び部位毎コネクタ・配線情報(b)については、[単階層検査の詳細]における〔補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報〕にて説明したとおりであるため、説明を省略する。
B/S検査のアルゴリズムの詳細について説明する。B/S検査を実行する前には、単階層検査(2階層検査におけるB/S検査の場合)または(n−1)階層検査(n階層検査におけるB/S検査の場合)が実行されているため、それらの検査によって、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報(図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番)がデータ記憶部314に記録されている(〔単階層検査のアルゴリズム〕を参照。)。n階層検査におけるB/S検査を実行するにあたって、まず、データ記憶部314に記録された第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報を参照する。このとき、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端と第n番目の電線Wnの一端がB/Sによって接続されている場合、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端に関する情報には、B/Sによる接続に固有の情報が含まれている。すなわち、Tコネクタ名称、コネクタ品番およびC/Nに情報が保持されておらず(NULL)、端子に「#A1」、と固有の情報が記述されている。この固有の情報の有無を判別することにより、第(n−1)番目の電線W(n−1)の他端と第n番目の電線Wnの一端がB/Sによって接続されているか否かを判別することができる。図9(b)をみると、第1番目の電線W1の他端に関する情報として、Tコネクタ名称に情報が保持されておらず(NULL)、コネクタ品番に情報が保持されておらず(NULL)、端子「#A1」、C/Nに情報が保持されておらず(NULL)、が得られる。このようにして特定された第1番目の電線W1の他端から、以降の処理によって第2番目の電線W2の一端を特定する。一方、第1番目の電線W1の他端に関する情報にB/Sによる接続に固有の情報が含まれていない場合、B/S検査を終了する。
まず、第1番目の電線W1の他端に関する情報のうち、Tコネクタ名称、そのTコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番、およびそのTコネクタ名称と同じ組のC/Nを参照する。電線の端部の接続がB/Sである場合、Tコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nには情報が保持されていない(NULL)。このため、Tコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nのデータの有無を判別することで、第1番目の電線W1の他端がB/Sによって第2番目の電線W2に接続されているか否かがわかる。Tコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nにデータが有れば、B/S検査を終了する。図9(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の三行目において、Tコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nには情報が保持されていないことがわかる。
上述のTコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nにデータが無ければ、第1番目の電線W1に関する情報のうち、図面品番「E11−111」のうちの分割領域の識別情報「E11」を参照し、その識別情報「111」を図面品番に有する部位毎コネクタ・配線情報の行のなかで、Tコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nにデータが無い行がないか照合する。該当する行があれば、さらに、その行の端子が、第1番目の電線W1に関する情報のうちの端子に一致するか照合する。尚、部位毎コネクタ・配線情報の行の中で図面品番の識別情報で対象行を絞ることができるのは、B/Sが同一分割領域内に位置する電線の端部の接続に限られるためである(図1(f)参照)。図9(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の五行目において、Tコネクタ名称、コネクタ品番、およびC/Nに情報が無いことがわかる。さらに、部位毎コネクタ・配線情報の上段の五行目の端子は、第1番目の電線W1に関する情報のうちの端子「#A1」に一致する。
このようにして第2番目の電線W2が特定されれば(ここまでの処理が図2のS204に相当)、続いて、特定した部位毎コネクタ・配線情報の一行のうちの、他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子が、T側端子「A06」に一致しないか照合する。ここで、T側端子「A06」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図9(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の五行目において、Fコネクタ名称と同じ組の端子がT側端子「A06」と一致することがわかる。
T側端子「A06」に一致する他端側のTコネクタ名称と同じ組の端子、または他端側のFコネクタ名称と同じ組の端子があれば、続いて、該端子と同じ組のTコネクタ名称またはFコネクタ名称が、T部品名称「MAIN_ECU」に一致しないか照合する。ここで、T部品名称「MAIN_ECU」に一致しなければ、3階層検査に移行する。図9(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の上段の五行目において、Fコネクタ名称がT部品名称「MAIN_ECU」と一致することがわかる。こうして、第2番目の電線W2の他端が、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線の終点と一致することがわかる(図2のS205、Y)。このとき、図14を参照して説明した処理を実施することで、回路線の終点となる電気部品と第2番目の電線W2の他端とのコネクタによる嵌合状態をも照合するようにして、導通検査の精度をさらに向上させてもよい。この結果、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られているとみなし(図2のS207)、正否判定工程を終了する。
尚、3階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく必要がある。なぜなら、これらの情報は単階層検査で特定した第2番目の電線W2の他端に関する情報であり、3階層検査で第3番目の電線W3の一端を特定するためにこれらの情報が必要になるためである。
ここまでは、B/Sによって2本の電線が連結されている場合を説明した。しかし、B/Sによって3本以上の電線が連結されている場合も想定される。B/Sによって3本以上の電線が連結されている場合、JB検査およびJC検査と同様に、第2番目の電線W2の候補が複数存在することになる。このため、〔JB検査の詳細〕にて説明したように、第2番目の電線W2の候補(実際には第2番目の電線W2ではない)に対して3階層検査以降の検査を実施し、次の電線を特定できなくなった場合には、「B/S検査」をすぐさま終了するのではなく、B/Sによって最初に分岐されたところまで遡り、別の第2番目の電線W2の候補を第2番目の電線W2とみたて、補器毎配線情報の該当行のT側端子との照合を実施する(B/S検査において分岐まで遡り次の電線に対して多階層検査を実施する処理は、JB検査において図15を参照して説明した処理と同様である。)。そして、第2番目の電線W2の候補全てに関して導通成功しなかった場合、第1番目の電線W1と第2番目の電線W2の接続手段は(4)突き合わせ圧着による接続ではないとみなし、「B/S検査」を終了する。
以上の処理を経て、補器毎配線情報の配列から抽出した一行のうちのT部品名称とその端子の情報が、Fコネクタ名称とその端子の情報、またはTコネクタ名称とその端子の情報に含まれた部位毎コネクタ・配線情報の配列の一行を検索する。図9に示すように一致したものがみつかれば(図9(a)の補器毎配線情報の三行目と図9(b)の部位毎コネクタ・配線情報の上段の五行目が一致)、補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点は、部位毎コネクタ・配線情報の該当する二行(2階層検査の場合は2行であるが、n階層検査の場合はn行)によって表される、B/Sによって接続された電線によって導通されているとみなすことができる(導通成功)。他方、一致するものがみつからない場合には、上述したように、そのB/S検査途中においてB/S検査を終了、あるいはB/S検査の最後まで行き着いた後、B/S検査を終了する。
導通成功に到達することなくB/S検査が終了するとは、すなわち、「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」のいずれの検査によっても第2番目の電線W2を特定できなかったことと同義である。したがって、導通成功に到達することなくB/S検査が終了した場合(図2のS206、N)、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られていないとみなし(導通失敗:S208)、該当行の回路線に関する正否判定工程を終了する。そして、補器毎配線情報の別の行の回路線に対して正否判定工程を実行する。このようにして導通失敗と判定された補器毎配線情報の一行については、データ記憶部314に記録させるようにしておき、導通失敗した補器毎配線情報の回路線の一覧を表示部315に表示させるようにする。
以上のように、n階層検査では、「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」、「B/S検査」を順次行う。これらの一連の検査は、図2のフローチャートにおけるS204の処理に対応する。図10に示す、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとするn階層検査のフローチャートを参照し、上述の一連の検査の流れと図2のフローチャートとの関係を説明する。単階層検査からn階層検査に移行すると、まず、WtoW検査を実施する(S1001)。このWtoW検査によりコネクタによって接続された電線を特定できれば(S1002、Y)、該電線が第n番目の電線Wnとみなし(S1012)、S206の処理に移行する。このWtoW検査によりコネクタによって接続された電線を特定できなければ(S1002、N)、JB検査を実施する(S1003)。このJB検査によりJBによって接続された電線を特定できれば(S1004、Y)、該電線が第n番目の電線Wnとみなし(S1012)、S206の処理に移行する。このJB検査によりJBによって接続された電線を特定できなければ(S1004、N)、JC検査を実施する(S1005)。このJC検査によりJCによって接続された電線を特定できれば(S1006、Y)、該電線が第n番目の電線Wnとみなし(S1012)、S206の処理に移行する。このJC検査によりJCによって接続された電線を特定できなければ(S1006、N)、W/S検査を実施する(S1007)。このW/S検査によりW/Sによって接続された電線を特定できれば(S1008、Y)、該電線が第n番目の電線Wnとみなし(S1012)、S206の処理に移行する。このW/S検査によりW/Sによって接続された電線を特定できなければ(S1008、N)、B/S検査を実施する(S1009)。このB/S検査によりB/Sによって接続された電線を特定できれば(S1010、Y)、該電線が第n番目の電線Wnとみなし(S1012)、S206の処理に移行する。このB/S検査によりB/Sによって接続された電線を特定できなければ(S1010、N)、第n番目の電線Wnは無いとみなし(S1013)、S206の処理に移行する。
[逆追い検査の詳細]
続いて、〔単階層検査のアルゴリズム〕にて触れた逆追い検査(図2のS211の処理)について説明する。補器毎配線情報にはヒューズやリレーについての記述があるが、これらの部品は部位毎コネクタ・配線情報にはJBの内部に組み込まれたものとして記述されている。すなわち、ヒューズやリレーは補器毎配線情報のF部品名称にヒューズを識別する名称が、そのF部品名称と同じ組の端子にはそのヒューズの端子が、それぞれ記述されるが、一方、部位毎コネクタ・配線情報のFコネクタ名称にはJBのを識別する名称が記述される。このため、単階層検査において、始点にヒューズまたはリレーが接続された回路線の正否判定工程を実施しても、そのヒューズまたはリレーに一端が接続された第1番目の電線W1を部位毎コネクタ・配線情報から特定することができず(なぜなら、部位毎コネクタ・配線情報では、その第1番目の電線W1の一端はJBに接続されていることになっているため。)、したがって、補器毎配線情報に記述されている該当回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られていないとみなされてしまう。このような誤った正否判定工程を防ぐために、以降で説明する逆追い検査を実施する。図11に示す、補器毎配線情報(a)と部位毎コネクタ・配線情報(b)とJB−コネクタ対応表(c)とJB端子接続対応表(d)の一例を参照して、逆追い検査の詳細を説明する。なお、補器毎配線情報、部位毎コネクタ・配線情報、JB−コネクタ対応表、およびJB端子接続対応表は、〔JB検査の詳細〕において説明したとおりであるため、説明を省略する。
逆追い検査を実行する前には、単階層検査が実行されている。この単階層検査において、部位毎コネクタ・配線情報の配列全体を参照して、Fコネクタ名称と同じ組の端子、またはTコネクタ名称と同じ組の端子の中に、F側端子に一致するものがない場合、または、そのF側端子に一致する端子はあるものの、該端子と同じ組のFコネクタ名称またはTコネクタ名称の中に、F部品名称に一致するものがない場合に、逆追い検査が実行される。
まず、補器毎配線情報から抽出した該当行の、F部品名称を参照する。図11(a)をみると、補器毎配線情報の三行目にヒューズを表す記述「F:DOME」がF部品名称に含まれていることがわかる。
続いて、参照した上述のF部品名称がキャビティの接続に記述された行がJB端子接続対応表にないか照合する。図11(d)をみると、JB端子接続対応表の四行目に、「F:DOME」が記述されていることがわかる。該当する行があるJB端子接続対応表にある場合、該当する行の本体品番、およびキャビティの接続を参照する。
続いて、参照した上述の該当する行の本体品番、および、キャビティの接続のうちのヒューズまたはリレーの記述を除く情報を抽出する。図11(d)をみると、JB端子接続対応表の四行目では、本体品番は「888−000−111」であり、ヒューズを表す記述「F:DOME」がコネクタ嵌合位置「B」におけるキャビティ位置「4」と(「B4」を参照した。)に導通していることが表されている。
続いて、抽出した上述の本体品番、およびキャビティの接続のうちのヒューズまたはリレーの記述を除く情報を基に、キャビティの接続に記述されたコネクタ嵌合位置に嵌合するコネクタを特定する。図11(c)をみると、JB−コネクタ対応表の二行目は、本体品番「888−000−111」、コネクタ嵌合位置「B」がそれぞれ含まれていることがわかる。こうして、JB−コネクタ対応表の二行目に記述されたコネクタ品番「888−000−111」およびコネクタ名称「J/B−1−2−3」によって特定されるコネクタが、上述のヒューズに導通された端子を含んでいることがわかる。
このようにしてJB−コネクタ対応表から特定した行の情報を参照して、続いて部位毎コネクタ・配線情報に対して照合を行う。まず、JB−コネクタ対応表から特定した一行のコネクタ品番およびコネクタ名称を参照し、Fコネクタ名称および該Fコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番、または、Tコネクタ名称および該Tコネクタ名称と同じ組のコネクタ品番が一致する行が部位毎コネクタ・配線情報にないか照合する。図11(b)をみると、部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目に、JB−コネクタ対応表の二行目のコネクタ品番「111−000−113」、コネクタ名称「J/B−1−2−3」に一致するFコネクタ名称、コネクタ品番が含まれていることがわかる。このようにして部位毎コネクタ・配線情報の一行(図11(b)では部位毎コネクタ・配線情報の下段の三行目)を特定することができれば、該当する一行は、回路線の始点であるヒューズまたはリレーに一端が接続された第1番目の電線W1とみなすことができる(逆追い成功。図2のS211、Y)。以降、図2のS203に移行し、その第1番目の電線W1の他端が回路線の終点に一致するか否かを判別することになる。一方、部位毎コネクタ・配線情報の一行を特定することができなければ(逆追い失敗。図2のS211、N)、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られていないとみなし(導通失敗:S208)、該当行の回路線に関する正否判定工程を終了する。
ところで、上述した逆追い検査の説明では、ヒューズに導通するキャビティ位置が一つの場合であった。当然、ヒューズに導通するキャビティ位置が複数ある場合も考えられる。その場合には、JB端子接続対応表のキャビティの接続に、その個数に応じた記述がなされる。JB内のヒューズまたはリレーに2本以上の電線が連結されている場合、第1番目の電線W1の候補が複数存在することになる。このため、〔JB検査の詳細〕にて第2番目の電線W2に関して説明したのと同様に、第1番目の電線W1の候補(実際には第1番目の電線W1ではない)に対して2階層検査以降の検査を実施し、次の電線を特定できなくなった場合には、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られていないとすぐさまみなす(導通失敗:S208)のではなく、ヒューズによって分岐されたところまで遡り、別の第1番目の電線W1の候補を第1番目の電線W1とみたて、その電線W1の他端が回路線の終点に一致するか否かを判別する(S203)。そして、第1番目の電線W1の候補全てに関して次の電線を特定できなかった場合、補器毎配線情報に記述されている該当行の回路線は、部位毎コネクタ・配線情報において導通が図られていないとみなす(導通失敗:S208)。
[事前電線結合工程]
さて、上述した多階層検査では、該補器毎配線情報の配列を構成する任意の一行を抽出し、その一行に対して多階層検査を実行する際、該補器毎配線情報の一行と、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列の一行と、を照合する作業を繰り返す。このため、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列の行数が少ないほど、正否判定工程に要する時間を短縮することができる。ここでは、正否判定工程を実行する前に、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列の行数を、その正否判定工程の精度に影響を与えることなく、削減することにより、その正否判定工程に要する時間を短縮することができる手法について説明する。図12に、事前電線結合工程前後の部位毎コネクタ・配線情報の一例(図12(a)は図5(b)と同一)を、図13に、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする事前電線結合工程の概要を説明する図を、それぞれ示す。
[多階層検査の概要]にて説明したように、部位毎コネクタ・配線情報には、対象となる車両の分割領域毎に配索可能なワイヤハーネスが記述されている。図13(a)に示す部位毎コネクタ・配線情報には、図面品番「E11−111」のうちの識別情報「E11」によって識別される分割領域に配索可能な、図12(a)の上段の配列に示される5本の電線(図13(a)では上から3行のみを記載)を備えるワイヤハーネス、図面品番「E21−111」のうちの識別情報「E21」によって識別される分割領域に配索可能な、図12(a)の中段の配列に示される3本の電線を備えるワイヤハーネス、および、図面品番「E41−111」のうちの識別情報「E41」によって識別される分割領域に配索可能な、図12(a)の下段の配列に示される3本の電線を備えるワイヤハーネス、がそれぞれ記述されている。
ここで、図13(a)に示す部位毎コネクタ・配線情報において、多階層検査のWtoW検査の実行過程において、図12(a)の下段の一行目によって特定される電線の他端と、図12(a)の上段の三行目によって特定される電線の一端と、がコネクタを介して接続されていることを特定することができることは[WtoW検査の詳細]で説明したとおりである。より詳細には、これらの二行によって特定される2本の電線は、「WtoW−E11−8」)という名称のコネクタ(図12(a)の下段の一行目を参照。)と、「WtoW−E41−2」)という名称のコネクタ(図12(a)の上段の三行目を参照。)と、を介して接続される。
ところで、[WtoW検査の詳細]で説明したWtoW検査は、補器毎配線情報に記述された一行の始点および終点が、部位毎コネクタ・配線情報に記述された電線の一端および他端(複数本の電線が連結されている場合は、第1番目の電線W1の一端および第n番目の電線Wnの他端)が一致するか否かを判別するものであった。しかし、このWtoW検査の一過程を応用すれば、すなわち、ある電線W(n−1)の他端に一端が接続された電線Wnを特定する処理のみを利用すれば、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列のうち、コネクタによって接続された2本の電線を特定することができる。[事前電線結合工程]では、まず、正否判定工程を実行する前に、部位毎コネクタ・配線情報を参照して上述のWtoW検査の一過程を実行することにより、コネクタを介して接続された2本の電線を特定する。図13(a)では、「WtoW−E11−8」)という名称のコネクタが他端に接続された電線と、「WtoW−E41−2」という名称のコネクタが一端に接続された電線と、がそのコネクタを介して接続されていることが、上述のWtoW検査の一過程を実行することにより特定されたことを示している。
このようにして接続されていることが特定された2本の電線を、続いて、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列上で仮想的に嵌合させる(図13(b)参照。)。仮想的に嵌合させる処理とは、すなわち、接続された状態にある、第1の電線に関する一行および第2の電線に関する一行を部位毎コネクタ・配線情報から削除し、その第1の電線と第2の電線とを1本の電線とみなして、第1の電線のうちの一端に関する情報および第2の電線の他端に関する情報から成る一行を部位毎コネクタ・配線情報に新たに追加する処理である。この仮想的に嵌合させる処理の具体例を図12(b)、図13(c)を参照して説明する。
図12(b)では、図12(a)の下段の一行目によって特定される電線と、図12(a)の上段の三行目によって特定される電線とが1本の電線としてみなされる。そして、図12(a)の下段の一行目によって特定される電線に関する情報、および、図12(a)の上段の三行目によって特定される電線に関する情報が削除される。さらに、図12(a)の下段の一行目によって特定される電線の一端に関する情報である、Fコネクタ名称「MAIN_ECU」、コネクタ品番「111−000−111」、端子「A01」、C/N「4」、および、図12(a)の上段の三行目によって特定される電線の他端に関する情報である、Tコネクタ名称「ABS_SWITCH」、コネクタ品番「111−000−111」、端子「A02」、C/N「4」、から成る一行が、部位毎コネクタ・配線情報における図面品番「ADD−111」の下段の一行目に追加されている。図面品番「ADD−111」は、第1の電線のうちの一端に関する情報および第2の電線の他端に関する情報から成る一行について記載するために新たに追加されたものである。尚、図面品番は、「−」より前の部分が該当車両における分割領域の識別情報を表すが、1本の電線とみなされたものは複数の分割領域を跨っているものであるため、その電線が配索された一つの分割領域を特定することはできない。このため、新たに追加した図面品番には、「−」より前の部分に分割領域を指定するものではない「ADD」という情報を記述し、この図面品番に記載された電線は、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列上で仮想的に嵌合されたものであることを識別できるようにしている。尚、「ADD−111」と記述する代わりに、仮想的に嵌合された複数の電線を後々識別できるように、その識別情報を付加するようにしてもよい。図12(b)にて示す場合では、例えば、1本とみなされた電線を構成する2本の電線を識別する「E11−111」及び「E41−111」を新たに追加した図面品番「E11−111&E41−111」として付加する。このようにすれば、部位毎コネクタ・配線情報における図面品番「E11−111&E41−111」が追加され、その図面品番に追加された一行は、その図面品番をみればどのワイヤハーネスの電線が仮想的に嵌合されたものなのかを識別することができる。1本とみなされた電線がどのワイヤハーネスの電線が仮想的に嵌合されたものなのかを判別可能にしておくことは、後述する[多階層検査の効率化]において有用となる。
この仮想的に嵌合させる処理を概念的に説明した図が、図13(b)、図13(c)である。図13(b)は、図面品番「E41−111」の一行目(図12(a)の下段の一行目)によって特定される電線の他端に関する情報と、図面品番「E11−111」の三行目(図12(a)の上段の三行目)によって特定される電線の一端に関する情報が削除されている様子を表している。さらに、図13(c)は、図面品番「E11−111」の三行目(図12(a)の上段の三行目)によって特定される電線の他端に関する情報と、図面品番「E41−111」の一行目(図12(a)の下段の一行目)によって特定される電線の一端に関する情報が削除されるとともに、それらの他端および一端を端部に有する一本の電線が図面品番「ADD−111」の一行目に記録される様子を表している。この結果、図13(c)に示すように、部位毎コネクタ・配線情報における図面品番「E11−111」および「E41−111」の配列それぞれから一行が削除され、部位毎コネクタ・配線情報における図面品番「ADD−111」の配列に一行追加され、その結果、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列の行数が一行削減されたことになる。以上が、事前電線結合工程の詳細である。
事前電線結合工程を説明するにあたって、WtoW検査の一過程を応用する場合について説明した。しかし、同様にJB検査、JC検査、W/S検査およびB/S検査の一過程(つまり、ある電線W(n−1)の他端に一端が接続された電線Wnを特定する処理のみ)を応用することにより、JBを介して接続される2本の電線、JCを介して接続される2本の電線、W/Sによって接続される2本の電線、およびB/Sによって接続される2本の電線を、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列上で仮想的に接続させることができる。尚、これらの場合、一つの電線W1に複数本の電線W21、W22、W23、・・・W2x(xは、電線W1に連結される電線の本数)が連結されている場合がある。このときには、部位毎コネクタ・配線情報における電線W1を特定する一行と、部位毎コネクタ・配線情報におけるW2x各々と、を対象にして、上述の事前電線結合工程を実行すればよい。
以上、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする事前電線結合工程によれば、WtoW検査、JB検査、JC検査、W/S検査およびB/S検査の一過程のいずれかを応用して、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列上で仮想的に接続させる事前電線結合工程を実行しておけば、部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列の行数を削減することにより、その正否判定工程に要する時間を短縮することができる。仮に、WtoW検査、JB検査、JC検査、W/S検査およびB/S検査の一過程の全てを応用して部位毎コネクタ・配線情報を形成する配列上で仮想的に接続させる事前電線結合工程を実行した後、正否判定工程を実行すれば、その正否判定工程は、補器毎配線情報と部位毎コネクタ・配線情報の記述に誤りがない限り、単階層検査のみで完了するはずである。
[多階層検査の出力]
以降では、多階層検査により判別した結果(導通成功または導通失敗)を出力する手法について説明する。多階層検査では、〔単階層検査のアルゴリズム〕で説明したように、補器毎配線情報を参照して、該補器毎配線情報の配列を構成する任意の一行を抽出し、その一行に対して多階層検査を実行する。このため、補器毎配線情報の配列を構成する一行単位で、多階層検査により判別された結果が得られることになる。このため、最も簡易な多階層検査の出力手法は、補器毎配線情報の配列を構成する一行単位に、導通成功または導通失敗を出力するものである。しかし、この手法では、導通成功または導通失敗は識別できるものの、多階層検査により判別された結果が導通成功の場合、補器毎配線情報の配列を構成する一行がどの電線を経由して接続されたのか特定することはできない。さらに、多階層検査により判別された結果が導通失敗の場合、多階層検査におけるどの階層の検査で導通失敗になったのか特定することができない。そこで、ここでは、導通成功または導通失敗に至る多階層検査の検査履歴を記録し、それを出力表示する手法について、図16、図17および図18に示す、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする多階層検査の結果の記録方法の概念図を参照して、説明する。
多階層検査はまず単階層検査を実行する。単階層検査ではまず、〔単階層検査のアルゴリズム〕で説明したように、補器毎配線情報を参照して、該補器毎配線情報の配列を構成する任意の一行を抽出している。この一行に記述されている情報を記録する。以後、この一行に対応付けて、検査履歴を記録していく。尚、該一行に対する多階層検査終了後には、別の一行についての多階層検査が実行されることになるが、そのときも、該別の一行に対応付けて、検査履歴を記録していくことになる。
ところで、〔単階層検査のアルゴリズム〕で説明したように、単階層検査を実行したとき、その検査の結果には、導通失敗、導通成功または2階層検査への移行の3つが考えられる。単階層検査の結果が導通失敗であった場合(図16(a)参照。)、「単階層検査」で「導通失敗」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(a)では、「×」によって導通失敗した旨が表されている)。また、同様に、単階層検査の結果が導通成功であった場合、「単階層検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する。単階層検査にてその検査の結果が導通失敗または導通成功の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
一方、単階層検査の結果が2階層検査への移行であった場合(図16(b)参照。)、「2階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(b)では、「単階層検査」の右に位置する「−」から、下方に延びる「L」字状の線分によって「2階層検査へ移行」が表されている。)。単階層検査にてその検査の結果が2階層検査への移行の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、継続する。
続いて、多階層検査はn階層検査を実行する。n階層検査では、[n階層検査の詳細]で説明したように、「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」の順に検査が実行される。n階層検査のうち、「WtoW検査」を実行したとき、その検査の結果には、〔WtoW検査の詳細〕にて説明したように、導通成功、JB検査への移行、または(n+1)階層検査への移行が考えられる。n階層検査のうちのWtoW検査の結果が導通成功であった場合、「n階層検査」の「WtoW検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(b)では、「○」によって導通成功した旨が表されている)。n階層検査のWtoW検査にてその検査の結果が導通成功の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
一方、n階層検査のうちのWtoW検査の結果がJB検査への移行であった場合、「n階層検査」の「WtoW検査」から「JB検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(c)では、「WtoW検査」から右方に延びる線分で表される「−」によって、「JB検査へ移行」が表されている。)。また、n階層検査のうちのWtoW検査の結果が(n+1)階層検査への移行であった場合、「n階層検査」の「WtoW検査」から「(n+1)階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(d)では、「WtoW検査」の右に位置する「−」から、下方に延びる「L」字状の線分によって「3階層検査へ移行」が表されている。)。n階層検査のWtoW検査にてその検査の結果がJB検査へ移行、または(n+1)階層検査への移行、の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、継続する。
さらに、n階層検査のうち、「JB検査」を実行したとき、その検査の結果には、〔JB検査の詳細〕にて説明したように、導通成功、JC検査への移行、または(n+1)階層検査への移行が考えられる。n階層検査のうちのJB検査の結果が導通成功であった場合、「n階層検査」の「JB検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(e)参照)。n階層検査のJB検査にてその検査の結果が導通成功の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
一方、n階層検査のうちのJB検査の結果がJC検査への移行であった場合、「n階層検査」の「JB検査」から「JC検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(f)では、「JB検査」から右方に延びる線分で表される「−」によって、「JC検査へ移行」が表されている。)。また、n階層検査のうちのJB検査の結果が(n+1)階層検査への移行であった場合、「n階層検査」の「JB検査」から「(n+1)階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(g)では、「JB検査」の右に位置する「−」から、下方に延びる「L」字状の線分によって「3階層検査へ移行」が表されている。)。n階層検査のJB検査にてその検査の結果がJC検査へ移行、または(n+1)階層検査への移行、の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、継続する。
さらに、n階層検査のうち、「JC検査」を実行したとき、その検査の結果には、〔JC検査の詳細〕にて説明したように、導通成功、W/S検査への移行、または(n+1)階層検査への移行が考えられる。n階層検査のうちのJC検査の結果が導通成功であった場合、「n階層検査」の「JC検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図17(a)参照)。n階層検査のJC検査にてその検査の結果が導通成功の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
一方、n階層検査のうちのJC検査の結果がW/S検査への移行であった場合、「n階層検査」の「JC検査」から「W/S検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図17(b)では、「JC検査」から右方に延びる線分で表される「−」によって、「W/S検査へ移行」が表されている。)。また、n階層検査のうちのJC検査の結果が(n+1)階層検査への移行であった場合、「n階層検査」の「JC検査」から「(n+1)階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図17(c)では、「JC検査」の右に位置する「−」から、下方に延びる「L」字状の線分によって「3階層検査へ移行」が表されている。)。n階層検査のJC検査にてその検査の結果がW/S検査へ移行、または(n+1)階層検査への移行、の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、継続する。
さらに、n階層検査のうち、「W/S検査」を実行したとき、その検査の結果には、〔W/S検査の詳細〕にて説明したように、導通成功、B/S検査への移行、または(n+1)階層検査への移行が考えられる。n階層検査のうちのW/S検査の結果が導通成功であった場合、「n階層検査」の「W/S検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図17(d)参照)。n階層検査のW/S検査にてその検査の結果が導通成功の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
一方、n階層検査のうちのW/S検査の結果がB/S検査への移行であった場合、「n階層検査」の「W/S検査」から「B/S検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図17(e)では、「W/S検査」から右方に延びる線分で表される「−」によって、「B/S検査へ移行」が表されている。)。また、n階層検査のうちのW/S検査の結果が(n+1)階層検査への移行であった場合、「n階層検査」の「W/S検査」から「(n+1)階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図17(f)では、「W/S検査」の右に位置する「−」から、下方に延びる「L」字状の線分によって「3階層検査へ移行」が表されている。)。n階層検査のW/S検査にてその検査の結果がB/S検査へ移行、または(n+1)階層検査への移行、の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、継続する。
さらに、n階層検査のうち、「B/S検査」を実行したとき、その検査の結果には、〔B/S検査の詳細〕にて説明したように、導通成功、導通失敗または(n+1)階層検査への移行が考えられる。n階層検査のうちのB/S検査の結果が導通成功であった場合、「n階層検査」の「B/S検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図18(a)参照)。また同様に、n階層検査のうちのB/S検査の結果が導通成功であった場合、「n階層検査」の「B/S検査」で「導通失敗」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図18(b)参照)。n階層検査のB/S検査にてその検査の結果が導通成功または導通失敗の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
一方、n階層検査のうちのB/S検査の結果が(n+1)階層検査への移行であった場合、「n階層検査」の「B/S検査」から「(n+1)階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図18(c)では、「B/S検査」の右に位置する「−」から、下方に延びる「L」字状の線分によって「3階層検査へ移行」が表されている。)。n階層検査のB/S検査にてその検査の結果が(n+1)階層検査への移行の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、継続する。
以上が、多階層検査の結果を記録する流れである。上述では、図16から図18を参照して、主に、n階層検査の一例として2階層検査を上げ、導通成功、導通失敗、その2階層検査における「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」への移行、および、3階層検査への移行、の検査の結果毎の履歴の記録方法について詳細に説明した。3階層検査以降のn階層検査についても、上述した2階層検査を繰り返し実行することで、その履歴を記録することができる。
尚、[事前電線結合工程]で説明した処理を経て追加された一行は、一本の電線としてみなされているため、ある階層において導通検査が実施されている。そして、その階層における履歴として、導通成功、導通失敗、同一の階層検査における「WtoW検査」、「JB検査」、「JC検査」、「W/S検査」および「B/S検査」への移行、および、次の階層検査への移行、が記録されることになる。これは、すなわち、[事前電線結合工程]を経ていなければ、それぞれ別々に各階層において導通検査が実施され、各階層における履歴として記録されていたはずの複数本の電線が、一本の電線としてみなされているために、ある一つの階層における履歴として記録されることを意味する。
さらに、〔JB検査の詳細〕、〔JC検査の詳細〕、〔W/S検査の詳細〕および〔B/S検査の詳細〕にて、n階層検査から(n+1)階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく、つまり、n階層検査で特定した第n番目の電線Wnの他端に関する情報を記録しておく、と述べた。この情報を、n階層検査にて(n+1)階層検査への移行との結果が得られた場合に上述の履歴の一情報として付加しておくようにする(図16〜図18では、黒塗りの丸「●」によって、n階層検査で特定した第n番目の電線Wnの他端に関する情報が付加されていることが表されている。)。こうすることにより、(n+1)階層検査において導通失敗と判別された履歴が記録されている場合に、n階層検査に至るまでに特定した第1番目の電線W1、第2番目の電線W2、・・・第n番目の電線Wnを特定することができる。この結果、(n+1)階層検査において導通失敗と判別された原因が、第1番目の電線W1、第2番目の電線W2、・・・第n番目の電線Wnのどの電線にあったのか、履歴の出力を確認することにより辿ることができる。
ところで、JB、JC、W/SまたはB/Sを介して電線を連結させる場合は、[多階層検査の概要]、〔JB検査の詳細〕、〔JC検査の詳細〕、〔W/S検査の詳細〕および〔B/S検査の詳細〕にて説明したように、一つの電線に連結される電線が複数あるため、これらの複数の電線それぞれにおいて、その他端が回路線の終点に一致しないか判別されている。このため、n階層検査におけるJB検査、JC検査、W/S検査またはB/Sにおいてその検査の結果もまた、これらの複数の電線Wn1、Wn2、Wn3・・・Wnx(xは、一つの電線W(n−1)に連結される電線の本数)それぞれに得られる。この場合に検査履歴を記録する手法について、図19に示す、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする多階層検査の結果の記録方法の概念図(一つの電線に複数の電線が連結されている場合)を参照して、JB検査の場合を例に挙げて説明する。
n階層検査のうち、「JB検査」を実行したとき、その検査の結果には、〔JB検査の詳細〕にて説明したように、導通成功、JC検査への移行、または(n+1)階層検査への移行が考えられる。
2階層検査のうちのJB検査の結果が導通成功であった場合、「2階層検査」の「JB検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録されるが(図16(e)参照)、このとき単階層検査によって特定した電線W1の他端にJBを介して接続される電線W21、W22、W23それぞれにも、次のようなステータスが記録されている。
例えば、図19(a)に示す電線W21、W22、W23の場合を説明する。電線W21および電線W22は、その他端に一端が接続される第3番目の電線W3を特定できず、且つ、その他端が補器毎配線情報の配列から抽出された一行の終点とは一致しないものである。また、電線W23は、その他端が補器毎配線情報の配列から抽出された一行の終点と一致するものである。これは、図16(e)の履歴に対応する。
このような場合、電線W21、W22、W23それぞれには、次のようなステータスが記録される。すなわち、電線W21には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点不一致」とのステータスが記録される。また、電線W22には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点不一致」とのステータスが記録される。また、電線W23には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点一致」とのステータスが記録される。2階層検査におけるJB検査の結果が導通成功であった場合、電線W21、W22、W23のいずれか一つに「終点一致」のステータスが記録されている。このように、複数の電線それぞれにおいて、その他端が回路線の終点に一致しないか判別され、電線のいずれか一つに「終点一致」のステータスが割り当てられている場合、「n階層検査」の「JB検査」で「導通成功」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(e)参照)。n階層検査のJB検査にてその検査の結果が導通成功の場合、該当する一行に対する検査履歴の記録は、これをもって終了する。
次に、2階層検査のうちのJB検査の結果がJC検査への移行であった場合を説明する。例えば、図19(b)に示す電線W21、W22、W23の場合を説明する。電線W21、W22およびW23は、その他端に一端が接続される第3番目の電線W3を特定できず、且つ、その他端が補器毎配線情報の配列から抽出された一行の終点とは一致しないものである。これは、図16(f)の履歴に対応する。
このような場合、電線W21、W22、W23それぞれには、次のようなステータスが記録される。すなわち、電線W21には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点不一致」とのステータスが記録される。また、電線W22には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点不一致」とのステータスが記録される。また、電線23には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点不一致」とのステータスが記録される。2階層検査におけるJB検査の結果がJC検査への移行であった場合、電線W21、W22、W23の全てに「終点不一致」のステータスが記録されている。このように、複数の電線それぞれにおいて、その他端が回路線の終点に一致しないか判別され、電線の全てに「終点不一致」のステータスが割り当てられている場合、「n階層検査」の「JB検査」から「JC検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(f)参照。)。
さらに、2階層検査のうちのJB検査の結果が3階層検査への移行であった場合を説明する。例えば、図19(c)に示す電線W21、W22、W23の場合を説明する。電線W21は、その他端に一端が接続される第3番目の電線W3を特定できず、且つ、その他端が補器毎配線情報の配列から抽出された一行の終点とは一致しないものである。また、電線W22は、その他端にコネクタを介して一端が接続される第3番目の電線W3を特定できたものの、その電線W3の他端に一端が接続される第4番目の電線W4を特定できず、且つ、その電線W3の他端が補器毎配線情報の配列から抽出された一行の終点とは一致しないものである。また、電線W23は、その他端にコネクタを介して一端が接続される第3番目の電線W3を特定できたものの、その電線W3の他端に一端が接続される第4番目の電線W4を特定できず、且つ、その電線W3の他端が補器毎配線情報の配列から抽出された一行の終点とは一致するものである。これは、図16(g)の履歴に対応する。
このような場合、電線W21、W22、W23それぞれには、次のようなステータスが記録される。すなわち、電線W21には、「2階層検査」の「JB検査」で「終点不一致」とのステータスが記録される。また、電線W22には、「3階層検査へ移行」とのステータスが記録される。また、電線W23には、「3階層検査へ移行」とのステータスが記録される。2階層検査におけるJB検査の結果が3階層検査への移行であった場合、電線W21、W22、W23のいずれか一つに「3階層検査へ移行」のステータスが記録されている。このように、複数の電線それぞれにおいて、その他端が回路線の終点に一致しないか判別され、電線のいずれにも「終点一致」のステータスが割り当てられておらず、且つ、電線のいずれかに「3階層検査へ移行」のステータスが割り当てられている場合、「n階層検査」の「JB検査」から「(n+1)階層検査へ移行」というステータスを該当する一行に対応付けて記録する(図16(g)参照。)。
JBを介して一つの電線に複数本の電線を連結させる場合も、以上のようにして、複数の電線Wn1、Wn2、Wn3・・・Wnx毎に検査履歴が記録される。JC、W/SまたはB/Sを介して一つの電線に複数本の電線を連結させる場合も、JBを介した場合と同様である。
本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする多階層検査の出力によれば、多階層検査により判別された結果が導通成功の場合、補器毎配線情報の配列を構成する一行がどの電線を経由して接続されたのか特定することができる。さらに、多階層検査により判別された結果が導通失敗の場合、多階層検査におけるどの階層の検査で導通失敗になったのか特定することができる。これにより、正否判定工程に要する負担、特に、導通失敗箇所を特定するためにワイヤハーネスを設計する設計者にかける負担、を大きく軽減することができる。
[多階層検査の効率化]
〔多階層検査の効率化の概要]
これまでに説明した多階層検査は、各分割領域にワイヤハーネスが一つ割り当てられた一つの部位毎コネクタ・配線情報に対して行われる導通検査である。
ところで、対象となる車両の分割領域毎に配索可能なワイヤハーネスを特定することによって部位毎コネクタ・配線情報を作成する際、分割領域に配索可能なワイヤハーネスの候補が複数存在する場合がある。仮に、車両空間が3つの分割領域によって区分けされる場合であって該分割領域に配索可能なワイヤハーネスの候補がそれぞれ2パターンあるとき、部位毎コネクタ・配線情報は8(2×2×2)パターン作成される。これまで説明した多階層検査は、この8パターンのうちの一つのパターンに対して行われる導通検査であり、8パターンのそれぞれに対して多階層検査が実施される必要がある。
しかしながら、分割領域に配索可能なワイヤハーネスの候補が増えれば増えるほど、部位毎コネクタ・配線情報のパターン作成個数も増えることになる。その結果、部位毎コネクタ・配線情報それぞれに対して実施される正否判定工程に多大な時間を要することになってしまう。このため、[多階層検査の効率化]では、正否判定工程に要する時間を短縮する手法について説明する。
まず、正否判定工程に要する時間を短縮する手法を説明するのに先立って、分割領域とその分割領域に配索可能なワイヤハーネスの関係についてその概略を図20を参照して説明する。図20は、分割領域毎に設置された電気部品間の接続状況を説明する図である。
正否判定工程では、ひとまとまりの補器毎配線情報(ひとまとまりの補器毎配線情報は、ヘッドランプシステム、エアバックシステム、エアコンシステム、エンジンコントロールシステム、ABSシステム等のそれぞれ独立して駆動するシステム毎に一つ指定された、複数の補器毎配線情報から構成される。)と、ひとまとまりの部位毎コネクタ・配線情報(ひとまとまりの部位毎コネクタ・配線情報は、分割領域毎に一つのワイヤハーネスが指定された、複数の部位毎コネクタ・配線情報から構成される。)と、を用いて、導通の有無が検査される。
図20(a)では、車両空間が分割領域A、B、Cの3つに区分けされた状態を示している。分割領域Aには電気部品E11が、分割領域Bには電気部品E21、E22が、分割領域Cには電気部品E31、E32が、それぞれ設置されている。また、分割領域A、Bに配索されたワイヤハーネスW1、W2が、各ワイヤハーネスW1、W2の端末に設けられたコネクタCabを介して電気部品間を接続し、分割領域B、Cに配索されたワイヤハーネスW2、W3が、各ワイヤハーネスW2、W3の端末に設けられたコネクタCbc1、Cbc2を介して電気部品間を接続している。
図20(b)では、車両空間が分割領域A、B、Cの3つに区分けされた状態を示している。分割領域Aには電気部品E11が、分割領域Bには電気部品E21、E22が、分割領域Cには電気部品E31が、それぞれ設置されている。また、分割領域A、Bに配索されたワイヤハーネスW1、W2が、各ワイヤハーネスW1、W2の端末に設けられたコネクタCabを介して電気部品間を接続し、分割領域B、Cに配索されたワイヤハーネスW2、W3が、各ワイヤハーネスW2、W3の端末に設けられたコネクタCbc1を介して電気部品間を接続している。
図20(a)における電気部品間の接続をみると、分割領域Aに設置された電気部品E11は、分割領域Bに設置された電気部品E21、E22とワイヤハーネスW1、W2を介して接続されている。また、分割領域Aに設置された電気部品E11は、分割領域Cに設置された電気部品E31とワイヤハーネスW1、W2、W3を介して接続されている。また、分割領域Bに設置された電気部品E21、22は、分割領域Cに設置された電気部品E31とワイヤハーネスW2、W3を介して接続されている。また、分割領域Bに設置された電気部品E22は、分割領域Cに設置された電気部品E32とワイヤハーネスW2、W3を介して接続されている。
図20(a)に示す電気部品間の接続状況では、電気部品E11−E21間、電気部品E11−E22間、電気部品E11−E31間、電気部品E21−E31間、電気部品E22−E31間及び電気部品E22−E32間それぞれに対して導通検査を実施する必要がある。
一方、図20(b)における電気部品間の接続をみると、分割領域Aに設置された電気部品E11は、分割領域Bに設置された電気部品E21、E22とワイヤハーネスW1、W2を介して接続されている。また、分割領域Aに設置された電気部品E11は、分割領域Cに設置された電気部品E31とワイヤハーネスW1、W2、W3を介して接続されている。また、分割領域Bに設置された電気部品E21、22は、分割領域Cに設置された電気部品E31とワイヤハーネスW2、W3を介して接続されている。図20(a)における電気部品間の接続と異なり、分割領域Bに設置された電気部品E22は、分割領域Cに設置された電気部品E32と接続されていない。
図20(b)に示す電気部品間の接続状況では、電気部品E11−E21間、電気部品E11−E22間、電気部品E11−E31間、電気部品E21−E31間及び電気部品E22−E31間それぞれに対して導通検査を実施する必要がある。
図20(a)に示す電気部品間の接続状況と図20(b)に示す電気部品間の接続状況を比較すると、分割領域A及びBに配索されるワイヤハーネスW1及びW2は同一であり、分割領域Cに配索されるワイヤハーネスW3が異なることが分かる。言い換えると、図20(a)及び図20(b)では、分割領域A及びBには共通のワイヤハーネスW1及びW2が配索され、分割領域Cには異なるワイヤハーネスが配索される。分割領域Aに配索可能なワイヤハーネスW1の候補が一つのみ、分割領域Bに配索可能なワイヤハーネスW2の候補が一つのみ、分割領域Cに配索可能なワイヤハーネスW3の候補が2つである場合、部位毎コネクタ・配線情報は2(1×1×2)パターン作成される。そして、各パターンにおける各電気部品間に対して導通検査を実施する必要がある。
以降、正否判定工程に要する時間を短縮する手法の概略を説明する。多階層検査を実施するに当たり、多階層検査の実施対象となる部位毎コネクタ・配線情報を1パターン選択する。図20の場合では、図20(a)に示すワイヤハーネスW3が分割領域Cに配索された部位毎コネクタ・配線情報を多階層検査の実施対象となる1パターンとして選択する。そして、該当する部位毎コネクタ・配線情報に対して多階層検査を実施する。図20(a)に示す電気部品間の接続状況では、補器毎配線情報を参照して電気部品E11−E21間、電気部品E11−E22間、電気部品E11−E31間、電気部品E21−E31間、電気部品E22−E31間及び電気部品E22−E32間の端子それぞれに対して導通検査を実施する。
この多階層検査の終了後、続いて、多階層検査の実施対象となる部位毎コネクタ・配線情報を、多階層検査が未だ実施されていない別の1パターン選択する。図20の場合では、図20(b)に示すワイヤハーネスW3が分割領域Cに配索された部位毎コネクタ・配線情報を、多階層検査の実施対象となる別の1パターンとして選択する。そして、図20(b)に示す電気部品間の接続状況では、補器毎配線情報を参照して電気部品E11−E21間、電気部品E11−E22間、電気部品E11−E31間、電気部品E21−E31間及び電気部品E22−E31間の端子それぞれに対して導通検査を実施する。
ここで、電気部品E11−E21間及び電気部品E11−E22間に関しては、既に多階層検査を実施した1パターンにおいて多階層検査が実施されている。既に実施されているか否かは次の条件を満たすか否かによって判別することができる。すなわち、
(1) これから多階層検査を実施しようとする補器毎配線情報の回路線の始点−終点に一致するものが、既に多階層検査を実施した補器毎配線情報の回路線にある。
(2) これから多階層検査を実施しようとする部位毎コネクタ・配線情報の各分割領域には、(1)の条件を満たす、既に多階層検査を実施した補器毎配線情報の回路線の始点−終点を接続するワイヤハーネスと同一のものが配索されている。
である。蛇足ながら、上記の(2)を満たさず上記の(1)のみを満たす場合も想定される。この場合は、既に多階層検査を実施した補器毎配線情報の回路線の始点−終点が別のワイヤハーネスによって接続されていることを意味するため、この回路線については多階層検査を実施する必要がある。
これらの条件を図20を参照して説明する。電気部品E11−E21間及び電気部品E11−E22間に関しては、電気部品E11の端子と電気部品E21の端子とを結ぶ回路線が図20(a)及び図20(b)において一致し、電気部品E11の端子と電気部品E22の端子とを結ぶ回路線が図20(a)及び図20(b)において一致しているため、上記の(1)の条件を満たす。また、分割領域A及びBに配索されるワイヤハーネスW1及びW2も同一であるため、上記の(2)の条件を満たす。
このように、これから多階層検査を実施しようとする補器毎配線情報の回路線及び部位毎コネクタ・配線情報が上記の(1)及び(2)を満たしていれば、既に多階層検査を実施した導通結果を参照すればよく、その補器毎配線情報の回路線についての多階層検査を実施する必要は無い。
〔多階層検査の効率化の詳細〕
多階層検査の効率化を行うにあたって、既に多階層検査を実施した導通結果を利用することは上述したとおりである。以降では、その導通結果を利用するに適した多階層検査の処理の詳細について説明する。まず、複数個あるパターンのうちの第1番目の部位毎コネクタ・配線情報に対して多階層検査を実施する際の処理について説明する。
この場合の多階層検査は、既に説明したとおりであるが、[多階層検査の出力]における導通成功または導通失敗に至る多階層検査の検査履歴の記録方法について、〔多階層検査の効率化の詳細〕に関わる点について再度説明する。
〔JB検査の詳細〕、〔JC検査の詳細〕、〔W/S検査の詳細〕および〔B/S検査の詳細〕にて、n階層検査から(n+1)階層検査に移行する場合、特定した部位毎コネクタ・配線情報の行の、図面品番、他端側のTコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びT部品品番、または図面品番、他端側のFコネクタ名称、コネクタ品番、端子、C/N及びF部品品番、をデータ記憶部314に記録しておく、つまり、n階層検査で特定した第n番目の電線Wnの他端に関する情報を記録しておく、と述べた。また、[事前電線結合工程]を経ている場合には、1本とみなされた電線がどのワイヤハーネスの電線が仮想的に嵌合されたものなのかを判別可能にしておくことを述べた。これらの情報を、n階層検査にて(n+1)階層検査への移行との結果が得られた場合に上述の履歴の一情報として付加しておくようにする(図16〜図20では、黒塗りの丸「●」によって、n階層検査で特定した第n番目の電線Wnの他端に関する情報が付加されていることが表されている。)。この記録される情報の中に、図面品番(図面品番は、「−」より前の部分が該当車両における分割領域の識別情報を、後の部分がワイヤハーネスの識別情報である。さらに、[事前電線結合工程]を経ている場合には、図面品番には、「E11−111&E41−111」等と記述されている。)が含まれていることに留意されたい。こうすることにより、(n+1)階層検査において導通失敗と判別された履歴が記録されている場合に、n階層検査に至るまでに特定した第1番目の電線W1、第2番目の電線W2、・・・第n番目の電線Wnを特定することができる。
続いて、複数個あるパターンのうちの第n番目(n>1)の部位毎コネクタ・配線情報に対して多階層検査を実施する際の処理について、図21を参照して説明する。図21は、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置が実行しようとする、多階層検査を効率化するためのフローチャートである。図21において、図2のフローチャートの参照符号と同一のものについては、既に説明したとおりであるため、詳細な説明は省略する。
まず、補器毎配線情報に記述されている、回路線によって繋がれた第1の電気部品の第1の端子と第2の電気部品の第2の端子を、該補器毎配線情報から参照する(参照ステップ:S201)。
そして、これまでに多階層検査を実施した第(n−1)番目までの補器毎配線情報を参照し、これから多階層検査を実施しようとする第n番目の補器毎配線情報の回路線の始点−終点に一致するものが、第(n−1)番目までの補器毎配線情報の回路線にないか検索する(ステップS1901)。ステップS1901において第n番目の補器毎配線情報の回路線の始点−終点に一致するものがなければ(ステップS1901、N)、ステップS201に移行して第n番目の補器毎配線情報及び第n番目の部位毎コネクタ・配線情報を用いた多階層検査を実施する(図2参照)。
一方、ステップS1901において第n番目の補器毎配線情報の回路線の始点−終点に一致するものがあれば(ステップS1901、Y)、その該当行に対応付けて記録された検査履歴を参照し、その始点−終点を接続するワイヤハーネスの図面品番を特定する(ステップS1902)。
続いて、図面品番により特定されるワイヤハーネスが、第n番目の部位毎コネクタ・配線情報のパターンに含まれているか判別する(ステップS1903)。尚、ステップS1902にて特定される始点−終点を接続するワイヤハーネスの個数は、部位毎コネクタ・配線情報を構成する分割領域の個数と同数、あるいは少ない(各分割領域に一つ配索されるワイヤハーネスは、その個数が分割領域の個数より多いことはない。)。このため、第n番目の部位毎コネクタ・配線情報のパターンを構成するワイヤハーネスに、ステップS1903により特定されるワイヤハーネスが全て含まれているか否かを判別すればよい。図面品番により特定されるワイヤハーネスが、第n番目の部位毎コネクタ・配線情報のパターンに含まれていなければ(ステップS1903、N)、ステップS201に移行して第n番目の補器毎配線情報及び第n番目の部位毎コネクタ・配線情報を用いた多階層検査を実施する(図2参照)。
一方、図面品番により特定されるワイヤハーネスが、第n番目の部位毎コネクタ・配線情報のパターンに含まれていれば(ステップS1903、Y)、その該当行に対応付けて記録された検査履歴を参照し、その始点−終点を接続するワイヤハーネスの導通検査の結果を特定する(ステップS1904)。そして、その特定した導通検査の結果にしたがい、参照ステップ(S201)にて補器毎配線情報の配列から抽出した一行によって表される回路線の始点−終点の導通成功または導通失敗を判別し(図2のステップS207またはステップS208)、正否判定処理を終了する。
以上のように、第(n−1)番目までの正否判定処理の結果を利用して第n番目の部位毎コネクタ・配線情報に対する正否判定処理を実施することによって、一つの回路線に対して重複して多階層検査を実施することがなくなる。このため、多階層検査の効率化を図ることができる。
以上、本発明に係る実施の形態のワイヤハーネス導通検査装置、ワイヤハーネス導通検査プログラムおよびワイヤハーネス導通検査方法によれば、多階層検査を実施することによって、部位毎コネクタ・配線情報に記述されている電線の接続の誤りの有無を電子計算機に検査させることができる。これは、ワイヤハーネスを設計する設計者の負担を軽減することに大きく寄与する。