JP2007310670A - 車載電装システムの開発支援装置及び設計不具合検証方法 - Google Patents

車載電装システムの開発支援装置及び設計不具合検証方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の制御装置に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムの設計不具合を開発プロセスの上流工程で適切に検証できるようにし、開発手戻りを極力低減させて効率的な開発が行えるようにする。
【解決手段】ハーネス結線モデルやCANコミュニケーションモデルの作成で得られるワイヤブラウザ情報やCAN台帳(第1の設計情報)と、制御モデルの作成で得られる信号名称変換表(第2の設計情報)とを用いて、インターフェース変換層コンピュータ30において複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する。そして、この接続ファイルの整合性、または、実車相当のシミュレーション環境によるシステム全体のシミュレーション試験の試験結果に基づいて、システム全体の仕様策定(第1の設計段階)や個々のECUの詳細仕様の策定(第2の設計段階)における仕様漏れなどの設計不具合を検証する。
【選択図】図12

Description

本発明は、複数の制御装置に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムの開発を支援するための開発支援装置及び設計不具合検証方法に関する。
ソフトウェアの開発プロセスとしては、一般に、JISX0160(ISO/IEC1207)のソフトウェア・ライフサイクル・プロセスの開発プロセスに規定されているV字型開発プロセスモデル(SLCP)が知られている。この開発プロセスは、要求分析から始まり、システム設計、アーキテクチャ設計、モジュール設計および実装、そして、個別モジュールテスト、統合試験、検証に終わる、所謂ウォーターフォール的な開発プロセスである。
このV字型開発プロセスでは、通常、要求仕様に合わせた設計の不具合などに起因する最終的な製品の不具合が、ソフトウェアを製品に実装した後の個別モジュールテストや統合試験などで検証されるため、不具合発生時の設計仕様へのフィードバックに時間がかかり、再度、製品を試作し直す必要があるためにコストも増大するという問題がある。そこで、このような問題への対策として、仕様策定段階で、策定する仕様に相当するシミュレーションモデルを作成し、シミュレーション計算することにより設計検証を行うことが提案されている(例えば、特許文献1,2,3等を参照。)。
特開2004−38741号公報 特開2005−92598号公報 特許第3096796号公報
上述したV字型開発プロセスは、車両に搭載される車載電装システム、特に複数の制御装置(ECU:Electronic Control Unit)に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムの開発にも適用されている。このような車載電装システムの開発は、開発対象が大規模でタスクが細分化されているためウォータフォール型となり、開発体制としてもシステム全体から詳細への設計が段階的で、複数の開発部署やサプライヤで分担されることになるため、その開発プロセスは、一般的にV字型開発プロセスとなる。
ところで、以上のような車載電装システムの開発にV字型開発プロセスを適用した場合には、例えばシステムLSIなどの単一のハードウェアの開発では想定し得ない特有の問題が生じる。すなわち、以上のような車載電装システムでは、システム全体としての動作が複数のECUに跨る統合制御により実現されるため、上述した特許文献1,2,3などで提案されているように、ECUの動作をシミュレートするモデルを作成して設計段階で検証を行うようにしても、システム全体の動作を正確に検証することはできず、ECU間の予期せぬ不整合などを設計段階で検証することができない。
すなわち、車載電装システムにおける複数のECUは、ワイヤハーネスで相互に接続されて信号の授受を行ったり、CAN(Controller Area Network)などの通信によりメッセージの交換などを行うことで、互いに協調してシステム全体の動作を制御するが、個別のECUごとのモデルによるシミュレーションでは、ワイヤハーネスによる接続設計の結果やCANなどの通信による接続設計の結果はモデルの中に含まれないため、ECU間のワイヤハーネスの接続設計や通信設計が、意図した通りの動作を実現できるように正しく設計されているかを設計段階で検証することができない。
このため、設計段階における設計不具合が最終的な統合試験を経て初めて発覚する場合があり、いわゆる開発手戻りによる効率の低下やコスト増大が懸念される。
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、複数の制御装置に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムの設計不具合を開発プロセスの上流工程で適切に検証できるようにし、開発手戻りを極力低減させて効率的な開発が行えるように支援する車載電装システムの開発支援装置及び設計不具合検証方法を提供することを目的としている。
本発明は、車載電装システム全体の動作を統合制御する複数の制御装置の動作を各々シミュレートする複数の制御モデルを作成するとともに、システム全体の仕様を策定する第1の設計段階で得られる第1の設計情報と、第1の設計段階で策定された仕様に従って個々の制御装置毎の詳細仕様を策定する第2の設計段階で得られる第2の設計情報とに基づいて、複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成し、これら複数の制御モデルと接続ファイルとを用いて複数の制御装置に跨る統合制御をシミュレートして、車載電装システム全体の動作を試験する。そして、第1の設計情報と第2の設計情報とに基づいて作成した接続ファイルの整合性、または、複数の制御モデルと接続ファイルとを用いた統合制御のシミュレーションによる車載電装システム全体の動作試験結果に基づいて、第1の設計段階または第2の設計段階における設計不具合の有無を検証するようにした。
本発明によれば、複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルの整合性、または、複数の制御モデルと接続ファイルとを用いた統合制御のシミュレーションによる車載電装システム全体の動作試験結果に基づいて、第1の設計段階または第2の設計段階における設計不具合の有無が検証されるので、開発手戻りを極力低減させることができ、車載電装システムの開発効率を向上させることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[本発明の概要]
本発明は、複数の制御装置(以下、ECUと表記する。)に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムの開発において、車両メーカが、システム全体の仕様策定及び個々のECUの詳細仕様の策定を行った後、個々のECUの実装設計及び試作をサプライヤに要求する前の段階で、仕様漏れなどの設計不具合の有無を事前に検証することで、開発手戻りを極力低減させて効率的な開発が行えるようにするものである。
本発明が適用される開発プロセスは、図1に示すように、要求分析から始まり、車両メーカによるシステム全体の仕様策定(第1の設計段階)、個々のECUの仕様策定(第2の設計段階)を経て、サプライヤによる個々のECUの実装設計、試作、サプライヤテストが行われ、その後、車両メーカによる試作機を用いた総合試験、実車評価が行われる、所謂V字型開発プロセスである。このような開発プロセスにおいて、本発明では、車両メーカでの仕様策定の後に、車載電装システム全体として仕様の確からしさを確認するためのシミュレーション試験を行う。
具体的には、まず、車両メーカによるサプライヤへの要求仕様、つまり、開発対象となる車載電装システムを統合制御する複数のECUの詳細仕様を、それぞれ所定のシミュレーションツールを用いてモデル化して、各ECUの動作を各々シミュレートする複数の制御モデルを作成する。そして、作成した複数の制御モデルを用いて、車両全体として仕様の確からしさを確認するために、例えば、特開2005−181113号公報にて開示されるようなシミュレーション環境を構築し、このシミュレーション環境上で各制御モデルを接続して車載電装システム全体のシミュレーション試験を行う。このとき、シミュレーションモデルとして個々のECUの制御仕様をモデル化した制御モデルだけでなく、実際の車両と同等に、各ECU間のインターフェースの設計情報(ワイヤハーネスによる接続設計の情報や通信による接続設計の情報)もモデル化し、一車両分のシミュレーション環境を構築する。その際、各制御モデルを作成する際に生成した各ECUのハーネス設計情報および信号名称変換表、さらには、ECU間での通信をモデル化した通信モデル(例えばCANコミュニケーションモデル)の作成の際に使用するCAN台帳などを再利用して、複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する。そして、この接続ファイルを用いて、上述したシミュレーション環境でのシミュレーション試験を実現する。
ここで、車載電装システム全体の仕様策定(第1の設計段階)や個々のECUの詳細仕様の策定(第2の設計段階)において仕様漏れなどの設計不具合が発生している場合、その設計不具合は、上述した複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルの不整合として現われる場合がある。また、仕様漏れなどの設計不具合が発生していれば、上述したシミュレーション環境でのシミュレーション試験において、車載電装システムの動作が異常となる。そこで、本発明では、上述したシミュレーション環境を構築するための作業として作成される接続ファイルの整合性、または、上述したシミュレーション環境による車載電装システム全体のシミュレーション試験の試験結果に基づいて、車載電装システム全体の仕様策定(第1の設計段階)や個々のECUの詳細仕様の策定(第2の設計段階)における仕様漏れなどの設計不具合を検証するようにしている。
[全体構成]
本発明の開発支援装置は、例えば図2に示すように、モデリング開発層コンピュータ10と、アーキテクチャ開発層コンピュータ20と、インターフェース変換層コンピュータ30と、システム検証層コンピュータ40と、共通データベース50とをネットワークNTで結んだコンピュータシステムにより実現される。このうち、モデリング開発層コンピュータ10は、複数のECUの制御モデルを作成するコンピュータであり、アーキテクチャ開発層コンピュータ20は、通信モデル(例えばCANコミュニケーションモデル)やハーネス結線モデルなどを作成するコンピュータである。また、インターフェース変換層コンピュータ30は、接続ファイルを作成するコンピュータであり、システム検証層コンピュータ40が、上述したシミュレーション環境での車載電装システム全体のシミュレーション試験を行うコンピュータである。このコンピュータシステムでは、以上の各コンピュータがネットワークNTを介して共通データベース50に接続され、この共通データベース50を用いて各コンピュータ間でデータを共有することにより、仕様策定からシミュレーション試験までの各設計フェーズでの作業を効率的に行えるようになっている。なお、図2に示す構成は、本発明の開発支援装置を実現するコンピュータシステムでの機能構成ごとに単一のコンピュータを割り当てた仮想的なハードウェア構成であり、実際のハードウェア構成としては、コンピュータの数や組み合わせなどは任意に設定可能であり、開発体制に応じて最適な構成を採用すればよい。以下、このコンピュータシステムを構成する各コンピュータの詳細について、具体的な例を挙げながら個別に説明する。
[モデリング開発層コンピュータ]
モデリング開発層コンピュータ10は、開発対象となる車載電装システムを統合制御する複数のECUの制御モデルを作成する。具体的には、このモデリング開発層コンピュータ10では、例えば、Statemate(商品名;I-Logix社製)、MATLAB/Simulink(商品名;Mathworks社製)などの所定のシミュレーションツールを用いて、第2の設計段階で策定された各ECUの詳細仕様を元に以下の要求をソフトウェア化して、図3に示すようなECUの制御モデルをECUごとにそれぞれ作成する。なお、図3は制御モデルの最上位層を表すものであり、左側の破線で囲まれた部分S1がECUへの入力信号、右側の破線で囲まれた部分S2がECUからの出力信号を示す。また、図3において、中央の破線で囲まれた部分Mは、ECU本体の動作を模擬し、矢印に従い状態遷移と信号送受信が行われ、遷移先の機能が実行されることを示している。
・トリガとなる入出力信号に依存する状態遷移
ECUの持つ各機能ごとに、図4に示すように、トリガとなる入出力信号に依存する状態遷移を記述する。なお、図4に示す例では、破線で囲まれた部分Tに記載のものが状態遷移のトリガである。また、状態遷移はXXX/YYYがフォーマットとなり、XXXで記述される条件が成立するとYYYで記述されるアクションが実施され、図4の矢印の方向に状態遷移が生じる。
・ECUの各入出力ピンから入出力される信号の名称、型名、値のとりうる範囲
ECUに入出力される信号について記述する。制御モデルで取り扱っている信号の名称や型名(データタイプ)は、例えば図5に示す形式となる。なお、上述したStatemate(商品名;I-Logix社製)、MATLAB/Simulink(商品名;Mathworks社製)などのシミュレーションツールでは、使用する信号をこのような専用の管理モジュールで管理しているため、それらの情報を利用することができる。
なお、CANなどの通信によりECUに入出力される信号の名称は、通信モデル(例えばCANコミュニケーションモデル)の作成の際に使用するCAN台帳などに記載される信号名と一致させる。また、上記信号がCAN信号の場合は型名をintとし、モデル側の信号の型がintでない場合は、エラーとする。
ここでは、ECUの各入出力ピンに対応する電気的信号に信号名称をつけ変数として取り扱っているため、設計情報として、例えば図6に示すようなECUのピン番号と信号名称との対応表、すなわち、信号名称変換表が生成されることになる。ただし、この段階では複数のECU間の繋がりは考慮されないので、信号名称変換表におけるピン番号の欄は記入されずに空欄のままである。また、ここでは、ECUに入出力される信号が、CANなどの通信による信号とワイヤハーネスの信号とで区別されることなく、全てリストアップされる。そして、ワイヤハーネスや通信信号への割付は、アーキテクチャ開発層コンピュータ20にて実施される。なお、この信号名称変換表は、インターフェース変換層コンピュータ30が、複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する際に再利用される。
[アーキテクチャ開発層コンピュータ]
アーキテクチャ開発層コンピュータ20は、開発対象となる車載電装システムを統合制御する複数のECU間のインターフェースの設計情報をモデル化し、ECU間でのCANなどの通信を模擬する通信モデルや、ワイヤハーネスによるECU間の結線を模擬するハーネス結線モデルを作成する。具体的には、このアーキテクチャ開発層コンピュータ20では、ECU間での通信プロトコルとしてCANを採用する場合、例えば、CANoe(商品名;Vector社製)などの所定のシミュレーションツールを用いて、第1の設計段階で策定されたECU間のCANによるデータ送受信を摸擬するモデル(CANモデル)を作成し、また、例えば、Cabling Designer(商品名;株式会社 図研 製)などの所定のシミュレーションツールを用いて、第1の設計段階で策定されたECU間のワイヤハーネスを介した信号送受信を摸擬するモデル(ハーネス結線モデル)を作成する。
・CANコミュニケーションモデル
CANコミュニケーションモデルは、例えば図7に示すように、車両に搭載される全ECUのCAN送受信仕様をモデル化しており、実車と同等の通信状態を摸擬している。なお、図7中のブロック(ノード)が各ECUを摸擬しており、各ノード間で送受信されるCAN送受信データの仕様は、図8に示すようなCAN台帳と呼ばれるメッセージリストに、以下の情報とともに記載される。
1.通信メッセージ名(Message Name)
2.信号名(Signal Name)
3.送信モデル名(Transmitter ECU)
4.受信モデル名(Receiver ECU)
5.その他送信周期、IDなど
つまり、CANコミュニケーションモデルにおける各ノードは、以上のようなCAN台帳と呼ばれるメッセージリストに記載されている情報を元にモデル化されている。なお、このCAN台帳は、上述したモデリング開発層コンピュータ10で作成される信号名称変換表と同様、インターフェース変換層コンピュータ30が接続ファイルを作成する際に再利用される。
・ハーネス結線モデル
ハーネス結線モデルは、以下に示すパラメータを記述して、例えば図9に示すように、ワイヤハーネスによるECU間の結線の状態をモデル化しており、実車と同等のワイヤハーネスによる信号送受信を摸擬している。
1.車載ワイヤハーネスのID(回路番号、WireLabel)
2.接続元の部品名称(PartsName_From)
3.接続先の部品名称(PartsName_To)
4.接続元の部品の接続ピン番号(pinNumber_From)
5.接続先の部品の接続ピン番号(pinNumber_To)
6.部品内部の接続ID(どのピンと、どのピンとが内部で接続されているかを示すID)
このハーネス結線モデルでは、所持しているデータを、例えば図10に示すようなワイヤブラウザ情報と呼ばれる表形式で出力することができる。このワイヤブラウザ情報は、上述した信号名称変換表やCAN台帳と同様、インターフェース変換層コンピュータ30が接続ファイルを作成する際に再利用される。
なお、ここではワイヤハーネスにより接続される各ECUの接続ピンの繋がりが記述されるため、図6に示したようなECUのピン番号と信号名称との対応関係を示す信号名称変換表において、空欄のままとされていたピン番号の欄に該当するピン番号が記入され、図11に示すように、ピン番号と信号名との対応付けがなされる。なお、この信号名称変換表において、CAN通信でやり取りされる信号については、ピン番号の欄にCANバスを示すIDとして「C」を記入し、複数のCANバスが車両に存在する場合には、ネットワークを特定するIDも添え字として記入する。図11に示す例では、信号名称「DDDD_dddd」がCAN通信でやり取りされる信号であり、これに対応するピン番号の欄には、CANバスNo.1を示すID「C1」が記入されている。
[インターフェース変換層コンピュータ]
インターフェース変換層コンピュータ30は、例えば図12に概念図で示すように、モデリング開発層コンピュータ10で作成された信号名称変換表や、アーキテクチャ開発層コンピュータ20で作成されたワイヤブラウザ情報、CAN台帳などを利用して、モデリング開発層コンピュータ10で作成された各制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する。具体的には、インターフェース変換層コンピュータ30は、信号生成部31において、ワイヤブラウザ情報に基づいて複数のECU間のワイヤハーネスによる接続状態を確認して部品名称−ピン番号接続対応表を生成し、この部品名称−ピン番号接続対応表と信号名称変換表とから、信号変換部32において、ワイヤハーネス上を送受信される信号名の変換を行って、ワイヤハーネス経由向けの接続ファイルを作成する。また、インターフェース変換層コンピュータ30は、信号生成部33において、CAN台帳に基づいて複数のECU間でCAN通信により送受信されるメッセージの内容を確認し、CAN通信向けの接続ファイルを作成する。
本発明では、上述したように、車両全体としての仕様の確からしさを確認するために、システム検証層コンピュータ40において例えば特開2005−181113号公報にて開示されるようなシミュレーション環境を構築し、このシミュレーション環境上においてモデリング開発層コンピュータ10で作成した制御モデルを接続し、複数ECUに跨る統合制御をシミュレートして車載電装システム全体の動作を試験する。このシミュレーション試験に用いるシミュレーション環境は、以下のような特徴を有している。
1.シミュレーション環境上に存在するデータを任意に格納できる共有エリアと、それを保有するサーバを利用することにより、異なるシミュレーションツールによる制御モデル間のデータの送受信を自由に行うことができる。
2.車両用の通信バス(例えばCANバス)とワイヤハーネスなど、2系統以上の伝送路をそれぞれ模擬するバスの環境を準備している。
3.クロックサーバと呼ばれる同期モデルから、ECUを摸擬する各制御モデルに対して同期信号を送信することで、各制御モデルを同期させてシミュレーションを行えるようにしている。
4.制御モデル間の送受信信号による関連付けが、共有エリア上に置かれる接続ファイルと呼ばれる表形式の結線ファイルで管理されている。
以上のように、開発対象となる車載電装システム全体の動作のシミュレーション試験に用いるシミュレーション環境では、当該シミュレーション環境上に存在する全ての制御モデルの入出力信号を、共有エリアへのエリアアクセスにて一括で操作できる。したがって、複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成して共有エリアに保存することで、複数のECUに跨る統合制御をシミュレートするためのシミュレーション環境が構築されることになる。
接続ファイルの内部構成は、例えば図13に示すような形式とされ、シミュレーション環境上に存在する全ての制御モデルを対象として、各制御モデル間での信号の送受信が、以下のように定義されている。
・指定する共有エリアへ信号を送信する制御モデルを定義
・指定する共有エリアから信号を受信する制御モデルを定義
・指定する共有エリアへ送信される信号名を定義
・指定する共有エリアから受信される信号名を定義
・指定する共有エリアにおいて送受信される信号のデータタイプを定義
・指定する共有エリアのアドレスを定義
この接続ファイルの内容は、CAN通信経由とワイヤハーネス経由といったように、2種類以上の通信形態向けの接続情報で構成されており、インターフェース変換層コンピュータ30は、モデリング開発層コンピュータ10で作成された信号名称変換表や、アーキテクチャ開発層コンピュータ20で作成されたワイヤブラウザ情報、CAN台帳などを利用して、この接続ファイルを自動的に生成し、正確にかつ短時間のうちにシミュレーション環境を構築できるようにしている。
ここで、インターフェース変換層コンピュータ30による接続ファイルの作成手順について、ワイヤハーネス経由向けと、CAN通信向けとに分けて、具体例を挙げながら詳細に説明する。
(A)ワイヤハーネス経由向けの接続ファイルの作成手順
ワイヤハーネス経由向けの接続ファイルを作成するには、まず、アーキテクチャ開発層コンピュータ20で作成されたワイヤブラウザ情報(ハーネス結線モデルから出力される表形式データ)を用いて、各ハーネスがどの部品(ECUや周辺部品)のどのピンから出ているか、また、そのハーネスがどの部品のどのピンに向かって配線されているかの確認が行われる(図12における信号生成部31での処理に相当)。例えば、図14(a)に例示するハーネス結線モデルから出力されるワイヤブラウザ情報は図14(b)のようになり、このワイヤブラウザ情報を用いて以下に示す処理を行うことで、図15(a),(b)に示すような確認後のデータ(部品名称−ピン番号接続対応表)を生成する。
図16は、ワイヤブラウザ情報を用いて部品名称−ピン番号接続対応表を生成する処理の一般的な手順を示すフローチャートである。まず、ステップS101において、ハーネス結線モデルから出力されるワイヤブラウザ情報を準備する。このワイヤブラウザ情報は、N行構成の表形式データシートであるとする。なお、Nの値はその対象システムの規模に依存するものである。
次に、ステップS102において、部品名称及びピン番号レベルで配線の確認を行うに際し、図14(a)に例示したようなハーネス結線モデルの中の周辺部品のモデルについても接続確認を行うか判断を行う。ここでの周辺部品とは、リレーやヒューズなど、ECU以外の電気的に内部接続がなされている部品のことを意味する。ここで、周辺部品のモデルについて接続確認を行わないと判断した場合は、ステップS103において、周辺モデル接続フラグを「0」とする。この場合、ECU同士のみに着目した接続関係が最終的に確認されることになる。一方、周辺部品のモデルについても接続確認を行うと判断した場合は、ステップS104において、周辺モデル接続フラグを「1」とする。この場合には、ECU同士だけでなく、ECUだけでなく周辺部品も含めた接続関係まで確認されることになる。
次に、ステップS105において、ステップS101で準備したワイヤブラウザ情報を上位行から読み始める。ここでは1行目から読み始めるべく、行変数nを1に初期化する。
次に、ステップS106において、ワイヤブラウザ情報のn行目の部品名称(PartsName_From,PartsName_To)、ピン番号(pinNumbes_From,pinNumbes_To)、接続ID(接続ID_From,接続ID_To)を読み込み、メモリ上に格納する。
次に、ステップS107において、ステップS106で読み込んだ部品名称がグラウンド(GND)であるかどうか判断する。ここで、部品名称がGNDであればその行の経路の確認は終了し、次の行に進む。一方、部品名称がGNDでなければステップS108に進む。
次に、ステップS108において、ステップS102での周辺部品のモデル接続判断に従って処理の分岐を行う。周辺モデル接続フラグが「1」の場合、つまり周辺部品についても接続確認を行う場合、現在確認を行っている行のPartName_From,pinNumber_Fromがそれぞれそのまま接続元の部品名称、ピン番号となるため、ステップS110へと処理を進める。一方、周辺モデル接続フラグが「0」の場合、つまり周辺部品の接続確認を行わない場合は、ステップS109へと処理を進める。
周辺モデル接続フラグが「0」でステップS109に進んだ場合、ステップS109において、確認している部品に接続IDが付帯されているかどうかの確認を行う。ここで接続IDとは、ECU以外の部品(例:コネクタ、ジャンクションボックス、リレー)に付帯されるIDであり、任意の部品について同じIDが振られている2端子以上の端子は内部で接続されていることを表している。ここでは、接続元の部品について、接続ID(接続ID_From)の欄が空欄となっているか否かを確認し、接続ID_Fromの欄が空欄となっている、つまり接続元の部品についての接続IDが付帯されていない場合はステップS110へと処理を進め、接続ID_Fromの欄に何らかの値が記載されている、つまり、接続元の部品についての接続IDが付帯されている場合にはステップ111へと処理を進める。
ステップS108で周辺モデル接続フラグが「1」、或いはステップS109で接続ID_Fromの欄が空欄となっていると判断されてステップS110に進んだ場合、ステップS110において、その行(n行目)のPartsName_From,pinNumber_Fromをそれぞれ接続元の部品名称および、ピン番号と認識し、接続元部品n、接続元ピン番号nとする。
一方、ステップS109で接続ID_Fromの欄に何らかの値が記載されていてステップS111に進んだ場合、ステップS111において、n行目以上の接続ID_Toの欄を検索し、ステップS112において、その接続ID_Fromと同じ値の接続ID_Toが記載されている行が存在するか否かの確認を行う。そして、その接続ID_Fromと同じ値の接続ID_Toが記載されている行がi行目に存在したとすると、i行目の接続先部品、ピン番号と接続していることになり、n行目の接続元部品をi行目の接続元部品とすべく、ステップS113において、接続元部品i、接続元ピン番号iにn行目の接続元部品、接続元ピン番号を格納する。一方、接続ID_Fromと同じ値の接続ID_Toが記載されている行が存在しない場合には、ステップS114において、n行目の接続ID_Fromをメモリ上に記憶する。
次に、ステップS115において、ステップS102での周辺部品のモデル接続判断に従い、再度、処理の分岐を行う。周辺モデル接続フラグが「1」の場合、つまり周辺部品についても接続確認を行う場合、現在確認を行っている行のPartName_To,pinNumber_Toがそれぞれそのまま接続先の部品名称、ピン番号となるため、ステップS117へと処理を進める。一方、周辺モデル接続フラグが「0」の場合、つまり周辺部品の接続確認を行わない場合は、ステップS118へと処理を進める。
周辺モデル接続フラグが「0」でステップS116に進んだ場合、ステップS116において、接続先の部品について、接続ID(接続ID_To)の欄が空欄となっているか否かを確認し、接続ID_Toの欄が空欄となっている、つまり接続先の部品についての接続IDが付帯されていない場合はステップS117へと処理を進め、接続ID_Toの欄に何らかの値が記載されている、つまり、接続先の部品についての接続IDが付帯されている場合にはステップ118へと処理を進める。
ステップS115で周辺モデル接続フラグが「1」、或いはステップS116で接続ID_Toの欄が空欄となっていると判断されてステップS117に進んだ場合、ステップS117において、その行(n行目)のPartsName_To,pinNumber_Toをそれぞれ接続先の部品名称および、ピン番号と認識し、接続先部品n、接続先ピン番号nとする。
一方、ステップS116で接続ID_Toの欄に何らかの値が記載されていてステップS118に進んだ場合、ステップS118において、n行目以上の接続ID_Fromの欄を検索し、ステップS119において、その接続ID_Toと同じ値の接続ID_Fromが記載されている行が存在するか否かの確認を行う。そして、その接続ID_Toと同じ値の接続ID_Fromが記載されている行がj行目に存在したとすると、j行目の接続先部品、ピン番号と接続していることになり、n行目の接続先部品をj行目の接続先部品とすべく、ステップS120において、接続先部品j、接続先ピン番号jにn行目の接続先部品、接続先ピン番号を格納する。一方、接続ID_Toと同じ値の接続ID_Fromが記載されている行が存在しない場合には、ステップS121において、n行目の接続ID_Toをメモリ上に記憶する。
次に、ステップS122において、接続元部品n,i,j、接続先部品n,i,j、接続元ピン番号n,i,j、接続先ピン番号n,i,jを、それぞれn,i,j行目のPartsName_From,PartsName_To,pinNumber_From,pinNumber_Toに書き込み、ステップS123において、図15(a),(b)に示すような部品名称−ピン番号接続対応表に反映させる。なお、図15(a)は、周辺部品の接続確認を行わない場合に作成される部品名称−ピン番号接続対応表であり、図15(b)は、周辺部品についても接続確認を行う場合に作成される部品名称−ピン番号接続対応表である。
次に、ステップS124において、nの値をインクリメントして確認する行を下に1行シフトし、次の行の処理に進む。このとき、確認していた行が最終行であったか否かをステップS125で判断し、最終行でなければ次の行に対して以上の処理を繰り返し、最終行まで繰り返した後、すなわち全てのハーネス接続の確認が終了した段階で、一連の処理を終了する。
以上の手順に従った処理により、例えば、図14(a)のハーネス結線モデルにおける矢印の部分の結線が図14(b)のワイヤブラウザ情報の太線で囲まれた部分のように記載されているケースにおいて、ECU1とECU2との接続関係は、周辺部品の接続確認を行わない場合には図15(a)の部品名称−ピン番号接続対応表において太線で囲んだ部分のように記載され、周辺部品についても接続確認を行う場合には図15(b)の部品名称−ピン番号接続対応表において太線で囲んだ部分のように記載される。なお、この例では、周辺部品の内部接続はピン番号1と4、ピン番号2と5がそれぞれ接続IDにて接続定義されている。
ここで、図14(a)の矢印で示す結線部分に着目して上述した処理の概要を説明すると、以下のようになる。すなわち、まず、図14(b)に示すワイヤブラウザ情報から、ECU1のピン番号1番からAA01というハーネスが出ていることを確認する。次に、AA01のハーネスの先には、周辺部品のピン番号1番が接続されていることを確認する。ここで、周辺部品の接続確認を行わない場合には、周辺部品のピン番号1番が、内部接続IDとして1という値を持っていることを確認しておく。
次に、接続IDが1である項目を図14(b)のワイヤブラウザ情報から検索し、周辺部品の1番ピンと内部で接続されているのが4番ピンであることを確認する。さらにこの段階で、周辺部品の4番ピンからAB01というハーネスが出ていることを確認する。
最後に、AB01のハーネスの先には、ECU2の1番ピンが接続されていることを確認する。以上の結果から、ECU1の1番ピンとECU2の1番ピンとが周辺部品を内部貫通して接続されていることが導き出され、その接続関係が、図15(a)の部品名称−ピン番号接続対応表において太線で囲んだ部分のように記載される。
また、周辺部品についても接続確認を行う場合には、上述した周辺部品の内部接続IDの確認は行わず、AA01のハーネスの先に周辺部品のピン番号1番が接続されていることを確認する。その後、下の行に確認作業を進め、周辺部品のピン番号4番からAB01というハーネスが出ていることを確認し、AB01のハーネスの先には、ECU2の1番ピンが接続されていることを確認する。以上の結果から、ECU1の1番ピンと周辺部品の1番ピン、周辺部品の4番ピンとECU2の1番ピンとがそれぞれ接続されていることが導き出され、その接続関係が、図15(b)の部品名称−ピン番号接続対応表において太線で囲んだ部分のように記載される。
以上の操作を他のハーネス結線部分に対しても行うことで、ワイヤハーネスによる全ての接続状態を抽出して、図15(a)または図15(b)に示したような部品名称−ピン番号接続対応表を作成することができる。なお、このような操作は、インターフェース変換層コンピュータ30において、ソフトウェアにより図16に示したフローが実行されることで自動で行われ、図15(a)または図15(b)に示したような部品名称−ピン番号接続対応表が自動的に作成される。
ここまでで、部品名称とピン番号とによるECU間の接続関係を抽出できたが、次に、各ピン番号と、その間のハーネス上を送受信される信号名の変換を行う(図12における信号変換部32での処理に相当)。この変換を行う際には、モデリング開発層コンピュータ10で作成された信号名称変換表が用いられる。例えば、図15(a)に例示した部品名称−ピン番号接続対応表から、図17(a)に示す信号名称変換表を用いて信号名の変換を行うことで、図17(b)に示すようなワイヤハーネス経由向けの接続ファイルが生成される。
図18は、以上の処理の一般的な手順を示すフローチャートである。まず、ステップS201において、図15(a)のような部品名称−ピン番号接続対応表と、モデリング開発層コンピュータ10で作成された図17(a)に示すような信号名称変換表とを準備する。なお、部品名称−ピン番号接続対応表はN行構成の表形式データシートであり、信号名称変換表はM行構成の表形式データシートであるとする。
次に、ステップS202において、ステップS201で準備した部品名称−ピン番号接続対応表を上位行から読み始める。ここでは1行目から読み始めるべく、行変数nを1に初期化する。
次に、ステップS203において、部品名称−ピン番号接続対応表のn行目の部品名称(PartsName_From,PartsName_To)、ピン番号(pinNumbes_From,pinNumbes_To)を読み込み、メモリ上に格納する。
次に、ステップS204において、部品名称−ピン番号接続対応表のn行目に対し、ステップS201で準備した信号名称変換表を適用してピン番号と信号名称との対応をとるべく、M行構成の信号名称変換表のm行目に対し、対応が取れる信号名の検索を行う。ここではm=1と初期化を行い、1行目から検索を進める。
次に、ステップS205において、信号名称変換表上のm行目のデータから、部品名称−ピン番号接続対応表のn行目のデータに対応する変換可否を検索するため、信号名称変換表のm行目のデータ、partsName,pinNumber,Signal name,Data typeを読み込み、メモリ上に記憶する。
次に、ステップS206において、送信側及び受信側それぞれの部品名称とピン番号について、部品名称−ピン番号接続対応表のn行目のデータと信号名称変換表上のm行目のデータ間でデータが一致するか否かの判断を行う。そして、これらのデータが一致していれば、ステップS207において、信号名称変換表上のm行目のpartsNameを、部品名称−ピン番号接続対応表の送信/受信の一致した方のモデル名nとして書き込む。また、信号名称変換表上のm行目のSignal name、Data typeについても同様に、部品名称−ピン番号接続対応表の送信/受信の一致した方のデータ名n、データタイプnとして書き込む。
一方、送信側及び受信側それぞれの部品名称とピン番号について、部品名称−ピン番号接続対応表のn行目のデータと信号名称変換表上のm行目のデータが一致しない場合、ステップS208において、その不一致が、信号名称変換表上のm行目のピン番号の欄にCAN信号のフラグであるCが記載されていることによるものか否かを判断する。そして、信号名称変換表上のm行目のピン番号の欄にフラグCが記載されていることによるデータ不一致であれば、次のステップS209に処理を進め、信号名称変換表上のm行目のピン番号の欄にフラグCが記載されていることによるデータ不一致でなければ、ステップS213へと処理を移行する。
ステップS209では、その行の送信側/受信側データについて、Data typeがintとなっているか否かか判断する。ここで、送信側/受信側データのData typeがintとなっていれば、ステップS207に進んで、信号名称変換表上のm行目のpartsName、Signal name、Data typeを、それぞれ部品名称−ピン番号接続対応表の送信/受信の一致した方のモデル名n、データ名n、データタイプnとして、それぞれメモリ上に書き込む。一方、送信側/受信側データのData typeがintとなっていなければステップS210に進み、ステップS210においてエラー処理を行う。その後、ステップS211において、処理を終了するか否かのユーザによる判断に応じて、終了の場合はエラーメッセージを出力して終了する。一方、終了しない場合は、ステップS212において、エラー行をロギングして、次の行に処理を進める。このステップS212でロギングしたデータは、全処理が終了した後に出力される。
本エラーは、設計段階においてモデリング開発層コンピュータ10で作成した信号名称変換表において、CAN信号であると指定した信号のデータタイプに誤りがある場合に発生するものである。したがって、このエラーを検出することで、ECU間でのCAN通信による信号送受信エラーが発生することを事前(システム検証前)に検出することができる。また、本エラーは、同じく設計段階における信号名称変換表作成時に、int型でないハーネス送受信信号に対し、CAN信号であるとするCフラグを割り当てた際に発生するエラーでもある。したがって、このエラーを検出することで、ワイヤハーネスとCANバスとの間の物理的に実現しないバス同士の結線ミスを事前(システム検証前)に検出することができる。
ステップS208において部品名称−ピン番号接続対応表と信号名称変換表との間のデータ不一致がフラグCの記載によるものでないと判断されてステップS213に進んだ場合、ステップS213において、mの値をインクリメントして、信号名称変換表の次の行に対して、対応が取れる信号名の検索を進める。このとき、それまでの処理の対象としていた行が最終行であったか否かをステップS214で判断し、最終行でなければ信号名称変換表の次の行に対してステップS205以降の処理を繰り返す。そして、最終行まで検索を進めても一致が確認できない場合はステップS215に進み、ステップS215においてエラー処理を行う。その後、ステップS216において、処理を終了するか否かのユーザによる判断に応じて、終了の場合はエラーメッセージを出力して終了する。一方、終了しない場合は、ステップS217において、エラー行をロギングして、次の行に処理を進める。このステップS217でロギングしたデータは、全処理が終了した後に出力される。
本エラーは、部品名称およびピン番号でハーネス結線状態を確認した結果に対し、各ピン番号に対し対応する信号名がない場合に発生するエラーである。このエラーは、下記の1〜3の要因により生じうるエラーである。
1.実車ではハーネス結線が行われているにも関わらず、制御モデルでは接続がなされない。
2.制御仕様をモデル化した制御モデルに必要な信号数に対し、ハーネスピン数が過多となり無駄部品が生じている。
3.信号名称変換表にピン番号を記載する際に、ピン番号を誤記している。
これらの要因のうち1の要因で発生するエラーについては、このエラーを検出することで、制御モデルの不具合を検出できるため、その他のモデル化された箇所に対して影響がないかトラブルシュートを行うきっかけとすることができる。
また、2の要因で発生するエラーについては、このエラーを検出することで、ハーネス結線の結線過剰によるコスト問題を解決することができる。
また、3の要因で発生するエラーについては、このエラーを検出することで、ピン番号誤記による結線不具合を検出することができ、ハーネス結線間違いを未然(システム検証前)に防ぐことができる。
次に、ステップS218において、以上の処理によりステップS207においてメモリ上に書き込まれた、送信側モデル名n、受信側モデル名n、送信データ名n、受信データ名n、データタイプnを、それぞれ接続ファイルのn行目の送信側モデル名、受信側モデル名、送信データ名、信データ名、データタイプに書き込み、ステップS219において、図17(b)に示すような接続ファイルに反映させる。なお、共有データエリア、エリアアドレスには任意の値を書き込む。
次に、ステップS220において、nの値をインクリメントして部品名称−ピン番号接続対応表の信号変換を行う行を下に1行シフトし、次の行の処理に進む。このとき、処理の対象としていた行が最終行であったか否かをステップS221で判断し、最終行でなければ次の行に対して以上の処理を繰り返し、部品名称−ピン番号接続対応表の最終行まで処理が終了した段階で、一連の処理を終了する。この結果として、ワイヤハーネス経由向けのN行構成の接続ファイルが生成される。
以上の手順に従った処理により、例えば、図15(a)の部品名称−ピン番号接続対応表において太線で囲んだ部分のECU1とECU2との間のハーネス結線に関し、図17(a)の信号名称変換表において太線で囲んだ行と対応させることで信号名の変換が行われ、図17(b)の接続ファイルにおいて太線で囲んだ行のように記載される。
ここで、図15(a)のECU1とECU2との間のハーネス結線に着目して上述した処理の概要を説明すると、以下のようになる。すなわち、まず、図15(a)に示す部品名称−ピン番号接続対応表に記載されているECU1の1番ピンとECU2の1番ピンとの接続関係について、図17(a)の信号名称変換表から、ECU1の1番ピンについて記載されている行と、ECU2の1番ピンについて記載されている行とを検索する。そして、ECU1の1番ピンについて記載されている行の信号名称とデータタイプ、ECU2の1番ピンについて記載されている業の信号名称とデータタイプとをそれぞれ確認する。そして、ECU1の1番ピンに対応する信号名称を接続ファイルの送信データ名、ECU2の1番ピンに対応する信号名称を接続ファイルの受信データ名に書き込み、さらに、ECU1の1番ピンとECU2の1番ピンとに対応するデータタイプを接続ファイルのデータタイプに書き込む。
以上の操作を全てのECU間のハーネス結線に対して行うことで、制御モデル間のワイヤハーネスを介した信号の送受信を定義した、図17(b)のような接続ファイルが作成されることになり、この接続ファイルを用いることで、上述した実車相当のシミュレーション環境でECU間のワイヤハーネスを介した信号の送受信をシミュレートすることが可能となる。なお、以上のような操作は、インターフェース変換層コンピュータ30において、ソフトウェアにより図18に示したフローが実行されることで自動で行われ、図17(b)に示したような接続ファイルが自動的に作成される。また、このインターフェース変換層コンピュータ30による接続ファイルの作成時には、何らかの要因で適切な信号変換が行われない場合、すなわち接続ファイルに不整合が生じる場合には、エラー処理が行われて処理が終了するため、ハーネス結線に関する設計不具合を事前に検証できるという利点も有している。
(B)CAN通信向けの接続ファイルの作成手順
次に、CAN通信向けの接続ファイルを作成する手順を説明する。CAN通信向けの接続ファイルの作成には、アーキテクチャ開発層コンピュータ20でCANコミュニケーションモデルを作成する際に使用したCAN台帳(図8参照)を用いる。すなわち、インターフェース変換層コンピュータ30では、図12に示した信号生成部33での処理として、例えば、図8に例示したCAN台帳を用いて、モデリング開発層コンピュータ10で作成された制御モデル間の通信による信号の送受信を定義して、図19に示すようなCAN通信向けの接続ファイルを作成する。
図20は、CAN通信向けの接続ファイルを作成する処理の一般的な手順を示すフローチャートである。まず、ステップS301において、アーキテクチャ開発層コンピュータ20でCANコミュニケーションモデルを作成する際に使用したCAN台帳を準備する。このCAN台帳は、N行構成の表形式データシートであるとする。なお、Nの値はその対象システムの規模に依存するものである。
次に、ステップS302において、ステップS301で準備したCAN台帳を上位行から読み始める。ここでは1行目から読み始めるべく、行変数nを1に初期化する。
次に、ステップS303において、CAN台帳のn行目から、通信メッセージ名(CAN Message Name)、信号名(Signal Name)、送信モデル名(Transmitter ECU)、受信モデル名(Receiver ECU)を読み込み、メモリ上に格納する。
次に、ステップS304において、ステップS303でメモリ上に書き込まれた、
次に、ステップS218において、以上の処理によりステップS207においてメモリ上に書き込まれた、Transmitter ECU,Receiver ECU,Message Name_SignalName(Message NameとSignalNameとを結合した名称) を、それぞれ接続ファイルのn行目の送信側モデル名、受信側モデル名、送信データ名に書き込み、ステップS305において、図19に示すような接続ファイルに反映させる。なお、接続ファイルn行目の受信データ名には送信データ名と同じものを書き込み、また、共有データエリア、エリアアドレスには任意の値を書き込む。
次に、ステップS306において、nの値をインクリメントしてCAN台帳のデータを読み込む行を下に1行シフトし、次の行の処理に進む。このとき、処理の対象としていた行が最終行であったか否かをステップS307で判断し、最終行でなければ次の行に対して以上の処理を繰り返し行う。そして、以上の処理をCAN台帳の最終行まで繰り返した段階で、一連の処理を終了する。この結果として、CAN通信向けのN行構成の接続ファイルが生成される。
ここで、図8に示したCAN台帳を用いて図19のような接続ファイルを作成する場合を例に挙げて上述した処理の概要を説明すると、以下のようになる。すなわち、まず、図8に示すCAN台帳から、送信側モデル名としてTransmitter ECU、受信側モデル名としてReceiver ECUをそれぞれ確認する。さらにCAN台帳から、それらの間で送受信される信号名としてMessage NameとSignal Nameとを確認する。ここで、これらのモデル間で送受信される信号名が、例えば、Message Name=AAAA、Signal Name=aaaaの場合、送信信号名および受信信号名は、これらを結合してAAAA_aaaaとする。そして、これらのデータを、CAN通信向けの接続ファイルの該当する行に書き込む。なお、CAN信号の場合、データタイプはint(32ビット整数型)とする。
以上の操作を全てのECU間におけるCAN通信に対して行うことで、制御モデル間のCAN通信による信号の送受信を定義した、図19のような接続ファイルが作成されることになり、この接続ファイルを用いることで、上述した実車相当のシミュレーション環境でECU間のCAN通信によるメッセージ交換をシミュレートすることが可能となる。なお、以上のような操作は、インターフェース変換層コンピュータ30において、ソフトウェアにより図20に示したフローが実行されることで自動で行われ、図19に示したような接続ファイルが自動的に作成される。したがって、上述した実車相当のシミュレーション環境の構築を極めて効率よく且つ短時間で行うことが可能となる。
以上、インターフェース変換層コンピュータ30によるワイヤハーネス経由向け及びCAN通信向けの接続ファイルの作成について説明したが、この接続ファイルの作成は、例えば、FlexRay(Daimler Chrysler AGの登録商標)プロトコルに従った通信や、Bluetoothなどによる無線通信等、他の通信形態でのECU間の通信についても応用することが可能であり、各通信形態ごとに、送信モデル、受信モデル、信号名、信号の型を同様の方法で抽出することにより接続ファイルを作成して、上述した実車相当のシミュレーション環境を構築することができる。
[システム検証層コンピュータ]
システム検証層コンピュータ40は、開発対象となる車載電装システムの車両全体として仕様の確からしさを確認するために、例えば図21に示すようなシミュレーション環境上で、車載電装システム全体のシミュレーション試験を行う。具体的には、このシステム検証層コンピュータ40では、アーキテクチャ開発層コンピュータ20で作成されたCANコミュニケーションモデル(図21中の通信モデルA,B,C,D)やハーネス結線モデルを反映させてシミュレーション環境を構築し、このシミュレーション環境上にモデリング開発層コンピュータ10で作成された複数の制御モデル(図21中の制御モデルA,B,C,D)を接続し、更に、インターフェース変換層コンピュータ30で作成された接続ファイルを用いて、車載電装システム全体のシミュレーション試験を行う。
このシステム検証層コンピュータ40によるシミュレーション試験により検証される内容には、以下のようなものがある。
・2つ以上のECUに跨る通信メッセージの整合確認
・通信プロトコルの確認
・2つ以上のECUに跨る統合制御により実現される機能の整合確認
ここで、以上のようなシステム検証層コンピュータ40により実施されるシミュレーション試験の簡単な例として、ヘッドランプ点灯機能の検証を行う場合を例に挙げて、図21を用いて具体的に説明する。この例では、シミュレーション環境の構成として、ヘッドランプスイッチONの信号を読み取るECUの制御モデルA、ヘッドランプを実際に点灯させるアクチュエータを駆動するECUの制御モデルB、その他の制御モデルC,DをCANバスおよびハーネス送受信用バスの2系統のバスに接続した環境を構成する。各ECUに相当する制御モデルは、各ECUの機能が仕様通りにモデル化されているものとする。また、このシミュレーション環境では、上述した各制御モデルのほかに、車両モデルVMと計測用マシンMMとが接続されている。車両モデルVMは、車両運動のシミュレーションを行って、車両の状態を表す各種信号を各制御モデルに送信するものであり、実車に搭載されている各種センサに相当するものである。また、計測用マシンMMは、ユーザがシミュレーション試験のための操作入力を行ったり、制御モデルの制御に応じた動作の確認を行ったりするためのユーザインターフェースであり、実車に搭載されている各種操作スイッチ類やアクチュエータ類に相当するものである。
(1)先ず、ユーザが、計測用マシンMMを用いてヘッドランプスイッチONに相当する操作入力を行うと、計測用マシンMMがヘッドランプスイッチON信号を出力する(実車では、ドライバがヘッドランプスイッチをONし、センサがその情報を読み取ることに等しい)。このとき、制御モデルAは、ハーネス送受信用バス経由での制御指令待ちの状態にある。また、このシミュレーション試験を行っている間、車両モデルVMは、必要に応じて車両運動のシミュレーションを行い、車両の状態を表す信号を、ハーネス送受信用バス経由で各制御モデルA,B,C,Dに対して随時送信する。
(2)計測用マシンMMから出力されたヘッドランプスイッチON信号は、ハーネス送受信用バス経由で制御モデルAに送信される。そして、制御モデルAがこのヘッドランプスイッチON信号を受信する。
(3)制御モデルAは、計測用マシンMMからのヘッドランプスイッチON信号を受信すると、ヘッドランプの点灯指示があったことを判定し、ヘッドランプリクエスト信号を生成する。そして、生成したヘッドランプリクエスト信号を、通信モデルAに伝送する。
(4)通信モデルAは、制御モデルAからのヘッドランプリクエスト信号を受信すると、このヘッドランプリクエスト信号をCANのプロトコルに合致するデータ形式に変換する。そして、変換したデータをCANバス上に送出する。このとき、通信モデルBは、CANバス経由でのデータ待ちの状態にあり、通信モデルAからCANバス上にデータが送出されると、これを受信する。
(5)通信モデルBは、CANバス経由で通信モデルAから送信されたデータを受信すると、受信したデータを制御モデルBで扱えるデータ形式に変換する。そして変換したデータを制御モデルBへと伝送する。
(6)制御モデルBは、通信モデルBからのデータを受信すると、ヘッドランプの点灯指示があったことを判定し、ヘッドランプを点灯させるアクチュエータへの駆動制御信号を生成する。そして、生成したアクチュエータ駆動制御信号を、ハーネス送受信用バスを介して計測用マシンMMに送信する(実車では、制御モデルBに対応するECUがヘッドライトのアクチュエータを動かすことに等しい)。
(7)計測用マシンMMは、制御モデルBからハーネス送受信用バス経由で送信されたアクチュエータ駆動制御信号を受信すると、例えばヘッドランプが点灯している様子をグラフィカルに表示することにより、制御モデルA,B間のデータ通信やこれら制御モデルA,Bによる統合制御が正常に行われていることをユーザに報知する。これにより、ユーザは、実際の車両において、ヘッドランプ点灯機能が正常に作動することを確認することができる。
システム検証層コンピュータ40では、以上のフローで車載電装システムのシミュレーション試験が行われるが、このように2系統のバスを用いることで、実車両を模擬した環境で評価を行うことができる。また、図21には図示していないが、シミュレーション環境上にクロックサーバを設置して、このクロックサーバから各制御モデルA,B,C,Dに対して同期クロックを送信するようにすれば、上記(1)〜(7)のステップは1サイクルとして同期の取れたシミュレーションとなる。
また、以上のような車載電装システムのシミュレーション試験により、設計段階における仕様漏れなどの設計不具合が発生していれば、シミュレーションの結果が異常となるので、その不具合を検出することが可能となる。例えば、上述したヘッドランプ点灯機能のシミュレーション試験を例に挙げると、シミュレーション結果の異常としては、以下のようなものが挙げられる。
・計測用マシンMMからのヘッドライトON操作に対し、応答がない。
このようなシミュレーション結果の異常が発生した場合には、その原因として以下の原因が考えられ、次のような仕様不備が検討される。
1.計測用マシンMM、制御モデルA,B及び、通信モデルA,Bのうち1つ以上のモデルから信号が出力されていない。このシミュレーション環境は、信号名称変換表等の設計情報を利用し、アーキテクチャ設計で設計された結線通りに各モデルが接続されているため、この不具合の発生原因は結線仕様の不具合にあり、アーキテクチャ設計における仕様漏れが検討されることになる。
2.ハーネス送受信信号同士のデータタイプが一致していない。この不具合の発生原因としては、制御モデルから生成される信号リスト(信号名称変換表)の不備、つまりは制御モデルの信号管理の不備が考えられ、個々のECUの詳細設計における仕様漏れが検討されることになる。
3.各制御モデルのON/OFF判断ロジック仕様に不具合がある。この場合は、制御モデルA,Bの構造自体に不備があると考えられ、各制御モデルA,Bの構造についての検証が行われることになる。
・ヘッドライトON時において、計測用マシンMMからのヘッドライトON操作に対し、OFFしてしまう。
このようなシミュレーション結果の異常が発生した場合には、その原因としては各制御モデルにおけるON/OFF判断ロジック仕様の不具合が考えられ、各制御モデルA,Bの構造についての検証が行われることになる。
システム検証層コンピュータ40では、上述したシミュレーション環境における車載電装システムのシミュレーション試験を行うことで、以上のような設計段階における仕様漏れなどの設計不具合を検出することができるとともに、トラブルシュートを行うことができる。したがって、このようなシミュレーション試験は、接続して初めてわかる複数のECU間の統合制御の機能や結線仕様について、事前に評価を行うという観点から非常に有効な手法である。
[共通データベース]
本発明の開発支援装置を実現するコンピュータシステムでは、上述したように、モデリング開発層コンピュータ10、アーキテクチャ開発層コンピュータ20、インターフェース変換層コンピュータ30、システム検証層コンピュータ40の各コンピュータが、ネットワークNTを介して共通データベース50に接続されており、各設計フェーズで使用するモデルや評価結果等のデータを、この共通データベース50を用いて管理できるようにしている。
共通データベース50は、例えば図22に示すように、コンピュータシステムのモデリング開発層コンピュータ10、アーキテクチャ開発層コンピュータ20、インターフェース変換層コンピュータ30、システム検証層コンピュータ40にそれぞれ対応させて、モデル格納エリア51、インターフェース設計情報格納エリア52、接続ファイル格納エリア53、システム検証結果格納エリア54を有している。
モデル格納エリア51には、各ECU設計者が設計した仕様に従ったECUの制御モデル、すなわち、モデリング開発層コンピュータ10によりECUの要求仕様をモデル化して作成した制御モデルが格納される。また、インターフェース設計情報格納エリア52には、アーキテクチャ設計者が設計したシステム全体としての仕様に従ったインターフェース設計情報、すなわち、アーキテクチャ開発層コンピュータ20でのCANコミュニケーションモデルの作成に使用したCAN台帳や、アーキテクチャ開発層コンピュータ20で作成したハーネス結線モデルから出力されるワイヤブラウザ情報が格納される。
また、接続ファイル格納エリア53には、インターフェース変換層コンピュータ30で作成された接続ファイルが格納される。また、システム検証結果格納エリア54には、システム検証層コンピュータ40でのシミュレーション試験によるシステム検証結果が格納される。
以上の構造を有する共通データベース50では、システム検証層コンピュータ40で上述したシミュレーション試験を行った場合には、モデリング開発層コンピュータ10やアーキテクチャ開発層コンピュータ20から、モデル格納エリア51やインターフェース設計情報格納エリアだけでなく、システム検証結果格納エリア54にもアクセス可能とされる。これにより、システム検証層コンピュータ40でのシミュレーション試験によるシステム検証結果として仕様漏れなどの設計不具合が検出された場合には、その検証結果を各ECU設計者やアーキテクチャ設計者にフィードバックして、設計の不具合を解消させることができる。
また、この共通データベース50では、インターフェース変換層コンピュータ30で作成する接続ファイルに不整合が生じて、エラーが発生した場合には、モデリング開発層コンピュータ10やアーキテクチャ開発層コンピュータ20から、モデル格納エリア51やインターフェース設計情報格納エリアだけでなく、接続ファイル格納エリア53にもアクセス可能とされる。これにより、設計段階での仕様漏れなどの設計不具合により接続ファイルの不整合が生じた場合にも、その結果を各ECU設計者やアーキテクチャ設計者にフィードバックして、設計の不具合を解消させることができる。
なお、共通データベース50に格納されている全ての設計情報は、システム検証層コンピュータ40でのシミュレーション試験により開発対象となる車載電装システムの動作が正常となることが確認されて次の開発段階(実装設計工程)への移行が判断された後は、権限者による解除が無い限り変更できなくなるように、アクセスに制限を設けることが望ましい。
[実施形態の効果]
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本発明を適用して構成されるコンピュータシステムでは、モデリング開発層コンピュータ10で開発対象となる車載電装システムを統合制御する複数のECUの制御モデルを作成するとともに、これら複数の制御モデルを実車と同等のシミュレーション環境に接続して実車相当のシミュレーション試験を行うために、アーキテクチャ開発層コンピュータ20でハーネス結線モデルやCANコミュニケーションモデルを作成し、これらハーネス結線モデルやCANコミュニケーションモデルを作成するための設計情報(第1の設計情報)であるワイヤブラウザ情報やCAN台帳と、制御モデルを作成して得られる設計情報(第2の設計情報)である信号名称変換表とを用いて、インターフェース変換層コンピュータ30において複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する。そして、システム検証層コンピュータ40において、モデリング開発層コンピュータ10で作成された複数の制御モデルをシミュレーション環境上に接続し、インターフェース変換層コンピュータ30で作成された接続ファイルを用いて、車載電装システム全体のシミュレーション試験を行ってその動作を検証する。この際、本発明を適用したコンピュータシステムでは、インターフェース変換層コンピュータ30で接続ファイルが正常に作成されたか否か、或いは、システム検証層コンピュータ40でのシミュレーション試験の結果が正常か否かにより、車載電装システム全体の仕様策定(第1の設計段階)や個々のECUの詳細仕様の策定(第2の設計段階)における仕様漏れなどの設計不具合を検証するようにしている。そして、設計不具合があればそれを各設計段階にフィードバックできるようにしている。
したがって、本発明を適用したコンピュータシステムを利用して車載電装システムの開発を行うようにすれば、車両メーカでの仕様策定の後、サプライヤへ個別のECUの実装設計を依頼する前の段階で仕様漏れなどの設計不具合を検出することができ、開発手戻りを極力低減させて、車載電装システムの開発効率を向上させることができる。
また、本発明を適用したコンピュータシステムによれば、ワイヤブラウザ情報やCAN台帳、信号名称変換表を用いて作成される接続ファイルの整合性から、設計段階における仕様漏れなどの設計不具合が検証されるので、個々のECUの設計検証だけでなく、ワイヤハーネスの結線情報やCANなどの通信接続情報を含めたきめ細かな設計検証が可能となる。さらに、接続ファイルは、ワイヤブラウザ情報やCAN台帳、信号名称変換表から自動的に作成されるので、この接続ファイルの整合性から設計不具合を検証することで、設計検証を効率よく且つ短時間で行うことができる。
また、本発明を適用したコンピュータシステムによれば、各設計フェーズでの作業を行うためのモデリング開発層コンピュータ10、アーキテクチャ開発層コンピュータ20、インターフェース変換層コンピュータ30、システム検証層コンピュータ40が、それぞれネットワークNTを介して共通データベース50に接続されており、共通データベース50を用いて各コンピュータ間でデータを共有することができるので、仕様策定からシミュレーション試験までの各設計フェーズでの作業を効率的に行うことができる。
なお、以上説明したコンピュータシステムは、本発明を適用した一実施形態を例示したものであり、本発明の技術的範囲は、以上の実施形態の説明で開示した内容に限定されるものではなく、これらの開示から容易に導き得る様々な代替技術も含まれることは勿論である。例えば、上述したコンピュータシステムは、車両メーカ内での閉じたシステムを前提とした構成となっているが、例えば、サプライヤが実装設計の作業を行うための実装設計層コンピュータなどもコンピュータシステムに組み込むようにしてもよい。この場合には、システム検証が完了して設計不具合がないことが確認されたECUの制御モデルのみを実装設計層コンピュータが取り込めるようにすることで、サプライヤでの実装設計工程などの下流工程での作業効率向上や、開発品質の確保を実現することができる。
本発明が適用される開発プロセスの概要を示す図である。 本発明を適用して構成されるコンピュータシステムの概要を示すシステム構成図である。 ECUの動作をシミュレートする制御モデルを示す模式図である。 ECUの制御モデルにおける入出力信号に対する状態遷移を説明する図である。 ECUの制御モデルで取り扱われる信号の名称や型名を説明する図である。 ECUの制御モデル作成時に生成される信号名称変換表を示す図である。 CANコミュニケーションモデルの概要を示す模式図である。 CANコミュニケーションモデルの作成に使用されるCAN台帳を示す図である。 ハーネス結線モデルの一例を示す模式図である。 ハーネス結線モデルから出力されるワイヤブラウザ情報を示す図である。 ハーネス結線モデル作成時に更新された信号名称変換表を示す図である。 インターフェース変換層コンピュータによる処理の概要を説明する図である。 ワイヤブラウザ情報とCAN台帳と信号名称変換表とから作成される接続ファイルを示す図である。 ワイヤハーネス経由向けの接続ファイルを作成する手順を説明するための図であり、(a)はハーネス結線モデルの一例を示す図、(b)はワイヤブラウザ情報の一例を示す図である。 ワイヤハーネス経由向けの接続ファイルを作成する手順を説明するための図であり、(a)は周辺部品の接続確認を行わない場合に作成される部品名称−ピン番号接続対応表を示す図、(b)は周辺部品についても接続確認を行う場合に作成される部品名称−ピン番号接続対応表を示す図である。 ワイヤブラウザ情報から部品名称−ピン番号接続対応表を作成する一般的な手順を示すフローチャートである。 ワイヤハーネス経由向けの接続ファイルを作成する手順を説明するための図であり、(a)は信号名称変換表の一例を示す図、(b)は作成される接続ファイルの一例を示す図である。 部品名称−ピン番号接続対応表と信号名称変換表とから接続ファイルを作成する一般的な手順を示すフローチャートである。 CAN通信向けの接続ファイルを作成する手順を説明するための図であり、作成される接続ファイルの一例を示す図である。 CAN台帳からCAN通信向けの接続ファイルを作成する一般的な手順を示すフローチャートである。 車載電装システム全体のシミュレーション試験を行うためのシミュレーション環境を示す模式図である。 共通データベースの構成を示す図である。
符号の説明
10 モデリング開発層コンピュータ
20 アーキテクチャ開発層コンピュータ
30 インターフェース変換層コンピュータ
31 信号生成部
32 信号変換部
33 信号生成部
40 システム検証層コンピュータ
50 共通データベース

Claims (7)

  1. 複数の制御装置に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムであって、システム全体の仕様を策定する第1の設計段階と、当該第1の設計段階で策定された仕様に従って個々の制御装置毎の詳細仕様を策定する第2の設計段階とを経て開発される車載電装システムの開発を支援する開発支援装置において、
    前記複数の制御装置の動作を各々シミュレートする複数の制御モデルを作成する制御モデル作成手段と、
    前記第1の設計段階で得られる第1の設計情報と、前記第2の設計段階で得られる第2の設計情報とに基づいて、前記複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する接続ファイル作成手段と、
    前記制御モデル作成手段で作成される複数の制御モデルと前記接続ファイル作成手段で作成される接続ファイルとを用いて前記複数の制御装置に跨る統合制御をシミュレートして、前記車載電装システム全体の動作を試験するシステム動作試験手段とを備え、
    前記接続ファイル作成手段により作成される接続ファイルの整合性、または、前記システム動作試験手段による試験結果に基づいて、前記第1の設計段階、または、前記第2の設計段階における設計不具合の有無を検証することを特徴とする車載電装システムの開発支援装置。
  2. 前記第1の設計情報には、少なくとも、前記複数の制御装置間のワイヤハーネスによる接続状態を示す情報が含まれ、前記第2の設計情報には、少なくとも、前記個々の制御装置毎のピンと当該ピンを用いて入出力される信号との対応関係を示す情報が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の車載電装システムの開発支援装置。
  3. 前記接続ファイル作成手段は、前記第1の設計情報と前記第2の設計情報とに基づいて前記制御モデル間のワイヤハーネスを介した信号の送受信を定義して、前記接続ファイルを作成することを特徴とする請求項2に記載の車載電装システムの開発支援装置。
  4. 前記第1の設計情報には、少なくとも、前記複数の制御装置間で通信により送受信されるメッセージの内容を示す情報が含まれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の車載電装システムの開発支援装置。
  5. 前記接続ファイル作成手段は、前記第1の設計情報に基づいて前記制御モデル間の通信による信号の送受信を定義して、前記接続ファイルを作成することを特徴とする請求項4に記載の車載電装システムの開発支援装置。
  6. 前記制御モデル作成手段と、前記接続ファイル作成手段と、前記システム動作試験手段とが、複数のコンピュータとこれら複数のコンピュータからアクセス可能なデータベースとを用いて実現されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の車載電装システムの開発支援装置。
  7. 複数の制御装置に跨る統合制御により所定の動作を実行する車載電装システムであって、システム全体の仕様を策定する第1の設計段階と、当該第1の設計段階で策定された仕様に従って個々の制御装置毎の詳細仕様を策定する第2の設計段階とを経て開発される車載電装システムの設計不具合の有無を検証する設計不具合検証方法であって、
    前記複数の制御装置の動作を各々シミュレートする複数の制御モデルを作成する制御モデル作成ステップと、
    前記第1の設計段階で得られる第1の設計情報と、前記第2の設計段階で得られる第2の設計情報とに基づいて、前記複数の制御モデル間での信号の送受信を定義した接続ファイルを作成する接続ファイル作成ステップと、
    前記制御モデル作成ステップで作成される複数の制御モデルと前記接続ファイル作成ステップで作成される接続ファイルとを用いて前記複数の制御装置に跨る統合制御をシミュレートして、前記車載電装システム全体の動作を試験するシステム動作試験ステップとを有し、
    前記接続ファイル作成ステップで作成される接続ファイルの整合性、または、前記システム動作試験ステップでの試験結果に基づいて、前記第1の設計段階、または、前記第2の設計段階における設計不具合の有無を検証することを特徴とする車載電装システムの設計不具合検証方法。
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