JP2011178931A - 修飾ポリロタキサンおよびその製造方法ならびにこれを用いた溶液、溶剤系塗料、溶剤系塗膜 - Google Patents

修飾ポリロタキサンおよびその製造方法ならびにこれを用いた溶液、溶剤系塗料、溶剤系塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上され、かつ、優れた溶剤溶解性を有するため、白濁しにくい塗膜を形成しうるポリロタキサンを提供することを課題とする。また、かかるポリロタキサンを含む塗料およびその塗膜を提供することを課題とする。
【解決手段】 二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する、環状分子と、前記環状分子の中空部を貫通する直鎖状分子と、前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封鎖基と、を有する、修飾ポリロタキサンを提供することを解決手段とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、修飾ポリロタキサンおよびその製造方法ならびにこれを用いた溶液、溶剤系塗料、溶剤系塗膜に関する。
ポリカーボネートやアクリル等の樹脂成型品、あるいは各種金属製品においては、硬度、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性、防食性等の諸物性が要求されるレベルに満たない場合には、これらの物性を補うために、表面処理が施されることがある。このような表面処理には、通常、常温乾燥型塗料や2液ウレタン塗料等の硬化型塗料が用いられるが、このような塗料による表面処理膜には傷が付き易く、しかも傷が付いてしまった場合には、これが目立ち易い。
また、製品としての意匠性を向上させるために、各種部品に、めっきや蒸着、スパッタリングのような金属鏡面処理を施すことがあるが、このような金属鏡面処理を行った場合、処理膜には傷が付き易く、付いた傷が目立ち易い。そのため、このような鏡面処理膜には、通常、さらに上述したような塗料による表面処理が行われているが、この塗料処理膜にも、上記のように傷が付き易く、付いた傷が目立ち易いという欠点がある。
また、自動車用トップコートについても、近年では新車時の塗装外観を長期間に亘って保持することができるように、高耐久化指向が強まってきており、塗膜には、洗車機や、砂塵等によっても傷の付かない耐擦傷性が求められている。
上記の問題を解決する技術として、特許文献1が知られている。
特許文献1には、塗膜等に対し、有機溶剤への溶解性(以下、「溶剤溶解性」とも称する)、平滑性、耐擦傷性を含む特性を向上させるポリロタキサンが開示されている。具体的には、プロピル基を介したε−カプロラクトン((−CO(CHO−))修飾基を有するポリロタキサンが開示されている(特許文献1参照)。
特開2007−99989号公報
確かに、特許文献1に開示されるポリロタキサンは、塗膜等に対し、溶剤溶解性、平滑性、耐擦傷性、耐チッピング性を含む特性を有意に向上させている。
しかしながら、さらにこれらの特性をさらに向上させうるポリロタキサンの開発が望まれる。
よって、本発明は、このような課題に鑑みてなされたものである。具体的には、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上され、かつ、優れた溶剤溶解性を有するため、白濁しにくい塗膜を形成しうるポリロタキサンを提供することを課題とする。また、かかるポリロタキサンを含む溶液、塗料およびその塗膜を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、ポリロタキサンを構成する環状分子に、二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の修飾ポリロタキサンにおいては、ポリロタキサンを構成する環状分子が二種類以上のラクトン由来の修飾基を有している。そのため、ポリロタキサンを構成する環状分子が一種類のラクトン由来の修飾基のみ有する場合と比較すると、溶剤系塗料を代表とする様々な塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集が抑制される。
よって、本発明によれば、優れた溶剤溶解性を有するため、各種用途に用いることができる溶液を形成しうる。
また白濁しにくい塗膜を形成しうるポリロタキサンを提供することができるので、製品とした際に塗装外観を含む意匠性が向上する。また、ポリロタキサンは、その構造による滑車効果に基づき、優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度を発揮でき、この効果は修飾ポリロタキサンであっても維持する。このため、本発明によれば、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上される。また、本発明によれば、かかるポリロタキサンを含む溶液、塗料およびその塗膜を提供することができる。
本発明の修飾ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。 架橋型修飾ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。 本発明の積層塗膜の構造例を示す概略断面図である。 本発明の積層塗膜の他の構造例を示す概略断面図である。
本発明は、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子と、前記環状分子の中空部(開口部)を貫通する直鎖状分子と、直鎖状分子の両末端に配置され前記環状分子の脱離を防止する封鎖基と、を有する、修飾ポリロタキサンである。
本発明においては、修飾ポリロタキサンを構成する環状分子が、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する点に特徴を有する。そのため、ポリロタキサンを構成する環状分子が一種類のラクトン由来の修飾基のみ有する場合と比較すると、溶剤系塗料を代表とする様々な塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集が抑制される。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「質量」と「重量」、「質量%」と「重量%」、および「質量部」と「重量部」は同義語であり、「%」は特記しない限り質量百分率(質量%)を意味する。また、物性等の測定に関しては特に断りがない場合は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%で測定する。また、本明細書では、「二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する、環状分子」を、単に「本発明の環状分子」とも称する。「環状分子の中空部を貫通する直鎖状分子」を単に「直鎖状分子」とも称する。また、「直鎖状分子の両末端に配置され、環状分子の脱離を防止する封鎖基」を単に「封鎖基」とも称する。また、これらから構成されるポリロタキサンを「本発明の修飾ポリロタキサン」とも称する。また、本明細書中に記載される「塗料」との概念は、溶剤系塗料(有機溶剤に溶解する塗料)を含む概念である。なお、有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、イソプロピルアルコールやブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのエーテル類、トルエンやキシレンなどの炭化水素溶剤などを挙げることができる。
図1は、本発明の修飾ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。図1中、本発明の修飾ポリロタキサン1は、本発明の環状分子2と、本発明の環状分子2の中空部を貫通する直鎖状分子3と、直鎖状分子3の両末端に配置され、本発明の環状分子2の脱離を防止する封鎖基4と、を有する。
本発明の修飾ポリロタキサンを構成する環状分子は、二種類以上のラクトン由来の修飾基2bを有する。特にその中の一種が置換基を含むラクトン由来の修飾基を有していると好ましい。
そのため、ポリロタキサンを構成する環状分子の全てが一種類のラクトン由来の修飾基(2c)のみ有する場合と比較すると、溶剤系塗料を代表とする様々な塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集が抑制される。よって、本発明によれば、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上され、かつ、優れた溶剤溶解性を有するため、白濁しにくい塗膜を形成しうるポリロタキサンを提供することができる。
本発明の修飾ポリロタキサンは、環状分子が二種類以上のラクトン由来の修飾基を有している。そのため、ポリロタキサンを構成する環状分子の全てが一種類のラクトン由来の修飾基のみを有する場合と比較すると、溶剤系塗料を代表とする様々な塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集が抑制される。よって、本発明によれば、優れた溶剤溶解性を有するため、各種用途に用いることができる溶液を形成しうる。また白濁しにくい塗膜を形成しうるポリロタキサンを提供することができる。また、ポリロタキサンは、その構造による滑車効果に基づき、優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度を発揮でき、この効果は修飾ポリロタキサンであっても維持する。このため、本発明によれば、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上される。また、本発明によれば、かかるポリロタキサンを含む溶液、塗料およびその塗膜を提供することができる。
なお、本発明の修飾ポリロタキサンを溶液、塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集が抑制されて、所望の特性(特に、溶剤溶解性、白濁の防止)を発揮するメカニズムは必ずしも明らかではない。ただし本発明者らが推測するに、環状分子の全てが一種類のラクトン由来の修飾基のみ有する場合にその修飾基が結晶化していたのを、環状分子が有する二種類以上のラクトン由来の修飾基によって防止されるためと考える。なお、かかるメカニズムは推測に過ぎないため、このメカニズムによって本発明の技術的範囲が制限されないのは言うまでもない。
<二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子>
本発明の修飾ポリロタキサンは、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子を有する。つまり、本発明の環状分子は、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する。「本発明の環状分子は、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する」とは、本発明の環状分子は、修飾基を有していて、かかる修飾基が、二種類以上のラクトンに由来する構造を有していることを意味する。
本発明の修飾ポリロタキサンを構成する環状分子は、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する。そのため、ポリロタキサンを構成する環状分子の全てが一種類のラクトン由来の修飾基のみ有する場合と比較すると、溶剤系塗料を含む、様々な塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集体が抑制される。
[環状分子]
二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子のうち、環状分子としては、環状構造を有し、直鎖状分子に包接されて滑車効果を奏するものであれば特に制限されない。なお、本明細書において、環状構造とは、必ずしも閉環した形状である必要はない。すなわち、環状分子は、例えば、「C」字状のように、実質的に環状構造を有するものであれば十分である。
また、環状分子は、図1に示すように反応基2aを有することが好ましい。なお、環状分子の反応基2aは、その環状分子が元々有する構造に由来するものであってもよいし、別途導入したものであってもよい。反応基を有していることによって、二種類以上のラクトン由来の修飾基の導入が行い易くなる。このような反応基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基、アルデヒド基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、反応基としては、後述する封鎖基を形成する(ブロック化反応)際に、この封鎖基と反応しない基が好ましい。このような点を考慮すると、反応基は、水酸基、アミノ基であることが好ましく、水酸基であることが特に好ましい。
具体的には、環状分子としては、シクロデキストリン、クラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、ジシクロヘキサノクラウン類、ならびにこれらの誘導体および変性体などが挙げられる。これらのうち、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体が好ましく使用される。ここで、シクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体の種類は、特に制限されない。シクロデキストリンは、α型、β型、γ型、δ型、ε型のいずれでもよい。また、シクロデキストリン誘導体としてもα型、β型、γ型、δ型、ε型のいずれでもよい。なお、シクロデキストリン誘導体とは、例えば、アミノ体、トシル体、メチル体、プロピル体、モノアセチル体、トリアセチル体、ベンゾイル体、スルホニル体およびモノクロロトリアジニル体等の化学修飾体を意図したものである。本発明で使用できるシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体のより具体的な例としては、α−シクロデキストリン(グルコース数=6個、空孔の内径=約0.45〜0.6μm)、β−シクロデキストリン(グルコース数=7個、空孔の内径=約0.6〜0.8μm)、γ−シクロデキストリン(グルコース数=8個、空孔の内径=約0.8〜0.95μm)等の、シクロデキストリン;ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、2,6−ジ−O−メチル−α−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−α−シクロデキストリン、6−O−α−D−グルコシル−α−シクロデキストリンモノ、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−アセチル)−α−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−α−シクロデキストリン、ヘキサキス(6−O−トシル)−α−シクロデキストリン、ヘキサキス(6−アミノ−6−デオキシ)−α−シクロデキストリン、ヘキサキス(2、3−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ)−α−シクロデキストリン、ヘキサキス(2,3,6−トリ−O−オクチル)−α−シクロデキストリン、モノ(2−O−ホスホリル)−α−シクロデキストリン、モノ[2,(3)−O−(カルボキシルメチル)]−α−シクロデキストリン、オクタキス(6−O−t−ブチルジメチルシリル)−α−シクロデキストリン、スクシニル−α−シクロデキストリン、グルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6−ジ−O−エチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−O−スルホ)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3−ジ−O−アセチル−6−O−スルホ)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3−ジ−O−メチル−6−O−スルホ)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−アセチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−ベンゾイル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(3−O−アセチル−2,6−ジ−O−メチル)−β−シクロデキストリン、ヘプタキス(2,3−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ)−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、(2−ヒドロキシ−3−N,N,N−トリメチルアミノ)プロピル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、メチル−β−シクロデキストリン、ヘキサキス(6−アミノ−6−デオキシ)−β−シクロデキストリン、ビス(6−アジド−6−デオキシ)−β−シクロデキストリン、モノ(2−O−ホスホリル)−β−シクロデキストリン、ヘキサキス[6−デオキシ−6−(1−イミダゾリル)]−β−シクロデキストリン、モノアセチル−β−シクロデキストリン、トリアセチル−β−シクロデキストリン、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリン、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−D−マルトシル−β−シクロデキストリン、スクシニル−β−シクロデキストリン、スクシニル−(2−ヒドロキシプロピル)−β−シクロデキストリン、2−カルボキシメチル−β−シクロデキストリン、2−カルボキシエチル−β−シクロデキストリン、ブチル−β−シクロデキストリン、スルホプロピル−β−シクロデキストリン、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリン、シリル[(6−O−t−ブチルジメチル)2,3−ジ−O−アセチル]−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、ブチル−γ−シクロデキストリン、3A−アミノ−3A−デオキシ−(2AS,3AS)−γ−シクロデキストリン、モノ−2−O−(p−トルエンスルホニル)−γ−シクロデキストリン、モノ−6−O−(p−トルエンスルホニル)−γ−シクロデキストリン、モノ−6−O−メシチレンスルホニル−γ−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−メチル)−γ−シクロデキストリン、オクタキス(2,6−ジ−O−フェニル)−γ−シクロデキストリン、オクタキス(6−O−t−ブチルジメチルシリル)−γ−シクロデキストリン、オクタキス(2,3,6−トリ−O−アセチル)−γ−シクロデキストリン、などが挙げられる。ここで、上述のシクロデキストリン等の環状分子は、その1種を単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。上記環状分子の中では、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、およびこれらの誘導体が好ましく、包接性の観点からは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンを使用することが特に好ましい。
本発明の修飾ポリロタキサンにおいては、直鎖状分子が、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子の中空部を、串刺し状に貫通してなる構造を有する。換言すれば、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子は、直鎖状分子を包接してなる。この際、直鎖状分子を包接する本発明の環状分子の個数(量)は、特に制限されず、本発明の所望の効果を奏するように、二種類以上のラクトン由来の修飾基の種類などを考慮しながら適宜選択されうる。ここで、直鎖状分子を包接する本発明の環状分子の個数について、「包接量」との概念を用いて説明する。「包接量」とは、「本発明の環状分子が直鎖状分子を包接し得る最大量」を1とする場合、どのくらい包接しているかを示す値である。
ここで「環状分子が直鎖状分子を包接し得る最大包接量」とは、直鎖状分子に対して環状分子が隙間無く包接する際の環状分子の数を意味し、下記式により算出できる。
ここで、直鎖状分子の鎖長は、その分子量から鎖長を容易に算出できる。また、本発明の環状分子の厚みも、算出できる。例えば、環状分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンの場合は、約0.7nmである。なお、この環状分子に二種類以上のラクトン由来の修飾基が導入された場合であっても、その厚みの変化は無視できるようなものである。よって、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子の厚みは、その環状分子の厚みと同等として、算出する。
包接量は、0.06〜0.61が好ましく、0.11〜0.48がより好ましく、0.24〜0.41が特に好ましい。
[ラクトン由来の修飾基]
二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子のうち、ラクトンは、環状構造を持つ有機化合物であって、環の一部としてエステル結合を含むものであれば制限はない。
例えば、本発明に用いることができるラクトンは、下記式1:
式中、nは、2〜5である、
で表されるものであると好ましい。
ラクトン由来の修飾基は、二種類以上であれば制限はないが、好ましくは二種類〜三種類、より好ましくは二種類である。
二種類以上のラクトン由来の修飾基は、置換基を含むラクトンと、置換基を含まないラクトンとの混合物でもよい。また、置換基を含む二種類以上のラクトンの混合物でもよい。また、置換基を含まない二種類以上のラクトンの混合物でもよい。
好ましくは、溶解性向上の観点から、置換基を含むラクトンと、置換基を含まないラクトンとの混合物あるいは置換基を含む二種類以上のラクトンの混合物である。
より好ましくは置換基を含むラクトンと、置換基を含まないラクトンとの混合物である。
置換基を含まないラクトンとしても特に制限はないが、ε−カプロラクトンあるいはγ−ブチロラクトンが安価で工業的な利用性が高いという観点で好ましい。
このように置換基を含まないラクトン(特に好ましくは、ε-カプロラクトンに由来する基)と、その他のラクトン(特に置換基を含むラクトン由来の修飾基が好ましい)とを組み合わせることで、溶剤への溶解性向上と凝集抑制効果を発揮できてさらに工業利用性の高い修飾ポリロタキサンを実現できる。その他のラクトンとは置換基を含まないラクトン(特にε-カプロラクトン)以外のラクトンであって、具体的には、置換基を含むラクトン(特に、ブチロラクトン、バレロラクトン)あるいは、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
本発明においては、修飾ポリロタキサンを構成する環状分子が、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する点に特徴を有する。ただし、二種類以上のラクトン由来の修飾基が、置換基を含むラクトン由来の修飾基を有する場合も好ましい。置換基を含むラクトンは、具体的には、式1のCHの少なくとも1つの水素に置換基Rが導入されている構造を有する。
置換基Rは、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルキルカルボニル基であると好ましい。炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルキルカルボニル基であるとより好ましい。さらに好ましくは炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルキルカルボニル基である。特に好ましくは炭素数1のアルキル基(つまり、メチル基)および炭素数1のアルキルカルボニル基(つまり、アセチル基)である。このような置換基であるとよい理由は、溶剤への溶解性向上と凝集抑制効果であり、またポリロタキサンを効率良く修飾できるためである。
具体的には、置換基を有するラクトンが、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−バレロラクトン、β−バレロラクトンおよびβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種であると、生成物がばらつきなく均一に生成できるという観点で好ましい。このように置換基が有意に嵩高くない場合、ポリロタキサンを修飾する際に立体障害の影響が小さくなって置換基がポリロタキサンに導入されやすくなる。以下にいくつかの置換基を有するラクトンの化学式を記載する。
(α−アセチル−γ−ブチロラクトン)
この際の置換基は、「アセチル基」である。
(α−メチル−γ−ブチロラクトン)
この際の置換基は、「メチル基」である。
(γ−バレロラクトン)
この際の置換基は、「メチル基」である。
(β−ブチロラクトン)
この際の置換基は、「メチル基」である。
(β−バレロラクトン)
この際の置換基は、「エチル基」である。
より好ましくは、生成物がばらつきなく均一に生成できるという観点で、置換基を有するラクトンが、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種である。
なお、本発明の修飾ポリロタキサンにおいては、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子が含まれることが好ましい。さらに具体的には(a)ε−カプロラクトンに由来する基と、(b)α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する基と、からなる修飾基を有する環状分子であるのが好ましい。
またその割合としては、例えば、「γ−バレロラクトン」と「ε−カプロラクトン」の組み合わせであれば、「γ−バレロラクトン」に対して「ε−カプロラクトン」が50〜80質量%程度含まれてもよい。
なお、修飾ポリロタキサンを構成する環状分子が、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有しているか否かを分析する方法としては、H−NMRやGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)が挙げられる。
前者は、後述するヒドロキシルプロピル化ポリロタキサン(つまり、一種類のラクトン由来の修飾基のみ導入されている)と、ポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンと二種類以上のラクトン由来の修飾基で修飾したポリロタキサン(目的物)とのスペクトル差から構造を推測する。
また後者は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布および純度を測定することのよって、分析することができる。
上記の通り、本発明においては、修飾ポリロタキサンを構成する環状分子が、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する点に特徴を有する。このような二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する環状分子は、ポリロタキサンを構成する環状分子の全てが一種類のラクトン由来の修飾基のみ有する場合と比較すると、溶剤系塗料を代表とする様々な塗料に適用した際に、溶剤に対する溶解性が向上し、凝集体が抑制される。よって、本発明によれば、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上され、かつ、優れた溶剤溶解性を有するため、白濁しにくい塗膜を形成しうるポリロタキサンを提供することができる。よって、製品とした際に塗装外観を含む意匠性が向上する。
本発明の修飾ポリロタキサンを構成する環状分子は、上記の通り、二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する。本発明の修飾ポリロタキサンにおいては、この環状分子において、二種類以上のラクトン由来の修飾基が1つでも導入されていれば、本発明の技術的範囲に属する。ここで、二種類以上のラクトン由来の修飾基がどのくらい環状分子に導入されているか(修飾度)について説明を行う。
本明細書において「修飾度」とは、環状分子の「反応基」の総数に対して導入された「修飾基」の数の比を意味する。例えば、環状分子としてα−シクロデキストリンを使用した場合を一例として説明する。
α−シクロデキストリンが1個存在する場合、α−シクロデキストリンは18個の水酸基を反応基として持つので「修飾基」が導入される前の環状分子の「反応基」の総数は、18(=18×1)である。このうち、計9個の「反応基」に「修飾基」が導入されたとなると、「修飾度」は、0.5(=9/18)となる。
ここで、修飾度は、特に制限されず、所望の溶剤溶解性、環状分子の種類などによって適宜選択されうる。具体的には、0.06以上(上限は1)であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
ここで、修飾度が0.06未満であると、溶剤溶解性が低下する場合があり、塗膜形成時に不溶性ブツ(異物付着などに由来する突出物)が生成することがある。
<直鎖状分子>
本発明の修飾ポリロタキサンは、本発明の環状分子の中空部を貫通する直鎖状分子を有する。
直鎖状分子3は、実質的に直鎖であればよく、回転子としても機能する本発明の環状分子2が回動可能で滑車効果を発揮できるように包接されうる限り、分岐鎖を有していてもよい。また、直鎖状分子3の長さ(直鎖状分子の分子量)も、本発明の環状分子2の大きさにも影響を受けるが、本発明の環状分子2が滑車効果を発揮できる限り特に限定されない。
直鎖状分子3は、その材質は特に制限されないが、両末端に、封鎖基4を導入しやすくするように処理をしておいてもよい。その理由は、後述する封鎖基4との反応性が向上し、かかる封鎖基4を容易に導入することができるからである。かような処理としても、特に制限されないが、直鎖状分子3や封鎖基4の種類などに応じて適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびチオール基などを導入するということが好適である。
直鎖状分子3は、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリアルキレン類;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトンなどのポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテル類;ポリアミド類;ポリ(メタ)アクリル類;およびベンゼン環を有する直鎖状分子などを挙げることができる。これら直鎖状分子のうち、ポリエステルやポリエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンがより好ましく、有機溶剤への分散性の観点から、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
また、直鎖状分子3の分子量(重量平均分子量)は、特に制限されず、本発明の環状分子2の種類や包接量などによって適宜選択されうる。具体的には、好ましくは10,000〜45,000、より好ましくは15,000〜40,000、特に好ましくは20,000〜35,000の範囲である。このような範囲であれば、好ましい包接量に制御することができる。なお、直鎖状分子3の分子量が1,000未満では、本発明の環状分子2による滑車効果が十分に得られなくなって塗膜の伸び率が低下する可能性がある。このような場合には、修飾ポリロタキサンを塗膜にした場合の塗膜の耐擦傷性が低くなるおそれがある。また、分子量が45,000を超えると、溶剤溶解性が低下する可能性がある。このような場合には、本発明の修飾ポリロタキサンを塗膜に含有した場合、塗膜の平滑性などが劣るおそれがある。なお、上記分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)などの公知の方法によって測定できる。
<封鎖基>
本発明の修飾ポリロタキサンは、直鎖状分子の両末端に配置され、本発明の環状分子の脱離を防止する封鎖基を有する。封鎖基4は、本発明の環状分子2が、直鎖状分子3からの脱離を防止するよう働く。かような構造を有すると、外的応力が加わった場合であっても、本発明の環状分子2が、直鎖状分子3に沿って自由に移動する(滑車効果)。そのため、本発明の修飾ポリロタキサン1を含有する溶剤を含む塗膜は、伸縮性や粘弾性に優れ、フィルムが切れたり、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラック等が発生しにくい上に、平滑性がさらに向上されるという優れた特性を備えている。
封鎖基4は、直鎖状分子3の両末端に配置され、直鎖状分子3が、本発明の環状分子2の中空部を串刺し状に貫通された状態を保持できる基であれば、如何なる基であってもよい。
例えば、「嵩高さ」を有する基または「イオン性」を有する基などを挙げることができる。なお、ここで「基」とは、分子基および高分子基を含む種々の基を意味する。「嵩高さ」を有する基は、主にその大きさにより環状分子の脱離を防止する基であり、例えば、球形をなすものや、側壁状の基を例示することができる。また、「イオン性」を有する基は、主に封鎖基のイオン性により、環状分子の有するイオン性との相互作用、例えば、反発作用等により、環状分子が直鎖状分子に串刺しにされた状態を保持する基である。
このような封鎖基を有する物質としては、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基等の、ジニトロフェニル基を有する化合物類、シクロデキストリン類、アダマンタンアミン等の、アダマンタン類、トリチル基を有する化合物類、フルオレセイン類、およびピレン類;並びにこれらの誘導体や変性体などを挙げることができる。なお、封鎖基4を有する物質は、本発明の環状分子2の脱離を防止できればよく、上記に限定されるものではない。
<本発明の修飾ポリロタキサンの製造方法>
本発明の修飾ポリロタキサンの製造方法は、特に制限されない。以下で、本発明の修飾ポリロタキサンの製造方法の好ましい実施形態を記載するが、本発明は、下記方法に限定されるものではない。
[修飾ポリロタキサンの製造方法の第1実施形態]
本発明の修飾ポリロタキサンの製造方法の第1実施形態は、(1)反応基を有する環状分子と直鎖状分子とを混合し、前記環状分子の中空部に直鎖状分子を貫通させ、擬ポリロタキサンを得る工程と、(2)環状分子が前記直鎖状分子から脱離しないように、前記直鎖状分子の両末端を封鎖基で封鎖して、ポリロタキサンを得る工程と、(3)前記ポリロタキサンを、二種類以上のラクトンと反応させることによって、前記反応基に、前記二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入する工程と、を有する。
なお、二種類以上のラクトンは、例えばε−カプロラクトンに由来する基およびその他のラクトンに由来する基(特に置換基を有するラクトン由来の修飾基)、あるいは、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する基が好ましい。
かかる製造方法によって、上述の如く優れた溶剤溶解性と白濁しにくい塗膜を形成しうる、本発明の修飾ポリロタキサンを得ることができる。
(1)第1工程
本工程においては、反応基を有する環状分子と直鎖状分子とを混合し、前記環状分子の中空部に直鎖状分子を貫通させ、擬ポリロタキサンを得る。
反応基を有する環状分子としては、上記(環状分子)の項で説明したものを使用することができる。例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンなどが使用できる(この際、反応基はシクロデキストリン構造由来の水酸基である)。
直鎖状分子としては、上記(直鎖状分子)の項で説明したものを使用することができるが、反応基を有する環状分子との混合前に、酸化処理を行ってもよい。例えば、直鎖状分子が反応基として水酸基を有する場合には、直鎖状分子は、酸化されると、少なくとも一部(好ましくは、末端部分)にカルボキシル基が導入される。このように直鎖状分子を予め酸化しておくことによって、次工程(2)において、封鎖基を導入しやすいという利点がある。この際、直鎖状分子の酸化方法は、特に制限されず、公知の酸化方法が使用できる。例えば、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシラジカル)などが挙げられる。また、酸化条件は、特にされず、公知の酸化条件が同様にあるいは適宜修飾して適用できる。
本工程において、反応基を有する環状分子と、直鎖状分子との混合比は、特に制限されないが、所望の包接量となるような混合比であることが好ましい。また、反応基を有する環状分子と、直鎖状分子との混合条件もまた、所望の包接量となるような条件であれば特に制限されない。好ましくは、反応基を有する環状分子と、直鎖状分子とを混合した後、1〜10℃、より好ましくは2〜5℃の温度で、6〜15時間、より好ましくは9〜12時間、放置/静置する。なお、反応基を有する環状分子と、直鎖状分子との混合は、無溶媒下で行なってもよいが、溶媒中で行なわれることが好ましい。この際、溶媒としては、反応基を有する環状分子および直鎖状分子が溶解できるものであれば特に制限されないが、具体的には、水(冷水、温水を含む)、メタノール、エタノールなどが挙げられる。これらのうち、溶解性を考慮すると、水、特に50〜80℃の温水が好ましい。なお、反応基を有する環状分子および直鎖状分子を溶解する溶媒は、同一であってもあるいは異なる種類であってもよいが、混合操作などを考慮すると、同一の溶媒であることが好ましい。このようにして、反応基を有する環状分子と直鎖状分子との混合により得られた包接錯体は、凍結乾燥、熱風乾燥、減圧蒸留、減圧乾燥、真空乾燥などによって、固化されて、擬ポリロタキサンを得ることができる。
(2)第2工程
続いて、反応基を有する環状分子が直鎖状分子から脱離しないように、直鎖状分子の両末端を封鎖基で封鎖して、ポリロタキサンを得る。本工程においては、ポリロタキサンを得ることができるが、環状分子の直鎖状分子への包接量を良好に制御しながら行うとよい。
ここで、反応基を有する環状分子の包接量の制御方法は、特に制限されない。反応基を有する環状分子の包接量は、例えば、以下の方法によって調節される。すなわち、まず、上記で得られた擬ポリロタキサンを、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒に分散させて、擬ポリロタキサン分散液を得る。一方、DMFに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスフェート)、アダマンタンアミン、ジイソプロピルエチルアミンを、10〜30℃(好ましくは室温)で、この順番に溶解させ、封鎖用溶液を調製する。この封鎖用溶液を、上記で調製した擬ポリロタキサン分散液に添加し、すばやく混合する。その後、この混合液を、2〜5℃で、9〜12時間、放置/静置する。これにより、直鎖状分子が、反応基を有する環状分子の中空部を、串刺し状に貫通してなる構造を有する擬ポリロタキサンを得ることができる。換言すれば、環状分子が直鎖状分子を包接してなる擬ポリロタキサンを得ることができる。
なお、上記静置後は、反応液を、遠心分離、凍結乾燥、熱風乾燥、減圧蒸留、減圧乾燥、真空乾燥などによって、溶媒を除去してもよい。また、適宜、溶媒により洗浄するなどして、より純度の高い擬ポリロタキサンを得てもよい。
上記方法では、封鎖用溶液が、封鎖基を有する化合物として、アダマンタンアミンを含む。このため、上記反応によって、反応基を有する環状分子が包接されてなる直鎖状分子の両末端に封鎖基が導入されるポリロタキサンを得ることができる。
なお直鎖分子の酸化法(上記工程(1)第1工程)、および末端がカルボン酸基で酸化された直鎖分子と環状分子との包接錯体の形成、並びにアダマンタンアミンを用いた封鎖反応(上記工程(2)第2工程)についての詳細は国際公開公報WO2005−052026に記載されている。本発明で用いたポリロタキサンは上記国際公開公報を参考に作製したものである。
(3)第3工程
続いて、前記ポリロタキサンを、二種類以上のラクトンと反応させることによって、前記反応基に、前記二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入する。このようにして、修飾ポリロタキサンを得ることができる。
二種類以上のラクトン由来の修飾基は、例えばε−カプロラクトンに由来する基およびその他のラクトンに由来する基(特に置換基を有するラクトン由来の修飾基)あるいは、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する基であることが好ましい。
ここで、環状分子の反応基に、二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入する方法としては制限されない。環状分子の反応基に、直接、二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入してもよいし、目的物である修飾ポリロタキサンの溶剤溶解性等の特性をさらに向上させるために、反応基と、該二種類以上のラクトン由来の修飾基とに、スペーサーの役割をするようなものを予め導入しておくと好ましい。例えば、後者の場合は、上記で得られたポリロタキサンにアルキレンオキシドを添加して、環状分子の反応基とアルキレンオキシドを反応させた後、これを、二種類以上のラクトン、例えばε−カプロラクトンおよびその他のラクトンに由来する基(特に置換基を有するラクトン)あるいは、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種と反応させる。そうすると、溶剤溶解性等がさらに向上する。
ここで、ポリロタキサンは適当な溶媒に溶解しておくことが好ましい。この際、適当な溶媒としては、ポリロタキサンを溶解できれば特に制限されないが、溶解性を考慮すると、アルカリ溶液であることが好ましい。例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
上記方法において、アルキレンオキシドとしては、特に制限されないが、炭素原子数2〜4のアルキレンオキシドが好ましい。具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどである。これらのうち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドがより好ましい。上記アルキレンオキシドは、1種を単独で使用してもあるいは2種以上を混合物の形態で使用してもよい。アルキレンオキシドの添加量は、特に制限されず、所望の修飾度となるような量であることが好ましい。具体的には、アルキレンオキシドの添加量は、ポリロタキサンの総量に対して、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%である。
またアルキレンオキシドの添加、反応条件は特に制限されないが、通常10〜30℃で、水酸化ナトリウム水溶液中で行なうことが好ましい。詳細な条件は国際公開公報WO2005−080469に記載されている。
次に、このヒドロキシアルキル化ポリロタキサンに、二種類以上のラクトン、例えばε−カプロラクトンおよびその他のラクトン(例えば、置換基を含むラクトン)を反応(添加)させることによって、環状分子のヒドロキシアルキルに、ε−カプロラクトンに由来する基およびその他のラクトン(特に置換基を含むラクトン由来の修飾基)あるいは、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する基からなる修飾基を導入する。
該置換基を含むラクトンとしては、上記(ラクトン由来の修飾基)の項で説明した内容が同様に妥当する。
二種類以上のラクトンの添加量(ラクトンの添加量の全量)は、特に制限されず、上記したような環状分子の該ラクトン由来の修飾基による修飾度となるような量であることが好ましい。具体的には、ラクトンの添加量は、ポリロタキサンの重量に対して、好ましくは1〜4.5倍、より好ましくは3.5〜4.5倍である。
また、該ラクトンの添加・反応条件は、特に制限されない。例えば、上記ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンに、二種類以上のラクトン、例えばε−カプロラクトンとその他のラクトンを添加し、反応を行なう。この際、当該反応は、ヒドロキシアルキル化ポリロタキサンと二種類以上のラクトン、例えばε−カプロラクトンとその他のラクトンとのみで行なわれてもよいが、触媒の存在下でこの反応を行なうことが好ましい。ここで使用できる触媒は、特に制限されず、公知の触媒が使用できる。例えば、2−エチルへキサン酸スズなどが挙げられる。また、上記反応は、通常、80〜100℃で、4時間程度行なうことが好ましい。なお、上記反応は、溶液が均一になるように、攪拌してもよい。その他のラクトンの量が全ラクトン(二種類以上のラクトン、例えばε−カプロラクトンとその他のラクトンの総量)の量の2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
ここで、攪拌は、上記反応の前あるいは上記反応と同時のいずれでもよいが、反応前に予め攪拌した後、触媒を添加することが好ましい。上記添加および必要であれば攪拌後は、適当な溶媒による析出、遠心分離、透析、凍結乾燥、熱風乾燥、減圧蒸留、減圧乾燥、真空乾燥などを行なってもよい。このように反応基を有する環状分子を有するポリロタキサンを、二種類以上のラクトン、例えばε−カプロラクトンとその他のラクトン(特に置換基を含むラクトン)あるいは、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種と反応させることによって、かかる反応基に、二種類以上のラクトン由来の修飾基が導入され、本発明の修飾ポリロタキサンが得られる。
なお、本発明の修飾ポリロタキサンの製造方法の第1実施形態において、工程の順番は特に制限されない。例えば、本発明の修飾ポリロタキサンの製造方法の第1実施形態の変形例として、(1)反応基を有する環状分子と直鎖状分子とを混合し、前記環状分子の中空部に直鎖状分子を貫通させ、擬ポリロタキサンを得る。その後、(2)前記擬ポリロタキサンを、二種類以上のラクトンと反応させることによって、前記反応基に、前記二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入する。その後、(3)環状分子が前記直鎖状分子から脱離しないように、前記直鎖状分子の両末端を封鎖基で封鎖する。このようにして、本発明の修飾ポリロタキサンを得てもよい。
一方で、予め環状分子が有する反応基に二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入したものを用いる場合、修飾ポリロタキサンの製造方法の第1実施形態の(3)工程を省略することができる。
修飾ポリロタキサンの製造方法の一例を以下に具体的な反応式を用いて説明する。無論、下記の製造方法に限定されないのは言うまでもない。なお、反応式1中の「−OH」には、環状分子が表されていることが省略されている。
なお、下記反応式1は、本発明をより明瞭に理解することを目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
ここで、nは、好ましくは2〜9である。
上記反応式において、まず、反応基(水酸基)を有する環状分子と、アルキレンオキシド(プロピレンオキシド)とを反応させる。そして、水酸基を有する環状分子の中空部に、直鎖状分子を貫通させ、かかる環状分子が、直鎖状分子から脱離しないよう封鎖基で封鎖して、ポリロタキサンを得る。その後、このポリロタキサンをε−カプロラクトンと、置換基(メチル基)を有するラクトン(γ−バレロラクトン)と同時に反応させることによって、反応基(水酸基)に、置換基(メチル基)を含むラクトン(γ−バレロラクトン)由来の修飾基を導入する。上記したような方法によって、本発明の修飾ポリロタキサンが製造できる。
続いて、架橋型修飾ポリロタキサンについて説明を行う。
架橋型修飾ポリロタキサンは、本発明の修飾ポリロタキサンと、他のポリマーとが架橋したものを言う。例えば、塗膜形成時には、本発明の修飾ポリロタキサンが、塗膜を形成する成分(ポリマー、硬化剤など)と架橋してなるものである。この塗膜形成成分は、ポリロタキサンの環状分子を介してポリロタキサンと結合している。
以下、架橋型修飾ポリロタキサンについて説明する。図2に、架橋型修飾ポリロタキサンを概念的に示す図である。図2に示すように、架橋型修飾ポリロタキサン6は、ポリマー7と、本発明の修飾ポリロタキサン1と、を有する。そして、本発明の修飾ポリロタキサン1は、本発明の環状分子2を介して架橋点8によってポリマー7およびポリマー7’と結合(架橋)している。
このような構成を有する架橋型修飾ポリロタキサン6に対し、図2(A)の矢印X−X’方向の変形応力が負荷されると、架橋型修飾ポリロタキサン6は、図2(B)に示すように変形してこの応力を吸収することができる。すなわち、図2(B)に示すように、環状分子2は、滑車効果によって直鎖状分子3に沿って移動可能であるため、上記応力をその内部で吸収可能である。
このように、架橋型修飾ポリロタキサン6は、滑車効果を有するものであり、従来のゲル状物などに比し優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度を有する。また、この架橋型修飾ポリロタキサン6の前駆体である、本発明の修飾ポリロタキサン1は、上述の如く有機溶剤への溶解性が改善されており、有機溶剤中での架橋などが容易である。更に、この架橋型修飾ポリロタキサン6の前駆体である本発明の修飾ポリロタキサン1は、図1に示すように、上述の如く溶剤への溶解性向上と凝集抑制効果が改善されており、優れた溶剤溶解性と白濁しにくい塗膜を形成しうる。
よって、架橋型修飾ポリロタキサン6は、有機溶剤が存在する条件下で容易に得ることができ、特に、本発明の修飾ポリロタキサンと、有機溶剤可溶性の塗膜形成成分とを架橋させることにより、容易に製造することができる。したがって、本発明の修飾ポリロタキサン1を溶剤系塗料用材料に用いた場合には、その適用範囲が拡大されている。例えば、有機溶剤に可溶な塗膜ポリマーを用いる塗料や接着剤、特に耐洗車性、耐引っ掻き性、耐チッピング性、耐衝撃性および耐候性の要求される自動車用の塗料、樹脂基材および接着剤、並びに家電用の塗料や樹脂基材等についても適用可能であり、これらの用途においても優れた滑車効果を発現できるものである。また別の観点からは、架橋型修飾ポリロタキサン6は、本発明の修飾ポリロタキサン1の架橋対象である塗膜形成成分の物性を損なうことなく、当該塗膜形成成分と当該ポリロタキサンとを複合体化している。
したがって、以下に説明する架橋型修飾ポリロタキサンの形成方法によれば、上記塗膜形成成分の物性と、本発明の修飾ポリロタキサン自体の物性を併有する材料が得られる。また、ポリマー種などを選択することにより、所望の機械的強度などを有する塗膜を得ることができる。なお、架橋型修飾ポリロタキサンは、架橋対象が疎水性であり、その分子量が余り大きくない場合、例えば分子量が数千程度までなら有機溶剤に溶解する。
ここで、架橋型修飾ポリロタキサンの作製方法について説明する。
架橋型修飾ポリロタキサンは、代表的には、(a)ポリロタキサンを用いた溶剤系塗料用材料(本発明の修飾ポリロタキサン)を、他の塗膜形成成分と混合し、(b)当該塗膜形成成分の少なくとも一部を物理的および/または化学的に架橋させ、(c)当該塗膜形成成分の少なくとも一部と、本発明の修飾ポリロタキサンとを環状分子を介して結合させる(硬化反応)、ことにより形成できる。なお、本発明の修飾ポリロタキサンは、有機溶剤に可溶であるため、(a)工程〜(c)工程を有機溶剤中で円滑に行うことができる。また、これらの工程は硬化剤を用いることでより円滑に行うことができる。(b)、(c)工程においては、化学架橋することが好ましい。例えば、これは上述の如き本発明の修飾ポリロタキサンを構成する環状分子が有する反応基(好ましくは水酸基)と、塗料形成成分の一例であるポリイソシアネート化合物とが、ウレタン結合を繰返し形成することによって、架橋型修飾ポリロタキサンが得られる。また、(b)工程と(c)工程はほぼ同時に実施してもよい。
(a)工程における混合工程は、用いる塗膜形成成分に依存するが、溶媒無しでまたは溶媒中で行うことができる。また、溶媒は塗膜形成時に加熱処理などで除去できる。また、上記本発明の修飾ポリロタキサンを用いた溶剤系塗料用材料は、塗膜形成成分(樹脂固形分など)に対して質量換算で1〜90%含まれることが好ましい。より好ましくは30〜75%であり、特に好ましくは40〜60%であることがよい。1%より少ないと、滑車効果が低下することで塗膜の伸び率が低下することがある。90%を超えると、平滑性が低下し、外観を損なうおそれがある。
続いて、本発明の修飾ポリロタキサンを含む、溶液、溶剤系塗料、溶剤系塗膜および積層塗膜について説明を行う。
本発明の修飾ポリロタキサンは、有機溶剤に溶解させた溶液として用いると好ましい。例えばこの溶液を塗料に適用させる場合には、この溶液に塗料に必要な成分を添加して塗料に適用可能となる。他の用途に用いる場合にも該溶液に適宜必要な成分を添加すれば良い。上記有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体例としては、酢酸エチルや酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのようなエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのようなケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのようなエーテル類、トルエンやキシレン、ソルベッソなどのような炭化水素溶剤、イソプロピルアルコールやブチルアルコールなどのアルコール類または疎水性の高い長鎖アルコール類などを用いることができる。これらは2種以上を適宜混合しても良い。また、水やブチルセロソルブアセテートなどの水系溶剤が若干含まれていても、全体として有機溶剤とみなすことができればよい。
本発明の修飾ポリロタキサンは、溶剤系塗料に含有させて用いると好ましい。ここで溶剤系塗料とは有機溶剤(溶媒)に塗料成分を含有させたものであって、塗布、硬化させて塗膜を形成できるものであれば良く、市販されているものでも構わない。塗料成分としては樹脂成分、硬化剤、添加剤、顔料、光輝剤または溶媒およびこれらの任意の組合せがある。そのような溶剤系塗料に本発明の修飾ポリロタキサンを含有させ、さらに適宜用途に応じて樹脂成分、硬化剤、添加剤、顔料、光輝剤または溶媒およびこれらの任意の組合せに係るものを混合してなることが好ましい。本発明の修飾ポリロタキサンを含有する溶剤系塗料は、クリア塗料、ベースコート塗料またはエナメル塗料として用いると好ましい。また、溶剤系塗料を固化して溶剤系塗膜として用いることも好ましい。
上記樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、主鎖または側鎖に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基または光架橋基、およびこれらの任意の組合せに係る基を有するものが好ましい。なお、光架橋基としては、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩およびスチリルキノリン塩などを例示できる。また、2種以上の樹脂成分を混合使用してもよいが、この場合、少なくとも1種の樹脂成分が、環状分子を介して本発明の修飾ポリロタキサンと結合していることがよい。更に、かかる樹脂成分は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーの場合、2種以上のモノマーから構成されるものでもよく、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマーまたはグラフトコポリマーのいずれであってもよい。具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、澱粉およびこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび他のオレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂およびこれらの誘導体または変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロン(登録商標)などのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、およびこれらの誘導体を挙げることができる。誘導体としては、上述した水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基または光架橋基およびこれらの組合せに係る基を有するものが好ましい。
上記硬化剤の具体例としては、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾールまたはアルコキシシラン類を挙げることができ、本発明では、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記硬化剤は、分子量が2000未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは600未満、いっそう好ましくは400未満のものを用いることができる。
上記添加剤の具体例としては、分散剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、表面調整剤、ワキ防止剤などを用いることができる。
上記顔料の具体例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料等の有機系着色顔料や、カーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラ等の無機系着色顔料を用いることができる。
上記光輝剤の具体例としては、アルミ顔料、マイカ顔料などを用いることができる。
上記溶媒の具体例としては、酢酸エチルや酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのようなエステル類、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのようなケトン類、ジエチルエーテルやジオキサンなどのようなエーテル類、トルエンやキシレン、ソルベッソなどのような炭化水素溶剤、または疎水性の高い長鎖アルコール類などを用いることができる。これらは2種以上を適宜混合しても良い。また、水やブチルセロソルブアセテートなどの水系溶剤が若干含まれていても、全体として有機溶剤とみなすことができればよい。
本発明の修飾ポリロタキサンを溶剤系塗料に含有させて上塗り塗料として用いた場合、上塗り塗料は、艶あり塗料または艶消し塗料とすることができる。艶消し塗料とするには、上記成分の他にシリカや樹脂ビーズ等の艶消し剤を加えればよい。
また、上記上塗り塗料は、一般的なクリア塗料、ベースコート塗料あるいはエナメル塗料として用い、クリア塗膜、ベースコート塗膜あるいはエナメル塗膜を形成することができる。具体的には、アクリル系塗料、メラミン系塗料、ウレタン系塗料、ポリエステル系塗料などに調製すればよい。また、これらは、一液型であってもよいし、二液型(例えばウレタン樹脂塗料)などでもよい。特に限定されるものではないが、上記クリア塗膜の膜厚としては、20〜40μm程度、上記ベースコート塗膜の膜厚としては、10〜15μm程度、上記エナメル塗膜の膜厚としては、20〜40μm程度が好ましい。
本発明の積層塗膜は、被塗物上に、下塗り塗膜、ベースコート塗膜、クリア塗膜を順次形成した構成でも良く、被塗物上に、直接ベースコート塗膜を形成させてクリア塗膜を順次形成した構成でも良い。この場合に、本発明の修飾ポリロタキサンを含む溶剤系上塗り塗料を、ベースコート塗膜およびまたはクリア塗膜に用いて塗膜を形成して成ると好ましい。
これにより、本発明の修飾ポリロタキサンを含む溶剤系上塗り塗料をクリア塗膜に用いた場合には積層塗膜最表面の耐傷付き性が向上し、本発明の修飾ポリロタキサンを含む溶剤系上塗り塗料をベースコート塗膜に用いた場合には積層塗膜の耐チッピング性が向上する。ここで、被塗物の材質としては、特に制限されず、用途によって適宜選択される。例えば、鉄や鋼、アルミニウムなどの金属材料、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの各種有機材、石英、セラミックス(炭化カルシウム他)などの各種無機材、木質材料、石材やレンガ、ブロックなどの石質材料、皮革材料などからなる各種の被塗物が使用できる。また、これらに溶剤系上塗り塗料を被覆する方法としては、公知慣用の方法が採用できる。例えば、はけ塗り法、吹付け法、静電塗装法、電着塗装法、粉体塗装、更にはスパッタ法などが挙げられる。更に、上記溶剤系上塗り塗料は、代表的には、加熱硬化(焼付け)処理により塗膜とすることができる。なお、上記溶剤系上塗り塗料は、被塗物の全体または一部に被覆できる。また、一般に、上記ベースコート塗膜を形成する場合にはクリア塗膜を形成させ、エナメル塗膜を形成する場合にはクリア塗膜を形成しない。
また、本発明の積層塗膜においては、密着性の観点から被塗物とベースコート塗膜との間に、下塗り塗膜を更に形成することが好ましい。ここで下塗り塗膜に用いる塗料は一般的に市販されているものでも良いが、本発明の修飾ポリロタキサンを下塗り塗膜用溶剤系塗料に含有させて下塗り塗膜に用いた場合には積層塗膜の耐チッピング性が向上する。
一方、本発明の他の積層塗膜は、被塗物に、上述の溶剤系上塗り塗料を用いたエナメル塗膜を形成してなると好ましい。これにより、積層塗膜の耐傷付き性、耐チッピング性が向上する。また、積層塗膜の表面の平滑性が良好となる。
また、被塗物とエナメル塗膜との間に、下塗り塗膜を更に形成することが好ましい。このときは、下塗り塗膜に所定の樹脂等を含めることで、エナメル塗膜との界面に、親油性ポリロタキサンによる架橋構造を形成させ、密着性などを向上させうる。ここで下塗り塗膜に用いる塗料は一般的に市販されているものでも良いが、本発明の修飾ポリロタキサンを下塗り塗膜用溶剤系塗料に含有させて下塗り塗膜に用いた場合には積層塗膜の耐チッピング性が向上する。
上述した本発明の積層塗膜の一例(概略断面)を図4および図5に示す。
図3に示す積層塗膜は、下塗り塗膜層10とベースコート塗膜11と、さらにその上の本発明の硬化型溶剤系上塗り塗料であるクリア塗膜12から構成されている。また、図4に示す積層塗膜は、下塗り塗膜層10と本発明の硬化型溶剤系上塗り塗料であるエナメル塗膜11が順次設けられている。
なお、「積層塗膜」には、説明の都合上、被塗物に溶剤系上塗り塗料のみを被覆してなる塗膜を含むが、この塗膜は単独層に限定されず、複数層から形成されていてもよい。
本発明の修飾ポリロタキサンは、特に耐擦傷性が要求される分野で用いられる製品、主として、自動車のボディ;屋内・屋外における樹脂成型品;階段、床、家具等の木工製品;メッキ、蒸着、スパッタリング等の処理が施されたアルミホイール、ドアミラー等に適用できる溶剤系塗料として使用できる。また、これを用いた塗料、塗膜および積層塗膜に使用できる。
次に、本発明の塗装物品について詳細に説明する。
本発明の塗装物品は、上述した本発明の溶剤系塗料から成る塗膜と被塗物とから成り、物品に本発明の溶剤系塗料から成る塗膜が形成されているものである。
なお、上述した積層塗膜を備え、物品に積層塗膜が形成されているものであっても本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
被塗物の材質としては上記の通りである。
また、上記被塗物の具体的な適用例としては、耐傷付き性が要求される自動車のボディ、メッキ、蒸着、スパッタリング等の処理が施されたアルミホイール、ドアミラーや、屋内・屋外における樹脂製品、階段、床、家具等の木工製品などを挙げることができる。
このようにして得られる塗装物品としては、自動車、オートバイ、自転車、鉄道、その他の輸送機械、建設機械、携帯電話、電化製品、光学機器、家具、建材、楽器、鞄、スポーツ用品、レジャー用品、キッチン用品、ペット用品、文房具などを挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
<実施例1>
(1)PEGのTEMPO酸化によるPEG−カルボン酸の調製
直鎖状分子としてポリエチレングリコール(PEG)(分子量35000)10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)100mg、臭化ナトリウム1gを水100mLに溶解させた。これに、市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mLを添加し、室温で10分間撹拌した。余った次亜塩素酸ナトリウムを分解させるために、エタノールを最大5mLまでの範囲で添加して反応を終了させた。
そして、50mLの塩化メチレンを用いた抽出を3回繰り返して無機塩以外の成分を抽出した後、エバポレーターで塩化メチレンを留去し、250mLの温エタノールに溶解させてから冷凍庫(−4℃)中に一晩おいて、PEG−カルボン酸のみを抽出させ、回収し、乾燥した。
(2)「直鎖状分子としてのPEG−カルボン酸」および「反応基を有する環状分子としてのα−CD」を用いた包接錯体(疑ポリロタキサン)の調製
上記(1)で調製したPEG−カルボン酸3gおよびα−シクロデキストリン(α−CD)12gをそれぞれ別々に用意した70℃の温水50mLに溶解させ、両者を混合し、よく振り混ぜた。その後、この混合物を、冷蔵庫(4℃)中に一晩静置した。クリーム状に析出した包接錯体(疑ポリロタキサン)を凍結乾燥して、回収した。
(3)アダマンタンアミンとBOP試薬反応を用いた包接錯体の封鎖
室温でジメチルホルムアミド(DMF)50mlにアダマンタンアミン0.13gを溶解し、さらに上記得られた包接錯体を添加して速やかによく振り混ぜた。続いてBOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)0.38gをDMFに溶解したものをさらに添加して同様によく振り混ぜた。さらにジイソプロピルエチルアミン0.14mlをDMFに溶解させたものをさらに添加して同様によく振り混ぜて試薬を得た。
次にスラリー状になった該試薬を冷蔵庫(4℃)中に一晩静置した。その後DMF/メタノール混合溶媒(体積比1/1)50mlを添加、混合、遠心分離を行なって上澄みを捨てた。さらに上記DMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、更にメタノール100mLを用いて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。得られた沈殿物を真空乾燥で乾燥させた後、50mLのDMSOに溶解させ、得られた透明な溶液を700mLの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥させた。さらにDMSOに溶解、水中で析出、回収、乾燥のサイクルを2回繰り返して最終的に精製ポリロタキサンを得た。なおα−CDの包接量は0.25である。
(4)シクロデキストリンの水酸基(反応基)のヒドロキシプロピル化
上記(3)で精製されたポリロタキサン500mgを1mol/LのNaOH水溶液50mLに溶解し、プロピレンオキシド3.83g(66mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌した。1mol/LのHCl水溶液で、pHが7〜8となるように中和し、透析チューブにて透析した後、凍結乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得た。得られたヒドロキシプロピル化ポリロタキサンは、H−NMRおよびGPCで同定し、所望の構造を有するヒドロキシプロピル化ポリロタキサンであることを確認した。なお、ヒドロキシプロピル基による修飾度は0.48であった。
(5)ε−カプロラクトンおよびα−アセチル−γ−ブチロラクトン由来の修飾基を有する、修飾ポリロタキサン
上記の乾燥したヒドロキシプロピル化ポリロタキサン1.00gを三口フラスコに入れ、窒素をゆっくりと流しながらε−カプロラクトン4.27g、α−アセチル−γ−ブチロラクトン0.23gの混合物をフラスコに導入、ドロキシプロピル化ポリロタキサンと混合した。この混合物をメカニカル撹拌機によって80℃、30分間撹拌して均一化した後、反応温度を100℃まで上げ、予めトルエンで薄めた2-エチルヘキサン酸スズ(50wt%溶液)0.16gを添加し、4時間反応させた。反応終了後、試料を50mlのトルエンに溶解させ、撹拌した450mlのヘキサン中に滴下して析出させ、回収、乾燥して修飾ポリロタキサンを得た。GPCによって、得られた修飾ポリロタキサンの重量平均分子量Mwは510,000、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
(6)クリア塗料の調製
得られた修飾ポリロタキサンをトルエンで10%になるように溶解した。次いで、日本油脂株式会社製のベルコートNo.6200GN1 アクリル・メラミン硬化型クリア塗料に、溶解したポリロタキサンを撹拌しながら添加した。なお、なお、塗膜中の含有量50%であった(固形分換算)。
(7)積層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した、厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「パワートップU600M」、日本ペイント社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。その後、日本油脂株式会社製のグレーの下塗り(商品名:ハイエピコNo.500)を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
次いで、日本油脂株式会社製のベルコートNo6010メタリック塗色を10μm塗装し、ウエットオンウエットでポリロタキサンを含有するクリア塗料を30μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
<実施例2>
「α−アセチル−γ−ブチロラクトン」を、「α−メチル−γ−ブチロラクトン」に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
<実施例3>
「α−アセチル−γ−ブチロラクトン」を、「γ−バレロラクトン」に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
<実施例4>
塗膜中の含有量「50%」を「1%」に変更した以外は、実施例3と同様に実験を行った。
<実施例5>
塗膜中の含有量「50%」を「90%」に変更した以外は、実施例3と同様に実験を行った。
<実施例6>
「日本油脂株式会社製のベルコートNo.6200GN1 アクリル・メラミン硬化型クリア塗料」を「日本油脂株式会社製のベルコートNo.6010 アクリル・メラミン硬化型エナメル(黒塗色)塗料」に変更した以外は、実施例3と同様に実験を行った。
<実施例7>
塗膜中の含有量「50%」を「1%」に変更した以外は、実施例6と同様に実験を行った。
<実施例8>
塗膜中の含有量「50%」を「90%」に変更した以外は、実施例6と同様に実験を行った。
<実施例9>
「α−アセチル−γ−ブチロラクトン」を、「γ−ブチロラクトン」に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
<比較例1>
実施例1の(5)を行わないこと以外は、実施例1と同様に実験を行った。
<比較例2>
「α−アセチル−γ−ブチロラクトン」を、「ε−カプロラクトン」に変更した以外は、実施例1と同様に実験を行った。
<比較例3>
日本油脂株式会社製のベルコートNo.6200GN1 アクリル・メラミン硬化型クリア塗料を用いて実験を行った。
実施例1〜14および比較例1〜4について、以下の(1)〜(4)の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)溶剤溶解性
各実施例で得られた二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する修飾ポリロタキサンならびに各比較例(比較例4を除く)で得られたもの、それぞれ1gを、50℃に加温した酢酸ブチル10gに徐々に添加し、溶解の有無および白濁度を目視評価した。結果を、以下:
〇:透明
△:若干の白濁
×:不溶
の基準で評価した。
(2)白濁度
各実施例および各比較例の積層塗膜中のクリア塗膜およびエナメル塗膜の白濁度を目視評価した。結果を、以下:
〇:変化なし
△:若干の白濁
×:白濁および分離
の基準で評価した。
(3)平滑性
各実施例および各比較例の積層塗膜中の上塗り塗膜の平滑度合いを目視評価した。結果を、以下:
〇:かなり平滑
△:若干、凹凸
×:凹凸
の基準で評価した。
(4)耐擦傷性
磨耗試験機の摺動子にダストネル(摩擦布)を両面テープで貼り付け、0.22g/cmの荷重下、(3)で得た積層塗膜中の上塗り塗膜上を50回往復させ、傷の有無を評価した。結果を、以下:
○:殆ど傷がない。
△:少し傷がある。
×:目立つほど多くの傷がある。
の基準で評価した。
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜14の溶剤系塗料は、本発明の修飾ポリロタキサンの疎水性および溶剤に対する溶解性が向上し、凝集体が抑制される構造によって良好な溶剤への溶解性を示した。また、表1の結果から明らかなように、当該塗料による塗膜は、本発明の修飾ポリロタキサンが有する滑車効果に基づく耐擦傷性の向上と共に、良好な外観を示していることが確認された。
一方、一種類のラクトン由来の修飾基のみ有するポリロタキサンを用いた比較例1〜3および通常市販されている比較例4の溶剤系塗料および塗膜は、塗膜の白濁度や平滑性に劣ることが判明した。
以上のように、本発明に従えば、特に規定された狭い塗装条件に限定されることなく、通常の塗装と同様の作業性で目的の外観が得られ、塗膜の耐傷付き性の向上が可能である。
1 修飾ポリロタキサン、
2 環状分子、
2a 反応基
2b 二種類以上のラクトン由来の修飾基(置換基を含まないラクトンおよび置換基を含むラクトン由来の修飾基)、
2c 一種類のラクトン由来の修飾基、
3 直鎖状分子、
4 封鎖基、
6 架橋型修飾ポリロタキサン
7、7’ ポリマー、
8 架橋点、
10 下塗り塗膜、
11 エナメル塗膜(ベースコート塗膜)、
12 クリア塗膜。

Claims (10)

  1. 二種類以上のラクトン由来の修飾基を有する、環状分子と、
    前記環状分子の中空部を貫通する直鎖状分子と、
    前記直鎖状分子の両末端に配置され、前記環状分子の脱離を防止する封鎖基と、
    を有する、修飾ポリロタキサン。
  2. 前記ラクトン由来の修飾基が、
    置換基を含まないラクトン由来の修飾基および置換基を含むラクトン由来の修飾基または、
    置換基を含まない二種以上のラクトン由来の修飾基、
    を有し、
    含む場合における該置換基が、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルキルカルボニル基である、請求項1に記載の修飾ポリロタキサン。
  3. 前記ラクトン由来の修飾基が、
    (a)ε−カプロラクトンに由来する基と、
    (b)α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびγ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種に由来する基と、
    からなる修飾基を有する、請求項1または2に記載の修飾ポリロタキサン。
  4. 前記環状分子が、水酸基を有し、
    前記ラクトン由来の修飾基は、環状分子の水酸基をアルキレンオキシドと反応させた後、前記二種類以上のラクトンと反応させることによって導入される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサン。
  5. 前記直鎖状分子が、ポリエチレングリコールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサン。
  6. 前記環状分子が、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群から選択される少なくとも1種のシクロデキストリンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサン。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の修飾ポリロタキサンを含む、溶剤系塗料。
  8. 請求項6または7に記載の溶剤系塗料から成る層を、被塗物上に形成させたことを特徴とする、溶剤系塗膜。
  9. 請求項8に記載の溶剤系塗膜と、被塗物と、から成ることを特徴とする塗装物品。
  10. (1)反応基を有する環状分子と直鎖状分子とを混合し、前記環状分子の中空部に直鎖状分子を貫通させ、擬ポリロタキサンを得る工程と、
    (2)環状分子が前記直鎖状分子から脱離しないように、前記直鎖状分子の両末端を封鎖基で封鎖して、ポリロタキサンを得る工程と、
    (3)前記ポリロタキサンを、二種類以上のラクトンと反応させることによって、前記反応基に、前記二種類以上のラクトン由来の修飾基を導入する工程と、
    を有する、修飾ポリロタキサンの製造方法。
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