JP2010042415A - 焼付け硬化型水系エナメル塗膜 - Google Patents

焼付け硬化型水系エナメル塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有し、クラックが発生せず、耐候性、耐汚染性、密着性等の性能にも優れた焼付け硬化型水系エナメル塗膜を提供する。
【解決手段】環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基を有し、上記直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方が親水性の修飾基を有する親水性ポリロタキサンを、好適には塗膜形成成分に対する質量比で1〜40質量%配合した塗料を固化させて、焼付け硬化型水系エナメル塗膜とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、主として、自動車のボディや、屋内・屋外において主に使用される樹脂成型品、階段、床、家具等の木工製品、めっき、蒸着、スパッタリング等の処理が施されたアルミホイールやドアミラー等の製品などに好適に用いられるエナメル塗膜に係り、さらに詳しくは、親水性ポリロタキサンを含有し、特に耐擦傷性に優れた焼付け硬化型水系エナメル塗膜に関するものである。
ポリカーボネートやアクリル等の樹脂成型品においては、硬度、耐候性、耐汚染性、耐溶剤性、防食性等の諸物性が要求されるレベルに満たない場合には、これらの物性を補うために、表面処理が施されることがある。
このような表面処理には、通常、常温乾燥型塗料や2液ウレタン塗料等の硬化型塗料が用いられるが、このような塗料による表面処理膜には傷が付き易く、しかも傷が付いてしまった場合には、これが目立ち易い。
また、製品としての意匠性を向上させるために、各種部品に、めっきや蒸着、スパッタリングのような金属鏡面処理を施すことがあるが、このような金属鏡面処理を行った場合、処理膜には傷が付き易く、付いた傷が目立ち易い。
そのため、このような鏡面処理膜には、通常、さらに上述したような塗料による表面処理が行われているが、この塗料処理膜にも、上記のように傷が付き易く、付いた傷が目立ち易いという欠点がある。
一方、自動車用トップコートについても、近年では新車時の塗装外観を長期間に亘って保持することができるように、高耐久化指向が強まってきており、塗膜には、洗車機や、砂塵、石はね等によっても傷の付かない耐擦傷性が求められている。
このような耐擦傷性を有する塗膜を形成することができる塗料としては、従来から、紫外線(UV)硬化型塗料、電子線エネルギー(EB)硬化型塗料、シリカ系ハードコート剤、2液型アクリルウレタン系軟質塗料等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特公平−43572号公報
しかしながら、上記したUV硬化型塗料、EB硬化型塗料、シリカ系ハードコート剤では、高硬度にするための硬質モノマーの使用や、架橋密度を高めることによる硬化収縮時の歪みの増大により、被塗物への密着性が低下したり、クラックが発生したりするという問題が生じ易い。
一方、上記2液型アクリルウレタン系軟質塗料においては、チッピングやクラックの発生などの問題はないものの、タック感が残る場合が多く、耐候性、耐汚染性に劣るという欠点を有している。
また、水溶性を有し、有機溶媒を使用しなくてもよい水系塗料の開発が要望されている。
本発明は、このような従来の高耐久化塗料における上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、優れた耐擦傷性、耐チッピング性を有すると共に、クラック等が発生せず、耐候性、耐汚染性、密着性等、塗料として具備すべき他の性能にも優れた焼付け硬化型水系エナメル塗膜を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を繰り返した結果、ポリロタキサンの滑車効果に基づく優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度に着目し、例えばポリロタキサンの環状分子が有する水酸基の全部又は一部を親水基で修飾することなどにより親水性を付与することによって、当該ポリロタキサンを水に溶解する硬化型のポリロタキサンに変性することができ、このような親水性ポリロタキサンを塗料に適用することによって、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は、上記知見に基づくものであって、本発明の焼付け硬化型水系エナメル塗膜は、被塗物上に形成され、最表面に位置するものであって、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、上記直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、第1〜第3アミノ基、第四級アンモニウム塩基及びヒドロキシアルキル基から成る群より選ばれた少なくとも1種の親水基を有する親水性ポリロタキサン、又は上記直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方が全体として親水性の修飾基を備え、該親水性の修飾基が上記親水基と疎水基を有し、この疎水基がアルキル基、ベンジル基、ベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、硝酸エステル基及びトシル基から成る群より選ばれた少なくとも1種の基である親水性ポリロタキサンと、顔料又は染料を含有することを特徴とする。
本発明によれば、上記特性を備えたポリロタキサンに親水性を付与し、水溶性に変性した親水性ポリロタキサンを塗膜材料として用いるようにしたことから、このような材料を含む焼付け硬化型水系エナメル塗膜の耐擦傷性や耐チッピング性を向上させることができるようになる。
本発明に用いるポリロタキサンの基本構造を概念的に示す模式図である。 架橋ポリロタキサンを概念的に示す模式図である。 本発明の焼付け硬化型水系エナメル塗膜を用いた積層構造例を示す概略断面図である。
以下、本発明に用いる親水性ポリロタキサンや、このような親水性ポリロタキサンを含有し、本発明のエナメル塗膜の形成に用いられる焼付硬化型水系エナメル塗料について、さらに詳細に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を意味するものとする。
上記したように、本発明の焼付硬化型水系エナメル塗膜は、その直鎖状分子及び環状分子のいずれか一方又は双方が所定の親水基又は親水基と疎水基を有し全体として親水性の修飾基を有する親水性ポリロタキサンを含有するものである。
図1は、ポリロタキサンの基本構造を概念的に示す模式図であって、当該ポリロタキサン1は、多数の環状分子2の開口部を直鎖状分子3が串刺し状に貫通すると共に、この直鎖状分子3の両末端に封鎖基4が結合して、環状分子2の直鎖状分子3からの脱離を防止する構造を備え、上記したように、外的応力が加わった場合に、上記環状分子2が直鎖状分子3に沿って自由に移動する(滑車効果)ことから、伸縮性や粘弾性に優れ、クラックや傷が生じ難いという優れた特性を備えている。
本発明に用いる親水性ポリロタキサンにおいては、上記環状分子2及び直鎖状分子3のいずれか一方又は双方、例えば図に示すように環状分子2が親水性修飾基2aを有し、これによって当該ポリロタキサンは、水や後述する水系溶剤に可溶なものとなり、水系塗料の成分として配合することができるようになる。
このような水や水系溶剤への可溶性の発現は、従来は水や水系溶剤に難溶性ないしは不溶性であったポリロタキサンに対し、水や水系溶剤という反応場、典型的には架橋場を提供するものである。すなわち、本発明に用いる親水性ポリロタキサンは、水や水系溶剤の存在下で他のポリマーとの架橋や修飾基による修飾が容易に行える反応性を向上させたものである。
上記修飾基は、親水基又は親水基と疎水基を有し、全体として親水性であればよい。
このような親水基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、第1〜第3アミノ基、第四級アンモニウム塩基、ヒドロキシアルキル基などがある。
また、疎水基としては、例えば、アルキル基、ベンジル基(ベンゼン環)及びベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、硝酸エステル基、トシル基などがある。
上記親水性ポリロタキサンにおける環状分子としては、上述の如き直鎖状分子に包接されて滑車効果を奏するものである限り、特に限定されるものではなく、種々の環状物質を挙げることができる。なお、環状分子としては、水酸基を有しているものが多い。
また、環状分子は実質的に環状であれば十分であって、「C」字状のように、必ずしも完全な閉環である必要はない。
さらに、環状分子としては、反応基を有するものが好ましく、これによって上記した親水性修飾基などとの結合が行い易くなる。
このような反応基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基、アルデヒド基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、反応基としては、後述する封鎖基を形成する(ブロック化反応)際に、この封鎖基と反応しない基が好ましい。
また、本発明に用いる上記親水性ポリロタキサンにおける上記環状分子の親水性修飾基による修飾度については、環状分子の有する水酸基が修飾され得る最大数を1とするとき、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
すなわち、上記修飾度が0.1未満であると、水や水系溶剤への溶解性が十分なものとならず、不溶性ブツ(異物付着などに由来する突出物)が生成することがある。
なお、環状分子の水酸基が修飾され得る最大数とは、修飾する前に環状分子が有していた全水酸基数を意味する。また、修飾度とは、換言すれば、修飾された水酸基数の全水酸基数に対する比のことである。
さらに、上記ポリロタキサンが多数の環状分子を有する場合、これら環状分子それぞれの水酸基の全部又は一部が親水基によって修飾されている必要はない。言い換えると、ポリロタキサン全体として親水性を示す限り、親水基によって修飾されていない水酸基を有する環状分子が部分的に存在したとしても何ら差し支えない。
ここで、親水基は少なくとも1つでよいが、環状分子、例えばシクロデキストリン環1つに対して1つの親水基を有するのが望ましい。
また、官能基を有している親水基を導入することにより、他のポリマーとの反応性を向上させることが可能になる。
なお、ポリロタキサンの環状分子への親水性修飾基の導入方法としては、例えば、上記環状分子としてシクロデキストリンを用いた場合には、該シクロデキストリンの水酸基をプロピレンオキシドを用いてヒドロキシプロピル化することが例示でき、このとき、プロピレンオキシドの添加量を変更することによって、上記ヒドロキシアルキル基による修飾度を制御することができる。
上記親水性ポリロタキサンにおいて、直鎖状分子に包接される環状分子の個数(包接量)については、直鎖状分子が環状分子を包接し得る最大包接量を1とするとき、0.06〜0.61が好ましく、0.11〜0.48がさらに好ましく、0.24〜0.41がいっそう好ましい。
すなわち、この比が0.06未満では滑車効果が不十分となって塗膜の伸び率が低下することがあり、0.61を超えると、環状分子が密に配置され過ぎて環状分子の可動性が低下し、同様に塗膜の伸び率が不十分となって、耐チッピング性や耐擦傷性が劣化する傾向があることによる。
なお、環状分子の包接量は、例えば、DMF(ジメチルホルムアミド)に、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、アダマンタンアミン、ジイソプロピルエチルアミンをこの順番に溶解させた溶液に、ジメチルホルムアミドとジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶媒に、環状分子が直鎖状分子に串刺し状態となった包接錯体をあらかじめ分散させた分散液を添加することによってポリロタキサンを合成する際に、上記混合溶液の混合比率を変更することによって制御することができ、DMF/DMSO比を高くするほど環状分子の包接量を大きくすることができる。
上記環状分子の具体例としては、種々のシクロデキストリン類、例えばα−シクロデキストリン(グルコース数:6個)、β−シクロデキストリン(グルコース数:7個)、γ−シクロデキストリン(グルコース数:8個)、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン及びこれらの誘導体又は変性体、並びにクラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、ジシクロヘキサノクラウン類及びこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
上述のシクロデキストリン等の環状分子は、その1種を単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、上記した種々の環状分子の中では、特にα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが良好であり、とりわけ、被包接性の観点からはα−シクロデキストリンを使用することが好ましい。
一方、直鎖状分子は、実質的に直鎖であればよく、回転子である環状分子が回動可能で滑車効果を発揮できるように包接できる限り、分岐鎖を有していてもよい。
また、環状分子の大きさにも影響を受けるが、その長さについても、環状分子が滑車効果を発揮できる限り特に限定されない。
なお、直鎖状分子としては、その両末端に反応基を有するものが好ましく、これにより、上記封鎖基と容易に反応させることができるようになる。
かかる反応基としては、採用する封鎖基の種類などに応じて適宜変更することができるが、水酸基、アミノ基、カルボキシル基及びチオール基などを例示することができる。
このような直鎖状分子としては、特に限定されるものではなく、ポリアルキレン類、ポリカプロラクトンなどのポリエステル類、ポリエチレングリコールなどのポリエーテル類、ポリアミド類、ポリアクリル類及びベンゼン環を有する直鎖状分子を挙げることができる。
これら直鎖状分子のうち、特にポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンが良好であり、水や水系溶剤への溶解性の観点からはポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
また、上記直鎖状分子の分子量としては、1,000〜50,000とすることが望ましく、10,000〜50,000が好ましく、さらには35,000〜50,000の範囲であることが好ましい。
すなわち、直鎖状分子の分子量が1,000未満では、環状分子による滑車効果が十分に得られなくなって塗膜の伸び率が低下し、耐チッピング性が劣化する一方、分子量が50,000を超えると、溶解性が低下するばかりでなく、表面の膜形成のために、最表面に位置するエナメル塗膜としての平滑性や艶等といった外観が劣化する傾向があることによる。
次に、封鎖基は、上記のような直鎖状分子の両末端に配置されて、環状分子が直鎖状分子によって串刺し状に貫通された状態を保持できる基でさえあれば、どのような基であっても差し支えない。
このような基としては、「嵩高さ」を有する基又は「イオン性」を有する基などを挙げることができる。なお、ここで「基」とは、分子基及び高分子基を含む種々の基を意味する。
「嵩高さ」を有する基としては、球形をなすものや、側壁状の基を例示することができる。
また、「イオン性」を有する基のイオン性と、環状分子の有するイオン性とが相互に影響を及ぼし合い、例えば反発し合うことにより、環状分子が直鎖状分子に串刺しにされた状態を保持することができる。
このような封鎖基の具体例としては、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基などのジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類及びピレン類、並びにこれらの誘導体又は変性体を挙げることができる。
次に、本発明に用いる親水性ポリロタキサンの製造方法について説明する。
上述の如き、親水性ポリロタキサンは、
(1)環状分子と直鎖状分子とを混合し、環状分子の開口部を直鎖状分子で串刺し状に貫通して直鎖状分子に環状分子を包接させる工程と、
(2)得られた擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)を封鎖基で封鎖して、環状分子が串刺し状態から脱離しないように調整する工程と、
(3)得られたポリロタキサンの環状分子が有する水酸基を親水性修飾基で修飾する工程、
によって処理することにより得られる。
なお、上記(1)工程において、環状分子が有する水酸基をあらかじめ親水性修飾基で修飾したものを用いることによっても、親水性ポリロタキサンを得ることができ、その場合には、上記(3)工程を省略することができる。
以上のような製造方法によって、上述の如く水や水系溶剤への溶解性に優れた親水性ポリロタキサンが得られ、硬化型水系エナメル塗料の材料として用いることができ、当該塗料によって本発明のエナメル塗膜を得ることができる。
本発明において、水系溶剤とは、水との間で相互作用し合い、水との親和力が強い性質をもつ溶剤のことを意味し、具体的には、例えば、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコールなどのようなアルコール類、セロソルブアセテート、ブチルセロソロブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのようなエーテルエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのようなグリコールエーテル類などを挙げることができ、本発明に用いる親水性ポリロタキサンは、これらの2種以上を混合した溶剤についても良好な溶解性を示す。
これらのうち、より好適なものとしてアルコール類、更に好適なものとしてグリコールエーテル類を挙げることができる。なお、トルエンのような有機溶剤が若干含まれていても、全体として水との親和力が強い性質を有すれば、水系溶剤としてよい。
なお、本発明においては、水や上記のような水系溶剤に可溶である限りにおいて親水性ポリロタキサンが架橋しているものであってもよく、かかる親水性架橋ポリロタキサンを非架橋の親水性ポリロタキサンの代りに、又はこれと混合して用いることができる。
このような親水性架橋ポリロタキサンとしては、比較的低分子量のポリマー、代表的には分子量が数千程度のポリマーと架橋した親水性ポリロタキサンを挙げることができる。
また、本発明において、親水性修飾基の全部又は一部が官能基を有することが他のポリマーとの反応性を向上させるという観点から望ましい。
かかる官能基は、環状分子、例えばシクロデキストリンの外側にあることが立体構造的に好ましく、ポリマーと結合又は架橋する際、この官能基を用いて容易に反応を行なうことができる。
このような官能基は、架橋剤を用いない場合には、例えば用いる溶媒の種類に応じて適宜変更することができる。一方、架橋剤を用いる場合には、その用いる架橋剤の種類に応じて適宜変更することができる。
更に、本発明においては、官能基の具体例として、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基及びアルデヒド基などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
そして、親水性ポリロタキサンにおいては、上述の官能基を、その1種を単独で又は2種以上を組合わせて有していてもよい。
かかる官能基としては、特にシクロデキストリンの水酸基と結合した化合物の残基であり、当該残基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基を有するものが良好であり、反応の多様性の観点からは水酸基が好ましい。
このような官能基を形成する化合物としては、例えばプロピレンオキシドなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
例えば、当該親水性修飾ポリロタキサンの水や水系溶媒への溶解性向上効果をあまり低下させなければ、官能基を形成する化合物がポリマーであってもよく、溶解性の観点からは、例えば、分子量が数千程度であることが望ましい。
なお、上述の官能基としては、後述する封鎖基が脱離しない反応条件において反応する基であることが好ましい。
本発明の焼付け硬化型水系エナメル塗膜は、上述した硬化型親水性ポリロタキサンを含有する焼付硬化型水系エナメル塗料を固化して成るものである。
すなわち、塗膜形成時には、上記した親水性ポリロタキサンが有する親水性の修飾基や他の官能基が、塗膜形成成分と反応し、架橋ポリロタキサンを形成することによって、耐擦傷性、耐チッピング性に優れた塗膜となる。また、クラックなども発生し難く、耐候性、耐汚染性、密着性等にも優れたものとなる。
なお、一般に、架橋ポリロタキサンは、ポリロタキサン単体と他のポリマーとが架橋したものを言うが、塗膜形成時には、上記塗料を構成する硬化型親水性ポリロタキサンが、ポリマーなどの塗膜形成成分と架橋して成るものであって、この塗膜形成成分は、ポリロタキサンの環状分子を介してポリロタキサンと結合している。
図2は、このような架橋ポリロタキサンを概念的に示す模式図であって、図において架橋ポリロタキサン6は、前述の親水性ポリロタキサン1とポリマー7とを有しており、このポリロタキサン1は、環状分子2を介して架橋点8によってポリマー7及びポリマー7´と結合している。なお、この図に示す環状分子2は、図1に示したように親水性修飾基2aを有している。
このような構成を有する架橋ポリロタキサン6に対し、図2(A)の矢印X−X´方向の変形応力が負荷されると、架橋ポリロタキサン6は、図2(B)に示すように変形してこの応力を吸収することができる。
すなわち、図2(B)に示すように、環状分子2は滑車効果によって直鎖状分子3に沿って移動可能であるため、容易に変形することができ、上記応力の内部吸収が可能となる。
このように、架橋ポリロタキサンは、図示したような滑車効果を有するものであり、従来のゲル状物などに比し優れた伸縮性や粘弾性、機械的強度を有するものである。
また、この架橋ポリロタキサンの前駆体である親水性ポリロタキサンは、上述の如く水や水系溶剤への溶解性が改善されており、水や水系溶剤中での架橋などが容易である。
したがって、架橋ポリロタキサンは、水や水系溶剤が存在する条件下で容易に得ることができ、特に、親水性ポリロタキサンと水溶性の塗膜形成成分とを架橋させることにより、容易に得ることができる。
よって、上記親水性ポリロタキサンは、水溶性の塗膜ポリマーを用いる塗料、特に耐洗車性、耐引っ掻き性、耐チッピング性、耐衝撃性及び耐候性の要求される自動車用の塗料や、家電用の塗料にも適用可能であり、これらの用途においても優れた滑車効果を発現する塗膜を得ることができる。
また別の観点からは、上記架橋ポリロタキサンは、親水性ポリロタキサンの架橋対象である塗膜形成成分の物性を損なうことなく、当該塗膜形成成分と当該ポリロタキサンとを複合体化したものと言うことができる。
したがって、以下に説明するように、塗膜中に架橋ポリロタキサンを形成させることによって、上記塗膜形成成分の物性と親水性ポリロタキサン自体の物性を兼ね備えた塗膜が得られ、ポリマー種などを選択することにより、所望の機械的強度などを有する塗膜とすることができる。
ここで、本発明に用いる親水性ポリロタキサンの架橋について説明する。
架橋ポリロタキサンは、代表的には、
(a)焼付け硬化型水系エナメル塗料用材料である硬化型親水性ポリロタキサンを他の塗膜形成成分と混合し、
(b)当該塗膜形成成分の少なくとも一部を物理的及び/又は化学的に架橋させ、
(c)当該塗膜形成成分の少なくとも一部と親水性ポリロタキサンとを環状分子を介して結合させる(硬化反応)ことにより形成できる。
なお、親水性ポリロタキサンは、水や水系溶剤に可溶であるため、(a)〜(c)工程を水、水系溶剤、及びこれらの混合溶媒中で円滑に行うことができる。また、これらの工程は硬化剤を用いることでより円滑に行うことができる。
(b)、(c)工程においては、化学架橋することが好ましく、例えば、これは上述の如き親水性ポリロタキサンの環状分子が有する水酸基と、塗料形成成分の一例であるメラミン樹脂とが、ウレタン結合を繰返し形成することによって、架橋ポリロタキサンが得られる。また、(b)工程と(c)工程はほぼ同時に実施してもよい。
(a)工程の混合工程は、用いる塗膜形成成分に依存するが、水や水系溶剤などの溶媒中で、又はこれら溶媒なしで行なうことができる。また、溶媒は塗膜形成時に加熱処理などで除去できる。
本発明の焼付け硬化型水系エナメル塗膜、言い換えると当該塗膜を形成するための焼付け硬化型水系エナメル塗料における上記親水性ポリロタキサンの含有量としては、塗膜形成成分(固形分)に対する質量比で1〜40%の範囲とすることができ、10〜40%の範囲、さらに20〜30%の範囲とすることがより好ましい。
すなわち、親水性ポリロタキサンの塗膜形成成分に対する含有量が1%に満たない場合には、ポリロタキサンによる滑車効果が十分に得られず、塗膜の伸び率が低下して所望の耐擦傷性、耐チッピング性が得られなくなることがあり、40%を超えると、表面における膜形成のために最表面に位置するエナメル塗膜としての平滑性が損なわれ、塗装外観が低下することがあることによる。
本発明に用いる焼付け硬化型水系エナメル塗料は、上記の親水性ポリロタキサンを既存の焼付け硬化型水系エナメル塗料、例えばアクリルメラミン塗料や2液型ウレタン樹脂塗料などに、望ましくは上記含有量となるように配合することによって得られる。
言い換えれば、親水性ポリロタキサンに、添加剤及び/又は光輝剤と、溶媒と、樹脂成分と、顔料又は染料と、硬化剤を常法に基づいて配合し、混合することによって得ることができる。
上記樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、主鎖又は側鎖に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基、及びこれらの任意の組合せに係る基を有するものが好ましい。
なお、光架橋基としては、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩及びスチリルキノリン塩などを例示できる。
また、2種以上の樹脂成分を混合使用してもよいが、この場合、少なくとも1種の樹脂成分が環状分子を介してポリロタキサンと結合していることがよい。
さらに、かかる樹脂成分は、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。コポリマーの場合、2種以上のモノマーから構成されるものでもよく、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー又はグラフトコポリマーのいずれであってもよい。
具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、澱粉及びこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン及び他のオレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などのポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロン(登録商標)などのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、及びこれらの誘導体を挙げることができる。
誘導体としては、上述した水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ビニル基、チオール基又は光架橋基及びこれらの組合せに係る基を有するものが好ましい。
上記硬化剤の具体例としては、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、塩化シアヌル、トリメソイルクロリド、テレフタロイルクロリド、エピクロロヒドリン、ジブロモベンゼン、グルタールアルデヒド、フェニレンジイソシアネート、ジイソシアン酸トリレイン、ジビニルスルホン、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はアルコキシシラン類を挙げることができ、本発明では、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記硬化剤は、分子量が2000未満、好ましくは1000未満、更に好ましくは600未満、いっそう好ましくは400未満のものを用いることができる。
本発明に用いる硬化型水系エナメル塗料において、上記添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、表面調整剤、沸き防止剤などを挙げることができる。
また、顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアン系顔料、ペリレン系顔料などの有機系着色顔料や、カーボンブラック、二酸化チタン、ベンガラなどの無機系着色顔料を用いることができる。
そして、光輝剤としては、アルミ顔料やマイカ顔料を挙げることができ、さらに溶媒としては、水と共に、上記した水系溶剤、例えばアルコール類やグリコールエーテル類を挙げることができる。
なお、上記した各種塗料原料に、親水性ポリロタキサンを混合するに際しては、親水性を付与した状態のポリロタキサンをそのまま配合することもできるが、当該親水性ポリロタキサンをあらかじめ水や水系溶剤などの溶媒に溶解させて希釈した状態で配合することが望ましい。このようなポリロタキサン溶液は、塗料製造時に調製しても、塗料製造に先立って、調製しておいてもよい。
本発明の焼付け硬化型水系エナメル塗膜としては、艶有り又は艶消し塗膜とすることができる。
なお、本発明の硬化型水系エナメル塗膜を艶消し塗膜とするには、上記成分に加えてシリカ、樹脂ビーズなどのマット剤を添加すればよい。
本発明に用いる上記焼付け硬化型水系エナメル塗料は、スプレーガンを始めとする各種の塗装装置によって、従来の塗料と同等の作業性の下に、鉄や鋼、アルミニウムなどの金属材料、樹脂材料、木質材料、石材やレンガ、ブロックなどの石質材料、皮革材料などから成る各種の被塗装物に塗装することができ、焼付け処理によって固化し、その最表面にエナメル塗膜を形成することができる。このときの塗膜厚さとしては、特に限定されるものではないが、20〜40μm程度となるように塗装することが望ましい。
上記焼付け硬化型水系エナメル塗料から成る本発明のエナメル塗膜を含む具体的な積層構造としては、被塗物に、下塗り塗料を塗布して焼付け又は常温乾燥した後、エナメル塗料で塗装して焼付けるようにすることができ、これによって図3に示すような下塗り塗膜10と、本発明の塗膜であるエナメル塗膜13から成る2層構造の積層塗膜が得られることになる。
このとき、被塗物によっては、下塗り塗料による塗膜形成を省略することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
(実施例1)
(1)PEGのTEMPO酸化によるPEG‐カルボン酸の調製
直鎖状分子として、PEG(ポリエチレングリコール、分子量:1,000)10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシラジカル)100mg、臭化ナトリウム1gを水100mLに溶解させ、これに市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mLを添加し、室温で10分間攪拌した。次いで、余った次亜塩素酸ナトリウムを分解させるために、エタノールを最大5mLまでの範囲で添加して反応を終了させた。
そして、50mLの塩化メチレンを用いた抽出を3回繰返して、無機塩以外の成分を抽出したのち、エバポレータで塩化メチレンを留去し、250mLの温エタノールに溶解させてから、冷凍庫(−4℃)に一晩おいて、PEG−カルボン酸のみを析出させ、回収、乾燥した。
(2)PEG−カルボン酸とα−CDを用いた包接錯体の調製
上記(1)により調製したPEG−カルボン酸3g及びα−CD(シクロデキストリン)12gをそれぞれ別々に用意した70℃の温水50mLに溶解させたのち混合し、よく振り混ぜた後、冷蔵庫(4℃)中で一晩静置し、クリーム状に析出した包接錯体を凍結乾燥して回収した。
(3)α−CDの減量、及びアダマンタンアミンとBOP試薬反応系を用いた包接錯体の封鎖
上記(2)により調製した包接錯体14gをジメチルホルムアミド/ジメチルスルホキシド(DMF/DMSO)混合溶媒(体積比90/10)20mLに分散させた。
一方、室温でDMF(ジメチルホルムアミド)10mLに、BOP試薬(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート)3g、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)1g、アダマンタンアミン1.4g、ジイソプロピルエチルアミン1.25mLをこの順番に溶解させておき、この溶液を上記により調製した分散液に添加し、すみやかによく振り混ぜ、スラリー状になった試料を冷蔵庫(4℃)中に一晩静置した。
一晩静置した後、DMF/メタノール混合溶媒(体積比1/1)50mLを添加し、混合し、遠心分離して、上澄みを捨てた。上記のDMF/メタノール混合溶液による洗浄を2回繰り返した後、更にメタノール100mLを用いた洗浄を同様の遠心分離により2回繰り返した。
得られた沈殿を真空乾燥で乾燥させた後、50mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、得られた透明な溶液を700mLの水中に滴下してポリロタキサンを析出させ、析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥又は凍結乾燥させた。このDMSOに溶解−水中で析出−回収−乾燥のサイクルを2回繰り返し、最終的に精製ポリロタキサンを得た。
(4)シクロデキストリンの水酸基のヒドロキシプロピル化
上記によって調製したポリロタキサン500mgを1mol/LのNaOH水溶液50mLに溶解し、プロピレンオキシド21.1g(330mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で一晩撹拌した。そして、1mol/LのHCl水溶液で中和し、透析チューブにて透析した後、凍結乾燥して回収し、親水性ポリロタキサンを得た。
得られた親水性ポリロタキサンは、H−NMR及びGPCで同定し、所望のポリロタキサンであることを確認した。なお、α−CDの包接量は0.35であり、親水性修飾基による修飾度は0.5であった。
(5)塗料の調製
まず、上記で得られた親水性ポリロタキサンを蒸留水に10%溶解した。
次に、日本油脂株式会社製アクアBC−3(3)アクリル・メラミン硬化型エナメル塗料(ホワイト塗色)に、上記親水性ポリロタキサン水溶液を攪拌しながら添加し、直鎖状分子分子量が1,000、包接量が0.35、親水性修飾基による修飾度が0.5である親水性ポリロタキサンを塗膜形成成分に対して20%含有する本例の硬化型水系エナメル塗料とした。
(6)積層塗膜の形成
りん酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(日本ペイント社製カチオン型電着塗料、商品名「パワートップU600M」)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付けた。
次に、日本油脂社製のグレーのベース塗料(商品名「ハイエピコNo.500」)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、140℃で30分間焼き付けることによって、下塗り塗膜を形成した。
そして、上記各実施例及び比較例で得られた硬化型水系エナメル塗料を乾燥膜厚が30μmとなるようにそれぞれ塗装し、140℃で30分間焼付けることによって、エナメル塗膜を形成した。
(実施例2〜11、比較例1〜3)
表1に示す仕様とした以外は、実施例1と同様の操作を繰返して、積層塗膜を形成した。
上記各実施例及び比較例で得られた焼付け硬化型水系エナメル塗料の溶解性及び顔料の沈降性と共に、当該塗料による塗膜の平滑性、耐擦傷性、耐候性、反応性について、以下のような基準に基づいて評価した。その結果を各塗料の諸元と共に表1に示す。
(1)溶解性
各塗料をガラス板に塗布した時の白濁度を目視評価した。
〇:変化なし
△:若干の白濁
×:白濁および分離
(2)顔料の沈降性
塗料を40℃の恒温槽中に1ヶ月放置し、塗料中の顔料が沈降して、ハードケーキ状(固形化して、撹拌しても回復しない状態)になっているか否かを判定した。
〇:回復する
△:時間は要するが回復する
×:回復しない
(3)平滑性
クリヤー塗料の塗装後の平滑度合いを目視評価した。
〇:かなり平滑
△:若干、凹凸
×:凹凸
(4)耐擦傷性
磨耗試験機の摺動子にダストネル(摩擦布)を両面テープで貼り付け、0.22g/cmの荷重下で50回往復させ、傷の有無を評価した。
○:殆ど傷がない
△:少し傷がある
×:目立つほど多くの傷がある
(5)耐候性
キセノンウエザーメーター(XWON)を用いて1440時間試験を行い、色差(△E)を測定した。
〇:△E≦3
△:3<△E≦5
×:△E>5
(6)反応性
各実施例及び比較例で得られた親水性ポリロタキサン(但し、比較例1においてはPEGのみ、比較例2においては非親水性ポリロタキサン)とヘキサメチレンジイソシアネートを当量比に混合し、140℃で30分間焼付け乾燥した塗膜の赤外線吸収スペクトルによってウレタン結合の有無により反応性を判定した。
〇:ウレタン結合あり
×:ウレタン結合なし
Figure 2010042415
表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜8に用いた硬化型水系エナメル塗料は、ポリロタキサンの親水性によって良好な溶解性を示すと共に、顔料の優れた耐沈降性を示すばかりでなく、当該エナメル塗料による塗膜は、上記ポリロタキサンが有する滑車効果に基づく耐擦傷性の向上と共に、良好な外観及び耐候性を示していることが確認された。
なお、実施例9〜11については、直鎖状分子の分子量や親水性ポリロタキサンの含有量において好適範囲を外れる関係上、一部性能についてはやや劣る傾向も認められたが、全体として使用可能なレベルにあるものと判断される。
一方、ポリロタキサンではなく、PEG(ポリエチレングリコール)のみを含有する比較例1、及びポリロタキサンを含有しない比較例3のエナメル塗料においては、耐擦傷性が得られず、α−CD(シクロデキストリン)が親水性修飾基によって修飾されていない非親水性のポリロタキサンを用いた比較例2のエナメル塗料においては、溶解性や塗膜の平滑性に劣ることが判明した。
1 ポリロタキサン
2 環状分子
2a 親水性修飾基
3 直鎖状分子
4 封鎖基
10 下塗り塗膜
13 エナメル塗膜

Claims (9)

  1. 被塗物上に形成され、最表面に位置するエナメル塗膜であって、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、上記直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、第1〜第3アミノ基、第四級アンモニウム塩基及びヒドロキシアルキル基から成る群より選ばれた少なくとも1種の親水基を有する親水性ポリロタキサンと、顔料又は染料を含有することを特徴とする焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  2. 上記環状分子が水酸基を有し、該水酸基の全部又は一部を上記親水基で修飾したことを特徴とする請求項1に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  3. 上記環状分子の水酸基が修飾され得る最大数を1とするとき、環状分子の親水基による修飾度が0.1以上であること特徴とする請求項2に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  4. 上記直鎖状分子が環状分子を包接し得る最大包接量を1とするとき、上記環状分子の包接量が0.06〜0.61であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  5. 上記環状分子がα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンから成る群より選ばれた少なくとも1種のシクロデキストリンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  6. 塗膜形成成分に対する上記親水性ポリロタキサンの含有量が質量比で1〜40%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  7. 添加剤及び/又は光輝剤と、樹脂成分と、硬化剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  8. 艶有り又は艶消し塗膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
  9. 被塗物上に形成され、最表面に位置するエナメル塗膜であって、環状分子と、この環状分子を串刺し状に包接する直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され上記環状分子の脱離を防止する封鎖基とを有し、上記直鎖状分子及び環状分子の少なくとも一方が全体として親水性の修飾基を備え、該親水性の修飾基が親水基と疎水基を有し、上記親水基がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、第1〜第3アミノ基、第四級アンモニウム塩基及びヒドロキシアルキル基から成る群より選ばれた少なくとも1種の基であり、上記疎水基がアルキル基、ベンジル基、ベンゼン誘導体含有基、アシル基、シリル基、トリチル基、硝酸エステル基及びトシル基から成る群より選ばれた少なくとも1種の基である親水性ポリロタキサンと、顔料又は染料を含有することを特徴とする焼付け硬化型水系エナメル塗膜。
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