JP2011178679A - 和漢生薬由来多糖体を有効成分とする免疫調節剤及び飲食品 - Google Patents

和漢生薬由来多糖体を有効成分とする免疫調節剤及び飲食品 Download PDF

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陽城 山田
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Abstract

【課題】和漢生薬由来の多糖体を有効成分とする、経口投与もしくは経口摂取抗原により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤および/または経口投与抗原に対する抗原特異的分泌型IgA産生増強剤の提供を課題とする。
【解決手段】抗原を経口投与することにより血中の抗原特異的IgE抗体価の上昇したマウスにナイモウオウギ地上部および/または甘草由来の多糖体を投与した結果、抗原特異的IgEの産生が抑制されることが確認された。また抗原を経口投与することにより経口免疫させたマウスにナイモウオウギ地上部由来の多糖体を投与した結果、抗原特異的分泌型IgAの産生が増強することが確認された。
【選択図】なし

Description

本発明は、ナイモウオウギ(マメ科Astragalus mongholicus Bunge)地上部および/もしくは甘草から得られる多糖体を有効成分とする、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導・産生される抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤に関する。また本発明は、食物アレルギーなど、抗原の経口摂取もしくは投与により誘導・産生され得る抗原特異的IgEがその発症・進展に関与する疾患の予防及び/又は治療(改善)剤に関する。さらに本発明は、ナイモウオウギ地上部から得られる多糖体を有効成分とする、抗原特異的分泌型IgA産生増強剤、および経口ワクチン用のアジュバントに関する。
近年、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギー、蕁麻疹などの各種のアレルギー性疾患の増加が世界的な兆候として認められている。その背景としては、遺伝的素因に加え、食生活の変化、感染症の減少、ストレス社会や大気汚染など様々な要因が挙げられる。その発症の多くにはIgE依存性機構が関与することが知られており、IgE産生の調節が各種のアレルギー性疾患の予防や改善につながる[臨床アレルギー学、改訂第3版、宮本正昭監修、南江堂 (2007)/非特許文献1]。食物アレルギーは即時型および遅延型アレルギーに分類されるが、即時型の大部分と遅延型アレルギーの一部がIgE介在性のメカニズムに起因するとされている。軽症は蕁麻疹から湿疹にはじまり、重症はアナフィラキシーや運動誘発アナフィラキシーなど生命の危険性が及ぶ疾患になっている。日本では乳幼児の有病率が5-10%に達し、成人でも潜在的な患者を含めた場合9%程度に達するとされている。その予防や根本的な治療はなく、現在では原因食品の除去療法が唯一の改善法となっている〔今井孝成、海老澤元宏、食物アレルギーの疫学と自然歴、臨床栄養、106, 451-455 (2005)/非特許文献2〕。近年、リンゴ、サクランボ、トマト、ニンジン、セロリ、洋ナシ、大豆、ピーナッツなどの食品由来タンパク抗原がスギ花粉、カバノキなど多くの花粉アレルゲンタンパクを認識するIgE抗体と交叉反応性を示すことや、花粉アレルゲン特異的なTリンパ球クローンがこれらの食物タンパク抗原の経口摂取により活性化されることから、経口的に摂取される食物由来の花粉関連食物抗原により腸管免疫系を介して花粉特異的な免疫応答の感作および増強が起こり、花粉症関連疾患の発症・進展へ関与するメカニズムが存在することが提唱されている[B. Bohle, The impact of pollen-related food allergens on pollen allergy, Allergy, 62, 3-10 (2007)/ 非特許文献3;O. Ivanciuc, V. Mathura, T. Midoro-Horiuti, W. Braun, R.M. Goldblum, C. H. Schein, Agric. Food Chem., 51, 4830-4837 (2003)/ 非特許文献4]。さらに、多くの食物アレルゲンタンパクが植物体内のストレス応答タンパクに分類されるタンパク〔pathogenesis-related protein family 10 (PR10)〕であり、環境などの悪化によるストレスから植物体内にこのストレス応答タンパクが蓄積されつつあること、およびこの食物由来のストレス応答タンパクによる口腔からの侵入を介して口腔アレルギー症候群(OAS)が発症する仮説も立てられている[矢上健: OASに関与する交叉反応性抗原の特徴, 医学のあゆみ, 209, 143-146 (2004)/ 非特許文献5]。また、食物抗原特異的IgE抗体価と機能性消化不良(functional dyspepsia, FD)や過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome, IBS)との相関性に関する研究から、これらのアレルギー性疾患とは一見異なる疾患においても食物抗原特異的なIgE抗体がその発症や進展に関与することが予測されている[M-I. Park, M. Camilleri; Is there a role of food allergy in irritable bowel syndrome and functional dyspepsia ? A systemic review, Neurogastroenterol Motil, 18, 595-607 (2006)/ 非特許文献6]。以上のことから、日常生活において経口的に投与もしくは摂取する食物などに由来する抗原に反応する抗原特異的なIgE抗体価の上昇を抑制できる手段は、食物アレルギーや口腔アレルギーに加え花粉症などの各種のアレルギー性疾患および機能性消化不良や過敏性腸症候群などの予防や改善に有用である。
一方、腸管、呼吸器、泌尿生殖器や外分泌腺などの種々の局所粘膜は外部からの細菌やウイルスおよび正常細菌叢に由来する細菌群により日常的に暴露されている。これらの局所粘膜には全身免疫系とは機能的に区別される粘膜免疫機構が存在し、分泌型IgAの産生、分泌により防御バリアーを形成し、これらの外来性および内因性の微生物群の生体内への移行(トランスロケーション)による感染を防御している[清野宏、粘膜免疫(清野宏、石川博通、名倉宏編)pp. 2-30 (2001)/ 非特許文献7]。この粘膜免疫機構は広域抗生物質の投与、ステロイドなどの免疫抑制剤や抗がん剤の投与、放射線療法、外科的侵襲などにより低下することが示唆されており、この結果として呼吸器からの外来性病原微生物の感染や腸管内の正常細菌叢からの腸内細菌のトランスロケーションによる内因性感染症の発症につながると考えられている[清野宏、粘膜免疫(清野宏、石川博通、名倉宏編)pp. 2-30 (2001)/ 非特許文献7;松本哲哉ほか、日本臨床別冊、感染症症候群III、399-402 (1999)/ 非特許文献8]。現在までに腸管での分泌型IgA産生を増強する手段としては、種々のBiological response modifier (BRM)、ビタミンA、グルタミン酸、アルギニン、ω-3系脂肪酸などの食品成分やプロバイオテイクスが報告されている[松本哲哉、東医大誌、感染症の病態と感染制御、64、213-221 (2006)/ 非特許文献9]。これに対し、上気道など呼吸器の分泌型IgA産生を増強する手段については有効な手段は報告されておらず、和漢生薬由来の多糖体の使用例もない。
さらに、現在、感染症の最も有効な予防法はワクチン接種であるが、現行のワクチンは、ポリオワクチンを除き皮下や筋肉内に投与するため、全身免疫系を介した抗原特異的免疫応答を誘導できるが、多くの病原体が侵入経路とする粘膜面での抗原特異的免疫応答を十分には誘導できないことが知られている[C. Czerkinsky, F. Anjuere, J. R. McGhee, A. George-Chandy, J. Holmgren, M.-P. Kieny, K. Fujiyashi, J. F. Mestecky, V. Pierrefite-Carle, C. a Rask, l.-B. Sun, Mucosal immunity and tolerance to vaccine development, Immunological Rev., 170, 197-222 (1999)/ 非特許文献10]。このことから皮下接種ワクチンでは、感染症の重症化は防止できるが、感染自体を防止する粘膜局所での十分な抗体産生を誘導できないという欠点を有している。このような背景から、腸管免疫系が腸管や上気道などの局所粘膜機構および全身免疫系での抗体産生を誘導できる機能を有することを利用し、次世代のワクチンとして、経口ワクチンの開発が世界的に行われ、タバコ、ジャガイモ、トマト等の植物体に大腸菌易熱性毒素、コレラ毒素、B型肝炎ウイルス、ノーウォークウイルス、狂犬病ウイルス、RSウイルス、サイトメガロウイルス、口蹄疫ウイルス等のワクチン抗原を発現させた組換え植物が所謂「食物ワクチン」として開発されている[幸義和、食物ワクチンの応用-食べるワクチン-、化学療法の領域、19, 1779-1784 (2003)/ 非特許文献11]。また、近年では、ウイルス中空粒子を用いた経口ワクチンも開発されている[松原明弘、清水佑也、唐松克夫、保富康宏、経口ワクチンの開発、日本臨床、66, 1873-1878 (2008)/ 非特許文献12]。しかしながら、大腸菌易熱性毒素やノーウォークウイルス抗原を発現させた食物ワクチンなどの臨床試験から、十分な粘膜局所での抗原特異的分泌型IgAの誘導は一部の被験者にしか認められておらず、ワクチン側及び生体側の両サイドからのさらなる改良が必要となっている。生体側からの改善としては、腸管免疫系を経口ワクチン摂取時に増強させる方法論が考えられるため、免疫増強物質(アジュバント)の開発が改良の一方策として取り組まれているが、いまだに有望なアジュバントの開発には至っていない。
マメ科(Leguminosae)植物のナイモウオウギ(Astragalus mongholicus Bunge)はその根の乾燥品が和漢生薬の黄耆として用いられている [第15改正日本薬局方解説書、医薬品各条、生薬等、D68-D71 (2006)/ 非特許文献13]。含有成分として低分子成分では、formononetinなどのflavonoidやastragaloside I − VIIIなどのsaponinが主要成分として含有されており、astragaloside IVがストレス下での抗疲労作用を示すことが報告されている[ヒキノヒロシ、現代東洋医学、3, 46-50 (1982)/ 非特許文献14]。一方、ナイモウオウギの地上部は食薬区分において食品に分類される天然素材で、現状では薬用に用いられておらず、低分子および高分子多糖を含めた有効成分などの検討や有効利用はされずにほとんどが廃棄されている。ナイモウオウギに関する用途に関しては紫外線防御剤[特開2009-132651/特許文献1]、皮膚外用剤[特開2009-35521/特許文献2]、流動食[特開2007-28997/特許文献3]があるが、ナイモウオウギの多糖成分を薬効本体として用いる用途、および経口摂取抗原に対するIgE産生抑制や腸管免疫系を介した粘膜局所における抗原特異的分泌型IgA産生増強の用途に関する知見は報告されていない。
また、ナイモウオウギの根から分離される多糖体やその薬理活性に関する知見はSciFinderでの調査で26件見出される。特に腸管免疫系に関する先行知見としては腸上皮細胞株(IEC-6)を用いた腫瘍壊死因子(TNF-α)およびインターロイキン8(IL-8)の産生に対する抑制作用がある[Y. Yuan, M. Sun, Mechanism of impact of Astragalus mogholics polysaccharides on lipopolysaccharide-induced damage in intestinal epithelial cells, Shijie Huaren Xiaohua Zazhi, 16, 15-19 (2008)/ 非特許文献15]。しかし、経口投与抗原に対する抗原特異的IgE産生抑制作用や抗原特異的分泌型IgA産生増強作用に関する報告はない。一方、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体に関する知見として、本発明者らによる文献がある[特開2006-70217、オウギ属植物地上部由来の多糖および生体機能賦活化剤/特許文献4]。当該文献では、in vitroにおけるパイエル板免疫機能調節活性が開示されているが、経口投与抗原に対する抗原特異的IgE産生抑制作用や抗原特異的分泌型IgA産生増強作用に関しては報告されていない。
甘草は黄耆とともに漢方薬に頻用される生薬で、緩和、緩解、鎮咳、きょ痰薬として、筋肉の急激な緊張による疼痛、胃痙攣、咽頭痛、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などに応用されている[難波恒雄、和漢薬百科事典I、p. 42-45 (1993)/非特許文献16]。甘草エキスもしくは甘草を含む数種の和漢生薬や植物から調製されるエキスをアレルギーの治療や体質改善の目的で用いる用途は多くあるが[アレルギー疾患の予防・治療用途、特開2006-206461/特許文献5;L-ヒスチジン脱炭酸酵素阻害剤、特開2006-176480/特許文献6;機能性賦与剤、及びそれを使用した機能性ある繊維製品の製造方法、特開2004-324026/特許文献7;皮膚化粧品、特開2003-267882/特許文献8;I型アレルギー用医薬組成物およびその製造方法、特開2002-154979/特許文献9;アラキドン酸代謝異常疾患治療剤、特開平7-17859/特許文献10;花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息又は蕁麻疹の予防又は治療用組成物、WO2003/088988/特許文献11;皮膚炎治療用ローション、WO2003/086432/特許文献12;TNF産生抑制作用を有する組成物及びTNF産生抑制剤、WO2003/007974/特許文献13]、甘草の多糖成分を薬効本体として用いる用途、および経口摂取抗原に対するIgE産生抑制などへの用途に関する知見は報告されていない。
また、甘草由来の多糖に関する先行知見はSciFinderでの調査では17件見出される。特に腸管パイエル板に対する作用に関する先行知見は2件報告されている[清原 寛章, 松崎 敏明, 松本 司, 永井 隆之, 山田 陽城, 和漢生薬由来の腸管パイエル板免疫機能調節多糖の活性発現糖鎖と作用の解析、薬学雑誌、128, 709-716 (2008)/ 非特許文献17;J.H. Hwang, J.H. Jeong, K.W. Yu, Isolation and characterization of intestinal immune system modulating and anticancer active fractions from the herbal prescriptions, Food Science and Biotechnology,18, 323-329 (2009)/ 非特許文献18]。しかし当該知見はin vitroにおけるパイエル板免疫機能調節活性に関するものであり、経口投与抗原に対する抗原特異的IgE産生抑制作用に関しては報告されていない。
特開2009-132651 特開2009-35521 特開2007-28997 特開2006-70217 特開2006-206461 特開2006-176480 特開2004-324026 特開2003-267882 特開2002-154979 特開平7-17859 WO2003/088988 WO2003/086432 WO2003/007974
臨床アレルギー学、改訂第3版、宮本正昭監修、南江堂 (2007) 今井孝成、海老澤元宏、食物アレルギーの疫学と自然歴、臨床栄養、106, 451-455 (2005) B. Bohle, The impact of pollen-related food allergens on pollen allergy, Allergy, 62, 3-10 (2007) O. Ivanciuc, V. Mathura, T. Midoro-Horiuti, W. Braun, R.M. Goldblum, C. H. Schein, Agric. Food Chem., 51, 4830-4837 (2003) 矢上健: OASに関与する交叉反応性抗原の特徴, 医学のあゆみ, 209, 143-146 (2004) M-I. Park, M. Camilleri; Is there a role of food allergy in irritable bowel syndrome and functional dyspepsia ? A systemic review, Neurogastroenterol Motil, 18, 595-607 (2006) 清野宏、粘膜免疫(清野宏、石川博通、名倉宏編)pp. 2-30 (2001) 松本哲哉ほか、日本臨床別冊、感染症症候群III、399-402 (1999) 松本哲哉、東医大誌、感染症の病態と感染制御、64、213-221 (2006) C. Czerkinsky, F. Anjuere, J. R. McGhee, A. George-Chandy, J. Holmgren, M.-P. Kieny, K. Fujiyashi, J. F. Mestecky, V. Pierrefite-Carle, C. a Rask, l.-B. Sun, Mucosal immunity and tolerance to vaccine development, Immunological Rev., 170, 197-222 (1999) 幸義和、食物ワクチンの応用-食べるワクチン-、化学療法の領域、19, 1779-1784 (2003) 松原明弘、清水佑也、唐松克夫、保富康宏、経口ワクチンの開発、日本臨床、66, 1873-1878 (2008) 第15改正日本薬局方解説書、医薬品各条、生薬等、D68-D71 (2006) ヒキノヒロシ、現代東洋医学、3, 46-50 (1982) Y. Yuan, M. Sun, Mechanism of impact of Astragalus mogholics polysaccharides on lipopolysaccharide-induced damage in intestinal epithelial cells, Shijie Huaren Xiaohua Zazhi, 16, 15-19 (2008) 難波恒雄、和漢薬百科事典I、p. 42-45 (1993) 清原 寛章, 松崎 敏明, 松本 司, 永井 隆之, 山田 陽城, 和漢生薬由来の腸管パイエル板免疫機能調節多糖の活性発現糖鎖と作用の解析、薬学雑誌、128, 709-716 (2008) J.H. Hwang, J.H. Jeong, K.W. Yu, Isolation and characterization of intestinal immune system modulating and anticancer active fractions from the herbal prescriptions, Food Science and Biotechnology,18, 323-329 (2009)
本発明は上述の状況を鑑みてなされたものであり、ナイモウオウギ地上部および/もしくは甘草から得られる多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgE産生抑制剤および、抗原の経口摂取もしくは経口投与により引き起こされ得る当該抗原特異的IgEの産生を抑制する方法を提供することを課題とする、また本発明は、ナイモウオウギ地上部および/もしくは甘草から得られる多糖体を有効成分として含有する経口抗原特異的IgEの産生によって引き起こされる疾病の予防及び/又は治療(改善)剤および、経口抗原特異的IgEが関与する疾病(経口抗原特異的IgEの産生によって引き起こされる疾病)を予防及び/又は治療(改善)する方法を提供することを課題とする。
さらに本発明は、ナイモウオウギ地上部から得られる多糖体を有効成分として含有する抗原特異的分泌型IgA産生増強剤および、抗原特異的分泌型IgAの産生を増強させる方法、ならびに経口ワクチンのためのアジュバントを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。具体的には、抗原を経口投与することにより血中の抗原特異的IgE抗体価の上昇したマウスにナイモウオウギ地上部および/または甘草由来の多糖体を投与し、抗原特異的IgEの産生が抑制されるか否か検討を行った。また、抗原を経口投与することにより経口免疫させたマウスにナイモウオウギ地上部由来の多糖体を投与し、抗原特異的分泌型IgAの産生が増強するか否か検討を行った。その結果本発明者らは、ナイモウオウギ地上部および甘草から抽出した多糖体が、抗原の経口摂取により誘導され得る抗原特異的IgEの産生を抑制する活性を有することを見出すことに成功した。さらに、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体が、粘膜局所において、経口投与抗原により誘導され得る抗原特異的分泌型IgAの産生を増強する活性を有することを見出すことに成功した。本発明はこのような知見に基づくものであり、以下〔1〕〜〔13〕を提供する。
〔1〕オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤。
〔2〕甘草由来の多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤。
〔3〕オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体及び甘草由来の多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤。
〔4〕抗原特異的IgEの産生が経口的に摂取及び/又は投与される抗原により誘導される、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の抑制剤。
〔5〕オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する、経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤。
〔6〕甘草由来の多糖体を有効成分として含有する、経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤。
〔7〕オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体及び甘草由来の多糖体を有効成分として含有する、経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤。
〔8〕経口抗原特異的IgEが関与する疾病が食物アレルギー、口腔アレルギー、花粉症、機能性消化不良および過敏性腸症候群からなる群より選択される、〔5〕から〔7〕のいずれかに記載の予防及び/又は治療(改善)剤。
〔9〕オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する、抗原特異的分泌型IgAの産生に対する増強剤。
〔10〕オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する、経口ワクチン用アジュバント。
〔11〕〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の抑制剤、〔5〕から〔8〕のいずれかに記載の予防及び/又は治療(改善)剤、または〔9〕に記載の増強剤を含む飲食品。
〔12〕健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、特定保健用食品又は条件付き特定保健用食品からなる群より選択される、〔11〕に記載の飲食品。
〔13〕〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の抑制剤、〔5〕から〔8〕のいずれかに記載の予防及び/又は治療(改善)剤、または〔9〕に記載の増強剤を含む飼料。
本発明にかかる抗原特異的IgE産生抑制剤、経口抗原特異的IgEが関与する疾病の予防・改善剤および抗原特異的分泌型IgA産生増強剤を用いれば、経口的に摂取される抗原、例えば食物抗原などの経口摂取により誘導され得る食物抗原特異的IgE抗体に起因する疾病、例えば食物アレルギー、花粉症、口腔内アレルギー、機能性消化不良や過敏性腸症候群などを予防および/または治療(改善)することが出来る。さらに、経口ワクチンに対するアジュバント効果を得ることができる。
パイエル板免疫細胞からの骨髄細胞増殖促進因子産生量の計測により、ナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体のパイエル板免疫細胞に対する機能調節活性を評価した結果を示す図である。 パイエル板免疫細胞からの骨髄細胞増殖促進因子産生量の計測により、メシマコブ多糖体のパイエル板免疫細胞に対する機能調節活性を評価した結果を示す図である。図中のメシマコブ多糖体はパイエル板免疫細胞に対する機能調節活性を有する公知の多糖体であり、陽性コントロールとして使用した。また、コンニャクグルコマンナンはパイエル板免疫細胞に対する機能調節活性を有さない多糖体であり、陰性コントロールとして使用した。 卵白アルブミンを経口投与することにより血中の卵白アルブミン特異的IgE抗体価の上昇したB10.Aマウスを用い、メシマコブ多糖体の経口投与による卵白アルブミン特異的IgE抗体産生に対する影響を評価した結果を示す図である。パイエル板免疫機能調節活性を示すメシマコブ多糖体は卵白アルブミン特異的IgE抗体価を上昇させてしまっている。 卵白アルブミンを経口投与することにより血中の卵白アルブミン特異的IgE抗体価の上昇したB10.Aマウスを用い、ナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体の経口投与による卵白アルブミン特異的IgE抗体産生抑制効果を評価した結果を示す図である。 卵白アルブミンを経口投与することにより血中の総IgE抗体価の上昇したB10.Aマウスを用い、ナイモウオウギ地上部多糖体の経口投与による総IgE抗体産生抑制効果を評価した結果を示す図である。 ポリ乳酸から成る卵白アルブミン内包微粒子を経口投与することにより経口免疫させたBALB/cマウスを用い、ナイモウオウギ地上部多糖体の経口投与による腸管および上気道での卵白アルブミン特異的分泌型IgA抗体産生に対する増強効果を評価した結果を示した図である。腸管中の特異的分泌型IgAは糞便を、また、上気道中の特異的分泌型IgAは鼻腔洗液を用いて評価した。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ナイモウオウギ地上部
本発明は、オウギ属植物ナイモウオウギ地上部由来の多糖体を有効成分とする、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤に関する。また本発明は、当該多糖体を有効成分とする、経口投与される抗原に特異的な分泌型IgAの産生増強剤に関する。
本発明でいうナイモウオウギ(学名:Astragalus mongholicus Bunge)はマメ科(Leguminosae)の植物である[難波恒雄、和漢薬百科図鑑、Vol. I, 149-150 (1980)および第15改正日本薬局方解説書、D68-D71 (2006)]。形はキバナオウギに非常によく似ているが、小葉が比較的多く(12〜18対)、小さく、子房及び豆果は光沢があってなめらかで無毛である[新訂原色牧野和漢薬草大図鑑 199頁 (2002)]。
本発明において地上部とは、茎もしくは葉または茎および葉など、根部を除いた部位を指す。本発明のナイモウオウギは生のものでも良いが、本発明の多糖成分の取得効率を考えれば乾燥したものが好ましい。また、多糖体の調製には地上部と根を含む全草を用いることもできる。
2.甘草
また本発明は、甘草由来の多糖体を有効成分とする、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤に関する。
本発明において甘草とは、マメ科カンゾウ属植物から産出されるもので、その根および/またはストロンを乾燥させたものである。本発明の甘草は、周皮が取り除かれたものであってもかまわない。マメ科カンゾウ属植物としては、東北甘草、西北甘草、光果甘草および新疆甘草が挙げられる[第15改正日本薬局方解説書、医薬品各条、生薬等、D68-D71 (2006);難波恒雄、和漢薬百科図鑑I、p.42-45 (1993)]。
多糖体の調製には、根またはストロンを用いることが望ましいが、根、ストロンおよび地上部のいずれか、またはこれらを含む全草を用いることもできる。また、甘草由来の多糖は、後述の方法に加え、東北甘草、西北甘草、光果甘草および/もしくは新疆甘草から医薬品原料として用いられるグリチルリチン(別名:グリチルリチン酸)を製造する工程で得られるグリチルリチンを採取した後の抽出残渣や抽出液から製造することもできる。
3.多糖体およびその混合物の取得方法
本発明のナイモウオウギ地上部由来の多糖体、甘草由来の多糖体(以下これらを「本発明の多糖体」と称する場合あり)は、例えばナイモウオウギ地上部もしくはその全草、東北甘草、西北甘草、光果甘草ならびに新疆甘草の根およびストロンもしくはその全草から、公知の方法を組み合わせることによって、抽出、分離、精製し、製造することができる。例えば、ナイモウオウギ地上部もしくはその全草、東北甘草、西北甘草、光果甘草ならびに新疆甘草の根およびストロンもしくはその全草をそのまま、または粉砕し、10〜30倍量程度の水性溶媒にて室温下または沸騰させて抽出する。抽出液をろ過して得たろ液を遠心分離し、上清を凍結乾燥して乾燥物を得る。また、セルラーゼなどの植物細胞壁分解酵素などによる酵素反応下でも抽出することができる。この乾燥物をアセトン、メタノール、エタノール等の有機溶媒に溶解し、場合によっては還流した後、遠心分離して脂質成分を除去した沈殿物を精製水に溶解し、さらに透析を行い、非透析物を凍結乾燥して非透析性画分を得ることにより、本発明の多糖体を得ることができる。またこれらの製造工程のかわりに、限外ろ過膜を用いた製造法、ゲルろ過法、イオン交換体やイオン交換膜などの分離法を用いて製造することもできる。本発明は、このような工程を経て得られるナイモウオウギ地上部由来の多糖体を有効成分とする、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤、および、経口投与される抗原に特異的な分泌型IgAの産生増強剤に関する。また本発明は、このような工程を経て得られる甘草由来の多糖体を有効成分とする、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤に関する。
なお、実施例に示したように、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体と甘草由来の多糖体は、異なる作用メカニズムを介して、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導され得る抗原特異的IgEおよび総IgEの産生を抑制する。そのため、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体と甘草由来の多糖体を混合して用いることもできる。混合物の調製法としては、ナイモウオウギ地上部と甘草の各々を水性溶媒で抽出した抽出液の混合液から調製する方法や、それぞれの多糖体を調製後に混合する方法が挙げられる。またそれ以外に、ナイモウオウギと甘草を別々に抽出し、それぞれの多糖体を調製するまでの工程のいずれかの段階で、ナイモウオウギ由来の多糖体含有画分と甘草由来の多糖体含有画分を混合する方法を挙げることも出来る。さらに、ナイモウオウギ地上部と甘草をあらかじめ混合して水性溶媒で抽出し、その抽出液から調製することもできる。ナイモウオウギ多糖体と甘草多糖体の混合比は1000:1〜1:1000の割合とすることができる。ナイモウオウギ地上部原体と甘草原体の混合、もしくはナイモウオウギ由来の多糖体含有画分と甘草由来の多糖体含有画分の混合などの中間抽出物の混合は、最終的に製造される多糖体中のナイモウオウギ地上部に由来する多糖体と甘草に由来する多糖体の混合比が上記の割合になるように行うことが出来る。本発明は、このような工程を経て得られるナイモウオウギ地上部由来の多糖体と甘草由来の多糖体の混合物を有効成分として含有する、抗原の経口摂取もしくは経口投与により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤に関する。
4.本発明の多糖体の化学的性状
上述の方法によって得られる本発明のナイモウオウギ地上部由来の多糖体の化学的性状は、収穫された時期や年度によって異なる。一例として、2001年に収穫されたナイモウオウギ地上部を対象とした、Asahi-pak GS-520カラムとAsahi-pak GS-320カラムを連結して用いたゲルろ過高速液体クロマトグラフィーによる分析によれば、平均分子量が300,000〜5,000の1〜10種以上の多糖体が含まれている。2001年に収穫されたナイモウオウギ地上部由来の多糖体には、主要構成糖として、アラビノース:マンノース:ガラクトース:グルコース:ガラクツロン酸(モル%;7.6〜21.7:0.2〜15.1:3.2〜24.3:13.2〜70.1:13.6〜30.5)が含まれている。
同様に、甘草由来の多糖体の平均分子量および構成糖組成比も収穫された時期や年度により異なる。一例として、2004年に収穫された甘草では、Asahi-pak GS-520カラムとAsahi-pak GS-320カラムを連結して用いたゲルろ過高速液体クロマトグラフィーによる分析で、平均分子量が300,000〜5,000の1〜10種以上の多糖体が含まれている。2004年に収穫された甘草由来の多糖体には主要構成糖として、アラビノース:ガラクトース:グルコース:ガラクツロン酸(モル%;12.4〜59.9:6.8〜53.3:0.6〜41.5:11.5〜39.0)が含まれている[Hiroaki Kiyohara, Taichi Uchida, Manami Takakiwa, Toshiake Matsuzaki, Noriyasu Hada, Tadahiro Takeda, Toshiro Shibata, Haruki Yamada, Different contributions of side-chains in β-D-(1→3,6)-galactans on intestinal Peyer’s patch-immunomodulation by polysaccharides from Astragalus mongholics Bunge, Phytochemistry, doi:10.1016/j.phytochem.2009.10.001;清原 寛章, 松崎 敏明, 松本 司, 永井 隆之, 山田 陽城, 和漢生薬由来の腸管パイエル板免疫機能調節多糖の活性発現糖鎖と作用の解析、薬学雑誌、128, 709-716 (2008)]。
なお、ナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体の構成糖の分析は、当業者に周知の方法によって行うことが出来る。例えば、5%塩化水素-メタノールでメタノリシス後、Trimethylsilyl化し、ガスクロマトグラフィー(GLC)により分析することが出来る[桜井直樹、山本良一、加藤陽治、植物細胞壁と多糖類、培風館 (1991)]が、この方法に限定されない。また、本発明の多糖体のその他の化学的な性状の解析も当業者に周知の方法によって行うことが出来る。例えば、糖含量についてはフェノール硫酸法、ウロン酸含量についてはm-hydroxybiphenyl法、タンパク含量についてははBradford法によって解析することが出来るがこれらに限定されない。
5.抗原の経口摂取もしくは経口投与による抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤・食物アレルギーなど経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤
本発明は、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体および甘草由来の多糖体のいずれか一方またはその両方(混合物)を含む、抗原の経口摂取により誘導され得る抗原特異的IgEの産生抑制剤に関する。本発明の経口抗原とは、経口的に投与もしくは摂取され、口腔粘膜に接触し、さらに消化管に達する抗原を指す。また、このような抗原の例として、花粉アレルゲン、食品由来タンパク抗原(食物抗原)、その他の動物やダニなどの微生物由来の抗原が挙げられるがこれらに限定されない。花粉アレルゲンとしては、スギ花粉、カバノキ、ヒノキ科植物花粉、ブタクサ、マツ、イネ科植物花粉、ヨモギ、シラカバ(シラカンバ)、ハンノキに由来する抗原などが挙げられるがこれらに限定されない。食品由来タンパク抗原(食物抗原)としては卵白アルブミン、リンゴ、サクランボ、ナシ、セロリ、ニンジン、ヘーゼルナッツ、大豆、マングビーン、ピーナッツ、小麦、魚類、甲殻・軟体類、貝類、魚卵、肉類、果実、種実類、野菜類などに由来する抗原などが挙げられるがこれらに限定されない。また、動物や微生物アレルゲンとしては、ダニ、猫、犬など由来のアレルゲンが挙げられるがこれらに限定されない〔今井孝成、海老澤元宏、食物アレルギーの疫学と自然歴、臨床栄養、106, 451-455 (2005)/非特許文献2;B. Bohle, The impact of pollen-related food allergens on pollen allergy, Allergy, 62, 3-10 (2007)/ 非特許文献3〕。
本発明の多糖体が、抗原の経口摂取による抗原特異的IgEの産生を抑制する活性を有するか否かは、常法に従った抗原特異的IgEを測定するための酵素免疫測定法、特異IgE抗体検査(RAST)、即時型皮膚テスト(プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト)、ヒスタミン遊離試験、パッチテスト、CD63およびCD203c発現定量法などを行うことによって測定することが出来る〔柴田瑠美子、食物アレルギー患者の検査、小児科診療、67, 1087-1091 (2004);藤澤隆夫、食物アレルギーと好塩基球、皮膚アレルギーフロンテイア、6, 103-109 (2008)〕。また間接的には、下痢の回数や症状の軽重、湿疹や蕁麻疹の軽重、くしゃみの回数、鼻水の多寡、目などのかゆみの軽重などからも判定が出来る。
また本発明は、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体および甘草由来の多糖体のいずれか一方またはその両方(混合物)を含む、食物アレルギーなど経口抗原特異的IgEが関与する疾病の予防・改善剤に関する。
本発明において経口抗原特異的IgEが関与する疾病としては、食物アレルギー、花粉症、通年性鼻炎、季節性鼻炎、口腔アレルギー、咽頭アレルギー、機能性消化不良、過敏性腸症候群などが挙げられるがこれらに限定されない。食物アレルギーとしては卵アレルギー、牛乳アレルギー、小麦アレルギー、米アレルギー、そばアレルギー、大豆アレルギー、牛乳アレルギー、ピーナッツアレルギー、魚類アレルギー、エビアレルギーや米アレルギーなどが挙げられるがこれらに限定されない。また花粉症としてはスギ花粉症、ヒノキ花粉症、カモガヤ花粉症、オオアワガエリ花粉症、ブタクサ花粉症、シラカバ花粉症、カバノキ花粉症などが挙げられるがこれらに限定されない。
なお、経口抗原特異的IgEが関与する疾病は、経口抗原特異的IgEの産生によって引き起こされる疾病と表現することも出来る。
本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤の形態は、経口的又は経鼻的に投与することができるものであれば特に限定されない。また、口腔を含む上気道粘膜免疫機構の誘導組織はパイエル板と同様のメカニズムにより抗原特異的抗体産生の調節を行うことから、本発明の多糖体を鼻腔や舌下を経由して投与することも出来る〔Jun Kunisawa, Tomonori Nochi, Hiroshi Kiyono, Immunological commonalities and distinctions between airway and digestive immunity, Trends in Immunology, 29, 505-513 (2008)〕。
本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤の形態は、例えば本発明の多糖体もしくはその混合物を含む水性エキスや凍結乾燥物の形態とすることができる。あるいは、本発明の多糖体もしくはその混合物を含む水性エキスや凍結乾燥物を適宜、製剤用の賦形剤(デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等)、結合剤、希釈剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などと混合し、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、細粒剤、散剤、シロップ剤、液剤などの形態とすることも出来る。また、必要に応じて他の薬剤を調合もしくは混合しても良い。
また本発明の多糖体もしくはその混合物は、日常的な食物摂取によって起こりうる食物抗原特異的なIgE抗体の産生・蓄積を、抑制させる活性を有する。従って本発明の抑制剤、予防・改善剤は、食品添加物として食品(各種の飲料、加工食品を含む)、愛玩動物用や家畜用の飼料などと混合し、食品組成物とすることも可能である。
食品としては、種々の食品、例えば、固体、液体、ゾル、ゲル、粉末及び顆粒状食品が挙げられる。本発明の抑制剤、予防・改善剤は、このような食品に任意に配合することが可能である。配合は当業者に公知の方法によって行なうことができる。また必要に応じて、保存料や香料などを添加することもできる。
また、種々の調味料、例えば、グラニュー糖、蜂蜜、ソルビットなどの甘味料、アルコール、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸などの酸味料、香料、色素などを加えて、好みの味に調整することができる。
また、ナイモウオウギ地上部の多糖体と甘草由来の多糖体は、実施例に記載の通り、食物抗原特異的なIgE産生を抑制するメカニズムが異なることから、これらの多糖体を混合して用いることがより望ましい。
また、本発明の多糖体は微粉末もしくは液状製剤として、鼻腔内に鼻腔内スプレー、滴下、塗布などの手法を用いて投与することも出来る。この場合、当業者に公知の安定剤や防腐剤を配合することも出来る。安定剤としては0.1-0.2%程度のゼラチンやデキストラン、0.5-1%のグルタミン酸ナトリウム、あるいは約5%の乳糖や約2%のソルビトール等が用いられる。防腐剤としては、0.01%程度のチメロサールや0.1%程度のβ-プロピオノラクトンが公知である。
本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤における有効成分(多糖体)の含有量は、選択された投与ルートによって必要な投与量となるよう、適宜調整することができる。本発明の多糖体もしくは多糖体の混合物の投与量もしくは摂取量は、年齢、体重、症状により適宜増減するが、例えば、成人1日あたり、多糖として0.1〜100000mgとすることが出来る。本発明の多糖体もしくは多糖体の混合物は、1日に1回もしくは数回に分けて服用、摂取、噴霧、滴下もしくは塗布することが出来る。
また本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤は、それを必要とする対象に投与することが出来る。対象としては、ヒト、愛玩動物、家畜、および魚類などの淡水および海洋生物などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤は、好ましくは、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体および/もしくは甘草由来の多糖体と製剤上の補助成分を含むものである。
なお、BALB/cマウス(雌、7週齢)に1g/kgの投与量を7日間、1日一回連続経口投与した場合にも異常が全く認められなかったこと、および本発明の多糖体と一般構造が類似し、ヨーグルトなどに添加されているペクチンの部分分解産物[高木久宜ほか、Bulletin National Institute Health Science, 115, 119-124 (1997)]が極めて低毒性であることから、本発明の多糖体の毒性は一般に低いと考えることができる。
本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤は、医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品もしくは飲食品、食品添加物、飼料のいずれの用途にも用いられる。本発明の抑制剤、予防及び/又は治療(改善)剤は、これらの用途に用いるために公知の医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、飲食品、食品添加物、飼料と混合して用いることが出来る。あるいは、公知の医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、飲食品、食品添加物、飼料の成分の一部として用いることが出来る。このような飲食品および/または食品添加物の例としては、一般食品、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、特定保健用食品又は条件付き特定保健用食品などが挙げられるがこれらに限定されない。飼料とは本発明の多糖体からなる、もしくは多糖体を含有するもので、家畜や愛玩動物、魚類などに用いる食糧を指す。
6.ナイモウオウギ地上部多糖体を有効成分とする経口投与もしくは経口摂取抗原に特異的な分泌型IgAの産生に対する増強剤・経口ワクチン用アジュバント
本発明は、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体を有効成分とする、抗原特異的分泌型IgAの産生増強剤を提供する。抗原特異的分泌型IgAが産生される組織としては、粘膜局所などが挙げられる。この粘膜局所とは、腸管内や上・下気道、肺、泌尿生殖器、口腔、中内耳、眼表面、唾液腺や涙腺などの外分泌腺などが挙げられるがこれらに限定されない。抗原としては、これらの粘膜局所に存在する口腔内細菌や腸内細菌などの常在細菌、及び/又は大腸菌、緑膿菌、Helicobacter pyroli菌、腸球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ライノウイルスなど種々の病原微生物、各種の食物抗原や花粉抗原などが挙げられるがこれらに限定されない〔武田紳江、細菌、日本小児呼吸器疾患学会雑誌、19, 48-52 (2008);光岡知足、常在細菌の働き、役割、日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌、22, 3-12 (2002)〕。また、抗原としては経口ワクチンが挙げられ、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザ菌ワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、う蝕ワクチン、歯周病ワクチン、ロタウイルスワクチン、ノロウイルスワクチン、ヘリコバクター・ピロリ菌ワクチン、花粉症ワクチン等が挙げられるがこれらに限定されない〔幸義和、食物ワクチンの応用-食べるワクチン-、化学療法の領域、19, 1779-1784 (2003)〕。
本発明のIgA産生抑制剤の形態は、上記のIgE産生抑制剤、予防・改善剤と同様の形態を取ることができる。すなわち、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤などの形態とし、経口的又は経鼻的に投与することが出来る。また、必要に応じて他の薬剤との調合剤とすることが出来る。あるいは、食品もしくは食品添加物として、各種の飲料や加工食品、愛玩動物および家畜の飼料に添加することも出来る。これにより、本発明の多糖体を日常的に摂取することができる。また投与対象は、ヒト、愛玩動物、家畜、および魚類などの淡水および海洋生物などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の経口ワクチン用アジュバントは、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体が、経口摂取された抗原に特異的な分泌型IgAの産生を増強させる作用を示すことに基づく。本発明の経口ワクチン用アジュバントを種々の形態の食物ワクチンなどの経口ワクチンとともに使用することにより、ワクチン効果を高めることが出来る。特に、ナイモウオウギ地上部由来の多糖体は上気道と腸管において抗原特異的分泌型IgAの産生増強活性を有することから、上気道や腸管を感染経路とする病原体に対する経口ワクチンとともに用いられることが好ましい。
本発明の経口ワクチン用アジュバントは、経口ワクチンと同時に(同じタイミングで)用いることも、異なるタイミングで用いることも出来る。本発明の経口ワクチン用アジュバントは、上記のIgE産生抑制剤、予防・改善剤と同様の形態を取ることができる。すなわち、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤などの形態で経口的に投与することが出来る。また、必要に応じて他の薬剤との調合剤とすることが出来る。あるいは、食品もしくは食品添加物として各種の飲料や加工食品、愛玩動物および家畜の飼料に添加することも出来る。あるいは鼻腔や舌下を介して投与することも出来る。これにより、本発明の経口ワクチン用アジュバントを日常的に摂取することができる。また投与対象は、ヒト、愛玩動物、家畜、および魚類などの淡水および海洋生物などが挙げられるがこれらに限定されない。投与対象が愛玩動物や家畜の場合、飼料と混合し使用することもできる。
本発明の増強剤およびアジュバントは、医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品もしくは飲食品、食品添加物、飼料のいずれの用途にも用いられる。本発明の増強剤およびアジュバントは、これらの用途に用いるために公知の医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、飲食品、食品添加物、飼料と混合して用いることが出来る。あるいは、公知の医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、飲食品、食品添加物、飼料の成分の一部として用いることが出来る。このような飲食品および/または食品添加物の例としては、一般食品、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、特定保健用食品又は条件付き特定保健用食品などが挙げられるがこれらに限定されない。飼料とは本発明の多糖体からなる、もしくは多糖体を含有するもので、家畜や愛玩動物、魚類などに用いる食糧を指す。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕多糖の取得
本発明の多糖の取得は以下の方法に従い行った。
1.ナイモウオウギ多糖体
ナイモウオウギ地上部(500 g)を粉砕後、精製水(10 L)を加えて煮沸下液量が半量になるまで煎出した。残渣は再び同量の精製水を用いて同様の方法に準じ煎出し、抽出液を合わせて吸引ろ過後、ろ液を合わせて減圧濃縮し、4倍量のEtOHを加えて室温にて一晩撹拌した。生じた沈殿を遠心分離(6,000 rpm, 4 ℃, 30分間)により分取し、水に再溶解後、精製水を用いて透析(7日間)を行った。透析内液を遠心分離し(6,000 rpm, 4 ℃, 30分間)、不溶物を除去後凍結乾燥することによりナイモウオウギ地上部多糖体(収量;8.89 g, 収率;1.8 %)を得た。
2.甘草多糖体
甘草(500 g)に、精製水(10 L)を加えて煮沸下液量が半量になるまで煎出した。残渣は再び同量の精製水を用いて同様の方法により煎出し、抽出液を合わせて吸引ろ過後、ろ液を合わせて減圧濃縮し、4倍量のEtOHを加えて室温にて一晩撹拌した。生じた沈殿を遠心分離(6,000 rpm, 4 ℃, 30分間)により分取し、水に再溶解後、精製水を用いて透析(7日間)を行った。透析内液を遠心分離し(6,000 rpm, 4 ℃, 30分間)、不溶物を除去後凍結乾燥することにより甘草多糖体(収量;14.33 g, 収率;2.9 %)を得た。
3.ナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体の化学的性状
上記1.および2.において得られたナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体の化学的性状の一例は以下の表1の通りである。なお、糖含量はフェノール硫酸法、ウロン酸含量はm-hydroxybiphenyl法、タンパク含量はBradford法を用いて算出した。また各構成糖の分析は、常法に従い、5%塩化水素-メタノールでメタノリシス後、Trimethylsilyl化し、ガスクロマトグラフィー(GLC)により行った[桜井直樹、山本良一、加藤陽治、植物細胞壁と多糖類、培風館 (1991)]。
表1 ナイモウオウギ地上部多糖および甘草多糖の化学的性状
Figure 2011178679
〔実施例2〕多糖の腸管パイエル板免疫細胞に対する機能調節活性
(1)実験動物
雌性C3H/HeJマウス(6-8週齢)を購入し、Specific Pathogen Free飼育舎で飼育し、購入後3日以内に本実験に使用した。
(2)実験方法
パイエル板細胞の培養は公知のHongらの方法[T. Hongほか、Phytomedicine, 5, 353-360 (1998)]に準じて下記の方法により行った。
(a)パイエル板細胞の培養と培養上清の調製
雌性C3H/HeJマウス(6-8週齢)よりパイエル板を切り出し、5 %ウシ胎児血清(FBS)含有RPMI-1640(FBS-RPMI)培地を用いてパイエル板細胞懸濁液(2-3×106 cells/mL)を調製した。96穴培養プレート(3072, FALCON)に精製水(control)もしくは被験試料(各20 μL)を分注し、パイエル板細胞懸濁液(180 μL/well)を加えて5 % CO2-95 % 空気下(37 ℃)で4-6日間培養後、培養上清を96穴培養プレートに回収し-20°Cにて保存した。
(b)パイエル板免疫細胞の培養上清中の骨髄細胞増殖促進因子の計測
雌性C3H/HeJマウス(6-8週齢)の大腿骨からFBS-RPMI培地を用いて骨髄細胞懸濁液(5×105 cells/mL)を得た。96穴培養プレート(3072, FALCON)に実施例2(2)(a)で得たパイエル板細胞培養上清(50 μL/well)、骨髄細胞懸濁液(100 μL/well)およびFBS-RPMI培地 (50 μL/well)を加えて、5 % CO2-95 % 空気下(37 ℃)、6日間培養した。本骨髄細胞培養液にAlamer Blue (20 μL/well)を添加し、37 ℃で6-24時間培養後、生じた蛍光物質量を蛍光プレートリーダー(励起波長;544 nm、測定波長;590 nm)にて測定し、相対蛍光強度を増殖した骨髄細胞数を骨髄細胞増殖促進因子量とした。なお、結果は被検試料なしで培養することにより得られたパイエル板細胞培養上清を用いて得られた結果(コントロール)と多糖成分処理の結果とを比較し、統計学的処理はFischerのPSLDにて検定した。
(3)結果
本発明のナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体について腸管パイエル板免疫細胞からの骨髄細胞増殖促進因子の産生増強効果を測定した結果、図1に示したように本発明の2種の多糖は骨髄細胞増殖因子産生促進作用に基づく免疫機能調節活性を有することが示された。また、本発明とは別のメシマコブ由来の多糖体も同様の免疫機能調節作用を示したが、コンニャク由来の多糖体であるグルコマンナンは本免疫機能調節活性を示さなかった(図2)。ただし、これらの知見は公知のものとなっている[清原 寛章, 松崎 敏明, 松本 司, 永井 隆之, 山田 陽城, 和漢生薬由来の腸管パイエル板免疫機能調節多糖の活性発現糖鎖と作用の解析、薬学雑誌、128, 709-716 (2008)]。
〔実施例3〕抗原の経口摂取により誘導される抗原特異的IgE抗体産生に対する多糖体の抑制効果
(1)実験動物
雌性B10.Aマウス(7週齢)を購入し、Specific Pathogen Free飼育舎で1週間予備飼育後、本実験に使用した。
(2)実験方法
(a)動物への投与方法
B10.Aマウスに水(正常マウス)もしくは卵白アルブミンの水溶液(0.1 mg/匹/日)を連日2ヶ月間経口投与した。卵白アルブミンを経口投与したマウスにはさらにナイモウオウギ地上部多糖体水溶液(100 mg/kg/日)(ナイモウオウギ多糖体投与群)もしくは甘草多糖体水溶液(100 mg/kg/日)(甘草多糖体投与群)を連日2ヶ月間経口投与した。また、対照実験として、本発明の多糖体の代わりに、水(コントロール)、メシマコブ多糖体(100 mg/kg/日)もしくはコンニャクグルコマンナン(Megazyme、100 mg/kg/日)を卵白アルブミン投与マウスに同様のスケジュールで経口投与した。2ヶ月後に腋下動脈より採血し、血清を調製した。
(b)血清中の卵白アルブミン特異的IgE抗体価の測定
卵白アルブミン特異的IgE抗体価は常法に従いサンドイッチELISA法にて測定した。すなわち、抗マウスIgE抗体を96穴マイクロタイタープレート (Nunc, Immunoplate, Maxisorp)に固定化後、1%スキムミルク含有リン酸緩衝化生理食塩水 (300μL/well)を用いてブロッキングし、実施例3(2)(a)で採取した血清の倍々希釈液(100μL/well)を分注し、室温にて1晩インキュベーションした。本プレートにビオチン化卵白アルブミン(100μL/well)を分注し、室温で1時間インキュベーションした。さらに、プレートにストレプトアビジン標識β-D-galactosidase (100μL/well)を加え、室温で1時間インキュベーション後、0.1M 4-methyl umberiferyl β-D-galactoside溶液(100μL/well)を加えて37°Cにて2時間インキュベーションし、励起波長355 nm、測定波長460 nmにて蛍光を測定することにより、血清中の卵白アルブミン特異的IgE抗体価を血清希釈倍数で算出した。
(3)結果
図3に示したように、in vitroでのパイエル板免疫機能調節活性を有するメシマコブ多糖体は、卵白アルブミンを経口投与することにより血清中の卵白アルブミン特異的IgE抗体価が有意に上昇したB10.Aマウスに対し、その経口投与で、卵白アルブミン特異的IgE抗体価をさらに上昇させてしまった。これに対し、パイエル板免疫細胞に対し作用を示さないコンニャクグルコマンナンの経口投与は卵白アルブミン投与マウスでの特異的IgE抗体価に影響を与えなかった。このようにin vitroでのパイエル板免疫機能調節活性を示す多糖でも経口投与抗原により誘発される抗原特異的IgE産生への抑制効果を必ずしも発現できないことが示された。
一方、図4に示したように、本発明のナイモウオウギ地上部多糖体および甘草多糖体は、卵白アルブミンを経口投与することにより血清の卵白アルブミン特異的IgE抗体価を有意に上昇させたB10.Aマウスに対し、その経口投与で、血中の卵白アルブミン特異的IgE抗体価を有意に低下させることが明らかとなり、食物抗原のように経口的に投与もしくは摂取される抗原に対する抗原特異的IgE産生への誘導に対する抑制剤として使用できることが示された。
〔実施例4〕抗原の経口摂取により誘導される総IgE抗体産生に対する多糖体の抑制効果
(1)実験動物
雌性B10.Aマウス(7週齢)を購入し、Specific Pathogen Free飼育舎で1週間予備飼育後、本実験に使用した。
(2)実験方法
(a)動物への投与方法
B10.Aマウスに水(正常マウス)もしくは卵白アルブミン水溶液(0.1 mg/匹/日)を連日2ヶ月間経口投与した。卵白アルブミンを経口投与したマウスにはさらにナイモウオウギ地上部多糖体水溶液(100 mg/kg/日)(ナイモウオウギ多糖体投与群)もしくは甘草多糖体水溶液(100 mg/kg/日)(甘草多糖体投与群)を連日2ヶ月間経口投与した。2ヶ月後に腋下動脈より採血し、血清を調製した。
(b)血清中の総IgE抗体価の測定法
総IgE抗体価は常法に従いサンドイッチELISA法にて測定した。すなわち、抗マウスIgE抗体を固定化した96穴マイクロタイタープレート (Nunc, Immunoplate, Maxisorp)を1%スキムミルク含有リン酸緩衝化生理食塩水を用いてブロッキング後、実施例4(2)(a)で採取した血清の倍々希釈液(100μL/well)を抗IgE抗体固定化プレートに分注し、4°Cにて1晩インキュベーションした。さらに本プレートにビオチン化抗マウスIgE抗体(2μg/mL、100μL/well)を分注し、37°Cで1時間インキュベーション後、ストレプトアビジン標識アルカリフォスファターゼ (100μL/well)を分注し、37°Cで1時間インキュベーションした。本プレートに10%ジエタノールアミン緩衝液(pH 9.8)で溶解したdisodium p-nitrophenyl phosphate (1 mg/mL、150μL/well)を分注し、37°Cにて2時間インキュベーション後、サンプル測定波長405 nm、ブランク測定波長490 nmにて生じた黄色の吸光度を測定した。血清中の総IgE抗体価はマウスIgE標品を用いて作成した検量線から算出した。
(3)結果
図5に示したように、卵白アルブミンを経口投与することにより血清中の総IgE抗体価が有意に上昇したB10.Aマウスに対し、ナイモウオウギ地上部多糖体はその経口投与で、総IgE抗体価を有意に低下させた。これに対し、甘草多糖体ではこの効果は認められなかった。これらのことから、ナイモウオウギ地上部多糖体と甘草多糖体は異なる作用機序で経口投与抗原に対する特異的IgE産生の誘導に対する予防・改善効果を示すことが示され、これらの多糖体を混合して用いることで、さらに効果的なIgE産生誘導の抑制作用を得ることができることが示された。
〔実施例5〕抗原の経口投与に対する腸管および上気道での抗原特異的分泌型IgA産生に対するナイモウオウギ地上部多糖体の増強効果
(1)実験動物
雌性BALB/cマウス(7週齢)を購入し、Specific Pathogen Free飼育舎で1週間予備飼育後、本実験に使用した。
(2)実験方法
(a)動物への投与方法
BALB/cマウスにポリ乳酸から調製した卵白アルブミンを含む内包微粒子を、0、1、2、7、10、14および17日目に各々経口投与し(卵白アルブミン含量:1 mg/日)、経口免疫を行った。本マウスにさらに、ナイモウオウギ地上部多糖体水溶液(100 mg/kg/日)(ナイモウオウギ多糖体投与群)もしくは水を0日目から27日目までの4週間連日経口投与した。投与開始28日目に、常法に従い、鼻腔洗液および糞便を採取した。糞便については常法に従い、糞便抽出液を調製し、鼻腔洗液および糞便抽出液を使用まで-80°Cにて保存した[H. Yamada and T. Nagai, In vivo anti-influenza virus activity of Kampo medicine Sho-seiryu-to through mucosal immune system, Methods Find Exp. and Clin. Pharmacol, 20, 185-192 (1998)]。
(b)糞便および鼻腔中の卵白アルブミン特異的分泌型IgA抗体価の測定
卵白アルブミン特異的IgA抗体価は常法に従いELISA法にて測定した。すなわち、1%卵白アルブミンを0.1M 炭酸水素緩衝溶液(pH 9.6, 150μL/well)を用いて96穴マイクロタイタープレート (Nunc, Immunoplate, Maxisorp)に固定化後、0.5%ウシ血清アルブミン溶液を用いてブロッキングし、次いで実施例5(2)(a)で採取した鼻腔洗液もしくは糞便抽出液の倍々希釈液(100μL/well)を卵白アルブミン固定化プレートに分注し、4°Cにて1晩インキュベーションした。本プレートにアルカリフォスファターゼ標識抗マウスIgA抗体(100μL/well)を分注し、37°Cで2時間インキュベーション後、10%ジエタノールアミン緩衝液(pH 9.8)で溶解したdisodium p-nitrophenyl phosphate (1 mg/mL、150μL/well)を加えて37°Cにて2時間インキュベーションした。サンプル測定波長405 nm、ブランク測定波長490 nmにて生じた黄色の吸光度を測定した。血清中の卵白アルブミン特異的分泌型IgA抗体価を鼻腔洗液および糞便抽出液の希釈倍数として算出した。
(3)結果
図6に示したように、ポリ乳酸から成る卵白アルブミン内包微粒子の経口投与により免疫感作を行ったBALB/cマウスに対し、ナイモウオウギ地上部多糖体の経口投与は腸管および上気道での卵白アルブミン特異的分泌型IgA産生を増強させる効果を持つことが明らかとなり、本発明のナイモウオウギ地上部多糖体を経口投与抗原に対する抗原特異的分泌型IgA産生増強剤および経口ワクチンに対するアジュバントとして利用できることが示された。

Claims (10)

  1. オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤。
  2. 甘草由来の多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤。
  3. オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体及び甘草由来の多糖体を有効成分として含有する抗原特異的IgEの産生に対する抑制剤。
  4. 抗原特異的IgEの産生が経口的に摂取及び/又は投与される抗原により誘導される、請求項1から3のいずれか記載の抑制剤。
  5. オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する、経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤。
  6. 甘草由来の多糖体を有効成分として含有する、経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤。
  7. オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体及び甘草由来の多糖体を有効成分として含有する、経口抗原特異的IgEが関与する疾病に対する予防及び/又は治療(改善)剤。
  8. 経口抗原特異的IgEが関与する疾病が食物アレルギー、口腔アレルギー、花粉症、機能性消化不良および過敏性腸症候群からなる群より選択される、請求項5から7のいずれかに記載の予防及び/又は治療(改善)剤。
  9. オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する、抗原特異的分泌型IgAの産生に対する増強剤。
  10. オウギ属植物ナイモウオウギ(Astragalus mongholics Bunge)地上部由来の多糖体を有効成分として含有する、経口ワクチン用アジュバント。
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