JP2011177873A - 研磨装置及び研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】超半球凹面を簡易に研磨するための研磨装置及び研磨方法を提供すること。
【解決手段】揺動機構57が研磨皿部10を開口OPよりも内側すなわち−Z側に配置された揺動中心PCのまわりに揺動させるので、被研磨物WPにおいて半球凹面以上に深い超半球凹面SSの研磨が容易になる。つまり、研磨皿部10の揺動中心PCは、凹の球面の曲率中心に対応させるものであるので、これが開口OPよりも内側に配置されるということは、曲率中心が開口OPよりも内側にある超半球凹面SSを研磨できることを意味する。
【選択図】図1
【解決手段】揺動機構57が研磨皿部10を開口OPよりも内側すなわち−Z側に配置された揺動中心PCのまわりに揺動させるので、被研磨物WPにおいて半球凹面以上に深い超半球凹面SSの研磨が容易になる。つまり、研磨皿部10の揺動中心PCは、凹の球面の曲率中心に対応させるものであるので、これが開口OPよりも内側に配置されるということは、曲率中心が開口OPよりも内側にある超半球凹面SSを研磨できることを意味する。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学素子に凹面を研磨するための研磨装置及び研磨方法に関し、特に超半球凹面を研磨するための研磨装置及び研磨方法に関する。
研磨装置として、駆動部材が研磨皿の上方で水平方向に移動することにより、駆動部材の下端に連結された保持用治具に固定された研磨対象としての光学素材を研磨皿上で従動運動させ、光学素材の被研磨面を研磨するものが存在する(特許文献1)。
研磨装置ではなく研削装置であるが、円筒形状を有するカップ形状砥石を用い、被加工レンズを回転させつつ、回転駆動されたカップ形状砥石の被加工レンズに対する対向角を調節することにより、被加工レンズに球面形状を創成するものがある(特許文献2)。
別の研削装置として、研削ホイールとワークとをそれぞれ回転させつつ、研削ホイールをワークに対して徐々に揺動させることにより、研削痕を除去した精度の高い加工面を得るものが存在する(特許文献3)。
さらに別の研削装置として、ディスク型の研削砥石を用い、研削砥石を回転軸まわりに回転させ、研削砥石をその姿勢を維持しつつレンズに対して回転軸方向に接触移動させることにより、被加工面を研削加工するものが存在する(特許文献4)。
しかしながら、特許文献1に記載の研磨装置では、駆動部材と保持用治具とが機械的に干渉するため、保持用治具を大きく傾けることができず、半球凹面以上に深い超半球凹面を有するレンズ等を研磨することができない。また、駆動部材を大きく動かすとレンズ等を研磨皿上に保持することができなくなる。
また、特許文献1〜3に記載の研削装置の駆動機構を研磨装置に転用しても以下の問題が生じる。すなわち、特許文献2の駆動機構を研磨装置に用いた場合、被加工レンズとカップ形状砥石とが機械的に干渉することにより、カップ形状砥石の回転軸である砥石軸を被加工レンズの回転軸に対して例えば90°近辺まで大きく振って傾けることができないので、半球凹面以上に深い超半球凹面を研磨することができない。同様に、特許文献3の駆動機構を研磨装置に用いて凹面を加工する場合、特許文献2の研削装置と同様の理由で、半球凹面以上に深い超半球凹面を研磨することができない。また、特許文献4の駆動機構を研磨装置に用いる場合、砥石をその姿勢を変化させないでレンズに対して接触移動させるので、レンズの回転軸に平行な垂直面よりも内に窪んだ形状を研磨することができず、半球凹面以上に深い超半球凹面を研磨することができない。
そこで、本発明は、超半球凹面を簡易に研磨するための研磨装置及び研磨方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る研磨装置は、被研磨物に形成された超半球型の凹面の開口の直径よりも小さな直径の円板形状を有し、周辺部に少なくとも研磨面を有する研磨皿部と、研磨皿部と被研磨物との間に、開口よりも内側に配置された揺動中心まわりの揺動運動を与える揺動機構とを備える。ここで、超半球型の凹面とは、その曲率中心が凹面の開口側端よりも内側にあるものを意味する。
なお、上記研磨装置において、揺動機構が研磨皿部を開口よりも内側に配置された揺動中心まわりに揺動させることもできる。この場合、研磨皿部の揺動機構を簡単なものとできる。
なお、上記研磨装置において、揺動機構が研磨皿部を開口よりも内側に配置された揺動中心まわりに揺動させることもできる。この場合、研磨皿部の揺動機構を簡単なものとできる。
上記研磨装置によれば、揺動機構が研磨皿部と被研磨物との間に、開口よりも内側に配置された揺動中心まわりの揺動運動を与えるので、半球凹面以上に深い超半球凹面の研磨が容易になる。つまり、研磨皿部の揺動中心は、凹の球面の曲率中心に対応させるものであるので、これが開口よりも内側に配置されるということは、曲率中心が開口よりも内側にある超半球凹面を研磨できることを意味する。
本発明の具体的な態様又は側面では、上記研磨装置において、研磨皿部を被研磨物に対して凹面と交差する回転軸のまわりに相対的に回転させる回転機構をさらに備える。この場合、研磨皿部の上記回転軸のまわり回転によって凹面の研磨が可能になる。
本発明の別の側面では、研磨皿部を先端側に支持する第1基部と、第1基部の根元側を軸支する第2基部とを備える。この場合、第2基部の先端に第1基部を介して研磨皿部を支持して、第1基部とともに研磨皿を揺動させることができる。
本発明のさらに別の側面では、第1基部は、揺動中心から研磨皿部までの距離を調整する伸縮機構を備える。この場合、揺動中心から研磨皿部までの距離に応じて所望の曲率中心を有する凹面を形成することができる。
本発明のさらに別の側面では、伸縮機構は、研磨皿部を所定の付勢力で超半球型の凹面に押し付ける。この場合、研磨皿部を凹面に必要な圧力で押し付ける研磨が可能になる。
本発明のさらに別の側面では、第1基部の横断面サイズと第2基部の横断面サイズとは、研磨皿部の円板輪郭よりも小さい。この場合、研磨皿部の第2基部に対する傾斜角を干渉を避けてより大きく取ることができ、超半球凹面の研磨がより容易になる。
本発明のさらに別の側面では、第1基部と第2基部との軸支位置は、研磨皿部の被研磨物に対する相対的な回転軸上に配置される。この場合、第2基部を固定したままで研磨皿部を揺動中心まわりに揺動させることができ、揺動機構を簡易なものとすることができる。
本発明のさらに別の側面では、研磨皿部は、研磨の際、開口を上側に向けて配置された被研磨物の凹面内に配置される。この場合、凹面内に研磨液を保持しやすくなる。
本発明に係る研磨方法は、超半球型の凹面を研磨するための研磨方法であって、被研磨物に形成された超半球型の凹面の開口の直径よりも小さな直径の円板形状を有し、周辺部に少なくとも研磨面を有する研磨皿部と被研磨物との間に、開口よりも内側に配置された揺動中心まわりの揺動運動を与える。
上記研磨方法によれば、研磨皿部と被研磨物との間に、開口よりも内側に配置された揺動中心まわりの揺動運動を与えるので、曲率中心が開口よりも内側にある超半球凹面の研磨が容易になる。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る研磨装置及び研磨方法について図面を参照しつつ説明する。
以下、本発明の第1実施形態に係る研磨装置及び研磨方法について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、第1実施形態の研磨装置100は、被研磨物WPを支持する第1ホルダ20と、第1ホルダ20を回転軸VXのまわりに回転させる回転駆動機構30と、回転駆動機構30を昇降させる昇降駆動部40と、被研磨物WPに接触することで被研磨物WPを研磨する研磨皿部10と、研磨皿部10を下端に支持する第2ホルダ50と、第2ホルダ50を3次元的に変位させる並進駆動機構60と、被研磨物WPの加工部位に研磨液を供給する研磨液供給回収装置70と、回転駆動機構30や並進駆動機構60等の動作を数値的に制御する制御装置90とを備える。なお、回転駆動機構30と並進駆動機構60とは、支持体81等を介して間接的に固定されている。
第1ホルダ20は、第2ホルダ50の下方において、被研磨物WPを着脱可能に固定する部分である。固定の際、被研磨物WPは、第1ホルダ20の上部に嵌め込まれ側面WPa及び下面WPbを介して保持されている。なお、被研磨物WPは、レンズその他の光学部品用のプリフォームであり、上面WPc側に例えば研削等によって穴状の超半球凹面SS(詳細は図2(C)参照)が形成されている円柱状のガラスブロックである。この被研磨物WPの超半球凹面SSは、研磨装置100による研磨により、微細な凹凸を有する研削面から滑らかな研磨面に平滑化される。
回転駆動機構30は、制御装置90の制御下で動作しており、回転機構として、被研磨物WPを第1ホルダ20とともにその軸心すなわち回転軸VXのまわりに回転させる。回転駆動機構30は、第1ホルダ20の回転速度を調節することができ、被研磨物WPを研磨皿部10の超半球凹面SSに接するように保持した場合、被研磨物WPを研磨皿部10に対して相対的に所望の速度で回転させることにより、超半球凹面SSの研磨を可能にする。なお、本実施形態の場合、被研磨物WPを回転させる回転軸VXは、Z方向に平行に配置される鉛直軸となっている。
昇降駆動部40は、制御装置90の制御下で動作しており、回転駆動機構30を回転軸VX方向に平行な±Z方向に昇降させることができる。これにより、回転駆動機構30上の第1ホルダ20すなわち被研磨物WPを回転軸VXに平行なZ方向に昇降させることができる。
第2ホルダ50は、研磨皿部10を下端に支持しており、制御装置90の制御下で研磨皿部10の傾斜姿勢等を調節することができる。第2ホルダ50は、研磨皿部10を先端側に支持する第1基部51と、第1基部51の根元側を水平軸HXのまわりに軸支する第2基部52と、第2基部52の根元部分を支持して第2基部52とともに移動する台座部分53と、第1基部51を第2基部52に対して揺動させる揺動機構57とを有する。
図2(A)〜2(C)に示すように、研磨皿部10は、円板形状すなわち円板状の外形を有しており、円板状の本体11と、本体11の周囲を覆う環状の周辺部12とを備える。本体11は、例えば金属材料で形成され、周辺部12は、研磨皿で形成される。周辺部12の外周側面である研磨面12aは、外側に凸の半円を従動軸RXのまわりに回転させて得られるトロイダル面となっている。研磨面12aは、例えばウレタン等の樹脂パッド、ダイヤモンド砥粒等を樹脂に埋め込んだ固定砥粒によって形成される。一方、本体11の底面11aと上面11bとは、金属材料等の基材が露出した平坦面となっている。本体11には、これを上下に貫通する複数の孔THが形成されており(図2(B)参照)、研磨液の循環の確保によって研磨皿部10と被研磨物WPとの間に熱がこもってしまうことを防止している。なお、研磨皿部10は、被研磨物WPに形成されるべき超半球凹面SSの開口OPの直径ODよりも小さな直径D0を有する(図2(C)参照)。
第1基部51は、先端側に軸受け54を有しており、その軸心に沿った中心軸54aの先端に固定された研磨皿部10を従動軸RXのまわりに回転可能に支持している。第1基部51には、伸縮機構や駆動部で構成される伸縮部55aが埋め込まれている。
伸縮部55aは、第1基部51の長さを増減させることにより、回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置(支点)から研磨皿部10の中心までの距離Lを増減調整するとともに、研磨皿部10を従動軸RXの先端側に所望の付勢力で押すように動作させることができる。伸縮部55aは、図1に示す台座部分53に組み込まれた駆動源55cに駆動されて動作しており、駆動源55cは、制御装置90の制御下で動作する。なお、伸縮部55aと駆動源55cとをあわせて伸縮装置55を構成している。
研磨皿部10を被研磨物WPの超半球凹面SS内に挿入して研磨する際、回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置から研磨皿部10の中心までの距離Lは、伸縮装置55の伸縮部55aを動作させることによって適宜調整される。さらに、伸縮装置55の伸縮部55aを動作させることによって研磨皿部10が被研磨物WPの超半球凹面SSに接した場合、伸縮装置55の伸縮部55aを動作させて加圧状態とすることによって、研磨皿部10を超半球凹面SSに対して所望の付勢力で押圧することができる。ただし、回転軸VXと水平軸HXとの交点(すなわち揺動中心PCに一致させるべき軸支位置)から研磨皿部10の中心までの距離Lの調整範囲は、研磨皿部10の回動又は傾斜を確保するため、第2基部52の横断面幅D2の半分以上とする必要がある。また、距離Lの調整範囲は、研磨中に第2基部52を移動させない場合、回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置を揺動中心PCすなわち超半球凹面SSの曲率中心に配置することになるので、超半球凹面SSの曲率半径Rよりも小さくする。
第2基部52は、Z方向に平行な支持軸SXに沿って延びている。第2基部52は、先端側に軸受け56を有しており、第1基部51延いては研磨皿部10をY方向に平行な水平軸HXのまわりに回動又は揺動可能に支持している。第2基部52には、軸受け56に付随して第1基部51とともに回転するプーリー57aが設けられており、第1基部51を所望のタイミングで回転軸VXに対して所望の角度だけ傾斜させることができる。なお、プーリー57aにかけられたベルト57bは、図1に示す台座部分53に組み込まれた傾斜駆動部57cに駆動されて移動してプーリー57aを適宜回転させることができ、傾斜駆動部57cは、制御装置90の制御下で動作する。傾斜駆動部57cを適宜動作させて第1基部51延いては研磨皿部10を回動させると、第2基部52の第1基部51に対する角度、換言すれば従動軸RXの支持軸SXに対する角度(傾斜角α)が徐々に増加し、研磨皿部10が水平状態から大きく傾いた傾斜状態に変化する。なお、研磨皿部10の傾斜角αは、0°から90°を超える所定角度まで連続的に変化させることができる。
以上で説明した第1基部51の横断面サイズである横断面幅D1や第2基部52の横断面サイズである横断面幅D2は、研磨皿部10の円板輪郭に相当する直径D0よりも十分に小さくなっており、研磨皿部10の揺動の傾斜角αを90°を超える範囲とすることを確実に可能にしている。
なお、以上で説明したプーリー57aと、ベルト57bと、傾斜駆動部57cとは、研磨皿部10を揺動させるための揺動機構57を構成する(図1参照)。
図1に示す並進駆動機構60は、制御装置90の制御下で動作しており、第2ホルダ50のZ方向に延びる姿勢を維持した状態で、第2ホルダ50をX方向、Y方向、及びZ方向に3次元的に変位させることができる。つまり、並進駆動機構60は、第2ホルダ50の下端に支持された研磨皿部10を、その姿勢を保ったままで3次元的な所望の位置に所望の速度で変位させることができる。なお、詳細な説明は省略するが、並進駆動機構60は、研磨皿部10を回転軸VXに垂直なX方向等に移動させる垂直移動機構61と、研磨皿部を回転軸VXに平行なZ方向に移動させる進退移動機構62とを内蔵する。
研磨液供給回収装置70は、制御装置90の制御下で動作しており、回転駆動機構30等に連動して研磨皿部10に対して研磨液の供給や回収を行う。研磨液は、研磨材(遊離砥粒)を水等に混ぜ合わせたものであり、研磨精度や研磨対象に応じて研磨材の種類、サイズ等を調整したものである。例えば回転駆動機構30を動作させて第1ホルダ20に支持された被研磨物WPを回転させつつ、並進駆動機構60を動作させて第2ホルダ50に支持された研磨皿部10を降下させて被研磨物WPに形成された穴2b内に配置し、伸縮装置55の伸縮部55aによって研磨皿部10を超半球凹面SSに押し付けるとともに傾斜駆動部57cによって研磨皿部10を揺動させることにより、研磨皿部10による超半球凹面SSの研磨が可能になるが、この際、研磨皿部10の周辺に研磨液供給回収装置70から研磨液が供給され、周囲の容器82に溢れた研磨液は、研磨液供給回収装置70に戻される。
制御装置90は、回転駆動機構30、並進駆動機構60、第2ホルダ50等の動作を制御している。具体的には、制御装置90は、回転駆動機構30を動作させて被研磨物WPを回転軸VXのまわりに回転させる。また、制御装置90は、並進駆動機構60を動作させて、第2ホルダ50の支持軸SXを例えば回転軸VXに一致させ、さらに、第2ホルダ50を−Z方向に降下させることにより、研磨皿部10によって被研磨物WPの上面WPc側から形成された穴2b内に挿入する。その後、制御装置90は、被研磨物WPの回転を維持したままで、第2ホルダ50に設けた傾斜駆動部57cを適宜動作させて研磨皿部10の傾斜角αを0°から徐々に増大させる。この際、制御装置90は、第2ホルダ50に設けた駆動源55cを適宜動作させて伸縮部55aを伸張した付勢状態とすることにより、穴2bの内面である超半球凹面SSに研磨皿部10を接触させ、研磨皿部10を超半球凹面SS延いては被研磨物WPに対して従動させる。
以下、図3(A)〜(E)を参照して、図1に示す研磨装置100を用いた研磨について説明する。
まず、図3(A)に示すように、被研磨物WPを準備して第1ホルダ20に固定する。この被研磨物WPには、予め穴2bが研削加工によって形成されている。穴2bの内面は、比較的精度よく加工された超半球凹面SSであるが、研削面のため微細な凹凸を有している。
次に、図3(B)に示すように、制御装置90を介して回転駆動機構30を動作させ、第1ホルダ20すなわち被研磨物WPを回転軸VXのまわりに回転させる。さらに、制御装置90を介して並進駆動機構60を動作させ、第2ホルダ50を−Z方向に降下させる。この際、揺動機構57により研磨皿部10を傾斜角α=0°の水平状態とする。さらに、伸縮部55aにより第1基部51の長さを短くして、開口OPを介して穴2bの内部に研磨皿部10を挿入する。
次に、図3(C)に示すように、制御装置90を介して並進駆動機構60を動作させ、第2ホルダ50を−Z方向にさらに降下させる。これにより、回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置を、研磨皿部10を揺動させるべき揺動中心PCに一致させる。さらに、伸縮部55aにより第1基部51の長さを長くして、研磨皿部10の周辺部12に設けた研磨面12aを穴2bの内面である超半球凹面SSに接触させるとともに、研磨皿部10を超半球凹面SSに対して所定の付勢力で押しつける。なお、回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置すなわち揺動中心PCは、超半球凹面SSの曲率中心に一致させるものとする。
次に、図3(D)に示すように、被研磨物WPの回転を維持しつつ、揺動機構57を動作させて研磨皿部10の傾斜角αを徐々に増加させる。この際、研磨皿部10が被研磨物WPに対して回転軸VXのまわりに相対的に回転し、これに伴って、研磨皿部10が従動軸RXのまわりに自転する。さらに、研磨皿部10の傾斜角αを微小振幅で周期的に増減させる。これにより、研磨皿部10が従動軸RXのまわりに自転し、かつ、研磨皿部10が水平軸HXのまわりに小さく揺動しつつ傾斜角αが徐々に増大するといった複合的な動作が行われ、穴2bに対する研磨加工が進み、超半球凹面SSの研磨領域が底部から徐々に拡大する。なお、研磨皿部10の傾斜角αを増加させる際、傾斜角αを微小振幅で周期的に増減させる必要はなく、傾斜角αを単調増加させることもできる。
そして、図3(E)に示すように、制御装置90を介して揺動機構57を動作させて研磨皿部10の傾斜角αを必要最大値まで増加させると、研磨皿部10が超半球凹面SSの開口OPに達して、穴2bに対する加工が開口OPのある上端まで完了し、超半球凹面SSが全体として一様に研磨される。ここで、研磨皿部10の傾斜角αの必要最大値とは、研磨皿部10の上端が開口OPに達する角度を意味し、超半球凹面SSの曲率中心の深さ位置に応じて変化する。揺動機構57は、研磨皿部10の傾斜角αを必要最大値までとすることもできるが、傾斜角αを上記必要最大値よりもさらに大きな最大値まで増加させることができる。なお、本実施形態の研磨方法では、揺動機構57を動作させる際に並進駆動機構60によって第2ホルダ50を変位させないので、記述のように回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置が超半球凹面SSの曲率中心(すなわち揺動中心PC)上に配置されることになる。
以上で加工を終えることもできるが、精密な研磨を行うためには、傾斜角αを徐々に減少させて図3(E)又はそれ以上の傾斜角αの状態から図3(C)の状態に戻す(往復工程のうち復動作)。さらに、傾斜角αを再度徐々に増加させて図3(C)の状態から図3(E)又はそれ以上の傾斜角αの状態にする(往復工程のうち往動作)。以上のような、動作を反復することにより、超半球凹面SSを高精度で滑らかな鏡面に仕上げることができる。
本実施形態の研磨装置100によれば、揺動機構57が研磨皿部10を開口OPよりも内側すなわち−Z側に配置された揺動中心PCまわりに揺動させるので、被研磨物WPにおいて半球凹面以上に深い超半球凹面SSの研磨が容易になる。つまり、研磨皿部10の揺動中心PCは、凹の球面の曲率中心に対応させるものであるので、これが開口OPよりも内側に配置されるということは、曲率中心が開口OPよりも内側にある超半球凹面SSを研磨できることを意味する。
なお、上記実施形態では、研磨皿部10の直径D0を超半球凹面SSの半径Rに比較して大きくしている。これは、研磨皿部10の直径D0が小さくなると、研磨皿部10の傾斜角αが90°となったときに研磨皿部10の上端が開口OPに達していない状態が発生することを防止したものである。つまり、研磨皿部10の傾斜角αが90°になると、研磨皿部10に被研磨物WPの回転に伴う従動が生じにくくなり、研磨皿部10の偏った磨耗が進行する可能性がある。これを防止するためには、研磨皿部10の傾斜角αが90°となったときに研磨皿部10の上端が開口OPに達する往動作完了状態とすればよく、本実施形態では、このような条件設定を行っている。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る研磨装置及び研磨方法について図面を参照しつつ説明する。なお、第2実施形態の研磨装置等は、第1実施形態の研磨装置100等を変形したものであり、特に説明がない事項については、第1実施形態の研磨装置100等と同様であるものとする。
以下、第2実施形態に係る研磨装置及び研磨方法について図面を参照しつつ説明する。なお、第2実施形態の研磨装置等は、第1実施形態の研磨装置100等を変形したものであり、特に説明がない事項については、第1実施形態の研磨装置100等と同様であるものとする。
図4に示すように本実施形態の場合、研磨中に第2基部52を移動させることで、回転軸VXと水平軸HXとが交差する軸支位置SPを被研磨物WPの穴2b内で変位させる。具体的には、軸支位置SPは、目的とする超半球凹面SSの曲率中心CTを通ってXZ面に平行な揺動面上に配置された半円状の軌跡TRに沿って移動する。以上の動作において、並進駆動機構60は、研磨皿部10を回転軸VXに垂直なX方向等に移動させる垂直移動機構61と、研磨皿部を回転軸VXに平行なZ方向に移動させる進退移動機構62とを内蔵し、これらを連動させることで、軸支位置SPを軌跡TRに沿って移動させることができる。この際、傾斜駆動部57cを適宜動作させて第1基部51を回動させて、従動軸RXの傾斜角αを調節し、従動軸RXが超半球凹面SSの曲率中心CTを常に通るように保持する。また、駆動源55cを適宜動作させて伸縮部55aを伸張した付勢状態とすることにより、穴2bの内面である超半球凹面SSに研磨皿部10を適度に接触させる。これにより、研磨皿部10を被研磨物WP内で第1実施形態と同様に変位させることができる。つまり、研磨皿部10を曲率中心CTに一致する揺動中心PCまわりに揺動させることができるので、第1基部51の長さの調整範囲に関わらず所望の曲率半径を有する超半球凹面SSを研磨することができる。ここで、並進駆動機構60の垂直移動機構61と進退移動機構62とは、揺動機構57と協働するものであり、揺動機構の一部として機能する。
なお、上記実施形態において、軸支位置SPから研磨皿部の中心までの距離Lは、超半球凹面SSの半径Rを基準として0.5Rよりも大きい。この場合、揺動中心PCが穴2bの加工面に近づき過ぎることを防止できるので、開口OPに近いオーバーハング面の形成が容易となる。また、距離Lは、超半球凹面SSの半径Rを基準として1.5Rよりも小さい。この場合も、軸支位置SPが穴2bの加工面に近づき過ぎることを防止できるので、開口OPに近いオーバーハング面の形成が容易となる。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、被研磨物WPの下面WPbに特に加工が施されていないことを前提としているが、下面WPbに凹又は凸の研磨面又は加工面を予め形成しておくことができる。
また、上記実施形態では、回転駆動機構30により被研磨物WPを回転軸VXのまわりに回転させているが、これに代えて、並進駆動機構60により第2ホルダ50を回転軸VX又は支持軸SXのまわりに回転させることができる。つまり、回転駆動機構30及び並進駆動機構60のいずれか一方又は双方を、被研磨物WPと研磨皿部10との相対的な回転のための回転機構とすることができる。同様に、上記実施形態では、並進駆動機構60により第2ホルダ50を−Z方向に降下させているが、これに代えて、昇降駆動部40により第1ホルダ20を+Z方向に上昇させることができる。さらに、第2ホルダ50を傾斜させることで被研磨物WPを傾斜させて、研磨皿部10に相対的な揺動を行わせることができる。
上記実施形態では、揺動機構57がプーリー57aやベルト57bからなる機構であるとしたが、これらは単なる例示であり、他の機構、例えばウォーム・ホイール等を用いることもできる。
上記実施形態では、被研磨物WPの回転軸VXをZ方向に延びる鉛直軸として縦置き型の研磨装置100としているが、回転軸VXを水平方向に延びる水平軸として横置き型の研磨装置100とすることもできる。なお、横置き型の研磨装置100の場合、回転駆動機構30と並進駆動機構60とが水平方向に対向して配置され、第2ホルダ50の第2基部52が水平方向に延びるものとなる。
10…研磨皿部、 12…周辺部、 12a…研磨面、 20…第1ホルダ、 30…回転駆動機構、 40…昇降駆動部、 50…第2ホルダ、 51…第1基部、 52…第2基部、 54a…中心軸、 55…伸縮装置、 55a…伸縮部、 55c…駆動源、 56…軸受け、 57…揺動機構、 57c…傾斜駆動部、 60…並進駆動機構、 61…垂直移動機構、 62…進退移動機構、 70…研磨液供給回収装置、 90…制御装置、 100…研磨装置、 CT…曲率中心、 HX…水平軸、 OP…開口、 PC…揺動中心、 RX…従動軸、 SP…軸支位置、 SS…超半球凹面、 SX…支持軸、 TH…孔、 VX…回転軸、 WP…被研磨物
Claims (10)
- 被研磨物に形成された超半球型の凹面の開口の直径よりも小さな直径の円板形状を有し、周辺部に少なくとも研磨面を有する研磨皿部と、
前記研磨皿部と被研磨物との間に、前記開口よりも内側に配置された揺動中心まわりの揺動運動を与える揺動機構と
を備える研磨装置。 - 前記揺動機構は、前記研磨皿部を揺動中心まわりに揺動運動させることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置
- 前記研磨皿部を前記被研磨物に対して前記凹面と交差する回転軸のまわりに相対的に回転させる回転機構をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
- 前記研磨皿部を先端側に支持する第1基部と、前記第1基部の根元側を軸支する第2基部とを備えることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の研磨装置。
- 前記第1基部は、前記揺動中心から前記研磨皿部までの距離を調整する伸縮機構を備えることを特徴とする請求項4に記載の研磨装置。
- 前記伸縮機構は、前記研磨皿部を所定の付勢力で前記超半球型の凹面に押し付けることを特徴とする請求項5に記載の研磨装置。
- 前記第1基部の横断面サイズと前記第2基部の横断面サイズとは、前記研磨皿部の円板輪郭よりも小さいことを特徴とする請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の研磨装置。
- 前記第1基部と前記第2基部との軸支位置は、前記研磨皿部の前記被研磨物に対する相対的な回転軸上に配置されることを特徴とする請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の研磨装置。
- 前記研磨皿部は、研磨の際、前記開口を上側に向けて配置された前記被研磨物の前記凹面内に配置されることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の研磨装置。
- 超半球型の凹面を研磨するための研磨方法であって、
被研磨物に形成された超半球型の凹面の開口の直径よりも小さな直径の円板形状を有し、周辺部に少なくとも研磨面を有する研磨皿部と被研磨物との間に、前記開口よりも前記凹面内側に配置された揺動中心まわりの揺動運動を与えることを特徴とする研磨方法。
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