JP2011177145A - 高効率のミクロセル融合法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ミクロセル融合細胞の高効率の製造方法を提供する。
【解決手段】麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法。
【選択図】図4
【解決手段】麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法。
【選択図】図4
Description
本発明は、高効率のミクロセル融合法に関する。
ミクロセル融合(別称「微小核融合」)は、単一の動物染色体又はその断片を供与細胞から受容細胞に移入することを可能にする技術である(非特許文献1、非特許文献2)。この技術は、ミクロセル仲介染色体移入(MMCT)と称され、特に哺乳動物細胞間で遺伝物質を移動させるいくつかの利点を提供する。すなわち、メガベースサイズの染色体を受容細胞内に移入させることを可能にし、この染色体は受容細胞内で安定にかつ遊離して存在することができる。
ミクロセル融合の際に主に使用される物質がポリエチレングリコール(PEG)である(非特許文献3、特許文献1)。この物質は細胞融合のための融合剤としても知られている。細胞融合の標準的な方法は1980年代に確立されたが、PEGの融合機序についてはほとんど不明である。ひとつの説は、PEGが形質膜内で膜内分子の再分布を起こす可能性の指摘である。しかし、PEGでの細胞の処理は、その細胞毒性の誘導のために、細胞に対しかなりの損傷を与え生存率の過度の低下を引き起こす(非特許文献4)。また、PEGによるミクロセル融合の場合には、細胞の組合せの選択も重要になるように思われる。したがって、MMCTを適用するときには、PEG処理と比べて効率性が高く、毒性が低く、及び操作が容易である、融合法の開発が必要になる。
一般に細胞融合法は、異種細胞同士を融合させることであるが、このような融合法にはPEGやセンダイウイルス粒子を利用する方法、エレクトロポレーションを利用する方法などが知られており、特にPEGやエレクトロポレーションは、動物細胞や植物細胞の細胞融合に、例えばモノクローナル抗体の作製、植物育種などに広く使用されている。
麻疹ウイルスのエンベロープタンパク質は、そのような細胞融合を次々と繰り返す、いわゆる二次融合を引き起こし、融合細胞の死滅を惹起するため、癌治療への応用が期待されている(非特許文献5)。しかし、この融合後の細胞死のために、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は細胞融合剤として使用するには不適であろうと考えることが妥当である。麻疹ウイルスは、モノネガウイルス目パラミクソウイルス科モルビリウイルス属に属し、ビリオンは、直径約150nmの略球形であり脂質二重膜からなるエンベロープを有しており、そのエンベロープの全面に、H(ヘマグルチニン又は血球凝集素)タンパク質とF(膜融合)タンパク質とがスパイク状に突起して存在する(特許文献2)。
本発明では、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質をミクロセル融合のために成功裏に使用することが提案される。
Meaburn, K.J. et al., Chromosoma 2005, 114:263-274
Tomizuka, K. et al., Nature Genet. 1997, 16:133-143
Yang, J. and Shen, M.H., Methods Mol. Biol. 2006, 325:59-66
Golestani, R. et al., Hybridoma 2007, 26:296-301
Nakamura, T. et al., Nature Biotechnol. 2004, 22:331-116
本発明の目的は、高効率のミクロセル融合法を提供することである。
本発明は、要約すると、以下の特徴を包含する。
本発明は、第1の態様において、麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法を提供する。
本発明は、第1の態様において、麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法を提供する。
その実施形態において、上記麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質がHタンパク質及びFタンパク質である。
別の実施形態において、上記麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質がミクロセル表面上に発現している。
別の実施形態において、上記Hタンパク質が、上記動物細胞の表面上のタンパク質と結合可能である別のタンパク質と結合されている。
別の実施形態において、上記別のタンパク質が、抗体又はタグポリペプチドである。
別の実施形態において、上記細胞が哺乳動物細胞である。
別の実施形態において、上記細胞が哺乳動物細胞である。
別の実施形態において、上記ミクロセルが外来核酸を含む。
別の実施形態において、上記外来核酸が染色体又は染色体断片を含む。
別の実施形態において、上記染色体が人工染色体である。
別の実施形態において、上記外来核酸が染色体又は染色体断片を含む。
別の実施形態において、上記染色体が人工染色体である。
別の実施形態において、上記ミクロセルが哺乳動物細胞から誘導され、ここで該細胞が上記麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質をコードするDNAを発現可能に含むベクターによって形質転換されている。
別の実施形態において、上記ミクロセル融合細胞が、上記タンパク質又はDNAを発現しない、それによって二次的融合を起こさない細胞である。
本発明により、従来のPEGを利用するミクロセル融合細胞の製造方法と比較して、約100倍高い効率でミクロセル融合細胞を製造することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと動物細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法を提供する。
本発明は、麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと動物細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法を提供する。
本発明で使用される「ミクロセル」(microcell)は、細胞を微小核化して得られた微小核化細胞を脱核することによって作製され、少量の細胞質と1個又は少数の染色体を含む微小核(micronucleus)を含有する細胞である。このミクロセルは細胞と融合させることによって、単一の染色体又は染色体断片といったメガベースサイズの核酸を該細胞へ導入することを可能にする。このような融合法は、一般に、ミクロセル融合法又は微小核融合法と呼ばれている。
ミクロセルを誘導可能にする供与細胞は、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞であり、細胞の種類については、ミクロセルを誘導することができるならば制限はない。本明細書中動物細胞は、初代細胞、株化細胞、継代細胞、培養細胞、体細胞、幹細胞などのいずれの形態の細胞も包含する。また、動物細胞は、例えば昆虫細胞などの無脊椎動物由来細胞、ヒト細胞、げっ歯類細胞などの哺乳動物由来細胞、鳥類由来細胞、両生類由来細胞、爬虫類由来細胞、魚類由来細胞などの脊椎動物由来細胞を含む。
ミクロセル融合法は、上記のとおり、例えば単一もしくは少数の染色体又はその断片などの巨大核酸を供与細胞から受容細胞へ移入可能にする技術を提供する。この方法は、供与細胞を微小核化する第1工程、微小核化細胞を脱核する第2工程、ミクロセルを単離する第3工程、ミクロセルと受容細胞を融合する第4工程、及び、生存するミクロセルハイブリッドクローンを選択する第5工程を包含する。
供与細胞の微小核化は、動物細胞を、コルセミドなどの微小核誘導剤を含有する培地中で長時間培養することによって行うことができる。ここで微小核誘導剤は、染色体の脱凝縮と核膜の再形成を誘起する能力をもつ。微小核誘導剤の濃度は、微小核化が起こるならば制限されないが、例えばコルセミドの場合、受容細胞約5×106個あたり約0.01μg/ml〜約1μg/ml、好ましくは0.1〜0.5μg/mlである。微小核化によって、供与細胞から、少量の細胞質と1個又は少数の染色体を含む微小核(micronucleus)を含有する細胞、すなわちミクロセルが形成される。培養は、供与細胞の培養条件を使用するものとし、培地として一般に動物細胞用培地が使用される。動物細胞用培地には、例えばイーグル培地(MEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ハムF12培地などが含まれる。培地には、牛胎仔血清(FBS)などを添加してもよい。温度は、室温〜約37℃であり、また培養時間は、約40〜50時間が適当である。
微小核化細胞の脱核は、サイトカラシンBを用いて行う。微小核化した細胞を含む培養液を遠心管に入れ、サイトカラシンBを約10μg/mlの濃度で添加し、34℃で約11,900×gで遠心分離を行う。沈降したミクロセルを無血清培地に懸濁して回収する。ミクロセルの精製は、限外ろ過によって行うことができる。孔径8μm、5μm及び3μmの3種類のメンブレンを用意し、順番にろ過する。
ミクロセルと受容細胞との融合は、完全にコンフルエントになる前で培養を終了した受容細胞に精製ミクロセルを重層して培養する。ミクロセル融合細胞は、薬剤耐性株を選択するなどの手法で行うことができる。
供与細胞は、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換又はトランスフェクションされる。ベクターとしては、プラスミド、ウイルスベクター、ファージ、コスミド、ファージミドなどの通常のベクターを使用することができる。ベクターは、動物細胞用ベクター及び哺乳動物細胞用ベクターを使用するのが望ましい。ベクターには、上記DNAのほかに、プロモーター、エンハンサー、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子、複製開始点、ターミネーター、リボソーム開始部位、IRESなどを必要に応じて含有させることができる。また、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質を供与細胞の表面に発現するようにするために、例えば膜移行シグナル配列、GPIアンカー配列などの、タンパク質を細胞膜に輸送するペプチドをコードするDNAを、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質をコードするDNAに連結することができる。
形質転換又はトランスフェクションは、例えばエレクトロポレーション、リポフェクション、ウイルス感染などの通常の方法を含む。
上記の遺伝子操作は、標準的な技術や文献記載の技術を用いて行うことができる。標準的な技術としては、例えばJ. Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001); F.M. Ausubelら, Short Protocols in Molecular Biology, Fifth edition, John Wiley & Sons (2002)に記載された技術が挙げられる。
麻疹ウイルスには、野生株やワクチン株のいずれも含まれるが、好ましくはワクチン株である。ワクチン株は、遺伝子変異や継代培養によって弱毒化されたウイルス株であり、例えばEdmonstonワクチン株及びその亜株が挙げられる。Edmonston株は、ヒトの腎臓細胞、羊膜細胞、さらにはニワトリ胚の繊維芽細胞で継代培養を繰り返すことにより弱毒化した株である。この継代培養によって、ヒトの有核細胞を含む様々な培養細胞で増殖できるよう馴化されている。これまでの研究から、Edmonston株に感染させた哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)で、ウイルスの増殖とエンベロープタンパクの膜表面発現が確認されている。このため、Edmonston株又はその亜株(例えば、Zagreb, Schwarz, Rubeovax, Moraten, AIK-C等)に由来するH及びFエンベロープタンパク質発現ベクターで形質転換又はトランスフェクションされた任意の供与細胞は、遺伝子操作を加えてアミノ酸配列を改変しなくても、両者とも膜貫通ドメインを有しており、該エンベロープタンパク質を膜表面に発現することができる。このとき細胞膜表面発現での発現量を、遺伝子操作によって供与細胞種に最適化できれば望ましい。そのような最適化の手順として、例えば、エンベロープタンパク質は本来的に膜移行シグナルを有していると考えられるので、1)遺伝子改変によって供与細胞における膜提示が増強される変異体をスクリーニングする、2)ウイルス粒子形成に際しHタンパクとFタンパクをエンベロープ内で裏打ちするMタンパクの効果を調べる、などが含まれる。
本発明で使用される麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は、ヘマグルチニン(H)タンパク質及び膜融合(F)タンパク質からなる。Hタンパク質は、麻疹ウイルスとその細胞受容体との相互作用に関わり、特にHタンパク質の481番目のアミノ酸がYであるワクチン株由来のHタンパク質は、ヒト細胞受容体であるCD46やSLAM (CD150)に特異的に結合する性質をもつ。一方、Fタンパク質は、細胞膜との融合に関わる。これらのH及びFタンパク質が協働して、被感染細胞への該ウイルスの結合と膜融合を行うことが知られている(Navaratnarajah et al., In: Measles: History and Basic Biology, Vol. 329, pp. 59-76, 2009)。麻疹ウイルスHタンパク質及びFタンパク質、並びにそれらタンパク質をコードするDNA、に関するアミノ酸配列及び塩基配列は、例えばGenBank(米国NCBI)から、例えばそれぞれのワクチン株が登録番号(Accession No.) Edm B (Z66517), AIK-C (AF266286), Moraten (AF266287),Rubeovax (AF266289), Zagreb (AF2662890), Schwarz (AF2662891)として登録されており容易に入手可能である(Parks, C.L. et al., J. Virol., 75(2):910-920, 2001)。これらの株は細胞融合活性に差はあるが細胞融合を起こすと考えられる(Nakayama T, J.Gen.Virol., 82:2143-2150,2001)。CD46を介した細胞融合を起こすためには、ワクチン株で特徴的であるHタンパク質の481番目のアミノ酸がYになっていることが重要である。U03669.1、U03657.1はEdmonston株の弱毒化する前の野生型株であり、後述の実施例で使っているものは、Edm B (Z66517)株である。実際Edmonston野生株のHタンパク質の481番目のアミノ酸はNであるため、CD46への結合性は低く、逆に野生型と同様にSLAMへの高い結合性を保持していることが予想される。
本発明で使用可能な麻疹ウイルスHタンパク質及びFタンパク質、並びにそれらタンパク質をコードするDNAについては、天然での突然変異によってそれらタンパク質及びDNAのアミノ酸及び塩基配列が変化することがあるため、特定の一次構造による制限を受けるべきではない。しかし、一例を挙げれば、麻疹ウイルス(Edmonston株)Hタンパク質及びそれをコードするDNAのアミノ酸及び塩基配列はそれぞれ配列番号1及び2に示されているし、また麻疹ウイルス(Edmonston株)Fタンパク質及びそれをコードするDNAのアミノ酸及び塩基配列はそれぞれ配列番号3及び4に示されているが、上記の各配列において、ミクロセル融合を起こす能力(もしくは、活性)を有する限り、1個もしくは複数個(好ましくは、1個もしくは数個)のアミノ酸又は塩基(ヌクレオチド)の置換、欠失又は付加が含まれる配列、或いは、上記の各配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%もしくは99%の配列同一性を有する配列であってもよい。
本明細書で「数個」とは、2〜10の整数を指すものとする。
本明細書で「数個」とは、2〜10の整数を指すものとする。
配列同一性については、これは、対比する2つのアミノ酸配列又は塩基配列を、ギャップを導入するか又はギャップを導入しないでアラインメントしたとき、ギャップを含む総アミノ酸数又は総塩基数に対する同一アミノ酸数又は同一塩基数の割合(%)を指す。同一性は、BLASTやFASTAなどの公知のアルゴリズムを利用して決定することができる(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990); Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444-2448 (1988))。また、配列情報は、例えばNCBI GenBank(米国)、EML(欧州)などの遺伝子バンクにアクセスすることによって入手しうる。
麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は、本来糖タンパク質であるので、糖鎖を含有することが好ましい。糖タンパク質を作製するために、真核生物で糖タンパク質を発現させるためのウイルス発現系を利用した遺伝工学技術が使用できる。そのようなウイルス発現系は、例えばワクシニアウイルス発現系などが知られている(J. Gen. Virol. 64:255-266, 1983; Adv. Virus Res. 35:177-192, 1988; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927-4931, 1982; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415-7419, 1982; J. Gen. Virol. 67:2067-2082, 1986; Science 252:1662-1667, 1991)。一方、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質を受容細胞で発現させるときには、受容細胞の糖修飾機構を利用すればよい。
従来、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質を細胞-細胞融合に使用されたことはあるが、この場合受容細胞に組み込まれた該タンパク質をコードするDNAが融合細胞に持ち込まれて該受容細胞表面で発現されるために二次的融合が起こり、また該融合細胞は死滅するため、この性質により、この技術は癌治療に利用可能である(Nakamura, T. et al., Nature Biotechnol. 2004, 22:331-116)。
これに対して、本発明では、供与細胞から誘導したミクロセルと受容細胞との融合であり、このとき麻疹ウイルスエンベロープタンパク質の存在下で融合が行われる。好適な実施形態では、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質は、供与細胞の表面に発現され、それにより該細胞から誘導されたミクロセルの表面にも発現される。このようなミクロセルを融合に使用するときには、より効率的にミクロセル融合を行うことができるし、また同時に、受容細胞が、その表面に、麻疹ウイルスエンベロープHタンパク質と結合可能な受容体CD46又はSLAM(CD150)を有しているとき、或いは、ミクロセル表面上のHタンパク質が、受容細胞の表面上のタンパク質と結合可能である別のタンパク質と結合されているときには、さらに効率的なミクロセル融合をもたらすことができる。
後述の実施例で使ったEdmonston株由来のHタンパク質は、ヒト受容体CD46を標的にするが、これ以外にもヒト血球細胞のマーカーであるSLAM(CD150)も麻疹ウイルスHタンパク質の標的分子である。このため、本発明の方法は、血球細胞などのSLAM発現細胞株に対するミクロセル融合も可能にする。
本発明のミクロセル融合法は、CD46又はSLAM(CD150)を発現していない細胞に対しても適用できる。この場合、供与細胞のHタンパク質を改変して受容細胞に最適化する方法と、Hタンパク質はそのままで受容細胞の表面抗原(CD46又はSLAM(CD150))の発現量を増やす方法がある。
前者の方法では、例えば、受容細胞表面に高発現している抗原(膜タンパク質等の内因性抗原又は外因性抗原)を標的とし、これに対して特異的に反応する別のタンパク質をHタンパク質に融合することができる。ここで、別のタンパク質は、例えば抗体又はタグポリペプチドである。これらの別のタンパク質は、好ましくは上記Hタンパク質のC末端に結合される。
抗体は、好ましくは、一本鎖抗体であり、及び受容細胞表面の任意の抗原と特異的に結合することができる。このような抗原は、受容細胞表面上に発現される、内因性抗原であってもよいし、或いは、遺伝子組換えによって導入された外因性抗原であってもよい。一本鎖抗体は、抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製し、該ハイブリドーマからの抗体遺伝子を組み換えて一本鎖抗体をコードするDNAを作製し、該DNAを、Hタンパク質をコードするDNAの3'末端に連結し、ベクターに挿入し、供与細胞を形質転換することによって、供与細胞及びミクロセル表面上に発現させることができる。
タグポリペプチドは、例えばヒスチジン(His)タグ(例えばHis6-10)であり、Hタンパク質に融合させる。一本鎖抗体の場合と同様に、遺伝子組換え技術を用いて融合タンパク質をコードするDNAを作製し、ベクターに挿入し、供与細胞を形質転換することによって、供与細胞及びミクロセル表面上に発現させることができる。この場合、一方の受容細胞表面には、抗Hisタグ抗体が発現しうるように、該受容細胞を遺伝子操作する必要がある。
後者の方法では、例えば、CD46又はSLAM(CD150)のHタンパク質結合部位を膜表面に提示する組換えタンパク質を、遺伝子組換え技術を用いて受容細胞表面に、過剰に、及び場合により異所的に、発現させることを含む。
本発明の方法によって得られたミクロセル融合細胞は、麻疹ウイルスエンベロープタンパク質が発現せず、二次的融合も細胞の死滅も起こさない。
好適実施形態によれば、供与細胞に予め外来核酸を導入しておくことができる。この場合、該外来核酸はミクロセルに移動し、ミクロセル融合によって受容細胞内に導入される。その結果、該受容細胞は外来核酸によって形質転換される。
外来核酸は、目的に応じて選択される任意の核酸である。一般に、ミクロセル融合は、数百キロベースを超えるサイズの核酸、特にメガベースサイズの特定の染色体又は染色体断片を細胞から別の細胞に移入(又は、導入)するために好ましく使用できる。染色体は動物由来の染色体、好ましくは哺乳動物由来の染色体、例えばマウスなどのげっ歯類由来の染色体、ヒト、サルなどの霊長類由来の染色体などを含む。染色体は、人工染色体であってもよい。
人工染色体は、同じ動物種の単一又は複数の染色体から誘導された、少なくともセントロメア、テロメア及び(長腕、短腕)染色質部分を含むベクターであり、Cre-loxP系、テロメアトランケーションなどの技術を利用して作製することができる(再表2008-013067号公報、等)。人工染色体の染色質部分には、発現可能に外来遺伝子や遺伝子座を挿入してもよい。ここで、「発現可能に」とは、外来遺伝子が、それが発現可能なようにプロモーター、エンハンサーなどの調節配列の制御下にあることを意味する。プロモーターやエンハンサーは、外来遺伝子の内因性プロモーターやエンハンサー、ウイルス由来のプロモーターやエンハンサーなどを包含し、それらに限定されないものとする。また、外来遺伝子又は遺伝子座は、ヒト由来の有用タンパク質をコードする遺伝子又は遺伝子座、疾患関連遺伝子又は遺伝子座、人工多能性幹(iPS)細胞を誘導可能でありかつ未分化細胞のみで発現される遺伝子類(OCT3/4, NANOG等)などを包含し、それらに限定されない。
人工染色体等の外来核酸には、薬剤耐性遺伝子、レポーター遺伝子などの選択マーカー遺伝子が含まれてもよい。薬剤耐性遺伝子には、例えばブラストサイジン、ハイグロマイシン、ネオマイシン、G418、ピューロマイシンなどの抗生物質に耐性な遺伝子が含まれる。レポーター遺伝子には、例えばGFP、EGFP、DsRed、GUSなどが含まれる。これらの選択マーカー遺伝子によって人工染色体等の外来核酸が導入されたミクロセル融合細胞の選択を可能にする。
本発明の上記方法によって、麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質が発現しない、かつ二次的融合を起こさないことを特徴とするミクロセル融合細胞が高効率で作製される。
本明細書で「二次的融合を起こさない」とは、融合細胞の表面に麻疹ウイルスエンベロープタンパク質が存在しないために、融合細胞と別の細胞との融合が起きないことを意味する。
本発明の方法によって、PEG法と比較すると、例えば約10倍〜約100倍高い効率でミクロセル融合を起こすことが可能である。
本発明のミクロセル融合法は、人工染色体などのメガベースサイズの染色体又は染色体断片を効率よく導入するための、従来のPEG法の代替方法である。それゆえに、染色体工学とともに、医学、農学、薬学などの分野での利用が可能になる。具体的には、ヒトを含む哺乳動物由来の、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、間葉系幹細胞などの幹細胞又は未分化前駆細胞に、外来核酸を含むミクロセルを融合させることによって、キメラ非ヒト動物の作出、再生医療への応用などが可能になるだろう。
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例によって制限されることを意図していない。
[実施例1]
麻疹ウイルスエンベロープタンパク質を発現するHAC供与細胞の作製
(1)トランスフェクションおよびG418耐性細胞の取得
麻疹ウイルスHタンパク質発現ベクターは、pTNH6-H(Nakamuraら, Nat. Biotech.,23:209, 2005)を用いた。Fタンパク質発現ベクターは、は、CAGプロモーター(cytomegalovirus early enhancer/chicken β-actin promoter)の転写制御下にあるF遺伝子を発現させるプラスミドpCAG-T7-Fを用いた。pCAG-T7は、Niwa, H.ら, Gene 108:193-1999 (1991)、Okuma, K.ら, Virology 254:235-244 (1999)、Richard, S.B.ら, J. Virol. 77:8962-8972 (2003)に記載されている。発現ベクタープラスミドは、制限酵素PvuI(宝酒造)消化により線状化DNAとし、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)に導入した。HAC供与CHO細胞は、10%牛胎仔血清FBS(BioWest)及び8μg/mlブラストサイジン(Blasticidin S, フナコシ)を添加したF12培地(和光)で培養した。8×104のCHO細胞を24穴クラスターの1ウエルに播種し、翌日0.3μgずつのpTNH6-HおよびpCAG-T7-Fと、0.25μgのpDsRed-Monomer-N1を、カチオン性脂質リポフェクタミン2000(インビトロジェン)によりトランスフェクトした。細胞は翌日10cm径ディッシュ(ファルコン)5枚に播き直し、800μg/mlのG418(ナカライ)を添加した選択培地で2週間培養した。出現した薬剤耐性コロニーは集団として回収し継代培養した(CHO4H6.1M)。
麻疹ウイルスエンベロープタンパク質を発現するHAC供与細胞の作製
(1)トランスフェクションおよびG418耐性細胞の取得
麻疹ウイルスHタンパク質発現ベクターは、pTNH6-H(Nakamuraら, Nat. Biotech.,23:209, 2005)を用いた。Fタンパク質発現ベクターは、は、CAGプロモーター(cytomegalovirus early enhancer/chicken β-actin promoter)の転写制御下にあるF遺伝子を発現させるプラスミドpCAG-T7-Fを用いた。pCAG-T7は、Niwa, H.ら, Gene 108:193-1999 (1991)、Okuma, K.ら, Virology 254:235-244 (1999)、Richard, S.B.ら, J. Virol. 77:8962-8972 (2003)に記載されている。発現ベクタープラスミドは、制限酵素PvuI(宝酒造)消化により線状化DNAとし、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)に導入した。HAC供与CHO細胞は、10%牛胎仔血清FBS(BioWest)及び8μg/mlブラストサイジン(Blasticidin S, フナコシ)を添加したF12培地(和光)で培養した。8×104のCHO細胞を24穴クラスターの1ウエルに播種し、翌日0.3μgずつのpTNH6-HおよびpCAG-T7-Fと、0.25μgのpDsRed-Monomer-N1を、カチオン性脂質リポフェクタミン2000(インビトロジェン)によりトランスフェクトした。細胞は翌日10cm径ディッシュ(ファルコン)5枚に播き直し、800μg/mlのG418(ナカライ)を添加した選択培地で2週間培養した。出現した薬剤耐性コロニーは集団として回収し継代培養した(CHO4H6.1M)。
(2)麻疹ウイルスH/Fタンパク質の機能発現確認
1×105のG418耐性CHO細胞(CHO4H6.1M)と同数のHT1080細胞を6cm径ディッシュに播種して混合培養し、3日後に多核細胞の出現を顕微鏡により観察した(図1)。
1×105のG418耐性CHO細胞(CHO4H6.1M)と同数のHT1080細胞を6cm径ディッシュに播種して混合培養し、3日後に多核細胞の出現を顕微鏡により観察した(図1)。
CHO4H6.1M細胞(a)は、HAC上に搭載されたGFP遺伝子および上記(1)で導入されたDsRed遺伝子を発現して、緑色(b)および赤色(c)蛍光タンパク質を発現する。HT1080細胞(d)にH/Fタンパク質発現プラスミドをトランスフェクトすると、細胞表面に発現したH/Fタンパク質の作用により隣接する細胞との間で融合が起き、多核細胞が生じる(e)。CHO4H6.1M細胞(a)をHT1080細胞(d)と混合培養すると、融合による多核細胞が生じる(f,g,h)。この結果から、CHO4H6.1M細胞の表面には機能的なH/Fタンパク質が発現していること、にもかかわらずCHO4H6.1M細胞単独では融合が起きないことが確認された。
[実施例2]
麻疹ウイルスH/Fタンパク質によるミクロセル融合の検証
(1)ミクロセル融合と薬剤耐性株の取得
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080(ATCC:CCL-121)を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)4本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×106個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。HT1080細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュに精製したミクロセルを重層して培養した。24時間後の蛍光顕微鏡観察(図2、a)では、融合せずに残っているミクロセル(球形)以外にも蛍光タンパク質を発現している細胞が散見され、ミクロセル融合によって供与細胞から標識染色体が移入されたことが示された。トリプシン処理によりこれらの細胞を分散し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、薬剤耐性コロニーが出現した。一例を図2、bに示した。CHO4H6.1M細胞に保持されるHAC上に搭載されたGFP遺伝子由来の緑色蛍光タンパク質は発現するが、H/Fタンパク質発現ベクターと共導入したDsRed遺伝子由来の赤色蛍光タンパク質は発現していないことから、ミクロセル融合によってHACが移入されたミクロセル融合細胞であることが示された。これらの耐性クローンを単離して以後の解析を行った。
麻疹ウイルスH/Fタンパク質によるミクロセル融合の検証
(1)ミクロセル融合と薬剤耐性株の取得
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080(ATCC:CCL-121)を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)4本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×106個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。HT1080細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュに精製したミクロセルを重層して培養した。24時間後の蛍光顕微鏡観察(図2、a)では、融合せずに残っているミクロセル(球形)以外にも蛍光タンパク質を発現している細胞が散見され、ミクロセル融合によって供与細胞から標識染色体が移入されたことが示された。トリプシン処理によりこれらの細胞を分散し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、薬剤耐性コロニーが出現した。一例を図2、bに示した。CHO4H6.1M細胞に保持されるHAC上に搭載されたGFP遺伝子由来の緑色蛍光タンパク質は発現するが、H/Fタンパク質発現ベクターと共導入したDsRed遺伝子由来の赤色蛍光タンパク質は発現していないことから、ミクロセル融合によってHACが移入されたミクロセル融合細胞であることが示された。これらの耐性クローンを単離して以後の解析を行った。
(2)薬剤耐性細胞株における移入染色体の確認
(2-1)蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図3に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のHT1080細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
(2-1)蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図3に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のHT1080細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
[実施例3]
HT1080細胞株に対するミクロセル融合効率の検討
(1)一定数の受容細胞に対し投与するミクロセル数を変えた場合
(1-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを1:2:4:6:11の量比に分割し、HT1080細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚にそれぞれ重層して培養した。24時間後にトリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
HT1080細胞株に対するミクロセル融合効率の検討
(1)一定数の受容細胞に対し投与するミクロセル数を変えた場合
(1-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを1:2:4:6:11の量比に分割し、HT1080細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚にそれぞれ重層して培養した。24時間後にトリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
(1-2)PEG法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、1:2:4:6:11の量比に分割した。HT1080細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚に量比の異なるミクロセルを加え、37℃にて15分間静置した。DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、1:2:4:6:11の量比に分割した。HT1080細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚に量比の異なるミクロセルを加え、37℃にて15分間静置した。DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
(1-3)麻疹法とPEG法とのミクロセル融合効率の比較
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図4に示した。麻疹法ではPEG法と比較して最大約10倍の耐性コロニーが出現した(ミクロセル投与量が供与細胞1フラスコ相当のとき)。PEG法では投与したミクロセル量に依存して耐性コロニー出現数が増えたのに対し、麻疹法ではミクロセル量の過剰投与は耐性コロニーの出現数減少につながり、最適の投与量が存在することが示唆された。
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図4に示した。麻疹法ではPEG法と比較して最大約10倍の耐性コロニーが出現した(ミクロセル投与量が供与細胞1フラスコ相当のとき)。PEG法では投与したミクロセル量に依存して耐性コロニー出現数が増えたのに対し、麻疹法ではミクロセル量の過剰投与は耐性コロニーの出現数減少につながり、最適の投与量が存在することが示唆された。
(2)一定数のミクロセルを異なる数の受容細胞に投与した場合
(2-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを6等分し、細胞数の異なる(6段階)HT1080細胞にそれぞれ重層して培養した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および融合後の再播種容器を表1に示した。
(2-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを6等分し、細胞数の異なる(6段階)HT1080細胞にそれぞれ重層して培養した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および融合後の再播種容器を表1に示した。
24時間後にトリプシン処理により各容器から細胞を回収して再播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
(2-2)PEG法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、6等分した。細胞数の異なる(6段階)HT1080細胞にそれぞれ重層して37℃にて15分間静置した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および融合後の再播種容器を表2に示した。
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト線維肉腫由来細胞株HT1080を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、6等分した。細胞数の異なる(6段階)HT1080細胞にそれぞれ重層して37℃にて15分間静置した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および融合後の再播種容器を表2に示した。
DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
(2-3)麻疹法とPEG法とのミクロセル融合効率の比較
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図5に示した。左のグラフは出現した薬剤耐性コロニー数を示し、右のグラフは受容細胞あたりの薬剤耐性コロニー出現頻度を「導入効率」として示した。PEG法では4×105(12穴)以上の受容細胞ではじめて耐性コロニーが出現したが、麻疹法ではより少ない受容細胞(2×105/24穴)でも耐性コロニーが出現した。受容細胞あたりの導入効率で比較すると、麻疹法ではPEG法と比較して顕著な改善(最大50倍)がみられた。
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図5に示した。左のグラフは出現した薬剤耐性コロニー数を示し、右のグラフは受容細胞あたりの薬剤耐性コロニー出現頻度を「導入効率」として示した。PEG法では4×105(12穴)以上の受容細胞ではじめて耐性コロニーが出現したが、麻疹法ではより少ない受容細胞(2×105/24穴)でも耐性コロニーが出現した。受容細胞あたりの導入効率で比較すると、麻疹法ではPEG法と比較して顕著な改善(最大50倍)がみられた。
(2-4)蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
麻疹法で得られた薬剤耐性細胞株のうち任意の4クローンは、固定染色前に単離/継代培養し、染色体解析を行った。FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図6に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のHT1080細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
麻疹法で得られた薬剤耐性細胞株のうち任意の4クローンは、固定染色前に単離/継代培養し、染色体解析を行った。FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図6に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のHT1080細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
[実施例4]
ヒト体幹細胞株に対するミクロセル融合効率の検討
(1)一定数の受容細胞に対し投与するミクロセル数を変えた場合
(1-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSC(Okamoto, Biochem.Biophys.Res.Commun., 295:354, 2002)を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを1:2:4:6:11の量比に分割し、hiMSC細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚にそれぞれ重層して培養した。24時間後にトリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
ヒト体幹細胞株に対するミクロセル融合効率の検討
(1)一定数の受容細胞に対し投与するミクロセル数を変えた場合
(1-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSC(Okamoto, Biochem.Biophys.Res.Commun., 295:354, 2002)を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを1:2:4:6:11の量比に分割し、hiMSC細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚にそれぞれ重層して培養した。24時間後にトリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
(1-2)PEG法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSCを用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、1:2:4:6:11の量比に分割した。hiMSC細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚に量比の異なるミクロセルを加え、37℃にて15分間静置した。DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSCを用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、1:2:4:6:11の量比に分割した。hiMSC細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚に量比の異なるミクロセルを加え、37℃にて15分間静置した。DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
(1-3)麻疹法とPEG法とのミクロセル融合効率の比較
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図7に示した。麻疹法ではPEG法と比較して最大約5倍の耐性コロニーが出現した。PEG法、麻疹法ともにばらつきが大きく、ミクロセル投与量と耐性コロニー出現数の間に明確な相関はみられなかった。
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図7に示した。麻疹法ではPEG法と比較して最大約5倍の耐性コロニーが出現した。PEG法、麻疹法ともにばらつきが大きく、ミクロセル投与量と耐性コロニー出現数の間に明確な相関はみられなかった。
(2)一定数のミクロセルを異なる数の受容細胞に投与した場合
(2-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSCを用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを6等分し、細胞数の異なる(6段階)hiMSC細胞にそれぞれ重層して培養した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表3に示した。
(2-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSCを用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを6等分し、細胞数の異なる(6段階)hiMSC細胞にそれぞれ重層して培養した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表3に示した。
24時間後にトリプシン処理により各容器から細胞を回収して10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
(2-2)PEG法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSCを用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、6等分した。細胞数の異なる(6段階)HT1080細胞にそれぞれ重層して37℃にて15分間静置した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表4に示した。
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株hiMSCを用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、6等分した。細胞数の異なる(6段階)HT1080細胞にそれぞれ重層して37℃にて15分間静置した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表4に示した。
DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、DMEM)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
(2-3)麻疹法とPEG法とのミクロセル融合効率の比較
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図8に示した。左のグラフは出現した薬剤耐性コロニー数を示し、右のグラフは受容細胞あたりの薬剤耐性コロニー出現頻度を「導入効率」として示した。PEG法では6×106(10cm)の受容細胞ではじめて耐性コロニーが出現したが、麻疹法ではより少ない受容細胞(2×104;96穴)でも耐性コロニーが出現した。受容細胞あたりの導入効率で比較すると、麻疹法ではPEG法と比較して顕著な改善(最大100倍)がみられた。
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図8に示した。左のグラフは出現した薬剤耐性コロニー数を示し、右のグラフは受容細胞あたりの薬剤耐性コロニー出現頻度を「導入効率」として示した。PEG法では6×106(10cm)の受容細胞ではじめて耐性コロニーが出現したが、麻疹法ではより少ない受容細胞(2×104;96穴)でも耐性コロニーが出現した。受容細胞あたりの導入効率で比較すると、麻疹法ではPEG法と比較して顕著な改善(最大100倍)がみられた。
(2-4)蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
麻疹法で得られた薬剤耐性細胞株のうち任意の4クローンは、固定染色前に単離/継代培養し、染色体解析を行った。FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図6に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のhiMSC細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
麻疹法で得られた薬剤耐性細胞株のうち任意の4クローンは、固定染色前に単離/継代培養し、染色体解析を行った。FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図6に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のhiMSC細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
[実施例5]
ヒト正常繊維芽細胞に対するミクロセル融合効率の検討
(1)一定数の受容細胞に対し投与するミクロセル数を変えた場合
(1-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1(理化学研究所細胞材料開発室より入手、登録番号RCB0521)を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを1:2:4:6:11の量比に分割し、HFL-1細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚にそれぞれ重層して培養した。24時間後にトリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
ヒト正常繊維芽細胞に対するミクロセル融合効率の検討
(1)一定数の受容細胞に対し投与するミクロセル数を変えた場合
(1-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1(理化学研究所細胞材料開発室より入手、登録番号RCB0521)を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを1:2:4:6:11の量比に分割し、HFL-1細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚にそれぞれ重層して培養した。24時間後にトリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(10%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
(1-2)PEG法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、1:2:4:6:11の量比に分割した。hiMSC細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚に量比の異なるミクロセルを加え、37℃にて15分間静置した。DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清F12により洗浄した。15%FBSを含むF12培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(15%FBS、F12)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)12本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約2.5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、1:2:4:6:11の量比に分割した。hiMSC細胞を90%飽和の状態まで培養した6cm径ディッシュ5枚に量比の異なるミクロセルを加え、37℃にて15分間静置した。DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清F12により洗浄した。15%FBSを含むF12培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(15%FBS、F12)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
(1-3)麻疹法とPEG法とのミクロセル融合効率の比較
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図9に示した。耐性コロニーの出現数は麻疹法とPEG法とで顕著な差はみられなかった。麻疹法ではより少ないミクロセル投与量でも耐性コロニーが出現した。
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図9に示した。耐性コロニーの出現数は麻疹法とPEG法とで顕著な差はみられなかった。麻疹法ではより少ないミクロセル投与量でも耐性コロニーが出現した。
(2)一定数のミクロセルを異なる数の受容細胞に投与した場合
(2-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを6等分し、細胞数の異なる(6段階)HFL1細胞にそれぞれ重層して培養した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表5に示した。
(2-1)麻疹法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、実施例1で作製したCHO4H6.1Mを用いた。染色体受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO4H6.1M細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。回収したミクロセルを6等分し、細胞数の異なる(6段階)HFL1細胞にそれぞれ重層して培養した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表5に示した。
24時間後にトリプシン処理により各容器から細胞を回収して10cm径ディッシュ2枚に播種し、ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(15%FBS、F12)で培養した。約2週間の選択培養後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色し計数した。
(2-2)PEG法によるミクロセル融合
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、6等分した。細胞数の異なる(6段階)HFL1細胞にそれぞれ重層して37℃にて15分間静置した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表6に示した。
染色体供与細胞として、ヒト21番染色体由来のHACベクターを保持する細胞株CHO(kkpqG4)を用いた。受容細胞としては、ヒト正常繊維芽細胞HFL-1を用いた。25cm2遠心用フラスコ(ヌンク)24本に播種したCHO(kkpqG4)細胞(合計約5×107個)をコルセミド(0.1μg/ml、ギブコ)を含む培地(10%FBS、F12)中で48時間培養して微小核を誘導した。予め保温(37℃)しておいたサイトカラシンB(F12中に10μg/ml、シグマ)溶液を遠心用フラスコに満たし、アクリル性遠心容器に遠心用フラスコを挿入し、34℃、8,000rpm(11,899×g)、1時間の遠心を行った(JLA-10.5ローター、ベックマン)。ミクロセルを無血清培地(F12)に懸濁して回収し、孔径8μm、5μm、3μmのフィルター(ワットマン)を装着したSWINNEX-25(ミリポア)で順に濾過して精製した。精製したミクロセルは、50μg/mlのフィトヘムアグルチニンP(Phytohemaggulutinin-P、Difco)を含むF12に再懸濁し、6等分した。細胞数の異なる(6段階)HFL1細胞にそれぞれ重層して37℃にて15分間静置した。融合に用いた培養容器と受容細胞数、および再播種に用いた容器を表6に示した。
DMEM中にPEG1000(終濃度50%(W/V)、シグマ)およびDMSO(終濃度7%(W/V)、シグマ)を溶解し、ポアサイズ0.22μmフィルター(コーニング)にて濾過した溶液を1分間細胞に投与し、無血清DMEMにより洗浄した。10%FBSを含むDMEM培地にて24時間培養した後トリプシン処理により細胞を分散し、10cm径ディッシュ2枚に播種した。ブラストサイジン(3μg/ml)を含む選択培地(15%FBS、F12)で2週間培養した後、出現した薬剤耐性コロニーを5%ギムザ液(メルク)により染色して計数した。
(2-3)麻疹法とPEG法とのミクロセル融合効率の比較
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図10に示した。左のグラフは出現した薬剤耐性コロニー数を示し、右のグラフは受容細胞あたりの薬剤耐性コロニー出現頻度を「導入効率」として示した。耐性コロニー出現頻度は10-6程度で、実施例3、4で用いたHT1080、hiMSCと比較して1桁から2桁ほど低い。麻疹法とPEG法との間で、耐性コロニー出現頻度に顕著な差はみられなかった。
麻疹法とPEG法で得られたG418耐性コロニー数の比較を図10に示した。左のグラフは出現した薬剤耐性コロニー数を示し、右のグラフは受容細胞あたりの薬剤耐性コロニー出現頻度を「導入効率」として示した。耐性コロニー出現頻度は10-6程度で、実施例3、4で用いたHT1080、hiMSCと比較して1桁から2桁ほど低い。麻疹法とPEG法との間で、耐性コロニー出現頻度に顕著な差はみられなかった。
(2-4)蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)
麻疹法で得られた薬剤耐性細胞株のうち任意の4クローンは、固定染色前に単離/継代培養し、染色体解析を行った。FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図6に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のHFL1細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
麻疹法で得られた薬剤耐性細胞株のうち任意の4クローンは、固定染色前に単離/継代培養し、染色体解析を行った。FISH解析は、松原ら(FISH実験プロトコール、秀潤社、1994)に記された方法に従い、ヒト21番染色体セントロメア特異的プローブp11-4(Ikeno, Hum. Mol. Getnet.,3:1245, 1994)を用いて行った。代表的なFISH像を図6に示す。ブラストサイジン耐性株では、親株のHFL1細胞には存在せず、内在の21番染色体よりサイズの小さい染色体断片が観察された。この実験から、麻疹ウイルスHおよびFタンパク質を発現するHAC供与細胞から、ミクロセル融合によってHACベクターが受容細胞に移入されたことが確かめられた。
[実施例6]
受容細胞におけるCD46表面発現の解析
麻疹ウイルスHタンパク質は、受容細胞膜表面のヒトCD46タンパク質に吸着する。受容細胞におけるCD46の表面発現を、フローサイトメトリーにより解析した。
受容細胞におけるCD46表面発現の解析
麻疹ウイルスHタンパク質は、受容細胞膜表面のヒトCD46タンパク質に吸着する。受容細胞におけるCD46の表面発現を、フローサイトメトリーにより解析した。
10cm径ディッシュ(ファルコン)に80%コンフルエントまで培養した細胞を、0.2%EDTA(和光)/PBS(ニッスイ)処理によって分散し、PBSにより2回洗浄した後2%BSA(シグマ)/PBSに106/mlになるよう懸濁した。細胞懸濁液にFITC標識抗CD46抗体(クローンE4.3;ベクトン)を1/50量添加し、氷上で60分静置した。アイソタイプコントロール(マウスIgG1)として、FITC標識抗(クローンG155-178;ベクトン)を用いた。抗体染色した細胞は、2%BSA/PBSで洗浄した後、フローサイトメーター(EPICS ALTRA;ベックマン)により解析した。得られた結果を図11に示す。3種の受容細胞におけるCD46の細胞表面発現を、黒塗りのヒストグラムで示した。アイソタイプコントロールを用いたバックグラウンド蛍光を実線白抜きのヒストグラムで示した。CD46「発現量」の指標として、蛍光強度の中央値の比(抗CD46/アイソタイプコントロール)を数値で示した。細胞毎にCD46の表面発現量が異なることが明らかになった。麻疹法によるミクロセル融合では、HT1080とhiMSCで効率が高いのに対し、HFL1では低かった。この差は、受容細胞表面のCD46発現量の違いによって生じる可能性が示唆された。
本発明のミクロセル融合法は、人工染色体などのメガベースサイズの染色体又は染色体断片を効率よく導入するための、従来のPEG法の代替方法である。それゆえに、染色体工学とともに、医学、農学、薬学などの分野での利用が可能になる。
Claims (11)
- 麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質又は該エンベロープタンパク質をコードするDNAの存在下でミクロセルと動物細胞とを融合させること、及びミクロセル融合細胞を回収することを含む、ミクロセル融合細胞の製造方法。
- 前記麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質がHタンパク質及びFタンパク質である、請求項1に記載の方法。
- 前記麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質がミクロセル表面上に発現している、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記Hタンパク質が、前記動物細胞の表面上のタンパク質と結合可能である別のタンパク質と結合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記別のタンパク質が、抗体又はタグポリペプチドである、請求項4に記載の方法。
- 前記動物細胞が哺乳動物細胞である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ミクロセルが外来核酸を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記外来核酸が染色体又は染色体断片を含む、請求項7に記載の方法。
- 前記染色体が人工染色体である、請求項8に記載の方法。
- 前記ミクロセルが哺乳動物細胞から誘導され、ここで該細胞が前記麻疹ウイルス由来のエンベロープタンパク質をコードするDNAを発現可能に含むベクターによって形質転換されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ミクロセル融合細胞が、前記タンパク質又はDNAを発現しない、それによって二次的融合を起こさない細胞である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013192466A (ja) * | 2012-03-16 | 2013-09-30 | Tottori Univ | ミクロセル保存方法 |
WO2018062392A1 (ja) * | 2016-09-28 | 2018-04-05 | 国立大学法人鳥取大学 | ダウン症モデルラット及びその作製法 |
WO2020075823A1 (ja) * | 2018-10-10 | 2020-04-16 | 国立大学法人鳥取大学 | 微小核細胞融合法による目的dnaを含む動物細胞の作製方法 |
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