JP2011176726A - コーナー導波管 - Google Patents

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Abstract

【課題】コーナー導波管を構成する金属部と他の金属部材との間にある隙間から漏洩する電磁波を抑制する。
【解決手段】本発明は、方形溝を有する第1の金属板に開口部を有する第2の金属板を配置させ、各軸線が直交する第1の導波管及び第2の導波管を形成し、各軸線の直交する点に、45度のテーパ面を端部に持つコーナー反射棒を嵌め込んだEコーナー導波管又はHコーナー導波管、あるいは、方形溝及びこれに直交する開口部を有する第1の金属板に第2の金属板を配置させ、各軸線が直交する第1の導波管及び第2の導波管を形成し、各軸線の直交する点に、−45度(または135度)のテーパ面を端部に持つコーナー反射棒を嵌め込んだEコーナー導波管又はHコーナー導波管において、前記コーナー反射棒本体に、第1の金属板及び第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コーナー導波管に関するものであり、例えば、マイクロ波帯以上の高周波帯域で使用される導波管の屈曲部に採用されるコーナー導波管に適用し得るものである。
一般的に、マイクロ波回路を構成するとき、市販の回路素子、例えば直線導波管、ベンド導波管、コーナー導波管、分岐導波管、マジックティー、位相器、単向管、無反射終端、可変減衰器、減衰器等を用いればだいたい可能であるが、回路をよりコンパクトにするために、または他の装置とより効率よく接続できるためには、前記市販回路素子を参考にしながら、加工技術および切削機械の性能向上で特別に加工することも珍しくない。
まず、コーナー導波管の機能について説明する。図2及び図3は、コーナー導波管の基本的な構造である。
図2及び図3において、21と22はそれぞれ導波管の開口、23は導波管本体、24は導波管のコーナー、25は基本モードの電界、26は基本モードの磁界である。
24は、導波管の幅側面と45度(または135度)の角度で交差する導波管の幅側面の一つで、導波管内に伝搬する電磁波の方向を90度に変える反射板の役割を果たし、ちょうど光学の45度プリズムのようなものである。図2は、45度の角度で交差するコーナー導波管の構造を示し、図3は、135度の角度で交差するコーナー導波管の構造を示している。
また、図2(A)及び図3(A)に示すように、21及び22における電界25の方向は互いに垂直しているが、磁界26の方向は変わらず並行のままである。このように、電界25の方向のみを垂直に変更するコーナー導波管をEコーナー導波管という。
一方、図2(B)及び図3(B)示すように、21及び22における磁界26の方向が互いに垂直し、電界25の方向が並行のままである。このように、磁界26の方向のみを垂直に変更するコーナー導波管をHコーナー導波管という。
これ以降、導波管における電磁波の伝搬モードは、断りがない限り、基本モードだけを考慮する。したがって、導波管断面の幅がaであれば、基本モードで伝搬可能な電磁波の波長λは下記の条件を満足する。
2a>λ>a (1)
また、管内波長λgは次式に示されるようになる。
Figure 2011176726
図4は、コーナー導波管の内部構造を示す導波管軸線に沿った断面図である。図4(A)は、+45度の角度のテーパ面を有するコーナー導波管の構造を示し、図4(B)は、−45度のテーパ面を有するコーナー導波管の構造を示す。
図4(A)及び図4(B)において、27は導波管の開口21及び22における電磁波の伝搬方向を示す。図4(A)及び図4(B)に示すように、電磁波は24の内側表面に反射し、電磁波の伝搬方向が90度変化していることがわかる。
ところで、回路のコンパクト化を図るために、上述したようなコーナー導波管の基本構造に基づいて、以下に示すような技術がある。
例えば、特許文献1には、90度ベンド型導波管に関する技術が提案されている。特許文献1の図1に示す90度ベンド型導波管は、互いに直交する2本の導波管の結合部が、光学的な反射の場合と同様に、各々の導波管の方向に対して45度のテーパ面を形成し、3個の金属部材を結合して構成される構造になっている。
すなわち、90度ベンド型導波管は、端部に45度のテーパ面を有する金属部材がそれぞれの導波管を有する金属部材の間に嵌め込まれて構成されるが、組み立て作業が容易に行えるために前記端部に45度のテーパ面を有する金属部材の寸法がわずかながら寸法を小さめに加工されている。なお、形状および機能からみれば、特許文献1の示した90度ベンド型導波管はコーナー導波管から展開した発明であることがわかる。
特開2005−020077号公報 特開2007−195104号公報
しかしながら、特許文献1に記載の90度ベンド型導波管を構成する重要な部品の1つである端部に45度のテーパ面を有する金属部材の加工寸法は、他の金属部材の間に嵌め込む空間よりわずかに小さいので、両者の間に隙間が生じ、そこから伝搬する電磁波が漏れる結果になる。これは、電磁波の波長が短いほど、例えば準ミリ波帯以上の電磁波となるほど、その隙間からの漏洩が多くなって、伝搬損失を増加させてしまう問題が生じ得る。
図5は、特許文献1に示された前記端部に45度のテーパ面を有する金属部材と他の金属部材の間にある隙間から漏れる電磁波の様子を示しているが、わかりやすくするために導波管軸線に沿った断面図を用いることにした。図5では、31と32はそれぞれ導波管の開口、33は前記端部に45度のテーパ面を有する金属部材、34は導波管内に伝搬している電磁波を示す。そして、35及び36は、前記端部に45度のテーパ面を有する金属部材と他の金属部材の間にある隙間から漏れる電磁波を示している。
このように、特許文献1に示される導波管を構成する金属部材と他の金属部材との間にある隙間から電磁波の漏洩損失を検証する。
例えば、60GHzの周波数において、導波管断面幅をa=3.76mmとし、この値を用いて前記端部に45度のテーパ面を有する金属部材と他の金属部材の間にある隙間からの電磁波の漏洩損失をシミュレーションする。図6は、このシミュレーションにより得られた結果である。図6の結果から、前記隙間の長さに比例して電磁波の漏洩損失は大きくなり、前記隙間からの電磁波の漏洩損失は、10ミクロン(0.01mm)あたり約0.06dB程度であることがわかる。
現在の金属加工精度は、約50ミクロン程度である。そのため、特許文献1に示される導波管を構成する金属部材と他の金属部材との間の隙間からの電磁波の漏洩損失は、最悪の場合、少なくとも0.3dB以上であることがわかる。
実際、例えば特許文献2に示されるような円形導波管アレーアンテナの場合、アンテナの小型化を図るために、前記端部に45度のテーパ面を有する金属部材は複数使用されるので、その数の分だけ電磁波の漏洩損失が増加し、前記円形導波管アレーアンテナの損失、性能に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで、本発明は、従来の導波管を構成する金属部材間の隙間から漏洩する電磁波を低減させ、マイクロ波回路素子の1つであるコーナー導波管をより小型で、他の装置または部品と一緒にコンパクトに加工または組み立てられる構造および電磁波漏洩損失の少ないコーナー導波管を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するために、本発明の第1コーナー導波管は、導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成された第1の金属板と、導波管断面と同寸法の開口部を有する第2の金属板と、端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒とを有し、方形溝と開口部とが直交するように、第1の金属板の表面に第2の金属板が配置されることにより方形溝と第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、第2の金属板の開口部が第2の導波管となり、第1の導波管と第2の導波管とがE分岐を構成し、第1の導波管と第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、コーナー反射棒のテーパ面を配置し、それぞれの軸線がテーパ面との入射角が45度になるように、コーナー反射棒が方形溝に嵌め込まれ、第1の導波管の軸線と垂直に、また第2の導波管の軸線と平行に、コーナー反射棒本体に、第1の金属板および第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とする。
本発明の第2コーナー導波管は、導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成された第1の金属板と、導波管断面と同寸法の開口部を有する第2の金属板と、端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒とを有し、方形溝と開口部とが直交するように、第1の金属板の表面に第2の金属板が配置されることにより方形溝と第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、第2の金属板の開口部が第2の導波管となり、第1の導波管と第2の導波管とがH分岐を構成し、第1の導波管と第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、コーナー反射棒のテーパ面を配置し、それぞれの軸線がテーパ面との入射角が45度になるように、コーナー反射棒が方形溝に嵌め込まれ、第1の導波管の軸線と垂直に、また第2の導波管の軸線と平行に、コーナー反射棒本体に、第1の金属板および第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とする。
本発明の第3コーナー導波管は、導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成されたものであり、方形溝に直交するように貫通した、導波管断断面と同寸法の開口部を有する第1の金属板と、第2の金属板と、端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒とを有し、第1の金属板の表面に第2の金属板が配置されることにより方形溝と第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、第1の金属板の開口部が第2の導波管となり、第1の導波管と第2の導波管とがE分岐を構成し、第1の導波管と第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、コーナー反射棒のテーパ面を配置し、それぞれの軸線がテーパ面との入射角が45度になるように、コーナー反射棒が方形溝に嵌め込まれ、第1の導波管の軸線と垂直に、また第2の導波管の軸線と平行に、コーナー反射棒本体に、第1の金属板および第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とする。
本発明の第4コーナー導波管は、導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成されたものであり、方形溝に直交するように貫通した、導波管断断面と同寸法の開口部を有する第1の金属板と、第2の金属板と、端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒とを有し、第1の金属板の表面に第2の金属板が配置されることにより方形溝と第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、第1の金属板の開口部が第2の導波管となり、第1の導波管と第2の導波管とがH分岐を構成し、第1の導波管と第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、コーナー反射棒の前記テーパ面を配置し、それぞれの軸線がテーパ面との入射角が45度になるように、コーナー反射棒が方形溝に嵌め込まれ、第1の導波管の軸線と垂直に、また第2の導波管の軸線と平行に、コーナー反射棒本体に、第1の金属板および第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とする。
本発明によれば、導波管を構成する金属部材間の隙間からの漏洩電磁波を低減させることができ、コーナー導波管を小型にして、他の装置や部品等と一緒にコンパクトな加工または組み立てやすい構造および電磁波漏洩損失の少ないコーナー導波管を提供することができる。
第1実施形態のコーナー反射棒および金属ピンを詳細に説明する構成図である。 従来の45度のテーパ面を有するEコーナー導波管またはHコーナー導波管の構成を示す構成図である。 従来の−45度のテーパ面を有するEコーナー導波管またはHコーナー導波管の構成を示す構成図である。 従来のコーナー導波管の内部構造を示す導波管軸線に沿った断面図である。 従来技術の45度のテーパ面を有する金属部材と他の金属部材の間にある隙間から漏れる電磁波の様子を示す図である。 電磁波の漏洩損失のシミュレーション結果を示す図である。 第1実施形態のEコーナー導波管の構成を示す構成図である。 第2実施形態のEコーナー導波管の構成示す構成図である。 受け穴の簡易等価回路を示す図である。 関数y=x/Log(x)のグラフである。 第3実施形態のコーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第3実施形態の変形実施形態のコーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第4実施形態のHコーナー導波管の構成を示す構成図である。 第4実施形態のコーナー反射棒および金属ピンを詳細に説明する構成図である。 第4実施形態の組み立て改善型Hコーナー導波管の構成示す構成図である。 第4実施形態の一体化コーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第4実施形態の変形実施形態のコーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第5実施形態のEコーナー導波管の構成を示す構成図である。 第5実施形態のコーナー反射棒および金属ピンを詳細に説明する構成図である。 第5実施形態の組み立て改善型Eコーナー導波管の構成示す構成図である。 第5実施形態の一体化コーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第5実施形態の変形実施形態のコーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第6実施形態のHコーナー導波管の構成を示す構成図である。 第6実施形態のコーナー反射棒および金属ピンを詳細に説明する構成図である。 第6実施形態の組み立て改善型Hコーナー導波管の構成示す構成図である。 第6実施形態の一体化コーナー反射棒の構成を示す構成図である。 第6実施形態の変形実施形態のコーナー反射棒の構成を示す構成図である。
以下では、本発明のコーナー導波管を適用した実施形態を例示する。以下で説明する実施形態のコーナー導波管は、後述するように直交する導波管のコーナーに嵌め込まれる棒状の金属部材を備える。この金属部材は、導波管のコーナーにおいて電磁波の伝搬路を導波管軸線に沿って直角に曲げるために、端部に電磁波を反射させる45度または−45度(または135度)のテーパ面を有する金属角材である。そこで、以下に例示する実施形態では、この金属部材を「コーナー反射棒」と呼ぶことにする。前記コーナー反射棒の断面は本来、導波管の断面と同じ寸法であるが、嵌め込む作業が容易に行えるためにわずかに数十ミクロン導波管の断面より小さく加工する必要がある。
(A)第1実施形態
以下では、本発明のコーナー導波管の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
第1実施形態では、端部に45度のテーパ面を有するコーナー反射棒を備えたEコーナー導波管の構造を例示する。
(A−1)第1実施形態の構成
図7は、第1実施形態のEコーナー導波管100Aの構成を示す構成図である。
図7(A)は、Eコーナー導波管100Aの外観図である。図7(A)において、111は、導波管断面の短辺bより十分な厚みを有する第1の金属板である。第1の金属板111は、その表面に方形溝が形成され、その幅は導波管断面の長辺aに、その深さは導波管断面の短辺bにそれぞれ等しい。また、第1の金属板111の上に第2の金属板112を重ねると、前記方形溝は導波管113となる。114は、前記第2の金属板112を貫通する導波管の開口である。この導波管114の寸法は導波管断面の寸法と同じである。また導波管114は、前記導波管113と直交しており、E分岐のような配置になっている。115は、電磁波の伝搬方向を示す。なお、図7(A)では、導波管113と導波管114の出入り口における電磁波の伝搬方向のみを示す。
図7(B)は、Eコーナー導波管100Aの導波管軸線に沿った断面図である。
121は、端部に45度のテーパ面を有するコーナー反射棒である。コーナー反射棒121は、導波管幅と同じ幅aと、導波管深さと同じ厚みbの金属角材である。コーナー反射棒121は、導波管131から伝搬してきた電磁波を45度のテーパ面で反射し、導波管114に伝搬するように電磁波の伝搬方向115を直角に屈曲させ、または導波管114から伝搬してきた電磁波を45°のテーパ面で反射し、導波管113に伝搬するように電磁波の伝搬方向115を直角に屈曲させる。
122は、コーナー反射棒121を貫通し、両端は第1の金属板111および第2の金属板112の中まで押し込む金属ピンである。金属ピン122は、導波管幅と同じ幅aを有するコーナー反射棒121の幅の略2/3以下の直径を有する円柱の形状をしている。また、金属ピン122の長さは、両端が第1の金属板111および第2の金属板112の中まで挿し込めるために、少なくとも導波管断面の短辺b、すなわちコーナー反射棒121の厚みbより長く、例えばb+2×400ミクロン以上程度である。金属ピン122は、すでに貫通穴を開けられたコーナー反射棒121に挿し込んで、突き出ている両先端を、第1の金属板111および第2の金属板112に設けられた受け穴に挿し込んで、コーナー反射棒を固定する。
123は、コーナー反射棒121と第2の金属板112との間に生じる隙間である。また、124は、コーナー反射棒121と第1の金属板111との間に生じる隙間である。隙間123および隙間124は一種の薄い導波管となり、その幅はaであり、導波管113または導波管114の幅と同じなので、この隙間123および隙間124の管内波長もλgである。
図7(C)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。ここでは、131は第1の金属板に設けられた受け穴であり、132は第2の金属板112に設けられた受け穴である。受け穴131および受け穴132は、コーナー反射棒121に挿し込んで、突き出ている金属ピン122の両端を受け止めるものであり、金属ピン122を固定するのに好都合である。また、受け穴131および受け穴132の寸法は、金属ピン122を固定することができれば、金属ピン122の寸法よりわずかに大きくするだけで良い。また、金属ピン122を通して、第1の金属板111、コーナー反射棒121および第2の金属板は受け穴131および受け穴132において完全に電気的接続することになる。
図1は、コーナー反射棒121および金属ピン122を詳細に説明するための構成図である。
図1(A)は、金属ピン122をコーナー反射棒121に挿し込む前の図である。141はコーナー反射棒121に金属ピン122が挿し込む貫通穴である。ここで、貫通穴141の中心軸は、理論的には、導波管114とコーナー反射棒121とが接触する位置(この位置を基準点142および基準点143と呼ぶ)から、それぞれ管内波長λgの半波長に正の整数倍した位置とすることが望まれる。これにより、それぞれの隙間123および隙間124に漏洩した電磁波を極力に遮断することができるからである。しかし、基準点142および基準点143は互いに45度のテーパ面を挟んで離れており、例えば、基準点143は図中の手前の方にあり、基準点144は図中の奥側の方に位置している。そのため、貫通穴141の中心軸の位置を、それぞれの基準点143および基準点144から管内波長λgの半波長に正の整数倍した位置とすることは困難である。したがって、第1の実施形態では、コーナー反射棒121のテーパ面の中心、すなわち基準点142および基準点143の中心の位置に中心基準点144を設け、この中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、貫通穴141の中心軸の位置がくるように設ける。
また、金属ピン122を貫通させる貫通穴144の中心軸の位置は、高い加工技術が必要である。なぜなら、管内波長λgが短いからである。そこで、金属ピン122の中心軸の位置の誤差範囲として、管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置を中心に、管内波長λgの略10%前後の長さの範囲内に位置する場合でも、漏洩電磁波を抑制することができる。
また、図1(B)は、金属ピン122がコーナー反射棒121に挿し込んだ状態の断面図である。145は、電磁波の伝搬路を屈曲させる45度のテーパ面を有する端部である。図1(B)では、金属ピン122の両端がコーナー反射棒121の本体から突き出ていることがわかる。この金属ピン122の突き出し部分の長さは、特に限定されるものではないが、それぞれ約400ミクロン程度突き出している。コーナー反射棒121の本体から突き出た金属ピン122の両端は本発明のコーナー導波管の特性に大きな影響を与える。
(A−2)第1実施形態の動作
次に、第1実施形態のEコーナー導波管100Aを構成する金属部材間の隙間から漏洩する電磁波を抑制する動作について、図7(B)を参照しながら説明する。
例えば、波長λの電磁波が導波管113に入力する。このとき、電磁波は、基本モードTE10で伝搬し、その管内波長λgは式(2)が示すようになる。導波管113に入力した電磁波は、コーナー反射棒121の45度のテーパ面に反射し、伝搬路方向を90度屈曲させ、導波管114の方向に伝搬する。また、逆の場合も同様に、例えば、導波管114から入力した電磁波は、コーナー反射棒121のテーパ面に反射し、伝搬路方向を90度屈曲させ、導波管113の方向に伝搬する。
上記両方の場合ともに、電磁波の一部は、必然的に隙間123および隙間124に漏れこむ。しかし、隙間123および隙間124の中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、金属ピン122が打たれており、第1の金属板111および第2の金属板112とコーナー反射棒121とを短絡させているので、伝送路のインピーダンス変換効果によって、金属ピン122の短絡は、隙間123および隙間124の中心基準点144に生じるのと同じく、ある意味では隙間123および隙間124が、基準点142および基準点143からほぼ埋められて、隙間から電磁波がほぼ漏れなくなるわけである。
具体的に、例えば60GHzの周波数において、常用導波管断面長辺はa=3.76mmであるので、この値を用いて波長λを計算するとλ=4.996mmになり、さらに、式(2)で管内波長λgを計算すると、λg=6.684mmになる。また、一番短い正の整数倍は1であるから、隙間123および隙間124の中心基準点144からλg/2(=3.342mm)の位置に、第1の金属板111および第2の金属板112とコーナー反射棒121を短絡させるために、金属ピン122が打たれているとする。この場合、隙間123および隙間124は管内波長λg=6.684mmの導波管のようになるから、伝送路のインピーダンス変換効果によって、隙間123の基準点142および隙間124の基準点143においてほぼ短絡される効果が生じるので、電磁波の漏洩がほぼ遮断される。
なお、金属ピン122の太さは管内波長λgと比べて無視できない寸法をもっており、しかも、金属ピンは円柱の形状をし、短絡の位置が金属ピンの領域内で生じているので、電磁波の漏洩を抑制できる。
(A−3)第1実施形態の効果
以上のように、第1実施形態によれば、隙間123および隙間124の中心基準点144からN(Nは正の整数)×λg/2の位置に、金属ピン122が打たれて、第1の金属板111および第2の金属板112とコーナー反射棒121とを短絡させるので、伝送路のインピーダンス変換効果によって、金属ピン122の短絡は隙間123の基準点142および前記隙間124の基準点143に生じるのとほぼ同じく、ある意味では隙間123が基準点142、隙間124が基準点143から埋められて、存在しなくなる。したがって、存在していない隙間から電磁波が漏れなくなり、従来の構造で発生していた電磁波の漏洩損失が除去できる。
(B)第2実施形態
次に、本発明のコーナー導波管の第2の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
第1実施形態の図7(C)において、金属ピン122の両端を受け止めるために、第1の金属板111および第2の金属板112に、受け穴131および受け穴132を設けた。この受け穴131および受け穴132は、第1実施形態では、基本的には同じ寸法と形状である場合を説明した。
しかし、第1実施形態の受け穴131および受け穴132の寸法は、金属ピン122の寸法よりわずかに大きいだけなので、Eコーナー導波管を組み立てるときに、組み立てにくくなることが生じる。これは、例えば、導波管断面幅をa=3.76mmとする場合、金属ピン122の直径を約2.50mm以下とすることが考えられ、非常にスケールが小さくなるため、組み立て精度が求められるからである。
したがって、第2実施形態では、Eコーナー導波管の特性を維持しながら組み立てにくいことを改善するために提案されたものである。例えば、第1の金属板111と第2の金属板112の受け穴のうち、どちらかの受け穴の寸法を大きくする。
(B−1)第2実施形態の構成
図8は、第2実施形態のEコーナー導波管100Bの構成を示す構成図である。
図8(A)は、Eコーナー導波管100Bの導波管軸線に沿った断面図である。第2の実施形態のEコーナー導波管100Bは、基本的には図7(B)に示す構成に類似するが、異なる点は、第1の金属板111および第2の金属板112に設けられた受け穴511および受け穴512の構造である。そこで、以下では、第2実施形態の特徴である受け穴511および受け穴512の構造を中心に詳細に説明する。
図8(A)において、511は、第1の金属板111に設けられた受け穴である。受け穴511は、第1実施形態の受け穴131と同じ寸法である。512は、第2の金属板112に設けられた受け穴である。受け穴512は、金属ピン122の半径に比べて、略2倍程度の半径とする。金属ピン122はコーナー反射棒121を貫通し、金属ピン122の下部の先端は、第1の金属板111の受け穴511に挿し込み短絡し、金属ピン122の上部の先端は、第2の金属板112の受け穴512に挿し込むが、第2金属板と接触していない。ここで、前記受け穴512の半径は、金属ピン122の半径よりかなり大きいので、Eコーナー導波管100Bの組み立ては、第1実施形態に比べて簡単になるという利点がある。また、コーナー反射棒121から突き出ている金属ピン122の上部の先端は略400ミクロンに調整されるが、第2の金属板112の受け穴512の天井に接触しないようにする。そこで、第2実施形態では、金属ピン122の上部の先端と受け穴512の天井との間に隙間dの間隔を空けるようにする。
図8(B)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。ここでは、受け穴511の寸法は第1の実施形態の受け穴131のそれと同じく変わらないが、受け穴512の寸法は第1の実施形態の受け穴132の寸法より略2倍大きいことがわかる。また、前記第1の金属板111および第2の金属板112と前記コーナー反射棒121の間に生じた隙間は幅aの薄い方形導波管となり、条件によって漏洩電磁波の伝送路となる。さらに、受け穴512の高さLは使用周波数の波長λの略1/4以上とする。受け穴512の中に露出している金属ピン122の先端部分は構造的に同軸線路になっているので理論的に受け穴512の中の管内波長と使用周波数の波長は同じであるから受け穴512の高さLの寸法を使用周波数での波長λで表すことができる。ちなみに、受け穴512の管内波長と導波管の管内波長λgは同じものではない。
図8(C)は、Eコーナー導波管の内部構造、寸法などを詳細に説明する断面図である。図8(C)において、受け穴512の中心に、金属ピン122の上部の先端が挿し込まれている。また、金属ピン122の上部の先端と受け穴512の天井との間に間隔dが空いている。
このとき、金属ピン122の先端が受け穴512に挿入され、受け穴512の空洞に静電容量Cが発生するが、電磁波の周波数によってCのインピーダンスが変化するので漏洩電磁波が発生することがある。そこで、受け穴512に発生する静電容量Cの値を検証し、以下のようにして漏洩電磁波を抑制する。
図9は、前記隙間123および受け穴512の簡易等価回路を示す図である。ここでは、61は前記静電容量C、62は入出力線路となる前記隙間123を示す。61は62と直列に接続し、電磁波の周波数と前記静電容量Cの値によって61のインピーダンスが変わり、インピーダンスは大きくなるときは電磁波の漏洩が抑制され、逆にインピーダンス小さくなるときは電磁波の漏洩が増加するわけである。すなわち、同じ周波数において、前記静電容量Cの値は小さいほど電磁波の漏洩が抑制され、逆に前記静電容量Cの値は大きいほど電磁波の漏洩が増加する。
例えば、金属ピン122の半径はr、受け穴512の半径と高さはそれぞれRとL、露出している金属ピン122の最上先端と受け穴511の天井との間隔はdとすれば、Lは略λ/4であるときに前記静電容量Cは次の近似式で与えられる。
Figure 2011176726
式(3)からわかるように、静電容量Cの値はほぼ金属ピン122の半径rに比例して増加していくが、Rとrとの関係およびrとdとの関係はある条件に近づくとCの値は急に増加することがある。静電容量Cが増加するということは図9が示すように61のインピーダンスが段々小さくなるから電磁波も伝送路62を通して伝搬しやすくなるので、電磁波漏洩が増加するわけである。
式(3)の第2項には、(R/r)/Log(R/r)の項が含まれており、静電容量Cの特性を検証するには、第1項および第3項は小さい値であるから、(R/r)/Log(R/r)の変化を調べればよい。そこで、関数y=x/Log(x)の特性を検証する。
図10は、関数y=x/Log(x)の特性を示すグラフである。ここでは、71はx=1における漸近線を示し、72はx=2.1付近のyの位置を示し、73はx=eにおけるyの極小値を示し、74はx=eにおけるyのグラフの曲率変化点である。x=1付近、すなわちR≒rのときにyの値は急激に無限大に向かって増加し、式(3)の静電容量Cの値も無限大に近づくことがわかる。一方、72付近、すなわち略x≧2.1以降から広範囲でyの値の変化はあまりなく、極小値73を通過し、曲率変化点74を過ぎてもほぼy=4以下であり、式(3)の第2項は第1項と第3項の和の略5%以下で無視可能な値である。したがって、R≧2.1×rでは、Rによる静電容量Cの変化はほとんどないといえるわけである。すなわち、前記受け穴512の半径Rは前記金属ピンの半径rの略2倍以上にすれば、式(3)の静電容量Cの値はほとんど前記金属ピン122の半径rに比例し、rを小さくすれば式(3)の静電容量Cの値も小さくなって、図9の等価回路の61のインピーダンスも増加し、ほぼ開放状態になり、電磁波の漏洩が徐々に抑制されていくわけである。
また、前記受け穴512の半径Rは前記金属ピンの半径rの略2倍以上にすれば、静電容量Cの値が小さくなることが分かるが、例えば、金属ピン122の半径rを小さくしすぎるとコーナー反射棒121の固定強度が弱くなる問題があるのでその半径rは少なくとも略0.4mm以上、すなわち金属ピン122の直径は略0.8mm以上が望ましいわけである。また、受け穴512の半径Rは金属ピンの半径rの略2倍以上とする。
(B−2)第2実施形態の動作
次に、第2実施形態のEコーナー導波管100Bを構成する金属部材間の隙間から漏洩する電磁波を抑制する動作について、図8(A)を参照しながら説明する。
例えば、波長λの電磁波が導波管113に入力されると、電磁波は、基本モードTE10で伝搬し、その管内波長λgは式(2)が示すようになる。コーナー反射棒121の45度のテーパ面において、前記入力電磁波は反射し、伝搬路を90度屈曲させ、導波管114の方向に伝搬する。また、逆の場合も、例えば導波管114から電磁波が入力されると、コーナー反射棒121の45度のテーパ面において、入力電磁波は反射し、伝搬路を90度屈曲させ、導波管113の方向に伝搬する。
上記両方の場合とも、隙間123および隙間124から必然的に伝搬する電磁波の一部は漏れるが、隙間123および隙間124の中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に短絡となる金属ピン122が、第1の金属板111とコーナー反射棒121に打たれて、受け穴511で短絡されるので、伝送路のインピーダンス変換効果によって、前記金属ピン122の短絡は隙間124の中心基準点144に生じるのと同じく、ある意味では前記隙間124が前記基準点143からほぼ埋められて、隙間から電磁波がほぼ漏れなくなるわけである。
一方、組み立て作業を容易に行えるために、前記隙間123と直結する第2の金属板112の受け穴512が、コーナー反射棒121から突き出た金属ピン122の先端と接触せず、図8(C)に示すように、受け穴512の寸法より小さい金属ピン122の先端がその真ん中に立つだけである。したがって、組み立て作業は行いやすくなるが、隙間123はさらに広がり、電磁波の漏洩は避けられない。しかし、式(3)、図9および図10を用いて説明してきたように、受け穴512と金属ピン122の寸法と位置関係はある条件を満たせば隙間123を伝って電磁波の漏洩はほぼ発生しないことがわかる。本実施形態ではこの条件に基づいて設計されたEコーナー導波管100Bである。
具体的に、例えば60GHzの周波数において、常用導波管断面長辺はa=3.76mmであるので、この値を用いて波長λを計算するとλ=4.996mmになり、さらに、式(2)で管内波長λgを計算すると、λg=6.684mmになる。また、一番短い管内波λgの半波長の正の整数倍はλg/2なので、隙間123および隙間124の中心基準点144からλg/2(=3.342mm)の位置に、第1の金属板111とコーナー反射棒121を短絡させるために、金属ピン122は受け穴511で打たれるが、隙間124は管内波長λg=6.684mmの導波管のようになるから伝送路のインピーダンス変換効果によって隙間124の基準点143はほぼ短絡されて電磁波の漏洩がほぼ遮断される。
また、第2の金属板112に設けられる受け穴512は、金属ピン122の半径rの略2倍程度の半径Rと高さLを有する円筒形空洞である。ここでは、例えば、r=0.8mm、R=1.7mm、L=1.2mm、コーナー反射棒121から突き出た金属ピン122の先端の高さを0.4mmとする。Rとrの比率は略2倍程度なので、式(3)、図9および図10で説明してきたように、隙間123はほぼ開放状態になり、漏洩電磁波が抑制されるわけである。
したがって、電磁波が導波管113に入力されると、コーナー反射棒121において隙間123および隙間124からほとんど漏洩せず導波管114に伝搬し、またその逆の過程も同じである。
(B−3)第2実施形態の変形実施形態
(B−3−1)第2実施形態の第2の金属板112に設けられた受け穴512の形状は円筒形で、その天井は平らである。しかし、ここでは受け穴512の天井を内部からみた半球形や半楕円体形または略半球形や略半楕円体形のドーム型、あるいはペンシル先型(または円錐型)のように加工するようにしても良い。
動作は第2実施形態の動作と同様であるが、コーナー反射棒121から突き出た金属ピン122の先端と受け穴の天井との間の静電容量Cが小さくなるので、図9の61のインピーダンスはさらに大きくなる。
式(3)の静電容量Cの値がさらに小さくなると、図9に示された等価回路の開放状態はさらによくなり、電磁波の漏洩の抑制もさらに改善される。
(B−3−2)第2実施形態および前記変形例の金属板112に設けられた受け穴512を第1の金属板111に設け、前記受け穴511を第2の金属板112に設けるようにしても良い。すなわち、前記受け穴511および前記受け穴512の位置を交換する。
前記受け穴511および前記受け穴512の位置が交換されるが、前記隙間124および隙間123は同じなので位置交換は不要である。したがって、前記金属ピン122の上部の先端は第2の金属板112の受け穴511の中に挿し込んで短絡するが、下部の先端は、金属ピン122より半径を略2倍程度に大きくされた第1の金属板111の受け穴512の中に挿し込んでいる。コーナー反射棒121から突き出ている金属ピン122の下部の先端は略400ミクロンに調整され、前記第1の金属板111の受け穴512の底に接触しない。
ここでは、前記受け穴511および前記受け穴512の位置が交換されるので、前記金属ピン122の上部の先端は第2の金属板112の受け穴511の中に挿し込んで短絡するから伝送路のインピーダンス変換効果によって、前記金属ピン122の短絡は隙間123の中心基準点144に生じるのと同じく、ある意味では前記隙間123が前記基準点142から埋められて、存在しなくなる。したがって、存在していない隙間から電磁波が漏れなくなるわけである。
一方、組み立て作業を容易に行えるために、前記隙間124と直結する第1の金属板111の受け穴512が、コーナー反射棒121から突き出た金属ピン122の先端と接触せず、受け穴512の寸法より小さい金属ピン122の先端がその真ん中に立つだけである。したがって、組み立て作業は行いやすくなるが、隙間124はさらに広がり、電磁波の漏洩は避けられない。しかし、式(3)、図9および図10を説明してきたように、受け穴512と金属ピン122の寸法と位置関係はある条件を満たせば隙間124を伝って電磁波の漏洩はほぼ発生しないことがわかる。
したがって、電磁波が導波管113に入力されると、コーナー反射棒121において隙間123および隙間124からほとんど漏洩せず導波管114に伝搬し、またその逆の過程も同じである。
このように、前記金属ピン122の受け穴511と受け穴512の位置を交換し、電磁波の漏洩抑制は第2実施形態および前記変形例の場合と同じであるが、別の構造になっているので、利用範囲は広くなる効果がある。
(B−4)第2実施形態の効果
以上のように、第2実施形態によれば、金属ピン122の両端の受け穴のどちらかを大きくすることによって、第1実施形態のEコーナー導波管を組み立てる作業は容易に行え、しかも、電磁波の漏洩もなく、Eコーナー導波管の特性も変わらない。
組み立てやすいということは、製品の製造にとって極めて重要なことで、製品の低価格化および品質向上につながる。例えば、第2実施形態のようなEコーナー導波管を複数必要とする、例えば円形導波管アレーアンテナの構成にはその効果は顕著である。
(C)第3実施形態
次に、本発明のコーナー導波管の第3実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(C−1)第3実施形態の構成
第3実施形態は、第1および第2実施形態を踏まえた実施形態である。第1および第2実施形態と異なる点は、コーナー反射棒と金属ピンに相当する突起とを一体化する点である。加工する段階で、ひとつの金属の塊から、金属ピンに相当する突起を有するコーナー反射棒を削り出し、ひとつの部品として加工することである。
図11は、第3実施形態のコーナー反射棒の構成を示す断面図である。ここでは、81はコーナー反射棒本体、82は、隙間123および124から漏洩した電磁波を遮断するために、コーナー反射棒本体81に設けられた突起であり、例えば円筒形突起である。突起82は、本来別に加工された金属ピンでコーナー反射棒に挿し込んで両側に突き出た先端だったが、コーナー反射棒と金属ピンが一体となるように加工することで作製できるのでコーナー反射棒本体81から突き出た突起になっている。
第3実施形態は、コーナー反射棒81を、前述した第1実施形態、第2実施形態および変形実施形態のそれぞれのコーナー反射棒121と金属ピン122の代わりに使用することである。
(C−2)第3実施形態の効果
このように前記コーナー反射棒121と前記金属ピン122を加工する段階から一体化することで、まず部品点数がひとつ減り、前記コーナー反射棒121に前記金属ピン122を挿し込むための貫通穴141の加工も不要になり、ピンの寸法や位置を加工段階から精密に設定することができるのでかなりの手間が省き、低価格化に貢献できる。
(C−3)第3実施形態の変形実施形態
第3実施形態では、コーナー反射棒81の上部と下部にある突起82の位置は、45度のテーパ面に設けられた中心基準点144から管内波長λgの正の整数倍の位置にある。しかし、これは、第1および第2実施形態のときにコーナー反射棒121を貫通穴141の中心軸と前記中心基準点144との距離であって、隙間123の基準点143および隙間124の基準点142からの距離ではない。
すなわち、便宜上、一本の金属ピン122を前記コーナー反射棒121の貫通穴141に挿し込んで、隙間123および隙間124からの漏洩電磁波を同時に遮断するために、両隙間の基準点の中心に中心基準点144を設け、そこから前記金属ピン122の軸心、すなわち貫通穴141の中心軸までの距離を正の整数倍管内波長λgの半波長にしたわけである。
しかし、厳密にいえば、前記金属ピン122の軸心から隙間123の基準点142までの距離は管内波長λgの半波長の正の整数倍より少し短く、また前記金属ピン122の軸心から隙間124の基準点143までの距離は正の整数倍管内波長λgの半波長より少し長くなる。この短くなる分および長くなる分だけ、本来、インピーダンス変換効果で、前記コーナー反射棒121から突き出た前記金属ピン122の両端において、前記隙間123および隙間124は完全に短絡されるはずであるが、ある程度のインピーダンスが発生し、前記隙間123および隙間124からわずかながら電磁波が漏洩する。
第3実施形態では、コーナー反射棒と金属ピンとを一体化したものであり、1つの金属の塊から削り出すので容易にコーナー反射棒81の上部と下部にある前記突起82の位置を調整できる。
そこで、ここでは、コーナー反射棒81の上部と下部にある前記突起82の位置を、前記中心基準点144からの距離ではなく、実際の隙間123の基準点142および隙間124の基準点143からの距離で突起を設けるようにする。
図12は、第3実施形態の変形実施形態のコーナー反射棒91の構成を示す構成図である。
図12(A)は、コーナー反射棒91の断面図である。図12(A)において、91はコーナー反射棒本体、93はコーナー反射棒91の上部の突起、94は、コーナー反射棒91の下部の突起である。
図12(B)は、コーナー反射棒91に設けられた突起93および突起94の位置を説明するための断面図である。図12(B)において、突起93は、隙間123から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起93の中心から隙間123の基準点142までの距離は、管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。また、突起94も、隙間124から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起94の中心から隙間124の基準点143までの距離も倍管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。
この第3実施形態の変形実施形態は、コーナー反射棒91を、前述した第1実施形態、第2実施形態および変形実施形態のそれぞれのコーナー反射棒121と金属ピン122の代わりに使用することである。
上記のように、コーナー反射棒91の突起93は、隙間123から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起で、その中心から隙間123の基準点142までの距離は正の整数倍管内波長λgの半波長なので、隙間123の基準点142においては完全に短絡され、電磁波の漏洩も完全に遮断されるわけである。また、突起94も隙間124から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起で、その中心から隙間124の基準点143までの距離は正の整数倍管内波長λgの半波長なので、隙間124の基準点143においては完全に短絡され、電磁波の漏洩も完全に遮断されるわけである。
このように、コーナー反射棒および金属ピンを一体化し、ひとつの金属の塊から削り出すから、突起93の中心と突起94の中心を容易に別々に設定することが可能なので、それぞれの突起の中心を、以前のように中心基準点144からではなくて、実際にそれぞれの隙間の基準点から管内波長λgの半波長の正の整数倍の距離にすることが可能になった。
結果的に、この第3実施形態の変形実施形態は、以前より隙間123および隙間124からの漏洩電磁波を強力に遮断し、Eコーナー導波管の高性能化、低価格化に大きく貢献できる。
(D)第4実施形態
以下では、本発明のコーナー導波管の第4実施形態について図面を参照しながら説明する。
第1〜第3実施形態では、端部に45度のテーパ面を有するコーナー反射棒を有するEコーナー導波管を例示して説明したが、第4実施形態では、端部に45度のテーパ面を有するコーナー反射棒を備えるHコーナー導波管の構造を例示する。
第4実施形態では、Eコーナー導波管に代えてHコーナー導波管となるが、基本的な概念や構造などは第1〜第3実施形態と同様である。
(D−1)基本構成
図13は、第4実施形態のHコーナー導波管100Cの構成を示す構成図である。
図13(A)は、Hコーナー導波管100Cの外観図である。ここでは、第1の金属板111の表面に形成される方形溝が導波管断面の寸法となっており、方形溝の幅が導波管断面の短辺bに等しく、方形溝の深さが導波管断面の長辺aに等しい。また、第1の金属板111の上に第2の金属板112を重ねると、前記方形溝は導波管113となり、第2の金属板112の導波管114は、前記導波管113と直交しており、H分岐のような配置になっている。
図13(B)は、Hコーナー導波管100Cの導波管軸線に沿った断面図である。コーナー反射棒121は、端部に45度のテーパ面を有しており、導波管幅と同じ幅bと導波管高さと同じ厚みaの金属角材である。金属ピン122は、コーナー反射棒121を貫通し、両端が第1の金属板111および第2の金属板112に挿し込まれる。また、金属ピン122は、コーナー反射棒121の幅bの略2/3以下程度の直径とする円柱形状である。さらに、金属ピン122の長さは、コーナー反射棒121の厚みaより長く、例えばa+2×400ミクロン以上程度である。
図13(C)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。ここでは、受け穴131および受け穴132は、コーナー反射棒121に挿し込み突き出した金属ピン122の両端を受け止めるものである。また、受け穴131および132の寸法は、金属ピン122の寸法よりわずかに大きい。
図14は、コーナー反射棒121および金属ピン122を詳細に説明するための構成図である。図14(A)は、金属ピン122をコーナー反射棒121に挿し込む前の図であり、図14(B)は、金属ピン122がコーナー反射棒121に挿し込んだ状態の断面図である。
コーナー反射棒121の貫通穴141の中心軸は、隙間123の基準点142と隙間124の基準点143との中心にある中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍した位置に設けることとする。この点については、第1実施形態でも説明したが、インピーダンス変換効果により漏洩電磁波を遮断するためには、理論上は、基準点142および基準点143のそれぞれから管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、貫通穴141の中心軸があることが望ましいが、便宜上、中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍した位置に貫通穴141の中心軸を設定した。
このように、隙間123および隙間124の中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、金属ピン122が打たれており、第1の金属板111および第2の金属板112とコーナー反射棒121とを短絡させているので、伝送路のインピーダンス変換効果によって、金属ピン122の短絡は、隙間123および隙間124の中心基準点144に生じるのと同じく、ある意味では隙間123および隙間124が、基準点142および基準点143からほぼ埋められて、隙間から電磁波がほぼ漏れなくなるわけである。
(D−2)受け穴の構成
ここでは、Hコーナー導波管の特性を維持しながら、Hコーナー導波管の組み立て作業を容易にするために、第2実施形態と同様にして、第2の金属板112の受け穴の半径を金属ピン122の半径の約2倍以上程度大きくする場合を例示する。
図15は、第4実施形態のHコーナー導波管100Dの構成を示す構成図である。図15(A)は、Hコーナー導波管100Dの導波管軸線に沿った断面図であり、図15(B)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。
図15(A)および図15(B)において、511は、第1の金属板111に設けられた受け穴である。512は、第2の金属板112に設けられた受け穴である。受け穴512は、金属ピン122の半径に比べて、略2倍程度の半径とする。前記受け穴512の半径は、金属ピン122の半径よりかなり大きいので、Eコーナー導波管100Bの組み立ては、(D−1)で説明した構成に比べて簡単になるという利点がある。
図15(C)は、Hコーナー導波管100Dの内部構造、寸法などを詳細に説明する断面図である。ここでは、金属ピン122の先端が受け穴512に挿入され、受け穴512の空洞に静電容量Cが発生する。そこで、第2の実施形態で検証したように、静電容量Cの値を小さくして、図9の等価回路の61のインピーダンスを増大させて、開放状態になり、電磁波の漏洩を抑制するようにする。
第2の実施形態で式(3)、図9および図10を用いて説明してきたように、受け穴512と金属ピン122の寸法と位置関係はある条件を満たせば隙間123を伝って電磁波の漏洩はほぼ発生しないことがわかる。すなわち、第2の金属板112の受け穴512は、金属ピン122の半径rの略2倍程度の半径Rを有するとき、Rとrの比率は略2倍程度なので、式(3)、図9および図10で説明してきたように、隙間123はほぼ開放状態になり、漏洩電磁波が抑制されるわけである。
したがって、例えば、電磁波が導波管113に入力されると、コーナー反射棒121において隙間123および隙間124からほとんど漏洩せず導波管114に伝搬し、またその逆の過程も同じである。
なお、第2の金属板112に設けられた受け穴512の天井の形状は、平らであっても良いし、内部からみて半球形や半楕円体形または略半球形や略半楕円体形のドーム型、あるいはペンシル先型(または円錐型)のように加工するようにしても良い。
また、第2の金属板112に設けられた受け穴512を第1の金属板111に設け、前記受け穴511を第2の金属板112に設けるようにしても良い。
(D−3)コーナー反射棒および突起の一体型
ここでは、第3実施形態のように、Hコーナー導波管を構成するコーナー反射棒について、コーナー反射棒と金属ピンに相当する突起とを一体化する場合を例示する。
図16は、コーナー反射棒の構成を示す断面図である。図16に示すように、コーナー反射棒本体81は、隙間123および124から漏洩した電磁波を遮断するために、突起82を有する。
(D−4)コーナー反射棒の突起の変形構成
図17は、コーナー反射棒91の構成を示す構成図である。ここでは、第3実施形態の変形実施形態のように、コーナー反射棒81の上部と下部にある突起82の位置を、中心基準点144からの距離ではなく、実際の隙間123の基準点142および隙間124の基準点143からの距離で突起を設けるようにする。
図17(A)は、コーナー反射棒91の断面図であり、図17(B)は、コーナー反射棒91に設けられた突起93および突起94の位置を説明するための断面図である。
図17(B)において、突起93は、隙間123から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起93の中心から隙間123の基準点142までの距離は、管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。また、突起94も、隙間124から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起94の中心から隙間124の基準点143までの距離も倍管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。
このように、コーナー反射棒および金属ピンを一体化し、ひとつの金属の塊から削り出すから、突起93の中心と突起94の中心を容易に別々に設定することが可能なので、それぞれの突起の中心を、以前のように中心基準点144からではなく、実際にそれぞれの隙間の基準点から管内波長λgの半波長の正の整数倍の距離にすることが可能になった。
結果的に、以前より隙間123および隙間124からの漏洩電磁波を強力に遮断し、Hコーナー導波管の高性能化、低価格化に大きく貢献できる。
(E)第5実施形態
以下では、本発明のコーナー導波管の第5実施形態について図面を参照しながら説明する。
第1〜第3実施形態では、端部に45度のテーパ面を有するコーナー反射棒を有するEコーナー導波管を例示して説明したが、第5実施形態では、端部に−45度(または135度)のテーパ面を有するコーナー反射棒を備えるEコーナー導波管の構造を例示する。
第5実施形態では、コーナー反射棒のテーパ面の角度が−45度(または135度)となるが、基本的な概念や構造などは第1〜第3実施形態と同様である。
(E−1)基本構成
図18は、第5実施形態のEコーナー導波管100Eの構成を示す構成図である。
図18(A)は、Eコーナー導波管100Eの外観図である。ここでは、第1の金属板111は、その表面に方形溝と、その方形溝と直交して導波管断面の寸法と同じ寸法で裏面まで貫通する開口部とを有する。この開口部が導波管114に相当する。第1の金属板111の方形溝は、導波管断面の寸法となっており、方形溝の幅が導波管断面の長辺aに等しく、方形溝の深さが導波管断面の短辺bに等しい。また、第1の金属板111の上に第2の金属板112を重ねると、第1の金属板111の方形溝は導波管113となる。
図18(B)は、Eコーナー導波管100Eの導波管軸線に沿った断面図である。コーナー反射棒121は、端部に−45度(または135度)のテーパ面を有しており、導波管幅と同じ幅aと導波管高さと同じ厚みbの金属角材である。金属ピン122は、コーナー反射棒121を貫通し、両端が第1の金属板111および第2の金属板112に挿し込まれる。また、金属ピン122は、コーナー反射棒121の幅aの略2/3以下程度の直径とする円柱形状である。さらに、金属ピン122の長さは、コーナー反射棒121の厚みbより長く、例えばb+2×400ミクロン以上程度である。
図18(C)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。ここでは、受け穴131および受け穴132は、コーナー反射棒121に挿し込み突き出した金属ピン122の両端を受け止めるものである。また、受け穴131および132の寸法は、金属ピン122の寸法よりわずかに大きい。
図19は、コーナー反射棒121および金属ピン122を詳細に説明するための構成図である。図19(A)は、金属ピン122をコーナー反射棒121に挿し込む前の図であり、図19(B)は、金属ピン122がコーナー反射棒121に挿し込んだ状態の断面図である。
コーナー反射棒121の貫通穴141の中心軸は、隙間123の基準点143と隙間124の基準点142との中心にある中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍した位置に設けることとする。この点については、第1実施形態でも説明したが、インピーダンス変換効果により漏洩電磁波を遮断するためには、理論上は、基準点143および基準点142のそれぞれから管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、貫通穴141の中心軸があることが望ましいが、便宜上、中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍した位置に貫通穴141の中心軸を設定した。
このように、隙間123および隙間124の中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、金属ピン122が打たれており、第1の金属板111および第2の金属板112とコーナー反射棒121とを短絡させているので、伝送路のインピーダンス変換効果によって、金属ピン122の短絡は、隙間123および隙間124の中心基準点144に生じるのと同じく、ある意味では隙間123および隙間124が、基準点143および基準点142からほぼ埋められて、隙間から電磁波がほぼ漏れなくなるわけである。
(E−2)受け穴の構成
ここでは、Eコーナー導波管の特性を維持しながら、Eコーナー導波管の組み立て作業を容易にするために、第2実施形態と同様にして、第2の金属板112の受け穴の半径を金属ピン122の半径の約2倍以上程度大きくする場合を例示する。
図20は、第5実施形態のEコーナー導波管100Fの構成を示す構成図である。図20(A)は、Eコーナー導波管100Fの導波管軸線に沿った断面図であり、図20(B)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。
図20(A)および図20(B)において、511は、第1の金属板111に設けられた受け穴であり、受け穴131と同じ寸法である。512は、第2の金属板112に設けられた受け穴である。受け穴512は、金属ピン122の半径に比べて、略2倍程度の半径とする。前記受け穴512の半径は、金属ピン122の半径よりかなり大きいので、Eコーナー導波管100Eの組み立ては、(E−1)で説明した構成に比べて簡単になるという利点がある。
図20(C)は、Eコーナー導波管100Fの内部構造、寸法などを詳細に説明する断面図である。ここでは、金属ピン122の先端が受け穴512に挿入され、受け穴512の空洞に静電容量Cが発生する。そこで、第2の実施形態で検証したように、静電容量Cの値を小さくして、図9の等価回路の61のインピーダンスを増大させて、ほぼ開放状態になり、電磁波の漏洩を抑制するようにする。
第2実施形態で式(3)、図9および図10を用いて説明してきたように、受け穴512と金属ピン122の寸法と位置関係はある条件を満たせば隙間123を伝って電磁波の漏洩はほぼ発生しないことがわかる。すなわち、第2の金属板112の受け穴512は、金属ピン122の半径rの略2倍程度の半径Rを有するとき、Rとrの比率は略2倍程度なので、式(3)、図9および図10で説明してきたように、隙間123はほぼ開放状態になり、漏洩電磁波が抑制されるわけである。
したがって、例えば、電磁波が導波管113に入力されると、コーナー反射棒121において隙間123および隙間124からほとんど漏洩せず導波管114に伝搬し、またその逆の過程も同じである。
なお、第2の金属板112に設けられた受け穴512の天井の形状は、平らであっても良いし、内部からみて半球形や半楕円体形または略半球形や略半楕円体形のドーム型、あるいはペンシル先型(または円錐型)のように加工するようにしても良い。
また、第2の金属板112に設けられた受け穴512を第1の金属板111に設け、前記受け穴511を第2の金属板112に設けるようにしても良い。
(E−3)コーナー反射棒および突起の一体型
ここでは、第3実施形態のように、Eコーナー導波管を構成するコーナー反射棒について、コーナー反射棒と金属ピンに相当する突起とを一体化する場合を例示する。
図21は、コーナー反射棒の構成を示す断面図である。ここでは、コーナー反射棒本体81は、隙間123および124から漏洩した電磁波を遮断するために、突起82を有する。
(E−4)コーナー反射棒の突起の変形構成
図22は、コーナー反射棒91の構成を示す構成図である。ここでは、第3実施形態の変形実施形態のように、コーナー反射棒81の上部と下部にある突起82の位置を、中心基準点144からの距離ではなく、実際の隙間123の基準点142および隙間124の基準点143からの距離で突起を設けるようにする。
図22(A)は、コーナー反射棒91の断面図であり、図22(B)は、コーナー反射棒91に設けられた突起93および突起94の位置を説明するための断面図である。
図22(B)において、突起93は、隙間123から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起93の中心から隙間123の基準点143までの距離は、管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。また、突起94も、隙間124から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起94の中心から隙間124の基準点142までの距離も管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。
このように、コーナー反射棒および金属ピンを一体化し、ひとつの金属の塊から削り出すから、突起93の中心と突起94の中心を容易に別々に設定することが可能なので、それぞれの突起の中心を、以前のように中心基準点144からではなくて、実際にそれぞれの隙間の基準点から管内波長λgの半波長の正の整数倍の距離にすることが可能になった。
結果的に、以前より隙間123および隙間124からの漏洩電磁波を強力に遮断し、Eコーナー導波管の高性能化、低価格化に大きく貢献できる。
(F)第6実施形態
以下では、本発明のコーナー導波管の第6実施形態について図面を参照しながら説明する。
第4実施形態では、端部に45度のテーパ面を有するコーナー反射棒を有するHコーナー導波管を例示して説明したが、第6実施形態では、端部に−45度のテーパ面を有するコーナー反射棒を備えるHコーナー導波管の構造を例示する。
第6実施形態では、コーナー反射棒のテーパ面の角度が−45度となり、基本的な概念や構造などは第4実施形態と同様である。
(F−1)基本構成
図23は、第6実施形態のHコーナー導波管100Gの構成を示す構成図である。
図23(A)は、Hコーナー導波管100Gの外観図である。ここでは、第1の金属板111は、その表面に形成される方形溝と、その方形溝と直交して導波管断面の寸法と同じ寸法で裏面まで貫通する開口部とを有する。第1の金属板111の方形溝は、導波管断面の寸法となっており、方形溝の幅が導波管断面の短辺bに等しく、方形溝の深さが導波管断面の長辺aに等しい。また、第1の金属板111の上に第2の金属板112を重ねると、前記方形溝は導波管113となる。
図23(B)は、Hコーナー導波管100Gの導波管軸線に沿った断面図である。コーナー反射棒121は、端部に−45度のテーパ面を有しており、導波管幅と同じ幅bと導波管高さと同じ厚みaの金属角材である。金属ピン122は、コーナー反射棒121を貫通し、両端が第1の金属板111および第2の金属板112に挿し込まれる。また、金属ピン122は、コーナー反射棒121の幅bの略2/3以下程度の直径とする円柱形状である。さらに、金属ピン122の長さは、コーナー反射棒121の厚みaより長く、例えばa+2×400ミクロン以上程度である。
図23(C)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。ここでは、受け穴131および受け穴132は、コーナー反射棒121に挿し込み突き出した金属ピン122の両端を受け止めるものである。また、受け穴131および132の寸法は、金属ピン122の寸法よりわずかに大きい。
図24は、コーナー反射棒121および金属ピン122を詳細に説明するための構成図である。図24(A)は、金属ピン122をコーナー反射棒121に挿し込む前の図であり、図24(B)は、金属ピン122がコーナー反射棒121に挿し込んだ状態の断面図である。
コーナー反射棒121の貫通穴141の中心軸は、隙間123の基準点143と隙間124の基準点142との中心にある中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍した位置に設けることとする。この点については、第1実施形態でも説明したが、インピーダンス変換効果により漏洩電磁波を遮断するためには、理論上は、基準点143および基準点142のそれぞれから管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、貫通穴141の中心軸があることが望ましいが、便宜上、中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍した位置に貫通穴141の中心軸を設定した。
このように、隙間123および隙間124の中心基準点144から管内波長λgの半波長の正の整数倍の位置に、金属ピン122が打たれており、第1の金属板111および第2の金属板112とコーナー反射棒121とを短絡させているので、伝送路のインピーダンス変換効果によって、金属ピン122の短絡は、隙間123および隙間124の中心基準点144に生じるのと同じく、ある意味では隙間123および隙間124が、基準点142および基準点143からほぼ埋められて、隙間から電磁波がほぼ漏れなくなるわけである。
(F−2)受け穴の構成
ここでは、Hコーナー導波管の特性を維持しながら、Hコーナー導波管の組み立て作業を容易にするために、第2実施形態と同様にして、第2の金属板112の受け穴の半径を金属ピン122の半径の約2倍以上程度大きくする場合を例示する。
図25は、第6実施形態のHコーナー導波管100Hの構成を示す構成図である。図25(A)は、Hコーナー導波管100Hの導波管軸線に沿った断面図であり、図25(B)は、コーナー反射棒121および金属ピン122を取り除いた断面図である。
図25(A)および図25(B)において、511は、第1の金属板111に設けられた受け穴であり、受け穴131と同じ寸法である。512は、第2の金属板112に設けられた受け穴である。受け穴512は、金属ピン122の半径に比べて、略2倍程度の半径とする。前記受け穴512の半径は、金属ピン122の半径よりかなり大きいので、Eコーナー導波管100Hの組み立ては、(F−1)で説明した構成に比べて簡単になるという利点がある。
図25(C)は、Hコーナー導波管100Hの内部構造、寸法などを詳細に説明する断面図である。ここでは、金属ピン122の先端が受け穴512に挿入され、受け穴512の空洞に静電容量Cが発生する。そこで、第2実施形態で検証したように、静電容量Cの値を小さくして、図9の等価回路の61のインピーダンスを増大させて、開放状態になり、電磁波の漏洩を抑制するようにする。
第2実施形態で式(3)、図9および図10を用いて説明してきたように、受け穴512と金属ピン122の寸法と位置関係はある条件を満たせば隙間123を伝って電磁波の漏洩はほぼ発生しないことがわかる。すなわち、第2の金属板112の受け穴512は、金属ピン122の半径rの略2倍程度以上の半径Rを有するとき、Rとrの比率は略2倍程度なので、式(3)、図9および図10で説明してきたように、隙間123はほぼ開放状態になり、漏洩電磁波が抑制されるわけである。
したがって、例えば、電磁波が導波管113に入力されると、コーナー反射棒121において隙間123および隙間124からほとんど漏洩せず導波管114に伝搬し、またその逆の過程も同じである。
なお、第2の金属板112に設けられた受け穴512の天井の形状は、平らであっても良いし、内部からみて半球形や半楕円体形または略半球形や略半楕円体形のドーム型、あるいはペンシル先型(または円錐型)のように加工するようにしても良い。
また、第2の金属板112に設けられた受け穴512を第1の金属板111に設け、前記受け穴511を第2の金属板112に設けるようにしても良い。
(F−3)コーナー反射棒および突起の一体型
ここでは、第4実施形態のように、Hコーナー導波管を構成するコーナー反射棒について、コーナー反射棒と金属ピンに相当する突起とを一体化する場合を例示する。
図26は、コーナー反射棒の構成を示す断面図である。図26に示すように、コーナー反射棒本体81は、隙間123および124から漏洩した電磁波を遮断するために、突起82を有する。
(F−4)コーナー反射棒の突起の変形構成
図27は、コーナー反射棒91の構成を示す構成図である。ここでは、第4実施形態の変形実施形態のように、コーナー反射棒81の上部と下部にある突起82の位置を、中心基準点144からの距離ではなく、実際の隙間123の基準点143および隙間124の基準点142からの距離で突起を設けるようにする。
図27(A)は、コーナー反射棒91の断面図であり、図27(B)は、コーナー反射棒91に設けられた突起93および突起94の位置を説明するための断面図である。
図27(B)において、突起93は、隙間123から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起93の中心から隙間123の基準点143までの距離は、管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。また、突起94も、隙間124から漏洩する電磁波を遮断するために設けられた円筒形突起であり、突起94の中心から隙間124の基準点142までの距離も倍管内波長λgの半波長の正の整数倍になっている。
このように、コーナー反射棒および金属ピンを一体化し、ひとつの金属の塊から削り出すから、突起93の中心と突起94の中心を容易に別々に設定することが可能なので、それぞれの突起の中心を、以前のように中心基準点144からではなくて、実際にそれぞれの隙間の基準点から管内波長λgの半波長の正の整数倍の距離にすることが可能になった。
結果的に、以前より隙間123および隙間124からの漏洩電磁波を強力に遮断し、Eコーナー導波管の高性能化、低価格化に大きく貢献できる。
(G)他の実施形態
第1〜第6実施形態で説明したコーナー導波管は、マイクロ波回路やミリ波回路の1つの回路素子として使用できるが、大量生産されている既存のものと比べて高価であろう。しかし、例えば特許文献2に示されたような円形導波管アレーアンテナまたは密集性を必要とするマイクロ波回路やミリ波回路には組み込みにくい既存のEコーナー導波管の代わりに本願発明のEコーナー導波管は最大限の能力を発揮できる。すなわち、装置の筐体や他の素子を構成する金属板に電磁波を伝搬する導波管となる溝に電磁波伝搬路に合うコーナー反射棒を嵌め込めればEコーナー導波管を構成できる。
第3〜第6実施形態では、コーナー反射棒に一体的な突起を設けた場合の実施形態を例示して説明したが、突起に代えてコーナー反射棒に凹部を設け、第1の金属板および第2の金属板の受け穴に代えて凸部を設けるようにして、第1の金属板および第2の金属板の凸部が、コーナー反射棒の凹部に挿し込まれるような構造としても良い。
100A〜100H…コーナー導波管、111…第1の金属板、112…第2の金属板、
113および114…導波管、
121…コーナー反射棒、122…金属ピン、123および124…隙間、
131および132、511および512…受け穴、142…基準点、143…基準点、
144…中心基準点、81および91…コーナー反射棒本体、
82、93および94…突起。

Claims (15)

  1. 導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成された第1の金属板と、
    前記導波管断面と同寸法の開口部を有する第2の金属板と、
    端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒と
    を有し、
    前記方形溝と前記開口部とが直交するように、前記第1の金属板の表面に前記第2の金属板が配置されることにより前記方形溝と前記第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、前記第2の金属板の前記開口部が第2の導波管となり、前記第1の導波管と前記第2の導波管とがE分岐を構成し、
    前記第1の導波管と前記第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、前記コーナー反射棒の前記テーパ面を配置し、前記それぞれの軸線が前記テーパ面との入射角が45度になるように、前記コーナー反射棒が前記方形溝に嵌め込まれ、
    前記第1の導波管の軸線と垂直に、また前記第2の導波管の軸線と平行に、前記コーナー反射棒本体に、前記第1の金属板および前記第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とするコーナー導波管。
  2. 導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成された第1の金属板と、
    前記導波管断面と同寸法の開口部を有する第2の金属板と、
    端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒と
    を有し、
    前記方形溝と前記開口部とが直交するように、前記第1の金属板の表面に前記第2の金属板が配置されることにより前記方形溝と前記第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、前記第2の金属板の前記開口部が第2の導波管となり、前記第1の導波管と前記第2の導波管とがH分岐を構成し、
    前記第1の導波管と前記第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、前記コーナー反射棒の前記テーパ面を配置し、前記それぞれの軸線が前記テーパ面との入射角が45度になるように、前記コーナー反射棒が前記方形溝に嵌め込まれ、
    前記第1の導波管の軸線と垂直に、また前記第2の導波管の軸線と平行に、前記コーナー反射棒本体に、前記第1の金属板および前記第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とするコーナー導波管。
  3. 導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成され、前記方形溝に直交するように貫通した、前記導波管断断面と同寸法の開口部を有する第1の金属板と、
    第2の金属板と、
    端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒と
    を有し、
    前記第1の金属板の表面に前記第2の金属板が配置されることにより前記方形溝と前記第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、前記第1の金属板の前記開口部が第2の導波管となり、前記第1の導波管と前記第2の導波管とがE分岐を構成し、
    前記第1の導波管と前記第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、前記コーナー反射棒の前記テーパ面を配置し、前記それぞれの軸線が前記テーパ面との入射角が45度になるように、前記コーナー反射棒が前記方形溝に嵌め込まれ、
    前記第1の導波管の軸線と垂直に、また前記第2の導波管の軸線と平行に、前記コーナー反射棒本体に、前記第1の金属板および前記第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とするコーナー導波管。
  4. 導波管断面に相当する長辺および短辺を有する方形溝が表面に形成され、前記方形溝に直交するように貫通した、前記導波管断断面と同寸法の開口部を有する第1の金属板と、
    第2の金属板と、
    端部に電磁波を反射するテーパ面を有するコーナー反射棒と
    を有し、
    前記第1の金属板の表面に前記第2の金属板が配置されることにより前記方形溝と前記第2の金属板とにより第1の導波管を形成し、前記第1の金属板の前記開口部が第2の導波管となり、前記第1の導波管と前記第2の導波管とがH分岐を構成し、
    前記第1の導波管と前記第2の導波管のぞれぞれの軸線が直交する点に、前記コーナー反射棒の前記テーパ面を配置し、前記それぞれの軸線が前記テーパ面との入射角が45度になるように、前記コーナー反射棒が前記方形溝に嵌め込まれ、
    前記第1の導波管の軸線と垂直に、また前記第2の導波管の軸線と平行に、前記コーナー反射棒本体に、前記第1の金属板および前記第2の金属板に設けられた受け穴まで貫通する金属ピンを立てることを特徴とするコーナー導波管。
  5. 前記コーナー反射棒を貫通する前記金属ピンの中心軸が、前記コーナー反射棒のテーパ面の中心に設けられた中心基準点から略管内波長の半波長の正の整数倍の位置に立てることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のコーナー導波管。
  6. 前記中心基準点から略管内波長の半波長の正の整数倍の位置に立てられる前記金属ピンの中心軸は、前記略管内波長の半波長の正の整数倍の位置を中心にして、前記管内波長の略10%前後の長さの範囲内に立てることを特徴とする請求項5に記載のコーナー導波管。
  7. 前記金属ピンの直径は、前記コーナー反射棒の幅の略2/3程度であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のコーナー導波管。
  8. 前記コーナー反射棒を貫通した前記金属ピンの突き出た両端の長さは、略400ミクロンとすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のコーナー導波管。
  9. 前記コーナー反射棒を貫通した前記金属ピンの両端を受ける前記第1の金属板と前記第2の金属板の受け穴のいずれかの半径が、前記金属ピンの半径より大きく、前記コーナー反射棒から露出している前記金属ピンの先端が前記受け穴の内面と接触しないことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のコーナー導波管。
  10. 前記第1の金属板と前記第2の金属板の受け穴のいずれかの受け穴は、前記金属ピンの半径の略2倍以上の半径、形状は円筒形であり、高さは使用周波数の波長の略1/4以上であることを特徴とする請求項9に記載のコーナー導波管。
  11. 前記金属ピンの半径の略2倍以上の半径を有する前記受け穴の空洞の形状が、円筒形に代えて、半球形、略半球形、略半楕円体形のドーム型、あるいは、ペンシル先型であることを特徴とする請求項10に記載のコーナー導波管。
  12. 前記金属ピンの断面形状が、円形に代えて、略楕円形、多角形であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のコーナー導波管。
  13. 前記コーナー反射棒に前記金属ピンを貫通させる構成に代えて、前記コーナー反射棒と金属ピンとを一体化し、前記コーナー反射棒の上部と下部にそれぞれひとつずつの突起を備える部品を用いることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のコーナー導波管。
  14. 前記突起の中心は、前記隙間の基準点までの距離を、略管内波長の半波長の正の整数倍の位置を中心にして、前記管内波長の略10%前後の範囲内にすることを特徴とする請求項13に記載のコーナー導波管。
  15. 前記コーナー反射棒から突き出た上部と下部の突起の高さは略400ミクロン以上にすることを特徴とする請求項13又は14に記載のコーナー導波管。
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