JP2011175956A - 導電粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マイグレーションを起こすことなく、コストが安く、かつ導電性が高く、電極間の接続信頼性に優れる導電粒子を提供すること。
【解決手段】 コア粒子11と、コア粒子11を被覆し、リン濃度が1重量%以上10重量%以下で、厚さが20nm以上130nm以下であるパラジウム層12と、パラジウム層12の表面に配置され、粒径が20nm以上500nm以下の絶縁性粒子1と、を備える導電粒子8b。
【選択図】図2

Description

本発明は、導電粒子に関する。
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)実装の2種類に大別することができる。
COG実装では、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。ここでいう異方性とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
ところで、近年の液晶表示の高精細化に伴い、液晶駆動用ICの回路電極であるバンプでは狭ピッチ化、狭面積化しているため、異方導電性接着剤の導電粒子が隣接する回路電極間に流出してショートを発生させることが問題となってきていた。
また、隣接する回路電極間に導電粒子が流出すると、バンプとガラスパネルとの間に補足される異方導電性接着剤中の導電粒子数が減少し、対抗する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良を起こすといった問題があった。
これらの問題を解決する方法としては、下記特許文献1に例示されるように、異方導電性接着剤の少なくとも片面に絶縁性の接着剤を形成することで、COG実装又はCOF実装における接合品質の低下を防ぐ方法や、下記特許文献2に例示されるように、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法がある。
下記特許文献3、4には、金層で被覆された高分子重合体の核粒子を絶縁性の子粒子で被覆する方法が示されている。さらに下記特許文献4では、核粒子を被覆する金層の表面を、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理し、金層表面に官能基を形成する方法が示されている。これにより金層上に強固な官能基を形成することができる。
下記特許文献5には、導電粒子の導電性を向上させる試みとして、樹脂微粒子上に銅/金めっきを行なう方法が示されている。
下記特許文献6には、非金属微粒子と、非金属微粒子を被覆し、銅を50重量%以上含む金属層と、金属層を被覆するニッケル層と、ニッケル層を被覆する金層と、を備える導電粒子が示されており、この導電粒子によれば、一般的なニッケルと金からなる導電粒子に比べて導電性が良くなるとの記載がある。
下記特許文献7には、基材微粒子、および前記基材微粒子上に設けられた金属被覆層を有する導電性粒子であって、前記金属被覆層中の金の含有率が90重量%以上99重量%以下であることを特徴とする導電性粒子の記載がある。
特開平08−279371号公報 特許第2794009号公報 特許第2748705号公報 国際公開第03/02955号パンフレット 特開2006−028438号公報 特開2001−155539号公報 特開2005−036265号公報
しかしながら、上記特許文献1に示すように、回路接続部材の片面に絶縁性の接着剤を形成する方法では、バンプ面積が3000μm未満に狭小化した場合、安定した接続抵抗を得るために回路接続部材中の導電粒子を増やす必要がある。このように導電粒子を増した際には、隣り合う電極間の絶縁性について未だ改良の余地がある。
また、上記特許文献2に示すように、隣り合う電極間の絶縁性を改良するために導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法では、回路電極間の絶縁性が高くなるものの、導電粒子の導電性が低くなりやすいといった課題がある。
また、上記特許文献3、4に示すように、絶縁性の子粒子で導電粒子表面を被覆する方法では、子粒子と導電粒子との接着性の問題から、アクリルなど樹脂製の子粒子を用いる必要がある。この場合、樹脂製の子粒子を回路同士の熱圧着時に溶融させ、導電粒子を両回路へ接触させることによって、回路間で導通をとることになる。このとき、溶融した子粒子の樹脂が導電粒子の表面を被覆してしまうと、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法と同様に、導電粒子の導電性が低くなり易いことが分かってきた。このような理由により、絶縁性の子粒子としては無機酸化物等のように比較的高硬度で溶融温度が高いものが適している。例えば、上記特許文献4では、シリカ表面を3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランで処理し、表面にイソシアネート基を有するシリカと、表面にアミノ基を有する導電粒子とを反応させる方法が例示されている。
しかしながら、粒子径が500nm以下の粒子表面を官能基で修飾するのは一般的に難しく、また官能基で修飾した後に行う遠心分離や濾過の際に、シリカなどの無機酸化物が凝集してしまう不具合が発生し易い。さらに、上記特許文献4に例示される方法では、絶縁性の子粒子の被覆率をコントロールするのが難しい。
また、金属表面をメルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理する場合、金属上に僅かでもニッケル等の卑金属や銅といった酸化し易い金属が存在すると、金属と化合物との反応が進行しにくい。
さらに、本発明者らの研究により明らかになったことであるが、導電粒子上にシリカ等の無機物を被覆させた場合、導電粒子上の金属表面をシリカが押しつぶすことで導電性が発現する。従って導電金属をシリカが破壊することになるので、導電金属に貴金属以外の物が入っているとマイグレーション特性が悪化する傾向がある。
また、上記特許文献6に示すように、近年、ニッケル層上に金めっきを行うタイプの導電粒子が主流になりつつあるが、このような導電粒子では、ニッケルが溶出し、マイグレーションを起こすといった課題がある。さらに、金めっきの厚みを40nm以下に設定するとその傾向が顕著となる。
また、上記特許文献7に示すように、金の含有量が90重量%以上である金属被覆層で被覆された導電粒子は、信頼性の面では良好であるが、コストが高い。したがって、金の含有量が高い金属被覆層を備える導電粒子は実用的とは言い難く、近年は金属被覆層の金含有量を下げる傾向にある。これに対して、銅めっきを備える導電粒子は、導電性、コストの上で優れてはいる。しかし、銅めっきを備える導電粒子では、マイグレーションが発生しやすいため、耐吸湿性の観点で問題がある。そこで、両者(金と銅)の短所を補う為の試みがなされているが、何れも完全ではない。例えば、上記特許文献5に示す方法では、両者(金と銅)の短所を十分に補うことができない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、マイグレーションを起こすことなく、コストが安く、かつ導電性が高く、電極間の接続信頼性に優れる導電粒子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、第一の本発明に係る導電粒子は、コア粒子(樹脂微粒子)と、コア粒子を被覆し、リン濃度が1重量%以上10重量%以下であり、厚さが20nm以上130nm以下のパラジウム層と、を備える。すなわち、第一の本発明に係る導電粒子は、樹脂微粒子と、樹脂微粒子の表面に形成された導電層とを備え、導電層はリンを含有するパラジウム層であり、パラジウム層中のリン濃度が1重量%以上10重量%以下であり、パラジウム層の厚みが20nm以上130nm以下であることを特徴とする。本発明の特徴は、上記のパラジウム層が樹脂微粒子の表面に直接形成されていることにある。換言すれば、本発明では、樹脂微粒子の表面にパラジウム以外の金属(例えばニッケル)が存在しないことが好ましい。このような本発明の特徴が、下記の本発明の効果を達成する上で不可欠である。
上記第一の本発明では、パラジウム層が延性を有するため、上記導電粒子を備える異方導電性接着剤を用いて一対の電極を接続する際に、導電粒子を圧縮した後であってもパラジウム層が割れ難い。そのため、圧縮後の導電粒子の導電性及び電極間の接続信頼性を向上させることが可能となると共に、パラジウム層の割れに起因するパラジウムのマイグレーションを防止することが可能となる。また、パラジウムは、金、白金等の貴金属と比較して安価であり、実用的である。したがって、パラジウム層を備える上記第一の本発明に係る導電粒子は、金又は白金のみを用いた導電粒子に比べて低コストである。
上記第一の本発明では、パラジウム層の厚みが20nm以上であるため、十分な導電性を得ることが可能となる。
上記第一の本発明では、パラジウム層にリンが1重量%以上10重量%以下含有されているため、硬度が高く対向電極面に食い込み、十分な強度を持った導電膜が得られる。
第二の本発明に係る導電粒子は、コア粒子と、コア粒子を被覆し、リン濃度が1重量%以上10重量%以下であり、厚さが20nm以上130nm以下であるパラジウム層と、パラジウム層の表面に配置され、粒径が20〜500nmである絶縁性粒子と、を備える。
接着剤中に複数の上記導電粒子を分散させて得た異方導電性接着剤(異方導電フィルム)を一対の電極間に配置させ、一対の電極を接続(熱圧着)する際に、縦方向(一対の電極が対向する方向)では、導電粒子全体が一対の電極によって圧縮される。その結果、絶縁性粒子がパラジウム層表面からコア粒子側へめり込み、それに伴って露出したパラジウム層が一対の電極と接触することが可能となる。すなわち、導電粒子のパラジウム層を介して一対の電極間が導通する。一方、横方向(一対の電極が対向する方向に垂直な方向)では、隣接する導電粒子間に、それぞれの導電粒子が備える絶縁性粒子が介在し、絶縁性粒子同士が接触する。そのため、横方向では上記一対の電極とそれらに隣接する電極との間で絶縁性が維持される。
上記第二の本発明では、パラジウム層が延性を有するため、上記第一の本発明と同様に、圧縮後の導電粒子の導電性及び電極間の接続信頼性を向上させることが可能となると共にパラジウムのマイグレーションを防止することが可能となる。さらに、パラジウムは、金、白金等の貴金属と比較して安価であり、実用的である。したがって、パラジウム層を備える上記第二の本発明に係る導電粒子は、金又は白金のみを用いた導電粒子に比べて低コストである。
上記第二の本発明では、導電層として、厚みが20nm以上であるパラジウム層を備えるため、十分な導電性を得ることが可能となる。
上記第一及び第二の本発明では、パラジウム層が還元めっき型のパラジウム層であることが好ましい。これにより、コア粒子に対するパラジウム層の被覆率が向上し、導電粒子の導電性を向上させ易くなる。
また、パラジウム層が還元めっき型のパラジウム層であることにより、樹脂微粒子上に緻密で均質なパラジウム層が形成可能で、樹脂微粒子表面の露出が少ない導電粒子を提供することが可能である。また、めっき液量に応じてパラジウム層の厚みを任意に設定することが可能である。すなわち、パラジウム層の厚さを、必要に応じた厚みにコントロールすることができる。
上記本発明において、導電層中の成分(導電層の元素組成及びリン濃度)は、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:EDX)によって定性及び定量されることが好ましい。
上記第一及び第二の本発明では、絶縁性粒子がシリカであることが好ましい。シリカからなる絶縁性粒子は、絶縁性に優れ、粒子径を制御し易く、且つ安価である。また、シリカは水中に分散させて水分散コロイダルシリカとした際に、その表面に水酸基を有するため、パラジウム層との結合性に優れている。さらに、シリカ表面の水酸基は、パラジウム層の表面に形成された官能基との結合性にも優れている。したがって、シリカからなる絶縁性粒子は、パラジウム層又は金層の表面に強固に吸着することが可能となる。
本発明によれば、マイグレーションを起こすことなく、コストが安く、かつ導電性が高く、電極間の接続信頼性に優れる導電粒子を提供することができる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る導電粒子の概略断面図である。 図2は、本発明の第二実施形態に係る導電粒子の概略断面図である。 図3(a)は、本発明の第二実施形態に係る導電粒子を備える異方導電性接着剤の概略断面図であり、図3(b)及び図3(c)は、異方導電性接着剤を用いた接続構造体の作製方法を説明するための概略断面図である。
以下、発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[第一実施形態]
(導電粒子)
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る導電粒子8aは、コア粒子11と、コア粒子11全体を被覆し、厚さが20nm以上130nm以下で、リン濃度が1重量%以上10重量%以下あるパラジウム層12と、を備える。以下では、第一実施形態に係る導電粒子8aを、場合により「母粒子2a」と記す。
<コア粒子11>
本発明で用いるコア粒子11の粒径は、後述する図3の第一の電極5と第二の電極7との最小の間隔よりも小さいことが好ましい。また、コア粒子11の粒径は、電極の高さ(電極の間隔)にばらつきがある場合、高さのばらつき(電極の最大の間隔)よりも大きいことが好ましい。これらの理由から、コア粒子11の粒径は、1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましく、2.0〜3.5μmであることが特に好ましい。
従来の導電粒子におけるコア粒子は、金属のみからなる粒子、又は有機物若しくは無機物からなる粒子のいずれかであるが、本実施形態におけるコア粒子11は、樹脂からなる樹脂微粒子である。
有機物のコア粒子11としては、特に制限はないが、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂などからなる樹脂粒子が好ましい。
<パラジウム層12>
パラジウム層12は延性を有するため、導電粒子8aを圧縮した後において金属割れを起こし難く、金属割れに伴うマイグレーションも起こし難い。また、パラジウム層12は卑金属や銅に比べて耐酸性及び耐アルカリ性に優れている。さらに、パラジウム層12はリンを含有した合金であることから、耐酸性及び耐アルカリ性により優れている。よって、後述するメルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基等の官能基と安定して結合する。さらに、これらの官能基との結合性においてパラジウムと金及び白金とは同様の傾向を有するが、これらの貴金属を同体積で比較した場合、パラジウムが最も安価であり、実用的である。また、パラジウム層12は導電性に優れている。これらの理由から、パラジウム層12は、コア粒子11を被覆する金属層として好適である。
パラジウム層12中のリン濃度は接続抵抗の観点から1重量%以上10重量%以下であるが、1重量%以上8重量%以下であることが好ましく、1重量%以上6重量%以下であることがより好ましい。また、リンを含有しない純パラジウム層と比較して、リンを含有するパラジウム層は硬度が高い(非特許文献1「表面技術 P651、Vol55、No10、2004」を参照)。電極と接触するパラジウム層表面の硬度が高いと、導電粒子が電極表面にめり込みやすく、酸化した電極をつき破り、導通性能を確保しやすい。一方、リンの含有率が10重量%を超える場合、パラジウム層の導通抵抗が大きすぎる。またリンの含有率が10重量%を超える場合、パラジウム層12を例えばめっきにより形成するとき、パラジウムめっきが進行しづらく、めっき工程に必要な時間が長くなる。
パラジウム層12は、還元めっき型のパラジウム層であることが好ましい。これにより、コア粒子11に対するパラジウム層12の被覆率が向上し、導電粒子8aの導電性がより向上する。リンを共析させ、パラジウムを合金化させるための還元剤は、次亜リン酸やその塩、亜リン酸やその塩などのリンを含有する還元剤を少なくとも含むことが好ましい。還元剤としては、前記のリン含有還元剤を含んでいれば、他の還元剤を含有していてもよく、特に限定されない。他の還元剤を含有している場合でも、リン含有還元剤からパラジウム膜中にリンが共析することが知られている。
還元めっきを用いることで、パラジウム層12のめっき厚みをコントロールしやすい。たとえば、使用するめっき液に含有するパラジウムイオン濃度から析出後のめっき厚みをあらかじめ算出することができるため、無駄なパラジウムや試薬を使用することが無く、低コスト化が可能である。
パラジウム層12の厚みは、20nm以上130nm以下であるが、20nm以上100nm以下であることが好ましく、20nm以上80nm以下であることがより好ましい。パラジウム層の厚みが20nm未満であると、十分な導電性を得られない。一方、パラジウム層12の厚みが130nmを超えると、コア粒子11全体の弾性が低下する傾向がある。母粒子2a全体の弾性が低下すると、導電粒子8aが一対の電極で挟まれ、縦方向に潰された際に、母粒子2aの弾性によってパラジウム層12が電極表面に十分に押し当てられる効果が得られ難くなる。そのため、パラジウム層12と両電極との接触面積が小さくなり、電極間の接続信頼性を向上させる本発明の効果が小さくなる傾向がある。また、パラジウム層12が厚いほど、コストが高くなり、経済的に好ましくないだけでなく、実装圧着した際に、一対の電極で挟まれて縦方向に潰された導電粒子8aの導電層、すなわちパラジウム層12に割れが生じる場合があり、電極間の接続抵抗が上昇してしまう傾向がある。
(めっき層の分析)
コア粒子11表面を被覆するパラジウム層12の成分分析には、原子吸光光度計が使用できる。たとえば、パラジウム層12を酸などで溶解した液を、原子吸光光度計を用いて分析して、金属イオン濃度を測定し、算出する方法がある。また、ICP発光分析装置を用いてパラジウム層12を分析してもよい。ICP発光分析装置を用いると、定性分析と同時にリンの定量も可能となる。また、パラジウム層12中のリン濃度は、EDXを使用して定量することもできる。なお、低倍率でのEDX測定では複数粒子から情報を得てしまうため、高倍率でのEDX測定が好ましい。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る導電粒子、及び導電粒子の製造方法について説明する。なお、以下では、上述した第一実施形態と第二実施形態との相違点についてのみ説明し、両者に共通する事項については説明を省略する。
(導電粒子)
図2に示すように、第二実施形態に係る導電粒子8bは、コア粒子11とパラジウム層12だけではなく、パラジウム層12の表面に配置される複数の絶縁性粒子1を備える点で、第一実施形態に係る導電粒子8aと相違する。
<絶縁性粒子1>
絶縁性粒子1は無機酸化物であることが好ましい。仮に、絶縁性粒子1が有機化合物である場合、異方導電性接着剤の作製工程で絶縁性粒子1が変形してしまい、得られる異方導電性接着剤の特性が変化しやすい傾向がある。
絶縁性粒子1を構成する無機酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム、及びマグネシウムの群からなるより選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物が好ましい。これらの酸化物は単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。また、無機酸化物としては、上述の元素を含む酸化物の中でも、絶縁性に優れ、粒子径を制御した水分散コロイダルシリカ(SiO)が最も好ましい。
このような無機酸化物からなる絶縁性粒子(以下、「無機酸化物微粒子」という。)の市販品としては、例えば、スノーテックス、スノーテックスUP(日産化学工業(株)製)、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学工業(株)製)等が挙げられる。
無機酸化物微粒子の粒子径は、樹脂微粒子より小さいことが好ましい。具体的には、無機酸化物微粒子の平均粒子径は20〜500nmであるが、30〜400nmであることが好ましく、40〜350nmであることがより好ましい。なお、無機酸化物微粒子の粒子径は、BET法による比表面積換算法またはX線小角散乱法で測定される。粒子径が20nm未満であると、母粒子2aに吸着した無機酸化物微粒子が絶縁膜として作用せずに、電極間の一部にショートを発生させる傾向がある。一方、粒子径が500nmを超えると、実装圧着した際に、電極と導電粒子8bの導電層(パラジウム層12)とが接触しづらいため、電極間の接続抵抗が高くなり良好な導電性が得られない傾向がある。
(導電粒子の製造方法)
本発明の第一実施形態に係る導電粒子8aの製造方法は、コア粒子11の表面にパラジウム層12を形成する工程(S1)を備える。本発明の第二実施形態に係る導電粒子8bの製造方法は、工程S1の後に、パラジウム層12の表面を、メルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理し、パラジウム層12の表面に官能基を形成する工程(S2)と、官能基が形成されたパラジウム層の表面を高分子電解質で処理する工程(S3)と、官能基が形成され、且つ高分子電解質で処理されたパラジウム層12の表面に絶縁性粒子1を化学吸着により固定化する工程(S4)と、を備える。なお、以下では、絶縁性粒子1が、表面に水酸基が形成された無機酸化物微粒子である場合について説明する。
<S1>
まず、コア粒子11の表面にパラジウム層12を形成して、母粒子2a(第一実施形態に係る導電粒子8a)を得る。その具体的な方法としては、例えば、パラジウムによるめっきが挙げられる。このめっき工程では、コア粒子11の表面をアルカリなどで脱脂した後、酸で中和しコア粒子11の表面調整を行う。その後パラジウム触媒を付与し、上述したリン含有還元剤により還元型無電解パラジウムめっきを行うのが良い。還元型無電解パラジウムめっき液の組成としては、(1)硫酸パラジウムのような水溶性パラジウム塩、(2)還元剤、(3)錯化剤及び(4)pH調整剤を加えたものが好ましい。パラジウム層12中のリン濃度を1重量%以上10重量%以下に調整する方法としては、例えば、上記に示したパラジウムめっき液を構成する(1)から(4)に示した成分を調整する方法が用いられる。特に、リンを含有した還元剤を選定する方法やその還元剤量を調整する方法、めっき反応のpHを制御する方法、めっき温度を調整する方法などのパラジウムめっき液中のリン濃度を制御する方法等が挙げられる。また、錯化剤の種類や濃度を調整する方法でも、リン濃度の調整が可能である。なかでも、反応制御に優れていることから、めっき反応のpHを制御する方法が好適に用いられる。上記に示した方法は単独で用いてもよいが、それぞれを組み合わせるとリン濃度の調整がしやすく、めっき液の安定性の制御もしやすい。
<S2>
第二実施形態に係る導電粒子8bを形成する場合は、さらに、パラジウム層12の表面を、パラジウムに対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理する。これにより、パラジウム層12の表面に官能基を形成する。
パラジウム層12の表面処理に用いる化合物としては、具体的には、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、システイン等が挙げられる。これらの化合物で処理されたパラジウム層12の表面に形成される官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、又はアルコキシカルボニル基が挙げられる。
パラジウムはチオール基(メルカプト基)と反応し易いことに対して、ニッケルのような卑金属はチオール基と反応し難い。従って、本実施形態のパラジウム粒子(パラジウム層12で被覆されたコア粒子11)は、従来型のニッケル/金粒子(ニッケル層及び金層で被覆されたコア粒子)に比べてチオール基と反応しやすい。なお、ニッケル/金粒子は金の厚みが30nm以下であると粒子表面のニッケル割合が高くなる傾向がある。
パラジウム層12の表面を上記化合物で処理する具体的な方法としては、例えば、メタノール、エタノール等の有機溶媒中にメルカプト酢酸などの化合物を10〜100mmol/l程度分散させて得た液体中に、パラジウム粒子を分散させる方法が挙げられる。
<S3、S4>
次に、官能基が形成されたパラジウム層12の表面を高分子電解質で処理した後に、パラジウム層12の表面に絶縁性粒子1を化学吸着させる。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、又はアルコキシカルボニル基のような官能基を有するパラジウム層12の表面電位(ゼータ電位)は、通常、pHが中性領域であればマイナスである。一方で、後工程でパラジウム層12の表面に吸着させる絶縁性粒子1の表面は、水酸基を有する無機酸化物からなるため、絶縁性粒子1の表面電位も通常マイナスである。このように、表面電位がマイナスであるパラジウム層12の周囲には、表面電位がマイナスである絶縁性粒子1が吸着し難い傾向がある。そこで、パラジウム層12の表面を高分子電解質で処理することにより、パラジウム層12の表面を絶縁性粒子1で被覆し易くなる。
高分子電解質で処理した後のパラジウム層12の表面に絶縁性粒子1を吸着させる方法としては、高分子電解質と無機酸化物を、パラジウム層12の表面に交互に積層する方法が好ましい。より具体的には、以下の工程(1)、(2)を順次行うことで、高分子電解質と無機酸化物微粒子とが積層された絶縁性被覆膜で表面の一部が被覆された母粒子2a、すなわち導電粒子8bを製造できる。
工程(1):パラジウム層12の表面に官能基を有する母粒子2aを、高分子電解質溶液に分散させ、パラジウム層12の表面に高分子電解質を吸着させた後、母粒子2aをリンスする工程。
工程(2):リンス後の母粒子2aを無機酸化物微粒子の分散溶液に分散し、母粒子2aの表面(パラジウム層12)に無機酸化物微粒子を吸着させた後、母粒子2aをリンスする工程。
すなわち、工程(1)において、母粒子2aの表面に高分子電解質薄膜を形成し、工程(2)において、高分子電解質薄膜を介して母粒子2aの表面に無機酸化物微粒子を化学吸着により固定化する。この高分子電解質薄膜を用いることにより、母粒子2aの表面を、欠陥なく均一に無機酸化物微粒子で被覆することができる。このような工程(1)、(2)を経て得られた導電粒子を用いた異方導電性接着剤を用いて回路電極を接続すると、回路電極間隔が狭ピッチでも絶縁性が確保され、電気的に接続する電極間では接続抵抗が低く良好となる。
上記の工程(1)、(2)を有する方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films, 210/211, p831(1992) 参照)。
この交互積層方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層して複合膜(交互積層膜)が得られる。
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料が引き合うことにより膜成長するので、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。
Lvovらは交互積層法を、微粒子に応用し、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir、Vol.13、(1997)p6195−6203 参照)。
この方法を用いると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子と、その反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)などとを交互に積層することで、シリカ微粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
第二本実施形態に係る導電粒子8bの製造方法では、母粒子2aを、高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子の分散液に浸漬後、反対電荷を有する微粒子分散液又は高分子電解質溶液に浸漬する前に、溶媒のみによるリンスによって余剰の高分子電解質溶液若しくは無機酸化物微粒子の分散液を母粒子2aから洗い流すことが好ましい。
母粒子2aに吸着した高分子電解質及び無機酸化物微粒子は母粒子2a表面に静電的に吸着しているために、このリンスの工程で母粒子2a表面から剥離することはない。しかし、母粒子2a吸着していない余剰の高分子電解質または無機酸化物微粒子が、それらと反対電荷を有する溶液中に持ち込まれると、溶液内でカチオン、アニオンが混ざり、高分子電解質と無機酸化物微粒子の凝集や沈殿を起きることがある。このような不具合をリンスによって防止することができる。
リンスに用いる溶媒としては、水、アルコール、アセトン等があるが、通常、過剰な高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子の分散液を除去し易い点において、比抵抗値が18MΩ・cm以上のイオン交換水(いわゆる超純水)が用いられる。
高分子電解質溶液は、水、又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に高分子電解質を溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができる。この場合はポリカチオンを用いるのが良い。
ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド及びそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体などを用いることができる。
高分子電解質の中でもポリエチレンイミンは電荷密度が高く、結合力が強い。これらの高分子電解質の中でも、エレクトロマイグレーションや腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン及びアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、ハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を含まないものが好ましい。
これらの高分子電解質は、いずれも水溶性であるもの、又は水と有機溶媒との混合液に可溶なものであり、高分子電解質の分子量としては、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、500〜200,000程度のものが好ましい。なお、溶液中の高分子電解質の濃度は、一般に、0.01〜10重量%程度が好ましい。また高分子電解質溶液のpHは、特に制限はない。
母粒子2aを被覆する高分子電解質薄膜の種類、分子量、又は濃度を調整することにより、無機酸化物微粒子の被覆率をコントロールすることができる。
具体的には、ポリエチレンイミンなど、電荷密度の高い高分子電解質薄膜を用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質薄膜を用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
また、高分子電解質の分子量が大きい場合、無機酸化物微粒子の被覆率が高くなる傾向があるとともに、無機酸化物微粒子をパラジウム層12に強固に吸着させることができる。結合力という観点で見た場合、高分子電解質の分子量は10,000以上であることが好ましい。一方、高分子電解質の分子量が小さい場合、無機酸化物微粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
さらに、高分子電解質を高濃度で用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が低くなる傾向がある。無機酸化物微粒子の被覆率が高い場合は絶縁性が高く導電性が悪い傾向があり、無機酸化物微粒子の被覆率が低い場合は導電性が高く絶縁性が悪い傾向がある。
無機酸化物微粒子は一層のみ被覆されているのが良い。複層積層すると積層量のコントロールが困難になる。また、無機酸化物微粒子によるパラジウム層12表面の被覆率は、20〜100%の範囲であることが好ましく、30〜60%の範囲であることがさらに好ましい。
無機酸化物微粒子の分散溶液中のアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン濃度が100ppm以下であることが好ましい。これにより、隣接する電極間の絶縁信頼性を向上させ易くなる。また、無機酸化物微粒子としては、金属アルコキシドの加水分解反応、いわゆるゾルゲル法により製造される無機酸化物微粒子が好適である。
特に、無機酸化物微粒子としては、水分散コロイダルシリカ(SiO)が好ましい。水分散コロイダルシリカは表面に水酸基を有するため、母粒子2aとの結合性に優れ、粒子径を揃えやすく、安価である点において、無機酸化物微粒子に好適である。
一般的に水酸基は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基と強固な結合を形成することで知られる。水酸基とこれら官能基の結合の具体的な様式としては、脱水縮合による共有結合や水素結合が挙げられる。従って、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基などの官能基が形成されたパラジウム層12(母粒子2a表面)に対して、表面に水酸基を有する無機酸化物微粒子は、強固に吸着することが可能となる。
なお、無機酸化物微粒子の表面の水酸基は、シランカップリング剤などでアミノ基やカルボキシル基、エポキシ基に変性することが可能であるが、無機酸化物の粒子径が500nm以下の場合、困難である。従って、官能基の変性を行わずに母粒子2aを無機酸化物微粒子で被覆することが望ましい。
以上のようにして完成した導電粒子8bを加熱乾燥することで、絶縁性粒子1と母粒子2aとの結合を更に強化することができる。結合力が増す理由としては、例えば、パラジウム層12の表面のカルボキシル基等の官能基と絶縁性粒子1の表面の水酸基との化学結合、又はパラジウム層12の表面のカルボキシル基と絶縁性粒子1の表面のアミノ基の脱水縮合が促進されることが挙げられる。また加熱を真空で行なうと、金属のさび防止の観点から好ましい。なお、母粒子の最表面が金層である場合においても、パラジウム層12の場合と同様に、加熱乾燥することで、絶縁性粒子と母粒子との結合を更に強化することができる。
加熱乾燥の温度は60〜200℃であることが好ましく、加熱時間は10〜180分であることが好ましい。温度が60℃未満の場合や加熱時間が10分未満の場合は、絶縁性粒子1が母粒子2aから剥離しやすく、温度が200℃を超える場合や加熱時間が180分を超える場合は、母粒子2aが変形しやすいので好ましくない。
(粒子の観察) 樹脂微粒子を被覆するめっき膜(パラジウム層)や、めっき膜上に配置された絶縁性粒子などの観察には、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いることができる。画像により、めっき膜表面や絶縁性微粒子の配置位置や数などを確認できる。
(異方導電性接着剤)
以上のようにして作製した導電粒子8bを、図3(a)に示すように、接着剤3に分散させることにより、異方導電性接着剤40が得られる。この異方導電性接着剤40を用いた接続構造体42の作製方法を、図3(b)、(c)に示す。なお、図3(a)、3(b)、3(c)では、導電粒子8bを導電粒子8と記す。また、図の簡略化のため、導電粒子8が備えるパラジウム層12は省略する。
図3(b)に示すように第一の基板4と第二の基板6を準備し、異方導電性接着剤40をその間に配置する。このとき、第一の基板4が備える第一の電極5と第二の基板6が備える第二の電極7が対向するようにする。その後、第一の基板4と第二の基板6を、第一の電極5と第二の電極7とが対向する方向で加圧加熱しつつ積層して、図3(c)に示す接続構造体42を得る。
このようにして接続構造体42を作製すると、縦方向は絶縁性粒子1が母粒子2にめり込んで第一の電極5と第二の電極7は母粒子2の表面(パラジウム層)を介して導通し、横方向は母粒子間に絶縁性子粒子1が介在することで絶縁性が維持される。
COG用の異方導電性接着剤は、近年10μmレベルの狭ピッチでの絶縁信頼性が求められているが、本実施形態に係る異方導電性接着剤40を用いれば、10μmレベルの狭ピッチでの絶縁信頼性を向上させることが可能となる。
異方導電性接着剤40に用いられる接着剤3としては、熱反応性樹脂と硬化剤の混合物が用いられ、具体的には、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物が好ましい。
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独に又は2種以上を混合して用いることが可能である。
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。これによりエレクトロマイグレーションを防止し易くなる。
潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。この他、接着剤には、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物の混合物や紫外線などのエネルギー線硬化性樹脂が用いられる。
接着剤3には、接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を混合することができる。
また、接着剤3としてはペースト状又はフィルム状のものが用いられる。接着剤をフィルム状にするためには、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することが効果的である。これらのフィルム形成性高分子は、反応性樹脂の硬化時の応力緩和にも効果がある。特に、フィルム形成性高分子が、水酸基などの官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましい。
フィルムの形成は、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤、及びフィルム形成性高分子からなる接着組成物を、有機溶剤に溶解又は分散させることにより、液状化して、剥離性基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。このとき用いる有機溶剤としては、材料の溶解性を向上させる点において、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が好ましい。
異方導電性接着剤40の厚みは、導電粒子8の粒径及び異方導電性接着剤40の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmであることが好ましい。1μm未満では充分な接着性が得られず、100μmを超えると導電性を得るために多量の導電粒子を必要とするために現実的ではない。こうした理由から、厚みは3〜50μmであることがより好ましい。
第一の基板4又は第二の基板6としては、ガラス基板、ポリイミド等のテープ基板、ドライバーICなどのベアチップ、リジット型のパッケージ基板などが挙げられる。
以上、本発明に係る導電粒子及び導電粒子の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第一実施形態に係る導電粒子8aが、樹脂微粒子11と、樹脂微粒子11の表面を被覆するパラジウム層12と、パラジウム層12の表面を被覆する他の導電層(例えば金層)と、を備えてもよい。また、第二実施形態に係る導電粒子8bが、樹脂微粒子11と、樹脂微粒子11の表面を被覆するパラジウム層12と、パラジウム層12の表面を被覆する他の導電層(例えば金層)と、導電層の表面に配置された複数の絶縁性粒子1と、を備えてもよい。
以下、実施例により本発明を説明する。
(母粒子1)
平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(樹脂微粒子)3gを、アルカリ脱脂を実施した後、酸で中和した。pH6.0に調整したカチオン性高分子液100mlに、前記樹脂微粒子を添加し、60℃で1時間攪拌した後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を行った。パラジウム触媒であるアトテックネネオガント834(アトテックジャパン(株)製、商品名)を8重量%含有するパラジウム触媒化液100mLに水洗後の樹脂微粒子を添加し、35℃で30分攪拌した後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を行った。パラジウム触媒液へ繰り返し樹脂微粒子を添加して、樹脂微粒子表面に十分な量のパラジウム触媒を付与した。なお、「パラジウム触媒」とは、樹脂微粒子表面にパラジウム層を形成するための触媒であって、本発明におけるパラジウム層そのものではない。
次に、水洗後の樹脂微粒子をpH6.0に調整した3g/Lの次亜リン酸ナトリウム液に添加し、表面が活性化された樹脂微粒子(樹脂コア粒子)を得た。その後、表面が活性化された樹脂微粒子を蒸留水に浸漬し、超音波分散した。
上記の液を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、無電解パラジウムめっき液であるAPP(石原薬品工業(株)製、商品名)に、50℃の条件で、表面が活性化された樹脂微粒子を浸漬し、樹脂微粒子表面に20nmの無電解Pdめっきを行った。無電解パラジウムめっき液であるAPPは、主成分として、還元剤である次亜リン酸やその塩、リン酸やその塩等のリン含有物質を含有していることが知られている。
その後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解して、樹脂微粒子上に20nm厚のパラジウム層を有する母粒子1を作製した。
(母粒子2)
上記の無電解パラジウムめっき液APPを用いて無電解Pdめっきを行う代わりに、無電解パラジウムめっき液であるメルプレートPal6700(メルテックス株式会社製 製品名)に、50℃の条件で、表面が活性化された樹脂微粒子を浸漬し、pH8で無電解パラジウムめっきを行ったこと以外は母粒子1と同様の方法で、樹脂コア粒子上に40nm厚のパラジウム層を有する母粒子2を作製した。無電解パラジウムめっき液であるメルプレートPal6700は、主成分として、還元剤である次亜リン酸やその塩、リン酸やその塩等のリン含有物質を含有していることが知られている。
(母粒子3)
上記の無電解パラジウムめっき液メルプレートPal6700(メルテックス株式会社製 製品名)に次亜リン酸ナトリウムを追加して用いたこと以外は母粒子2と同様の方法で、樹脂コア粒子上に80nm厚のパラジウム層を有する母粒子3を作製した。
(母粒子4)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、クエン酸ナトリウム50g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液a及びめっき液bをそれぞれ同時かつ平行に10ml/minで添加し、無電解パラジウムめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液aとしては、パラジウム:20g/L、クエン酸ナトリウム:50g/L、エチレンジアミン20g/Lを混合し、pH=6.0に調整された液を用いた。なお、めっき液aのなかではパラジウムはイオンや錯体の状態で溶解しており、上記のパラジウムの量「20g/L」とは金属パラジウムとしての重量換算値である。めっき液bとしては、次亜リン酸ナトリウム:1.2mol/Lを混合し、水酸化ナトリウムでpH=6.0に調整した液を用いた。サンプリングした粒子の原子吸光光度計による分析によって、樹脂微粒子表面に形成される無電解パラジウム層の厚さを調整した。無電解パラジウム層の厚さが130nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。添加終了後、気泡の発生が停止するのを待ち、濾過と水洗を行った。反応が停止した時は、pHが6.0であった。以上の方法で樹脂コア粒子上に130nm厚の無電解パラジウム層を有する母粒子4を作製した。得られた母粒子4は灰色であった。
(母粒子5)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、クエン酸ナトリウム50g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液c及びめっき液dをそれぞれ同時かつ平行に4ml/minで添加し、無電解パラジウムめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液cとしては、パラジウム:20g/L、クエン酸ナトリウム:80g/L、エチレンジアミン:20g/Lを混合し、pH=5.0に調整された液を用いた。めっき液dとしては、次亜リン酸ナトリウム:2.4mol/Lを混合し、水酸化ナトリウムでpH=5.0に調整した液を用いた。サンプリングした粒子の原子吸光光度計による分析によって、樹脂微粒子表面に形成される無電解パラジウム層の厚さを調整した。無電解パラジウム層の厚さが80nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。添加終了後、気泡の発生が停止するのを待ち、濾過と水洗を行った。反応が停止した時は、pHが4.8であった。以上の方法で樹脂コア粒子上に80nm厚の無電解パラジウム層を有する母粒子5を作製した。得られた母粒子5は灰色であった。
(母粒子6)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、酒石酸ナトリウム20g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液e及びめっき液fをそれぞれ同時かつ平行に15ml/minで添加し、添加無電解ニッケルめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液eとしては、ニッケル:224g/L、酒石酸ナトリウム:20g/Lを混合した液を用いた。めっき液fとしては、次亜リン酸ナトリウム:226g/L、水酸化ナトリウム:85g/Lを混合した液を用いた。サンプリングした粒子の原子吸光光度計による分析によって、ニッケルの膜厚を調整した。ニッケル膜厚が40nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。添加終了後、気泡の発生が停止するのを待ち、濾過と水洗を行った。反応が停止した時は、pHが6.2であり微粒子は灰色であった。次に、無電解ニッケルめっき後の樹脂微粒子を、無電解パラジウムめっき液であるAPP(石原薬品工業(株)製、商品名)に50℃の条件で浸漬して、無電解パラジウムめっきを行った。
上記の液を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を3回実施した。その後、40℃で7時間の真空乾燥を行い解砕により凝集を解した。これにより、樹脂微粒子と、樹脂微粒子表面を被覆する40nm厚の無電解ニッケル層と、無電解ニッケル層表面を被覆する40nmの無電解パラジウム層と、を有する母粒子6を得た。
(母粒子7)
無電解パラジウムめっきの代わりに、無電解金めっき液であるHGS―500(日立化成工業株式会社製 製品名)を80℃の条件で建浴した液に、母粒子6の場合と同様の方法で形成したニッケルめっき済みの樹脂微粒子を浸漬し、置換金メッキを行い、濾過と水洗を行った。その後、無電解金めっき液であるHGS−2000(日立化成工業株式会社製 製品名)を60℃で建浴した液に前記粒子を浸漬し、濾過と水洗を行った。これらの事項以外は、母粒子6と同様の方法で処理を行うことにより、樹脂微粒子と、樹脂微粒子を被覆する40nm厚のニッケル層と、ニッケル層表面を被覆する40nm厚のAu層と、を有する母粒子7を作製した。
(絶縁被覆処理)
次に、上記で得た母粒子1〜7を用いて導電粒子1〜7を作製した。母粒子の表面に絶縁性粒子であるシリカ微粒子を吸着させる絶縁被覆処理は特開2008−120990号公報に公開されている方法で実施した。なお、実施例では、説明の便宜上、表面に絶縁性粒子を備える母粒子を、「導電粒子」と記し、表面に絶縁性粒子と備えない母粒子と区別しているが、上述した母粒子1〜5と後述する導電粒子1〜5は、全て本発明に係る導電粒子に相当する。
(導電粒子1)
メルカプト酢酸8mmolをメタノール200mlに溶解させて反応液を作製した。
次に、母粒子1を1g上記反応液に加え、室温(25℃)で2時間スリーワンモーターと直径45mmの攪拌羽で攪拌した。メタノールで洗浄後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1を濾過することで表面にカルボキシル基を有する母粒子1を得た。
次に、分子量70000の30%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業(株)製)を超純水で希釈し、0.3重量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。前記カルボキシル基を有する母粒子1を0.3重量%ポリエチレンイミン水溶液に1g加え、室温で15分攪拌した。
その後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。さらに直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、前記メンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄を行うことで、母粒子1に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
次に、絶縁性粒子であるコロイダルシリカの分散液(質量濃度20%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−3、平均粒子径35nm)を超純水で希釈して0.1重量%シリカ分散溶液を得た。前記ポリエチレンイミンでの処理後の母粒子1を0.1重量%シリカ分散溶液に入れて室温で15分攪拌した。
次に、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。さらに直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、前記メンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄を行うことで、母粒子1に吸着していないシリカを除去した。その後80℃で30分の条件で乾燥を行い、120℃で1時間加熱乾燥行うことで、母粒子1の表面にシリカ(子粒子)が吸着した導電粒子1を作製した。
(導電粒子2)
母粒子1の代わりに母粒子2を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−7(質量濃度20%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−7、平均粒子径75nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子2を作製した。
(導電粒子3)
母粒子1の代わりに母粒子3を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−13(質量濃度20%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−13、平均粒子径130nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子3を作製した。
(導電粒子4)
母粒子1の代わりに母粒子4を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−20(質量濃度20%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−20、平均粒子径200nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子4を作製した。
(導電粒子5)
母粒子1の代わりに母粒子5を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−50(質量濃度20%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−50、平均粒子径500nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子5を作製した。
(導電粒子6)
母粒子3の代わりに母粒子6を用いたこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子6を作製した。
(導電粒子7)
母粒子3の代わりに母粒子7を用いたこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子7を作製した。
(実施例1)
<接着剤溶液の作製>
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC)10g及びアクリルゴム(ブチルアクリレート40部、エチルアクリレート30部、アクリロニトリル30部、グリシジルメタクリレート3部の共重合体、分子量:85万)7.5gを酢酸エチル30gに溶解し、30重量%溶液を得た。
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185、旭化成エポキシ(株)製、商品名:ノバキュアHX−3941)30gをこの溶液に加え、撹拌して接着剤溶液を作製した。
上記で作成した4gの導電粒子1を酢酸エチル10g中に分散した。
導電粒子1が接着剤に対して37重量%となるように、上記粒子分散液を接着剤溶液に分散させ、この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフイルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、90℃、10分乾燥し、厚み25μmの異方導電接着剤フィルムを作製した。
次に、作製した異方導電接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:30×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンブ数362)付きチップ(1.7×17mm、厚み:0.5mm)とITO回路付きガラス基板(厚み:0.7mm)の接続構造体サンプルを、以下の方法で作製した。
まず、異方導電接着フィルム(2×19mm)をITO回路付きガラス基板に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとITO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。次いで、190℃、5秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行って、サンプルを得た。
(実施例2)
導電粒子1の代わりに導電粒子2を用い、実施例2で作製した異方導電接着フィルムの単位面積あたりに分散している導電粒子の数が、実施例1と同じになるように接着剤に添加する導電粒子2の割合を調整したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
(実施例3)
導電粒子2の代わりに導電粒子3を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(実施例4)
導電粒子2の代わりに導電粒子4を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(実施例5)
導電粒子2の代わりに導電粒子5を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(比較例1)
導電粒子2の代わりに導電粒子6を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(比較例2)
導電粒子2の代わりに導電粒子7を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(金属の膜厚測定)
Pd、Ni、Auの各膜厚の測定では、各粒子を50体積%王水に溶解させた後、樹脂微粒子および固形物を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾別して取り除き、原子吸光光度計S4700(株式会社日立製作所製 製品名)で各金属の量を測定した後に、それを厚み換算した。
(めっき膜中の成分分析)
めっき膜中の成分分析では、各粒子を50体積%王水に溶解させた後、樹脂を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾別して取り除き、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置P4010(株式会社日立製作所製 製品名)を用いた。
(子粒子の被覆率)
子粒子(絶縁性粒子)の被覆率は、各導電粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、画像を解析することで算出した。電子顕微鏡には、S4700(株式会社日立製作所製 製品名)を使用し、5000倍以上で観察した。
(粒子の煮出し試験)
導電粒子1〜7のいずれかを1g採取し、純水50gに分散させた。次に、60mlの圧力容器にサンプルを投入し、100℃で10時間放置した。
その後、導電粒子の分散溶媒を0.2μmフィルターで濾過し、ろ液中の各金属イオンを原子吸光光度計で測定した。煮出し量(イオン測定値)は次式により求めた。
Figure 2011175956
(成分分析)
絶縁被覆処理を施す前の各母粒子を試料台に固定した導電テープ(日新EM社製 Cat No7311)上に撒き、試料台を逆さにして振って余分な導電粒子を落とした。次に、走査型電子顕微鏡S4700(株式会社日立製作所製 製品名)に付属するEDX分析装置:EMAX EX−300(株式会社堀場製作所製 製品名)を用いて、3万倍に拡大した母粒子表面の導電層を分析し、定性した。また、パラジウム中のリン濃度は各母粒子10個を測定し、その平均値から算出した。また、導電粒子の導電層部分の薄片を収束イオンビームで切り出した。透過型電子顕微鏡HF−2200(株式会社日立製作所製 製品名)を用いて10万倍以上で薄片を観察し、上記装置に付属したNORAN社製EDXで導電層の各領域の成分分析を行った。得られた値から各領域のニッケル、パラジウムおよびリンの濃度を算出した。
(絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験)
実施例1〜5、比較例1〜2で作製したサンプルの絶縁抵抗試験(絶縁信頼性試験)及び導通抵抗試験を行った。異方導電接着フィルムはチップ電極間の絶縁抵抗が高く、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗(接続抵抗)が低いことが重要である。
チップ電極間の絶縁抵抗は20サンプルを測定し、その最小値を測定した。絶縁抵抗に関してはバイアス試験(湿度60%、90℃、20V直流電圧による耐久試験)前後の結果の最小値を示す。なお、表1に示す100時間、300時間、500時間、1000時間とは、バイアス試験の時間を意味する。
また、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗に関しては14サンプルの平均値を測定した。導通抵抗は初期値と吸湿耐熱試験(温度85℃、湿度85%の条件で1000時間放置)後の値を測定した。
(結果)
上記の実施例1〜5および比較例1、2の測定結果を表1に示す。
Figure 2011175956
表1に示されるように、ニッケルを全く用いない実施例1〜5の導電粒子では、煮出し試験結果に示すように金属の溶出が殆どない。
これに対し、下地にニッケルを用いた比較例1、2では、何れも実施例1〜5に比べて、ニッケルが溶出する傾向がある。従って、狭ピッチのCOG基板においてはニッケルを用いない方が無難である。
なお、貴金属であるパラジウムは溶出が殆どない。絶縁信頼性試験結果は殆どニッケルの溶出量に依存しており、ニッケルの溶出の少ない実施例は良好な結果を示し、ニッケルの溶出の多い比較例は絶縁信頼性が低いことが明らかである。
パラジウムは貴金属の中でも比較的安価で実用的ではあるが、異方導電膜用の導電粒子として多数使用されているニッケルに比べるとそれでも高価であるため、できるだけパラジウムの使用量を減らしたい。一方で、電極と接した時に、導電粒子表面のパラジウム層は破れずに電極への食い込む必要がある。また、パラジウム層には、導電粒子作成工程中の外力によって割れや剥がれが生じない程度の十分な強度が要求される。パラジウムはニッケルに比べ延性はあるが硬さに劣る。
本発明では、還元剤に次亜リン酸や亜リン酸といったリン酸塩系の無電機解パラジウムめっき液を使用し、パラジウム層中にリンを供析させることで、硬度が高く、耐腐食性に優れた導電粒子を提供できる。
実施例1〜5の各めっき膜中の成分をICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置P4010(株式会社日立製作所製 製品名)により定性分析をしたところ、パラジウムとリンが主成分であり、他の元素は検出誤差範囲内で検出されなかった。
(実施例6)
導電粒子1を用いる代わりに母粒子2を用い、実施例1で作製した異方導電接着フィルムの単位面積あたりに分散している導電粒子の数の半分になるように母粒子2の量を調整したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
(比較例3)
導電粒子1を用いる代わりに母粒子7を用い、実施例1で作製した異方導電接着フィルムの単位面積あたりに分散している導電粒子の数の半分になるように母粒子7の量を調整したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
実施例1〜5と同様の方法で、実施例6および比較例3における粒子の煮出し試験及び導通抵抗試験を行った。
実施例6と比較例3の試験結果を表2に示す。
Figure 2011175956
(絶縁被覆処理を行っていない粒子の評価)
表2に示すように、実施例6の接続抵抗は良好であったが、比較例3の接続抵抗は時間経過とともに高くなった。これは、比較例3の金層が柔らないため電極に食い込みにくく、時間経過とともに起こる電極位置のずれに追従できなかったためである。
サンプルをガラス面側から光学顕微鏡で観察したところ、比較例3の方が粒子の凝集が多く観察された。比較例3の母粒子7をEDX分析したところ、ニッケル中のリン濃度が2重量%と低かったことから、比較例3では、磁性による母粒子7の凝集が起こったと考えられる。
表2に示すように、金属層としてパラジウム層のみを備える実施例6では、煮出し試験で微量のパラジウムのみが溶出したが、比較例3ではニッケルが大量に溶出した。溶出したニッケルは、マイグレーションによるショート不良を引き起こしたり、パラジウム表面上で酸化膜を形成したりすることから、導通抵抗を低下させる。このように溶出が起こる可能性のある金属(例えば、ニッケルなど)を用いることは避けるべきである。
樹脂微粒子上にパラジウム層を形成する無電解パラジウムめっきの方法として、本実施例では、建浴した無電解パラジウムめっき液中に、触媒が付与され活性化した樹脂微粒子を浸漬する方法と、触媒が付与され活性化した樹脂微粒子を、加温した蒸留水中に浸漬し、攪拌により分散させながら、無電解パラジウムめっき液を逐次添加する方法を用いたが、パラジウムめっきの方法は、これらの方法に限定されない。また、上記の無電解パラジウムめっき液を逐次添加する方法では、建浴済みの無電解めっき液を滴下してもよく、無電解パラジウムめっき液の成分を少なくとも2つ以上に分割し、これらを同時かつ平行に添加してもよい。無電解パラジウムめっき液の成分を分割する方法としては、たとえば、パラジウムイオンおよびパラジウム錯体成分と還元剤成分を別々の液として添加する方法がある。
以上説明したように、上記本発明によれば、マイグレーションを起こすことなく、コストが安く、かつ導電性が高く、電極間の接続信頼性に優れる導電粒子を提供することができる。
1・・・絶縁性粒子、2、2a・・・母粒子、3・・・接着剤、4・・・第一の基板、5・・・第一の電極、6・・・第二の基板、7・・・第二の電極、8、8a8b・・・導電粒子、11・・・コア粒子、12・・・パラジウム層、40・・・異方導電性接着剤、42・・・接続構造体。

Claims (4)

  1. 樹脂微粒子と、前記樹脂微粒子の表面に形成された導電層とを備え、
    前記導電層はリンを含有するパラジウム層であり、
    前記パラジウム層中のリン濃度が1重量%以上10重量%以下であり、
    前記パラジウム層の厚みが20nm以上130nm以下であることを特徴とする、
    導電粒子。
  2. 前記パラジウム層の表面に配置され、粒径が20〜500nmである絶縁性粒子を備えることを特徴とする、
    請求項1に記載の導電粒子。
  3. 前記パラジウム層が還元めっき型のパラジウム層であることを特徴とする、
    請求項1又は2に記載の導電粒子。
  4. 前記導電層中の成分はエネルギー分散型X線分光法により定性及び定量されることを特徴とする、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電粒子。
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