JP2011233297A - 導電粒子及びその製造方法、接着剤組成物、回路接続材料、接続構造体、並びに回路部材の接続方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】接続すべき電極間の抵抗値を十分に小さくできるとともにマイグレーションの発生を十分に抑制して優れた接続信頼性を達成でき且つ低コストで得ることができる導電粒子を提供すること。
【解決手段】本発明に係る導電粒子は、樹脂材料からなるコア粒子と、コア粒子の表面に形成された厚さ20nm以上130nm以下のパラジウム層とを備える。パラジウム層の外側表面から深さ10nmまでの領域は、パラジウム濃度が99.9質量%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電粒子及びその製造方法、接着剤組成物、回路接続材料、接続構造、並びに回路部材の接続方法に関する。
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)実装の2種類に大別することができる。
COG実装では、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方導電性接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。ここでいう異方導電性とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
ところで、近年の液晶表示の高精細化に伴い、液晶駆動用ICの回路電極であるバンプが狭ピッチ化及び狭面積化しているため、異方導電性接着剤の導電粒子が隣接する回路電極間に流出してショートを発生させることが問題となってきていた。また、隣接する回路電極間に導電粒子が流出すると、バンプとガラスパネルとの間に補足される導電粒子数が減少し、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良を起こすといった問題があった。
これらの問題を解決する方法としては、下記特許文献1に例示されるように、異方導電性接着剤からなる層と、その少なくとも一方の面に設けた絶縁性接着剤からなる層とを備えた回路接続材料を使用する方法が知られている。また、下記特許文献2に例示されるように、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法も知られている。
下記特許文献3、4には、金層で被覆された高分子重合体の核粒子を絶縁性の子粒子で被覆する方法が示されている。更に下記特許文献4には、核粒子を被覆する金層の表面を、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理し、金層表面に官能基を形成する方法が示されている。これにより金層上に強固な官能基を形成することができる。
下記特許文献5には、導電粒子の導電性を向上させる試みとして、樹脂微粒子上に銅/金めっきを行なう方法が示されている。
下記特許文献6には、非金属微粒子と、非金属微粒子を被覆し、銅を50重量%以上含む金属層と、金属層を被覆するニッケル層と、ニッケル層を被覆する金層と、を備える導電粒子が示されている。この導電粒子によれば、一般的なニッケルと金からなる導電粒子に比べて導電性が良くなるとの記載がある。
下記特許文献7には、基材微粒子、及び基材微粒子上に設けられた金属被覆層を有する導電性粒子であって、金属被覆層中の金の含有率が90重量%以上99重量%以下である導電性粒子が記載されている。
特開平08−279371号公報 特許第2794009号公報 特許第2748705号公報 国際公開第2002/035555号 特開2006−028438号公報 特開2001−155539号公報 特開2005−036265号公報
しかしながら、上記特許文献1に示すように、回路接続部材の片面に絶縁性の接着剤を形成する方法では、バンプ面積が3000μm未満に狭小化した場合、安定した接続抵抗を得るために回路接続部材中の導電粒子を増やす必要がある。このように導電粒子を増した場合、隣り合う電極間の絶縁性について未だ改良の余地がある。
また、上記特許文献2に示すように、隣り合う電極間の絶縁性を改良するために導電粒子の全表面を絶縁性膜で被覆する方法では、回路電極間の絶縁性が高くなるものの、導電粒子の導電性が低くなりやすいといった課題がある。
また、上記特許文献3、4に示すように、絶縁性の子粒子で導電粒子表面を被覆する方法では、子粒子と導電粒子との接着性の問題から、アクリルなど樹脂製の子粒子を用いる必要がある。この場合、樹脂製の子粒子を回路同士の熱圧着時に溶融させ、導電粒子を両回路へ接触させることによって、回路間で導通をとることになる。このとき、溶融した子粒子の樹脂が導電粒子の表面を被覆してしまうと、導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法と同様に、導電粒子の導電性が低くなり易いことが分かってきた。このような理由により、絶縁性の子粒子としては無機酸化物等のように比較的高硬度で溶融温度が高いものが適している。例えば、上記特許文献4では、シリカ表面を3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランで処理し、表面にイソシアネート基を有するシリカと、表面にアミノ基を有する導電粒子とを反応させる方法が例示されている。
しかしながら、粒子径が500nm以下の粒子表面を官能基で修飾するのは一般的に難しく、また官能基で修飾した後に行う遠心分離や濾過の際に、シリカなどの無機酸化物が凝集してしまう不具合が発生しやすい。更に上記特許文献4に例示される方法では、絶縁性の子粒子の被覆率をコントロールするのが難しい。
また、金属表面をメルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理する場合、金属上に僅かでもニッケル等の卑金属や銅といった酸化しやすい金属が存在すると、金属と化合物との反応が進行しにくい。
導電粒子上にシリカ等の無機物を被覆させた場合、導電粒子上の金属表面をシリカが押しつぶしたり、シリカが圧力により金属表面から外れたりすることで導電性が発現すると考えられている。本発明者らの研究により明らかになったことであるが、接着剤に含まれる導電粒子に貴金属以外の物が入っているとマイグレーションが生じやすくなる。なお、マイグレーションとは、電気回路や電極における電析を意味し、接続構造体の接続信頼性低下の原因となる。このマイグレーションは、接着剤中の不純物又は電極を構成する金属が電圧印加時にイオン化されることで発生するものと考えられている。
上記特許文献6に示すように、近年、ニッケル層上に金めっきを行うタイプの導電粒子が主流になりつつあるが、このような導電粒子では、ニッケルが溶出し、マイグレーションを起こすといった課題がある。金めっきの厚さを40nm以下に設定するとその傾向が顕著となる。
上記特許文献7に示すように、金の含有量が90重量%以上である金属被覆層で被覆された導電粒子は、信頼性の面では良好であるが、コストが高い。したがって、金の含有量が高い金属被覆層を備える導電粒子は実用的とは言い難く、近年は金属被覆層の金含有量を下げる傾向にある。これに対して、銅めっきを備える導電粒子は、導電性、コストの上で優れてはいる。しかし、銅めっきを備える導電粒子では、マイグレーションが発生しやすいため、耐吸湿性の観点で問題がある。そこで、両者(金と銅)の短所を補う為の試みがなされているが、何れも完全ではない。例えば、上記特許文献5に示す方法では、両者(金と銅)の短所を十分に補うことができない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、接続すべき電極間の抵抗値を十分に小さくできるとともにマイグレーションの発生を十分に抑制して優れた接続信頼性を達成でき且つ低コストで得ることができる導電粒子を提供することを目的とする。
本発明に係る導電粒子は、樹脂材料からなるコア粒子と、コア粒子の表面に形成された厚さ20nm以上130nm以下のパラジウム層とを備え、パラジウム層の外側表面から深さ10nmまでの領域は、パラジウム濃度が99.9質量%以上である。
コア粒子の表面上にパラジウム層が直接形成されていることが本発明のポイントの一つである。また、パラジウム層の表面及びその近傍(パラジウム層の表面から深さ10nmまでの領域)のパラジウム濃度が99.9%以上であることも本発明のポイントの一つである。
導電粒子を接着剤成分中に分散させることにより回路接続材料が製造される。回路接続材料の具体例としては、導電粒子と接着剤成分とを含有する接着剤組成物及びこれをフィルム状に成形した異方導電性フィルムが挙げられる。対向配置された一対の回路部材の間に回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧することによって、それぞれの回路部材が有する回路電極同士を電気的に接続するとともに回路部材同士を接着する。上記加熱及び加圧により、一対の電極の間に介在する導電粒子は圧縮される。
パラジウム層は優れた延性を有する。このため、一対の電極間で導電粒子が圧縮されてもパラジウム層に割れが生じにくい。そのため、圧縮後の導電粒子の導電性及び電極間の接続信頼性の両方を十分に高いレベルとすることができる。これに加え、パラジウム層の割れに起因するパラジウムのマイグレーションを防止できる。
本発明において、パラジウム層の厚さは20nm以上130nm以下である。パラジウム層の厚さが20nm以上であることで十分な導電性が得られる。他方、パラジウム層の厚さが130nm以下であることで導電粒子全体の弾性が適したものとなるとともにコストを抑制できる。パラジウムは、金、白金等の貴金属と比較して安価であり、実用的である。
パラジウム層の表面及びその近傍領域について、パラジウム濃度を99.9質量%以上としたことで、例えば、リンを含有するパラジウムで被膜層を形成した場合と比較して、接続すべき電極間の抵抗値を十分に小さくできるとともに優れた接続安定性が得られる。
本発明に係る導電粒子は、パラジウム層の外側表面に配置され、粒径20〜500nmの絶縁性粒子を更に備えることが好ましい。
絶縁性粒子がパラジウム層表面に配置された導電粒子は以下の作用により優れた接続信頼性を発揮する。すなわち、一対の電極を接続するために導電粒子が圧縮されると、絶縁性粒子がパラジウム層表面からコア粒子の方向にめり込み、これに伴って露出したパラジウム層が電極と接触する。つまり、導電粒子のパラジウム層を介して一対の電極間が導通する。一方、導電粒子の横方向(一対の電極が対向する方向に垂直な方向)については、隣接する導電粒子間に、それぞれの導電粒子が備える絶縁性粒子が介在し、絶縁性粒子同士が接触する。そのため、横方向では上記一対の電極とそれらに隣接する電極との間で絶縁性が維持される。
純度が高いパラジウムは、リンなどの不純物が比較的多く含むパラジウムと比較して導電性が高く且つ軟らかい。本発明の導電粒子は、パラジウム層の表面及びその近傍領域が高純度(99.9質量%以上)であるため、絶縁性粒子が、パラジウム層にめり込みやすく、一対の電極で導電粒子を挟んだ場合、電極とパラジウム層との接触面積がより大きくなり、抵抗が低く、接続信頼性が高くなる。
パラジウム層の表面及びその近傍領域のパラジウム濃度が99.9質量%以上であれば、パラジウム層におけるコア粒子側の領域はパラジウム以外の物質を含有していてもよい。パラジウム以外の物質を含有したパラジウムは、硬さや延び、耐薬品性などの諸特性が、パラジウムそのものとは異なるため、用途にあわせてパラジウム層全体の硬さや延性といった物理特性を任意に調整できる。いうまでもないが、パラジウム層の全体がパラジウム濃度99.9質量%以上であってもよい。
本発明において、パラジウム層に含まれる元素(例えば、パラジウム及びリン)並びにその濃度は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)によって定性及び定量することが好ましい。
本発明において、パラジウム層は還元めっき型であることが好ましい。これにより、コア粒子に対するパラジウム層の被覆率が向上し、導電粒子の導電性がより一層向上する。また、本発明は、樹脂粒子からなるコア粒子の表面に還元めっきによりパラジウム層を形成することを特徴とする導電粒子の製造方法を提供する。
還元めっきによってパラジウム層を形成した場合、コア粒子上に緻密で均質なパラジウム層が形成でき、コア粒子表面の露出が少ない導電粒子を得ることができる。また、めっき液量に応じてパラジウム層の厚さを任意に設定することも可能である。すなわち、還元めっきは、コア粒子の表面に形成するパラジウム層の厚さのコントロールが容易であるという利点がある。
更に、還元めっきは、パラジウム層のパラジウム濃度をコントロールしやすいという利点もある。すなわち、パラジウム層の表面及びその近傍領域のパラジウム濃度を99.9質量%以上に制御することが容易である。パラジウム濃度をコントロールする方法としては、所定の還元剤を使用し、その配合量を調整する方法が挙げられる。
上記絶縁性粒子はシリカ粒子であることが好ましい。シリカ粒子は、絶縁性に優れ、粒子径を制御しやすく且つ安価である。また、シリカは水中に分散させて水分散コロイダルシリカとした際に、その表面に水酸基を有するため、パラジウム層との結合性に優れている。更にシリカ表面の水酸基は、パラジウム層の表面に形成された官能基との結合性にも優れている。したがって、絶縁性粒子としてシリカ粒子を採用することで、パラジウム層の表面に絶縁性粒子を強固に付着させることができる。
本発明によれば、接続すべき電極間の抵抗値を十分に小さくできるとともにマイグレーションの発生を十分に抑制して優れた接続信頼性を達成できる。また、本発明に係る導電粒子は低コストで得ることができる。
本発明に係る導電粒子の第一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明に係る導電粒子の第二実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明に係る回路接続材料の一実施形態を模式的に示す断面図である。 回路電極同士が接続された接続構造体の一例を模式的に示す断面図である。 接続構造体の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
以下、発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[第一実施形態]
(導電粒子)
図1に示す導電粒子10Aは、樹脂材料からなるコア粒子1と、コア粒子1の表面に形成された厚さ20nm以上130nm以下のパラジウム層2とを備える。パラジウム層2の外側表面2aから深さ10nmまでの領域R1は、パラジウム濃度が99.9質量%以上である。
<コア粒子>
コア粒子1の粒径は、隣接する電極間の絶縁性を確保する観点から、隣接する電極の間隔よりも小さいことが好ましい(図4参照)。また、コア粒子1の粒径は、接続すべき電極の高さにばらつきがあるときは、十分に低い接続抵抗を得る観点から、高さのばらつきよりも大きいことが好ましい。これらの理由から、コア粒子1の粒径は、1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましく、2.0〜3.5μmであることが特に好ましい。
コア粒子1は樹脂材料からなる微粒子である。コア粒子1をなす樹脂材料としては、特に制限はないが、好適な材料として、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
<パラジウム層>
パラジウム層2は、コア粒子1の表面上に直接形成されており、コア粒子1の全体を覆っている。パラジウム層2は延性を有するため、導電粒子10Aに力が加わって変形した場合であっても金属割れが生じにくく、金属割れに伴うマイグレーションが生じにくい。また、パラジウム層2は卑金属や銅に比べて耐酸性及び耐アルカリ性に優れている。よって、後述するメルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基等の官能基と安定して結合する。更にこれらの官能基との結合性においてパラジウムと金及び白金とは同様の傾向を有するが、これらの貴金属を同体積で比較した場合、パラジウムが最も安価であり、実用的である。また、パラジウム層2は導電性に優れている。これらの理由から、パラジウム層2は、コア粒子1を被覆する金属層として好適である。
パラジウム層2の外側表面2aから深さ10nmまでの領域R1は、パラジウム濃度が99.9質量%以上である。高純度のパラジウムは、例えばリンを含有するパラジウムと比較して、硬度が低く、電気抵抗が低い(「表面技術 P651、Vol55、No10、2004」を参照)。領域R1を設けることで、抵抗が低いパラジウム(パラジウム濃度が99.9%以上)が電極と接触するため、電極間の接続抵抗を十分に低くできる。領域R1のパラジウムは、不純物が少ないことが望ましく、99.95質量%以上が好ましい。パラジウム濃度が99.9質量%以上のパラジウム層を形成する方法としては、ギ酸や酢酸、その塩、ヒドラジンを含有する還元剤を使用することが好ましい。例えばギ酸ナトリウムを還元剤に用いた場合は、パラジウム濃度はほぼ100質量%となる。
パラジウム層2は、還元めっき型のパラジウム層であることが好ましい。これにより、コア粒子1に対するパラジウム層2の被覆率が向上し、導電粒子10Aの導電性がより向上する。
還元めっきを用いることで、パラジウム層2のめっき厚さをコントロールしやすい。例えば、使用するめっき液のパラジウムイオン濃度から析出後のめっき厚さをあらかじめ算出することができるため、無駄なパラジウムや試薬を使用することが無く、低コスト化が可能である。
また、還元めっきを用いることで、緻密で均質なパラジウム層2を形成でき、コア粒子1表面の露出が少ない導電粒子10Aを得ることができる。コア粒子1が非導電材料からなるものであっても、無電解めっき(還元めっき又は置換めっき)であれば、コア粒子1の表面を完全に覆うパラジウム層2を設けることができる。
パラジウム層2の厚さは20nm以上130nm以下である。パラジウム層の厚さが20nm未満であると、十分な導電性を得られない。一方、パラジウム層2の厚さが130nmを超えると、導電粒子10A全体の弾性が不十分となる。導電粒子10A全体の弾性が不十分であると、導電粒子10Aが一対の電極で挟まれ、縦方向に潰された際、導電粒子10Aの弾性によってパラジウム層2が電極表面に十分に押し当てられる力が不十分となる。そのため、パラジウム層2と電極との接触面積が小さくなり、電極間の接続信頼性の向上効果が小さくなる。また、パラジウム層2が厚いほど、コストが高くなり、経済的に好ましくない。
また、還元めっきを用いてパラジウム層2を形成する場合、パラジウム層2のパラジウム濃度をコントロールしやすい。すなわち、領域R1のパラジウム濃度が99.9%以上のパラジウム層2をコア粒子1の表面上に設けやすい。
領域R1のパラジウム濃度が99.9質量%以上であれば、パラジウム層2のコア粒子1側はパラジウム以外の物質を含有していてもよい。パラジウム以外の物質を含有したパラジウムは、高純度なパラジウム(例えば、パラジウム濃度99.9%以上)と延性や硬さなどの諸特性が異なる。従って、パラジウム層2のコア粒子1側の領域(パラジウム層2の外側表面2aからの距離が10nmよりも深い位置から内側表面までの領域)R2にパラジウムの他に所定の物質を加えることで、用途にあわせてパラジウム層2全体の特性を任意に調整することができる。例えば、パラジウムの硬度を向上させる物質とパラジウムとを含有する領域R2を領域R1の内側に設けることで、領域R1によって十分に高い導電性を有しながら領域R2によって硬度が十分に高いパラジウム層2を形成できる。
パラジウム以外の物質としては、リンが好ましい。リンを含有させたパラジウムは、高純度のパラジウムより、硬く、耐薬品性が高い。コア粒子1側にリンを含有する領域R2を設けることで、全体がパラジウム濃度99.9質量%以上のパラジウムからなるパラジウム層2と比較してパラジウム層2が硬くなる。対向する一対の電極で導電粒子を挟み、電極間を導通させる場合に、パラジウム層が硬い方が、パラジウム層が電極にめり込み、接触面積の増加により接続抵抗が下がるため好ましい。
また、電極の材質により電極の硬さが異なるため、パラジウム層全体の硬さを調整できる方が好ましい。なお、リンを含有するパラジウムは、高純度のパラジウムと比較して導電性が低くなるものの、導電粒子10Aには高純度のパラジウムからなる領域R1があるため、電極とパラジウム層との接続抵抗は低く安定する。上記の通り、領域R2を設けることで、パラジウム層2の硬さや延びの特性が調整可能となる。
このように、パラジウム以外の物質を含有したパラジウム層を析出させる方法として、パラジウムめっき液中に各種金属イオンやその錯体を混ぜる方法や、還元剤の組成を調整する方法が挙げられる。リンを含有する還元剤を用いれば、リンが共析したパラジウム層を析出させることができる。例えば、還元剤に次亜リン酸やその塩を含有させた無電解パラジウムめっき液を用いて、コア粒子1上に数質量%のリンが共析した領域R2を形成し、次に還元剤にギ酸や酢酸、その塩、ヒドラジンを含有した無電解パラジウムめっき液を用いて、領域R1を形成することができる。
リンを供析させ、パラジウムを合金化させるための還元剤としては、次亜リン酸やその塩、亜リン酸やその塩などのリンを含有する還元剤が好ましい。還元剤としては、前記のリン含有還元剤を含むものであれば、他の還元剤(例えば、水素化ホウ素化合物、アミンボラン化合物、及びそれらの塩)を含有していてもよく、特に限定されない。
還元めっきによってパラジウム層2を形成する場合、めっき液量を調整することで領域R2及び領域R1の厚さも任意に調整することができる。すなわち、リンを含有する領域R2のより厚くすれば、パラジウム層2全体は硬くなり、他方、より薄くすれば、パラジウム層2全体は軟らかくなる。これらは、電極の材質にあわせて決定すればよい。
領域R2のリン濃度は、導電粒子10Aの用途や目的に応じて選択すればよいが、0.1質量%以上13質量%未満が好ましい。リンが共析したことによるパラジウムの特性の変化を明確にするためには、リン濃度が1質量%以上10質量%未満がより好ましく、1質量%以上8質量%未満が更に好ましい。
領域R1の厚さが10nm未満であると、領域R1の内側に領域R2を設けた場合、領域R2の影響が現れる。
(パラジウム層の分析)
パラジウム層2の成分分析には、原子吸光光度計が使用できる。例えば、パラジウム層2を酸などで溶解した液を、原子吸光光度計を用いて分析して、金属イオン濃度を測定し、算出する方法がある。また、ICP発光分析装置を用いてパラジウム層2を分析してもよい。ICP発光分析装置を用いると、定性分析と同時に不純物の定量も可能となる。また、パラジウム層2中のリン濃度は、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)を使用して定量することもできる。なお、低倍率でのEDX測定では複数粒子から情報を得てしまうため、高倍率でのEDX測定が好ましい。
[第二実施形態]
次に、本発明に係る導電粒子の第二実施形態について説明する。図2に示す通り、本実施形態に係る導電粒子10Bは、コア粒子1と、コア粒子1の表面に形成されたパラジウム層2と、パラジウム層の外側表面に配置された多数の絶縁性粒子5とを備える。すなわち、導電粒子10Bは、絶縁性粒子5を更に備える点において、導電粒子10Aと相違する。以下、絶縁性粒子5及びこれによる作用効果について主に説明する。
<絶縁性粒子>
絶縁性粒子5は無機酸化物であることが好ましい。仮に、絶縁性粒子5が有機化合物である場合、回路接続材料の作製工程で絶縁性粒子5が変形しやすい。その結果、回路接続材料の特性が変化しやすい傾向がある。
絶縁性粒子5を構成する無機酸化物としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム、及びマグネシウムの群からなるより選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物が好ましい。これらの酸化物は単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。また、無機酸化物としては、上述の元素を含む酸化物の中でも、絶縁性に優れ、粒子径を制御した水分散コロイダルシリカ(SiO)が最も好ましい。
このような無機酸化物からなる絶縁性粒子(以下、「無機酸化物微粒子」という。)の市販品としては、例えば、スノーテックス、スノーテックスUP(日産化学工業(株)製)、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学工業(株)製)等が挙げられる。
無機酸化物微粒子の粒子径は、コア粒子1より小さいことが好ましい。具体的には、無機酸化物微粒子の平均粒子径は20〜500nmであることが好ましい。なお、無機酸化物微粒子の粒子径は、BET法による比表面積換算法又はX線小角散乱法で測定される。粒子径が20nm未満であると、パラジウム層2の外側表面に吸着した無機酸化物微粒子が絶縁膜として作用せずに、電極間の一部にショートを発生させる傾向がある。一方、粒子径が500nmを超えると、電極間で導電性が得られない傾向がある。
導電粒子10Bは、パラジウム層2の外側表面に絶縁性粒子5を備える。導電粒子10Bを分散させて得た回路接続材料を対向する一対の電極間に配置させ、電極同士で挟み、電極同士を導通接続させる場合、絶縁性粒子がパラジウム層表面からコア粒子側へめり込む。これに伴って露出したパラジウム層2が一対の電極と接触する。このとき、上記導電粒子の10Bの領域R1はパラジウム濃度99.9質量%以上であり導電性に優れるため、導通抵抗が小さくなる。更に、高純度のパラジウムは軟らかく、絶縁性粒子5がめり込みやすいため、電極とパラジウム層2の接続面積が増加して好ましい。
導電粒子10Bは、コア粒子1側にパラジウム以外の物質を含有した領域R2を備えてもよい。例えば、コア粒子1側に数質量%のリンを含有する領域R2を設けた場合、パラジウム層2全体が硬くなるため、絶縁性粒子5は領域R1へめり込みやすく、パラジウム層2全体は電極へめり込みやすくなる。すなわち、絶縁性粒子5のパラジウム層2へのめり込みと、パラジウム層2の電極へのめり込みの両立が図られ、接続抵抗がより一層小さくなり好ましい。
(導電粒子の製造方法)
上述の導電粒子10A,10Bの製造方法について説明する。導電粒子10Aは、コア粒子1の表面にパラジウム層2を形成する工程S1を経て製造される。導電粒子10Bは、この工程S1の後に、パラジウム層2の表面を、メルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理し、パラジウム層2の表面に官能基を形成する工程S2と、官能基が形成されたパラジウム層2の表面を高分子電解質で処理する工程S3と、官能基が形成され、且つ高分子電解質で処理されたパラジウム層2の表面に絶縁性粒子1を化学吸着により固定化する工程S4とを経て製造される。なお、以下では、絶縁性粒子5が、表面に水酸基が形成された無機酸化物微粒子である場合について説明する。
<パラジウム層を形成する工程(S1)>
この工程は、コア粒子1の表面にパラジウム層2を形成して導電粒子10Aを製造する工程である。その具体的な方法としては、例えば、パラジウムによるめっきが挙げられる。このめっき工程では、コア粒子1の表面をアルカリなどで脱脂した後、酸で中和しコア粒子1の表面調整を行う。その後パラジウム触媒を付与し、上述したリン含有還元剤により還元型無電解パラジウムめっきを行うのが良い。還元型無電解パラジウムめっきの組成としては、(1)硫酸パラジウムのような水溶性パラジウム塩、(2)還元剤、(3)錯化剤及び(4)pH調整剤を加えたものが好ましい。パラジウム層2のパラジウム濃度に調整する方法としては、例えば、上記に示したパラジウムめっきを構成する(1)から(4)に示した成分を調整する方法が用いられる。特に、パラジウム濃度99.9質量%以上のめっき膜を得るためには、ギ酸や酢酸、その塩、ヒドラジンを含有した還元剤を選定する方法やその還元剤量を調整する方法が挙げられる。上記に示した還元剤を単体で用いてもよいが、組み合わせても良い。特にギ酸の塩は、pHの変動が少なく好ましい。
リンを含有したパラジウムを得る方法としては、リンを含有した還元剤を使用する方法、めっき反応のpHを制御する方法、めっき温度を調整する方法などのパラジウムめっき液中のリン濃度を制御する方法等が挙げられる。また、錯化剤の種類や濃度を調整する方法でも、リン濃度の調整が可能である。なかでも、反応制御に優れていることから、めっき反応のpHを制御する方法が好適に用いられる。上記に示した方法は単独で用いてもよいが、それぞれを組み合わせるとリン濃度の調整がしやすく、めっき液の安定性の制御もしやすい。
<パラジウム層の表面に官能基を形成する工程(S2)>
導電粒子10Bを製造するには、上記のようにして得た導電粒子10Aを母粒子として用い、その表面に絶縁性粒子5を配置する。この工程は、母粒子のパラジウム層2の外側表面を、パラジウムに対して配位結合を形成するメルカプト基、スルフィド基、又はジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理する工程である。これにより、パラジウム層2の表面に官能基を形成する。
パラジウム層2の表面処理に用いる化合物としては、具体的には、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸メチル、メルカプトコハク酸、チオグリセリン、システイン等が挙げられる。これらの化合物で処理されたパラジウム層2の表面に形成される官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、又はアルコキシカルボニル基が挙げられる。
パラジウムはチオール基(メルカプト基)と反応しやすいのに対し、ニッケルのような卑金属はチオール基と反応し難い。従って、コア粒子1をパラジウム層2で被覆することで、コア粒子をニッケル層で被覆し、更に金層で被覆した従来品と比較してチオール基との反応性が向上する。なお、ニッケル層及び金層で被覆された従来品は金層の厚さが30nm以下であると粒子表面のニッケル割合が高くなる傾向がある。
パラジウム層2の表面を上記化合物で処理する具体的な方法としては、例えば、メタノール、エタノール等の有機溶媒中にメルカプト酢酸などの化合物を10〜100mmol/l程度分散させて得た液体中に、パラジウム粒子を分散させる方法が挙げられる。
<パラジウム層に絶縁性粒子を吸着させる工程(S3,S4)>
この工程は、官能基が形成されたパラジウム層2の表面を高分子電解質で処理した後に、パラジウム層2の表面に絶縁性粒子5を化学吸着させる工程である。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、又はアルコキシカルボニル基のような官能基を有するパラジウム層2の表面電位(ゼータ電位)は、通常、pHが中性領域であればマイナスである。一方で、後工程でパラジウム層2の表面に吸着させる絶縁性粒子5の表面は、水酸基を有する無機酸化物からなるため、絶縁性粒子5の表面電位も通常マイナスである。このように、表面電位がマイナスであるパラジウム層2の周囲には、表面電位がマイナスである絶縁性粒子5が吸着し難い傾向がある。そこで、パラジウム層2の表面を高分子電解質で処理することにより、パラジウム層2の表面に絶縁性粒子5が被覆しやすい状態にする。
高分子電解質で処理した後のパラジウム層2の表面に絶縁性粒子5を吸着させる方法としては、高分子電解質と無機酸化物を、パラジウム層2の表面に交互に積層する方法が好ましい。より具体的には、以下の工程(1)、(2)を順次行うことで、導電粒子10Bが得られる。
工程(1):工程S2における処理を経た母粒子(導電粒子10A)を、高分子電解質溶液に分散させ、パラジウム層2の表面に高分子電解質を吸着させる。その後、母粒子をリンスする。
工程(2):リンス後の母粒子を無機酸化物微粒子の分散溶液に分散し、母粒子の表面をなすパラジウム層2に無機酸化物微粒子を吸着させる。その後、母粒子をリンスする。
工程(1)において、母粒子の表面に高分子電解質薄膜を形成し、工程(2)において、高分子電解質薄膜を介して母粒子の表面に無機酸化物微粒子を化学吸着により固定化する。この高分子電解質薄膜を用いることにより、母粒子の表面を、欠陥なく均一に無機酸化物微粒子で被覆することができる。工程(1)、(2)を経て得られた導電粒子10Bが分散した回路接続材料を用いて回路電極を接続すると、電極間隔が狭ピッチでも絶縁性が確保され、電気的に接続する電極間では接続抵抗が低く良好となる。
上記の工程(1)、(2)を有する方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films, 210/211, p831(1992) 参照)。
この交互積層方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層して複合膜(交互積層膜)が得られる。
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料が引き合うことにより膜成長するので、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。
Lvovらは交互積層法を、微粒子に応用し、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir、Vol.13、(1997)p6195−6203 参照)。
この方法を用いると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子と、その反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)などとを交互に積層することで、シリカ微粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
導電粒子10Bの製造方法では、高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子の分散液に母粒子を浸漬後、反対電荷を有する微粒子分散液又は高分子電解質溶液に浸漬する前に、溶媒のみによるリンスによって余剰の高分子電解質溶液若しくは無機酸化物微粒子の分散液を母粒子から洗い流すことが好ましい。
母粒子に吸着した高分子電解質及び無機酸化物微粒子は、母粒子表面に静電的に吸着しているために、このリンスの工程で母粒子表面から剥離することはない。しかし、母粒子吸着していない余剰の高分子電解質又は無機酸化物微粒子が、それらと反対電荷を有する溶液中に持ち込まれると、溶液内でカチオン、アニオンが混ざり、高分子電解質と無機酸化物微粒子の凝集や沈殿を起きることがある。このような不具合をリンスによって防止することができる。
リンスに用いる溶媒としては、水、アルコール、アセトン等があるが、通常、過剰な高分子電解質溶液又は無機酸化物微粒子の分散液を除去し易い点において、比抵抗値が18MΩ・cm以上のイオン交換水(いわゆる超純水)が用いられる。
高分子電解質溶液は、水、又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に高分子電解質を溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖又は側鎖に持つ高分子を用いることができる。この場合はポリカチオンを用いるのが良い。
ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミド及びそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体などを用いることができる。
高分子電解質の中でもポリエチレンイミンは電荷密度が高く、結合力が強い。これらの高分子電解質の中でも、エレクトロマイグレーションや腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン及びアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、ハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を含まないものが好ましい。
これらの高分子電解質は、いずれも水溶性であるもの、又は水と有機溶媒との混合液に可溶なものであり、高分子電解質の分子量としては、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、500〜200,000程度のものが好ましい。なお、溶液中の高分子電解質の濃度は、一般に、0.01〜10重量%程度が好ましい。また高分子電解質溶液のpHは、特に制限はない。
母粒子を被覆する高分子電解質薄膜の種類、分子量、又は濃度を調整することにより、無機酸化物微粒子の被覆率をコントロールすることができる。
具体的には、ポリエチレンイミンなど、電荷密度の高い高分子電解質薄膜を用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質薄膜を用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
また、高分子電解質の分子量が大きい場合、無機酸化物微粒子の被覆率が高くなる傾向があるとともに、無機酸化物微粒子をパラジウム層2に強固に吸着させることができる。結合力という観点で見た場合、高分子電解質の分子量は10000以上であることが好ましい。一方、高分子電解質の分子量が小さい場合、無機酸化物微粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
高分子電解質を高濃度で用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、無機酸化物微粒子の被覆率が低くなる傾向がある。無機酸化物微粒子の被覆率が高い場合は絶縁性が高く導電性が不十分となる傾向があり、無機酸化物微粒子の被覆率が低い場合は導電性が高く絶縁性が不十分となる傾向がある。
無機酸化物微粒子は一層のみ被覆されているのが良い。複層積層すると積層量のコントロールが困難になる。また、無機酸化物微粒子の被覆率は、20〜100%の範囲であることが好ましく、30〜60%の範囲であることが更に好ましい。この被覆率は下記式によって算出される値である。
Figure 2011233297
無機酸化物微粒子の被覆率は、示差走査電子顕微鏡(倍率8000倍)による観察によって得られる、下記の測定値に基づくものである。すなわち、被覆率は、母粒子及び無機酸化物微粒子のそれぞれの粒子径、並びに1個の核粒子に付着している絶縁性粒子の個数に基づき、算出される値である。任意に選択した粒子50個について上記のようにして測定し、その平均値を算出する。
母粒子の粒径は、以下のようにして測定される。すなわち、1個の母粒子を任意に選択し、これを示差走査電子顕微鏡で観察してその最大径及び最小径を測定する。この最大径及び最小径の積の平方根をその粒子の粒径とする。任意に選択した母粒子50個について上記のようにして粒径を測定し、その平均値を母粒子の粒径(D)とする。無機酸化物微粒子の粒径についても、これと同様にして任意の絶縁性粒子50個についてその粒径を測定し、その平均値を無機酸化物微粒子の粒子径(D)とする。
1個の導電粒子が備える絶縁性粒子の個数は、以下のようにして測定される。すなわち、複数の無機酸化物微粒子で表面の一部が被覆された導電粒子1個を任意に選択する。そして、これを示差走査電子顕微鏡で撮像し、観察し得る母粒子表面上に付着している無機酸化物微粒子の数をカウントする。これにより得られたカウント数を2倍にすることで1個の母粒子に付着している無機酸化物微粒子の数を算出する。任意に選択した導電粒子50個について上記のようにして無機酸化物微粒子の数を測定し、その平均値を1個の導電粒子が備える無機酸化物微粒子の個数とする。
上記式の「母粒子の全表面積」は、上記Dを直径とする球の表面積を意味する。一方、核粒子表面の絶縁被覆で覆われている部分の面積は、上記Dを直径とする円の面積の値に1個の導電粒子が備える絶縁性粒子の個数を乗ずることによって得られる値を意味する。
無機酸化物微粒子の分散溶液中のアルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン濃度が100ppm以下であることが好ましい。これにより、隣接する電極間の絶縁信頼性を向上させやすくなる。また、無機酸化物微粒子としては、金属アルコキシドの加水分解反応、いわゆるゾルゲル法により製造される無機酸化物微粒子が好適である。
特に、無機酸化物微粒子としては、水分散コロイダルシリカ(SiO)が好ましい。水分散コロイダルシリカは表面に水酸基を有するため、母粒子との結合性に優れ、粒子径を揃えやすく、安価である点において、無機酸化物微粒子に好適である。
一般的に水酸基は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基と強固な結合を形成することで知られる。水酸基とこれら官能基の結合の具体的な様式としては、脱水縮合による共有結合や水素結合が挙げられる。従って、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基などの官能基が形成されたパラジウム層2に対して、表面に水酸基を有する無機酸化物微粒子は、強固に吸着することが可能となる。
なお、無機酸化物微粒子の表面の水酸基は、シランカップリング剤などでアミノ基やカルボキシル基、エポキシ基に変性することが可能であるが、無機酸化物の粒子径が500nm以下の場合、困難である。従って、官能基の変性を行わずに母粒子を無機酸化物微粒子で被覆することが望ましい。
以上のようにして完成した導電粒子10Bを加熱乾燥することで、絶縁性粒子5と母粒子との結合を更に強化することができる。結合力が増す理由としては、例えば、パラジウム層2の表面のカルボキシル基等の官能基と絶縁性粒子5の表面の水酸基との化学結合、又はパラジウム層2の表面のカルボキシル基と絶縁性粒子5の表面のアミノ基の脱水縮合が促進されることが挙げられる。また加熱を真空で行なうと、金属のさび防止の観点から好ましい。
加熱乾燥の温度は60〜200℃であることが好ましく、加熱時間は10〜180分であることが好ましい。温度が60℃未満の場合や加熱時間が10分未満の場合は、絶縁性粒子5が母粒子から剥離しやすく、温度が200℃を超える場合や加熱時間が180分を超える場合は、母粒子が変形しやすいので好ましくない。
(粒子の観察)
コア粒子を被覆するめっき膜(パラジウム層)や、めっき膜上に配置された絶縁性粒子などの観察には、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いることができる。画像により、めっき膜表面や絶縁性微粒子の配置位置や数などを確認できる。
(回路接続材料)
上記のようにして作成した導電粒子10A又は導電粒子10Bを接着剤成分中に分散させることによって接着剤組成物を調製する。回路接続材料として、ペースト状の接着剤組成物をそのまま使用してもよいし、これをフィルム状に成形して得た異方導電フィルムを使用してもよい。図3に示す異方導電性フィルム50は、接着剤成分20に導電粒子10Bを分散させたものである。
(接続構造体)
図4に示す接続構造100は、相互に対向する第1の回路部材30及び第2の回路部材40を備えており、第1の回路部材30と第2の回路部材40との間には、これらを接続する接続部50aが設けられている。
第1の回路部材30は、回路基板(第1の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される回路電極(第1の回路電極)32とを備える。第2の回路部材40は、回路基板(第2の回路基板)41と、回路基板41の主面41a上に形成される回路電極(第2の回路電極)42とを備える。
回路部材の具体例としては、ICチップ(半導体チップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ、ドライバーIC等のチップ部品やリジット型のパッケージ基板などが挙げられる。これらの回路部材は、回路電極を備えており、多数の回路電極を備えているものが一般的である。上記回路部材が接続される、もう一方の回路部材の具体例としては、金属配線を有するフレキシブルテープ基板、フレキシブルプリント配線板、インジウム錫酸化物(ITO)が蒸着されたガラス基板などの配線基板が挙げられる。異方導電性フィルム50によれば、これらの回路部材同士を効率的且つ高い接続信頼性をもって接続することができる。したがって、異方導電性フィルム50は、微細な接続端子(回路電極)を多数備えるチップ部品の配線基板上へのCOG実装もしくはCOF実装に好適である。
接続部50aは回路接続材料に含まれる接着剤成分の硬化物20aと、これに分散している導電粒子10Bとを備える。そして、接続構造100においては、対向する回路電極32と回路電極42とが、導電粒子10Bのパラジウム層2を介して電気的に接続されている。より具体的には、図4に示す通り、絶縁性粒子5が母粒子にめり込み、パラジウム層2が、回路電極32,42の双方に直接接触している。他方、横方向は母粒子間に絶縁性粒子5が介在することで絶縁性が維持される。従って、異方導電性フィルム50を用いれば、10μmレベルの狭ピッチでの絶縁信頼性を向上させることが可能となる。
接着剤成分20としては、熱反応性樹脂と硬化剤の混合物が用いられ、具体的には、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物が好ましい。
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独に又は2種以上を混合して用いることが可能である。
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。これによりエレクトロマイグレーションを防止しやすくなる。
潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。この他、接着剤には、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物の混合物や紫外線などのエネルギー線硬化性樹脂が用いられる。
接着剤成分20には、接着後の応力を低減するため、又は接着性を向上するために、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を混合することができる。
接着剤組成物をフィルム状にするためには、フェノキシ樹脂、当該組成物にポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することが効果的である。これらのフィルム形成性高分子は、反応性樹脂の硬化時の応力緩和にも効果がある。特に、フィルム形成性高分子が、水酸基などの官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましい。
フィルムの形成は、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤、及びフィルム形成性高分子からなる接着組成物を、有機溶剤に溶解又は分散させることにより、液状化して、剥離性基材(セパレータフィルム)上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。このとき用いる有機溶剤としては、材料の溶解性を向上させる点において、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が好ましい。
異方導電性フィルム50の厚さは、導電粒子の粒径及び接着剤組成物の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmであることが好ましい。1μm未満では充分な接着性が得られず、100μmを超えると導電性を得るために多量の導電粒子を必要とするために現実的ではない。こうした理由から、厚さは3〜50μmであることがより好ましい。
(接続構造体の製造方法)
次に、接続構造体100の製造方法について説明する。図5は、接続構造体の製造方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。本実施形態では、異方導電性フィルム50を熱硬化させ、最終的に接続構造体100を製造する。
所定の長さに切断した異方導電性フィルム50を回路部材30の主面31a上に載置する(図5(a))。この段階では、異方導電性フィルム50の一方面上にはセパレータフィルム52が残存した状態となっている。
次に、図5(a)の矢印A及びB方向に加圧し、異方導電性フィルム50を第1の回路部材30に仮固定する(図5(b))。このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30.0MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は異方導電性フィルム50が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜100℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.1〜2秒間の範囲で行うことが好ましい。
セパレータフィルム52を剥がした後、図5(c)に示すように、第2の回路部材40を、第2の回路電極42を第1の回路部材30の側に向けるようにして異方導電性フィルム50上に載せる。そして、異方導電性フィルム50を加熱しながら、図5(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。このときの加熱温度は、接着剤成分20が硬化可能な温度とする。加熱温度は、60〜180℃が好ましく、70〜170℃がより好ましく、80〜160℃が更に好ましい。加熱温度が60℃未満であると硬化速度が遅くなる傾向があり、180℃を超えると望まない副反応が進行し易い傾向がある。加熱時間は、0.1〜180秒が好ましく、0.5〜180秒がより好ましく、1〜180秒が更に好ましい。
接着剤成分20の硬化により接続部50aが形成されて、図4に示すような接続構造体100が得られる。接続の条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択される。なお、接着剤成分20として、光によって硬化するものを使用した場合には、異方導電性フィルム50に対して活性光線やエネルギー線を適宜照射すればよい。活性光線としては、紫外線、可視光、赤外線等が挙げられる。エネルギー線としては、電子線、エックス線、γ線、マイクロ波等が挙げられる。
以上、本発明に係る導電粒子及び導電粒子の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、導電粒子10Aの変形例として、パラジウム層2の表面を被覆する他の導電層(例えば金層)を更に有する導電粒子が挙げられる。また、導電粒子10Bの変形例として、パラジウム層2の表面を被覆する他の導電層(例えば金層)を更に有し、この導電層の表面に絶縁性粒子5を配置した導電粒子が挙げられる。なお、母粒子の最表面がパラジウム以外の金層である場合においても、最表面がパラジウム層2の場合と同様に、製造過程において加熱乾燥することで、絶縁性粒子と母粒子との結合を更に強化することができる。
また、異方導電性フィルムの一例として導電粒子10Bを使用したものを挙げたが、導電粒子10Bの代わりに導電粒子10Aを使用して異方導電性フィルムを作製してもよい。
以下、実施例により本発明を説明する。
(母粒子1)
平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(樹脂微粒子)3gに対し、アルカリ脱脂を施した後、酸で中和した。pH6.0に調整したカチオン性高分子液100mlに、上記樹脂微粒子を添加し、60℃で1時間攪拌した。その後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を行った。パラジウム触媒であるアトテックネネオガント834(アトテックジャパン(株)製、商品名)を8重量%含有するパラジウム触媒化液100mLに水洗後の樹脂微粒子を添加し、35℃で30分攪拌した。その後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を行った。パラジウム触媒液へ繰り返し樹脂微粒子を添加して、樹脂微粒子表面に十分な量のパラジウム触媒を付与した。なお、「パラジウム触媒」とは、樹脂微粒子表面にパラジウム層を形成するための触媒であって、本発明におけるパラジウム層そのものではない。
次に、水洗後の樹脂微粒子をpH6.0に調整した3g/Lの次亜リン酸ナトリウム液に添加し、表面が活性化された樹脂微粒子(コア粒子)を得た。その後、表面が活性化された樹脂微粒子を蒸留水に浸漬し、超音波分散した。
上記の液を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、無電解パラジウムめっき液であるパレット(小島化学薬品(株)製、商品名)に、70℃の条件で、表面が活性化された樹脂微粒子を浸漬し、樹脂微粒子表面に20nmの無電解パラジウムめっきを行った。
その後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解して、樹脂微粒子上に厚さ20nmのパラジウム層を有する母粒子1を作製した。
(母粒子2)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、クエン酸酸ナトリウム50g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液a及びめっき液bをそれぞれ同時かつ平行に10ml/minで添加し、無電解パラジウムめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液aとしては、母粒子1で使用したパレットの建浴剤を使用した。なお、めっき液aの中にはパラジウムが20g/Lの濃度で溶解している。上記記載のパラジウムとは金属パラジウムとしての重量換算値である。めっき液bとしては、母粒子1で使用したパレットの還元剤を2倍(体積)に希釈して使用した。サンプリングした粒子を原子吸光光度計による分析によって、パラジウムの膜厚を調整した。パラジウム膜厚が40nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。反応が停止した時はpH6.0であった。添加終了後、濾過と水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解して、樹脂微粒子上に厚さ40nmのパラジウム層を有する母粒子2を作製した。
(母粒子3)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、クエン酸酸ナトリウム50g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液c及びめっき液dをそれぞれ同時かつ平行に10ml/minで添加し、無電解パラジウムめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液cとしては、パラジウム:20g/L、クエン酸ナトリウム:250g/L、エチレンジアミン50g/Lを混合し、pH6.0に調整された液を用いた。上記記載のパラジウムとは金属パラジウムとしての重量換算値である。めっき液dとしては、ギ酸ナトリウム:100g/Lを混合し、水酸化ナトリウムと硫酸でpH6.0に調整した液を用いた。サンプリングした粒子を原子吸光光度計による分析によって、パラジウムの膜厚を調整した。パラジウム膜厚が80nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。添加終了後、濾過と水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解して、樹脂微粒子上に厚さ80nmのパラジウム層を有する母粒子3を作製した。
(母粒子4)
定量ポンプでの滴下時間を長くしたこと以外は、母粒子3と同様の方法でパラジウムめっきを行い、パラジウム膜厚が130nmになった時点で無電解パラジウムめっき液の添加を中止した。添加終了後、濾過と水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解して、樹脂微粒子上に厚さ130nmのパラジウム層を有する母粒子4を作製した。
(母粒子5)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、無電解パラジウムめっき液であるAPP(石原薬品工業(株)製、商品名)に、50℃の条件で浸漬し、樹脂微粒子表面に10nmの無電解パラジウムめっきを行った。樹脂微粒子はうっすら濃い灰色に変化していた。この粒子を濾過した後、続けて無電解パラジウムめっき液であるパレット(小島化学薬品(株)製、商品名)に、70℃の条件で浸漬し、無電解パラジウムめっきを行った。最終的に20nmのパラジウム層が得られた時点で、濾過を行った。その後、水洗を3回行い、40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解した。以上の方法で樹脂微粒子上に、最表面のパラジウム濃度(領域Rのパラジウム濃度)と樹脂微粒子側のパラジウム濃度が異なる厚さ20nmのパラジウム層を有する母粒子を作製した。なお無電解パラジウムめっき液であるAPPは、主成分として、還元剤である次亜リン酸やその塩、リン酸やその塩等のリン含有物質を含有していることが知られている。
(母粒子6)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、無電解パラジウムめっき液であるメルプレートPal6700(メルテックス株式会社製 製品名)に、50℃、pH8の条件で浸漬し、樹脂微粒子表面に20nmの無電解パラジウムめっきを行った。樹脂微粒子はうっすら濃い灰色に変化していた。この粒子を濾過した後、続けて無電解パラジウムめっき液であるパレット(小島化学薬品(株)製、商品名)に、70℃の条件で浸漬し、無電解パラジウムめっきを行った。最終的に40nmのパラジウム層が得られた時点で、濾過を行った。その後、水洗を3回行い、40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解した。以上の方法で樹脂微粒子上に、最表面のパラジウム濃度と樹脂微粒子側のパラジウム濃度が異なる厚さ40nmのパラジウム層を有する母粒子6を作製した。なお無電解パラジウムめっき液であるメルプレートPal6700は、主成分として、還元剤である次亜リン酸やその塩、リン酸やその塩等のリン含有物質を含有していることが知られている。
(母粒子7)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、クエン酸ナトリウム50g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液e及びめっき液fをそれぞれ同時かつ平行に10ml/minで添加し、無電解パラジウムめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液eとしては、パラジウム:20g/L、クエン酸ナトリウム:50g/L、エチレンジアミン20g/Lを混合し、pH6.0に調整された液を用いた。なお、めっき液eのなかではパラジウムはイオンや錯体の状態で溶解しており、上記のパラジウムの量「20g/L」とは金属パラジウムとしての重量換算値である。めっき液fとしては、次亜リン酸ナトリウム:1.2mol/Lを混合し、水酸化ナトリウムでpH6.0に調整した液を用いた。サンプリングした粒子の原子吸光光度計による分析によって、樹脂微粒子表面に形成される無電解パラジウム層の厚さを調整した。無電解パラジウム層の厚さが90nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止し、濾過を行った。粒子は灰色を呈していた。続けてこの粒子を、クエン酸酸ナトリウム50g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、母粒子3と同様に定量ポンプを用いて、めっき液c及びめっき液dをそれぞれ同時かつ平行に10ml/minで添加し、無電解パラジウムめっきを樹脂微粒子に対して行った。サンプリングした粒子を原子吸光光度計による分析によって、パラジウムの膜厚を調整した。パラジウム膜厚が130nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。添加終了後、濾過と水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解した。以上の方法で樹脂微粒子上に、最表面のパラジウム濃度と樹脂微粒子側のパラジウム濃度が異なる厚さ130nmのパラジウム層を有する母粒子7を作製した。
(母粒子8)
母粒子1と同様の方法でパラジウム触媒を付与し、活性化した樹脂微粒子を、酒石酸ナトリウム20g/Lが溶けた70℃の浴中に分散させた。そして、定量ポンプを用いて、めっき液g及びめっき液hをそれぞれ同時かつ平行に15ml/minで添加し、添加無電解ニッケルめっきを樹脂微粒子に対して行った。めっき液gとしては、ニッケル:224g/L、酒石酸ナトリウム:20g/Lを混合した液を用いた。めっき液hとしては、次亜リン酸ナトリウム:226g/L、水酸化ナトリウム:85g/Lを混合した液を用いた。サンプリングした粒子の原子吸光光度計による分析によって、ニッケルの膜厚を調整した。ニッケル膜厚が20nmになった時点で無電解めっき液の添加を中止した。添加終了後、気泡の発生が停止するのを待ち、濾過と水洗を行った。反応が停止した時は、pH6.2であり微粒子は灰色であった。次に、無電解金めっき液であるHGS―500(日立化成工業株式会社製 製品名)を80℃の条件で建浴した液に、上記無電解ニッケルめっき後の樹脂微粒子を浸漬し、置換金メッキを行い、濾過と水洗を行った。その後、無電解金めっき液であるHGS−2000(日立化成工業株式会社製 製品名)を60℃で建浴した液に前記粒子を浸漬し、濾過と水洗を行った。
上記の液を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し、水洗を3回実施した。その後、40℃で7時間の真空乾燥を行い解砕により凝集を解した。これにより、樹脂微粒子と、樹脂微粒子表面を被覆する厚さ20nmの無電解ニッケル層と、無電解ニッケル層表面を被覆する厚さ20nmの無電解金めっき層と、を有する母粒子8を得た。
(母粒子9)
無電解金めっき液であるHGS―500(日立化成工業株式会社製 製品名)を使用する代わりに、無電解パラジウムめっき液であるパレット(小島化学薬品(株)製、商品名)を、70℃の条件で使用したこと以外は、母粒子8と同じ方法で無電解めっきを行い、濾過と水洗を3回行った。40℃で7時間真空乾燥した後、解砕により凝集を解した。以上の方法で樹脂微粒子上に、厚さ20nmのニッケル層、このニッケル層の表面に厚さ20nmのパラジウム層を有する母粒子9を作製した。
(絶縁被覆処理)
次に、上記で得た母粒子1〜9を用いて導電粒子1〜9をそれぞれ作製した。母粒子の表面に絶縁性粒子であるシリカ微粒子を吸着させる絶縁被覆処理は特開2008−120990号公報に公開されている方法で実施した。なお、実施例では、説明の便宜上、表面に絶縁性粒子を備える母粒子を、「導電粒子」と記し、表面に絶縁性粒子と備えない母粒子と区別しているが、上述した母粒子1及び2と後述する導電粒子1及び2は、全て本発明に係る導電粒子に相当する。
(導電粒子1)
メルカプト酢酸8mmolをメタノール200mlに溶解させて反応液を作製した。この反応液に母粒子1を1g加え、室温(25℃)で2時間スリーワンモーターと直径45mmの攪拌羽で攪拌した。メタノールで洗浄後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1を濾過することで表面にカルボキシル基を有する母粒子1を得た。
次に、分子量70000の30%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬工業(株)製)を超純水で希釈し、0.3重量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。カルボキシル基を有する母粒子1を0.3重量%ポリエチレンイミン水溶液に1g加え、室温で15分攪拌した。
その後、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。更に直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、メンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄を行うことで、母粒子1に吸着していないポリエチレンイミンを除去した。
次に、絶縁性粒子であるコロイダルシリカの分散液(質量濃度10%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−3、平均粒子径35nm)を超純水で希釈して0.1重量%シリカ分散溶液を得た。ポリエチレンイミンによる処理後の母粒子1を0.1重量%シリカ分散溶液に入れて室温で15分攪拌した。
次に、直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。更に直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で母粒子1をろ過し、メンブレンフィルタ上にて200gの超純水で2回洗浄を行うことで、母粒子1に吸着していないシリカを除去した。その後80℃で30分の条件で乾燥を行い、120℃で1時間加熱乾燥行うことで、母粒子1の表面にシリカ(子粒子)が吸着した導電粒子1を作製した。
(導電粒子2)
母粒子1の代わりに母粒子2を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−7(質量濃度10%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−7、平均粒子径75nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子2を作製した。
(導電粒子3)
母粒子1の代わりに母粒子3を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−13(質量濃度10%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−13、平均粒子径130nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子3を作製した。
(導電粒子4)
母粒子1の代わりに母粒子4を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−20(質量濃度10%、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−20、平均粒子径200nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子4を作製した。
(導電粒子5)
母粒子1の代わりに母粒子5を用い、コロイダルシリカ分散液として、PL−3の代わりにPL−50(質量濃度10nm、扶桑化学工業(株)製、製品名:クオートロンPL−50、平均粒子径500nm)を用いたこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子5を作製した。
(導電粒子6)
母粒子3の代わりに母粒子6を用いたこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子6を作製した。
(導電粒子7)
母粒子3の代わりに母粒子7を用いたこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子7を作製した。
(導電粒子8)
母粒子3の代わりに母粒子8を用いたこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子8を作製した。
(導電粒子9)
母粒子3の代わりに母粒子9を用いたこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子9を作製した。
(実施例1)
<異方導電性フィルムの作製>
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC)10g及びアクリルゴム(ブチルアクリレート40部、エチルアクリレート30部、アクリロニトリル30部、グリシジルメタクリレート3部の共重合体、分子量:85万)7.5gを酢酸エチル30gに溶解し、30重量%溶液を得た。
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185、旭化成エポキシ(株)製、商品名:ノバキュアHX−3941)30gをこの溶液に加え、撹拌して接着剤成分を作製した。
上記で作成した4gの導電粒子1を酢酸エチル10g中に分散した。
導電粒子1が接着剤成分に対して37重量%となるように、上記粒子分散液を接着剤溶液に分散させ、この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ40μm)にロールコータで塗布し、90℃、10分乾燥し、厚さ25μmの異方導電性フィルムを作製した。
<接続構造体の作製>
異方導電性フィルムを用いて、金バンプ(面積:30×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンブ数362)付きチップ(1.7×17mm、厚さ:0.5mm)とITO回路付きガラス基板(厚さ:0.7mm)の接続構造体サンプルを、以下の方法で作製した。
まず、異方導電性フィルム(2×19mm)をITO路付きガラス基板に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとAl回路付きガラス基板の位置合わせを行った。次いで、190℃、5秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行って、サンプルを得た。
(実施例2)
導電粒子1の代わりに導電粒子2を用い、実施例1で作製した異方導電性フィルムの単位面積あたりに分散している導電粒子の数が、実施例1と同じになるように導電粒子2の配合量を調整したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
(実施例3)
導電粒子2の代わりに導電粒子3を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(実施例4)
導電粒子2の代わりに導電粒子4を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(実施例5)
導電粒子2の代わりに導電粒子5を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(実施例6)
導電粒子2の代わりに導電粒子6を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(実施例7)
導電粒子2の代わりに導電粒子7を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(比較例1)
導電粒子2の代わりに導電粒子8を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(比較例2)
導電粒子2の代わりに導電粒子9を用いた以外は実施例2と同様にサンプルを作製した。
(金属の膜厚測定)
Pd、Ni、Auの各膜厚の測定では、各粒子を50体積%王水に溶解させた後、樹脂微粒子及び固形物を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾別して取り除き、原子吸光光度計Z−5310(株式会社日立製作所製 製品名)で各金属の量を測定した後に、それを厚さに換算した。
(めっき膜中の成分分析)
めっき膜中の成分分析では、各粒子を50体積%王水に溶解させた後、樹脂を直径3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾別して取り除き、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置P4010(株式会社日立製作所製 製品名)を用いた。
(子粒子の被覆率)
子粒子(絶縁性粒子)の被覆率は、各導電粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、画像を解析することで算出した。電子顕微鏡には、S4700(株式会社日立製作所製 製品名)を使用し、5000倍以上で観察した。
(粒子の煮出試験)
導電粒子1〜9を各1g採取し、純水50gに分散させた。次に、60mlの圧力容器にサンプルを投入し、100℃で10時間放置した。その後、導電粒子の分散溶媒を0.2μmフィルターで濾過し、ろ液中の各金属イオンを原子吸光光度計で測定した。煮出し量(イオン測定値)は次式により求めた。
Figure 2011233297
(成分分析)
絶縁被覆処理を施す前の各母粒子を試料台に固定した導電テープ(日新EM社製 Cat No7311)上に撒き、余分な導電粒子を落とした。次に、走査型電子顕微鏡S4700(株式会社日立製作所製 製品名)に付属するEDX分析装置:EMAX EX−300(株式会社堀場製作所製 製品名)を用いて、3万倍に拡大した母粒子表面の導電層を分析し、定性した。また、パラジウム中のリン濃度は各母粒子10個を測定し、その平均値から算出した。
また、導電粒子の金属層部分の薄片を収束イオンビームで切り出した。透過型電子顕微鏡HF−2200(株式会社日立製作所製 製品名)を用いて10万倍以上観察し、上記装置に付属したNORAN社製EDXでめっき層の各領域の成分分析を行った。得られた値から各領域のニッケル、パラジウム及びリンの濃度を算出した。
更に、パラジウムめっき層の各領域の成分分析にESCA分析装置、AXIS−165型(島津製作所/Kratos社製 製品名)も使用した。絶縁性微粒子を配置する前の各母粒子をインジウム箔に固定し、パラジウムめっき層をArエッチングにより序所に除去しながら、めっき層表面の成分分析を行った。Arエッチングレートは5nm/minで、Arエッチング1分毎に成分分析を行い、これを繰り返してめっき層の各領域の成分を算出した。ちなみに、樹脂微粒子に由来する炭素が検出され、パラジウムの信号が減少し収束した時点を樹脂微粒子表面として、めっき層中の各領域の金属及びリン濃度として算出した。
(絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験)
実施例1〜7、比較例1〜2で作製したサンプルの絶縁抵抗試験(絶縁信頼性試験)及び導通抵抗試験を行った。異方導電接着フィルムはチップ電極間の絶縁抵抗が高く、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗(接続抵抗)が低いことが重要である。
チップ電極間の絶縁抵抗は20サンプルを測定し、その最小値を測定した。絶縁抵抗に関してはバイアス試験(湿度60%、90℃、20V直流電圧による耐久試験)前後の結果の最小値を示す。なお、表1に示す100時間、300時間、500時間、1000時間とは、バイアス試験の時間を意味する。
また、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗に関しては14サンプルの平均値を測定した。導通抵抗は初期値と吸湿耐熱試験(温度85℃、湿度85%の条件で1000時間放置)後の値を測定した。
実施例1〜7及び比較例1、2の測定結果を表1に示す。
Figure 2011233297
表1に示されるように、ニッケルを全く用いない実施例1〜7の導電粒子では、煮出し試験結果に示すように金属の溶出が殆どない。これに対し、下地にニッケルを用いた比較例1と2では、実施例1〜7に比べて、ニッケルが溶出する傾向がある。従って、狭ピッチのCOG基板においてはニッケルを用いない方が無難である。
なお、貴金属であるパラジウムは溶出が殆どない。絶縁信頼性試験結果は殆どニッケルの溶出量に依存しており、ニッケルの溶出の少ない実施例は良好な結果を示し、ニッケルの溶出の多い比較例は絶縁信頼性が低いことが明らかである。
パラジウムは貴金属の中でも比較的安価で実用的ではあるが、異方導電膜用の導電粒子として多数使用されているニッケルに比べるとそれでも高価であるため、できるだけパラジウムの使用量を減らしたい。一方で、電極と接した時に、導電粒子表面の絶縁性粒子がパラジウム層中にめり込み、露出したパラジウム層と電極が接触することで、導電させる必要がある。また、電極と接触するパラジウム層の際表面は抵抗がより低いことが望まれる。無電解パラジウムめっきで得られるパラジウム層としては、不純物が少ない。
実施例1〜4の各めっき膜中の成分をICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置P4010(株式会社日立製作所製 製品名)により定性分析をしたところ、パラジウムが主成分であり、他の元素は検出誤差範囲内で検出されなかった。また、実施例5〜7を上記と同様の分析を実施したところ、パラジウムとリンが主成分であり、他の元素は検出誤差範囲内で検出されなかった。
(実施例8)
導電粒子1を用いる代わりに母粒子2を用い、実施例1で作製した異方導電接着フィルムの単位面積あたりに分散している導電粒子の数の半分になるように母粒子2の量を調整したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
(比較例3)
導電粒子1を用いる代わりに母粒子8を用い、実施例1で作製した異方導電接着フィルムの単位面積あたりに分散している導電粒子の数の半分になるように母粒子8の量を調整したこと以外は実施例1と同様にサンプルを作製した。
実施例1〜7と同様の方法で、実施例8及び比較例3における粒子の煮出し試験及び導通抵抗試験を行った。実施例8と比較例3の試験結果を表2に示す。
Figure 2011233297
(絶縁被覆を行っていない粒子の評価)
表2に示すように、実施例8の接続抵抗は良好であったが、比較例3の接続抵抗は時間経過とともに高くなった。これは、比較例3の金層がやわらかなため電極に食い込みにくく、時間経過とともに起こる電極位置のずれに追従できなかったためである。
サンプルをガラス面側から光学顕微鏡で観察したところ、比較例3の方が粒子の凝集が多く観察された。比較例3の母粒子8をEDX分析したところ、ニッケル中のリン濃度が2重量%と低かったことから、比較例3では、磁性による母粒子7の凝集が起こったと考えられる。
表2に示すように、金属層としてパラジウム層のみを備える実施例8では、煮出し試験で微量のパラジウムのみが溶出したが、比較例3ではニッケルが大量に溶出した。溶出したニッケルは、マイグレーションによるショート不良を引き起こしたり、パラジウム表面上で酸化膜を形成したりすることから、導通抵抗を低下させる。このように溶出が起こる可能性のある金属(例えば、ニッケルなど)を用いることは避けるべきである。
樹脂微粒子上にパラジウム層を形成する無電解パラジウムめっきの方法として、本実施例では、建浴した無電解パラジウムめっき液中に、触媒が付与され活性化した樹脂微粒子を浸漬する方法と、触媒が付与され活性化した樹脂微粒子を、加温した蒸留水中に浸漬し、攪拌により分散させながら、無電解パラジウムめっき液を逐次添加する方法を用いたが、パラジウムめっきの方法は、これらの方法に限定されない。また、上記の無電解パラジウムめっき液を逐次添加する方法では、建浴済みの無電解めっき液を滴下してもよく、無電解パラジウムめっき液の成分を少なくとも2つ以上に分割し、これらを同時かつ平行に添加してもよい。無電解パラジウムめっき液の成分を分割する方法としては、たとえば、パラジウムイオン及びパラジウム錯体成分と還元剤成分を別々の液として添加する方法がある。
本発明によれば、接続すべき電極間の抵抗値を十分に小さくできるとともにマイグレーションの発生を十分に抑制して優れた接続信頼性を達成できる。また、本発明に係る導電粒子は低コストで得ることができる。
1…コア粒子、2…パラジウム層、2a…外側表面、5…絶縁性粒子、10A…導電粒子(母粒子)、10B…導電粒子、20…接着剤成分、20a…接着剤成分の硬化物、30,40…回路部材、32,42…回路電極、50…異方導電性フィルム(回路接続材料)、100…接続構造体、R1…パラジウム層の外側表面から深さ10nmまでの領域。

Claims (9)

  1. 樹脂材料からなるコア粒子と、
    前記コア粒子の表面に形成された厚さ20nm以上130nm以下のパラジウム層と、
    を備え、
    前記パラジウム層の外側表面から深さ10nmまでの領域は、パラジウム濃度が99.9質量%以上である導電粒子。
  2. 前記パラジウム層の外側表面上に配置され、粒径20〜500nmの絶縁性粒子を更に備える、請求項1に記載の導電粒子。
  3. 前記パラジウム層は還元めっき型である、請求項1又は2に記載の導電粒子。
  4. 前記絶縁性粒子はシリカ粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電粒子。
  5. 接着性を有する接着剤成分と、
    前記接着剤成分中に分散している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電粒子と、
    を備える接着剤組成物。
  6. 請求項5に記載の接着剤組成物からなり、回路部材同士を接着するとともにそれぞれの回路部材が有する回路電極同士を電気的に接続するために用いられる、回路接続材料。
  7. 対向配置された一対の回路部材と、
    請求項6に記載の回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように当該回路部材同士を接着する接続部と、
    を備える接続構造体。
  8. 対向配置された一対の回路部材の間に請求項6に記載の回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、前記回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように前記回路部材同士を接着する接続部を形成することにより、前記一対の回路部材及び前記接続部を備える接続構造体を得る、回路部材の接続方法。
  9. 樹脂粒子からなるコア粒子の表面に還元めっきによりパラジウム層を形成することを特徴とする導電粒子の製造方法。
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