JP2009280790A - 異方性導電接着剤用粒子状導電材料及びその製造方法、並びに異方性導電接着剤 - Google Patents

異方性導電接着剤用粒子状導電材料及びその製造方法、並びに異方性導電接着剤 Download PDF

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Abstract

【課題】金属の溶出が十分に抑制された異方性導電接着剤用粒子状導電材料を提供することを提供すること。
【解決手段】金属表面と該金属表面を構成する金属原子に結合した表面修飾基とを有する表面処理導電粒子11を含み、表面修飾基が−(CH−で表される基を有し、nが2以上の整数である、異方性導電接着剤用粒子状導電材料1。
【選択図】図1

Description

本発明は、異方性導電接着剤用粒子状導電材料及びその製造方法、並びに異方性導電接着剤に関する。
液晶表示用ガラスパネルに液晶駆動用ICを実装する方式は、COG(Chip−on−Glass)実装とCOF(Chip−on−Flex)の2種類に大別することができる。COG実装では、導電粒子を含む異方性導電接着剤を用いて液晶用ICを直接ガラスパネル上に接合する。一方COF実装では、金属配線を有するフレキシブルテープに液晶駆動用ICを接合し、導電粒子を含む異方性導電接着剤を用いてそれらをガラスパネルに接合する。ここでいう異方性とは、加圧方向には導通し、非加圧方向では絶縁性を保つという意味である。
ところが、近年の液晶表示の高精細化のために液晶駆動用ICの回路電極である金バンプは狭ピッチ化、狭面積化しており、これにともなって、異方性導電接着剤の導電粒子が隣接する回路電極間に流出してショートを発生させるといった問題が生じている。特に狭ピッチの金バンプが要求されるCOGではその傾向が顕著である。隣接する回路電極間に導電粒子が流出すると、金バンプとガラスパネルとの間に補足される異方性導電接着剤中の導電粒子数が減少し、対向する回路電極間の接続抵抗が上昇し、接続不良を起こすといった問題があった。
そこで、これらの問題を解決する方法として、特許文献1に例示されるように異方性導電接着剤の少なくとも片面に絶縁性の接着剤を形成することで、COF実装又はCOF実装における接合品質の低下を防ぐ方法や、特許文献2に例示されるように導電粒子の全表面を絶縁性の被膜で被覆する方法が提案されている。
また、特許文献3や特許文献4に例示されるように絶縁性微粒子を金粒子表面に被覆させる方法がある。国際公開第03/02955号パンフレットの方法は粒子の金表面にメルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基のいずれかを有する化合物で処理し、金属表面に官能基を形成する工程を有している。これにより金上に強固な官能基を形成することができる。
特開平8−279371号公報 特許第2794009号公報 特許第2748705号公報 国際公開第03/02955号パンフレット
しかし、異方性導電接着剤に用いられる従来の導電粒子は、金属の溶出によって、隣接する回路電極間のショートを発生させる場合があり、より狭ピッチで回路電極が形成された回路部材の接続を安定して行うためにはこの点で更なる改善が求められている。特に、近年主流になりつつあるニッケル上に金めっきを行ったタイプの多層の導電粒子は、信頼性の面では良好であるものの、ニッケルが溶出しやすいという問題を有している。コスト抑制の観点からは金めっき層の厚みを薄くすることが望まれるが、金めっき層を例えば400Å以下に設定すると、ニッケルが溶出する傾向が顕著となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的とするところは、金属の溶出が十分に抑制された異方性導電接着剤用粒子状導電材料を提供することにある。
本発明は、異方性導電接着剤を構成する粒子状導電材料に関する。本発明に係る導電材料は、金属表面と該金属表面を構成する金属原子に結合した表面修飾基とを有する表面処理導電粒子を含む。表面修飾基は−(CH−で表される基を有し、nが2以上の整数である。
上記本発明に係る導電材料によれば、金属の溶出が十分に抑制される。
上記表面修飾基が末端に硫黄原子を有しており、該硫黄原子が金属表面を構成する金属原子に結合していることが好ましい。
上記表面修飾基は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
本発明に係る導電材料は、上記表面処理導電粒子の表面に吸着した絶縁性微粒子を更に含むことが好ましい。また、本発明に係る導電材料は、表面処理導電粒子の表面の少なくとも一部を覆う高分子電解質膜と、該高分子電解質膜に吸着した絶縁性微粒子とを更に含むことが好ましい。
別の側面において、本発明は異方性導電接着剤用粒子状導電材料の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、金及び/又はパラジウムを含む金属原子から構成される金属表面を有する最外層と該最外層の内側に配されたニッケル層とを含む導電粒子の金属表面を、HS(CH−又は−(CHSS(CH−で表される基を含みnが2以上の整数である硫黄含有化合物で処理して、金属表面を構成する金属原子に結合した表面修飾基を有し、該表面修飾基が−(CH−で表される基を有しnが2以上の整数である表面処理導電粒子を形成する工程と、表面処理導電粒子の表面の少なくとも一部を覆う高分子電解質膜を形成する工程と、高分子電解質膜に絶縁性微粒子を吸着させる工程と、を備える。
上記本発明に係る製造方法によれば、ニッケルの溶出が十分に抑制された異方性導電接着剤用粒子状導電材料を得ることができる。
上記硫黄含有化合物は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
上記高分子電解質は好ましくはポリアミン又はポリエチレンイミンである。
上記絶縁性微粒子は好ましくは無機酸化物微粒子であり、その中でもシリカ微粒子が特に好ましい。
更に別の側面において、本発明は接着剤組成物及び該接着剤組成物中に分散した粒子状導電材料を含有する異方性導電接着剤に関する。本発明に係る異方性導電接着剤において、粒子状導電材料は、上記本発明に係る導電材料、又は、上記本発明に係る製造方法により得ることのできる導電材料である。
本発明によれば、ニッケル等の金属の溶出が十分に抑制された異方性導電接着剤用粒子状導電材料を提供することができる。このような導電材料を用いることで、狭ピッチでの耐マイグレーション特性に優れた異方性導電接着剤を製造することができる。ニッケルのの溶出が十分に抑制されることから、金めっきの量を低下させることも可能であり、コスト面からも有利である。
また、特に表面処理導電粒子に吸着した絶縁性微粒子を含む導電材料によれば、絶縁性微粒子と表面処理導電粒子との接着性が高いことから、十分な絶縁性を維持しながら、バンプ面積が例えば3000μm未満であっても、安定した接続抵抗を得ることができる。
さらに、本発明によれば、絶縁性微粒子による導電粒子の被覆率を容易にコントロールすることができる。
本発明者らの研究により明らかになったことであるが、導電粒子上に短鎖長のチオール等、親水性の官能基が付与されていると、導電粒子の濡れ性が増し、耐マイグレーション性が低下するといった不具合が発生しやすい。本発明によればこれを防止することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る粒子状導電材料は、金属表面と該金属表面を構成する金属原子に結合した表面修飾基(疎水性アルキル基)とを有する表面処理導電粒子であってもよい。表面修飾基は−(CH−で表される基を有する。nは2以上の整数であり、好ましくは7以上である。
表面処理導電粒子は、例えば、金属表面を有する導電粒子の金属表面を、HS(CH−又は−(CHSS(CH−で表される基を含む硫黄含有化合物で処理する工程を経て得ることができる。
上記導電粒子の粒径は基板の隣接する電極の最小間隔よりも小さいことが必要で、電極の高さばらつきがある場合、高さばらつきよりも大きいことが好ましい。係る観点から、導電粒子の粒径は1〜10μmの範囲が好ましく、1〜5μmの範囲がより好ましく、2〜3.5の範囲が特に好ましい。
導電粒子は金属のみから構成される金属粒子であってもよいし、有機或いは無機のコア粒子をめっき等の方法で金属被覆した複合粒子であってもよい。中でも有機コア粒子をめっきで金属被覆した複合粒子が好ましい。
有機コア粒子は特に制限しないが、例えばポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂の粒子である。
有機のコア粒子をめっき等で被覆する金属として、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム等の金属やITO、はんだといった金属化合物が挙げられるが、最外層に金層、その内側にニッケル層を有する二層構造が好ましく、最も一般的に用いられている。最外層の金の代わりに安価なパラジウムを用いることもできる。
ニッケル/金の2層めっき構造は有機コア粒子の外側に無電解ニッケルめっきを行った後、置換金めっきを行う方法により形成するのが一般的である。めっき以外の手法としてスパッタ法や蒸着法等も挙げられるが、数百Åレベルでの膜厚制御を考慮した場合、めっき法が好ましい。
ニッケル層の厚みは特に制限しないが、100〜2000Åの範囲が好ましく、500〜1000Åの範囲がより好ましい。
ニッケルめっきの工程においては、例えば、ニッケルめっきを行う前にパラジウム触媒を付与し、その後無電解ニッケルめっきを行う。
無電解ニッケルめっきの組成としては、(1)硫酸ニッケルや塩化ニッケルのような水溶性ニッケル塩と(2)次亜りん酸ナトリウム、水素化ほう素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン等の還元剤、(3)クエン酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、グリシン等のアミノ酸、エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン類、その他のアンモニウム、EDTA、ピロリン酸等が挙げられる。
無電解ニッケルめっき終了後の水洗は、短時間に効率よく行う必要がある。水洗時間が短いほど、ニッケル表面に酸化皮膜が出来にくい為、置換金めっきが有利になる。無電解ニッケルめっき終了後、メンブレンフィルタ等を用いて濾過を行う。濾過を行う場合もニッケルの酸化を防ぐ為、濾過を迅速に行う必要がある。
引き続き、ニッケル層上に金層を形成するが、近年は、金の厚みを減らし、原価を抑制することが多く、導電粒子の金の厚みは300Å以下である。その場合、金めっき表面にニッケルが露出しやすい傾向がある。
さらに、場合により、金めっき上に絶縁性を確保する為の絶縁層を付与することもできる。絶縁層の厚みは10nm以上1000nm以下であることが好ましく、20nm以上500nm以下であることが更に好ましい。
導電性、絶縁性の観点から、絶縁層は全面被覆型よりは部分被覆型が好ましい。具体的には絶縁性微粒子(絶縁子粒子)を金めっき上に吸着させて粒子表面を部分的に被覆する絶縁層を形成することが好ましい。
導電粒子を被覆する絶縁性微粒子としては無機酸化物微粒子が好ましい。有機微粒子を用いると、異方性導電接着剤の作製工程で絶縁子粒子が変形してしまい、特性が変化しやすい。
無機酸化物微粒子としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム、マグネシウムの各元素を含む酸化物が好ましく、これらは単独で又は二種類以上を混合して使用することができる。さらに中でも絶縁性に優れ、粒子径を制御した水分散コロイダルシリカ(SiO)が最も好ましい。このような無機酸化物微粒子の市販品としては、例えば、スノーテックス、スノーテックスUP(日産化学工業株式会社製)、クオートロンPLシリーズ(扶桑化学工業株式会社製)等が挙げられる。絶縁信頼性の上では、分散溶液中のアルカリ金属イオン及び、アルカリ土類金属イオン濃度が100ppm以下であることが望ましく、好ましくは、金属アルコキシドの加水分解反応、いわゆるゾルゲル法により製造される無機酸化物微粒子が適する。
無機酸化物微粒子の大きさは、BET法による比表面積換算法またはX線小角散乱法で測定された粒子径が、20nmから500nmであることが好ましい。それよりも小さいと、導電粒子に吸着された無機微粒子が絶縁膜として作用せずに、一部にショートを発生させる。一方、それよりも大きいと、接続の加圧方向の導電性が得られにくくなる傾向がある。
無機酸化物微粒子の中でも水分散コロイダルシリカ(SiO)は表面に水酸基を有する為、導電粒子との結合性に優れる、更に粒子径を揃えやすい、安価であるといった特徴から特に好適である。
無機酸化物微粒子表面の水酸基はシランカップリング剤等でアミノ基やカルボキシル基、エポキシ基に変性することが可能である。また、無機酸化物微粒子表面を3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランで処理してイソシアネート基を導入することもできる。イソシアネート基を導入した無機酸化物微粒子を、表面にアミノ基を有する導電粒子と組み合わせる方法もある。ただし、無機酸化物微粒子の粒径が500nm以下の場合、係る変性は一般に困難である。変性後に行う遠心分離や濾過の際にシリカ等の無機酸化物微粒子が凝集してしまう不具合が発生しやすい。従って、官能基の変性を行わずに無機酸化物微粒子を導電粒子に付着させることが望ましい。
一般的に水酸基は水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基と強固な結合を形成することで知られる。水酸基とこれら官能基の結合の様式としては、脱水縮合による共有結合や水素結合が挙げられる。従って、導電粒子表面にこれらの官能基を形成するとよい。具体的には、上述の表面修飾基の末端にこれら親水性の官能基を導入することが好ましい。
導電粒子の金属表面を構成する金属原子(金、パラジウム等)に対して配位結合を形成するメルカプト基及びジスルフィド基のいずれかを有する硫黄含有化合物で導電粒子を処理する方法により、導電粒子表面に水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルコキシカルボニル基を有する表面修飾基を導入して、表面処理導電粒子を得ることができる。この場合イオウラジカル(−S・)が金属原子に配位する。
上記硫黄含有化合物は、例えば、HS(CH−又は−(CHSS(CH−で表される基を含む。これら式中のnは2以上の整数である。nが大きくなると表面修飾基の疎水性が強くなる。n≦1では化合物が親水性となるため、導電粒子全体が水に馴染み易くなり、絶縁特性が低下する。一方、n≧16では粒子が疎水性になりすぎて工程上作製に困難性を伴うが、特性上は問題ない。
具体的には、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプトブタン酸、5−メルカプトペンタン酸、6−メルカプトヘキサン酸、7−メルカプトへプタン酸、8−メルカプトオクタン酸、11−メルカプトウンデカン酸、15−メルカプトヘキサデカン酸及び3,3’−ジチオジプロピオン酸から選ばれる硫黄含有化合物が好ましい。
金属表面を硫黄含有化合物で処理する方法としては特に制限しないが、メタノールやエタノール等の有機溶媒中に硫黄含有化合物を10〜100mmol/l程度分散し、そこに導電粒子を分散させる方法がある。
粒子の疎水性向上による絶縁性向上という観点では表面修飾基だけでも十分な効果が奏されるが、引き続き粒子表面を無機酸化物微粒子で被覆することで絶縁信頼性が更に向上する。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基又はアルコキシカルボニル基を有する表面修飾基が結合した導電粒子の表面電位(ゼータ電位)は通常(pHが中性領域であれば)マイナスである。一方で水酸基を有する無機酸化物の表面電位も通常マイナスである。表面電位がマイナスの粒子の周囲に表面電位がマイナスの粒子を被覆するのは一般に困難である。
係る観点から、表面処理導電粒子の表面の少なくとも一部を被覆する高分子電解質膜を形成し、高分子電解質膜に無機酸化物微粒子を付着させることが好ましい。より具体的には、例えば、表面処理導電粒子を高分子電解質溶液に分散し、表面処理導電粒子の表面に高分子電解質を吸着させて高分子電解質膜を形成した後、リンスする工程と、高分子電解質が吸着した表面処理導電粒子を無機酸化物微粒子の分散溶液に分散し、高分子電解質膜の表面に無機酸化物微粒子を吸着させた後、リンスする工程とを含む方法により、表面に高分子電解質と無機酸化物微粒子とが積層された絶縁性被覆膜を有する粒子状導電材料を製造できる。
上記のような方法は、交互積層法(Layer−by−Layer assembly)と呼ばれる。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法である(Thin Solid Films, 210/211, p831(1992))。この方法では、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層して複合膜(交互積層膜)が得られるものである。
交互積層法では、静電的な引力によって、基材上に形成された材料の電荷と、溶液中の反対電荷を有する材料が引き合うことにより膜成長するので、吸着が進行して電荷の中和が起こるとそれ以上の吸着が起こらなくなる。したがって、ある飽和点までに至れば、それ以上膜厚が増加することはない。Lvovらは交互積層法を、微粒子に応用し、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有する高分子電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(Langmuir、Vol.13、(1997)p6195−6203)。この方法を用いると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子とその反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)またはポリエチレンイミン(PEI)などとを交互に積層することで、シリカ微粒子と高分子電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
高分子電解質溶液あるいは無機酸化物微粒子の分散液に浸漬後、反対電荷を有する微粒子分散液あるいは高分子電解質溶液に浸漬する前に溶媒のみのリンスによって余剰の高分子電解質溶液あるいは無機酸化物微粒子の分散液を洗い流すことが好ましい。このようなリンスに用いるものとしては、水、アルコール、アセトンなどがあるが、通常、過剰な高分子電解質溶液あるいは無機酸化物微粒子の分散液除去の点から、比抵抗値が18MΩ・cm以上のイオン交換水(いわゆる超純水)が用いられる。導電粒子に吸着した高分子電解質及び無機酸化物微粒子は導電粒子表面に静電的に吸着しているために、このリンスの工程で剥離することはない。また、反対電荷の溶液に、吸着していない高分子電解質または無機酸化物微粒子を持ち込むことを防ぐためにリンスを行うことが好ましい。これをしない場合は、持ち込みによって溶液内でカチオン、アニオンが混ざり、高分子電解質と無機酸化物微粒子の凝集や沈殿を起こすことがある。
高分子電解質溶液は、水または水と水溶性の有機溶媒の混合溶媒に高分子電解質を溶解したものである。使用できる水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルなどがあげられる。
高分子電解質としては、水溶液中で電離し、荷電を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができる。この場合はポリカチオンを用いるのが良い。また、ポリカチオンとしては、一般に、ポリアミン類等のように正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、たとえば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミドおよびそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体などを用いることができる。
高分子電解質の中でもポリエチレンイミンは電荷密度が高く、結合力が強い。これらの高分子電解質の中でも、エレクトロマイグレーションや腐食を避けるために、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)イオン、及びアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Ra)イオン、ハロゲン化物イオン(フッ素イオン、クロライドイオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)を含まないものが好ましい。これらの高分子電解質は、いずれも水溶性あるいは水と有機溶媒との混合液に可溶なものであり、高分子電解質の分子量としては、用いる高分子電解質の種類により一概には定めることができないが、一般に、500〜200000程度のものが好ましい。なお、溶液中の高分子電解質の濃度は、一般に、0.01〜10重量%が好ましい。また、高分子電解質溶液のpHは、特に制限されない。
高分子電解質薄膜を用いることにより導電粒子の表面を欠陥なく均一に被覆することができ、回路電極間隔が狭ピッチでも絶縁性が確保され、電気的に接続する電極間では接続抵抗が低く良好となる。
高分子電解質薄膜の種類や分子量、濃度を調整することにより無機酸化物微粒子の被覆率をコントロールすることもできる。
具体的にはポリエチレンイミン等、電荷密度の高い高分子電解質薄膜を用いた場合、無機酸化物微粒子による被覆率が高くなる傾向があり、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等、電荷密度の低い高分子電解質薄膜を用いた場合、無機酸化物の被覆率が低くなる傾向がある。又、高分子電解質の分子量が大きい場合無機酸化物粒子による被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質の分子量が小さい場合、無機酸化物粒子の被覆率が低くなる傾向がある。高分子電解質の分子量が大きい場合、無機酸化物粒子を強固に吸着させることができる。結合力という観点で見た場合、高分子電解質の分子量は10000以上が好ましい。
高分子電解質を高濃度で用いた場合無機酸化物粒子の被覆率が高くなる傾向があり、高分子電解質を低濃度で用いた場合、無機酸化物粒子の被覆率が低くなる傾向がある。
無機酸化物粒子の被覆率が高い場合は絶縁性が高く導電性が低くなる傾向があり、無機酸化物粒子の被覆率が低い場合は導電性が高く絶縁性が低下する傾向がある。
無機酸化物粒子は一層のみ被覆されているのがよい。複層積層すると積層量のコントロールが困難になる。
無機酸化物微粒子の被覆率は20%〜100%の範囲であることが好ましく、30%〜60%の範囲であることが更に好ましい。
以上のようにして得られる、無機酸化物微粒子が吸着した導電粒子(絶縁被覆導電粒子)を加熱乾燥することで無機酸化物微粒子と表面処理導電粒子の結合を強化することができる。また加熱を真空で行なうと、金属のさび防止の観点から好ましい。結合力が増す理由としては、例えば金、パラジウム表面のカルボキシル基等官能基と絶縁子粒子表面の水酸基の化学結合、金、パラジウム表面のカルボキシル基とアミノ基の脱水縮合が挙げられる。加熱乾燥の温度としては60℃〜200℃、加熱時間は10〜180分の範囲が良い。温度が60℃未満の場合や加熱時間が10分未満の場合は絶縁子粒子が剥離しやすく、温度が200℃を超えて高い場合や加熱時間が180分を超えて長い場合は導電粒子が変形しやすい。
以上のようにして作製した表面処理導電粒子又は絶縁被覆導電粒子を導電材料として用い、これを接着剤組成物中に分散させて、異方性導電接着剤を得ることができる。
本実施形態に係る異方性導電接着剤に用いられる接着剤組成物としては、熱反応性樹脂と硬化剤の混合物が用いられる。好ましく用いられる接着剤組成物は、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合物である。
潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。この他、接着剤には、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物の混合物や紫外線などのエネルギー線硬化性樹脂が用いられる。
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロマイグレーション防止のために好ましい。
接着後の応力を低減するため、あるいは接着性を向上するために、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を接着剤組成物中に加えることができる。接着剤組成物としてはペースト状またはフィルム状のものが用いられる。
異方性導電接着剤をフィルム状にするためには、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することが効果的である。これらのフィルム形成性高分子は、反応性樹脂の硬化時の応力緩和にも効果がある。特に、フィルム形成性高分子が、水酸基等の官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましい。
異方性導電接着剤フィルムの形成は、これら少なくともエポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤からなる接着組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散により、液状化して、剥離性基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。このとき用いる溶剤は、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が材料の溶解性を向上させるため好ましい。
異方性導電接着剤フィルムの厚みは導電粒子の粒径及び異方性導電接着剤の特性を考慮して相対的に決定されるが、1〜100μmの厚みが好ましい。1μm以下では充分な接着性が得られず、100μm以上では導電性を得るために多量の導電粒子を必要とするために現実的ではない。こうした背景から、更に好ましい厚みは3〜50μmである。
異方性導電接着剤を用いた接続構造体の製造方法の一実施形態を図1に示す。図1(a)に示す異方性導電接着剤3は、フィルム状の接着剤組成物2及び接着剤組成物2中に分散した粒子状導電材料1を含有する。導電材料1は表面処理導電粒子11と絶縁性微粒子12とから構成される絶縁被覆導電粒子である。図1(b)に示すように第一の基板4と第二の基板6を準備し、異方性導電性接着剤3をその間に配置する。このとき、第一の電極5と第二の電極7が対向するようにする。次に図3(c)に示すように第一の基板4と第二の基板6を加圧加熱しつつ積層する。ここでいう基板とは、ガラス基板やポリイミド等のテープ基板、ドライバーIC等のベアチップ、リジット型のパッケージ基板等が挙げられる。
このようにして接続構造体を作製すると、縦方向は絶縁性微粒子12が表面処理導電粒子11から剥離して第一の電極5と第二の電極7は導通し、横方向は表面処理導電粒子12同士の間に絶縁性微粒子12が介在することで十分な絶縁性が維持される。
導電粒子1
<ニッケルめっき層の形成>
平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子1gを、アトテックネオガント834(アトテックジャパン株式会社製、商品名)を8質量%含有するパラジウム触媒含有溶液100mLに添加し、30℃で30分攪拌した。攪拌後の溶液を直径3μmのメンブレンフィルタ(日本ミリポア株式会社製)を用いて濾過し、フィルタ上に残った粒子を水洗した。その後、架橋ポリスチレン粒子をpHが6.0に調整された0.5質量%ジメチルアミンボラン液に添加して、表面が活性化された架橋ポリスチレン粒子を得た。この架橋ポリスチレン粒子を、蒸留水に浸漬し、超音波を与えて蒸留水中に分散させて、懸濁液とした。得られた懸濁液に、50℃で攪拌しながら下記の無電解ニッケルめっき液Aを徐々に添加して、架橋ポリスチレン粒子に対して無電解ニッケルめっきを行った。めっき中の架橋ポリスチレン粒子の一部をサンプリングし、その表面に形成されたニッケルめっき量を原子吸光分光分析法によって測定して膜厚を算出する方法によりニッケルめっきの膜厚を確認し、膜厚が700Åになった時点で無電解ニッケルめっき液Aの添加を中止した。濾過後、ニッケルめっきされた粒子を100mLの純水によって60秒洗浄し、表面に700Åのニッケルめっき層を有する粒子を得た。
(無電解ニッケルめっき液A)
成分: 硫酸ニッケル6水和物50g/L
次亜リン酸ナトリウム一水和物20g/L
ジメチルアミンボラン2.5g/L
クエン酸50g/L
pH: 7.5
<金めっき層の形成>
0.03mol/Lのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、0.04mol/Lのクエン酸三ナトリウム及び0.01mol/Lのシアン化金カリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整されためっき液を準備した。このめっき液中で、ニッケルめっきされた上記粒子に対して液温60℃の条件で膜厚が平均200Åとなるまで金めっき処理を行った。濾過後、金めっきされた粒子を100mLの純水によって60秒洗浄し、表面に200Åの金膜を有する粒子を得た。
次いで、0.03mol/Lのエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、0.04mol/Lのクエン酸三ナトリウム及び0.01mol/Lのシアン化ナトリウムを含み、水酸化ナトリウムでpH6に調整された処理液を用いて、60℃、1分の条件で粒子表面に露出するニッケルを除去した。得られた粒子をイソプロピルアルコールに浸漬し、真空乾燥機にて乾燥して、導電粒子1を得た。
表面処理導電粒子1〜7
導電粒子1を用いて、以下の手順で表面処理導電粒子1〜7を作製した。
(実施例1:表面処理導電粒子1)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolをメタノール200mlに溶解させて反応液を作製した。この反応液に1gの導電粒子1を加え、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、反応液を直径3μmのメンブレンフィルタ(日本ミリポア株式会社製)を用いて濾過し、フィルタ上の粒子をメタノールで洗浄して、表面にカルボキシル基を有する表面処理導電粒子1を得た。
(実施例2:表面処理導電粒子2)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolの代わりに5−メルカプトペンタン酸8mmolを用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理導電粒子2を得た。
(実施例3:表面処理導電粒子3)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolの代わりに8−メルカプトオクタン酸8mmolを用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理導電粒子3を得た。
(実施例4:表面処理導電粒子4)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolの代わりに11−メルカプトウンデカン酸8mmolを用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理導電粒子4を得た。
(実施例5:表面処理導電粒子5)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolの代わりに15−メルカプトヘキサデカン酸8mmolを用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理導電粒子5を得た。
(実施例6:表面処理導電粒子6)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolの代わりに3,3’−ジチオジプロピオン酸8mmolを用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理導電粒子6を得た。
(比較例1:表面処理導電粒子7)
3−メルカプトプロピオン酸8mmolの代わりにメルカプト酢酸8mmolを用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理導電粒子7を得た。
絶縁被覆導電粒子8〜15
表面処理導電粒子1〜7及び導電粒子1を用いて、表面に吸着した絶縁性微粒子を有する絶縁被覆導電粒子8〜13を以下の手順で作製した。
(実施例7:絶縁被覆導電粒子8)
分子量70000のポリエチレンイミンの濃度30質量%の水溶液(和光純薬工業株式会社製)を超純水で希釈して、0.3質量%のポリエチレンイミン水溶液を準備した。このポリエチレンイミン水溶液に1gの表面処理導電粒子1を加え、水溶液を室温で15分攪拌した。次に直径3μmのメンブレンフィルタ(日本ミリポア株式会社製)を用いて攪拌後の溶液をろ過し、フィルタ上に残った粒子を超純水200gに入れ、室温で5分攪拌した。更に直径3μmのメンブレンフィルタ(日本ミリポア株式会社製)で、得られた溶液をろ過した。フィルタ上の粒子を200gの超純水で2回洗浄して、粒子に吸着していないポリエチレンイミンを除去し、ポリエチレンイミンで処理された表面処理導電粒子1を得た。
コロイダルシリカ分散液(濃度20質量%、扶桑化学工業株式会社製、製品名クオートロンPL−10、平均粒子径100nm)を超純水で希釈して、0.1質量%のシリカ分散液を準備した。このシリカ分散液に、ポリエチレンイミンで処理された表面処理導電粒子1を入れ、室温で15分攪拌した。攪拌後の分散液を直径3μmのメンブレンフィルタ(日本ミリポア株式会社製)を用いてろ過し、回収された粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。次いで液を直径3μmのメンブレンフィルタ(日本ミリポア株式会社製)でろ過し、メンブレンフィルタ上にて処理後の表面処理導電粒子1を200gの超純水で2回洗浄を行って、吸着していないシリカ粒子を除去した。その後80℃、30分の条件で得られた粒子を乾燥し、更に120℃、1時間の加熱乾燥を行うことにより、ポリエチレンイミン膜表面に吸着したシリカ微粒子を有する絶縁被覆導電粒子8を得た。
(実施例8〜12:絶縁被覆導電粒子9〜13)
表面処理導電粒子1の代わりに表面処理導電粒子2〜7をそれぞれ用いた以外は実施例7と同様にして、絶縁被覆導電粒子9〜13をそれぞれ作製した。
比較例3、4:絶縁被覆導電粒子14、15
表面処理導電粒子1の代わりに表面処理導電粒子7及び導電粒子1をそれぞれ用いた以外は実施例7と同様にして、絶縁被覆導電粒子14、15をそれぞれ作製した。
金属溶出試験
上記手順により作製した各粒子状導電材料(表面処理導電粒子1〜7、絶縁被覆導電粒子8〜15及び導電粒子1)を各1g採取し、純水50gに分散させた試料を作製した。これら試料を60mLの圧力容器に投入し、100℃で10時間放置した。その後、各試料を0.2μmのフィルターで濾過し、ろ液中の各金属イオンの濃度を原子吸光分光分析法により測定した。測定された金属イオン濃度から、Au及びNiの溶出量を以下の換算式により求めた。
金属の溶出量(ppm)=ろ液の金属イオン濃度(ppm)×純水質量(g)/粒子状導電材料質量(g)
Figure 2009280790
Figure 2009280790
各導電材料からの金属溶出試験の結果を表1及び2に示した。表1に示すように、実施例1〜6で用いた表面処理導電粒子1〜6は、導電粒子1を−(CH−で表されnが2以上の整数である基を含む化合物を用いて処理したものであるため、比較例1で用いた導電粒子1に比してNiの溶出が大きく抑制された。一方、比較例2で用いた表面処理導電性粒子7はn=1であり、Niの溶出量が多かった。さらに、表2に示すように、表面処理導電粒子1〜6にさらに絶縁性微粒子を付着させた絶縁被覆導電粒子8〜13は、表面処理導電粒子1〜6と比較してもNiの溶出に対する抑制効果が更に優れていた。メルカプト酢酸(HSCHCOOH)によって処理された絶縁被覆導電粒子14、及び未処理の導電粒子1の金属表面に絶縁性微粒子を付着させた絶縁被覆導電粒子15に比べても、絶縁被覆導電粒子8〜13はNiの溶出に対する抑制効果に優れていた。
異方性導電接着剤フィルムを用いた接続構造体の作製
(実施例13)
(a)接着剤溶液の作製
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製商品名、PKHC)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部及びグリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、分子量:85万)75gとを酢酸エチル300gに溶解し、固形分濃度30質量%の溶液を得た。この溶液にマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂組成物(エポキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、ノバキュアHX−3941)300gを加え、撹拌して、接着剤溶液を得た。
(b)絶縁被覆導電粒子の分散液の作製
絶縁被覆導電粒子8を1.4g、酢酸エチル10g中に加え、超音波分散した。超音波分散の条件は38kHz、400W、20L(試験装置:US107、藤本科学株式会社商品名)にビーカー浸漬した試料を入れて1分攪拌した。
(c)異方性導電接着剤フィルムの作製
上記分散液を、上記(a)にて作製した接着剤溶液と、絶縁被覆導電粒子が接着剤(フェノキシ樹脂、アクリルゴム及び液状エポキシ樹脂組成物)に対して5.83%体積となるような比率で混合した。導電粒子が接着剤に対して5.83体積%となるようにした。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータを用いて塗布した。塗膜を90℃で10分乾燥して、厚み25μmの異方性導電接着剤フィルムを得た。
(d)接続構造体の作製
作製した異方性導電接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:30×90μm、スペース10μm、高さ:15μm、バンブ数362)付きチップ(17×1.7mm、厚み:0.5μm)とAl回路付きガラス基板(厚み:0.7mm)の接続を、以下の手順で行った。
1)異方性導電接着フィルム(2×19mm)をAl回路付きガラス基板に80℃、0.98MPa(10kgf/cm)で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとAl回路付きガラス基板とを位置合わせする。
2)次いで、190℃、40g/バンプ、10秒の条件でチップ上方から加熱及び加圧して、本接続する。
(実施例14〜18)
絶縁被覆導電粒子8の代わりに絶縁被覆導電粒子9〜13をそれぞれ用いた以外は実施例13と同様にして接続構造体を作製した。
(比較例5)
絶縁被覆導電粒子8の代わりに絶縁被覆導電粒子14を用いた以外は実施例13と同様にして接続構造体を作製した。
(比較例6)
絶縁被覆導電粒子8の代わりに絶縁被覆導電粒子15を用いた以外は実施例13と同様にして接続構造体を作製した。
<絶縁抵抗試験>
実施例13〜18、比較例5、6で作製した接続構造体の絶縁抵抗試験を行った。異方性導電接着フィルムは、チップ電極間の絶縁抵抗が高いことが重要である。各実施例及び比較例の20個のサンプルについて、チップ電極間(10μm)の絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗が1.0×10(Ω)以上であったものを合格と判定し、20個のサンプルのうち合格の割合を「絶縁歩留まり」とした。バイアス試験(湿度90%RH、60℃、20V直流電圧による耐久試験)前後のサンプルについて、それぞれ絶縁歩留まりを評価した。結果を表3に示す。
Figure 2009280790
メルカプト酢酸(HSCHCOOH)によって処理された表面処理導電粒子を含む絶縁被覆導電粒子14を用いた比較例5は、Niの溶出による絶縁破壊が発生し易い傾向があり、絶縁歩留まりが低かった。また、未処理の導電粒子1にシリカ微粒子を付着させた絶縁被覆微粒子15を用いた比較例6は、初期の絶縁性が不十分であった。これは、導電粒子表面に官能基が付与されていないため、シリカ微粒子が強固に付着していないためであると考えられる。実施例13〜18は比較例5に比べて100時間後の絶縁歩留まりが著しく向上した。特に、実施例15〜17はかなり疎水性の高い表面修飾基を導電粒子表面に付与しているため、100時間後も絶縁歩留まりが100%であった。
以上示したように、導電性粒子の金属表面を−(CH−で表され、nが2以上の基を含む化合物で処理することにより、Niの溶出を十分に抑制することが出来る。特に、nは7以上で更に大きな効果を発現した。このような表面修飾導電性粒子を用いることにより、狭ピッチでの耐マイグレーション特性に優れた異方性導電接着剤を作製することができる。
接続構造体の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1…粒子状導電材料、2…接着剤組成物、3…異方性導電接着剤、4…第一の基板、5…第一の電極、6…第二の基板、7…第二の電極、11…表面処理導電粒子、12…絶縁性微粒子。

Claims (13)

  1. 金属表面と該金属表面を構成する金属原子に結合した表面修飾基とを有する表面処理導電粒子を含み、
    前記表面修飾基が−(CH−で表される基を有し、nが2以上の整数である、
    異方性導電接着剤用粒子状導電材料。
  2. 前記表面修飾基が末端に硫黄原子を有しており、該硫黄原子が前記金属表面を構成する金属原子に結合している、請求項1記載の導電材料。
  3. 前記表面修飾基が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項1又は2記載の導電材料。
  4. 前記表面処理導電粒子の表面に吸着した絶縁性微粒子を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電材料。
  5. 前記表面処理導電粒子の表面の少なくとも一部を覆う高分子電解質膜と、該高分子電解質膜に吸着した絶縁性微粒子とを更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電材料。
  6. 前記絶縁性微粒子がシリカ微粒子である、請求項4又は5記載の導電材料。
  7. 金及び/又はパラジウムを含む金属原子から構成される金属表面を有する最外層と該最外層の内側に配されたニッケル層とを含む導電粒子の前記金属表面を、HS(CH−又は−(CHSS(CH−で表される基を含みnが2以上の整数である硫黄含有化合物で処理して、前記金属表面を構成する金属原子に結合した表面修飾基を有し、該表面修飾基が−(CH−で表される基を有しnが2以上の整数である表面処理導電粒子を形成する工程と、
    前記表面処理導電粒子の表面の少なくとも一部を覆う高分子電解質膜を形成する工程と、
    前記高分子電解質膜に絶縁性微粒子を吸着させる工程と、
    を備える異方性導電接着剤用粒子状導電材料の製造方法。
  8. 前記硫黄含有化合物が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基及びアルコキシカルボニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、請求項7記載の製造方法。
  9. 前記高分子電解質がポリアミンである、請求項7又は8記載の製造方法。
  10. 前記高分子電解質がポリエチレンイミンである、請求項7又は8記載の製造方法。
  11. 前記絶縁性微粒子が無機酸化物微粒子である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 前記絶縁性微粒子がシリカ微粒子である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 接着剤組成物及び該接着剤組成物中に分散した粒子状導電材料を含有し、
    前記粒子状導電材料が、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電材料、又は請求項7〜12のいずれか一項に記載の製造方法により得ることのできる導電材料である、
    異方性導電性接着剤。
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