以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、導電部を少なくとも表面に有する導電性粒子と、上記導電性粒子の表面上に配置されている複数の絶縁性粒子とを備える。本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、導電部の表面と反応可能な官能基とカルボキシル基又はカルボキシル基を保護基により保護した被保護基とを有する化合物(以下、化合物Xと記載することがある)を用いて、上記化合物Xにおける導電部の表面と反応可能な官能基を導電部の表面と反応させて、カルボキシル基又は上記被保護基を表面に有する導電性粒子を得て、上記導電性粒子が上記被保護基を有する場合には、上記被保護基をカルボキシル基に変換して、カルボキシル基を表面に有する導電性粒子を得て、次に、正電荷を帯びる官能基を有する高分子電解質を用いて、上記カルボキシル基を表面に有する導電性粒子の表面の少なくとも一部を高分子電解質で被覆した後、負電荷を帯びる官能基を表面に有する絶縁性粒子を用いて、上記高分子電解質を介して上記導電性粒子と上記絶縁性粒子とを付着させることにより得られる。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の製造方法は、導電部の表面と反応可能な官能基とカルボキシル基又はカルボキシル基を保護基により保護した被保護基とを有する化合物Xを用いて、上記化合物Xにおける導電部の表面と反応可能な官能基を導電部の表面と反応させて、カルボキシル基又は上記被保護基を表面に有する導電性粒子を得る工程と、上記導電性粒子が上記被保護基を有する場合には、上記被保護基をカルボキシル基に変換して、カルボキシル基を表面に有する導電性粒子を得る工程と、正電荷を帯びる官能基を有する高分子電解質を用いて、上記カルボキシル基を表面に有する導電性粒子の表面の少なくとも一部を高分子電解質で被覆する工程と、負電荷を帯びる官能基を表面に有する絶縁性粒子を用いて、上記高分子電解質を介して上記導電性粒子と上記絶縁性粒子とを付着させる工程とを備える。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子及び本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の製造方法では、上記導電性粒子の表面の上記導電部が、パラジウムよりもイオン化傾向が大きい金属を含む。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子及び本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の製造方法における上述した構成の採用により、導電性粒子から絶縁性粒子が意図せずに脱離し難くなり、電極間の導通信頼性及び絶縁信頼性を高めることができる。すなわち、電極間の接続時には、電極間で絶縁性粒子付き導電性粒子が圧着されることで、電極と導電性粒子との間の絶縁性粒子が導電性粒子の表面から脱離するので、電極間の導通信頼性を高めることができる。一方で、電極と導電性粒子との間に配置されていない絶縁性粒子は導電性粒子の表面から脱離し難いために、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子が接触したとしても、隣接する導電性粒子間には絶縁性粒子が存在するので、接続されてはならない横方向の電極間の電気的な接続を抑えることができる。
ところで、上述した特開2009−280790号公報では、上記表面修飾基を導入するために、高分子電解質で被覆される前の導電性粒子の表面は、金及び/又はパラジウムを含む金属表面である。このように、金及び/又はパラジウムを含む金属表面を形成するので、特開2009−280790号公報に記載の絶縁性粒子付き導電性粒子を得る場合には、導電性粒子の製造工程が多くなり、導電性粒子及び絶縁性粒子付き導電性粒子のコストが高くなるという問題がある。一方で、特開2009−280790号公報に記載の表面修飾基を導入する化合物を用いた場合には、高分子電解質で被覆される前の導電性粒子の表面は、金及び/又はパラジウムを含む金属表面でなければ、上記表面修飾基を十分に導入することができない。この結果として、導電性粒子の表面に絶縁性粒子を十分に付着させることはできない。
これに対して、本発明では、上記導電性粒子の表面の上記導電部が、パラジウムよりもイオン化傾向が大きい金属を含むので、上記導電部の表面が酸化されやすく、高分子電解質で被覆される前の導電性粒子の表面が、金及び/又はパラジウムを含む金属表面でなくても、導電性粒子の表面に絶縁性粒子を十分に付着させることができる。本発明では、例えば、ニッケルを含む導電部又ははんだを含む導電部の表面上に、金を含む導電部又はパラジウムを含む導電部を形成しなくてもよいので、絶縁性粒子付き導電性粒子の製造工程を簡略化でき、絶縁性粒子付き導電性粒子の製造コストを低くすることができる。
また、近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴って、電極が形成されている部分のライン(L)である電極幅と、電極が形成されていない部分のスペース(S)の電極間幅とが狭くなってきている。例えば、L/Sが30μm以下/30μm以下の微細な電極間を電気的に接続する必要が高まっている。L/Sが小さい電極間を電気的に接続する場合には、従来の導電材料では、スペース(S)に絶縁性粒子付き導電性粒子が多く配置されやすいので、絶縁不良が特に生じやすいという問題がある。
これに対して、本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の使用により、スペース(S)に導電性粒子が配置され難くなり、絶縁不良が生じるのを効果的に抑制できる。特に、L/Sが30μm以下/30μm以下の微細な電極間を導電接続する場合であっても、絶縁信頼性を十分に高くすることができる。
また、近年、L/Sが小さい電極間を電気的に接続したときの絶縁信頼性を高めるために、導電性粒子の表面に付着している絶縁性粒子の粒子径を大きくすることが要求されている。しかし、絶縁性粒子の粒子径を大きくすると、絶縁性粒子が導電性粒子の表面から脱離しやすくなる。
これに対して、本発明によれば、絶縁性粒子の粒子径が大きくても、絶縁性粒子の意図しない脱離を抑えることができ、導通信頼性及び絶縁信頼性を十分に確保できる。
本発明では、上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、上記化合物Xを用いて、上記化合物Xにおける導電部の表面と反応可能な官能基を導電部の表面と反応させて、カルボキシル基を表面に有する導電性粒子を得て、次に、正電荷を帯びる官能基を有する高分子電解質を用いて、上記カルボキシル基を表面に有する導電性粒子の表面の少なくとも一部を高分子電解質で被覆した後、負電荷を帯びる官能基を表面に有する絶縁性粒子を用いて、上記高分子電解質を介して上記導電性粒子と上記絶縁性粒子とを付着させることにより得られることが好ましい。
また、本発明では、上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、上記化合物Xを用いて、上記化合物Xにおける導電部の表面と反応可能な官能基を導電部の表面と反応させて、上記被保護基を表面に有する導電性粒子を得て、上記導電性粒子が上記被保護基を有する場合には、上記被保護基をカルボキシル基に変換して、カルボキシル基を表面に有する導電性粒子を得て、次に、正電荷を帯びる官能基を有する高分子電解質を用いて、上記カルボキシル基を表面に有する導電性粒子の表面の少なくとも一部を高分子電解質で被覆した後、負電荷を帯びる官能基を表面に有する絶縁性粒子を用いて、上記高分子電解質を介して上記導電性粒子と上記絶縁性粒子とを付着させることにより得られることが好ましい。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子では、特に、電極(第1,第2の電極)が形成されている部分のライン(L)である電極幅と、電極(第1,第2の電極)が形成されていない部分のスペース(S)の電極間幅とを示すL/Sが30μm以下/30μm以下である場合に、絶縁信頼性を効果的に高めることができ、L/Sが20μm以下/20μm以下である場合に、絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができ、L/Sが17.5μm以下/17.5μm以下である場合に、絶縁信頼性を更に一層効果的に高めることができ、L/Sが15μm以下/15μm以下である場合に、絶縁信頼性を特に効果的に高めることができる。上記L/Sは50μm以下/50μm以下であってもよい。
また、本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子により導通信頼性を高めることができるので、電極(第1,第2の電極)が形成されている部分のライン(L)である電極幅の最小値は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは17.5μm以下、特に好ましくは15μm以下である。ライン(L)である電極幅は、絶縁性粒子付き導電性粒子における平均粒子径よりも大きいことが好ましく、更に導電性粒子の平均粒子径の1.1倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが更に好ましく、3倍以上であることが特に好ましい。上記ライン(L)である電極幅は、50μm以下であってもよい。
また、本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子により絶縁信頼性を高めることができるので、電極(第1,第2の電極)が形成されていない部分のスペース(S)である電極間幅の最小値は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは17.5μm以下、特に好ましくは15μm以下である。スペース(S)である電極間幅は、絶縁性粒子付き導電性粒子における導電性粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましく、更に導電性粒子の平均粒子径の1.1倍以上であることがより好ましく、2倍以上であることが更に好ましく、3倍以上であることが特に好ましい。上記スペース(S)である電極間幅は、50μm以下であってもよい。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の使用により絶縁信頼性が効果的に高くなることから、本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、電極間の電気的な接続に用いられ、該電極が形成されていない部分のスペースの電極間幅の最小値が30μm以下であることが好ましい。
上記導電性粒子の表面積全体に占める上記絶縁性粒子により被覆されている部分の面積である被覆率は好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上、より一層好ましくは50%以上、更に好ましくは50%を超え、特に好ましくは60%以上である。上記被覆率が上記下限以上であると、隣接する導電性粒子がより一層接触し難くなる。上記被覆率は好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、特に好ましくは70%以下である。上記被覆率が上記上限以下であると、電極の接続の際に、熱及び圧力を必要以上に付与しなくても、絶縁性粒子を充分に排除できる。
上記被覆率は、具体的には、以下のようにして求められる。
走査型電子顕微鏡(SEM)での観察により100個の絶縁性粒子付き導電性粒子を観察し、絶縁性粒子付き導電性粒子における導電性粒子の被覆率X1(%)(付着率X1(%)ともいう)を求める。上記被覆率X1は、導電性粒子の表面積全体に占める絶縁性粒子により被覆されている部分の面積(投影面積)である。
具体的には、図6に示すように、絶縁性粒子付き導電性粒子Aを一方向から走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した場合、絶縁性粒子付き導電性粒子Aの導電部の外表面(外周縁)の円内に存在する絶縁性粒子B1を1個、絶縁性粒子付き導電性粒子Aの導電部の外表面(外周縁)の円周上に存在する絶縁性粒子B2を0.5個とカウントする。上記被覆率は、絶縁性粒子付き導電性粒子Aの投影面積に対する絶縁性粒子の投影面積の割合で示す。
すなわち、上記被覆率は下記式(1)で表される。
被覆率(%)=((((円内の絶縁性粒子の数)×1+(円周上の絶縁性粒子の数)×0.5)×(絶縁性粒子の投影面積))/(絶縁性粒子付き導電性粒子の投影面積))×100 ・・・式(1)
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、ペースト状の導電ペーストに用いられることが好ましい。上記導電材料は、導電ペーストであることが好ましい。
絶縁性粒子付き導電性粒子を用いて電極間を接続したときに、接続されてはならない隣り合う電極間で短絡をより一層生じ難くし、かつ接続されるべき上下の電極間の導通性を十分に確保する観点からは、本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、25℃及び2.5rpmでの粘度が100Pa・sを超え、1000Pa・s以下である導電ペーストに用いられることが好ましく、導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの粘度は、100Pa・sを超え、1000Pa・s以下であることが好ましい。
電極間の導通信頼性及び絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子付き導電性粒子の粒子径の変動係数は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。
上記変動係数(CV値)は下記式で表される。
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:絶縁性粒子付き導電性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:絶縁性粒子付き導電性粒子の粒子径の平均値
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
(絶縁性粒子付き導電性粒子)
図1に、本発明の第1の実施形態に係る絶縁性粒子付き導電性粒子を断面図で示す。
図1に示す絶縁性粒子付き導電性粒子1は、導電性粒子2と、導電性粒子2の表面上に配置された複数の絶縁性粒子3とを備える。導電性粒子2の表面に、絶縁性粒子3が付着している。絶縁性粒子3は、絶縁性を有する材料により形成されている。絶縁性粒子3は、被覆粒子ではない。絶縁性粒子3にかえて後述する絶縁性粒子43を用いてもよい。
導電性粒子2は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部12とを有する。導電部12は導電層である。導電部12は、基材粒子11の表面を覆っている。導電性粒子2は、基材粒子11の表面が導電部12により被覆された被覆粒子である。導電性粒子2は表面に導電部12を有する。
図2に、本発明の第2の実施形態に係る絶縁性粒子付き導電性粒子を断面図で示す。
図2に示す絶縁性粒子付き導電性粒子21は、導電性粒子22と、導電性粒子22の表面上に配置された複数の絶縁性粒子3とを備える。導電性粒子22の表面に、絶縁性粒子3が付着している。絶縁性粒子3にかえて後述する絶縁性粒子43を用いてもよい。
導電性粒子22は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部31とを有する。導電部31は導電層である。導電性粒子22は、基材粒子11の表面上に複数の芯物質32を有する。導電部31は、基材粒子11と芯物質32とを被覆している。芯物質32を導電部31が被覆していることにより、導電性粒子22は導電性の表面に、複数の突起33を有する。芯物質32により導電部31の表面が隆起されており、複数の突起33が形成されている。
図3に、本発明の第3の実施形態に係る絶縁性粒子付き導電性粒子を断面図で示す。
図3に示す絶縁性粒子付き導電性粒子41は、導電性粒子42と、導電性粒子42の表面上に配置された複数の絶縁性粒子43とを備える。導電性粒子42の表面に、絶縁性粒子43が付着している。絶縁性粒子43にかえて絶縁性粒子3を用いてもよい。
導電性粒子42は、基材粒子11と、基材粒子11の表面上に配置された導電部51とを有する。導電部51は導電層である。導電性粒子42は、導電性粒子22のように芯物質を有さない。導電部51は、第1の部分と、該第1の部分よりも厚みが厚い第2の部分とを有する。導電性粒子42は導電性の表面に、複数の突起52を有する。複数の突起52を除く部分が、導電部51の上記第1の部分である。複数の突起52は、導電部51の厚みが厚い上記第2の部分である。絶縁性粒子43は被覆粒子である。
絶縁性粒子43は、絶縁性粒子本体45と、絶縁性粒子本体45の表面を覆っている層46とを有する。層46は、有機化合物により形成されていることが好ましく、高分子化合物により形成されていることが好ましい。
層46は、絶縁性粒子本体45の表面全体を被覆している。従って、導電性粒子42と絶縁性粒子本体45との間に層46が配置されている。層46は、絶縁性粒子本体の表面の少なくとも一部の領域を覆うように存在していればよく、絶縁性粒子本体の表面全体を覆っていなくてもよい。層46は、導電性粒子と絶縁性粒子本体との間に配置されていることが好ましい。
図4に、本発明の第4の実施形態に係る絶縁性粒子付き導電性粒子を断面図で示す。
図4に示す絶縁性粒子付き導電性粒子61は、導電性粒子2と、導電性粒子2の表面上に配置された複数の絶縁性粒子3と、導電性粒子2と絶縁性粒子3との表面を被覆している被膜62とを備える。導電性粒子2の表面に、絶縁性粒子3が付着している。被膜62は、導電性粒子2と、導電性粒子2の表面に付着している複数の絶縁性粒子3とを備える粒子の表面を防錆処理することにより形成されている。なお、導電性粒子2の表面を防錆処理した後に、導電性粒子2の表面上に絶縁性粒子3を配置してもよい。導電性粒子2にかえて導電性粒子22,42を用いてもよい。絶縁性粒子3にかえて絶縁性粒子43を用いてもよい。
なお、被膜62は、導電性粒子2、及び絶縁性粒子3の表面全体を必ずしも被覆している必要はない。被膜62は、導電性粒子2、導電部12、及び絶縁性粒子3の表面全体を被覆していることが好ましい。被膜62により、導電性粒子2、導電部12及び絶縁性粒子3の表面が露出していないことが好ましい。導電部12の表面の少なくとも一部の領域を被膜62が被覆していることにより、被膜62が形成されている部分において、導電部12の錆を抑制できる。
以下、導電性粒子、高分子電解質、絶縁性粒子及び防錆処理などの詳細を説明する。
[導電性粒子]
本発明では、絶縁性粒子を付着させる前の導電性粒子として、カルボキシル基又は上記被保護基を表面に有する導電性粒子が用いられる。この導電性粒子は、上記化合物Xを用いて、上記化合物Xにおける導電部の表面と反応可能な官能基を導電部の表面と反応させることにより得られる。
上記保護基は、上記化合物Xを用いて、上記化合物Xにおける導電部の表面と反応可能な官能基を導電部の表面と反応させる際に、被保護基の形態を維持可能にする基であり、カルボキシル基の反応を抑える役割を果たす。カルボキシル基を保護基により保護する方法は、例えば、特許第4644339号公報及び特許第4336970号公報に記載されている。
上記導電部の表面と反応可能な官能基としては、リン酸基、シラノール基、トリクロロシリル基、チタノール基及びアルミノール基等が挙げられる。導電部の表面に上記化合物Xが効率的に反応することから、上記導電部の表面と反応可能な官能基は、リン酸基又はシラノール基であることが好ましい。
リン酸基とカルボキシル基とを有する化合物としては、カルボキシメチルホスホン酸、2−カルボキシエチルホスホン酸、2,2−ジカルボキシエチルホスホン酸、1,1−ビス(カルボキシメチル)−2−カルボキシエチルホスホン酸及び4−カルボキシフェニルホスホン酸等が挙げられる。上記リン酸基とカルボキシル基とを有する化合物は、リン酸(ホスホン酸)とカルボン酸とを両末端に有する化合物であることが好ましい。上記リン酸基とカルボキシル基とを有する化合物のカルボキシル基を保護基で保護して、被保護基としてもよい。
シラノール基とカルボキシル基を保護基で保護した被保護基とを有する化合物としては、5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル、5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロ−4,5−ジメトキシフェニル)エチル及び11−(トリメトキシシリル)ウンデカン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル等が挙げられる。シラノール基とカルボキシル基を保護基で保護した被保護基とを有する化合物は、シランカップリング剤であることが好ましい。なお、一般に、シラノール基とカルボキシル基を保護基で保護した被保護基とを有する化合物の形態ではなく、シラノール基とカルボキシル基とを有する化合物の形態で用いようとすると、該化合物自体の反応性が高くなり、該化合物自体が不安定になりすぎることがある。
上記導電性粒子が上記被保護基を有する場合には、導電性粒子の表面の少なくとも一部を高分子電解質で被覆する前に、上記被保護基をカルボキシル基に変換して、カルボキシル基を表面に有する導電性粒子を得る。上記導電性粒子がカルボキシル基を有する場合には、上記被保護基をカルボキシル基に返還する工程は行われない。
上記被保護基の多くはエステルの形態である。メチルエステル又はエチルエステルの場合には、水酸化ナトリウムなどの強塩基又は塩酸など強酸中で加熱するなどの条件で、上記保護基を脱離可能である。ベンジルエステルの場合には、エステルの加水分解条件で、上記保護基を脱離可能であり、更にパラジウムを触媒とした水素添加反応、バーチ還元などで、上記保護基を脱離可能である。tert−ブチルエステルの場合には、トリフルオロ酢酸や塩酸−酢酸エチル溶液などの強酸性条件下で、上記保護基を脱離可能である。
コストを低減したり、導電性粒子の柔軟性を高くして、電極間の導通信頼性を高めたりする観点からは、上記導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電部とを有することが好ましい。
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。上記基材粒子は、コアと、コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。上記コアが有機コアであってもよい。上記シェルが無機シェルであってもよい。
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。絶縁性粒子付き導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、絶縁性粒子付き導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより絶縁性粒子付き導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性が高くなる。
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン系共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン系共重合体等としては、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体及びジビニルベンゼン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記樹脂粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合には、該エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
上記基材粒子が金属を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子を形成するための金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子は銅粒子であることが好ましい。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
上記導電性粒子は、少なくとも表面に導電部を有し、かつ上記導電性粒子の表面の上記導電部が、パラジウムよりもイオン化傾向が大きい金属を含んでいればよい。パラジウムよりイオン化傾向が大きい金属としては、代表的な例としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、コバルト、ニッケル、スズ、アンチモン、ビスマス、銅及び銀等が挙げられる。
上記導電性粒子の表面の上記導電部100重量%中、パラジウムよりもイオン化傾向が大きい金属の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
上記導電部を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、タングステン、モリブデン、ケイ素及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗がより一層低くなるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムがより好ましい。
上記導電部(導電層)は、1つの層により形成されていてもよい。導電部は、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、導電部は、2層以上の積層構造を有していてもよい。導電部が複数の層により形成されている場合には、最外層である導電部が、パラジウムよりもイオン化傾向が大きい金属を含む。
なお、パラジウムよりもイオン化傾向が大きい金属を含む導電部の表面には、酸化により水酸基が存在することが多い。一般的に、ニッケルを含む導電部及びはんだを含む導電部の表面には、酸化により水酸基が存在する。導電性粒子の表面の水酸基と、上記化合物Xにおける上記導電部の表面と反応可能な官能基とを反応させることで、カルボキシル基又は上記被保護基を表面に有する導電性粒子を得ることができる。また、絶縁性粒子が、導電性粒子の表面の水酸基と反応可能な官能基を有する場合に、導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させることができる。すなわち、高分子電解質を介した導電性粒子と絶縁性粒子との第1の結合と、導電性粒子の表面の水酸基と絶縁性粒子における導電性粒子の表面の水酸基と反応可能な官能基との第2の結合とによって、導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させることができる。
上記導電性粒子の表面の上記導電部が、パラジウムを含む導電部及び金を含む導電部のいずれでもないことが好ましい。なお、導電性粒子の表面の導電部は、該導電層100重量%中、パラジウムを50重量%以上含まないことが好ましく、パラジウムを20重量%以上含まないことが好ましく、金を50重量%以上含まないことが好ましく、金を20重量%以上含まないことが好ましい。
絶縁性粒子の脱離をより一層抑制する観点からは、上記導電性粒子の表面の上記導電部が、ニッケルを含む導電部又ははんだを含む導電部であることが好ましく、ニッケルを含む導電部であることがより好ましい。導電部が多層構造を有する場合に、導電部の最外層が、ニッケルを含む導電部又ははんだを含む導電部であることが好ましく、ニッケルを含む導電部であることが特に好ましい。
上記ニッケルを含む導電部100重量%中、ニッケルの含有量は50重量%以上であることが好ましい。上記導電部が単層である場合に、上記導電部100重量%中、ニッケルの含有量は50重量%以上であることが好ましい。上記導電部が積層構造を有し、ニッケルを含む導電部とニッケルを含まない導電部とを有する場合に、ニッケルを含む導電部100重量%中、ニッケルの含有量は50重量%以上であることが好ましい。上記ニッケルの含有量が50重量%以上であると、電極間の接続抵抗がかなり低くなる。上記ニッケルを含む導電部100重量%中、ニッケルの含有量はより好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記ニッケルを含む導電部100重量%中のニッケルの含有量は97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。上記ニッケルを含む導電部100重量%中のニッケルの含有量は好ましくは99.85重量%以下、より好ましくは99.7重量%以下、更に好ましくは99.45重量%未満である。上記ニッケルの含有量が上記下限以上であると、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、電極及び導電部の表面における酸化被膜が少ない場合には、上記ニッケルの含有量が多いほど電極間の接続抵抗が低くなる傾向がある。
上記ニッケルを含む導電部は、ニッケルと、ボロン及びリンの内の少なくとも1種とを含むことが好ましい。上記ニッケルを含む導電部では、ニッケルとボロン及びリンの内の少なくとも1種とは合金化していてもよい。また、上記ニッケルを含む導電部では、ニッケル、ボロン及びリン以外の成分を用いてもよい。
上記導電部における金属の各含有量の測定方法は、既知の種々の分析法を用いることができ特に限定されない。この測定方法として、吸光分析法又はスペクトル分析法等が挙げられる。上記吸光分析法では、フレーム吸光光度計及び電気加熱炉吸光光度計等を用いることができる。上記スペクトル分析法としては、プラズマ発光分析法及びプラズマイオン源質量分析法等が挙げられる。
上記導電部における金属の各含有量を測定する際には、ICP発光分析装置を用いることが好ましい。ICP発光分析装置の市販品としては、HORIBA社製のICP発光分析装置等が挙げられる。
上記はんだを含む導電部(はんだ層)を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだの組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだは、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ、又は錫とビスマスとを含むはんだであることが好ましい。
上記基材粒子の表面上に導電部を形成する方法は特に限定されない。導電部を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電部の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
上記基材粒子の表面上に導電部を形成する方法として物理的な衝突による方法も、生産性を高める観点で有効である。物理的な衝突により形成する方法としては、例えばシータコンポーザ(徳寿工作所社製)を用いてコーティングする方法がある。
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは5μm以下である。導電性粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁性粒子付き導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電部を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電部が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記導電部(導電層)の厚みは好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。導電部の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、充分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が充分に変形する。
上記導電部(導電層)が複数の層により形成されている場合に、最外層の導電部の厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。上記最外層の導電部の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、最外層の導電部による被覆を均一にでき、耐腐食性が充分に高くなり、かつ電極間の接続抵抗が充分に低くなる。
上記導電部の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子又は絶縁性粒子付き導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
上記導電性粒子は導電性の表面に複数の突起を有することが好ましい。絶縁性粒子付き導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、上記導電性粒子の導電部の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に絶縁性粒子付き導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により上記酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とがより一層確実に接触し、電極間の接続抵抗が低くなる。さらに、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性粒子を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
導電性粒子の導電性の表面に突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電部を形成する方法、基材粒子の表面に無電解めっきにより導電部を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電部を形成する方法、並びに無電解めっきにより導電部を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。また、突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよい。無電解めっき等により導電部を形成する際に、導電部の厚みを部分的に異ならせることによっても、上記突起を形成できる。
上記導電性粒子は、基材粒子の表面上に第1の導電部を有し、かつ該第1の導電部上に第2の導電部を有していてもよい。この場合に、第1の導電部の表面に芯物質を付着させてもよい。芯物質は第2の導電部により被覆されていること好ましい。上記第1の導電部の厚みは、好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.5μm以下である。導電性粒子は、基材粒子の表面上に第1の導電部を形成し、次に該第1の導電部の表面上に芯物質を付着させた後、第1の導電部及び芯物質の表面上に第2の導電部を形成することにより得られていることが好ましい。
上記芯物質を構成する物質としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。
[高分子電解質]
上記高分子電解質は、正電荷を帯びる官能基を有する。正電荷を帯びる官能基を有する高分子電解質を用いて、上記カルボキシル基を表面に有する導電性粒子の表面の少なくとも一部を高分子電解質で被覆することで、絶縁性粒子を付着させる前の高分子電解質で被覆された導電性粒子が得られる。
上記高分子電解質は、高分子電解質溶液の形態で用いられてもよい。高分子電解質溶液は、水又は水と水溶性の有機溶媒との混合溶媒に、高分子電解質を溶解させることにより得られる。上記水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリル等が挙げられる。
上記高分子電解質として、水溶液中で電離し、正電荷を帯びる官能基を有する高分子を用いることができる。この場合に、ポリカチオンを用いることが好ましい。また、上記ポリカチオンとしては、ポリアミン類等のように正荷電を帯びる官能基を有する化合物が挙げられ、具体的には、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン及びポリアクリルアミド、並びにこれらの共重合体等が挙げられる。高分子電解質の中でもポリエチレンイミンに関しては、電荷密度が高く、結合力が強い。
上記高分子電解質の分子量は、好ましくは500以上、好ましくは200000以下である。上記分子量は、上記高分子電解質が重合体ではない場合、及び上記高分子電解質の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記高分子電解質が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
[絶縁性粒子]
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子及び本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の製造方法では、上記高分子電解質を介して上記導電性粒子と上記絶縁性粒子とを付着させる交互積層法(Layer−by−Layer assembly)を用いる。交互積層法の詳細は、上述した特開2009−280790号公報などに記載されている。
上記絶縁性粒子は、絶縁性を有する粒子である。絶縁性粒子は導電性粒子よりも小さいことが好ましい。絶縁性粒子付き導電性粒子を用いて電極間を接続すると、絶縁性粒子により、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子が接触したときに、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子における導電性粒子間には絶縁性粒子が存在するので、上下の電極間ではなく、横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で絶縁性粒子付き導電性粒子を加圧することにより、導電部と電極との間の絶縁性粒子を容易に排除できる。導電性粒子の導電性の表面に突起が設けられている場合には、導電部と電極との間の絶縁性粒子を容易に排除できる。さらに突起部分が電極との接触を容易にするため接続信頼性が向上する。
本発明では、導電性粒子に付着させる前の絶縁性粒子として、負電荷を帯びる官能基を表面に有する絶縁性粒子が用いられる。
上記負電荷を帯びる官能基としては、水酸基、カルボキシル基及びスルホ基等が挙げられる。なかでも、上記高分子電解質における正電荷を帯びる官能基との相互作用を高めて、導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させる観点からは、上記負電荷を帯びる官能基は、水酸基であることが好ましい。
導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させ、電極間の導通信頼性及び絶縁信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、上記高分子電解質により表面の少なくとも一部が被覆された導電性粒子と、上記導電性粒子の表面(例えば、導電性粒子の表面の水酸基)と直接反応可能な官能基を表面に有する絶縁性粒子とを用いて、高分子電解質を介した導電性粒子と絶縁性粒子との第1の結合と、導電性粒子の表面(例えば導電性粒子の表面の水酸基)と絶縁性粒子における導電性粒子の表面と反応可能な官能基との第2の結合とによって、導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させることが好ましい。
上記導電性粒子の表面と直接反応可能な官能基としては、下記式(21)で表される基、珪素原子に直接結合した水酸基(Si−OH基)、珪素原子に直接結合したクロロ基(Si−Cl基)、チタン原子に直接結合した水酸基(Ti−OH基)、及びアルミニウム原子に直接結合した水酸基(Al−OH基)等が挙げられる。なかでも、導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させる観点からは、上記導電性粒子の表面と直接反応可能な官能基は、下記式(21)で表される基又は珪素原子に直接結合した水酸基であることが好ましく、下記式(21)で表される基であることが好ましい。
上記式(21)中、X1は、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。
導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させる観点からは、上記式(21)で表される基は、下記式(21A)で表される基であることが好ましい。
導電性粒子の表面に絶縁性粒子をより一層強固に付着させる観点からは、上記珪素原子に直接結合した水酸基を表面に有する絶縁性粒子は、下記式(22)で表される基を表面に有することが好ましい。
上記式(22)中、Z1及びZ2はそれぞれ、水酸基、アルコキシ基又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。Z1とZ2とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
絶縁性粒子の表面に、P−OH基又はSi−OH基を導入する方法としては、絶縁性粒子を、リン原子に直接結合された水酸基を有する化合物(以下、P−OH基含有化合物ともいう)、又はケイ素原子に直接結合された水酸基を有する化合物(以下、Si−OH基含有化合物ともいう)により表面処理する方法、並びに絶縁性粒子の作製の際に、絶縁性粒子を構成する材料に、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物を含有させる方法等が挙げられる。絶縁性粒子の表面にP−OH基又はSi−OH基を効率的に導入する観点からは、絶縁性粒子の作製の際に、絶縁性粒子を構成する材料に、P−OH基含有化合物又はSi−OH基含有化合物を含有させる方法が好ましい。
絶縁性粒子を上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物により表面処理する方法としては、絶縁性粒子の表面に、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物を化学的に結合させる方法、並びに絶縁性粒子の表面を化学処理し、上記P−OH基含有化合物又は上記Si−OH基含有化合物により、絶縁性粒子が表面に上記P−OH基又は上記Si−OH基を有するように改質する方法等が挙げられる。
上記P−OH基含有化合物の具体例としては、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート及びアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。上記P−OH基含有化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記Si−OH基含有化合物の具体例としては、ビニルトリヒドロキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリヒドロキシシラン等が挙げられる。上記Si−OH基含有化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記絶縁性粒子を構成する材料としては、絶縁性の樹脂、及び絶縁性の無機物等が挙げられる。上記絶縁性の樹脂としては、基材粒子として用いることが可能な樹脂粒子を形成するための樹脂として挙げた上記樹脂が挙げられる。上記絶縁性の無機物としては、基材粒子として用いることが可能な無機粒子を形成するための無機物として挙げた上記無機物が挙げられる。
上記絶縁性粒子は、有機粒子又は無機粒子であることが好ましい。上記有機粒子は、有機化合物(例えば、絶縁性の樹脂)を用いて形成されている。上記無機粒子は、無機化合物を用いて形成されている。
上記絶縁性粒子の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。なかでも、水溶性樹脂が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子では、絶縁性粒子が、絶縁性粒子本体と、該絶縁性粒子本体の表面の少なくとも一部の領域を覆っている層とを有することが好ましい。これにより、導電材料の作製の際の混練により、導電性粒子の表面から絶縁性粒子がより一層脱離し難くなる。さらに、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子が接触したときに、導電性粒子の表面から絶縁性粒子が脱離し難くなる。絶縁性粒子の意図しない脱離を効果的に抑制するために、上記絶縁性粒子又は上記絶縁性粒子本体の材料は、無機化合物であることが好ましく、上記絶縁性粒子又は上記絶縁性粒子本体は無機粒子であることが好ましい。絶縁性粒子の意図しない脱離を効果的に抑制するために、上記絶縁性粒子本体の表面の少なくとも一部の領域を覆っている層は、有機化合物により形成されていることが好ましく、該有機化合物は高分子化合物であることが好ましい。
上記絶縁性粒子本体の表面の少なくとも一部の領域を覆っている層が、負の電荷を帯びる官能基を有することが好ましく、導電性粒子の表面と反応可能な官能基を有することが好ましい。
上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、絶縁性粒子本体の表面の少なくとも一部の領域を覆うように、高分子化合物又は高分子化合物となる化合物を用いて、高分子化合物により形成された層を形成し、絶縁性粒子を得る工程と、導電部を少なくとも表面に有する導電性粒子の表面に、上記絶縁性粒子を付着させ、絶縁性粒子付き導電性粒子を得る工程を経て得られることが好ましい。
熱圧着時の絶縁性粒子の脱離性をより一層高める観点からは、絶縁性粒子又は絶縁性粒子本体は、無機粒子であることが好ましく、シリカ粒子であることが好ましい。上記無機粒子としては、シラス粒子、ハイドロキシアパタイト粒子、マグネシア粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化アルミニウム粒子及びシリカ粒子等が挙げられる。シリカ粒子としては、粉砕シリカ、球状シリカが挙げられ、球状シリカを用いることが好ましい。また、シリカ粒子は表面に、例えばカルボキシル基、水酸基等の化学結合可能な官能基を有することが好ましく、水酸基を有することがより好ましい。無機粒子は比較的硬く、特にシリカ粒子は比較的硬い。このような硬い絶縁性粒子をそのまま絶縁性粒子として用いた絶縁性粒子付き導電性粒子をバインダー樹脂中に添加して混練すると、絶縁性粒子が硬いので、導電性粒子の表面から絶縁性粒子が脱離しやすい傾向がある。絶縁性粒子が上記高分子化合物により形成された層を有する場合には、硬い絶縁性粒子を用いたとしても、上記混練の際に、硬い絶縁性粒子が脱離するのを抑制できる。
上記有機化合物により形成された層及び上記高分子化合物により形成された層は、例えば柔軟層としての役割を果たす。上記高分子化合物により形成された層における高分子化合物又は重合等により該高分子化合物となる化合物としては、重合可能な反応性官能基を有する化合物であることが好ましい。該重合可能な反応性官能基は、不飽和二重結合であることが好ましい。例えば、絶縁性粒子本体の表面上で不飽和二重結合を有する化合物(高分子化合物となる化合物)を重合反応させてもよく、また高分子化合物と絶縁性粒子本体の表面の反応性官能基とを反応させてもよい。上記高分子化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物及びビニル基を有する化合物等が挙げられる。絶縁性粒子付き導電性粒子を分散する際などに、導電性粒子の表面から絶縁性粒子の脱離を抑制する観点からは、上記高分子化合物又は該高分子化合物となる化合物は、(メタ)アクリロイル基、グリシジル基及びビニル基からなる群から選択された少なくとも1種の反応性官能基を有することが好ましい。なかでも、絶縁性粒子の脱離をより一層抑制する観点からは、上記高分子化合物又は該高分子化合物となる化合物は、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート及びジメタクリル酸エチレングリコール等が挙げられる。
上記エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びレゾルシノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記ビニル基を有する化合物の具体例としては、スチレン及び酢酸ビニル等が挙げられる。
上記絶縁性粒子の平均粒子径は、導電性粒子の粒子径及び絶縁性粒子付き導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性粒子の平均粒子径は好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは2.5μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。絶縁性粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、絶縁性粒子付き導電性粒子がバインダー樹脂に分散されたときに、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子における導電性粒子同士が接触し難くなる。絶縁性粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性粒子を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
上記絶縁性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。絶縁性粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。
上記絶縁性粒子の平均粒子径は、導電性粒子の粒子径の1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが更に好ましく、1/5以下であることが特に好ましい。絶縁性粒子の粒子径は、導電性粒子の粒子径の1/1000以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましく、1/10を超えることがより一層好ましい。絶縁性粒子の平均粒子径が導電性粒子の粒子径の1/5以下であると、例えば、絶縁性粒子付き導電性粒子を製造する際に、絶縁性粒子が導電性粒子の表面により一層効率的に付着する。
上記絶縁性粒子の平均粒子径は、上記導電性粒子における上記導電部(導電層)の厚みの0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることが更に好ましい。上記絶縁性粒子の平均粒子径は、上記導電性粒子における上記導電部(導電層)の厚みの20倍以下であることが好ましく、10倍以下であることが更に好ましい。絶縁性粒子の平均粒子径と導電部の厚みとがこのような好ましい関係を満足すると、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子における導電性粒子同士が接触し難くなり、導電部と電極との間の絶縁性粒子を容易に排除できる。
上記絶縁性粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは1%以上、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下である。
粒子径の異なる2種以上の絶縁性粒子を用いてもよい。この場合には、導電性粒子の表面の大きな絶縁性粒子の間に、小さな絶縁性粒子を存在させることができるので、導電性粒子の露出面積を小さくすることができる。従って、複数の絶縁性粒子付き導電性粒子が接触したとしても、隣接する導電性粒子は接触し難いため、隣接する電極間の短絡を抑制できる。小さな絶縁性粒子の平均粒子径は、大きな絶縁性粒子の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。小さな絶縁性粒子の数は、大きな絶縁性粒子の数の1/4以下であることが好ましい。
[防錆処理(被膜形成)]
導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、表面が防錆処理されていることが好ましい。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物により、表面が防錆処理されていることが好ましい。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、アルキルリン酸化合物又はアルキルチオールにより、表面が防錆処理されていることが好ましい。防錆処理により、絶縁性粒子付き導電性粒子の表面に、被膜を形成できる。すなわち、被膜を備える絶縁性粒子付き導電性粒子が得られる。
上記被膜は、炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物(以下、化合物Aともいう)により形成されていることが好ましい。上記絶縁性粒子付き導電性粒子は、上記化合物Aにより表面処理されていることが好ましい。上記アルキル基の炭素数が6以上であると、導電部の表面に錆がより一層生じ難くなる。上記アルキル基の炭素数が22以下であると、絶縁性粒子付き導電性粒子の導電性が高くなる。絶縁性粒子付き導電性粒子の導電性をより一層高める観点からは、上記化合物Aにおける上記アルキル基の炭素数は16以下であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。上記アルキル基は、直鎖構造を有することが好ましい。
上記化合物Aは、炭素数6〜22のアルキル基を有していれば特に限定されない。上記化合物Aは、炭素数6〜22のアルキル基を有するリン酸エステル又はその塩、炭素数6〜22のアルキル基を有する亜リン酸エステル又はその塩、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルコキシシラン、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルキルチオール、及び炭素数6〜22のアルキル基を有するジアルキルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物Aは、リン酸エステル又はその塩、亜リン酸エステル又はその塩、アルコキシシラン、アルキルチオール及びジアルキルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましい化合物Aの使用により、導電部に錆をより一層生じ難くすることができる。錆をより一層生じ難くする観点からは、上記化合物Aは、上記リン酸エステルもしくはその塩、亜リン酸エステルもしくはその塩、又は、アルキルチオールであることが好ましく、上記リン酸エステルもしくはその塩、又は、亜リン酸エステルもしくはその塩であることがより好ましい。上記化合物Aは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記化合物Aは、導電部の表面と反応可能な反応性官能基を有することが好ましい。上記化合物Aは、絶縁性粒子の表面と反応可能な反応性官能基を有することが好ましい。被膜は、被膜を除く絶縁性粒子付き導電性粒子部分(導電性粒子又は絶縁性粒子)と化学結合していることが好ましい。被膜は、導電部の表面と化学結合していることが好ましい。被膜は、絶縁性粒子の表面と化学結合していることが好ましい。被膜は、導電部の表面及び絶縁性粒子の表面と化学結合していることがより好ましい。上記反応性官能基の存在により、及び上記化学結合により、被膜の剥離が生じ難くなり、この結果導電部に錆がより一層生じ難くなり、かつ導電性粒子の表面から絶縁性粒子が意図せずにより一層脱離し難くなる。
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した絶縁性粒子付き導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記絶縁性粒子付き導電性粒子を用いた場合には、絶縁性粒子付き導電性粒子をバインダー樹脂中に分散させる際などに、導電性粒子の表面から絶縁性粒子が脱離し難い。本発明に係る導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。本発明に係る導電材料は、回路接続用導電材料であることが好ましい。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂としては、一般的には絶縁性の樹脂が用いられる。上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体又はエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
上記導電材料は、上記絶縁性粒子付き導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
上記バインダー樹脂中に上記絶縁性粒子付き導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記絶縁性粒子付き導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記絶縁性粒子付き導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記絶縁性粒子付き導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記絶縁性粒子付き導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電ペーストは、導電インク又は導電粘接着剤であってもよい。また、上記導電フィルムには、導電シートが含まれる。上記絶縁性粒子付き導電性粒子を含む導電材料が、導電フィルムである場合には、絶縁性粒子付き導電性粒子を含む導電フィルムに、絶縁性粒子付き導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。ただし、上述のように、本発明に係る導電材料は、ペースト状であることが好ましく、導電ペーストであることが好ましい。ペースト状には液状が含まれる。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に絶縁性粒子付き導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
上記導電材料100重量%中、上記絶縁性粒子付き導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記絶縁性粒子付き導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
(接続構造体)
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
上記接続構造体は、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材と、上記第2の接続対象部材を接続している接続部とを備える。上記接続部が、上述した絶縁性粒子付き導電性粒子により形成されているか、又は上述した絶縁性粒子付き導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている。上記第1の電極と上記第2の電極とが、上記絶縁性粒子付き導電性粒子における上記導電性粒子により電気的に接続されている。
図5に、本発明の第1の実施形態に係る絶縁性粒子付き導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
図5に示す接続構造体81は、第1の接続対象部材82と、第2の接続対象部材83と、第1,第2の接続対象部材82,83を接続している接続部84とを備える。接続部84は、絶縁性粒子付き導電性粒子1を含む導電材料により形成されている。接続部84は、絶縁性粒子付き導電性粒子1を複数含む導電材料を硬化させることにより形成されていることが好ましい。なお、図5では、絶縁性粒子付き導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。絶縁性粒子付き導電性粒子1にかえて、絶縁性粒子付き導電性粒子21,41,61などを用いてもよい。
第1の接続対象部材82は表面(上面)に、複数の第1の電極82aを有する。第2の接続対象部材83は表面(下面)に、複数の第2の電極83aを有する。第1の電極82aと第2の電極83aとが、1つ又は複数の絶縁性粒子付き導電性粒子1における導電性粒子2により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材82,83が絶縁性粒子付き導電性粒子1における導電性粒子2により電気的に接続されている。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104〜4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
上記積層体を加熱及び加圧する際に、導電性粒子2と第1,第2の電極82a,83aとの間に存在していた絶縁性粒子3を排除できる。例えば、上記加熱及び加圧の際には、導電性粒子2と第1,第2の電極82a,83aとの間に存在していた絶縁性粒子3が溶融したり、変形したりして、導電性粒子2の表面が部分的に露出する。なお、上記加熱及び加圧の際には、大きな力が付与されるので、導電性粒子2の表面から一部の絶縁性粒子3が剥離して、導電性粒子2の表面が部分的に露出することもある。導電性粒子2の表面が露出した部分が、第1,第2の電極82a,83aに接触することにより、導電性粒子2を介して第1,第2の電極82a,83aを電気的に接続できる。
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記導電材料は、電子部品を接続するための導電材料であることが好ましい。上記導電材料はペースト状の導電ペーストであり、ペースト状の状態で接続対象部材上に塗工されることが好ましい。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子の使用により絶縁信頼性が効果的に高くなることから、上記第1の電極が形成されていない部分のスペースである電極間幅の最小値と上記第2の電極が形成されていない部分のスペースである電極間幅の最小値とがそれぞれ30μm以下であることが好ましい。
本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、特にガラス基板と半導体チップとを接続対象部材とするCOG、又はガラス基板とフレキシブルプリント基板(FPC)とを接続対象部材とするFOGに好適に使用される。本発明に係る絶縁性粒子付き導電性粒子は、COGに用いられてもよく、FOGに用いられてもよい。本発明に係る接続構造体では、上記第1,第2の接続対象部材が、ガラス基板と半導体チップとであるか、又はガラス基板とフレキシブルプリント基板とであることが好ましい。上記第1,第2の接続対象部材は、ガラス基板と半導体チップとであってもよく、ガラス基板とフレキシブルプリント基板とであってもよい。
ガラス基板と半導体チップとを接続対象部材とするCOGで使用される半導体チップには、バンプが設けられていることが好ましい。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)導電性粒子の作製工程
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上にニッケルめっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
上記導電性粒子10重量部及び2−カルボキシエチルホスホン酸10重量部をソルミックス100mL中に入れ、60℃で1時間撹拌して、撹拌液を得た。得られた撹拌液をろ過した後、洗浄し、70℃で5時間真空乾燥して、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を有する導電性粒子を得た。
得られた導電性粒子10重量部をポリエチレンイミン(重量平均分子量約70000)0.5重量%水溶液200mL中に入れ、30分間撹拌した。次に、ろ過、洗浄することで導電性粒子に吸着しなかったポリエチレンイミンを除去した後、純水100mLに再度分散して、導電性粒子の分散液を得た。次にゾルゲル法を使用して作製したシリカ粒子(平均粒子径200nm)3重量部を純水100mLに超音波を照射しながら分散させ、得られた導電性粒子の分散液に30分かけて滴下した後、さらに1時間撹拌し、撹拌液を得た。得られた撹拌液をろ過、洗浄した後120℃で3時間乾燥を行うことで、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(実施例2)
(1)導電性粒子の作製工程
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上にニッケルめっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
上記導電性粒子10重量部及び5−(トリメトキシシリル)ペンタン酸1−(2−ニトロフェニル)エチル10重量部をベンゼン100mL中に入れ、50℃で1時間撹拌して、撹拌液を得た。得られた撹拌液をろ過した後、洗浄し、120℃で5時間真空乾燥して、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基が保護基により保護された被保護基を有する粒子を得た。
次に、得られた粒子をエタノールに入れ、撹拌しながら高圧水銀ランプを用いて紫外線を60分間照射して、脱保護により上記被保護基をカルボキシル基に変換して、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を有する導電性粒子を得た。
得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(実施例3)
(1)導電性粒子の作製工程
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上に銅めっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
用意した導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(実施例4)
(1)導電性粒子の作製工程
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上に銅めっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。用意した導電粒子の表面上に、はんだ(SnAg)層を電気めっきにより形成した導電性粒子(はんだ層の厚み0.1μm)を用意した。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
用意した導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(実施例5)
(1)導電性粒子の作製工程
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上にニッケルめっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。このめっき層には平均粒径が約100nmのニッケル微粒子をめっき直前に投入することで、約150nmの突起が複数形成されている。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
用意した導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(実施例6)
(1)導電性粒子の作製工程
実施例1と同様にして、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を有する導電性粒子を得た。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
得られた導電性粒子10重量部をポリエチレンイミン(重量平均分子量約70000)0.5重量%水溶液200mL中に入れ、30分間撹拌した。次に、ろ過、洗浄することで導電性粒子に吸着しなかったポリエチレンイミンを除去した後、純水100mLに再度分散して、導電性粒子の分散液を得た。次にソープフリー重合法を使用して作製したジビニルベンゼン粒子(平均粒子径150nm)3重量部を純水100mLに超音波を照射しながら分散させ、得られた導電性粒子の分散液に30分かけて滴下した後、さらに1時間撹拌し、撹拌液を得た。得られた撹拌液をろ過、洗浄した後120℃で3時間乾燥を行うことで、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(比較例1)
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上にニッケルめっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
上記導電性粒子10重量部及びメルカプトカルボン酸10重量部を用いて、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を導入しようと試みた。しかしながら、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を導入させることはできず、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を有さない導電性粒子を得た。
得られた導電性粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、絶縁性粒子付き導電性粒子を得ようと試みた。しかしながら、導電性粒子に絶縁性粒子がほとんど付着しなかった。
(比較例2)
(1)導電性粒子の作製工程
ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面上にニッケルめっき層(導電層)が形成されている導電性粒子(平均粒子径3.01μm、導電層の厚み0.10μm)を用意した。この導電性粒子を、金層及びパラジウム層のいずれも形成せずに用いた。
(2)絶縁性粒子付き導電性粒子の作製工程
上記導電性粒子10重量部及び2−カルボキシエチルホスホン酸10重量部をソルミックス100mL中に入れ、60℃で1時間撹拌して、撹拌液を得た。得られた撹拌液をろ過した後、洗浄し、70℃で5時間真空乾燥して、ニッケルを含む導電部の表面にカルボキシル基を有する導電性粒子を得た。
得られた導電性粒子10重量部を純水100mLに分散して、導電性粒子の分散液を得た。次にゾルゲル法を使用して作製したシリカ粒子(平均粒子径200nm)3重量部を純水100mLに超音波を照射しながら分散させ、得られた導電性粒子の分散液に30分かけて滴下した後、さらに1時間撹拌し、撹拌液を得た。得られた撹拌液をろ過、洗浄した後120℃で3時間乾燥を行うことで、絶縁性粒子付き導電性粒子を得た。
(評価)
(1)異方性導電ペーストの作製
熱硬化性化合物であるエポキシ化合物(ナガセケムテックス社製「EP−3300P」)20重量部と、熱硬化性化合物であるエポキシ化合物(DIC社製「EPICLON HP−4032D」)15重量部と、熱硬化剤であるイミダゾールのアミンアダクト体(味の素ファインテクノ社製「PN−F」)10重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)20重量部とを配合し、さらに得られた絶縁性粒子付き導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。
(2)第1の接続構造体(L/S=20μm/20μm)の作製
L/Sが20μm/20μmのAl−Ti4%電極パターン(Al−Ti4%電極厚み1μm)を上面に有するガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmの金電極パターン(金電極厚み20μm)を下面に有する半導体チップを用意した。
上記ガラス基板の上面に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗工し、異方性導電材料層を形成した。次に、異方性導電材料層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電材料層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3.0MPaの圧力をかけて、異方性導電材料層を185℃で硬化させ、第1の接続構造体を得た。
(3)第2の接続構造体(L/S=30μm/30μm)の作製
L/Sが30μm/30μmのAl−Ti4%電極パターン(Al−Ti4%電極厚み1μm)を上面に有するガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの金電極パターン(金電極厚み20μm)を下面に有する半導体チップを用意した。
L/Sが異なる上記ガラス基板及び半導体チップを用いたこと以外は第1の接続構造体の作製と同様にして、第2の接続構造体を得た。
(4)第3の接続構造体(L/S=50μm/50μm)の作製
L/Sが50μm/50μmのAl−Ti4%電極パターン(Al−Ti4%電極厚み1μm)を上面に有するガラス基板を用意した。また、L/Sが50μm/50μmの金電極パターン(金電極厚み20μm)を下面に有する半導体チップを用意した。
L/Sが異なる上記ガラス基板及び半導体チップを用いたこと以外は第1の接続構造体の作製と同様にして、第3の接続構造体を得た。
(5)絶縁性粒子の付着性
得られた導電材料(異方性導電ペースト)の一部をトルエンで洗浄し、絶縁性粒子付き導電性粒子を取り出した。SEMにより、取り出された絶縁性粒子付き導電性粒子において、絶縁性粒子が導電性粒子の表面から脱離しているか否かを観察し、絶縁性粒子の付着性を下記の評価基準で評価した。
[絶縁性粒子の付着性の評価基準]
○○:絶縁性粒子の全個数の90%以上が、導電性粒子の表面から脱離していない
○:絶縁性粒子の全個数の60%以上、90%未満が、導電性粒子の表面から脱離していない
△:絶縁性粒子の全個数の30%以上、60%未満が、導電性粒子の表面から脱離していない
×:絶縁性粒子の全個数の30%未満が、導電性粒子の表面から脱離していない
(6)粘度
得られた導電材料(異方性導電ペースト)の粘度を、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で測定した。粘度を下記の基準で判定した。
[粘度の判定基準]
A:100Pa・sを超え、1000Pa・s以下
B:Aに相当しない
(7)電極上の導電性粒子の配置精度
得られた第1,第2,第3の接続構造体において、導電材料により形成された接続部に含まれる導電性粒子を確認した。電極上に配置されている導電性粒子と電極間に配置されている導電性粒子との個数の割合(%)を評価した。電極上の導電性粒子の配置精度を下記の基準で判定した。
[電極上の導電性粒子の配置精度の判定基準]
○○:電極上に配置されている導電性粒子の個数の割合が70%以上
○:電極上に配置されている導電性粒子の個数の割合が60%以上、70%未満
△:電極上に配置されている導電性粒子の個数の割合が50%以上、60%未満
×:電極上に配置されている導電性粒子の個数の割合が50%未満
(8)上下の電極間の導通信頼性(導通評価)
得られた第1,第2,第3の接続構造体(n=15個)において、上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。導通信頼性を下記の基準で判定した。
[導通信頼性の判定基準]
○○:接続抵抗の平均値が2.0Ω以下
○:接続抵抗の平均値が2.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗の平均値が5.0Ωを超え、10.0Ω以下
×:接続抵抗の平均値が10.0Ωを超える
(9)隣接する電極間の絶縁信頼性(絶縁評価)
得られた第1,第2,第3の接続構造体(n=15個)において、85℃、85%の雰囲気中に100時間放置後、隣接する電極間が絶縁状態か導通状態かを25か所で測定した。絶縁信頼性を下記の基準で判定した。
[絶縁信頼性の判定基準]
○○:絶縁状態の電極間が25か所
○:絶縁状態の電極間が20か所以上、25か所未満
△:絶縁状態の電極間が15か所以上、20か所未満
×:絶縁状態の電極間が15か所未満
結果を下記の表1に示す。