JP2011175873A - 燃料電池、燃料電池システムおよび発電方法 - Google Patents

燃料電池、燃料電池システムおよび発電方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の水素−酸素燃料電池よりも電池性能を向上させた燃料電池および燃料電池システムを提供する。
【解決手段】アノード3に重水素が供給され、カソード4に酸素含有ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池1であって、アノード3に供給される重水素、カソード4に供給される酸素含有ガスが、各々、重水で加湿されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池、燃料電池システムおよび発電方法に関する。
燃料電池は、アノードに燃料、カソードに酸化剤を供給して電気化学反応により発電するシステムである。燃料としては、例えば、水素、ジメチルエーテル(例えば特許文献1)、重水素(例えば、特許文献2−5)が用いられる。もっとも単純な系は燃料に水素、酸化剤に酸素を用いた水素−酸素燃料電池である。この燃料電池の電気エネルギーに変換する理論効率は、HとOが反応して液体の水が生ずる場合には常温で約83%であり、この効率の良さが燃料電池の特徴として注目されている点である。一方、理論起電力は約1.2V程度であり、燃料電池本体の活性化分極、抵抗分極、濃度分極等の各種の損失によりさらに出力電圧が低下する。そこで、実際の燃料電池システムでは必要な起電力を得るために直列に連結(スタック)して、実用に供せられる起電力を得ている。電池性能向上のためには電池本体の損失を小さくして発電効率を高めることが重要であるが、実用化が可能な燃料を探索して優れた電池性能を有する燃料電池を開発することも重要な技術的課題である。
特開平11−144751号公報 特開平2−276989号公報 特開平3−2689号公報 特開平4−137366号公報 特開平8−109005号公報
本発明は以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来の水素−酸素燃料電池よりも電池性能を向上させた燃料電池および燃料電池システムを提供することを課題としている。
本発明は以下のことを特徴としている。
第1に、本発明の燃料電池は、アノードに重水素が供給され、カソードに酸素含有ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池である。アノードに供給される重水素、カソードに供給される酸素含有ガスが、各々、重水で加湿されている。
第2に、上記第1の発明において、アノードとカソードとの間に固体高分子イオン交換膜が設けられて固体高分子形燃料電池を形成する。
第3に、本発明の燃料電池システムは、アノードに重水素が供給され、カソードに酸素含有ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池を有する燃料電池システムである。上記第1又は第2の発明の燃料電池と、重水素をアノードに供給する燃料ガス供給系と、重水素を加湿する燃料ガス加湿手段と、酸素含有ガスをカソードに供給する酸素供給系と、酸素含有ガスを加湿する酸素含有ガス加湿手段とを備えている。
第4に、上記第3の発明において、燃料ガス供給系は、重水素貯蔵合金で構成される燃料ガス供給装置を有する。
第5に、本発明の発電方法は、重水素と酸素含有ガスとの電気化学反応により得られたギプスエネルギー変化を電気エネルギーに変換して発電させる発電方法であり、重水素、酸素含有ガスは、各々、重水で加湿されている。
本発明によれば、アノードに供給される重水素、カソードに供給される酸素含有ガスを、各々、重水で加湿することにより、従来の水素−酸素燃料電池よりも電池性能を向上させることが可能である。
本発明の燃料電池の一実施形態を示した概略構成図である。 燃料電池を有する燃料電池システムの一実施形態を示した概略構成図である。 実施例における燃料電池のI-V特性の試験結果である。 実施例における燃料電池のI-V特性の試験結果である。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の燃料電池の一実施形態を示した概略構成図である。
この本実施形態の燃料電池1は、プロトン導電性の電解質部2とそれを挟んで設けられた一対のガス拡散性のアノード3およびカソード4とを有している。前記アノード3およびカソード4の両電極は、電解質部2側にそれぞれ、貴金属含有アノード電極触媒層5および貴金属含有カソード電極触媒層6を備えている。アノード3およびカソード4の両電極の電解質部2と反対側にはそれぞれ、アノード3に燃料ガスとなる重水素を供給するアノード側ガス分配板7およびカソード4に酸素含有ガスを供給するカソード側ガス分配板8が配置され、両電極間または両ガス分配板間〔ガス分配板が後述するセパレーター(集電体)を兼ねる場合〕で導通を取り出せるようにした燃料電池本体10が形成されている。この燃料電池本体10には、アノード3に燃料ガスを供給する燃料ガス供給系11と、燃料ガスを重水で加湿する燃料ガス加湿手段12と、カソード4に空気等の酸素含有ガスを供給する酸素供給系13と、酸素含有ガスを重水で加湿する酸素含有ガス加湿手段14とを備えている。さらに、アノード側ガス排出系15およびカソード側ガス排出系16も備えている。また、図示しないが、前記燃料ガス供給系11には燃料ガスとなる重水素の供給源として燃料ガス供給装置が、前記酸素供給系13には酸素含有ガスの供給源として酸素含有ガス供給装置が連結されている。なお、上記燃料電池本体10は1つのセルからなる単セル構造であるが、複数のセルを複層化したスタック構造とすることもできる。
アノード3とカソード4との間に介在されている電解質部2は、例えば、フッ素樹脂系スルホン酸等の固体高分子イオン交換膜で構成される。
貴金属含有アノード電極触媒層5および貴金属含有カソード電極触媒層6は、例えば、白金および白金を含む合金から選ばれる少なくも1種の触媒物質と該触媒物質を担持している担体とを有する触媒担持体で構成される触媒層である。白金を含む合金としては、燃料電池の分野において用いられているものから適宜選択して用いることができる。好適な合金の具体例としては、白金−ルテニウム合金、および白金−コバルト合金などの白金−貴金属合金が挙げられる。触媒物質を担持する担体としては、カーボン担体およびセラミック担体などが挙げられる。中でも触媒層での電子の輸送を容易にするため、導電性であるカーボンブラック及びカーボンナノチューブ等のカーボン担体が好ましい。セラミック担体としては酸化チタンが挙げられる。
触媒担持体の触媒担持率は、触媒物質及び担体の合計質量に対する白金の割合(質量%)である。貴金属含有アノード電極触媒層および貴金属含有カソード電極触媒層のうち少なくとも一方、好ましくは双方において、この触媒担持率は20質量%以上、80質量%以下、好ましくは40質量%から60質量%の間であることが望ましい。なお、貴金属含有アノード電極触媒層5と貴金属含有カソード電極触媒層6とで、触媒担持率が同一でも異なっていてもよい。
燃料電池1のガス分配板7,8としては、一般には導電性カーボン板あるいは金属板の表面に、ガスの流通のために複数本の溝加工をガス供給口からガス排出口まで施したものが使用され、前記溝以外のフラットな面はガス拡散電極基質に密着させ、電子の集電体としての機能を果たさせてもよい。
スタック構造の燃料電池ではガス分配板の外側にガス不透過性で且つ導電性のセパレーターが配置され、任意のユニットセルのアノードとこれに隣接するユニットセルのカソードとを導通させ、隣接ユニットセル同士が直接接続される。セパレーターを設ける代わりに、アノード側ガス分配板の裏面には隣接するユニットセルのカソード用ガス分配溝を設け、逆にカソード側ガス分配板の裏面にはアノード用ガス分配溝を設けた構造でも良い。
燃料ガス供給系11は、燃料供給管で構成され、アノード側に接続される。酸素供給系13は、酸素供給管で構成され、カソード側に接続される。アノード側ガス排出系15は、未反応燃料ガスを排出する燃料排出管で構成され、アノード側に接続される。カソード側ガス排出系16は、未反応酸素および生成水を排出する酸素排出管で構成され、カソード側に接続される。
重水素の供給源としての燃料ガス供給装置は、例えば、重水素貯蔵合金容器内の重水素貯蔵合金に重水素が貯蔵され、加熱等により重水素を放出させる構成とされてよい。もしくは、耐圧タンク等の容器に貯蔵されて供給される構成、錯体重水素化合物等を利用した構成等とされてもよく、これに限定されるものではない。酸素含有ガスの供給源として酸素含有ガス供給装置は、例えば、エアポンプで供給される構成、耐圧タンク等の容器に圧縮空気が貯蔵されて供給される構成、活性炭、活性炭繊維、ナノカーボンチューブ等の酸素吸着材料が耐圧タンク等の容器に充填され、加熱等により酸素を放出させる構成等が考慮されるが、これに限定されるものではない。
燃料ガス加湿手段12および酸素含有ガス加湿手段14としては、図1に示すように、燃料供給管や酸素供給管の途中に組み込まれる加湿装置が挙げられる。この加湿装置は、重水を入れた容器がヒータで加熱され、加熱された水中に重水素、酸素含有ガスが各々吹き込まれて加湿されるようになっている(バブラー加湿方式)。別の実施形態としては、燃料供給管や酸素供給管の外に独立して加湿装置を設け、燃料供給管や酸素供給管の途中に加湿装置からの配管が接続される構成とし、加湿装置から重水の水蒸気を重水素、酸素含有ガス、各々に添加するようにしてもよい(水蒸気添加方式)。
次に、発電方法について説明する。
燃料ガス供給系11から供給される重水素を燃料ガス加湿手段12により重水で加湿した、重水加湿重水素をアノード3に供給し、また酸素供給系13から供給される酸素含有ガス(例えば、空気)を酸素含有ガス加湿手段14により重水で加湿した、重水加湿酸素含有ガスをカソード4に供給して、重水素と酸素含有ガスとの電気化学反応により得られたギプスエネルギー変化を電気エネルギーに変換して発電させる。より具体的には、重水加湿重水素がアノード3に供給され、重水加湿酸素含有ガスがカソード4に供給されると、アノード3側に供給された重水素がイオン化して電解質部2を流れ、カソード4側の酸素と反応して重水が生成される。燃料電池本体10において電位差が発生しアノード3はマイナス(−)極、カソード4はプラス(+)極となり、電位差をもって直流電圧が発電される。燃料電池本体10の出力端子に外部負荷17を接続して電位間に外部負荷17を存在させると燃料電池1に電源としての機能を持たせることができる。未反応の燃料ガスはアノード側排出系15から排出され、未反応の酸素や、燃料ガスと酸素との反応により生成した重水はカソード側排出系16から排出される。
図2は、燃料電池を有する燃料電池システムの一実施形態を示した概略構成図である。
本実施形態に係る燃料電池システムは、閉ループ式の燃料電池システムである。図2に示すように、燃料電池1はチタン合金製の耐圧容器21に収納され、燃料電池1には、重水素の供給源となる、重水素を貯蔵する重水素貯蔵合金を内部に有する重水素貯蔵合金容器22と、酸素含有ガスの供給源となる、酸素が高圧で貯蔵されている酸素含有ガス貯蔵容器23が接続されている。また、重水素貯蔵合金容器22と燃料電池1との間には、重水素を重水で加湿する加湿装置24が接続され、酸素含有ガス貯蔵容器23と燃料電池1との間には、酸素含有ガスを重水で加湿する加湿装置25が接続されている。
また、重水素貯蔵合金容器22には、加熱手段29が設けられている。加熱手段29には、加熱媒体が導かれて、重水素貯蔵合金容器22とその内部の重水素貯蔵合金が加熱される。本実施形態では、燃料電池1を冷却した後の排熱が加熱媒体と加湿装置24,25の加熱に利用される。例えば、燃料電池1の排熱で温められた媒体で、加湿装置24,25が加熱される。また、加熱媒体は、熱交換器26により燃料電池1の排熱で温められた媒体と熱交換されて温められる。燃料電池1の排熱で温められた媒体は、放熱管27で冷却された後、燃料電池1に環流して燃料電池1の冷却に資する。
本実施形態の燃料電池システムでは、アノード側から排出された未反応の燃料ガスが加湿装置24,25に導かれて再循環される。カソード側から生成した重水はタンク28に貯められる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
以下に、実施例を示す。
以下の条件で燃料電池の性能を評価した。
図1に示す構成の燃料電池を用いた。燃料電池は、アノードおよびカソードの両電極とも50wt.%Pt/C触媒0.5mg Pt/cm2、電解質膜Dupont社製Nafion212(膜厚50μm)のMEA(Membrane Electrode Assembly)、電極面積27.04cm2のsingle serpentine単セルである。
燃料ガスは重水素(D)又は水素(H)を用い、酸素含有ガスは空気を用いた。燃料ガスおよび酸素含有ガス(空気)の加湿には重水(DO)又は軽水(HO)を用いた。下記(1)から(3)の3通りの組み合わせで燃料電池のI-V特性を調べた。
(1)燃料ガスに重水素、酸素含有ガスに空気を使用し、燃料ガスおよび酸素含有ガスを重水で加湿した。
(2)燃料ガスに水素、酸素含有ガスに空気を使用し、燃料ガスおよび酸素含有ガスを軽水で加湿した。
(3)燃料ガスに重水素、酸素含有ガスに空気を使用し、燃料ガスおよび酸素含有ガスを軽水で加湿した。
図3に上記(1)と(2)の燃料電池のI-V特性を示し、図4に上記(1)と(3)の燃料電池のI-V特性を示す。セルの運転条件を下記に示す。
セル温度:80℃、常圧
アノード:重水素又は水素180ml/min、80℃重水加湿又は軽水加湿
カソード:空気180ml/min、70℃重水加湿又は軽水加湿
以上の結果から、(1)の燃料電池の電池性能は、(2)(3)の燃料電池の電池性能よりも優れていることがわかる。電池自体の効率は、セル電圧を理論起電力で割った値であり、電池の出力電力密度は、電流密度とセル電圧の積である。効率一定として電池出力を比較するには、セル電圧一定として電流密度を比較すれば良い。このことから、燃料ガスに重水素を用い、加湿水に重水を用いた(1)の燃料電池は、燃料ガスに水素を用い、加湿水に軽水を用いた(2)の燃料電池よりも1.5〜2倍の出力が見込まれることが確認できた。
ところで、燃料電池のセル電圧は、理論起電力から活性化分極、抵抗分極、及び濃度分極を差し引いた値である。活性化分極とは、触媒反応に伴うエネルギー損失に関わる量であり、電流密度0から100mA/cm2程度の低電流密度域でセル電圧降下が大きいのは、触媒の働きが悪く活性化分極が大きいのが原因である。抵抗分極とは主に電解質膜の抵抗に由来するエネルギー損失であり、電流密度―セル電圧特性の勾配が大きいのは、抵抗分極が大きいことが原因である。濃度分極とは、電極のガス拡散性が不十分で、必要とする反応ガスが触媒に到達しにくいことに起因するエネルギー損失であり、反応ガスの大半が消費される高電流密度域でセル電圧が急降下するのは、濃度分極が大きいことが原因である。
図3において、水素と重水素のセル電圧-電流密度特性の実験結果を比較すると、電流密度の如何に関わらず重水素が水素より20〜40mV程度高いセル電圧を示している。水素と重水素で、活性化分極、抵抗分極、濃度分極は殆ど変わらず、理論起電力の違いだけ上下に平行移動している特性である。重水素−酸素燃料電池((1)の燃料電池)の性能が水素−酸素燃料電池((2)の燃料電池)の性能より優れていることは、下記の理論起電力の計算結果からも明らかである。
水素−酸素燃料電池では、
H2+1/2O2 → H2O
という反応が生じ、この反応の25℃におけるギプスエネルギー変化は
H2O(g) -228.60 kJ/mol (電気化学会編「電気化学便覧」第5版 平成12年)
-H2(g) 0 kJ/mol
-O2(g) 0 kJ/mol
計 -228.60 kJ/mol
であり、この反応の25℃における理論起電力は
ΔG/nF=228.60×10^3/(2×96500)=1.184V
となる。
重水素−酸素燃料電池では、
D2+1/2O2 → D2O
という反応が生じ、この反応の25℃におけるギプスエネルギー変化は
D2O(g) -234.56 kJ/mol
-H2(g) 0 kJ/mol
-O2(g) 0 kJ/mol
計 -234.56 kJ/mol
であり、この反応の25℃における理論起電力は
ΔG/nF=234.56×10^3/(2×96500)=1.215V
となる。
このように、理論計算によると重水素と水素の理論起電力の差は1.215-1.184V=0.031Vとなり、図3の実験結果が理論起電力の差に起因することが容易に類推される。
1 燃料電池
3 アノード
4 カソード
11 燃料ガス供給系
12 燃料ガス加湿手段
13 酸素供給系
14 酸素含有ガス加湿手段

Claims (5)

  1. アノードに重水素が供給され、カソードに酸素含有ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池であって、アノードに供給される重水素、カソードに供給される酸素含有ガスが、各々、重水で加湿されていることを特徴とする燃料電池。
  2. アノードとカソードとの間に固体高分子イオン交換膜が設けられて固体高分子形燃料電池を形成することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
  3. アノードに重水素が供給され、カソードに酸素含有ガスが供給されて電気化学反応により発電する燃料電池を有する燃料電池システムにおいて、請求項1又は2の燃料電池と、重水素をアノードに供給する燃料ガス供給系と、重水素を加湿する燃料ガス加湿手段と、酸素含有ガスをカソードに供給する酸素供給系と、酸素含有ガスを加湿する酸素含有ガス加湿手段とを備えていることを特徴とする燃料電池システム。
  4. 燃料ガス供給系は、重水素貯蔵合金で構成される燃料ガス供給装置を有することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
  5. 重水素と酸素含有ガスとの電気化学反応により得られたギプスエネルギー変化を電気エネルギーに変換して発電させる発電方法であって、重水素、酸素含有ガスは、各々、重水で加湿されていることを特徴とする発電方法。
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