JP2011174166A - 酸化スラグの再利用方法及びリサイクルスラグ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】含クロム鋼を製造する際に発生した酸化スラグを再利用する方法において、溶解精錬後の組成が、質量%で、CaO:35〜55%、SiO2:5〜20%、Al2O3:0.5〜15%、MgO:3〜15%、MnO:2〜15%、CaF2:0.05〜0.5%、T.Fe:10〜30%、Cr2O3:0.2〜6.0%であり、且つ、残部が不可避不純物である酸化スラグに対し、当該酸化スラグ中の酸化鉄にマンガン元素が固溶してなる鉱物相の量が、12.5質量%以上となるように、溶解精錬後の前記酸化スラグを冷却する。
【選択図】図1
Description
この3価クロム酸化物(Cr2O3)は、さらに酸化すると、6価クロム酸化物となり有害な物質となる。このような有害な6価クロム酸化物がスラグ中に多く残存した場合は、そのスラグを有価資源として路盤材等に再利用できない場合がある。
このように、クロム酸化物を含むスラグの処理方法として、次に示すような様々な技術が開発されている。
特許文献1では、含クロム鋼の製造時に発生するダストやスラッジを乾燥させた後に、含クロム鋼の溶解あるいは精錬を行う炉内に添加して溶融スラグを形成させ、該溶融スラグを溶鋼の浴面上から分離あるいは除去するに際し、規定する式を満足するようにスラグ中(S)濃度と溶鋼中〔S〕濃度の比である脱硫分配比(S)/〔S〕を調整してスラグを分離あるいは除去している。
特許文献3では、含クロム鋼を電気炉で溶解する時に発生するスラグについて、このスラグの塩基度を0.7≦CaO/SiO2≦1.2に調整して遊離の未滓化CaOの滓化を促進させることにより、スラグ中の三価クロム酸化物Cr2O3の濃度を3wt%以上5wt%以下にし、その後、溶解後の含クロム溶鋼を、排滓後のスラグが大気にさらされる面積を示す、スラグ湯面面積(Sm2)とスラグ容積(Vm3)との比(S/Vm−1)が4以下である容器中に排滓している。
特許文献3及び特許文献4は、含クロム溶鋼を排滓するときの容器についての規定であるが、スラグを排滓した後の状態は考慮されておらず、この方法においても、確実に6価クロムの溶出を防止することは難しいのが実情である。
すなわち、本発明の技術的手段は、含クロム鋼を製造する際に発生した酸化スラグを再利用する方法において、前記酸化スラグ中の酸化鉄にマンガン元素が固溶してなる鉱物相の量が、12.5質量%以上となるように、溶解精錬後の前記酸化スラグを冷却することで再利用するリサイクルスラグを生成する点にある。
発明者は、炉外精錬(還元精錬)スラグではなく、転炉、ならびに電気炉などの酸素吹錬を行った際に発生する酸化スラグに着眼した。
即ち、発明者は、酸化スラグを再利用するに際して6価クロムの溶出防止が重要であり、6価クロムはスラグ中の3価クロム酸化物が一部酸化することにより6価クロム酸化物に変化するという認識の下で、精鋭研究を行った。
また、酸化スラグを冷却するに際しては、酸化スラグの表面に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は特に制限されないが、例えば、冷却後粉砕した製鋼スラグを用いることができる。
図1は、含クロム鋼を製造するに際して行う溶解精錬工程と、この溶解精錬工程にて発生した酸化スラグをリサイクルスラグとするリサイクルスラグ生成工程とを示したものである。なお、この実施形態では、図1に示すように、含クロム鋼を製造するに際して電気炉1を用いているが、転炉を用いるものであってもよい。
容器本体3と蓋体4とは上下分離可能となっている。この容器本体3と蓋体4とによって、一方側(紙面、右側)に排滓口5が形成され、他方側(紙面、左側)に出鋼口6が形成されている。なお、容器本体3に、排滓口5や出鋼口6が形成されていてもよい。
蓋体4等には、アークを発生させる複数の電極(例えば、炭素電極)8が設けられ、この電極8のアーク放電によって内部の冷鉄源を溶解するようになっている。
電気炉1により、溶解精錬を行うには、まず、冷鉄源(例えば、スクラップ)を容器本体3に投入すると共に、副原料等を投入する。そして、電極8によるアーク放電によって、冷鉄源及び副原料を加熱溶解して溶湯状態とし、その溶湯2に対してランス7により酸素を吹き込むことにより、精錬、即ち、脱りん処理や脱炭処理を行う。
本発明は、ステンレス鋼などのCrを含む鋼、即ち、含クロム鋼(単にクロム鋼ということがある)を電気炉1又は転炉にて溶解精錬した際に発生するスラグS1を再利用することを特徴としている。
電気炉1にて、クロム鋼を溶解精錬するためには、まず、Crを含むスクラップを容器本体3に投入して加熱溶解をする。そして、脱りん処理を行うにあたっては、CaOを主成分とする脱りん剤を投入して、スラグを滓化させて、当該スラグにより脱りん処理を行う。また、ランス7による酸素の吹き込み等により、脱りん処理と同時に脱炭処理を進め、溶湯2の[P]や[C]が目標とする値に達すると、酸素の吹き込みを停止する(図1、溶解精錬工程)。
なお、溶解精錬後(電気炉1の精錬後)における酸化スラグS1の組成は、質量%で、CaO:35〜55%、SiO2:5〜20%、Al2O3:0.5〜15%、MgO:3〜15%、MnO:2〜15%、CaF2:0.05〜0.5%、T.Fe:10〜30%、Cr2O3:0.2〜6.0%であり、且つ、残部が不可避不純物である。
また、SiO2は溶鋼中のSiが酸化されることで生成する。スラグの脱りん剤としての機能は、スラグ中のCaO濃度とSiO2濃度の比(スラグ塩基度)に依存し、高塩基度程、CaO濃度が高い程、脱りん能が高くなる。ただし、CaO濃度が高くなると、溶解性(滓化性)、反応性が悪化する。
Al2O3は電気炉1にて精錬を行った場合、Al2O3濃度は主にスクラップ中のAl成分に依存することになり、操業実績として15質量%以下である。
MgOは、精錬上の機能は有しておらず、精錬の際に耐火物から溶け出すことにより、スラグ中に含有されることになる。
CaF2は、フッ素源として用いられるもので、フッ素によってスラグ融点を下げる機能があり、滓化性を促進させる。しかし、近年の環境問題により、フッ素レスの操業が進められており、含有量が低減されている。この点から、CaF2は、その含有が少なければ少ない程よい。
精錬を行うにあたってスラグ中の酸化度を高めることは必要であるものの、スラグ中T.Feが高すぎると、溶鋼の歩留が低減することになり、T.Feが高すぎることは望ましくなく30質量%以下にすること望ましい。
本発明では、精錬によって生成したこのような組成を有する酸化スラグS1を緩冷却することにより、リサイクルスラグS2を生成している。また、酸化スラグS1において、他の不可避不純物としては、Na、K、Clなどがあげられる。酸化スラグS1の塩基度(CaO/SiO2)については任意に選択できるが、例えば、2.5〜6.0の値を選択し得る。また、「T.Fe」の標記は、酸化スラグに含有される「トータルのFeの量」のことである。
このように、緩冷却することにより鉱物相の組成が変化するのは、冷却速度が遅いとFeO相にMnが固溶する時間が十分に確保され、逆に冷却速度が速いとFeO単相が優先的に生成するためであると考えられる。冷却後の酸化スラグ中の(Fe,Mn)O鉱物相の量を12.5質量%以上にすることによって、本発明では、6価クロムの溶出が無く、環境に良いリサイクルスラグS2を生成することができる。
スラグポット9内の酸化スラグS1を冷却して固化していくと、当該酸化スラグS1中には、例えば、2CaO・SiO2相、CaO相などの様々な元素からなる鉱物相が生成されることになる。発明者は、様々な角度から酸化スラグS1の様々な鉱物相を分析した。その結果、冷却後の酸化スラグS1において、その(Fe,Mn)O鉱物相にCrの多くが含まれることを見出した。
図2に示すように、冷却後の酸化スラグS1(リサイクルスラグS2)において、(Fe,Mn)O鉱物相の量が12.5質量%未満であるときは、6価クロムの溶出が認められる。一方で、冷却後の酸化スラグS1(リサイクルスラグS2)において、(Fe,Mn)O鉱物相の量が12.5質量%を超えると急激に6価クロムの溶出量が激減しており、当該12.5質量%を臨界点として、6価クロムの溶出量が非常に少ないものとなっている。
なお、冷却後にスラグ中の(Fe,Mn)O鉱物相の量が12.5質量%以上になるようにすればよいので、上述した冷却方法に限定されず、例えば、スラグポット9ではなく、別の炉体に酸化スラグS1を排出して、当該炉内の温度を調節することによって酸化スラグS1を緩冷却(炉冷)してもよい。また、排滓後のスラグ表面に被覆剤を散布することで、スラグの最表面(露出している表面)を緩冷却する手法を用いてもよい。
第1の方法は、精錬後の酸化スラグに試薬を混合することによって所定のスラグ組成にしたり、予め化学分析を実施して組成が判明している実操業にて得られた別のスラグの粉末を酸化スラグに混合と混合した。次に、この混合した酸化スラグを、白金坩堝に所定量保持した後、白金坩堝を雰囲気制御可能な炉内に設置した。また、炉内をArガスにて雰囲気に制御した後、1550℃まで昇温させることで、酸化スラグを再溶解させた。酸化スラグの再溶解後、炉内を酸化雰囲気に制御した後、炉内冷却によってスラグを固化させた。炉内温度が200度以下になった時点で、白金坩堝を炉内から取り出し、白金坩堝からスラグを機械的に採取した。
なお、実施例及び比較例は、スラグポット9ではなく炉体(実験炉)にての結果であるが上述したような実操業に適用しても問題は無く、同様の結果を得られる。
また、(Fe,Mn)O鉱物相の量は、試料(スラグ)を粉末にして、X線回析法により得られたプロファイルを解析して求めた。具体的には、リーベルト法を用いた当業者常法により定量した。X線回析装置は、理学電機製、RINT−1500である。また、分析条件は、ターゲット:Cu、単色化:Kα線、ターゲット出力:40kV−200mA、連続測定:θ/2θ走査、スリット:発散1°、散乱1°、受光0.15mm、モノクロメータ受光スリット:0.6mm、走査速度:2°/min、サンプリング幅:0.02°、測定角度:5°〜80°である。
実施例1〜実施例4に示すように、酸化スラグS1を緩冷却した場合は、6価クロムの溶出量を0.05mg/L未満に抑えることができ、スラグ中(Fe,Mn)O鉱物相の量も、12.5質量%以上であった。
[第2実施形態]
第1実施形態では、酸化スラグS1をスラグポット9に排滓して、そのまま酸化スラグS1を緩冷却していたが、この実施形態では、図3に示すように、酸化スラグS1を緩冷却する際に、酸化スラグS1の表面にCr2O3濃度が低いの酸化防止剤S3を添加することとしている。例えば、酸化スラグS1をスラグポット9に排滓しているときや排滓直後に、酸化スラグS1の表面に他の二次精錬などで用いた還元スラグを酸化防止剤S3として散布し、酸化スラグS1の表面を酸化防止剤S3で覆う。そして、酸化防止剤S3で覆った酸化スラグS1を緩冷却することによりリサイクルスラグS2を生成する。
表2は、第2実施形態に示した酸化スラグの再利用方法によって生成したリサイクルスラグの実施例と、本発明とは異なる方法で生成したリサイクルスラグの比較例とをまとめたものである。表2の組成は、リサイクルを行う酸化スラグS1の組成である。
図4は、上述した実施例及び比較例の6価クロムの溶出量と、スラグ中(Fe,Mn)O鉱物相の量との関係をまとめたものである。図4に示すように、比較例に示すように、スラグ中(Fe,Mn)O鉱物相の量を12.5質量%未満である場合は、6価クロムの溶出量は0.05mg/Lを超えてしまうが、一方で、実施例のように、スラグ中(Fe,Mn)O鉱物相の量を12.5質量%以上にすれば、6価クロムの溶出量を0.05mg/L未満に確実にすることができた。
2 溶湯
3 容器本体
4 蓋体
5 排滓口
6 出鋼口
7 ランス
8 電極
9 スラグポット
S1 酸化スラグ
S2 リサイクルスラグ
Claims (4)
- 含クロム鋼を製造する際に発生した酸化スラグを再利用する方法において、
溶解精錬後の組成が、質量%で、CaO:35〜55%、SiO2:5〜20%、Al2O3:0.5〜15%、MgO:3〜15%、MnO:2〜15%、CaF2:0.05〜0.5%、T.Fe:10〜30%、Cr2O3:0.2〜6.0%であり、且つ、残部が不可避不純物である酸化スラグに対し、当該酸化スラグ中の酸化鉄にマンガン元素が固溶してなる鉱物相の量が、12.5質量%以上となるように、溶解精錬後の前記酸化スラグを冷却することで再利用するリサイクルスラグを生成することを特徴とする酸化スラグの再利用方法。 - 前記酸化スラグを冷却するに際しては、前記酸化スラグの表面に酸化防止剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の酸化スラグの再利用方法。
- 含クロム鋼を製造する際に発生した酸化スラグから生成されるリサイクルスラグにおいて、
溶解精錬後の組成が、質量%で、CaO:35〜55%、SiO2:5〜20%、Al2O3:0.5〜15%、MgO:3〜15%、MnO:2〜15%、CaF2:0.05〜0.5%、T.Fe:10〜30%、Cr2O3:0.2〜6.0%であり、且つ、残部が不可避不純物である酸化スラグを冷却することにより、前記酸化スラグ中の酸化鉄にマンガン元素が固溶してなる鉱物相の量が12.5質量%以上となることを特徴とするリサイクルスラグ。 - 前記酸化スラグを冷却するに際に、前記酸化スラグの表面に低Cr2O3濃度の酸化防止剤を添加して生成することを特徴とする請求項3に記載のリサイクルスラグ。
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