JP2011168848A - 窒化ホウ素皮膜 - Google Patents

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【課題】密着性が良好でc−BN相を高い割合で有する極めて実用性に秀れた窒化ホウ素皮膜の提供。
【解決手段】c−BN相を含む窒化ホウ素皮膜であって、c−BN相の平均結晶粒径が5〜100nmであり、各々の結晶の周りが厚さ1〜20nmのsp結合相で囲まれた組織を有する窒化ホウ素皮膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、高硬度被覆材、耐食性被覆材、耐熱性半導体、放熱材料等に使用される窒化ホウ素皮膜に関するものであり、特に、高い立方晶窒化ホウ素含有率を有する窒化ホウ素皮膜に関するものである。
立方晶窒化ホウ素(c-BN)は、現在知られている物質のうち、ダイヤモンドについで高硬度であり、しかも高温安定性にも優れるため、様々な分野での応用が期待されている。特にc−BNはダイヤモンドと異なり、鉄族元素との反応性が低いことから、切削工具の刃先等の素材として適したものとされている。このほかに高硬度な窒化ホウ素としてウルツ鉱型窒化ホウ素があり、これら材料はsp結合を示す。尚、本明細書では、これらsp結合を有する窒化ホウ素をc−BN、およびその結晶相をc−BN相と呼ぶ。
c−BNを切削工具の刃先の素材として適用する場合は、高温・高圧下で作製したc−BN単結晶若しくはc−BN結晶粒を焼結させたc−BN焼結体の形態で用いられるのが一般的である。しかしながら、c−BN単結晶は非常に高価であり、また、c−BN焼結体は加工が困難であり、刃先が複雑な形状をした工具には適用しにくいという欠点がある。こうした理由から、気相合成法によってc−BNを含む硬質窒化ホウ素皮膜の形態でコーティングする技術が種々検討されている。
気相合成法としては、例えば物理蒸着法(PVD法)や化学蒸着法(CVD法)等が知られている。
後者(CVD法)には、例えばプラズマCVD法があり、これは皮膜と基材との密着性は良好となるが、基材を1000℃程度にまで加熱する必要があり、コーティング時に基材が軟化するなど、工具材料として基材の性能を維持したまま被覆するにはその材質に制限があった。
一方、前者(PVD法)には、スパッタリング法やアークイオンプレーティング法等があり、これらには上記CVD法のような欠点はないが、例えば特許文献1に開示されるような従来のPVD法によって成膜されるc−BNを含む窒化ホウ素皮膜は、成膜初期に密着性の低いアモルファス状の窒化ホウ素や六方晶窒化ホウ素(h-BN)若しくは乱層構造窒化ホウ素(t−BN)などのsp結合相が形成される。更に、皮膜の残留圧縮応力が高くなることから、皮膜と基材との良好な密着性が得られないという欠点がある。この点は、窒化ホウ素皮膜中に含まれるc−BNの割合が高い程顕著となる。尚、本明細書では、これらsp結合を有する窒化ホウ素を総称してsp結合性BN、およびその結晶相をsp結合相と呼ぶ。
以上、切削工具等の基材に該基材を変形させることなく良好に密着し、PVD法を用いた場合でも基材から剥離し難いc−BNを高い割合で有する窒化ホウ素皮膜が求められているのが現状である。
特開平5−271904号公報
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたものであり、皮膜中のc−BN結晶粒が薄いsp結合性BNで覆われた組織にすることで、残留圧縮応力を緩和でき、密着性が良好でc−BN相を高い割合で有する極めて実用性に秀れた窒化ホウ素皮膜を提供するものである。
本発明の要旨を説明する。
c−BN相を含む窒化ホウ素皮膜であって、c−BN相の平均結晶粒径が5〜100nmであり、各々の結晶の周りが厚さ1〜20nmのsp結合相で囲まれた組織を有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。
また、c−BN相を含む窒化ホウ素皮膜であって、赤外分光スペクトルの波数1050〜1100cm−1における最大のピークの高さをIsp3、同波数1350〜1400cm−1における最大のピークの高さをIsp2とした場合、下記式から求めた比fsp3が50%以上であることを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。

sp3=Isp3/(Isp3+Isp2)×100 (%)
また、c−BN相とsp結合相とを含み、このc−BN相の平均結晶粒径が5〜100nmであり、各々のc−BN結晶粒の周りが厚さ1〜20nmのsp結合相で囲まれた組織を有する窒化ホウ素皮膜であって、赤外分光スペクトルの波数1050〜1100cm−1における最大のピークの高さをIsp3、同波数1350〜1400cm−1における最大のピークの高さをIsp2とした場合、下記式から求めた比fsp3が50%以上であることを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。

sp3=Isp3/(Isp3+Isp2)×100 (%)
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の窒化ホウ素皮膜において、皮膜中に0.5〜30.0mol%の水素または重水素を含有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。
また、請求項4記載の窒化ホウ素皮膜において、皮膜中に3.0〜30.0mol%の水素または重水素を含有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。
また、請求項5記載の窒化ホウ素皮膜において、皮膜中に5.0〜30.0mol%の水素または重水素を含有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の窒化ホウ素皮膜において、当該皮膜の残留圧縮応力が8GPa以下であることを特徴とする窒化ホウ素皮膜に係るものである。
本発明は上述のように構成したから、残留圧縮応力が低く、c−BN相を高い割合で有する極めて実用性に秀れた窒化ホウ素皮膜となる。
(a)h−BNターゲットを用いArガスのみを用いて成膜した窒化ホウ素皮膜、及び(b)h−BNターゲットを用いArとHとから成る混合ガスを用いて成膜した窒化ホウ素皮膜の赤外分光スペクトルを示すグラフである。 (a)h−BNターゲットを用いてAr50cc/分のみで8時間成膜した窒化ホウ素皮膜、及び(b)h−BNターゲットを用いてAr50cc/分+H10cc/分で8時間成膜した窒化ホウ素皮膜の皮膜表面付近の透過型電子顕微鏡写真である。 (a)h-BNターゲットを用いArとHとから成る混合ガスを用いて成膜した各窒化ホウ素皮膜、及び(b)ArとDとから成る混合ガスを用いて成膜した各窒化ホウ素皮膜の赤外分光スペクトルを示すグラフである。 図3の(a)、(b)に示す窒化ホウ素皮膜の弾性反跳散乱分光法のスペクトル(a)、(b)を示すグラフである。 窒化ホウ素を含むターゲット材料に対して、ArとHとから成る混合ガスあるいはArとDとから成る混合ガスを用いて作製した窒化ホウ素皮膜の実施例及び比較例の皮膜内部のHまたはD含有量、fsp3の値及び残留圧縮応力をまとめた表である。
好適と考える本発明の実施形態を本発明の作用を示して簡単に説明する。
例えば、成膜装置のチャンバ内に基材を設置し、このチャンバ内を不活性ガスであるArと水素(H)または重水素(D)とから成る混合ガス雰囲気としてスパッタリング法により物理蒸着を行う等して得られ、0.5〜30.0mol%のHまたはDが含有される窒化ホウ素皮膜は、例えば単にArのみを導入した雰囲気で成膜された窒化ホウ素皮膜に比し、飛躍的に秀れた密着性を有する。
これは以下の理由によるものと考えられる。
Arは基材及び皮膜に衝突した際に、弾き出しが生じる程度のエネルギーを持つ。このことはAr単体においてc−BN相が合成されることからも予測できる。ArとHとの混合ガスを用いた場合では、Arは同様にc−BN相の形成に寄与し、Hは質量が小さいことから、基材及び皮膜に衝突しても弾き出しが生じない。しかし、HまたはDは運動エネルギーを持った状態であるため、このエネルギーが熱に変換されると考えられる。この熱が皮膜を局部的に加熱することで残留圧縮応力が緩和され、秀れた密着性が発揮されると考えられる。
具体的には、図2(b)に示すようにArとHとから成る混合ガスを用いて成膜した場合には、c−BN相が形成しており、その結晶の大きさが20nm程度であり、その結晶の粒界に厚さ5nm程度のsp結合相が存在する組織であることが確認された。これは、おそらく皮膜が局部的に加熱され、結晶粒界部のみc−BN相からsp結合相に変態したものと考えられ、sp結合相の分散により残留圧縮応力が緩和しているものと考えられる。
以上の理由から、HまたはDを添加したc−BN相を含む窒化ホウ素皮膜は、高いc−BN相の含有率を有する皮膜であっても剥離し難いものとなり、当該窒化ホウ素皮膜を例えば超硬合金製の切削工具の刃先等に成膜した場合には、極めて秀れた耐摩耗性・切削性を有する切削工具が製作可能となる。また、上述のような微構造を有する組織は、破壊の原理的に破壊靱性の向上が期待でき、高強度な皮膜が得られる可能性がある。
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例は、c−BN相を含む窒化ホウ素皮膜であって、c−BN相の平均結晶粒径が5〜100nmであり、各々の結晶の周りが厚さ1〜20nmのsp結合相で囲まれた組織を有するものである。
具体的には、赤外分光スペクトルの波数1050〜1100cm−1における最大のピークの高さをIsp3、同波数1350〜1400cm−1における最大のピークの高さをIsp2とした場合、式fsp3=Isp3/(Isp3+Isp2)×100(%)から求めた比fsp3が50%以上である窒化ホウ素皮膜であって、皮膜中に0.5〜30.0mol%のHまたはDを含有するものである。
上記Isp3及びIsp2はそれぞれ、c−BNに起因する赤外分光スペクトルとsp結合性BNに起因する赤外分光スペクトルに関するものであり、500〜2000cm−1においてベースライン補正された値を示す。即ち、500〜2000cm−1にベースラインを引き、そのベースラインから1050〜1100cm−1の最大ピークまでの高さをIsp3、ベースラインから1350〜1400cm−1の最大ピークまでの高さをIsp2と定義する。
本実施例では、Isp3及びIsp2から得られた比fsp3をc−BNの含有率と定義し、窒化ホウ素皮膜中のc−BN相の割合を表す値としている。
皮膜中のHまたはD量が少なすぎると、皮膜の残留圧縮応力を緩和する効果が十分に得られなくなり、剥離しやすくなる。また、皮膜中のHまたはD量が多すぎると、c−BNが形成されにくくなる。これらから、皮膜中のHまたはD含有量を0.5〜30.0mol%とするのが良い。望ましくは、皮膜中のHまたはD含有量を3.0〜30.0mol%とするのが良く、さらに望ましくは、5.0〜30.0mol%とするのが良い。
物理蒸着法としては、高周波バイアススパッタリング法を用いる。尚、高周波バイアススパッタリング法に限らず、他のスパッタリング法を用いても良いし、イオンプレーティング法等の他の物理蒸着法を採用しても良い。本実施例では、成膜装置として高周波バイアススパッタリング装置を用いる。
また、ターゲット材料としては、ホウ素(B)、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、炭化ホウ素(BC)のうちの1種以上を用いると良い。本実施例においてはh-BNターゲットを用いている。
具体的には、成膜装置として高周波バイアススパッタリング装置を用い、チャンバ内に基材(例えばWCを主成分とする硬質粒子とCoを主成分とする結合材とから成る超硬合金製の切削工具)を導入し、チャンバ内を5×10−3Pa以下(後述の実験例では1×10−3Pa程度)の真空状態にした後、上記混合ガスを所定の圧力になるまで導入し、基材温度を450℃に保持し、基材に所定の印加電圧(後述の実験例では−100V)を与え、ターゲットに印加する電力が所定の電力となるように高周波を印加してスパッタリングを行って、300nm以上の膜厚の窒化ホウ素皮膜(50%以上のfsp3を有する窒化ホウ素皮膜)を基材(の全体)に成膜する。
尚、成膜する部位は切削工具の先端部分のみ等、基材の一部としても良い。
また、基材温度は、基材に変形や寸法変化が生ぜず且つ良好な成膜が行える範囲であれば適宜設定でき、例えば200〜600℃程度に設定することができる。
また、基材と窒化ホウ素皮膜の間に該基材と窒化ホウ素皮膜との密着性を更に向上させるための中間層を形成しても良い。即ち、基材と窒化ホウ素皮膜との間に例えば基材との密着性に秀れた中間層を成膜した後、この中間層上に窒化ホウ素皮膜を成膜しても良い。
本実施例は上述のようにするから、単にArのみを導入した雰囲気で成膜される場合に比し、シリコンウェハや超硬合金などの基材に対して飛躍的に秀れた密着性が発揮されるc−BN相を含む窒化ホウ素皮膜が成膜可能となる。
よって、本実施例は、スパッタリング法やアークイオンプレーティング法等のPVD法を用いた場合でも、300nm以上の膜厚を有し、基材から剥離し難い高い立方晶窒化ホウ素含有率を有する窒化ホウ素皮膜の成膜を実現できることとなる。
本実施例の効果を裏付ける実験例について以下に説明する。
[実験例1]
成膜装置には高周波マグネトロンバイアススパッタリング装置を用いた。成膜する基板(基材)には大きさが25mm四方の単結晶シリコンウェハ(100)面を用いた。実験例1では、成膜時にArのみを導入してサンプルaを作製した。具体的には、サンプルaはArガスを50cc/分の流量で流した。尚、サンプルの成膜中の圧力(チャンバ内の真空度)はおよそ0.04〜0.05Paに制御した。基板への印加電圧は−100V、基板温度は450℃とした。ターゲットにはh−BNを用い、ターゲットに印加する電力を1000Wとして合成(成膜)を8時間行い、図1(a)のような赤外分光スペクトルと、図2(a)のような透過型電子顕微鏡写真を示すサンプルaを作製した。また、サンプルaの膜厚は400nm程度であった。
尚、赤外分光法により得られたスペクトルは、横軸に赤外光の波数(波長の逆数)、縦軸に透過率を示し、透過法(若しくは反射法)で測定した場合に皮膜に吸収されたスペクトルが得られる。
[実験例2]
成膜装置には高周波マグネトロンバイアススパッタリング装置を用いた。成膜する基板(基材)には大きさが25mm四方の単結晶シリコンウェハ(100)面を用いた。実験例2では、成膜時にAr+Hを導入してサンプルbを作製した。具体的には、サンプルbはArガスを50cc/分、Hガスを10cc/分の流量で流した。尚、サンプルの成膜中の圧力(チャンバ内の真空度)はおよそ0.06〜0.08Paに制御した。基板への印加電圧は−100V、基板温度は450℃とした。ターゲットにはh−BNを用い、ターゲットに印加する電力を1000Wとして合成(成膜)を8時間行い、図1(b)のような赤外分光スペクトルと、図2(b)のような透過型電子顕微鏡写真を示すサンプルbを作製した。また、サンプルbの膜厚は400nm程度であった。
以上の実験例1及び2により得られた図1の赤外分光スペクトルから、Arガスのみを用いたサンプルaは、c−BNの含有率fsp3が80%程度であり、ArガスとHガスとの混合ガスを用いたサンプルbは、c−BNの含有率fsp3が70%程度であり、いずれもc−BN含有率の高い皮膜が得られることが確認できた。
また、図2(b)のHを添加して作製した皮膜の透過型電子顕微鏡写真から、c−BN相の結晶粒の大きさが5〜20nm程度であり、かつ1〜5nm程度のt−BN等のsp結合相がc−BN相の結晶粒の外周を取り囲んだ組織であることが確認された。sp結合相は、変形しやすいことが知られており、これらが粒界に分散することにより残留圧縮応力を緩和していると考えられる。また、界面に分散するsp結合相が滑りやすいことから、残留圧縮応力を緩和しているものと考えられる。
[実験例3]
成膜装置には高周波マグネトロンバイアススパッタリング装置を用いた。成膜する基板(基材)には大きさが25mm四方の単結晶シリコンウェハ(100)面を用いた。実験例3では、成膜時にAr+Hを導入してサンプルcを作製した。具体的には、サンプルcはArガスを50cc/分、Hガスを10cc/分の流量で流した。尚、サンプルの成膜中の圧力(チャンバ内の真空度)はおよそ0.06〜0.08Paに制御した。基板への印加電圧は−100V、基板温度は450℃とした。ターゲットにはh−BNを用い、ターゲットに印加する電力を1000Wとして合成(成膜)を2時間行い、図3(a)のような赤外分光スペクトルと、図4(a)のような弾性反跳散乱分光法のスペクトルを示すサンプルcを作製した。また、サンプルcの膜厚は100nm程度であった。
[実験例4]
成膜装置には高周波マグネトロンバイアススパッタリング装置を用いた。成膜する基板(基材)には大きさが25mm四方の単結晶シリコンウェハ(100)面を用いた。実験例4では、成膜時にAr+Dを導入してサンプルdを作製した。具体的には、サンプルdはArガスを50cc/分、Dガスを10cc/分の流量で流した。尚、サンプルの成膜中の圧力(チャンバ内の真空度)はおよそ0.05〜0.07Paに制御した。基板への印加電圧は−100V、基板温度は450℃とした。ターゲットにはh−BNを用い、ターゲットに印加する電力を1000Wとして合成(成膜)を2時間行い、図3(b)のような赤外分光スペクトルと、図4(b)のような弾性反跳散乱分光法のスペクトルを示すサンプルdを作製した。また、サンプルdの膜厚は100nm程度であった。
尚、図3(a),(b)の赤外分光スペクトルは、シリコンウェハ及び皮膜の両方のスペクトルを測定し、バックグラウンドとしてシリコンウェハのスペクトルを差し引いたものとした。
以上の実験例3及び4により得られた図3の赤外分光スペクトルから、ArガスとHガスとの混合ガスを用いたサンプルc、ArガスとDガスとの混合ガスを用いたサンプルdは、共にc−BNの含有率fsp3が70%〜80%程度であり、赤外分光スペクトルの結果から、ArガスとHガスとの混合ガス、ArガスとDガスとの混合ガスのいずれかを用いるとc−BN含有率の高い皮膜が得られることが確認できた。
図4の弾性反跳散乱分光法によるHおよびDの組成分析より、添加したHまたはDは、皮膜の内部に残留していることが確認され、ArガスとHガスとの混合ガスを用いたサンプルcは18mol%のHを含有し、ArガスとDガスとの混合ガスを用いたサンプルdは16mol%のDを含有していることが確認できた。
また、図5に皮膜の内部に含有しているHおよびD量と、残留圧縮応力の解析例を示す。試料番号1〜8はh−BNをターゲットに用い、Arに加えるHまたはDの流量を変化させて成膜した試料であるが、試料番号9のHまたはDを添加しないものと比較すると、HまたはD含有量の増加と共に残留圧縮応力の減少が見られる。また、試料番号10の35.4%のHを含有した皮膜では、fsp3が50%未満になった。試料番号8の2.3%のDを含有する皮膜は本実施例ではあるが、残留圧縮応力の緩和がやや小さかった。このように、HまたはDを0.5〜30.0mol%含有させることで、c−BNの含有率fsp3が高く、且つ、残留圧縮応力の小さい密着性に優れた皮膜を得ることが可能となる。より好ましくは、HまたはDの含有量を3.0〜30.0mol%とすることが望ましく、さらに、5.0〜30.0mol%とすることが望ましい。

Claims (7)

  1. c−BN相を含む窒化ホウ素皮膜であって、c−BN相の平均結晶粒径が5〜100nmであり、各々の結晶の周りが厚さ1〜20nmのsp結合相で囲まれた組織を有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜。
  2. c−BN相を含む窒化ホウ素皮膜であって、赤外分光スペクトルの波数1050〜1100cm−1における最大のピークの高さをIsp3、同波数1350〜1400cm−1における最大のピークの高さをIsp2とした場合、下記式から求めた比fsp3が50%以上であることを特徴とする窒化ホウ素皮膜。

    sp3=Isp3/(Isp3+Isp2)×100 (%)
  3. c−BN相とsp結合相とを含み、このc−BN相の平均結晶粒径が5〜100nmであり、各々のc−BN結晶粒の周りが厚さ1〜20nmのsp結合相で囲まれた組織を有する窒化ホウ素皮膜であって、赤外分光スペクトルの波数1050〜1100cm−1における最大のピークの高さをIsp3、同波数1350〜1400cm−1における最大のピークの高さをIsp2とした場合、下記式から求めた比fsp3が50%以上であることを特徴とする窒化ホウ素皮膜。

    sp3=Isp3/(Isp3+Isp2)×100 (%)
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の窒化ホウ素皮膜において、皮膜中に0.5〜30.0mol%の水素または重水素を含有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜。
  5. 請求項4記載の窒化ホウ素皮膜において、皮膜中に3.0〜30.0mol%の水素または重水素を含有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜。
  6. 請求項5記載の窒化ホウ素皮膜において、皮膜中に5.0〜30.0mol%の水素または重水素を含有することを特徴とする窒化ホウ素皮膜。
  7. 請求項1〜6いずれか1項に記載の窒化ホウ素皮膜において、当該皮膜の残留圧縮応力が8GPa以下であることを特徴とする窒化ホウ素皮膜。
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