JP2011167738A - 熱鋼板の冷却装置および冷却方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヘッダとノズルを備える冷却装置による熱鋼板の冷却において、ヘッダへの冷却水の給水停止時に高応答で、しかも鋼板幅方向に均一に、ノズルから冷却水の鋼板への給水を停止することができる熱鋼板の冷却装置および冷却方法を提供する。
【解決手段】内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔で該ヘッダに接続された複数本のノズルを備えた冷却装置において、ヘッダ上部に、先端部を開放した空気抜き用配管または空気抜き用孔を熱鋼板の幅方向に複数設置し、該配管または該孔に弁を取り付けたことを特徴とする熱鋼板の冷却装置およびこの装置による冷却方法。
【選択図】図6

Description

本発明は、熱鋼板、例えば、熱間圧延された熱延鋼帯、厚板などの加熱された鋼板を上方から冷却するための冷却装置および冷却方法に関するものである。
図1に示すように、一般に、熱延鋼帯を製造するには、加熱炉1においてスラブを所定温度に加熱し、加熱されたスラブを粗圧延機2で圧延して粗バーとなし、ついでこの粗バーを複数基の圧延スタンドからなる連続熱間仕上圧延機3において所定の厚みの熱延鋼帯6となす。そして、ランナウトテーブルに設置された冷却装置4から熱延鋼帯の上部および下部から冷却水を給水することによって熱延鋼帯を冷却した後、巻取機5で巻き取ることにより製造される。
鋼板の品質はこの冷却装置による熱鋼板の冷却により大きく変化する。鋼板の長手・幅方向で冷却能力がばらつくと材質のばらつきが生じる。特に、熱延鋼帯の場合、巻取機で巻取る直前の温度(以後巻取温度と称する)で機械特性が決まる場合が非常に多いので、この温度を全長・全幅でいかに均一化するかが課題となる。
一般的な熱延鋼帯の製造では、鋼板先端部が巻取機に到達した直後から加速し、目標の最高速度となってからはしばらくの間、搬送速度を維持し、鋼板尾端部が仕上圧延機から抜ける直前または抜けた後、減速するような、複雑な加減速を行っている。搬送速度が変化しても、巻取温度を均一化させるために、複数の円管状の冷却ノズルから注水するヘッダ数を順次増やしたり、減らしたりする制御を行っている。また、冷却装置についても、給水開始や停止の応答性を高め、熱鋼板の長手・幅方向に均一な冷却を実現する技術が開発されてきた。
ところで、従来一般的に使用されてきた、熱鋼板の上面を冷却する冷却装置は、図2や図3に示されるようなものである。
図2には、熱間圧延ラインの熱鋼板の上部に該鋼板の幅方向に延び、冷却水源から冷却水が給水される下部ヘッダ7に山形の屋根板9を重ねて冠着し、該下部ヘッダ7の上部壁と該屋根板9とで形成される室で上部ヘッダ10を形成し、下部ヘッダ7上部壁の数個所に形成された孔を経て冷却水が下部ヘッダ7から上部ヘッダ10へ供給できるようになっており、該鋼板の幅方向に所定の間隔で取り付けられた複数本のノズル8が上部ヘッダ10内より下部ヘッダ7を貫通して垂下している冷却装置が示されている(空気抜き用配管14については後述する)。下部ヘッダ7に給水された冷却水は、前記孔を経て上部ヘッダに至り、ノズル上端部からノズル内部に流入し、ノズル下端部から噴出される。
図3にも、熱間圧延ラインの熱鋼板の上部に該鋼板の幅方向に延び、冷却水源から冷却水が給水されるヘッダ7と該鋼板の幅方向に所定の間隔でヘッダに接続された複数本のノズル8を備える冷却装置が示されている。このノズルは一端が冷却水が冷却水源から供給されるヘッダ7の上部に接続され、ヘッダからの冷却水を噴出する他端がヘッダ7の側面に隣接する位置に垂下しており、逆U字状をなしている(空気抜き用配管14については後述する)。
このような従来の冷却装置に改良を加えたものとして、例えば、特許文献1には、ヘッダの上部に垂直の空気抜き用の配管を設置し、ヘッダへの給水停止後、ノズルから鋼板への冷却水の給水が停止するまでの時間(給水停止時の応答時間)を短縮する冷却装置の技術が記載されている。また、特許文献2にも、上部ヘッダと下部ヘッダを備える冷却装置において、ヘッダに設けられたノズルのうち、ヘッダ端部側に設けられたノズルを他のノズルよりも短くすることにより、給水停止時の応答時間を短縮することができる、応答性の高速化を可能にした技術が記載されている。
従来の電磁弁などによってヘッダへの給水を停止した後であっても、ヘッダに接続されたノズルからの鋼板への冷却水の給水が直ちに停止するわけではない。図2や図3に示される従来の冷却装置においては、ヘッダへの給水を停止しても、ノズル8内にある冷却水や、ノズル8の冷却水流入口よりも上部にある冷却水がノズルから排出されるからである。その際、冷却水がノズルから排出されるにつれ、ヘッダ内の圧力は低くなり、大気圧よりも低くなる。そのため、冷却水がノズルから排出されるのに時間がかかる。しかし、ヘッダの上部から空気などが入り込めば、給水停止直後のヘッダ内の圧力が大気圧と等しくなるので、冷却水の排出がノズル下端部から速やかに行われ、ヘッダ給水停止の応答性が高く、冷却温度のばらつきを抑えた鋼板を製造することができる。
そのため、ヘッダ内に空気を送り込むための技術が開発されてきた。大きく分けて2通りの方法があるが、1つはヘッダ上部に空気抜き用の配管を設置し、ヘッダへの給水停止時に、そこからヘッダに空気を供給する方法である。図2や図3に示されている、ヘッダ7や上部ヘッダ10(屋根板9)に接続された空気抜き用の配管14がこれに当たる。もう1つはヘッダの端部側に接続されたノズルの長さを、他のノズルよりも短縮する等の改造を行い、その部分の冷却水をいち早く排出し、そこからヘッダに空気を供給する方法である。
前者の方法は、特許文献1の技術であり、後者の方法は特許文献2の技術である。しかし、これらの技術では以下に示す問題があった。
特許文献1の技術では、ヘッダへの給水中には空気抜き用の配管内にも冷却水がヘッダ内の圧力に応じて入り込むが、ヘッダへの給水が停止された後に、ヘッダの圧力が低下して空気抜き用の配管内の冷却水がすべてヘッダ内に流出した後に、ヘッダ内に空気が供給される。空気がヘッダ内に供給されるのにかかる時間は、空気抜き用の配管内の冷却水がヘッダ内に流出するのにかかる時間に比べて非常に短いため、後者の空気抜き用の配管内の冷却水がヘッダ内に流出するのにかかる時間を短縮することが課題である。
空気抜き用の配管の長さが短いほど、空気抜き用の配管から冷却水がヘッダ内に早く流出し、応答時間も短くなる。しかし、配管が短すぎた場合、鋼板の冷却時において、ヘッダ内への給水時にヘッダ内の圧力が上がると冷却水が空気抜き用の配管上部から溢れ出て鋼板表面に落下し、均一な冷却を達成することにおいて外乱になるという問題が生じるため、配管の長さはヘッダ内の圧力ヘッド以上(ヘッダ内圧力に相当する水柱以上)としており、応答時間の短縮化には限界がある。
他方、ヘッダ内の圧力を下げるという方法が考えられるが、ヘッダ内の圧力を下げると、ヘッダに鋼板の幅方向に所定距離で設けられた複数のノズルから噴出される冷却水流量のばらつきが大きくなるため、この方法は好ましくない。
特許文献2の技術では、ヘッダへの冷却水の給水が停止した場合、ヘッダの端部側に接続された短い逆U字状のノズルからの冷却水の排出がいち早く行われ、ノズルからの冷却水の吐出が停止する。これはノズルが短い分だけサイフォン現象の引き込み力が小さいからである。次いで、該ノズルからヘッダ内に空気が供給され、端部側のノズルから中央部側のノズルに向かって順次、冷却水がノズルから排出されて、ノズルからの冷却水の給水が停止する。そのため、ヘッダ中央部にまで空気が供給されるまでには時間がかかる。ヘッダへの冷却水の供給が停止してノズルからの冷却水の熱鋼板への給水停止に要する時間(応答時間)は、ノズルの長さが全て同じである場合よりは短縮されるが、ノズルを短くするのには限界があるから、やはり応答時間の短縮化には限界がある。また、ヘッダの両端側のノズルと中央部側のノズルに空気が供給されるまでの時間差が生じることにより、ノズルからの冷却水の給水停止はヘッダの幅方向で時間差が生じ、幅方向で冷却温度にむらが発生する。さらに、ノズルの長さを余り短くしすぎると安定的なラミナー流が形成できず、流量の時間変動が大きくなるので、この点からも限界がある。
また、一般的に、冷却水の給水開始時よりも給水停止時の方が時定数が長くなり、かつ鋼板幅方向の流量分布も不均一になる傾向がある。
特開平6−71327号公報 特開平8―174036号公報
そのため、本発明の課題は、ヘッダへの冷却水の給水停止時に高応答で、しかも鋼板の幅方向に均一に、ノズルから冷却水の鋼板への給水を停止することができる熱鋼板の冷却装置および冷却方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔で該ヘッダに接続
され、冷却水を熱鋼板上面に供給する複数本のノズルを備えた冷却装置におい
て、ヘッダ上部に、空気抜き用配管または空気抜き用孔を熱鋼板の幅方向に複数
設置し、該配管または該孔に、前記ヘッダへの冷却水給水中は閉じられ、前記ヘ
ッダへの給水停止時には開放される弁を取り付けたことを特徴とする、熱鋼板の
冷却装置。
(2)前記空気抜き用配管または空気抜き用孔に取り付ける弁を逆止弁とすることを特
徴とする、(1)に記載の熱鋼板の冷却装置。
(3)前記空気抜き用配管または空気抜き用孔に取り付ける弁を電気信号で動作する開
閉弁とすることを特徴とする、(1)に記載の熱鋼板の冷却装置。
(4)前記空気抜き用配管の高さを、冷却水のヘッドへの給水中におけるヘッダ内の圧
力ヘッドに相当する水柱長さより低くすることを特徴とする(1)〜(3)のい
ずれかに記載の熱鋼板の冷却装置。
(5)内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔でヘッダに接続さ
れ、冷却水を熱鋼板上面へ供給する複数本のノズルと、ヘッダ上部に熱鋼板の幅
方向に複数設けた空気抜き用配管または空気抜き用孔とを備え、該空気抜き用配
管または該空気抜き用孔には弁が設けられている冷却装置による熱鋼板の冷却方
法であって、ヘッダへの冷却水の給水中は該弁を閉じることにより、該配管の上
部または該孔から冷却水が溢流することを防ぎ、ヘッダへの冷却水の給水停止時
には、該ヘッダ内の圧力低下に伴い該弁が開放されて、該配管または該孔からか
ら大気が導入されることを特徴とする、熱鋼板の冷却方法。
(6)前記ヘッダに給水する冷却水の流量レベルの数を2以上に設定し、該レベルの最
大流量値と最小流量値の比率を1.5〜2.5とすることを特徴とする(5)に
記載の熱鋼板の冷却方法。
(7)前記空気抜き用配管の高さを、冷却水のヘッドへの給水中におけるヘッダ内の圧
力ヘッドに相当する水柱長さより低くすることを特徴とする請求項5または請求
項6に記載の熱鋼板の冷却方法。
本発明の熱鋼板の冷却装置および冷却方法により、給水停止時の高い応答性が得られる。これにより、鋼板長手方向で高い冷却均一性が得られる。また、ヘッダの幅方向に並ぶノズルは全てほぼ同時に熱鋼板への給水を停止することができるので、鋼板の幅方向で高い冷却均一性が得られる。したがって、熱鋼板全面にわたって均一な温度に制御が可能となるため、材質のばらつきが小さく品質の高い鋼板を製造することが可能となる。
熱延鋼帯の製造ラインの概略を示す図である。 一般的な熱鋼板の冷却装置(屋根板を備える)の側面図である。 一般的な熱鋼板の冷却装置の側面図である。 (a)は空気抜き用配管に設けられたスイングチャッキ弁を示す図、(b) は空気抜き用配管に設けられたスプリング式弁を示す図、(c)は空気抜き 用配管に設けられたリフト式弁を示す図、(d)は空気抜き用配管に設けら れたウェハ型弁を示す図である。 (a)は空気抜き用配管に設けられたスプリング式弁が閉じられた状態を 示す図、(b)は空気抜き用配管に設けられたスプリング式弁が開いた 状態を示す図である。 (a)は本発明の熱鋼板の冷却装置の側面図、(b)は本発明の熱鋼板の 冷却装置の正面図を示す。
一般的な熱鋼板の冷却装置には、図2および図3に示したように、ヘッダが上部ヘッダおよび下部ヘッダからなり直管状のノズルを備えるものと、ヘッダと逆U字状のノズルを備えるものとが多用されている。本発明は、いずれの形式のものについても適用可能である。
一般的な柱状冷却水噴射用のノズル(円管ラミナーノズルなどと称されている)として、内径10〜30mmの円管ノズルが、鋼板幅方向に25〜100mm程度のピッチで設置されている。熱鋼板の冷却時には、ヘッダ内に冷却水を供給して、ヘッダ内を100mmAq以上の圧力として、ヘッダに接続されたノズルから冷却水を噴出させる。
既に述べたように、空気抜き用の配管の長さが短くなれば、配管内の冷却水の体積が減少し、配管から冷却水が排出される時間が短くなるため、ヘッダへの冷却水供水停止からノズルでの冷却水の熱鋼板への給水停止までの応答時間が短くなる。
しかし、ヘッダ内の圧力ヘッドに相当する水柱長さが空気抜き用の配管長さよりも大きい場合、空気抜き用の配管の上部から冷却水が溢れ出る。それを防止するため、空気抜き用の配管に弁を取り付け、熱鋼板の冷却中である冷却水のヘッダへの給水中は、弁が閉止しており、冷却水のヘッダへの給水停止時には弁が開放するようにした。そうしておけば、上記の応答時間は飛躍的に短くなる。
本発明で空気抜き用配管に用いる弁とは、例えば、図4(a)に示すスイングチャッキ弁のような弁であるが、圧力の変化に応じて開閉する構造であれば他の形式の弁であっても良い。具体的には、スプリング式弁、リフト式弁およびウェハ型弁のような弁である。それぞれの構造を図4(b)〜(d)に示す。ただし、低圧力で作動するものが好ましい。
給水中はヘッダ内の圧力が高くなり、図5(a)に示すように空気抜き用配管に設けられた弁が閉じられ、空気抜き用の配管から冷却水17が外に溢れ出ない。一方、給水を停止する時には、ヘッダ内の圧力が下がるため、図5(b)に示すように弁が開になり、直ちに空気抜き用の配管の上端から空気がヘッダ内に流入して、ノズルから冷却水が排水される。このことにより、高い応答性でノズルからの冷却水の熱鋼板への給水を停止することができる。
例えば、給水中のヘッダ内のゲージ圧力が5000mmAqの場合、空気抜き用の配管の高さを5000mm以上とすれば、弁をつけなくても、配管の上部から冷却水が溢れ出ることはない。しかし、その場合、ヘッダへの冷却水の給水を停止したとき、空気抜き用の配管内の冷却水がヘッダ内に流出するのに長い時間を要し、ヘッダ内への空気の導入が遅れ、結局、ノズル下端からの冷却水の給水停止までに長い時間がかかる。そのため、配管を短くしてその上部に弁を設置する。つまり、ヘッダ内の圧力により空気抜き配管内に冷却水が充満する高さよりも低い位置に弁を設置することで、空気抜き配管から冷却水が溢れない状態で熱鋼板を冷却することができ、ヘッダへの給水停止時のノズル下端からの熱鋼板への給水停止を高い応答性の下に行うことができる。
そこで、空気抜き用の配管の長さを短くするために、弁はヘッダ上部の近傍に設置し、その設置位置はヘッダ上部に近いほどよいが、例えばヘッダ上部の上50mm程度の位置に設置できれば好適である。
また、配管長さを0(ゼロ)として、空気抜き用孔とすることもでき、空気抜き用配管と同様の効果を得ることができる。
空気抜き用配管や空気抜き用孔に取り付ける弁としては、電気的に弁の開閉制御が可能なON−OFF弁を取り付ける方法もある。電磁弁やエアー駆動弁など、電気的な信号により開閉する弁を取り付け、冷却水の給水信号と連動して弁を開閉するようにするとよい。
いずれの方法を選択してもかまわないが、安定した動作を重視する場合は、電気信号制御した弁を選択するのがよく、低コストとする場合は逆止弁を選択するのが良い。一般的に、熱延鋼帯の冷却設備には、ヘッダが100個以上と数多く設置されるため、低コストである逆止弁を適用するのが好ましい。
空気抜き用の配管および空気抜き用孔は、ヘッダ上部に、鋼板の幅方向に数個所に設けられる〔図2に示されるタイプの冷却装置では、屋根板(上部ヘッダ)上に設けられる〕。したがって、空気抜き用の配管や空気抜き用孔に近いノズルから順番に空気が入り込んでノズルへの給水が断たれ、冷却水の噴出が停止するため、空気抜き用の配管や空気抜き用孔の数を増加させると応答速度がより向上する。
このように応答速度の観点からは、空気抜き用の配管や空気抜き用孔の数は多いほうが好ましいが、実際の適用を考えると、空気抜き用配管や空気抜き用孔の数が多すぎると設備コストやメンテナンスコストがかかるという問題が生じるため、鋼板幅方向に概ね等分割に3〜7本程度設置することが、最も望ましい。
空気配管の設置位置は、ヘッダ上部のなるべく高い位置が好ましく、例えば図2、3に示すようにヘッダの上部や屋根部の頂上付近がよい。ヘッダ内では、冷却水が充満した状態となるため、ヘッダ上部よりも下部や屋根部の下部に空気抜き用配管の取り口をつけると、ヘッダへの空気の供給が効率的に行われないためである。
また、本発明の応用例の1つとして、ヘッダへ給水する冷却水流量レベルの数を複数レベルに設定して、該レベルを変更して使用する場合がある。例えば、一般的に使用される場合では、ヘッダ圧力を数100mmAq程度で噴射しており、鋼板厚み3mmに対して60〜90℃/s程度の冷却速度を得ている。最近では、高張力鋼の製造の観点から、120〜180℃/s程度の高冷却速度が必要なケースも発生している。その際には、一般的な流量に対して1.5〜2.5倍程度の流量で冷却水を噴射する必要があり、ヘッダ圧力は数千mmAq程度と高くなる。
ヘッダに冷却水源から給水される冷却水量レベルを数段階にわたって設定して冷却を行う時、高冷却速度で使用する場合にはヘッダ内の圧力が高くなることから、空気抜き用配管の長さを数m程度まで長くしないと、配管の上端から水が溢れ出す。現実的には、設置スペースなどの観点から配管長さを数mまで長くすることは困難なケースが多い。仮に数mの空気抜き配管を設置した場合においても、空気抜き用配管中の水位が高いので、高冷却速度での冷却停止時における応答時間を短縮することが出来ない。
本発明では、弁を設けているので、このようなケースにおいても配管高さを短くすることが可能であり、かつ停止応答速度を速くでき、さらに空気抜き用配管の上端部や空気抜き用孔から水が流出することもない。したがって、ヘッダ内の圧力を変更してノズルからの冷却水噴出量を増減することにより冷却速度を調整した場合においても、熱鋼板の全長に渡って均一に冷却することが可能となる。
本発明の実施例を、図1に示す熱延鋼帯の熱間圧延ラインにおいて、熱延鋼帯の冷却を行う場合について説明する。
図6には、本発明の冷却装置の概略図が示されており、図2に示したものと同タイプのものである。
この装置では、冷却水源に繋がる給水管13から冷却水が給水される下部ヘッダ7に山形の屋根板9を重ねて冠着し、該下部ヘッダ7の上部壁と該屋根板9とで形成される室で上部ヘッダ10を形成し、下部ヘッダ7上部壁の数個所に形成された孔を経て冷却水が下部ヘッダ7から上部ヘッダ10へ供給できるようになっている。そして該鋼帯の幅方向に所定の間隔でヘッダに取り付けられた複数本のノズル8が上部ヘッダ10内より下部ヘッダ7を貫通して垂下している冷却装置が示されている。給水管13より下部ヘッダ7に給水された冷却水は、前記孔を経て上部ヘッダ10に至り、ノズル上部の冷却水流入口からノズル内部に流入し、ノズル下端部の冷却水流入口から噴出される。
そして、屋根板9には、空気抜き用配管14が接続されており、その上部には弁15が設けられている。この空気抜き用配管14は上部ヘッダ(下部ヘッダ7と屋根板9とで形成される室)内と連通している。空気抜き用配管は熱延鋼帯の幅方向に数個所設置されている。
図6の本発明の冷却装置の概略図において、ノズル内径は20mm、ノズル1本当りの流量は50L/min、熱延鋼帯の幅方向におけるノズルのピッチは50mm、ノズルの本数は48本である。給水時のヘッダ内圧は、5000mmAqである。なお、空気抜き用配管に取り付ける弁はスイングチャッキ弁である。
図6に示す冷却設備を使って、上記の実施形態に基づいて、仕上げ板厚3.0mm、引張強度550MPaの熱延鋼帯を製造した。仕上圧延機出側での搬送速度は鋼帯先端部で650mpm、鋼帯先端部が巻取機に到達して以降は順次速度を上げて最高800mpmまで増速した。鋼帯の仕上圧延機出側の温度は860℃で、従来の冷却装置と本発明で提案した冷却装置を使って、巻取機手前の温度計の指示が500℃となるように冷却ゾーンの長さを制御した。
本発明例1では、空気抜き用の配管の内径を15mm、高さを50mm、ヘッダの幅方向に設置する本数を7本とし、各配管の上端にスイングチャッキ弁を設置した冷却装置で冷却を行った。
本発明例2では、空気抜き用の配管の内径を15mm、高さを50mm、ヘッダの幅方向に設置する本数を7本とし、各配管の上端に電磁弁を設置した冷却装置で冷却を行った。
比較例1では、空気抜き用の配管の内径を15mm、高さを5000mm、ヘッダの幅方向に設置する本数を7本とし、空気抜き用の配管先端部にスイングチャッキ弁を取り付けない冷却装置で冷却を行った。
比較例2では、空気抜き用配管の内径を15mm、高さ50mm、ヘッダの幅方向に設置する本数を7本として、空気配管先端部にスイングチャッキ弁を取り付けない冷却装置で冷却を行った。
表1に、本発明例1、本発明例2、比較例1および比較例2に使用された空気抜き用配管の仕様、応答時間および冷却後の鋼帯の特性の結果を表1に示す。
表1において、「応答時間」とは給水停止時の応答時間であり、給水管13からのヘッダへの給水を停止してからノズル下端からの熱延鋼帯への冷却水の噴出(吐出)が停止するまでの時間である。引張強度のばらつきは、それぞれ鋼帯の長手方向のばらつきである。
本発明例1では、給水停止時の応答時間が0.8sであり、鋼帯長手方向の巻取温度のばらつきが5℃、鋼帯幅方向の巻取温度のばらつきが7℃と小さかった。このばらつきが影響する引張強度のばらつきは10MPaと小さかったので、温度ばらつきが大きいことによる切り捨てはなかった。このため、製品の歩留は97%と高かった。
本発明例2では、給水停止時の応答時間が0.7sであり、鋼帯長手方向の巻取温度のばらつきが4℃、鋼帯幅方向の巻取温度のばらつきが7℃と小さかった。このばらつきが影響する引張強度のばらつきは9MPaと小さかったので、温度ばらつきが大きいことによる切り捨てはなかった。このため、製品の歩留は98%と高かった。
比較例1では、給水停止時の応答時間が4.2sであり、鋼帯長手方向の巻取温度のばらつきが25℃、鋼帯幅方向の巻取温度のばらつきが7℃であった。引張強度のばらつきは32MPaと大きかったので、温度ばらつきが大きい部分は切り捨てた。このため、製品の歩留は85%と低かった。
比較例2では、給水停止時の応答時間が0.8sであったが、空気抜き用の配管の上端から冷却水が噴出し、鋼帯にかかり、冷却むらが発生した。そのため、鋼帯長手方向の巻取温度のばらつきが58℃、鋼帯幅方向の巻取温度のばらつきの最大値が25℃であった。引張強度のばらつきは82MPaと大きかったので、温度ばらつきが大きい部分は切り捨てた。このため、製品の歩留は70%と低かった。
以上のように、本発明の冷却装置および冷却方法により鋼帯の長手・幅方向における冷却均一性の向上、ひいては材質均一性の向上が可能となる。
なお、本発明の実施例における冷却装置は、上部ヘッダと下部ヘッダとでヘッダを形成しているタイプのものであるが、これに限られるものではなく、ヘッダとノズルを有する他の冷却装置でも適用できる。また、本発明の実施例において、冷却の対象を熱延鋼帯として説明したが、これに限るものではなく、厚板など他の熱鋼板を柱状冷却水で冷却する場合において適用することも可能であることは言うまでもない。
1 加熱炉
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 冷却設備
5 巻取機
6 熱鋼板、熱延鋼帯
7 ヘッダ、下部ヘッダ
8 ノズル
9 屋根板
10 上部ヘッダ
11 噴出冷却水
12 テーブルローラ
13 冷却水の給水管
14 空気抜き用配管
15 弁
16 弁体
17 冷却水

Claims (7)

  1. 内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔で該ヘッダに接続され、冷却水を熱鋼板上面に供給する複数本のノズルを備えた冷却装置において、ヘッダ上部に、空気抜き用配管または空気抜き用孔を熱鋼板の幅方向に複数設置し、該配管または該孔に、前記ヘッダへの冷却水給水中は閉じられ、前記ヘッダへの給水停止時には開放される弁を取り付けたことを特徴とする、熱鋼板の冷却装置。
  2. 前記空気抜き用配管または空気抜き用孔に取り付ける弁を逆止弁とすることを特徴とする、請求項1に記載の熱鋼板の冷却装置。
  3. 前記空気抜き用配管または空気抜き用孔に取り付ける弁を電気信号で動作する開閉弁とすることを特徴とする、請求項1に記載の熱鋼板の冷却装置。
  4. 前記空気抜き用配管の高さを、冷却水のヘッドへの給水中におけるヘッダ内の圧力ヘッドに相当する水柱長さより低くすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱鋼板の冷却装置。
  5. 内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔でヘッダに接続され、冷却水を熱鋼板上面へ供給する複数本のノズルと、ヘッダ上部に熱鋼板の幅方向に複数設けた空気抜き用配管または空気抜き用孔とを備え、該空気抜き用配管または該空気抜き用孔には弁が設けられている冷却装置による熱鋼板の冷却方法であって、ヘッダへの冷却水の給水中は該弁を閉じることにより、該配管の上部または該孔から冷却水が溢流することを防ぎ、ヘッダへの冷却水の給水停止時には、該ヘッダ内の圧力低下に伴い該弁が開放されて、該配管または該孔からから大気が導入されることを特徴とする、熱鋼板の冷却方法。
  6. 前記ヘッダに給水する冷却水の流量レベルの数を2以上に設定し、該レベルの最大流量値と最小流量値の比率を1.5〜2.5とすることを特徴とする請求項5に記載の熱鋼板の冷却方法。
  7. 前記空気抜き用配管の高さを、冷却水のヘッドへの給水中におけるヘッダ内の圧力ヘッドに相当する水柱長さより低くすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の熱鋼板の冷却方法。
















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