JP5573239B2 - 熱鋼板の冷却装置および冷却方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱鋼板、例えば、熱間圧延された熱延鋼帯、厚板などの加熱された鋼板を上方から冷却するための冷却装置および冷却方法に関するものである。
図1に示すように、一般に、熱延鋼帯を製造するには、加熱炉1においてスラブを所定温度に加熱し、加熱されたスラブを粗圧延機2で圧延して粗バーとなし、ついでこの粗バーを複数基の圧延スタンドからなる連続熱間仕上圧延機3において所定の厚みの熱延鋼帯6となす。そして、ランナウトテーブルに設置された冷却装置4から熱延鋼帯の上部および下部から冷却水を給水することによって熱延鋼帯を冷却した後、巻取機5で巻き取ることにより製造される。
鋼板の品質はこの冷却装置による熱鋼板の冷却により大きく変化する。鋼板の長手・幅方向で冷却能力がばらつくと材質のばらつきが生じる。特に、熱延鋼帯の場合、巻取機で巻取る直前の温度(以後巻取温度と称する)で機械特性が決まる場合が非常に多いので、この温度を全長・全幅でいかに均一化するかが課題となる。
一般的な熱延鋼帯の製造では、加速しながら圧延するため、コイルの尾端になるにつれて圧延速度を速くし、またコイル最尾端部が仕上圧延機から抜けたあと、減速するような、複雑な加減速を行っている。そのため、巻取機前温度を均一化させるために複数の円管状の冷却ノズルから注水するヘッダ数を順次増やしたり、減らしたりする制御を行っている。
また、冷却装置についても、給水開始や停止の応答性を高め、熱鋼板の長手・幅方向に均一な冷却を実現する技術が開発されてきた。
ところで、従来一般的に使用されてきた、熱鋼板の上面を冷却する冷却装置は、図2や図3に示されるようなものである。
図2には、冷却水源から冷却水が給水される下部ヘッダ7に山形の屋根板9を重ねて冠着し、該下部ヘッダ7の上部壁と該屋根板9とで形成される室で上部ヘッダ10を形成し、下部ヘッダ7上部壁の数個所に形成された孔を経て冷却水が下部ヘッダ7から上部ヘッダ10へ供給できるようになっており、該鋼板の幅方向に所定の間隔で取り付けられた複数本のノズル8が上部ヘッダ10内より下部ヘッダ7を貫通して垂下している冷却装置が示されている(空気抜き用配管14については後述する)。下部ヘッダ7に給水された冷却水は、前記孔を経て上部ヘッダに至り、ノズル上端部からノズル内部に流入し、ノズル下端部から噴出される。
また、図3には、熱間圧延ラインの熱鋼板の上部に該鋼板の幅方向に延び、冷却水源から冷却水が給水されるヘッダ7と該鋼板の幅方向に所定の間隔でヘッダに接続された複数本のノズル8を備える冷却装置が示されている。このノズルは一端がヘッダ7の上部に接続され、ヘッダからの冷却水を噴出する他端がヘッダ7の側面に隣接する位置に垂下しており、逆U字状をなしている(空気抜き用配管14については後述する)。
このような従来の冷却装置に改良を加えたものとして、例えば、特許文献1には、ヘッダの上部に垂直の空気抜き用の配管を設置し、ヘッダへの給水停止後、ノズルから鋼板への冷却水の給水が停止するまでの時間(給水停止時の応答時間)を短縮する冷却装置の技術が記載されている。また、特許文献2にも、上部ヘッダと下部ヘッダを備える冷却装置において、ヘッダに設けられたノズルのうち、ヘッダ端部側に設けられたノズルを他のノズルよりも短くすることにより、給水停止時の応答時間を短縮することができる、応答性の高速化を可能にした技術が記載されている。
従来の電磁弁などによってヘッダへの給水を停止した後であっても、ヘッダに接続されたノズルからの鋼板への冷却水の給水が直ちに停止するわけではない。図2や図3に示される従来の冷却装置においては、ヘッダへの給水を停止しても、ノズル8の冷却水流入口よりも上部にある冷却水やノズル8内にある冷却水がノズルから排出されるからである。その際、冷却水がノズルから排出されるにつれ、ヘッダ内の圧力は低くなり、大気圧よりも低くなる。そのため、冷却水がノズルから排出されるのに時間がかかる。しかし、ヘッダの上部から空気などが入り込めば、給水停止直後のヘッダ内の圧力が大気圧と等しくなるので、冷却水の排出がノズル下端部から速やかに行われ、ヘッダ給水停止の応答性が高く、冷却温度のばらつきを抑えた鋼板を製造することができる。
そのため、ヘッダ内に空気を送り込むための技術が開発されてきた。大きく分けて2通りの方法があるが、1つはヘッダ上部に空気抜き用の配管を設置し、ヘッダへの給水停止時に、そこからヘッダに空気を供給する方法である。図2や図3に示されている、ヘッダ7や上部ヘッダ10(屋根板9)に接続された空気抜き用の配管14がこれに相当する。もう1つはヘッダの端部側に接続されたノズルの長さを、他のノズルよりも短縮する等の改造を行い、その部分の冷却水をいち早く排出し、そこからヘッダに空気を供給する方法である。
前者の方法は、特許文献1の技術であり、後者の方法は特許文献2の技術である。しかし、これらの技術では以下に示す問題があった。
特許文献1の技術では、ヘッダへの給水中には空気抜き用の配管内に冷却水がヘッダ内の圧力に応じて入り込むが、ヘッダへの給水が停止された後に、ヘッダの圧力が低下して空気抜き用の配管内の冷却水がすべてヘッダ内に流出した後に、ヘッダ内に空気が供給される。空気がヘッダ内に供給されるのにかかる時間は、空気抜き用の配管内の冷却水がヘッダ内に流出するのにかかる時間に比べて非常に短いため、後者の空気抜き用の配管内の冷却水がヘッダ内に流出するのにかかる時間を短縮することが課題である。
空気抜き用の配管の長さが短いほど、空気抜き用の配管から冷却水がヘッダ内に早く流出し、応答時間も短くなる。しかし、配管が短すぎた場合、鋼板の冷却時において、ヘッダ内への給水時にヘッダ内の圧力が上がると冷却水が空気抜き用の配管上部から溢れ出て鋼板表面に落下し、均一な冷却を達成することにおいて外乱になるという問題が生じるため、配管の長さはヘッダ内の圧力ヘッド以上(ヘッダ内圧力に相当する水柱以上)としており、応答時間の短縮化には限界がある。
これに対して、ヘッダ内の圧力を下げるという方法が考えられるが、ヘッダ内の圧力を下げると、ヘッダに鋼板の幅方向に所定距離で設けられた複数のノズルから噴出される冷却水の流量のばらつきが大きくなるため、この方法は好ましくない。
特許文献2の技術では、ヘッダへの冷却水の給水が停止した場合、ヘッダの端部側に接続された短い直管状のノズルからの冷却水の排出がいち早く行われ、ノズルからの冷却水の吐出が停止する。これはノズルが短い分だけサイフォン現象の引き込み力が小さいからである。次いで、該ノズルからヘッダ内に空気が供給され、端部側のノズルから中央部側のノズルに向かって順次、冷却水がノズルから排出されて、ノズルからの冷却水の給水が停止する。そのため、ヘッダ中央部にまで空気が供給されるまでには時間がかかる。ヘッダへの冷却水の供給が停止してノズルからの冷却水の熱鋼板への給水停止に要する時間(応答時間)は、ノズルの長さが全て同じである場合よりは短縮されるが、ノズルを短くするのには限界があるから、やはり応答時間の短縮化には限界がある。また、ヘッダの両端側のノズルと中央部側のノズルに空気が供給されるまでの時間差が生じることにより、ノズルからの冷却水の給水停止はヘッダの幅方向で時間差が生じ、幅方向で冷却温度にむらが発生する。
また、一般的に、冷却水の給水開始時よりも給水停止時の方が時定数が長くなり、かつ鋼板幅方向の流量分布も不均一になる。そのため、たとえば、熱鋼板が熱延鋼帯である場合、巻取温度にばらつきが生じ、冷却後の熱延鋼帯に引張強度のばらつきが発生する。
特開平6−71327号公報 特開平8―174036号公報
本発明は、冷却水の給水停止時に短時間で均一に鋼板への冷却水の供給を停止することができる熱鋼板の冷却装置および冷却方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)熱鋼板の上方かつ熱鋼板の幅方向に延び、内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔でヘッダに接続され、柱状冷却水を熱鋼板上面に供給する複数本のノズルを備えた熱鋼板の冷却装置において、ヘッダ上部に空気抜き用配管を熱鋼板の幅方向に複数本設置し、かつヘッダ側部の近傍に該配管の上端から溢流する冷却水を熱鋼板にかからないように排水する溢流水排水手段を設け、かつ該配管の内径を9〜30mm、高さを1500mm以下、該ノズル内径を10〜30mm、幅方向のノズル取り付けピッチを25〜100mmとし、空気抜き用配管の内径の総断面積とノズルの内径の総断面積との比(空気抜き用配管の内径の総断面積/ノズルの内径の総断面積)が0.025以上とするとともに、前記空気抜き用配管の長さを設定したヘッダ圧に相当する水柱長さよりも短くしたことを特徴とする、熱鋼板の冷却装置。
(2)前記の溢流水排水手段が、前記空気抜き用配管の各上端を接続する排水管であり、該排水管の流出口から、空気抜き用配管の上端から溢流する冷却水を熱鋼板にかからないように排水することを特徴とする、(1)に記載の熱鋼板の冷却装置。
(3)前記溢流水排出手段が、ヘッダに平行に延びる樋であって、前記空気抜き用配管の各上端から溢流する冷却水を該樋に流し、熱鋼板にかからないように該樋の流出口から排水することを特徴とする(1)に記載の熱鋼板の冷却装置。
(4)熱鋼板の上方かつ熱鋼板の幅方向に延び、内部に冷却水が給水されるヘッダと、熱鋼板の幅方向に所定間隔でヘッダに接続され、柱状冷却水を熱鋼板上面に供給する複数本のノズルと、ヘッダ上部に、熱鋼板の幅方向に複数本設置された空気抜き用配管と、ヘッダ側部の近傍に、空気抜き用配管の上端から溢流する冷却水を熱鋼板にかからないように排水する溢流水排水手段と備える冷却装置による熱鋼板の冷却方法であって、
熱鋼板の冷却中あるいは該冷却中の一部の間において、ヘッダ内の圧力ヘッドに相当する水柱長さが空気抜き用配管の長さを超えるようにヘッダ圧を設定し、空気抜き用配管の上端から冷却水が溢流したときは、溢流した冷却水を溢流水排水手段に排出することを特徴とする、熱鋼板の冷却方法。
(5)熱鋼板の冷却時に、前記ヘッダに給水する冷却水の流量レベル数を2レベル以上に設定し、該レベルにおける最大流量値と最小流量値の比率を1.5〜2.5とすることを特徴とする、(4)に記載の熱鋼板の冷却方法。
(6)熱鋼板の冷却時に、前記ヘッダに給水する冷却水の流量レベル数を2レベル以上に設定し、前記空気抜き用配管の高さを、冷却水流量が最小レベルの場合におけるヘッダの圧力ヘッドに相当する水柱長さ以上であって、冷却水流量が最大レベルの場合におけるヘッダの圧力ヘッドに相当する水柱長さ以下にして、空気抜き用配管の高さを越えて該配管から溢流する冷却水は熱鋼板に冷却水がかからないように排水することを特徴とする、(4)または(5)に記載の熱鋼板の冷却方法。
(7)熱鋼板の冷却時に、前記ヘッダ内の圧力を100mmAq以上とすることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の冷却装置により熱鋼板を冷却する冷却方法。
本発明では、ヘッダ上部に空気抜き用配管を複数本設けて、該配管の内径や高さ、空気抜き用配管の内径の総断面積とヘッダに接続されたノズルの内径の総断面積との比(空気抜き用配管の内径の総断面積/ノズルの内径の総断面積)等を所定のものに規定した冷却装置を使用することにより、またさらにこの冷却装置に、熱鋼板の冷却時にヘッダ圧が比較的高いときは、この空気抜き用配管から冷却水を溢流するようにし、この溢流した冷却水を熱鋼板にかからないように排水することができる溢流水排水手段を設けることにより、冷却水の給水停止時の高い応答性が得られる。このことにより、熱鋼板を長手方向や幅方向により均一に冷却することができ、引張強度等の特性にばらつきの小さい、品質の優れた鋼板が得られる。
熱延鋼帯の圧延ラインの概略を示す図である。 一般的な鋼板の上面を冷却する冷却装置(屋根板を有する)の側面図である。 一般的な鋼板の上面を冷却する冷却装置の側面図である。 空気抜き用配管内の冷却水水柱高さ(長さ)と応答時間の関係を示す図である。 (a)は空気抜き用配管内の冷却水水柱高さを500mmとしたときの空気抜き用配管の内径と応答時間の関係を、(b)は空気抜き用配管内の冷却水水柱高さを1500mmとしたときの空気抜き用配管内径と応答時間の関係を、それぞれ示す図である。 空気抜き用配管本数と応答時間の関係を示す図である。 (a)は本発明の冷却装置の実施例の側面図、(b)は正面図を示す。 本発明の冷却装置の他の実施例の側面図、(b)は正面図を示す。
一般的な熱鋼板の冷却装置には、図2および図3に示したように、ヘッダが上部ヘッダと下部ヘッダとからなり、直管状のノズルを備えるものと、ヘッダと逆U字状のノズルを備えるものとが多用されている。本発明は、いずれの形式のものについても適用可能である。
一般的な柱状冷却水噴射用のノズル(円管ラミナーノズルなどと称されている)として、内径10〜30mmの円管ノズルが、鋼板幅方向に25〜100mm程度のピッチで設置されている。熱鋼板の冷却時には、ヘッダ内に冷却水を供給して、ヘッダ内を100mmAq以上の圧力として、ヘッダに接続されたノズルから冷却水を噴出させる。
柱状冷却水を噴出するラミナーノズルでは、ヘッダへの冷却水の給水を停止した後にヘッダ内の冷却水がノズル下端部から抜ける時間で、その時定数が決まる。ヘッダに接続されたノズルはヘッダの下方に垂下しているが、このような構造のため外部から空気が進入せず、ヘッダ内の水と置換されず、ヘッダ内の圧力が大気圧よりも低くなるため、応答時間〔すなわちヘッダに給水される冷却水が供給停止された時点から、ノズルの下端から冷却水の噴出(吐出)が停止するまでの時間〕は長くなる。そこで、図2または図3に示すようにヘッダの上方に空気抜き用配管14を設け、ヘッダ内に空気を速やかに入れて、ヘッダ内の冷却水と置換することが重要となる。本発明者らは、空気抜き用配管の本数、内径、高さ(長さ)および空気抜き用配管の内径の総断面積とノズルの内径の総断面積との比(空気抜き用配管の内径の総断面積/ノズルの内径の総断面積)がパラメータとなると考え、冷却装置の応答時間を2秒以下とすることができるよう、実験により各パラメータと応答時間の関係を調査した。
実験は、図2に示される冷却装置において、内径が20mmのノズルを、ノズルピッチが50mmで、48本有するヘッダに、内径がφ9の空気抜き用配管を6本取り付けた条件を基準として行った。
図4に、空気抜き用配管内の冷却水水柱高さ(長さ)と応答時間の関係を示す。
熱鋼板の冷却時にヘッダ内圧に応じて空気抜き用の配管内に冷却水が上昇するが、ヘッダへ給水が停止されて、ヘッダ圧が低下して該配管内の冷却水はヘッダ内へ流出する。この場合、空気抜き用配管内の冷却水水柱高さ(長さ)が短いと、該配管から冷却水が排出される時間が短くなるため、応答時間を短くすることができる。図4の結果から、応答時間を2秒以下にするためには、空気抜き用配管の高さは1500mm以下が好ましい。
図5(a)、(b)に、空気抜き用配管内の冷却水水柱高さ(長さ)を500mm、1500mmとしたそれぞれの場合において、空気抜き用配管の内径を変化させた時の応答時間を示す。空気抜き用配管の内径が大きくなれば、該配管内の圧力損失が小さくなるものの、該配管から冷却水が排出される時間が短くなるため、応答時間が短くなる。
図5(a)、(b)から分かるように、空気抜き用配管の内径が9mm未満では、空気抜き用配管において、圧力損失が大きいため、配空気抜き用配管内の冷却水水柱高さが500mm、1500mmのいずれの場合も応答時間が長くなり、とくに冷却水水柱高さが1500mmの場合に、応答時間は2秒を超える。一方、空気抜き用配管の内径が30mm超では、冷却水水柱高さが500mmの場合、該配管内の圧力損失が十分に小さくなるため、応答時間の短縮効果はほぼ飽和する。また、該水柱高さが1500mm場合は、該配管の内径が30mmを超えても応答時間の短縮効果は多少認められるが、これ以上大きくしても、空気抜き用配管のコスト増加等に対し、得られるメリットが少ない。そのため、空気抜き用配管の内径は9〜30mmが好ましい。
一方、実際にはノズルはヘッダに鋼板の幅方向に複数本取り付けられているが、ノズル本数が多いほど多くの空気をヘッダに供給する必要があるため、空気抜き用配管の内径の総断面積Sとノズルの内径の総断面積Sとの比(S/S)を所定の値以上にしなければならない。
例えば、図2の形式のヘッダにおいては、空気抜き用配管の内径の最大値はノズルの内径と同程度かそれ以下となる。
したがって、空気が抜けるスペースを確保するために、鋼板幅方向に空気抜き用配管を複数箇所設置するのが好ましい。
図6に、空気抜き用配管の本数を変化させた時の応答時間を示す。空気抜き用配管の数が増えるほど、応答時間は短くなるが、時間短縮の割合はノズルが6本の時を境に変化する。
この図から分かるように、空気抜き用配管の数が6本以下の場合、配管の数が増えると、該配管の内径の総断面積S(したがってS/S)が増加がし、ヘッダに空気が素早く供給されるため、応答時間が短縮する。そして、応答時間を2秒以下とするには、少なくとも2本以上、好ましくは3本以上設けることが必要である。
一方、空気抜き用配管が6本以上の場合、前記の総断面積増加の効果は飽和する。空気抜き用配管を通して空気はヘッダに供給されるため、本数が増加すると、ヘッダ全体に空気が供給されるまでの時間が短くなり、応答時間も短くなる。空気抜き用配管の本数が6本以上においても応答時間が短くなるのは、この効果のためである。
応答速度の観点からは、空気抜き用配管の数は多いほうが好ましいが、実際の運用を考えると、空気抜き用配管の本数が多すぎると設備コストやメンテナンスコストがかかるという問題が生じる。よって、鋼板幅方向に概ね等分割に2〜10本程度、好ましくは3〜10本設置することが望ましい。
また、空気抜き用配管が6本での空気抜き用配管の内径の総断面積とノズルの内径の総断面積との比(S/S)は0.025である(ノズルは48本で内径が20mm、空気抜き用配管は6本で内径が9mmとして計算)。空気抜き用配管の内径とノズルの内径は、必ずしも同じではないので、応答時間短縮の効果が大きい条件として、空気抜き用配管の本数で決めるのではなく、空気抜き用配管の内径の総断面積とノズルの内径の総断面積との比(S/S)の値で決めることもできる。図4〜6に示される結果を考慮すると、S/Sの値は0.025以上することにより、応答速度を2秒以下とすることができる。
空気抜き用配管の設置位置は、ヘッダ内のなるべく高い位置が好ましく、例えば図2であれば屋根部の頂上付近、図3ではヘッダの上方がよい。ヘッダ内では、水が充満した状態となるため、ヘッダの下方に空気抜き用配管の取り口をつけると、ヘッダへの空気の供給が効率的に行われないためである。
なお、本発明の実施形態では図2の形式のノズルヘッダについて説明したが、図3のような形式でも同様の効果を得ることができる。
また、熱鋼板の冷却時に、ヘッダに給水する冷却水流量レベル数を2以上に設定して、該レベルを変更して使用する場合がある。例えば、一般的に使用されるヘッダ圧力を数百mmAq程度で噴射しており、鋼板厚み3mmに対して60〜90℃/s程度の冷却速度で冷却する。最近では、高張力鋼製造の観点から、120〜180℃/s程度の高冷却速度が必要な場合も発生している。その際には、ヘッダ内の圧力を高く調整し、一般的な流量に対して数倍の流量で冷却水を噴射する必要があり、ヘッダ圧力は数千mmAq程度となる。
設定された冷却水流量レベルの最大流量レベルと最小流量レベルの比率が1.5未満の場合は、高流量での注水時のヘッダ内部圧力に合わせて空気抜き用配管を高くしても、該配管内の冷却水水柱の高さは比較的変動が少なく、注水停止時の応答性はそれほど悪くならないので、わざわざ後述する溢流水排水手段を設置することがコストメリットに合わなくなる。また、水量比率が2.5より大きい場合は、高流量で噴射する時の冷却水噴射速度が高くなり、流体の乱れが増し、柱状冷却水の安定した流れが得にくくなるため、冷却能力を一定に保つことが難しくなる。
そのため、ヘッダから噴射する冷却水量は2段階以上に設定するが、その最大値と最小値の比率は1.5〜2.5とすることが望ましい。
すでに記載したように、空気抜き用の配管の長さが短いほど、冷却水停止時に空気抜き用の配管から冷却水がヘッダ内に早く流出し、応答時間も短くなる。しかし、配管が短すぎた場合、鋼板の冷却時において、ヘッダ内への給水時にヘッダ内の圧力が上がると冷却水が空気抜き用の配管上部から溢れ出て鋼板表面に落下し、均一な冷却を達成することができない。このため、従来の空気抜き用配管の長さはヘッダ内の圧力ヘッド以上(ヘッダ内圧力に相当する水柱以上)としており、応答時間の短縮化には限界がある。
このため、本発明では、空気抜き用配管の長さを高冷却速度で冷却するときのヘッダの圧力ヘッドに相当する水柱長さよりも短くし、空気抜き用配管の上端から冷却水が溢流する場合、この溢流水を熱鋼板にかからないように排出できる溢流水排水手段を設けた。
すなわち、図7のように空気抜き用配管14の各上端に、溢流水排水手段として、ヘッダに平行な排水管15を接続するのである。そして、空気抜き用配管の上端から冷却水が溢れ出たときは、その冷却水を排水管に流出させ、排水管の流出口から、熱鋼板に冷却水がかからないように排水する。
また、図8のようにヘッダの側面近傍に、溢流水排水手段として、ヘッダに平行な樋16を設置し、空気抜き用配管14の上端から溢れ出した冷却水を樋16に流し込み、樋16の流出口から熱鋼板に冷却水がかからないように排水する。この場合、樋16に冷却水が流れ込むように該配管の上端部は図8に示す如く曲げられている。
これらの方法により、空気抜き用配管の長さを比較的短くして、冷却水停止の応答速度を速くすることができ、しかも冷却中に空気抜き用配管から溢流した冷却水が鋼板にかかることもないので、溢流した冷却水が熱鋼板にかかり不均一な冷却がなされることもない。これにより、冷却速度を1つのヘッダで流量を変更することにより調整した場合においても空気抜き用配管の高さを短くして、冷却水停止の応答速度を速くすることができ、熱鋼板の全長にわたって均一な温度で冷却することが可能となる。また、空気抜き用配管を幅方向に複数本、好ましくは3本以上設置するので、熱鋼板の幅方向にも冷却をより均一にできる。
本発明の実施例を、図1に示す熱延鋼帯の圧延ラインにおいて、熱延鋼帯の冷却を行う場合について説明する。
熱延鋼帯の冷却には、図7に示される冷却装置、あるいはこの装置において溢流水排水手段(排水管15)を設けないもの、さらには空気抜き用配管14を設けないもの、すなわち本発明の冷却装置ないしは従来装置に相当する冷却装置を使用した。なお、空気抜き用配管を設けない場合は屋根板9の空気抜き用配管との連通孔は封止された状態になっている。
それぞれの冷却装置において、ノズル内径は20mm、ノズル1本当りの流量は20L/minまたは50L/min(Lはリットル)、熱延鋼帯の幅方向におけるノズルのピッチは50mm、ノズルの本数は48本である。給水時のヘッダ内圧は、450mmAqまたは4950mmAqである。
上記の実施形態に基づいて、仕上げ板厚3.0mm、引張強度450MPaの鋼種Aの鋼帯(流量は20L/min、ヘッダ内の圧力450mmAq)または550MPaの鋼種Bの鋼帯(流量は50L/min、ヘッダ内の圧力4950mmAq)を製造した。
鋼種Aの鋼帯については、仕上圧延機出側での搬送速度は鋼帯先端部で700mpm、鋼帯先端部が巻取機に到達して以降は順次速度を上げて最高1000mpmまで増速した。鋼帯の仕上圧延機出側の温度は890℃で、上記の冷却装置を使って、巻取機手前の温度計の指示が640℃となるように冷却ゾーンを制御した。
鋼種Bの鋼帯については、仕上圧延機出側での搬送速度は鋼帯先端部で650mpm、鋼帯先端部が巻取機に到達して以降は順次速度を上げて最高800mpmまで増速した。鋼帯の仕上圧延機出側の温度は860℃で、上記の冷却装置を使って、巻取機手前の温度計の指示が500℃となるように冷却ゾーンの長さを制御した。
表1に比較例1〜6、参考例1および本発明例1、2の製造条件および結果をまとめた。表1から分かるように、溢流水排水手段の排水管は本発明例1および2の場合に設け、他の参考例1や比較例1〜6には設けなかった。また、比較例1では空気抜き用配管も設けなかった。
なお、表1における「応答時間」とは、ヘッダに給水される冷却水が供給停止された時点から、ノズルの下端から冷却水の噴出(吐出)が停止するまでの時間である。
比較例1は空気抜き用の配管がなく、空気抜き用配管の内径の総断面積/ノズルの内径の総断面積(S/S)がゼロであるため、応答時間が3.2秒、また、比較例2では、空気抜き用の配管の内径が小さいことにより、また比較例3では該配管の本数が少ないことにより、空気抜き用の配管の内径の総断面積が小さく、S/Sが0.025を下回り、それぞれ応答時間が2.3秒、2.4秒と2秒を超えて長かった。このため、比較例1〜3では、鋼帯の引張強度のばらつきが9.8〜11MPaと大きく、鋼帯の引張強度のばらつきが大きい部分を切り捨てたので、製品歩留が低かった。
一方、参考例1では/Sが0.082であり、0.025を超え、応答時間が1.2秒と2秒を下回り、短かった。このため引張強度のばらつきが5MPaと小さかったため、鋼帯の切り捨てがなかったので、製品歩留が高かった。
ヘッダ圧が4950mmAq、空気抜き用配管の高さが5000mmの比較例4では、S/S参考例1と同様に0.082であり、0.025を上回っているが、冷却中の冷却水水柱高さが500mmを超え、5000mmの長い空気抜き用の配管上部にまで達し、冷却水停止時に該配管に溜まっている冷却水がヘッダ内に流出するのに時間がかかったため、応答時間が4.2秒と長かった。このため、鋼帯の引張強度のばらつきが24MPaと大きく、引張強度のばらつきが大きい部分は切り捨てたので、製品歩留が低かった。
比較例5は、ヘッダ圧が比較例4と同じく4950mmAqであり、S/Sも比較例4と同じであるが、空気抜き用配管の高さが500mmであり、比較例4と異なるものである。
この比較例5は、S/S参考例1と同様に0.082であり、0.025を上回り、かつ空気抜き用配管の高さが500mmと短いため、いずれの例でも応答時間は1.2秒であり、2秒以下である。しかし、冷却中に500mmの空気抜き用配管の上端から冷却水が溢れ出し、溢流水排水手段の排水管を設けていなかったため、熱延鋼帯にかかって、鋼帯温度のばらつきを発生させてしまった。このため、引張強度のばらつきが40MPaと大きく、引張強度のばらつきが大きい部分は切り捨てたので、製品歩留が低かった。
一方、本発明例1は、ヘッダ内の圧力、空気抜き用配管の高さ、内径、本数は比較例5と全く同じであるが、溢流水排水手段の排水管を設けているために、冷却水水柱が500mm以上となっても、空気抜き用配管の上端から溢流した冷却水は排水管に流れ、鋼帯にかかることなく排水された。このため、応答時間が短く(比較例と同じ1.2秒であり、2秒以下である。)、かつ溢流した冷却水が鋼帯にかかることもなかった。その結果、引張強度のばらつきが10MPaと比較的小さく、切り捨てがなかったので、製品歩留が高かった。
比較例6および本発明例2はともに、ヘッダに給水する冷却水の流量レベルを2レベルに設定、すなわち鋼種Aの鋼帯に対してノズル1本当たり20L/min(ヘッダ内の圧力450mmAq)と鋼種Bの鋼帯に対してノズル1本当たり50L/min(ヘッダ内の圧力4950mmAq)とに設定して冷却を行った。
比較例6と本発明例2の冷却条件の相違は、前者の比較例6では、空気抜き用配管の高さが5000mmであり、また溢流水排水手段が設けられていないのに対して、後者の本発明例2では、空気抜き用配管の高さが500mmであり、また溢流水排水手段が設けられていることである。
比較例6では、鋼種Aの鋼帯については、ヘッダ内の圧力が450mmAqであり、空気抜き用配管内の冷却水水柱高さが500mmを超えることはないので、冷却水が5000mmの空気抜き用配管から溢流することはなく、空気抜き用配管に溜まっている水も少なかったため、応答時間が1.2秒と短かった。その結果、引張強度のばらつきが5MPaと小さかったため、切り捨てがなく、製品歩留が高かった。
しかし、鋼種Bの鋼帯については、ヘッダ圧が4950mmAqと高く、5000mmの空気抜き用の配管内に溜まっている水が多かったため、応答時間が4.2秒と長く、引張強度のばらつきが24MPaと大きかった。この結果、引張強度のばらつきが大きい部分は切り捨てたため、製品歩留が低かった。
このように、比較例6では、流量レベルを2つに設定することにより、異なる鋼種A、Bの鋼帯を冷却したが、鋼種Aの鋼帯については参考例1と同じ結果が得られたが、鋼種Bについては比較例4と同様の結果になった。
これに対して、本発明例2では、鋼種A、Bの鋼帯のいずれについても、応答時間が1.2秒と短かく、それぞれ参考例1と本発明例1と同じ結果が得られた。鋼種Bの鋼帯については、本発明例1と同様に、冷却する際に500mmの空気抜き用配管の上端から冷却水が溢れ出たが、この冷却水は、図7に示す溢流水排水手段の排水管により、鋼板にかかることなく排水された。そのため、引張強度のばらつきが小さかったため、切り捨てがなく、製品歩留が高かった。
以上のように、本発明により、応答時間の短い冷却が可能となり、鋼板の長手・幅方向における冷却均一性の向上、ひいては材質均一性の向上が可能となる。
なお、上記の本発明では、熱延鋼帯の冷却装置について示したが、本発明の内容はこれに限るものではなく、厚板など他の熱鋼板を柱状冷却水で冷却する場合において適用することも可能である。また、噴射圧力が高い時に空気抜き用配管の上端から溢れ出た冷却水は、本発明例1や本発明例2のように図7に示す溢流水排水手段の排水管15ではなく、図8に示す溢流水排水手段の樋16によって排水しても、同様の効果がある。
1 加熱炉
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 冷却設備
5 巻取機
6 熱鋼板、熱延鋼帯
7 ヘッダ、下部ヘッダ
8 ノズル
9 屋根板
10 上部ヘッダ
11 柱状冷却水
12 テーブルローラ
13 冷却水の給水管
14 空気抜き用配管
15 排水管
16 樋

Claims (7)

  1. 熱鋼板の上方かつ熱鋼板の幅方向に延び、内部に冷却水が給水されるヘッダと熱鋼板の幅方向に所定間隔でヘッダに接続され、柱状冷却水を熱鋼板上面に供給する複数本のノズルを備えた熱鋼板の冷却装置において、ヘッダ上部に空気抜き用配管を熱鋼板の幅方向に複数本設置し、かつヘッダ側部の近傍に該配管の上端から溢流する冷却水を熱鋼板にかからないように排水する溢流水排水手段を設け、かつ該配管の内径を9〜30mm、高さを1500mm以下、該ノズル内径を10〜30mm、幅方向のノズル取り付けピッチを25〜100mmとし、空気抜き用配管の内径の総断面積とノズルの内径の総断面積との比(空気抜き用配管の内径の総断面積/ノズルの内径の総断面積)が0.025以上とするとともに、前記空気抜き用配管の長さを設定したヘッダ圧に相当する水柱長さよりも短くしたことを特徴とする、熱鋼板の冷却装置。
  2. 前記の溢流水排水手段が、前記空気抜き用配管の各上端を接続する排水管であり、該排水管の流出口から、空気抜き用配管の上端から溢流する冷却水を熱鋼板にかからないように排水することを特徴とする、請求項1に記載の熱鋼板の冷却装置。
  3. 前記溢流水排出手段が、ヘッダに平行に延びる樋であって、前記空気抜き用配管の各上端から溢流する冷却水を該樋に流し、熱鋼板にかからないように該樋の流出口から排水することを特徴とする請求項1に記載の熱鋼板の冷却装置。
  4. 熱鋼板の上方かつ熱鋼板の幅方向に延び、内部に冷却水が給水されるヘッダと、熱鋼板の幅方向に所定間隔でヘッダに接続され、柱状冷却水を熱鋼板上面に供給する複数本のノズルと、ヘッダ上部に、熱鋼板の幅方向に複数本設置された空気抜き用配管と、ヘッダ側部の近傍に、空気抜き用配管の上端から溢流する冷却水を熱鋼板にかからないように排水する溢流水排水手段と備える冷却装置による熱鋼板の冷却方法であって、
    熱鋼板の冷却中あるいは該冷却中の一部の間において、ヘッダ内の圧力ヘッドに相当する水柱長さが空気抜き用配管の長さを超えるようにヘッダ圧を設定し、空気抜き用配管の上端から冷却水が溢流したときは、溢流した冷却水を溢流水排水手段に排出することを特徴とする、熱鋼板の冷却方法。
  5. 熱鋼板の冷却時に、前記ヘッダに給水する冷却水の流量レベル数を2レベル以上に設定し、該レベルにおける最大流量値と最小流量値の比率を1.5〜2.5とすることを特徴とする、請求項4に記載の熱鋼板の冷却方法。
  6. 熱鋼板の冷却時に、前記ヘッダに給水する冷却水の流量レベル数を2レベル以上に設定し、前記空気抜き用配管の高さを、冷却水流量が最小レベルの場合におけるヘッダの圧力ヘッドに相当する水柱長さ以上であって、冷却水流量が最大レベルの場合におけるヘッダの圧力ヘッドに相当する水柱長さ以下にして、空気抜き用配管の高さを越えて該配管から溢流する冷却水は熱鋼板に冷却水がかからないように排水することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載の熱鋼板の冷却方法。
  7. 熱鋼板の冷却時に、前記ヘッダ内の圧力を100mmAq以上とすることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の冷却装置により熱鋼板を冷却する冷却方法。
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