JP2011165347A - 電解質、電解質膜、膜−電極接合体及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭化水素系疎水性ポリマー(P)と、一般式M1-xJxP2yO7z(式中、Mは、Sn、Ti、Si、Ge、Pb、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を表し、JはAl及び/又はInを表し、xは0.001〜0.5の範囲の数値を表し、y及びzは各々独立に0.9〜1.1の数値を表す。)で表されるピロリン酸金属塩(X)とを含む電解質であって、前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)と前記ピロリン酸金属塩(X)との質量比[(P)/(X)]が70/30〜10/90である電解質。
【選択図】なし
Description
固体高分子型燃料電池では、一方の電極(燃料極、アノード)に水素やメタノール等の燃料を供給し、他方の電極(酸素極、カソード)に空気等の酸素を含有する酸化剤ガスを供給して発電が行われる。すなわち、燃料極において燃料がイオン化されてプロトン及び電子が生じ、プロトンは電解質膜を通り、電子は、両電極をつなぐことによって形成される外部電気回路を移動して酸素極へ送られて酸化剤と反応し、その際に水が生成する。このようにして、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して取り出すことができる。
[1]炭化水素系疎水性ポリマー(P)と、
一般式M1-xJxP2yO7z(式中、Mは、Sn、Ti、Si、Ge、Pb、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を表し、JはAl及び/又はInを表し、xは0.001〜0.5の範囲の数値を表し、y及びzは各々独立に0.9〜1.1の数値を表す。)で表されるピロリン酸金属塩(X)
とを含む電解質であって、
前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)と前記ピロリン酸金属塩(X)との質量比[(P)/(X)]が70/30〜10/90であることを特徴とする電解質。
[2]前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)の90質量%以上が芳香族ビニル系重合体セグメント(A)及び柔軟性の脂肪族ビニル系重合体セグメント(B)を含み、当該重合体セグメント(A)及び(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90〜50/50である、上記[1]に記載の電解質。
[3]前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)が、水酸基、アミノ基及びチオール基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を0.001〜0.1mmol/gの割合で有する、上記[1]又は[2]に記載の電解質。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかに記載の電解質からなる電解質膜。
[5]少なくとも上記[4]に記載の電解質膜の両面に電極を配置してなる膜−電極接合体。
[6]少なくとも上記[5]に記載の膜−電極接合体の両面に導電性のセパレータ材を配置してなる燃料電池。
本発明の電解質は炭化水素系疎水性ポリマー(P)を含む。当該炭化水素系疎水性ポリマー(P)は、電解質膜の性能に影響する官能基を含む割合が小さいため、官能基の脱離が起こるような高温条件下においても電解質膜の性能が低下しにくい。そのため、本発明の電解質を材料とする電解質膜は熱安定性が高く、高温条件下においてもイオン伝導度、引張強度、破断伸度等の物性の低下が起こりにくい。
炭化水素系疎水性ポリマー(P)は、電解質膜の性能に影響する官能基を含む割合が小さいことが好ましい。特に、炭化水素系疎水性ポリマー(P)における親水性基(水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基等)の含有量は、好ましくは0.1mmol以下、より好ましくは0.05mmol以下、更に好ましくは0.01mmol以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0mmol以上、より好ましくは0.001mmol以上である。
付加重合系高分子の例としては、ポリビニル脂肪族、ポリビニル芳香族、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル等が挙げられ、重縮合系高分子の例としては、ポリエーテル、ポリスルフィド、ポリアミン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアゾメチン、ポリヒドラジド、ポリ酸無水物、ポリチオエステル、ポリチオカーボネート、ポリチオアミド、ポリホスホネート、ポリスルホンアミド、ポリホスホン酸エステル、ポリリン酸エステル、ポリホスホンアミド、ポリフェニレン、ポリケトン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリベンゾアゾール、ポリオキサゾール、ポリチアゾール、ポリイミダゾール、ポリピラゾール、ポリオキサジアゾール、ポリトリアゾール、ポリトリアジン、ポリイミジン、ポリキノリン、ポリベンゾオキサジノン、ポリキナゾロン、ポリキナゾリンジオン、ポリキノキサリン、ポリフタラジノン等が挙げられ、重付加系高分子の例としては、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられる。
また、二種以上の分子量の異なる炭化水素系疎水性ポリマーを組み合わせてもよい。分子量の異なるポリマーを組み合わせて使用することにより、電解質膜の加工性や膜強度等を制御することができる。
また、重合体セグメント(A)及び(B)の質量比が異なる二種以上の炭化水素系疎水性ポリマーを組み合わせてもよい。
重合体セグメントの配列、重合体セグメントの個数、及び/又は重合体セグメントの個数比率が異なる二種以上の炭化水素系疎水性ポリマーを組み合わせてもよい。
前記芳香族ビニル系重合体セグメント(A)を構成する芳香族ビニル系化合物単位としては、下記一般式(1)で表される単位であることが、精密重合の容易性、本発明の電解質の耐熱性、電解質膜の膜強度等の観点から好ましい。主たる繰返し単位は下記一般式(1)で表される単位から選ばれる一種から構成されていてもよいし、二種以上から構成されていてもよい。
R1〜R4における炭素数6〜14のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、インデニル基、ビフェニリル基が挙げられる。該アリール基が1〜3個の置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基(クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基等)が挙げられる。
多脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは5〜30、より好ましくは6〜20、更に好ましくは7〜12である。
多脂環式炭化水素基のベンゼン環での結合位置は、ベンゼン環におけるビニル結合[−C(R1)=CH2]の結合部位に対してオルト位、メタ位またはパラ位のいずれであってもよい。そのうちでも、重合反応性等の点から、多脂環式炭化水素基はパラ位に結合していることが好ましい。
多脂環式炭化水素基の具体例としては、アダマンチル基(トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デシル基)、ビアダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ビシクロノニル基、ビシクロ〔2.1.0〕ペンチル基、ビシクロ〔3.2.1〕オクチル基、トリシクロ〔2.2.1.02,6〕ヘプチル基等を挙げることができる。これらの多脂環式炭化水素基は、場合によりアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシル基等により置換されていてもよい。
前記脂肪族ビニル系重合体セグメント(B)は、ガラス転移点あるいは軟化点が好ましくは50℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下のいわゆるゴム状重合体である。脂肪族ビニル系重合体セグメント(B)の主たる繰返し化合物単位は、柔軟相を形成し得る化合物単位であることが好ましい。脂肪族ビニル系重合体セグメント(B)が柔軟相を形成することによって、電解質が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や燃料電池の作製にあたって成形性(組立性、接合性、締付性等)を改善することができる。
ピロリン酸金属塩との親和性及び炭化水素系疎水性ポリマーの強度、耐熱性、加工性等の観点から、高分子鎖末端に結合した官能基としては、水酸基、アミノ基、チオール基等が好適であり、水酸基が特に好適である。
高温低湿度条件下におけるイオン伝導度、電解質膜の膜強度等の観点から、かかる炭化水素系疎水性ポリマー(P)以外のポリマーの含有量は、本発明の電解質の好ましくは30質量%未満、より好ましくは20質量%未満、更に好ましくは10質量%未満である。
本発明の電解質はピロリン酸金属塩(X)を含む。これにより、水を介さないイオン伝導機構が発現する。そのため、プロトンに配位した含有水の電気浸透現象が抑制され、カソードが水分過剰となり酸化剤である酸素の拡散阻害をもたらすフラッディング現象を緩和することが可能である。したがって、本発明の電解質より得られた電解質膜を用いることにより、水分管理の観点からも燃料電池発電性能を向上させることができる。
M1-xJxP2yO7z (2)
(式中、Mは、Sn、Ti、Si、Ge、Pb、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を表し、JはAl及び/又はInを表し、xは0.001〜0.5の範囲の数値を表し、y及びzは各々独立に0.9〜1.1の数値を表す。)
一般式(2)中、金属元素Mは、ピロリン酸金属塩の安定性及び高水準のプロトン伝導性の観点から、好ましくはSn、Ti、Ge及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、より好ましくはSn、Ti及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、更に好ましくはSn及び/又はTi、特に好ましくはSnである。
Jは、ピロリン酸金属塩の安定性及び高水準のプロトン伝導性の観点で、MがSnを含有する場合を考慮すると、ドーパント元素Jは、好ましくはAlである。
y及びzは、各々独立に0.9〜1.1の数値を表し、前記一般式(2)における元素の組成比、すなわちM:J:P:Oのモル比[(1−x):x:2:7]において、イオン伝導性を阻害しない範囲で、P及びOの成分のそれぞれが、2及び7のそれぞれのモル比に対して10%程度以内で増減されていてもよいことを意味する。y及びzは、好ましくは1である。
(a):Mを含有する化合物とJを含有する化合物とリン化合物(例えばリン酸)とを反応させ、反応物を得る工程。
(b):工程(a)で得られた反応物を熱処理する工程。
MがTi、Zr、Ge又はSnである場合、Mを含有する化合物としては、塩化チタン(IV)、ヨウ化チタン(IV)、酸化チタン(IV)、チタン(IV)エトキシド、臭化ジルコニウム(IV)、塩化ジルコニウム(IV)、酸化ジルコニウム(IV)、炭酸ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)エトキシド、臭化ゲルマニウム(IV)、ヨウ化ゲルマニウム(IV)、酸化ゲルマニウム(IV)、酢酸スズ(IV)、フッ化スズ(IV)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(IV)、ヨウ化スズ(IV)、酸化スズ(IV)、及びこれらの水和物を例示することができる。
上記化合物の中でも、コスト並びに高温時の分解及び/又は酸化により生じる副生成物の安全性の観点から、酸化物又はその水和物を好ましく用いることができる。
Jを含有する化合物としては、炭酸アルミニウム(III)、フッ化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、ヨウ化アルミニウム(III)、硝酸アルミニウム(III)、シュウ酸アルミニウム(III)、酸化アルミニウム(III)、水酸化アルミニウム(III)、アルミニウム(III)エトキシド、アルミニウム(III)イソプロポキシド、α−Al2O3、γ−Al2O3、酢酸インジウム(III)、塩化インジウム(III)、臭化インジウム(III)、ヨウ化インジウム(III)、硝酸インジウム(III)、酸化インジウム(III)、水酸化インジウム(III)、インジウム(III)イソプロポキシド、及びこれらの水和物を例示することができる。
上記化合物の中でも、コスト並びに高温時の分解及び/又は酸化により生じる副生成物の安全性の観点から、酸化物、水酸化物、又はそれらの水和物を好ましく用いることができる。
反応時間は、合成するピロリン酸金属塩(X)の組成によって適宜選択できるが、可能な限り長時間であることが好ましい。ただし生産性を考慮すると、好ましくは1〜50時間、より好ましくは1〜20時間である。
熱処理に要する時間は、合成するピロリン酸金属塩(X)の組成によって適宜選択できるが、好ましくは1〜20時間、より好ましくは1〜5時間、更に好ましくは2〜5時間である。
(1)電解質の電子顕微鏡観察画像において、ピロリン酸金属塩(X)粒子100個の長径を測定し、その平均値をピロリン酸金属塩(X)の平均粒径とする手法、
(2)電解質の電子顕微鏡観察画像において、プラニメトリック法(電子顕微鏡観察画像上で面積(A)の既知の円を描き、円内の粒子数ncと円周にかかった粒子数niから以下の式によって単位面積あたりの粒子数NGを求める。
NG=(nc+1/2ni)/(A/m2)
ここで、mは電子顕微鏡観察画像の倍率である。1/NGが1個の粒子の占める面積であるから、粒子径は円相当径で2/(πNG)1/2、正方形の一辺とすると1/(NG)1/2で得られる。)よりピロリン酸金属塩(X)の平均粒子径を測定する手法
等、電解質を測定試料とする手法。
電解質に含まれる炭化水素系疎水性ポリマー(P)を溶解するが、ピロリン酸金属塩(X)を溶解しない溶媒と電解質とを混合し、得られる溶解した炭化水素系疎水性ポリマー(P)と溶解しないピロリン酸金属塩(X)を含む液を、
(3)静的光散乱法により測定し、そのメジアン径をピロリン酸金属塩(X)の平均粒径とする手法、(4)動的光散乱法により測定し、そのメジアン径をピロリン酸金属塩(X)の平均粒径とする手法、(5)レーザ回析式粒度分布測定装置を用いて測定し、レーザ回折により算出された粒度分布からピロリン酸金属塩(X)の平均粒径を算出する手法、
(6)電気的検知法を用いて測定し、測定される体積平均粒径をピロリン酸金属塩(X)の平均粒径とする手法、
(7)上記(3)〜(6)の測定手法において、ピロリン酸金属塩(X)粒子が凝集あるいは沈降することを防ぐため、適切な方法で該ピロリン酸金属塩(X)の分散状態を良好に保つ処理を施した後、あるいは該処理を施しながら測定を行う手法。
(8)電解質に含まれる炭化水素系疎水性ポリマー(P)を溶解するが、ピロリン酸金属塩(X)を溶解しない溶媒と電解質とを混合し、得られる溶解した炭化水素系疎水性ポリマー(P)と溶解しないピロリン酸金属塩(X)を含む液からピロリン酸金属塩(X)のみを回収した後、該ピロリン酸金属塩(X)をふるい分けし、得られる粒径分布からピロリン酸金属塩(X)の平均粒径を求める手法。
安定剤は、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等を包含し、具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスチリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2,−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロジナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のフェノール系安定剤;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジアステリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定剤が挙げられる。
無機充填剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、マイカ、カオリン、酸化チタン、モンモリロナイト、アルミナが挙げられる。
本発明の電解質膜の製造方法としては特に限定されず、例えば、以下の(i)及び(ii)の工程をこの順で含む方法が例示できる。また、工程(i)の後に、熱プレス成形、ロール成形、押し出し成形等の任意の方法等で成形することにより本発明の電解質を得ることができる。
(i):炭化水素系疎水性ポリマー(P)、ピロリン酸金属塩(X)、及び必要に応じて添加剤を含む混合液を得る工程。
(ii):工程(i)で得られた混合液を用いて電解質膜を得る工程。
このとき使用する溶媒は、炭化水素系疎水性ポリマー(P)、ピロリン酸金属塩(X)及び添加剤の構造を破壊することなく、キャスト又はコートが可能な程度の粘度の溶液を調製することが可能なものであれば特に限定されない。具体的には、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、あるいはこれらの混合溶媒を例示できる。炭化水素系疎水性ポリマー(P)の一次構造、分子量、官能基の有無、官能基の量等に応じて、上記に例示した溶媒の中から、一種又は二種以上の組合せを適宜選択し、使用することができる。
ここで、機械的な撹拌、混練によりピロリン酸金属塩(X)を解砕する手法としては、(1)炭化水素系疎水性ポリマー(P)及びピロリン酸金属塩(X)を含む混合液を撹拌機、ボールミル、ビーズミル、乳化機、超音波処理機、薄膜回転型撹拌機、高圧衝突型粉砕機等を用いて混練する方法、(2)ピロリン酸金属塩(X)を衝突型粉砕機、ハンマー式粉砕機等を用いて粉砕した後に炭化水素系疎水性ポリマー(P)との混合液を調製する方法、並びに(3)炭化水素系疎水性ポリマー(P)及びピロリン酸金属塩(X)を混練機(ミキシングロール、ニーダー、インテンシィブミキサー等)、一軸混練機(単軸スクリュー押出機、特殊単軸押出機等)、二軸混練機(同方向回転押出機、異方向回転押出機、ローター式押出機、スクリュー型押出機等)を用いて混練した後に混合液を調製する方法を例示することができ、上記に示す方法の中から二種類以上の方法を組み合わせて処理を行ってもよい。
溶媒除去の条件は、炭化水素系疎水性ポリマー(P)の分解温度以下で、溶媒を完全に除去できる条件であれば任意に選択することが可能である。所望の物性を発現させるため、複数の温度を任意に組み合わせたり、通風気下と真空下等を任意に組み合わせたりしてもよい。具体的には、室温〜60℃程度の真空条件下で、数時間予備乾燥した後、100℃以上の真空条件下、好ましくは100〜120℃で12時間程度の乾燥条件で溶媒を除去する方法、60〜140℃の通風気下、数分〜数時間程度の乾燥条件で溶媒を除去する方法を例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、得られた電解質膜の上に、新たに、組成が同じもしくは異なる混合液、又は異なる電解質を含む溶液を塗布して乾燥することにより積層化させてもよい。また、上記のようにして得られた、同じもしくは異なる電解質膜同士を熱ロール成形等で圧着させて積層化させてもよい。
次に、本発明の電解質又は電解質膜を用いた膜−電極接合体について述べる。
本発明の膜−電極接合体は、本発明の電解質又は電解質膜を含む。好ましくは、少なくとも本発明の電解質膜の両面に電極が配置されてなる。
膜−電極接合体の製造は特に制限されず、任意の方法を適用することができる。例えば、イオン伝導性バインダーを含む触媒ペーストを印刷法やスプレー法により、ガス拡散層上に塗布し乾燥することで触媒層とガス拡散層との接合体を形成させ、ついで1対の接合体をそれぞれの触媒層を内側にして、電解質膜の両側にホットプレス等により接合させる方法や、上記触媒ペーストを印刷法やスプレー法により電解質膜の両側に塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、それぞれの触媒層に、ホットプレス等によりガス拡散層を圧着させる方法がある。
更に別の製造法として、イオン伝導性バインダーを含む溶液又は懸濁液を、電解質膜の両面及び/又は1対のガス拡散電極の触媒層面に塗布し、電解質膜と触媒層面とを張り合わせ、熱圧着等により接合させる方法がある。この場合、該溶液又は懸濁液は電解質膜及び触媒層面のいずれか一方に塗付してもよいし、両方に塗付してもよい。
更に他の製造法として、まず、上記触媒ペーストをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製等の基材フィルムに塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、ついで、1対のこの基材フィルム上の触媒層を電解質膜の両側に加熱圧着により転写し、基材フィルムを剥離することで電解質膜と触媒層との接合体を得、それぞれの触媒層にホットプレスによりガス拡散層を圧着する方法がある。
これらの方法においては、イオン伝導性基をNa等の金属との塩にした状態で行い、接合後の酸処理によってプロトン形に戻す処理を行ってもよい。
また、触媒層には、必要に応じて撥水剤が含まれていてもよい。撥水剤としては例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテルエーテルケトンの各種熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の燃料電池は、本発明の電解質、電解質膜、又は膜−電極接合体を含む。好ましくは、少なくとも本発明の膜−電極接合体の両面に導電性のセパレータ材が配置されてなる。
上記のような方法で得られた膜−電極接合体を、極室分離と電極への燃料供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータ材の間に挿入することにより、燃料電池が得られる。本発明の膜−電極接合体は、燃料ガスとして水素を使用した純水素型、メタノールを改質して得られる水素を使用したメタノール改質型、天然ガスを改質して得られる水素を使用した天然ガス改質型、ガソリンを改質して得られる水素を使用したガソリン改質型、メタノールを直接使用する直接メタノール型等の燃料電池用の膜−電極接合体として使用可能である。特に、本発明の電解質膜を、水の沸点以上の高温条件下において動作させる燃料電池に用いることで、セル抵抗の低減及び高出力化が可能である。
[ポリスチレン(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体(SEBS)の製造]
重合体ブロック(A)を重合する際に、芳香族ビニル系化合物としてスチレンを用い、重合体ブロック(B)を重合する際にブタジエンを用いて、既報の方法(特開2005−281373号公報)と同様の方法で、ポリスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリスチレン(以下SBSと略記する)を合成した。得られたSBSの数平均分子量は69700であり、1H−NMR測定から求めたスチレン単位の含有量は30.0質量%であった。
合成したSBSのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において50℃で7時間水素添加反応を行い、ポリスチレン−b−水添ポリブタジエン−b−ポリスチレン(以下SEBSと略記する)を得た。得られたSEBSの水素添加率を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.7mol%であった。
[片末端に水酸基を有する、ポリスチレン(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン-水添ポリイソプレン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体(SEEPS−OH)の製造]
重合体ブロック(A)を重合する際に、芳香族ビニル系化合物としてスチレンを用い、重合体ブロック(B)を重合する際にブタジエン及びイソプレンを用いて、既報の方法(特開平7−118492号公報)と同様の方法で、片末端に水酸基を有する、ポリスチレン−b−ポリブタジエン・ポリイソプレン−b−ポリスチレン(以下SBIS−OHと略記する)を合成した。得られたSEEPS−OHの数平均分子量は62500であり、1H−NMR測定から求めたスチレン単位の含有量は28.0質量%であった。また、液体クロマトグラフィーにより算出した分子鎖末端部位への水酸基導入率は82mol%であった。
合成したSBIS−OHのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において50℃で7時間水素添加反応を行い、片末端に水酸基を有する、ポリスチレン−b−水添ポリブタジエン・水添ポリイソプレン−b−ポリスチレン(以下SEEPS−OHと略記する)を得た。得られたSEEPS−OHの水素添加率を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.5mol%であった。
[スルホン化SEBSの合成]
塩化メチレン153ml中、0℃にて無水酢酸76.7mlと硫酸34.3mlとを反応させてスルホン化試薬を調製した。一方、参考例1で得られたSEBS 100gを、撹拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン960mlを加え、35℃にて4時間撹拌して溶解させた。溶解後、スルホン化試薬を5分かけて徐々に滴下した。35℃にて8時間撹拌後、2Lの蒸留水の中に撹拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SEBSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から36.1mol%、イオン交換容量は0.96meq/gであった。
なお、本発明においてイオン交換容量は以下のようにして測定した。試料を密閉できるガラス容器中に秤量し、そこに過剰量の塩化ナトリウム飽和水溶液を添加して一晩撹拌した。系内に発生した塩化水素を、フェノールフタレイン液を指示薬とし、0.01NのNaOH標準水溶液にて滴定した。イオン交換容量は、次式により求めた。
イオン交換容量=(0.01×b×f)/a
(式中、aは試料の質量(g)を表し、bはNaOH標準水溶液の滴定量(ml)を表し、fはNaOH標準水溶液の力価を表す。)
[スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)の合成]
ポリエーテルエーテルケトン(Victrex社製、商品名:Victrex 450P AB7572)30gを、撹拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、濃硫酸300mlを加え、30℃にて120時間反応させた。反応後、2Lの氷冷水中に撹拌液しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してS−PEEKを得た。得られたS−PEEKのスルホン化率は1H−NMR分析から65.0mol%、イオン交換容量は1.83meq/gであった。
[Sn0.95Al0.05P2O7の調製]
SnO2(シーアイ化成株式会社製、商品名:ナノテック)、Al(OH)3(和光純薬工業株式会社製)、H3PO4(和光純薬工業株式会社製)、及び純水をビーカー中で混合し、ペースト状になるまで約300℃にてスターラーで撹拌した。得られたペーストをアルミナ製の角サヤに移し、電気炉にて650℃で2.5時間固相反応させた。その後、得られた仮焼体を乳鉢と乳棒にて粉砕し、Sn0.95Al0.05P2O7粉体を得た。なお、SnO2/Al(OH)3の仕込み比は95/5であり、H3PO4の仕込み量は蛍光X線回折法(XRF)によってカチオン種及びリンを定量し、リンとカチオン種とのモル比(P/(Sn+Al))が2.0になるように、調整した。
[ホスホシリケートゲルの調製]
既報の方法(“Solid State Ionics”,Vol.139,p.113−119(2001))と同様の方法でホスホシリケートゲルを合成した。
[SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液の調製、及び電解質膜の作製]
参考例1で得られたSEBSの10質量%テトラヒドロフラン溶液を調製し、この溶液に、参考例5で得られたSn0.95Al0.05P2O7をSEBS/Sn0.95Al0.05P2O7の質量比が20/80となるよう添加した。上記したSEBS/ピロリン酸金属塩混合液を、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、超音波処理を30分施した。マグネチックスターラーによる撹拌と、超音波処理を4回繰り返した後、SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、離形処理済みPETフィルム上にコートし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで厚み51μmの電解質膜を得た。
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−950)を用いた静的光散乱法による粒径測定の結果、Sn0.95Al0.05P2O7のメジアン径は288nm、モード径は245nmであった。
[SEEPS−OH/Sn0.95Al0.05P2O7混合液の調製、及び電解質膜の作製]
参考例2で得られたSEEPS−OHの10質量%テトラヒドロフラン溶液を調製し、この溶液に、参考例5で得られたSn0.95Al0.05P2O7をSEEPS−OH/Sn0.95Al0.05P2O7の質量比が20/80となるよう添加した。上記したSEEPS−OH/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、超音波処理を30分施した。マグネチックスターラーによる撹拌と、超音波処理を4回繰り返した後、SEEPS−OH/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、離形処理済みPETフィルム上にコートし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで厚み55μmの電解質膜を得た。
実施例1と同様に粒径測定を行った結果、Sn0.95Al0.05P2O7のメジアン径は293nm、モード径は242nmであった。
[S−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7混合液の調製、及び電解質膜の作製]
参考例4で得られたS−PEEKの20質量%ジメチルスルホキシド溶液を調製し、この溶液に、参考例5で得られたSn0.95Al0.05P2O7をS−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7の質量比が20/80となるよう添加した。得られたS−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、超音波処理を30分施した。マグネチックスターラーによる撹拌と、超音波処理を8回繰り返した後、S−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、東洋紡エステルフィルムK1504上に約200μmの厚みでコートし、100℃で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させたのち、厚さ60μmの電解質膜を得た。作製したS−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7電解質膜は、基材から剥がす際に破断するほど膜強度が乏しく、基材からの剥離が不可能であり、評価が不可能であった。
実施例1と同様に粒径測定を行った結果、Sn0.95Al0.05P2O7のメジアン径は290nm、モード径は241nmであった。
[S−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7/PTFE電解質膜の作製]
既報の方法(特開2008−218408号公報)と同様に、参考例4で得られたS−PEEKと参考例5で得られたSn0.95Al0.05P2O7とPTFE(三井デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名:テフロン6−J)とを乳鉢にて混練後、圧延することで製膜して、厚み2mmの自立可能な電解質膜を得た。なお、S−PEEK/Sn0.95Al0.05P2O7/PTFEの質量比を27.7/34/38.3とした。この結果、PTFEを加えることで比較例1とは異なり、基材からの剥離が可能であったので評価を行った。
[スルホン化SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液の調製、及び電解質膜の作製]
参考例3で得られたスルホン化SEBSの10質量%トルエン/イソブチルアルコール(質量比7/3)溶液を調製し、この溶液に、参考例5で得られたSn0.95Al0.05P2O7をスルホン化SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7粉体の質量比が20/80となるよう添加した。上記したスルホン化SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、超音波処理を30分施した。マグネチックスターラーによる撹拌と、超音波処理を4回繰り返した後、スルホン化SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液を、離形処理済みPETフィルム上にコートし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで厚み50μmの電解質膜を得た。
実施例1と同様に粒径測定を行った結果、Sn0.95Al0.05P2O7のメジアン径は299nm、モード径は249nmであった。
[SEBS/ホスホシリケートゲル混合液の調製、及び電解質膜の作製]
参考例1で得られたSEBSの10質量%テトラヒドロフラン溶液を調製し、この溶液に、参考例6で得られたホスホシリケートゲルをSEBS/ホスホシリケートゲルの質量比が20/80となるよう添加した。上記したSEBS/ホスホシリケートゲル混合液を、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、超音波処理を30分施した。マグネチックスターラーによる撹拌と、超音波処理を4回繰り返した後、SEBS/ホスホシリケートゲル混合液を、離形処理済みPETフィルム上にコートし、室温で十分乾燥させることで製膜を試みた。得られた電解質膜は、厚みむらが大きく、表面凹凸が著しかった。また、膜厚の制御が困難であり、100μm以下の薄膜を作製するのが困難であった。作製した電解質膜を室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させた後に厚みを測定したところ、1100μmであった。
実施例1と同様に粒径測定を行った結果、ホスホシリケートゲルのメジアン径は90.0μm、モード径は89.4μmであった。
[SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液の調製、及び電解質膜の作製]
SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7の質量比を5/95に変更したこと以外は実施例1と同様にして、SEBS/Sn0.95Al0.05P2O7混合液及び電解質膜を作製した。しかし、作製したSEBS/Sn0.95Al0.05P2O7電解質膜は、基材から剥がす際に破断するほど膜強度が乏しく、基材からの剥離が不可能であり、評価が不可能であった。
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜として、DuPont社製ナフィオンフィルム(商品名:Nafion115)を使用した。
実施例1及び2並びに比較例1〜6で得られた電解質膜について、燃料電池用電解質膜としての性能の評価試験を行った。
実施例1及び2並びに比較例1〜5で得られた電解質膜に関して、試料をダンベル状に成形して、引張速度500mm/minの条件で引張強度及び破断伸度を測定した。結果を表1に示す。
更に、実施例1及び2の対比から、本発明の電解質に含まれる炭化水素系疎水性ポリマー(P)が微量の水酸基を有することで電解質膜の強度が更に増加することがわかる。これは、ピロリン酸金属塩(X)と親和性の高い官能基が存在することにより、炭化水素系疎水性ポリマーとピロリン酸金属塩の密着性が向上するためである。同様の傾向が、アミノ基、チオール基等でも得られるが、官能基の量が多すぎる場合には高温低湿度条件下における官能基の脱離等の分解及び/又は劣化による電解質膜の性能低下が顕著となる傾向にある。
実施例1及び2並びに比較例1〜6で得られた電解質膜に関して、1cm×4cmの試料を一対の白金電極で挟み、開放系セルに装着し、50〜250℃、無加湿条件下において、交流インピーダンス法により膜のイオン伝導度を測定した。結果を表2に示す。
また、スルホン酸基を有する比較例3の電解質膜は150℃付近までは優れたイオン伝導度を有していたが、それ以上の温度ではイオン伝導度が低下しており、225℃以上の高温では実施例1及び2のイオン伝導度が優れていた。このことから、本発明の電解質膜は、高い熱安定性を有することがわかる。比較例3の電解質膜におけるイオン伝導度低下の機構についてはまだ明らかにされていないが、スルホン酸基の脱離によるものと推定される。
更に、実施例1及び2の対比から、本発明の電解質に含まれる炭化水素系疎水性ポリマー(P)が微量の水酸基を有することで、イオン伝導度が向上することがわかる。これは、ピロリン酸金属塩(X)と親和性の高い官能基が存在することにより、炭化水素系疎水性ポリマー(P)中におけるピロリン酸金属塩(X)の分散性が向上し、ピロリン酸金属塩の良好なネットワークが形成されるためである。同様の傾向が、アミノ基、チオール基等でも得られるが、官能基の量が多すぎる場合には高温低湿度条件下における官能基の脱離等の分解及び/又は劣化による電解質膜の性能低下が顕著となる傾向にある。
Claims (6)
- 炭化水素系疎水性ポリマー(P)と、
一般式M1-xJxP2yO7z(式中、Mは、Sn、Ti、Si、Ge、Pb、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を表し、JはAl及び/又はInを表し、xは0.001〜0.5の範囲の数値を表し、y及びzは各々独立に0.9〜1.1の数値を表す。)で表されるピロリン酸金属塩(X)
とを含む電解質であって、
前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)と前記ピロリン酸金属塩(X)との質量比[(P)/(X)]が70/30〜10/90であることを特徴とする電解質。 - 前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)の90質量%以上が芳香族ビニル系重合体セグメント(A)及び柔軟性の脂肪族ビニル系重合体セグメント(B)を含み、当該重合体セグメント(A)及び(B)の質量比[(A)/(B)]が10/90〜50/50である、請求項1に記載の電解質。
- 前記炭化水素系疎水性ポリマー(P)が、水酸基、アミノ基及びチオール基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基を0.001〜0.1mmol/gの割合で有する、請求項1又は2に記載の電解質。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の電解質からなる電解質膜。
- 少なくとも請求項4に記載の電解質膜の両面に電極を配置してなる膜−電極接合体。
- 少なくとも請求項5に記載の膜−電極接合体の両面に導電性のセパレータ材を配置してなる燃料電池。
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