JP2011163971A - 回転体のレーザ超音波探傷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転体の回転を止めずに周方向に走査して表面探傷を行う。
【解決手段】一定速度で回転する検査対象物1に励起用パルスレーザ光を一定周波数で照射して検査対象物1の表面を伝播する超音波を繰り返し発生させると共に、励起用パルスレーザ光の照射位置7とは別の位置8で超音波による表面変位を励起用パルスレーザ光に同期させたレーザ干渉計を用いて測定し、測定波形の変化に基づいて超音波の伝播経路5途中における表面欠陥6を検出するものであり、検査対象物1に対する励起用パルスレーザ光の照射位置7及びレーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置8を固定すると共に、検査対象物1の回転周期Trと励起用パルスレーザ光の照射周期Tsとを相違させることで、検査対象物1の励起用パルスレーザ光によって励起される部位10とレーザ干渉計によって測定される部位11とを検査対象物1の周方向に徐々にずらして走査を行うようにする。
【選択図】図1
【解決手段】一定速度で回転する検査対象物1に励起用パルスレーザ光を一定周波数で照射して検査対象物1の表面を伝播する超音波を繰り返し発生させると共に、励起用パルスレーザ光の照射位置7とは別の位置8で超音波による表面変位を励起用パルスレーザ光に同期させたレーザ干渉計を用いて測定し、測定波形の変化に基づいて超音波の伝播経路5途中における表面欠陥6を検出するものであり、検査対象物1に対する励起用パルスレーザ光の照射位置7及びレーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置8を固定すると共に、検査対象物1の回転周期Trと励起用パルスレーザ光の照射周期Tsとを相違させることで、検査対象物1の励起用パルスレーザ光によって励起される部位10とレーザ干渉計によって測定される部位11とを検査対象物1の周方向に徐々にずらして走査を行うようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は、回転体のレーザ超音波探傷方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、回転体に対してその回転を止めずに周方向にレーザ光を走査させることができる回転体のレーザ超音波探傷方法に関するものである。
非接触で検査対象物表面の探傷を行うことが可能なレーザ超音波探傷方法として、例えば特許文献1に開示されたものがある。このレーザ超音波探傷方法を実施する装置を図27及び図28に示す。このレーザ超音波探傷装置では、検査対象物101の表面に超音波を発生させるパルスレーザ光を照射するパルス光線照射手段102と、検査対象物101にレーザ光を照射すると共に検査対象物101の表面を伝播した超音波によって変調された反射光線を受光する光線送受信手段103とを固定板104に固定し、レール105に沿って移動させることで走査を行っている。
しかしながら、上述のレーザ超音波探傷方法では、パルス光線照射手段102と光線送受信手段103とをレール105に沿って移動させることで走査を行うので、回転体に対してその回転を止めずに周方向に走査を行うことが困難である。
本発明は、回転体の回転を止めずに周方向に走査を行うことが可能なレーザ超音波探傷方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、請求項1記載の回転体のレーザ超音波探傷方法は、一定速度で回転する検査対象物に励起用パルスレーザ光を一定周波数で照射して検査対象物の表面を伝播する超音波を繰り返し発生させると共に、励起用パルスレーザ光の照射位置とは別の位置で超音波による表面変位を励起用パルスレーザ光に同期させたレーザ干渉計を用いて測定し、測定波形の変化に基づいて超音波の伝播経路途中における表面欠陥を検出するものであり、検査対象物に対する励起用パルスレーザ光の照射位置及びレーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置を固定すると共に、検査対象物の回転周期と励起用パルスレーザ光の照射周期とを相違させることで、検査対象物の励起用パルスレーザ光によって励起される部位とレーザ干渉計によって測定される部位とを検査対象物の周方向に徐々にずらして走査を行うものである。
照射された励起用パルスレーザ光が検査対象物に当たると超音波が発生し、検査対象物表面や検査対象物内を伝播する。レーザ干渉計は検査対象物の表面を伝播した超音波(表面波)による表面変位を測定する。表面波が亀裂などの表面欠陥を通過する場合、表面欠陥の深さに応じて高周波成分が減衰される。そのため、表面欠陥を通過した表面波の波形は変化する。この変化に基づいて検査対象物の表面欠陥を検出することができる。
検査対象物が回転している場合、検査対象物に対する励起用パルスレーザ光の照射位置を固定(検査対象物の回転軸との位置関係を一定に維持)し、検査対象物の回転に同期させて励起用パルスレーザ光を照射すると、励起用パルスレーザ光は常に検査対象物の同じ部位に当たることになる。本発明では検査対象物に対する励起用パルスレーザ光の照射位置を固定し、検査対象物の回転周期に対して励起用パルスレーザ光の照射周期をずらしているので、検査対象物の励起用パルスレーザ光によって励起される部位が周方向、即ち回転体の回転方向又は回転方向とは逆方向に徐々にずれることになる。また、検査対象物に対するレーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置を固定(検査対象物の回転軸との位置関係を一定に維持)し、励起用パルスレーザ光に同期してレーザ干渉計で測定を行うことで、検査対象物のレーザ干渉計によって測定される部位も周方向に徐々にずれることになる。そのため、測定される表面波の伝播経路即ち探傷領域も周方向に徐々に移動することになり、周方向に走査が行われることになる。検査対象物の回転周期と励起用パルスレーザ光の照射周期とのずれ量は、例えば走査間隔に応じて決定される。即ち、ずれ量を小さくすることで走査間隔が短くなって走査速度が遅くなり、ずれ量を大きくすることで走査間隔が長くなって走査速度が速くなる。
また、請求項2記載の回転体のレーザ超音波探傷方法は、走査によって収集された測定波形の高周波成分と低周波成分との強度比を求め、求めた強度比の変化に基づいて表面欠陥を検出するものである。
励起された表面波が表面欠陥を通過すると、その高周波成分が減衰されるので、高周波成分と低周波成分との強度比は表面欠陥を通過していない場合に比べて変化する。この変化に基づいて表面欠陥を検出することができる。
また、請求項3記載の回転体のレーザ超音波探傷方法は、走査によって収集された測定波形の中から比較基準となる参照波形を選択し、参照波形との差異の度合いに基づいて表面欠陥を検出するものである。
励起された表面波が表面欠陥を通過すると、その高周波成分が減衰されて表面波の波形が変化する。したがって、表面欠陥を通過していない場合の測定波形、即ち参照波形との差異の度合いが大きくなる。この差異の度合いに基づいて表面欠陥を検出することができる。
ここで、請求項4記載の回転体のレーザ超音波探傷方法のように、測定波形のうち最初に測定されたものを参照波形としても良く、また、請求項5記載の回転体のレーザ超音波探傷方法のように、測定波形のうち時系列における直前に測定されたものを参照波形としても良い。
さらに、請求項6記載の発明は、請求項2記載の回転体のレーザ超音波探傷方法において、表面欠陥を示す測定波形について高周波成分と低周波成分とに分ける境界周波数を変化させて繰り返し強度比を求め、求めた強度比の変化が最も急激なときの境界周波数に基づいて表面欠陥の深さを推定するものである。
表面欠陥を通過する際に減衰される表面波の周波数は表面欠陥の深さに応じて変化する。即ち、表面欠陥が浅ければ比較的高い周波数の表面波も通過できるが、表面欠陥の深さが深くなるにつれて透過できる表面波の周波数は低くなる。このように表面欠陥の深さと表面波の減衰される周波数との間には一定の関係がある。
いま、表面波が深さaの表面欠陥を通過する際に周波数f以上の高周波成分が減衰される場合、即ち表面欠陥の深さaに対応する周波数がfである場合を考える。ここで、実際には周波数fよりも低い周波数成分についても若干減衰されるため、表面欠陥による周波数成分の減衰の大きさは周波数fを境に大きく変化する。つまり、周波数fを境にそれよりも低周波領域では周波数成分の減衰は僅かであるが、高周波領域では周波数成分の減衰は大きくなる。したがって、表面欠陥を示す測定波形について境界周波数を変えながら高周波成分と低周波成分の強度比を繰り返し求め、求めた強度比を境界周波数の大きさ順に並べると、強度比の変化は境界周波数が周波数fのときに最も大きくなる。この周波数fは表面欠陥の深さaに対応するものであることから、強度比の変化が最も急激なときの境界周波数に基づいて表面欠陥の深さを推定することができる。
請求項1記載の回転体のレーザ超音波探傷方法では、検査対象物の励起用パルスレーザ光によって超音波が励起される部位(励起点)とレーザ干渉計によって測定される部位(測定点)を周方向に徐々にずらすことができるので、探傷領域を周方向に徐々に移動させて走査を行うことができる。即ち、回転体に対してその回転を利用して周方向の走査を行うことができる。特に回転速度が速い回転体についてはレーザ光を移動させることでの周方向走査は困難であるが、本発明ではレーザ光を移動させるのではなく、検査対象物の回転周期とレーザ光の照射周期とをずらすことで検査対象物の回転を利用して励起点と測定点を検査対象物に対して相対的に移動させて走査を行うので、たとえ高速で回転する回転体であっても周方向走査を行うことができる。
また、請求項2記載の回転体のレーザ超音波探傷方法では、測定波形の高周波成分と低周波成分との強度比の変化に基づいて表面欠陥を検出するので、検査対象物表面の局所的な傾斜等による影響を排除することができ、傷等の表面欠陥をより正確に検出することができる。即ち、回転する検査対象物表面の局所的な傾斜等はレーザ干渉計によって表面変位として測定され、測定信号の振幅変動となる。この振幅変動は測定波形の高周波成分と低周波成分との両方に同様に現れるので、高周波成分と低周波成分との強度比を求めることでキャンセルされる。その結果、高周波成分と低周波成分との強度比は表面欠陥による影響を強く反映したものとなり、表面欠陥の検出感度を向上させることができる。
また、請求項3記載の回転体のレーザ超音波探傷方法では、測定波形と参照波形との差異の度合いに基づいて表面欠陥を検出するので、検査対象物表面の局所的な傾斜等による影響を排除することができ、傷等の表面欠陥をより正確に検出することができる。即ち、回転する検査対象物表面の局所的な傾斜等はレーザ干渉計によって表面変位として測定され、測定信号の振幅変動となる。この振幅変動は参照波形と測定波形の両方に影響すると考えられるので、両者を比較することで表面欠陥を示す波形を区別することができ、表面欠陥の検出感度を向上させることができる。
ここで、請求項4記載の回転体のレーザ超音波探傷方法のように、測定波形のうち最初に測定されたものを参照波形としても良く、また、請求項5記載の回転体のレーザ超音波探傷方法のように、測定波形のうち時系列における直前に測定されたものを参照波形としても良い。
さらに、請求項6記載の回転体のレーザ超音波探傷方法では、表面欠陥を示す波形の高周波成分と低周波成分の強度比に基づいて表面欠陥の深さを推定するので、検査対象物の回転を止めずに表面欠陥の深さを推定することができる。
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に本発明の回転体のレーザ超音波探傷方法の実施形態の一例を示す。回転体のレーザ超音波探傷方法(以下、単にレーザ超音波探傷方法という)は、一定速度で回転する検査対象物1に励起用パルスレーザ光2を一定周波数で照射して検査対象物1の表面を伝播する超音波を繰り返し発生させると共に、励起用パルスレーザ光2の照射位置7とは別の位置8で超音波による表面変位を励起用パルスレーザ光2に同期させたレーザ干渉計3を用いて測定し(ステップS31)、測定波形4の変化に基づいて超音波の伝播経路5途中における表面欠陥6を検出する(ステップS32)ものである。測定では、検査対象物1に対する励起用パルスレーザ光2の照射位置7及びレーザ干渉計3の測定用レーザ光9の照射位置8を固定すると共に、検査対象物1の回転周期Trと励起用パルスレーザ光2の照射周期Tsとを相違させることで、検査対象物1の励起用パルスレーザ光2によって励起される部位10とレーザ干渉計3によって測定される部位11とを検査対象物1の周方向に徐々にずらして走査を行っている(図1)。
このレーザ超音波探傷方法が実施される装置の一例を図3に示す。この探傷装置12は、励起用パルスレーザ光2を検査対象物1に向けて照射する超音波発生用レーザ装置13と、超音波発生用レーザ装置13に同期して検査対象物1の表面変位を検出するレーザ干渉計3と、レーザ干渉計3によって測定された波形4を表示する表示装置14を備えている。
超音波発生用レーザ装置13としては検査対象物1に超音波を励起できるパルスレーザ光2を照射することができるものであれば使用可能であり、例えばNd:YAGレーザ,CO2レーザ,エキシマレーザ,チタンサファイアレーザ,窒素レーザ等の使用が可能である。超音波発生用レーザ装置13はパルスレーザ光2の照射周波数即ち照射周期Tsを任意に調節できる機能を有していることが好ましい。ただし、検査対象物1の回転速度即ち回転周期Trを調節できる場合にはパルスレーザ光の照射周波数の調節機能を有していない超音波発生用レーザ装置13を使用することも可能である。超音波発生用レーザ装置13から照射された励起用パルスレーザ光2は、光学系15によって案内されて検査対象物1の測定面1a上に集光される。本実施形態では、光学系15をミラー16,17と集光レンズ18によって構成している。ただし光学系15の構成はこれに限るものではない。励起用パルスレーザ光2の照射位置7は固定されている。即ち、照射位置7は検査対象物1の回転軸20との位置関係が一定に維持されている。
レーザ干渉計3は超音波発生用レーザ装置13のパルスレーザ光2の照射に同期して検査対象物1の測定面1aの表面変位を測定する。測定時間幅は例えば励起用パルスレーザ光2の照射前から照射後にわたり、調節可能である。レーザ干渉計3のファイバーヘッド3aは検査対象物1の測定面1aに対向して設けられ、測定用レーザ光9の照射位置8は固定されている。即ち、照射位置8は検査対象物1の回転軸20との位置関係が一定に維持されている。レーザ干渉計3の測定信号は例えばノイズフィルタ19を介して表示装置14に供給されている。
表示装置14は、例えばオシロスコープである。ただし、オシロスコープに限るものではなく、例えば高速デジタイザ(A/D変換器)等の使用も可能である。表示装置14は、測定データ等を記憶しておく記憶手段、同一の伝播経路5即ち探傷領域(以下、探傷領域5という)について複数の測定データの平均を表示する機能を備えていることが好ましい。
検査対象物1は一定速度で回転するものである。また、検査対象物1の材質は、励起用パルスレーザ光2の照射によって超音波が励起され、且つ表面変位をレーザ干渉計3によって測定できるものであれば特に制限されない。例えば金属,セラミック,半導体等について適用可能である。さらに、検査対象物1の形状は、測定面1aの少なくとも探傷を行う範囲の全てにおいて探傷領域5になった場合に超音波発生用レーザ装置13及びレーザ干渉計3に対する距離が同一になるものであれば良く、測定面1aは平面でも曲面でもいずれでも良い。例えば板状(図4),リング状(図5),棒状(図6),柱状(図7),筒状(図8)、球状(図9)等の回転体は勿論のこと、例えば測定面1aが途切れている形状の回転体(図10)についても適用可能である。また、回転軸20に対して垂直な面について探傷を行うことも、平行な面について探傷を行うことも可能である。また、非接触で表面探傷を行うので、高温の回転体についても適用可能である。
例えば、発電用タービンの軸・翼,回転機の回転軸,モータの回転軸,プロペラ,エンジン出力を伝える動力シャフト等を検査対象物1とすることができる。
レーザ超音波探傷方法は、励起用パルスレーザ光2の照射によって検査対象物1にその表面または内部を伝播する超音波を励起させ、励起点(検査対象物1の励起用パルスレーザ光2によって超音波が励起される部位10。以下、励起点10という。)から一定の離隔距離をおいた測定点(検査対象物1のレーザ干渉計3によって測定される部位11。以下、測定点11という。)においてレーザ干渉計3を用いて超音波を検出する。検査対象物1表面を伝播した表面波、あるいは検査対象物1内部を伝播し裏面から反射された縦波又は横波が測定点11に到達した際に微少変位が発生し、これをレーザ干渉計3によって測定する。
表面波を用いた表面探傷の原理を図11に模式的に示す。検査対象物1表面を伝播した表面波が亀裂などの表面欠陥6を通過した際、表面欠陥6の深さに応じて高周波成分が大きく減衰され波形が変化する。よって、表面欠陥6のない参照対象物(検査対象物1と同形状・同材料・同温度の測定対象であり、比較のためのもの)を測定した場合に得られる表面波波形(測定波形4)の周波数特性と検査対象物1を測定した場合に得られる表面波波形(測定波形4)の周波数特性を比較することにより、表面欠陥6の有無を判別できる。即ち、参照対象物の測定波形4に対する検査対象物1の測定波形4の相違部分が表面欠陥6に対応するものであり、この相違部分の有無に基づいて表面欠陥6の有無を判別することができる。
ここで、表面波の波長をL、表面欠陥6の深さがaであるとき、本発明は、例えばa<0.8Lの場合に適用可能である(検査対象物1が例えば鋼材等の場合)。レーザ光照射によって生じる表面波は周波数f=1MHz付近が最も強く、SUS等の鋼材の表面波の伝搬速度はおよそv=3000m/sであるため表面波の主成分の波長はL=v/f=3mmとなり、この場合には例えば深さ2.4mmまでの表面欠陥6が評価可能である。
図1に基づいて検査対象物1の周方向走査について説明する。本発明は検査対象物1の回転周期Trと励起用パルスレーザ光2の照射周期Tsとの間に相対的なずれを設けることで周方向に走査を行うようにしている。例えば、検査対象物1の回転周期Trよりも励起用パルスレーザ光2の照射周期Tsを若干短くした場合(Tr>Ts)、1回目のレーザ光照射(図1(a))が行われてから検査対象物1が1回転する直前に2回目のレーザ光照射が行われる(図1(b))。なお、図1において、当該周期における励起点10及び測定点11を●で示し、以前の周期における励起点10及び測定点11を○で示している。このように各点10,11が周方向に徐々に移動し、走査が行われる(図1(c))。ここで、TrとTsのずれ量は、検査対象物1を1周するための走査時間に応じて適宜決定される。
例えば、検査対象物1の回転数:N1回転/秒、励起用パルスレーザ光2の照射繰り返し数:N2/秒とすると、N1=N2では検査対象物1の回転速度と励起用パルスレーザ光2の照射周波数とが完全に同期し、各回転毎の励起点10及び測定点11は同一になる。また、N2=N1+0.1とすると、各回転毎に励起点10及び測定点11は周方向にずれ、10秒間で1周して元の部位に戻る。円周方向の走査時間(円周方向を1周するのに要する時間)をT秒としたい場合、N2=N1+1/Tとする。走査速度があまり遅すぎると1周するのに時間がかかり過ぎて運用上不便であり、逆に、速過ぎると表面欠陥6を見落とすことになる(励起用パルスレーザ光2を照射していない間に表面欠陥6が探傷領域5を通過する)。
検査対象物1の回転数をN1/秒、励起用パルスレーザ光2の照射繰り返し数をN2/秒、探傷領域5の回転軸20からの距離をrとすると、励起用パルスレーザ光2の照射間隔は1/N2秒、その間に励起点10が動く距離dは数式1になる。
[数1]
d=vt=ωrt=2πN1r/N2
[数1]
d=vt=ωrt=2πN1r/N2
ここで、N1=N2であるとd=2πrとなり、丁度1周したことになる。また、少々周期をずれらして、N2=N1+1/Tであると、数式2となり、丁度1周(2πr)からの変位ΔはΔ=2πr/N1Tとなる。
[数2]
d=2πN1r/(N1+1/T)
=2πr/(1+1/N1T)
≒2πr−2πr/N1T
[数2]
d=2πN1r/(N1+1/T)
=2πr/(1+1/N1T)
≒2πr−2πr/N1T
よって、解像度(探傷箇所の走査間隔)が決まっていれば、これをΔとして、T=2πr/ΔN1となる。例えばd=1mm、r=10cm、N1=60Hzの場合には、T=2π(10)/(0.1)(60)=62.8/6=10.4秒になる(約10秒で一周)。また、励起用パルスレーザ光2の照射繰り返し周波数は、N2=N1+1/T=60+1/10.4=60.096Hzとなる。よって、TrとTsのずれ量は探傷領域5の回転軸20からの距離r、希望する解像度dで決まるとも言える。
なお、上述の説明ではTr>Tsとしているが、Tr<Tsとしても良い。また、検査対象物1が約1回転する毎に励起用パルスレーザ光2を1ショットずつ打つようにしているが、約1回転毎に1ショットずつ打つ必要はなく、例えば約2回転毎に1ショットずつ打つようにしても良く、約n回転毎に1ショットずつ(n=3,4,…)打つようにしても良い。
なお、励起用パルスレーザ光2は検査対象物の表面を伝播する表面波を選択的に励起するために線状に照射することが望ましいが、点状にしても良い。線状に照射する手段としては、光学系15に円柱レンズを用いることが考えられる。なお、検査対象物1の回転によって実際には測定点11は曲線状になる。
レーザ干渉計3の測定データは例えばノイズフィルタ19を介して表示装置14に供給される。表示装置14はレーザ干渉計3の測定波形4を表示する。検査員は表示された測定波形4の変化に基づいて表面欠陥6の有無を判別することができる。このとき、単に表面欠陥6の有無を判別するだけでも良いが、測定波形4と探傷領域5は1対1に対応することから表面欠陥6が存在する探傷領域5を特定することもでき、測定面1aのどこに表面欠陥6が存在するか特定できる。
ここで、励起用パルスレーザ光2によって励起された超音波は励起点10を中心に四方八方に伝播し、また、検査対象物1の表面だけではなく内部へも伝播する。したがって、レーザ干渉計3の測定波形4には、探傷領域5のみを伝播した超音波だけでなく、例えば検査対象物1内を伝播して裏面で反射された超音波、表面を伝播して検査対象物1の端で反射された超音波等も含まれる(図19参照)。したがって、測定波形4のうち判断の対象となる部分(対象波形部分)21を特定する必要がある。本実施形態では、励起点10と測定点11との間の距離(探傷領域5の距離)、検査対象物1の材質、検査対象物1の温度等を考慮して探傷領域5を通過してきた表面波の到達時間を求め、この時間帯の波形を対象波形部分21とする。例えば、励起用パルスレーザ光2の照射後、時間t経過後に表面波が測定点11に到達する場合には、時間tを挟んでその前後所定時間内に測定された波形を対象にする。
検査員は検査対象物1の測定波形4の対象波形部分21と予め測定しておいた参照対象物の測定波形4の対象波形部分21との相違に基づいて、または検査対象物1の表面欠陥6が無いことが判明している探傷領域5についての測定波形4の対象波形部分21との相違に基づいて表面欠陥6の有無を判別しても良いが、本実施形態では、走査によって収集された測定波形4の高周波成分と低周波成分との強度比を求め、求めた強度比の変化に基づいて表面欠陥6を検出する。その概念を図12に示す。
先ず、ステップS41では、分析の対象となる測定波形4の対象波形部分21を特定する。次に、対象波形部分21の高周波成分の強度と低周波成分の強度を求める(ステップS42)。このとき、高周波側の周波数成分のみが表面欠陥6の通過によって減衰されるように、あるいは低周波側の周波数成分よりも高周波側の周波数成分がより多く減衰されるように境界周波数を設定し、境界周波数よりも高い周波数成分を高周波成分とし、境界周波数よりも低い周波数成分を低周波成分とする。なお、境界周波数と同一の周波数成分は高周波成分と低周波成分のいずれに含めても良い。例えば、表面欠陥6の深さが1mmの場合には1MHzよりも高い周波数成分が減衰されるので、この場合には1MHzを境界周波数として高周波成分と低周波成分とに分けることが好ましい。
次に、高周波成分と低周波成分との強度比を求め、表面欠陥6以外の影響を除去する(ステップS43)。検査対象物1の測定面1aの局所的な傾斜等はレーザ干渉計3によって表面変位として測定され、測定信号の振幅変動となる。この振幅変動は測定波形4の高周波成分と低周波成分との両方に同様に現れるので、高周波成分と低周波成分との強度比を求めることで測定ノイズをキャンセルすることができる。
本実施形態では、高周波成分の強度を低周波成分の強度で割ることで強度比(=高周波成分の強度÷低周波成分の強度)を求めている。このようにする理由は以下の通りである。即ち、表面欠陥6による影響は高周波成分の方により大きく現れるので、高周波成分の強度の方が低周波成分の強度よりも変動する傾向にある。比を算出する場合、変動が少ない方を分母にした方が結果が安定する傾向にある。したがって、本実施形態では高周波成分の強度を低周波成分の強度で割るようにし、算出結果がより安定したものとなるようにしている。ただし、必ずしもこれに限るものではなく、低周波成分の強度を高周波成分の強度で割る(強度比=低周波成分の強度÷高周波成分の強度)ようにしても良く、この場合にも測定ノイズのキャンセルは可能である。
次のステップS44では、求めた強度比に基づいて表面欠陥6の有無を判別する。いま、強度比=高周波成分の強度÷低周波成分の強度としているので、表面波が表面欠陥6を通過することで強度比は減少する。したがって、検査員は強度比の減少に基づいて表面欠陥6を検出することができる。
本実施形態では、強度比の減少を予め定めておいた閾値との比較によって判断する。閾値は、例えば表面欠陥6が存在していないことが明らかな測定波形4について強度比を求め、この強度比と表面欠陥6が存在している場合の強度比とを区別できるように設定する。
また、閾値は1つに限らず、複数設定しても良い。例えば、強度比の平均値μや標準偏差σを求め、これらに基づいて設定した閾値と、強度比の値に基づいて設定した閾値とを併用しても良い。例えば、第1の閾値:μ−σ、第2の閾値:強度比0.5とし、第1の閾値以下且つ第2の閾値以下の場合に表面欠陥6が存在すると判断するようにしても良い。
なお、強度比=低周波成分の強度÷高周波成分の強度とした場合には、表面波が表面欠陥6を通過することで強度比が増加するので、強度比の増加に基づいて表面欠陥6を検出することができる。
このように本実施形態では、測定ノイズをキャンセルして表面欠陥6以外の影響を排除することができるので、より正確に表面欠陥6を検出することできる。
また、本実施形態では、走査によって収集した測定波形4と参照対象物の測定波形4との比較を行わずに表面欠陥6を検出することができるので、参照対象物について測定を予め行っていなくても表面欠陥6の有無を判別することができる。
本発明では、例えば発電用タービンのような回転体について、その運転を止めることなく表面探傷を行うことができる。したがって、定期点検等を待たずに亀裂等の表面欠陥6の発生を迅速に検出することができる。
なお上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、上述の説明では、単に表面欠陥6を検出するだけであったが、表面欠陥6の深さを推定することも可能である。例えば、図13に示すように、表面欠陥6を示す測定波形4について高周波成分と低周波成分とに分ける境界周波数を変化させながら繰り返し高周波成分と低周波成分の強度比を求め、求めた強度比の変化が最も急激なときの境界周波数に基づいて表面欠陥6の深さを推定する(ステップS45)ことも可能である。なお、図12のステップと同一のステップには同一の符号を付し、その説明を省略する。
表面欠陥6を通過する際に減衰される表面波の周波数は表面欠陥6の深さに応じて変化する。即ち、表面欠陥6が浅ければ比較的高い周波数の表面波も通過できるが、表面欠陥6の深さが深くなるにつれて透過できる表面波の周波数は低くなる。このように表面欠陥6の深さと表面波の減衰される周波数との間には一定の関係がある。
いま、表面波が深さaの表面欠陥6を通過する際に周波数f以上の高周波成分が減衰される場合、即ち表面欠陥6の深さaに対応する周波数がfである場合を考える。ここで、実際には周波数fよりも低い周波数成分についても若干減衰されるため、表面欠陥6による周波数成分の減衰の大きさは周波数fを境に大きく変化する。つまり、周波数fを境にそれよりも低周波領域では周波数成分の減衰は僅かであるが、高周波領域では周波数成分の減衰は大きくなる。したがって、表面欠陥6を示す測定波形4について境界周波数を変えながら高周波成分と低周波成分の強度比を繰り返し求め、求めた強度比を境界周波数の大きさ順に並べると、強度比の変化は境界周波数が周波数fのときに最も大きくなる。この周波数fは表面欠陥6の深さaに対応するものであることから、強度比の変化が最も急激なときの境界周波数に基づいて表面欠陥の深さを推定することができる。
なお、周波数に基づいて表面欠陥6の深さaを求める方法については公知の方法を利用することから、ここではその説明を省略する。
本実施形態では、例えば発電用タービンの回転軸のような回転体について、その運転を止めることなく表面欠陥6の深さを測定することができる。例えば、発電用タービンの回転軸に表面欠陥6が存在することが判っている場合、その表面欠陥6が安全上問題にならない程度の微小なものであれば使用が継続される。ただし、表面欠陥6を継続観察する必要がある。継続観察を行う場合、検査の度に発電用タービンの運転をいちいち止めていたのでは効率が悪く、経済的、実用的ではない。本実施形態では、回転している状態で表面欠陥6の深さを測定することができるので、深さ測定のために発電用タービンの運転をいちいち止める必要がなく、大変効率的である。
また、上述の説明では、表面欠陥6以外の影響を除去するために高周波成分と低周波成分の強度比を求めていたが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、図14に示すように、走査によって収集された測定波形4の中から比較基準となる参照波形を選択し(ステップS52)、参照波形と測定波形4との差異の度合いに基づいて表面欠陥6を検出する(ステップS53,S54)ようにしても良い。
まず、ステップS51では、走査によって収集された測定波形4の中から1つの参照波形を選択する。ここでは、測定波形4のうち最初に測定したものに対応する探傷領域5には表面欠陥6が存在していないと仮定し、最初に測定した測定波形4を参照波形にしている。ただし、必ずしも最初に測定した測定波形4を参照波形にする必要はなく、対応する探傷領域5に表面欠陥6が存在しない測定波形4であれば、例えば2番目に測定した測定波形4でも、3番目に測定した測定波形4でも、あるいはその他の測定波形4でも良い。なお、参照波形をいったん決定した後でその測定波形4に表面欠陥6が存在することが判明した場合には、別の測定波形4を参照波形にして処理をやり直す。
次に、参照波形と測定波形4について対象波形部分21を特定し(ステップS52)、参照波形の対象波形部分21と測定波形4の対象波形部分21との差異の度合いを求める(ステップS53)。いま、検査対象物1の測定面1aの状態は表面欠陥6を除くとほぼ均一であると考えられることから、探傷領域5に表面欠陥6が存在しない場合の測定波形4の対象波形部分21は参照波形の対象波形部分21とほぼ同じになると考えられる。したがって、この場合には、差異の度合いが小さいことになる。一方、探傷領域5に表面欠陥6が存在している場合の測定波形4の対象波形部分21は表面欠陥6の影響によって参照波形の対象波形部分21と大きく異なることから、参照波形の対象波形部分21との差異の度合いが大きくなる。したがって、検査員は差異の度合いの増加に基づいて表面欠陥6を検出することができる。
本実施形態では、差異の度合いの増加を予め定めておいた閾値との比較によって判断する。閾値は、例えば表面欠陥6が存在していないことが明らかな測定波形4と参照波形との比較より差異の度合いを求め、この差異の度合いと表面欠陥6が存在している場合の差異の度合いとを区別できるように決定する。
また、閾値は1つに限らず、複数設定しても良い。例えば、差異の度合いの平均値μや標準偏差σを求め、これらに基づいて設定した閾値と、差異の度合いの値に基づいて設定した閾値とを併用しても良い。例えば、第1の閾値:μ+σ、第2の閾値:差異の度合い(例えばコントラスト関数)10とし、第1の閾値以上且つ第2の閾値以上の場合に表面欠陥6が存在すると判断するようにしても良い。
差異の度合いとしては、例えば数式3で定義されるコントラスト関数Ciを採用することができる。ここで、yr(t):参照波形、yi(t):測定波形4、i=1,2,…,n(nは測定波形4の測定数)、j=1,2,…,n(nは測定波形4の測定数)である。
また、差異の度合いとして、例えば相関係数等を採用しても良い。
このように本実施形態では、表面欠陥6が存在しない測定波形4(参照波形)との比較によって表面欠陥6を検出するので、より正確に表面欠陥6を検出することができる。
また、上述の図14のステップS51では、最初に測定した(n番目に測定した)測定波形4を参照波形としていたが、必ずしもこれに限るものではなく、例えば時系列における直前に測定された測定波形4、即ちn番目の測定波形4に対して(n−1)番目の測定波形4を参照波形にしても良い(探傷領域5が隣り合う場合)。(n−1)番目の測定波形4に対応する探傷領域5に表面欠陥6が存在せず、n番目の測定波形4に対応する探傷領域5に表面欠陥6が存在する場合には差異の度合いが増加するので、検査員は表面欠陥6を検出することができる。
探傷領域5が隣り合う場合、表面欠陥6の有無を除けば測定面1aの状態は類似していると考えられる。したがって、表面欠陥6の有無によって差異の度合いが大きく変化するので、表面欠陥6をより正確に検出することができる。
また、検査対象物1の測定面1aが回転軸20に対して垂直な面である場合には、本発明の周方向の走査を、径方向の走査と組み合わせても良い。即ち、励起用パルスレーザ光2の照射位置7と測定用レーザ光9の照射位置8を検査対象物1の径方向に移動させる走査手段によって案内するようにしても良い。
図15に、径方向の走査と組み合わせる場合の例を示す。径方向走査手段22は、例えば超音波発生用レーザ装置13と図示しない光学系15とレーザ干渉計3が取り付けられたスライダ23と、スライダ23を検査対象物1の測定面1aに沿って径方向に案内するガイド24と、スライダ23をガイド24に沿って移動させる図示しないモータ等の駆動手段より構成されている。駆動手段によってスライダ23をガイド24に沿って移動させることで、超音波発生用レーザ装置13及びレーザ干渉計3を検査対象物1の径方向に移動させることができるので、励起用パルスレーザ光2の照射位置7と測定用レーザ光9の照射位置8を径方向に走査することができる。
ただし、径方向走査手段22の構成はこれに限るものではなく、例えば光学系によってレーザ光2,9の照射方向を変化させることで径方向走査を行っても良く、その他公知の構成によって径方向走査を行うようにしても良い。
径方向走査手段22を停止させた状態で周方向の走査を行う。そして周方向の走査が終わると、径方向走査手段22を作動させてスライダ23を隣の周方向走査位置に移動させる。そしてスライダ23を停止させた後、次の周方向走査を行う。このように周方向走査と径方向走査を交互に行うことで測定面1aを平面的に走査することができる。
また、検査対象物1の測定面1aが回転軸20に平行な面である場合には、本発明の周方向の走査を、回転軸方向の走査と組み合わせても良い。即ち、励起用パルスレーザ光2の照射位置7と測定用レーザ光9の照射位置8を検査対象物1の回転軸20方向に移動させる走査手段によって案内するようにしても良い。
図16に、回転軸方向の走査と組み合わせる場合の例を示す。回転軸方向走査手段25は、例えば超音波発生用レーザ装置13と図示しない光学系15とレーザ干渉計3が取り付けられたスライダ26と、スライダ26を検査対象物1の測定面1aに沿って回転軸20方向に案内するガイド27と、スライダ26をガイド27に沿って移動させる図示しないモータ等の駆動手段より構成されている。駆動手段によってスライダ26をガイド27に沿って移動させることで、超音波発生用レーザ装置13及びレーザ干渉計3を検査対象物1の回転軸方向に移動させることができるので、励起用パルスレーザ光2の照射位置7と測定用レーザ光9の照射位置8を回転軸方向に走査することができる。
ただし、回転軸方向走査手段25の構成はこれに限るものではなく、例えば光学系によってレーザ光2,9の照射方向を変化させることで回転軸方向走査を行っても良く、その他公知の構成によって回転軸方向走査を行うようにしても良い。
回転軸方向走査手段25を停止させた状態で周方向の走査を行う。そして周方向の走査が終わると、回転軸方向走査手段25を作動させてスライダ26を隣の周方向走査位置に移動させる。そしてスライダ26を停止させた後、次の周方向走査を行う。このように周方向走査と回転軸方向走査を交互に行うことで測定面1aを平面的に走査することができる。
また、検査対象物1を回転させる手段を設け、回転体でない検査対象物1を回転させてレーザ超音波探傷を行うようにしても良い。回転手段としては、検査対象物1を保持するホルダと、ホルダを一定速度で回転させる駆動手段とを備え、回転速度を調節できることが好ましい。
回転体の表面欠陥6の検出についての実験を行った。
(1.装置構成)
実験は、図3に示すレーザ超音波探傷装置12を用いて行った。超音波発生用レーザ装置13として、波長532nm、パルス幅10ns、繰り返し周波数20Hz(照射周期Ts:0.05s)、最大エネルギー120mJ/パルスのNd:YAGレーザ(Big Sky Laser製CFR200)を用い、超音波測定用レーザ干渉計3として波長1064nmの二光波混合型干渉計(Tecnar製TWM)を用いた。レーザ干渉計3の出力信号を周波数帯域500kHz〜10MHzのノイズフィルタ19(エヌエフ電子製FY−628S)を介して表示装置14としてのデジタルオシロスコープ(Tektronix製TDS5054)で測定した。超音波発生用レーザの照射位置7とレーザ干渉計3の照射位置8の離隔距離は約10mmとした。
実験は、図3に示すレーザ超音波探傷装置12を用いて行った。超音波発生用レーザ装置13として、波長532nm、パルス幅10ns、繰り返し周波数20Hz(照射周期Ts:0.05s)、最大エネルギー120mJ/パルスのNd:YAGレーザ(Big Sky Laser製CFR200)を用い、超音波測定用レーザ干渉計3として波長1064nmの二光波混合型干渉計(Tecnar製TWM)を用いた。レーザ干渉計3の出力信号を周波数帯域500kHz〜10MHzのノイズフィルタ19(エヌエフ電子製FY−628S)を介して表示装置14としてのデジタルオシロスコープ(Tektronix製TDS5054)で測定した。超音波発生用レーザの照射位置7とレーザ干渉計3の照射位置8の離隔距離は約10mmとした。
検査対象物1を模擬した試験体(以下、試験体1という)は電動モータ(オリエンタルモーター製US560−001U)に接続されたシャフトの先端に取り付け、1200rpm(回転周期0.05s)に近い回転速度で回転させた。試験体1は図17に示すように直径60mm、厚さ10mmであり、表面(測定面1a)に径方向および円周接線方向(以下、円周方向という)に深さ1mm、幅0.2mm以下のスリットを施した。当該スリットは表面欠陥6を模擬したものである(以下、スリット6という)。試験体1の材質はSUS316である。
(2.実験結果)
(2−1 連続波形測定結果)
ここで、超音波発生用レーザ装置13の励起用パルスレーザ光2の繰り返し周波数(換言すると照射周期Ts)と試験体1の回転速度(換言すると回転周期Tr)を若干ずらすと、励起点10は試験体1の測定面1aの任意点に対して時間経過とともに徐々にずれて行き、同一径において円周方向を周回する結果となる。一例として、励起用パルスレーザ光2の繰り返し周波数が20Hz(回転速度にすると1200rpm)、試験体1の回転速度が1201rpmであれば、照射点は1分間で円周方向を一周する。よって、励起用パルスレーザ光2の照射位置7を固定して表面波波形を連続測定すると励起用パルスレーザ光2を円周方向に走査した場合と同じ結果が得られる。円周方向スリット6を対象とした場合の、レーザ照射時におけるスリット6位置の移動を図18に模式的に示す。
(2−1 連続波形測定結果)
ここで、超音波発生用レーザ装置13の励起用パルスレーザ光2の繰り返し周波数(換言すると照射周期Ts)と試験体1の回転速度(換言すると回転周期Tr)を若干ずらすと、励起点10は試験体1の測定面1aの任意点に対して時間経過とともに徐々にずれて行き、同一径において円周方向を周回する結果となる。一例として、励起用パルスレーザ光2の繰り返し周波数が20Hz(回転速度にすると1200rpm)、試験体1の回転速度が1201rpmであれば、照射点は1分間で円周方向を一周する。よって、励起用パルスレーザ光2の照射位置7を固定して表面波波形を連続測定すると励起用パルスレーザ光2を円周方向に走査した場合と同じ結果が得られる。円周方向スリット6を対象とした場合の、レーザ照射時におけるスリット6位置の移動を図18に模式的に示す。
ここでは試験体1の回転速度を励起用パルスレーザ光2の繰り返し周波数に対する同期状態から若干ずらし、約10〜20秒でスリット6が1周して同位置に再び戻ってくるように調整した。表面波波形は1秒間隔で100回測定した。励起用パルスレーザ光2照射時間に対して−1〜+9μs内において得られた測定波形4の時間系列を図19に示す。なお、図19では、見やすくするために測定波形4を縦方向にずらして表示している。探傷領域5を通過した表面波が測定されるのは時間3μs付近であり、この時間帯に大きな窪み、すなわち波形振幅の減衰が9回あることから、時間系列を取得するのに要した100秒間にスリット6は探傷領域5を9回通過したことが判る。
また、スリット6が探傷領域5外にある場合(以下、スリット6なしの場合という)と探傷領域5内にある場合(以下、スリット6ありの場合という)の表面波波形を抽出した結果を図20に示す。スリット6なしの場合については測定波形4のうち窪みに対応しない波形の一例、スリット6ありの場合については測定波形4のうち窪みに対応する波形の一例である。図20において、スリット6なしの場合の波形を上に、スリット6ありの場合の波形を下に示している。両者を比べると、スリット6なしの場合では、探傷領域5を通過した表面波が測定される時間帯である3μs付近の波形(対象波形部分21)が比較的鋭い形状を成しているのに対し、スリット6ありの場合では、時間3μs付近の波形は比較的鈍った形状を成している。これは、表面波の高周波成分がスリット6の通過によって減衰されたことに起因すると考えられる。
したがって、対象波形部分21の形状変化に基づいて表面欠陥6を検出できることを確認できた。
(2−2 周波数解析)
次に、スリット6をより正確に検出できることを確認するために、図19に示した測定波形4の周波数解析を行った。時間3.9μs付近に試験体1の裏面から反射した縦波が現れたため、表面波の周波数解析には図19において点線の枠Fで示した時間領域1.0〜3.8μs(対象波形部分21)を対象に周波数解析を行った(図12のステップS41)。
次に、スリット6をより正確に検出できることを確認するために、図19に示した測定波形4の周波数解析を行った。時間3.9μs付近に試験体1の裏面から反射した縦波が現れたため、表面波の周波数解析には図19において点線の枠Fで示した時間領域1.0〜3.8μs(対象波形部分21)を対象に周波数解析を行った(図12のステップS41)。
スリット6を通過した表面波は高周波成分がより大きく減衰することを考慮し、周波数1MHz(境界周波数)以下の成分(0.36〜0.71MHz:低周波成分)と1MHz以上の成分(1.43〜1.79MHz:高周波成分)の強度を求めた(図12のステップS42)。なお、高速フーリエ変換の際に0.36MHz間隔で結果が出力され、1MHzを境にそれよりも低い2点と高い2点を採用したため、周波数の範囲が上述のようになっている。その結果を図21に示す。図21(a)は低周波成分を示し、(b)は高周波成分を示している。図中の縦線はスリット6が探傷領域5を通過した時間を、横線は100個の波形の周波数成分の平均値μ、標準偏差σをもとに求めたμ、μ±σ、μ±2σの値を示している。黒色の矢印はスリット6の存在によって期待される効果の方向を示している。
図21(a)に示した0.36〜0.71MHzの成分強度の変動とスリット6の有無の間には殆んど相関が認められない。スリット6通過後(図中の縦線の右側)では一貫して強度が増加しているが、これは試験体1の表面状態の不均一性に起因している。つまり、試験体1の反射率は均一でないため、反射率の高い箇所ではレーザ干渉計3の感度が高くなり、測定波形4の振幅が大きくなり、周波数成分も増加する。
図21(b)に示した1.43〜1.79MHzの成分強度の変動とスリット6の有無にはある程度の相関が認められ、スリット6の検出条件をμ−σ以下とすると9回のうち8回検出できている(図中の破線の丸印)。しかしながら、スリット6が存在しない場合でもμ−σ以下となる点は同数程度あるため、この周波数スペクトル強度のみに基づいてスリット6の有無を判別するのは困難であることが分かる。また、図21(a)と同様に、スリット6通過後に表面状態の不均一性に起因する強度増加が見られる。
以上の結果から、0.36〜0.71MHzの低周波成分はスリット6の存在に依存せず、表面状態のみを反映し、1.43〜1.79MHzの高周波成分はスリット6の存在と表面状態の両方に依存するが分かった。よって、高周波成分を低周波成分で規格化することにより表面状態の影響の除去、スリット6の検出感度の向上が期待できる。図21(b)の1.43〜1.79MHz成分を図21(a)の0.36〜0.71MHz成分で除算して求めた強度比を図22に示す(図12のステップS43)。図22ではスリット6の有無と良好な相関が得られており、検出基準(閾値)をμ−σとすると、スリット6の通過が9回全て検出できており、誤検出も無い(図12のステップS44)。以上の結果から、試験体1表面の不均一性に影響されずに、表面欠陥6の有無を判別するには周波数成分強度比を求めるのが有効な手段であることが示された。
(2−3 波形相関)
次に、周波数解析とは別の方法として、波形の違いからスリット6の有無を判別する方法についても検討を行った。
次に、周波数解析とは別の方法として、波形の違いからスリット6の有無を判別する方法についても検討を行った。
(2−3−1 相関関数)
まず、参照波形yr(t)と測定波形yi(t)(i=1,2,…,100)の相関関数を算出した。二つの波形の相関関数は波形が同一の場合は+1、片方が反転した場合は−1、相関が全くない場合は0となる。ここで、参照波形として、スリット6が探傷領域5にない場合の任意の波形(ここではt=0における第1波形y1(t))、あるいは時系列における直前の波形(yi(t)に対してyi−1(t)、i=1の場合はy1(t))とした。どちらの場合もt=0においては参照波形と測定波形4が同一になるため、相関係数は1となる。スリット6が探傷領域5にある場合は波形が変化するため、相関関数の低下が予想される。
まず、参照波形yr(t)と測定波形yi(t)(i=1,2,…,100)の相関関数を算出した。二つの波形の相関関数は波形が同一の場合は+1、片方が反転した場合は−1、相関が全くない場合は0となる。ここで、参照波形として、スリット6が探傷領域5にない場合の任意の波形(ここではt=0における第1波形y1(t))、あるいは時系列における直前の波形(yi(t)に対してyi−1(t)、i=1の場合はy1(t))とした。どちらの場合もt=0においては参照波形と測定波形4が同一になるため、相関係数は1となる。スリット6が探傷領域5にある場合は波形が変化するため、相関関数の低下が予想される。
図19の時間領域1.0〜3.8μs内の測定波形4(対象波形部分21)を対象に相関関数を算出した結果を図23に示す。図23(a)は参照波形に第1波形(最初に測定された波形)を用いた場合、図23(b)は時系列における直前波形(直前に測定された波形)を用いた場合である。図23(a)においてはスリット6の検出回数はμ−σを基準(閾値)として4回に止まっており、t<20sにおいては同基準での誤検出(×印)が複数回ある。よって、一定の参照波形を用いた相関関数はスリット6の有無の判断方法としては適していない。図23(b)においてはスリット6に関する感度が向上し、μ−σを基準とした場合8回検出されており、誤検出もない。しかし、ここではスリット6検出に対応する下向きのピークが複数点にわたることから、スリット6検出の時間分解能が若干低下していることが分かる。
ただし、スリット6検出の精度や時間分解能を落としてもかまわない場合には、相関関数の使用もスリット6の有無を判別するために有効な手段であるといえる。
(2−3−2 コントラスト関数)
相関係数とは異なる指標として、二つの波形の差異に基づくコントラストについても検討を行った。ここで、参照波形yr(t)と測定波形4yi(t)のコントラスト関数Ciを数式4のように定義した。本関数は参照波形と測定波形4の差異の度合いを表し、同一波形では0となり、相対的に異なる波形では高い値をとる。また、コントラスト関数の算出では波形の和で除算するため、振幅に対する規格化が行え、これによって振幅のばらつきの影響が抑制できる。
相関係数とは異なる指標として、二つの波形の差異に基づくコントラストについても検討を行った。ここで、参照波形yr(t)と測定波形4yi(t)のコントラスト関数Ciを数式4のように定義した。本関数は参照波形と測定波形4の差異の度合いを表し、同一波形では0となり、相対的に異なる波形では高い値をとる。また、コントラスト関数の算出では波形の和で除算するため、振幅に対する規格化が行え、これによって振幅のばらつきの影響が抑制できる。
図19の時間領域1.0〜3.8μsの波形(測定波形4の対象波形部分21)に関してコントラスト関数を算出した結果を図24に示す。図24(a)は参照波形に第1波形(最初に測定された波形)を用いた場合、図24(b)は時系列における直前波形(直前に測定された波形)を用いた場合である。いずれの場合においてもスリット6に対して良好な感度が得られ、μ+σを判断基準(閾値)とした場合、図24(a)では9回全て、図24(b)では8回検出されている(図14のステップS51〜S54)。
以上の結果から、コントラスト関数もスリット6の有無を判別するために有効な手段であることが分かった。
(2−3−3 畳み込み積分)
畳み込み積分も二つの波形の相関を算出するのに頻繁に用いられる。参照波形をyr(tj)、測定波形4をyi(tj)とした場合、畳み込み積分wiは数式5によって与えられる。
畳み込み積分も二つの波形の相関を算出するのに頻繁に用いられる。参照波形をyr(tj)、測定波形4をyi(tj)とした場合、畳み込み積分wiは数式5によって与えられる。
しかし、表面状態の不均一性によって波形の振幅が変動した場合、wiは二つの波形yr(t), yi(t)の積によって与えられるため変動は増幅される形となり、スリット6の有無による波形の差異を見分けるのが困難となる。よって、畳み込み積分はスリット6検出には不適であるため、ここでは検討対象としなかった。
(2−4 結果比較)
周波数解析、波形相関に基づく波形処理の結果を表1にまとめて示す。ここで検討した処理法では、周波数成分強度比とコントラスト関数が検出率の高さ、誤検出率の低さにおいて最良であったと言える。相関関数に関しては、直前に得られた波形を参照波形に用いることで検出率が向上したが、前述の通り時間分解能の低下の課題が残る。
周波数解析、波形相関に基づく波形処理の結果を表1にまとめて示す。ここで検討した処理法では、周波数成分強度比とコントラスト関数が検出率の高さ、誤検出率の低さにおいて最良であったと言える。相関関数に関しては、直前に得られた波形を参照波形に用いることで検出率が向上したが、前述の通り時間分解能の低下の課題が残る。
なお、1σ判定(又は2σ判定)では、スリット6の存在によって増加するコントラスト関数においてはμ+σ以上(又はμ+2σ以上)を判定基準とし、スリット6の存在によって減少するその他の指標についてはμ−σ以下(又はμ−2σ以下)を判定基準とした。検出回数、未検出回数はスリット6が探傷領域5を合計9回通過した際の数値、誤検出回数はスリット6が通過していない場合に判定基準を満たした回数である。
また、ここでは測定値の平均値μ、標準偏差σに基づく判定を行ったが、スリット6が存在しない場合でも偏差は存在する。よって、実用面においては、大きい偏差値(例えばμ−σ以下)の指標が得られた場合、これが閾値(絶対値)を下回る場合のみ、スリット6が存在すると判定すべきである。例えば、周波数成分強度比を用いる場合、図22においてスリット6が無い箇所においては強度比は0.6以上となっているため、連続測定を行ったときの強度比がμ−σ(第1の閾値)以下、かつ0.5(第2の閾値)以下となった場合にスリット6が有ると判定すれば良い。相関関数に関してはμ−σ(第1の閾値)以下かつ0.9(第2の閾値)以下、コントラスト関数に関してはμ+σ(第1の閾値)以上かつ10(第2の閾値)以上などの条件とすれば良い。これらの閾値は試験体1によって異なるため、その都度表面欠陥6が無い場所を探傷し、指標の分布を基に決定することが好ましい。
(3.高温における表面探傷)
(3−1 実験条件)
次に、本手法の高温部品への適用性を明らかにするために、試験体1を高温環境下で回転させ、探傷実験を行った。
(3−1 実験条件)
次に、本手法の高温部品への適用性を明らかにするために、試験体1を高温環境下で回転させ、探傷実験を行った。
図17に示した試験体1を電気炉(アルバック理工製RHL−P1210CP)内に設置した。電気炉は出力2kWのヒータを12本有し、放物面反射赤外線輻射加熱により試験体を室温から1000℃まで昇温できる。ここでは炉内温度を室温〜500℃の範囲で変化させ、室温,100℃,250℃,500℃において表面波の波形を連続測定した。測定条件は前述の探傷実験の場合と同様に,積分時間1sにて波形を100回測定した。
(3−2 連続測定結果及び解析結果)
図25に示した波形群に対し、上記2−2節と同様に周波数解析を行い、0.36〜0.71MHz成分に対する1.43〜1.79MHz成分の強度比を求めた。結果を図26に示す。図26中の縦線はスリット6が探傷領域5を通過した時間を示す。図22の場合と同様に、スリット6が探傷領域5にある場合、周波数成分強度比は減少する傾向にある。図26では測定時間内にスリット6が探傷領域5を13回通過したが、判定基準(閾値)をμ−σ以下とした場合、このうち10回が検出されている。
図25に示した波形群に対し、上記2−2節と同様に周波数解析を行い、0.36〜0.71MHz成分に対する1.43〜1.79MHz成分の強度比を求めた。結果を図26に示す。図26中の縦線はスリット6が探傷領域5を通過した時間を示す。図22の場合と同様に、スリット6が探傷領域5にある場合、周波数成分強度比は減少する傾向にある。図26では測定時間内にスリット6が探傷領域5を13回通過したが、判定基準(閾値)をμ−σ以下とした場合、このうち10回が検出されている。
以上の結果から、本発明は高温下における回転体にも適用可能であることを確認できた。
1 検査対象物
2 励起用パルスレーザ光
3 レーザ干渉計
4 測定波形
5 表面波の伝播経路(探傷領域)
6 表面欠陥
7 励起用パルスレーザ光の照射位置
8 レーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置
9 測定用レーザ光
10 励起点(検査対象物の励起用パルスレーザ光によって励起される部位)
11 測定点(検査対象物のレーザ干渉計によって測定される部位)
2 励起用パルスレーザ光
3 レーザ干渉計
4 測定波形
5 表面波の伝播経路(探傷領域)
6 表面欠陥
7 励起用パルスレーザ光の照射位置
8 レーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置
9 測定用レーザ光
10 励起点(検査対象物の励起用パルスレーザ光によって励起される部位)
11 測定点(検査対象物のレーザ干渉計によって測定される部位)
Claims (6)
- 一定速度で回転する検査対象物に励起用パルスレーザ光を一定周波数で照射して前記検査対象物の表面を伝播する超音波を繰り返し発生させると共に、前記励起用パルスレーザ光の照射位置とは別の位置で前記超音波による表面変位を前記励起用パルスレーザ光に同期させたレーザ干渉計を用いて測定し、測定波形の変化に基づいて前記超音波の伝播経路途中における表面欠陥を検出するものであり、前記検査対象物に対する前記励起用パルスレーザ光の照射位置及び前記レーザ干渉計の測定用レーザ光の照射位置を固定すると共に、前記検査対象物の回転周期と前記励起用パルスレーザ光の照射周期とを相違させることで、前記検査対象物の前記励起用パルスレーザ光によって励起される部位と前記レーザ干渉計によって測定される部位とを前記検査対象物の周方向に徐々にずらして走査を行うことを特徴とする回転体のレーザ超音波探傷方法。
- 前記走査によって収集された測定波形の高周波成分と低周波成分との強度比を求め、求めた強度比の変化に基づいて表面欠陥を検出することを特徴とする請求項1記載の回転体のレーザ超音波探傷方法。
- 前記走査によって収集された測定波形の中から比較基準となる参照波形を選択し、前記参照波形との差異の度合いに基づいて表面欠陥を検出することを特徴とする請求項1記載の回転体のレーザ超音波探傷方法。
- 前記参照波形は前記測定波形のうち最初に測定された波形であることを特徴とする請求項3記載の回転体のレーザ超音波探傷方法。
- 前記参照波形は前記測定波形のうち時系列における直前に測定された波形であることを特徴とする請求項3記載の回転体のレーザ超音波探傷方法。
- 前記表面欠陥を示す測定波形について前記高周波成分と前記低周波成分とに分ける境界周波数を変化させて繰り返し前記強度比を求め、求めた強度比の変化が最も急激なときの境界周波数に基づいて表面欠陥の深さを推定することを特徴とする請求項2記載の回転体のレーザ超音波探傷方法。
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JP2010027824A JP2011163971A (ja) | 2010-02-10 | 2010-02-10 | 回転体のレーザ超音波探傷方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104634741A (zh) * | 2014-10-22 | 2015-05-20 | 南京航空航天大学 | 一种快速定位缺陷的激光超声检测方法及其系统 |
RU2640102C2 (ru) * | 2013-02-08 | 2017-12-26 | Зе Боинг Компани | Система для обследования гидроударом |
KR101833467B1 (ko) | 2014-11-27 | 2018-02-28 | 엘렉트리씨트 드 프랑스 | 초음파를 통해 불균일 재료 내의 결함을 검출하고 특징화하는 방법 |
CN110567880A (zh) * | 2019-10-22 | 2019-12-13 | 厦门大学 | 一种汽车轮毂实时在线的无损检测装置 |
JP2022177178A (ja) * | 2021-01-13 | 2022-11-30 | 株式会社東芝 | 光学検査装置及び方法 |
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2010
- 2010-02-10 JP JP2010027824A patent/JP2011163971A/ja active Pending
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