JP2011163800A - 模擬応力腐食割れ試験体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】実際の応力腐食割れと同等の非破壊検査信号を与える試験体を、その性状を定量的に制御しつつも、安価に製作することを可能ならしめる技術を提供する。
【解決手段】接合界面を有する2以上の金属製の試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、接合する前の金属製試験片の前記接触部領域は、粗さRyが50μm以上の凹凸からなり、該接触部領域以外の接合部の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
【選択図】図1
【解決手段】接合界面を有する2以上の金属製の試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、接合する前の金属製試験片の前記接触部領域は、粗さRyが50μm以上の凹凸からなり、該接触部領域以外の接合部の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
【選択図】図1
Description
本発明は、非破壊検査において検査員の技能研鑽および装置感度校正に主として用いる、模擬応力腐食割れ試験体及びその製造方法に関するものである。
プラントの健全性を維持するためには適切な保全活動、特に劣化を早期かつ定量的に検知するための適切な検査の実施は欠かすことができない。このために、検査員の技能研鑽および装置性能評価のためには適切な試験体が不可欠であるが、実機で発生する「きず」、特に実用上大きな問題となっている応力腐食割れについては、検査時の信号が微弱であるために検出が困難であるということが広く知られている。
しかし、その非破壊信号の応答に対する影響因子およびメカニズムについては解明が十分ではないという問題がある。そのため、現状では材料を腐食環境下に長時間さらすことで人為的に応力腐食割れを導入した試験体を用いて、応力腐食割れに対する各種検討が行われている。
このように非破壊検査用試験体のために人為的に応力腐食割れを導入することは、腐食という現象を用いるため、導入する「きず」の形状を制御することが困難である上に多額の費用と長い加工時間を要するという問題がある。
加えて、人為的に導入された応力腐食割れは必ずしも実際に発生する応力腐食割れと類似性は高くは無いことも指摘されている。そのため、非破壊検査の観点から応力腐食割れを模擬する検討がこれまでに少なからず行われている。
加えて、人為的に導入された応力腐食割れは必ずしも実際に発生する応力腐食割れと類似性は高くは無いことも指摘されている。そのため、非破壊検査の観点から応力腐食割れを模擬する検討がこれまでに少なからず行われている。
例えば、特許文献1においては、接合面に低融点金属を塗布した後に冷却することで任意形状の粒界応力腐食割れ模擬領域を設ける手法が述べられている。しかし、当該技術では形状の制御はmm単位と述べられており、実際のプラントにおける非破壊検査で求められる「きず」評価能力を考慮すると、この特許文献1のレベルでは不十分であり、より精度高く「きず」形状を制御することが望まれる。
形状の制御が比較的容易である疲労割れを用い、疲労割れに圧縮応力を加えることにより割れを閉口させ、応力腐食割れを模擬するという試みも行われている(非特許文献1及び非特許文献2参照)。しかしながら、割れの開口の度合いは、必ずしも非破壊検査信号に影響を与えるものではなく、前記非特許文献では、模擬応力腐食割れの製作技術として必ずしも妥当とは言えない。
非特許文献3およびその引用文献(注)においては、非接合材の一方もしくはインサート材中に欠陥を加工したのちに溶接を施すこと。また、特許文献2においては、粉末中に銅箔を埋め込んで加圧成形した後、銅箔を溶融させることで、材料内部に空隙部を生じさせる手法が述べられている。しかしながら、これらの技術では応力腐食割れの信号が微弱である最大の理由と考えられる、破面の部分的接触を模擬することが困難であるという課題が残っている。
また、非特許文献4では、φ6mm×0.2mmの円柱状の欠陥相当の空洞部を形成し、拡散接合による非破壊試験用模擬欠陥試験体の製作方法が記載されている。しかし、この場合、溶接欠陥の試験体として有効かも知れないが、加工した欠陥の大きさが巨大で、模擬応力腐食割れの「きず」に適合せず、模擬欠陥試験体として適切でない。
R. Clark, 他2名著「The effect of crack closure on the reliability of NDT predictions of crack size」NDT INTERNATINAL 、第20号、No.5(1987年10月)269−275頁
Noritaka Yusa, 他4名著、「Eddy current inspection of closed fatigue and stress corrosion cracks」、MEASUREMENT SCIENCE AND TECHNOLOGY IPO Publishing Ltd (2007 Printed in the UK)、第18号、3403−3408頁
「超音波探傷試験のための模擬欠陥試験体の製作」軽金属溶接第28号(1990)No.10、431−438頁
松井繁朋、他5名著「拡散接合による非破壊試験用模擬欠陥試験体の製作」、溶接学会全国大会公演概要、第42集、(‘88−4)、頁108−102
本発明は、このような課題に鑑み創案されたものであり、実際の応力腐食割れと同等の非破壊検査信号を与える試験体を、その性状を定量的に制御しつつも、安価に製作することを可能ならしめる技術を提供するものである。
上述した課題を解決するため、以下の1〜8の発明を提供する。
1.接合界面を有する2以上の金属製の試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、接合する前の金属製試験片の前記接触部領域は、粗さRyが50μm以上の凹凸からなり、該接触部領域以外の接合部の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
2.接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
3.応力腐食割れ試験に使用する前記1又は2記載の非破壊検査用模擬試験体。
1.接合界面を有する2以上の金属製の試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、接合する前の金属製試験片の前記接触部領域は、粗さRyが50μm以上の凹凸からなり、該接触部領域以外の接合部の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
2.接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
3.応力腐食割れ試験に使用する前記1又は2記載の非破壊検査用模擬試験体。
4.接合界面を有する2以上の金属製の試験片を準備し、この試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合する非破壊検査用模擬試験体の製造方法であって、接合する前の金属製試験片の前記凹凸を施した領域の粗さRyを50μm以上とし、該接触部領域以外の接合部の粗さRaを10μm以下とすることにより、接合界面に接合部と接触部領域を形成することを特徴とする非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
5.接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合する非破壊検査用模擬試験体の製造方法であって、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaが10μm以下とすることにより、接合界面に接合部と接触部領域を形成することを特徴とする非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
6.固相接合時の圧力を1MPa以上、温度を材料融点の70%以上、保持時間を5分以上とすることを特徴とする前記4又は5記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
7.凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することを特徴とする前記4記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
8.金属箔の貫通穴の3次元的位置及び空間密度を調整することにより、所定形状の「きず」を模擬することを特徴とする前記5記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
5.接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合する非破壊検査用模擬試験体の製造方法であって、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaが10μm以下とすることにより、接合界面に接合部と接触部領域を形成することを特徴とする非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
6.固相接合時の圧力を1MPa以上、温度を材料融点の70%以上、保持時間を5分以上とすることを特徴とする前記4又は5記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
7.凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することを特徴とする前記4記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
8.金属箔の貫通穴の3次元的位置及び空間密度を調整することにより、所定形状の「きず」を模擬することを特徴とする前記5記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
本発明により、実機で発生する応力腐食割れに近い応答をする非破壊検査用模擬試験体を容易に、安価に、かつ迅速に得ることができると共に、その粒界応力腐食割れの性状を精度良く制御することが可能となるという優れた効果を有する。
本願発明の非破壊検査用模擬試験体は、特定の接合界面を有する2以上の金属製の試験片からなる。この試験片の接合界面の一部に凹凸を形成する。この凹凸は、粗さRyが50μm以上の凹凸である。粗さRyは、試験を行う材料に応じて任意に変えることができる。この凹凸部が接合界面の不完全接合領域となる。この粗さRyが50μm以上の凹凸を形成する場合は、試験片を局部的にグラインダー加工することによって形成できるが、他の加工によってRyを50μm以上の凹凸に形成しても良い。模擬するきずの大きさはRyが50μm以上の凹凸を施した領域の広さで制御されるものであり、接合の度合いはRyの値により制御することが可能であり、Ryが小であるほど信号が微弱なきずを模擬することができる。
一方、接合する前の金属製試験片の凹凸を形成する領域以外の接合部の粗さRaは10μm以下とする。これは、凹凸を形成する領域とは明確にことなるように、研磨加工を行うことによって形成する。この接合部は、固相拡散の際に強固に接合し、空隙は存在しない接合部となる。この非破壊検査用模擬試験体は、通常応力腐食割れの模擬試験体に適するが、類似の非破壊検査用模擬試験体に適用できることは言うまでもない。
応力腐食割れは、実機で発生する「きず」であり、実用上大きな問題となっているが、この応力腐食割れについては、検査時の信号が微弱であるために検出が困難である。しかし、本願発明の上記粗さRyが50μm以上の凹凸を加工した領域から得られる検査信号が、後述する試験に示すように、実機で発生する応力腐食割れに近似しており、非破壊検査用模擬試験体に最適である。
このようにして作製した試験片を、粗さRyが50μm以上の凹凸を持つ部位相互とRaは10μm以下の部位相互が、それぞれ向き合うように界面を接触させた後、固相接合する。固相接合に際しては、接合時の圧力を1MPa以上、温度を材料融点の70%以上、保持時間を5分以上とすることが望ましい。但し、非破壊検査用模擬試験体の種類に応じて、この接合の条件を変更することができることは言うまでもない。しかし、多くの非破壊検査用模擬試験体は、上記の接合条件に適合する。
また、これらの試験片の複数枚を同時に固相接合し、非破壊検査用模擬試験体にすることができる。また、粗さRyが50μm以上の凹凸を持つ部位とRaは10μm以下の部位をずらして製作することにより、同時に複数の非破壊検査を実施することが可能であり、このように少数の試験体で複数の模擬試験又は模擬検査を実施することができることは容易に理解されるであろう。
以下に、試験例を詳細に説明するが、その場合の接合界面の様子を図3、図4に示す。図3は、粗さRyが30μmの試験体の接合界面を示す。試験片の中央部左から右に細線が見られるが、これは材料(試験片)の拡散接合した結晶の界面であり、結果としてこの結晶の界面が細い筋として見える。
一方、粗さRyが90μmの試験片の接合界面を図4に示す。試験片の中央部左から右にかけて、黒い太筋の部位(2箇所)と細線部(前記2箇所を挟む部位)を見ることができる。黒い太筋の部位はRy90μmを加工した領域の凹部に起因し、細線部は凸部に起因する。な
前記黒い太筋の部位では、界面の多くは接合せず、単に接触しているか又は非接触部と考えられる。
前記黒い太筋の部位では、界面の多くは接合せず、単に接触しているか又は非接触部と考えられる。
この黒い太筋の部位(2箇所)の厚さ(図4の幅)は、平均結晶粒径よりも小さい幅であることが分かる。この微細な間隙が内部で断続的に存在する試験体が、非破壊検査用模擬試験体、特に応力腐食割れ用の試験体として最適な条件となる。
すなわち、凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することができる。
すなわち、凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することができる。
上記については、試験片を局部的にグラインダー加工により非破壊検査用模擬試験体を作製した例を示したが、接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合し、接合界面に接合部と不完全接合領域を設けることによっても試験体を作製することが可能である。この場合、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaを10μm以下とすることが必要である。
そして、この場合にも、上記と同様に、固相接合の際に、接合時の圧力を1MPa以上、温度を材料融点の70%以上、保持時間を5分以上とすることが望ましい。そして、この場合、金属箔の貫通穴の3次元的位置及び空間密度を調整することにより、所定形状の「きず」を模擬することが可能である。
上記の例については、ステンレス鋼(SUS316)の試験片を用いた例を示したが、この他、他のステンレス鋼、ニッケル(ニッケル基合金を含む)、チタン(チタン基合金を含む)、これらの金属又は合金の溶接材、などの金属材料の非破壊検査、特に応力腐食割れの試験用模擬試験体とすることができる。
応力腐食割れ試験等の非破壊検査には、例えば超音波による非破壊検査法、渦電流探傷法などを使用することができる。
応力腐食割れ試験等の非破壊検査には、例えば超音波による非破壊検査法、渦電流探傷法などを使用することができる。
次に、添付図面に基づいてより詳細に説明する。各図に共通の部分は同じ符号を使用する。図1は、本発明における請求項1の実施形態の一例を示す。11、12は模擬試験体を構成する材料であり、両者が面21、22で接合されることによって、模擬応力腐食割れ試験体が作成されるものとする。
接合に先立ち、面21と22のいずれか片方もしくは両方には、Ryが50μm以上であるような凹凸を人為的に施した領域31を設け、面21および面22において領域31以外の部位はRaが10μm以下となるように平滑化を施す。
接合に先立ち、面21と22のいずれか片方もしくは両方には、Ryが50μm以上であるような凹凸を人為的に施した領域31を設け、面21および面22において領域31以外の部位はRaが10μm以下となるように平滑化を施す。
しかる後に、11、12の接合部に圧縮応力を加え、全体を高温、高圧下に保持することによって、11、12を固相接合により接着させる。これにより、凹凸を施した領域31については不完全な接着、凹凸を施さなかった領域32については完全な接着が起こり、応力腐食割れが有する部分的な接触という特徴を模擬することができる。領域31を任意に設定することによって、所望の長さ、深さ、輪郭形状を有する形状を有する「きず」を模擬することができる。
図2は、本発明における請求項2の実施形態の一例を示す。11、12は模擬試験体を構成する材料であり、13は厚さ50μm以上である11、12と同一の材料である。接合に先立ち、面21および面22、そして材料13が面21および面22と接合される面は粗さRaが10μm以下となるように平滑化を施し、また、材料13には任意形状を有する貫通孔41を加工する。しかる後に、11、12、13の接合部に圧縮応力を加え、全体を高温、高圧下に保持することによって、固相接合により接着させる。
これにより、貫通孔41の形状に応じた3次元的形状を有する非接触領域が材料内部に形成され、応力腐食割れの模擬試験体を製作することができる。またその際、貫通孔41の形状および材料13の厚みを任意に設定することによって、所望の長さ、深さ、輪郭形状を有する形状を有する「きず」を模擬することができる。
尚、図では材料13は5枚としているが、これは5枚に限定するものではなく、また加工する貫通孔41の形状は材料13全てにおいて同一である必要はないことは言うまでもない。
尚、図では材料13は5枚としているが、これは5枚に限定するものではなく、また加工する貫通孔41の形状は材料13全てにおいて同一である必要はないことは言うまでもない。
尚、本実施の形態においては、模擬試験体を製作するための材料としてブロック材を用いて説明したが、勿論、材料はブロック材に限定されるものではなく、平板や管状であっても良いことは言うまでもない。
また、接合に関しては拡散接合を想定した図を用いたが、これは用いる固相接合が拡散接合に限定されるというものではなく、例えば大型もしくは複雑な形状を有する試験体の製作においてはHIP接合等他の固相接合を適用することが可能であるが、本実施の形態において肝要であるのは固相接合前に接合面に加工を施すという点であり、固相接合の手順は既存の技術に従うものである。すなわち、例えばHIP接合を適用するのであれば材料をカプセルに封入する等、各接合法に応じた手順が加わることは言うまでもない。
次に、実施例について説明する。なお、この実施例は発明の理解を容易にするものであって、この実施例に本願発明が制限を受けるものではない。本願発明は、明細書に記載する技術思想を前提にするものであり、この技術思想を中心して展開した明細書に記載する内容を全て包含するものである。
(実施例1)
図1に示す試験片を作製した。すなわち11、12は模擬試験体を構成する材料であり、両者を面21、22で接合するものである。この試験片としてステンレス鋼(SUS316)を使用し、模擬応力腐食割れ試験体を作製する。
接合に先立ち、面21と面22の両方に、Ryが90μmであるような凹凸を人為的に施した領域31を設けた。この凹凸は、グラインダーにより粗面化したものであり、Ryが90μmとした。また、領域31の大きさは接合後の不完全結合部の長さが10mm、深さが5mmとなるように設けた。一方、面21および面22においては、領域31以外の部位は、バフによる研磨加工により、Raが1μm以下となるように平滑化した。
図1に示す試験片を作製した。すなわち11、12は模擬試験体を構成する材料であり、両者を面21、22で接合するものである。この試験片としてステンレス鋼(SUS316)を使用し、模擬応力腐食割れ試験体を作製する。
接合に先立ち、面21と面22の両方に、Ryが90μmであるような凹凸を人為的に施した領域31を設けた。この凹凸は、グラインダーにより粗面化したものであり、Ryが90μmとした。また、領域31の大きさは接合後の不完全結合部の長さが10mm、深さが5mmとなるように設けた。一方、面21および面22においては、領域31以外の部位は、バフによる研磨加工により、Raが1μm以下となるように平滑化した。
次に、前記11、12の接合部に約10Mパスカルの圧縮応力を加え、全体を高温(温度:約1000°C)下に、約60分間保持することによって、接合面11、12を固相接合により接着させた。
これにより、凹凸を施した領域31については不完全な接着、凹凸を施さなかった領域32については完全な接着が起こり、応力腐食割れが有する部分的な接触という特徴を模擬することができた。この様子を図4に示す。
これにより、凹凸を施した領域31については不完全な接着、凹凸を施さなかった領域32については完全な接着が起こり、応力腐食割れが有する部分的な接触という特徴を模擬することができた。この様子を図4に示す。
上記の拡散接合の条件で接合することにより、試験片の中央部左から右にかけて、黒い太筋の部位(2箇所)と細線部(前記2箇所を挟む部位)を見ることができた。細線部は材料(試験片)の拡散接合した結晶の界面であり、黒い太筋の部位(2箇所)は、接合していない箇所で、単に接触しているか又は非接触部である。
上記の拡散接合条件では、接合している部位のために、単に接触しているか又は非接触部である黒い太筋の部位(2箇所)は、それ以上の接触は進まなかった。
上記の拡散接合条件では、接合している部位のために、単に接触しているか又は非接触部である黒い太筋の部位(2箇所)は、それ以上の接触は進まなかった。
この黒い太筋の部位(2箇所)の厚さ(図4の幅)は、平均結晶粒径よりも小さい幅であった。この微細な間隙が断続的に存在する試験体が、非破壊検査用模擬試験体、特に応力腐食割れ用の試験体として最適な条件となった。
すなわち、凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することができた。
一方、領域31の粗さRyを30μmとして同様の試験を行った場合の様子を図3に示す。Ryが90μmの場合の結果と比較すると、前述の黒い太筋は確認できず、界面全体が結合していることが確認できる。
すなわち、凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することができた。
一方、領域31の粗さRyを30μmとして同様の試験を行った場合の様子を図3に示す。Ryが90μmの場合の結果と比較すると、前述の黒い太筋は確認できず、界面全体が結合していることが確認できる。
次に、この非破壊検査用模擬試験体を用いて渦電流探傷の試験を実施した。この結果を図5に示す。この図5は、正弦波の振幅Aと参照信号に対する位相差φを用いて、Xシグナル=Acos(φ)、Yシグナル=Asin(φ)として、2次元平面上の信号として表した結果を示す図である(TEST PIECE、参照)。
比較のため、放電加工により加工した、長さ10mm、深さ5mm、幅0.3mmの矩形人工スリットに対して同様の試験を実施した結果により得られた信号も、図6に併せて示した(EDM,5mm、参照)。
比較のため、放電加工により加工した、長さ10mm、深さ5mm、幅0.3mmの矩形人工スリットに対して同様の試験を実施した結果により得られた信号も、図6に併せて示した(EDM,5mm、参照)。
この図5に示すように、模擬試験体からの探傷信号とスリットからの探傷信号の位相角はほぼ一致している。通常渦電流探傷法では信号の位相角が「きず」深さをあらわすものであるため、これは模擬試験体に含まれる「きず」の深さは人工スリットの深さとほぼ等しいということを意味しており、想定通りの形状の「きず」が模擬試験体中に導入されたことを示している。
しかしながら、製作した模擬試験体に含まれる「きず」の大きさはこの矩形人工スリットとほぼ同じであるにもかかわらず、信号振幅は人工スリットからのものと比べると10分の1程度となっていることが確認できる。
一般的に、応力腐食割れからの探傷信号は形状が同じ大きさのスリットの数分の1から10分の1程度なので、本試験では、実際の応力腐食割れ試験を実施した場合のXシグナル=Acos(φ)、Yシグナル=Asin(φ)に一致した結果を得ることができたと言うことができる。
一般的に、応力腐食割れからの探傷信号は形状が同じ大きさのスリットの数分の1から10分の1程度なので、本試験では、実際の応力腐食割れ試験を実施した場合のXシグナル=Acos(φ)、Yシグナル=Asin(φ)に一致した結果を得ることができたと言うことができる。
但し、振幅Aは、入力信号の振幅及び探傷器の増幅率等に依存し、またφも、何を参照信号とするかによって異なる。通常、これらの値は、探傷時に信号が見易くなるように適宜設定されるのであるが、そもそもφに厳密が物理的意味を持たせることが難しいので、参照信号に対するずれを測定することになる。
したがって、本試験において、実際の応力腐食割れ試験を実施した場合のXシグナル=Acos(φ)、Yシグナル=Asin(φ)に一致した結果を得ることができたことは、非破壊検査用模擬試験体として有用であることの証左であると言える。
したがって、本試験において、実際の応力腐食割れ試験を実施した場合のXシグナル=Acos(φ)、Yシグナル=Asin(φ)に一致した結果を得ることができたことは、非破壊検査用模擬試験体として有用であることの証左であると言える。
上記においては、試験片としてステンレス鋼(SUS316)を使用し、面21と面22の両方に、Ryが90μmであるような凹凸を人為的に施した領域31を設けた模擬応力腐食割れ試験体を作製した場合を説明したが、図2に示す例においても同様な結果を得ることができる。
すなわち、この例では、11、12は模擬試験体を構成する材料とし、13は厚さ50μm以上である11、12と同一の材料とする。面21および面22、そして材料13が面21および面22と接合される面は粗さRaが10μm以下となるように平滑化を施す。また、材料13には任意形状を有する貫通孔41を加工する。
しかる後に、11、12、13の接合部に圧縮応力を加え、上記実施例1と同様な条件で固相接合により接着させる。
これにより、貫通孔41の形状に応じた3次元的形状を有する非接触領域が材料内部に形成され、応力腐食割れの模擬試験体を製作することができる。
これにより、貫通孔41の形状に応じた3次元的形状を有する非接触領域が材料内部に形成され、応力腐食割れの模擬試験体を製作することができる。
本発明によれば、実機で発生する応力腐食割れに近い応答をする非破壊検査用模擬試験体を容易且つ安価に得ることができると共に、その粒界応力腐食割れの性状を精度良く制御することが可能となるため、非破壊検査員の技能向上及び非破壊検査装置の性能評価と性能向上に大いに貢献することができる。
11:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料
12:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料
13:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料
21:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料11の一面
22:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料12の一面
31:人為的にRyが50μm以上の粗さを設けた領域
41:材料13に加工された貫通孔
12:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料
13:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料
21:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料11の一面
22:模擬応力腐食割れ試験体を構成する材料12の一面
31:人為的にRyが50μm以上の粗さを設けた領域
41:材料13に加工された貫通孔
Claims (8)
- 接合界面を有する2以上の金属製の試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、接合する前の金属製試験片の前記接触部領域は、粗さRyが50μm以上の凹凸からなり、該接触部領域以外の接合部の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
- 接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合し、接合界面に接合部と接触部領域を設けた試験体であって、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaが10μm以下であることを特徴とする非破壊検査用模擬試験体。
- 応力腐食割れ試験に使用する請求項1又は2記載の非破壊検査用模擬試験体。
- 接合界面を有する2以上の金属製の試験片を準備し、この試験片の接合界面の一部に凹凸を形成した後に、これらの試験片を相互に固相接合する非破壊検査用模擬試験体の製造方法であって、接合する前の金属製試験片の前記凹凸を施した領域の粗さRyを50μm以上とし、該接触部領域以外の接合部の粗さRaを10μm以下とすることにより、接合界面に接合部と接触部領域を形成することを特徴とする非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
- 接合界面を有する2以上の金属製の試験片の間に、貫通穴を有する厚さ50μm以上の金属薄を挟み込んで固相接合する非破壊検査用模擬試験体の製造方法であって、前記試験片の接合面及び金属薄膜の表面の粗さRaが10μm以下とすることにより、接合界面に接合部と接触部領域を形成することを特徴とする非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
- 固相接合時の圧力を1MPa以上、温度を材料融点の70%以上、保持時間を5分以上とすることを特徴とする請求項4又は5記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
- 凹凸を施す領域と凹凸を施す領域の粗さRyを調整することにより、所定の形状の「きず」を模擬することを特徴とする請求項4記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
- 金属箔の貫通穴の3次元的位置及び空間密度を調整することにより、所定形状の「きず」を模擬することを特徴とする請求項5記載の非破壊検査用模擬試験体の製造方法。
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