JP2011161346A - 電気式脱イオン水製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】脱塩室に充填するアニオン交換体の耐熱性が優れ、運転時に電圧異常が発生しない電気式脱イオン水製造装置を提供する。
【解決手段】アニオン交換膜とカチオン交換膜とで区画されアニオン交換体を有する脱塩室と、脱塩室の外側にアニオン交換膜と対向するように設けられた陽極と、脱塩室の外側にカチオン交換膜と対向するように設けられた陰極と、を有する電気式脱イオン水製造装置であって、アニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する電気式脱イオン水製造装置。ただし、下記一般式(1)中、R1〜R3のうち少なくとも一つの基は炭素数が2以上のアルキル基、X-は対イオンを表す。
Figure 2011161346

【選択図】図5

Description

本発明は、電気式脱イオン水製造装置に関する。
従来から、水の脱イオン処理を長時間、安定的に可能な装置として、電気式脱イオン水製造装置が使用されている。
特許文献1(特開2008−284488号公報)には、脱塩室及び/又は濃縮室に、微細状アニオン交換体及びカチオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体が充填された電気式脱イオン水製造装置が開示されている。
特許文献2(特開2009−160555号公報)には、脱塩室内に、アニオン交換体層とカチオン交換体層とが、少なくともそれらの一部において相互に接触するようにして、アニオン交換膜とカチオン交換膜との配列方向に二層以上に積層充填された電気式脱イオン水製造装置が開示されている。
特許文献3(特開2009−233537号公報)には、脱塩室内には、脱塩室の容積よりも大きな体積を有し、弾性を有する発泡体が圧縮された状態で充填されており、発泡体が、微細なアニオン交換体及びカチオン交換体を保持する連続気泡構造の発泡体である電気式脱イオン水製造装置が開示されている。
特開2008−284488号公報 特開2009−160555号公報 特開2009−233537号公報
電気式脱イオン水製造装置により水を処理する場合には、処理対象となる水(以下、電気式脱イオン水製造装置の処理対象となる水を「被処理水」と記載する場合がある)の種類によっては、高温の被処理水が脱塩室を通る場合があった。しかしながら、特許文献1〜3の電気式脱イオン水製造装置では、脱塩室に充填したアニオン交換体の耐熱性について、十分に考慮していなかった。このため、被処理水が脱塩室内を通る際、脱塩室に充填されたアニオン交換体が熱により劣化し、そのイオン交換能が低下する場合があった。
一般的に、電気式脱イオン水製造装置では、脱塩室内に充填されたアニオン交換体とカチオン交換体の界面で、水の解離反応が起こっている。この水の解離反応で生じた水素イオン(H+)及び水酸化物イオン(OH-)によってカチオン交換体とアニオン交換体は再生される。ここで、アニオン交換体の構造によっては、この水の解離反応が進行する電圧は低くなる場合があった。
しかしながら、特許文献1〜3の電気式脱イオン水製造装置では、アニオン交換体の種類を十分に検討していないため、水の解離反応が起こるのに必要な電圧が高くなる、電圧異常が発生する場合があった。
以上のように、従来の電気式脱イオン水製造装置では、脱塩室に充填するイオン交換体の耐熱性及び電圧異常発生の防止について、十分に検討していなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、脱塩室に充填するアニオン交換体の耐熱性が優れ、運転時に電圧異常が発生しない電気式脱イオン水製造装置を提供することを目的とする。
一実施形態は、
アニオン交換膜とカチオン交換膜とで区画され、アニオン交換体を有する脱塩室と、
前記脱塩室の外側に、前記アニオン交換膜と対向するように設けられた陽極と、
前記脱塩室の外側に、前記カチオン交換膜と対向するように設けられた陰極と、
を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
前記アニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する、電気式脱イオン水製造装置に関する。
Figure 2011161346
(ただし、上記一般式(1)中、R1〜R3のうち少なくとも一つの基は炭素数が2以上のアルキル基、X-は対イオンを表す。)。
脱塩室に充填するアニオン交換体の耐熱性が優れ、電圧異常が発生しない電気式脱イオン水製造装置を提供できる。
本発明の電気式脱イオン水製造装置の一例を表す図である。 第1実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。 第2実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。 第3実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。 第4実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。 第5実施例の電気式脱イオン水製造装置を表す図である。
1.電気式脱イオン水製造装置
電気式脱イオン水製造装置は、脱塩室、脱塩室の外側にアニオン交換膜と対向するように設けられた陽極及びカチオン交換膜と対向するように設けられた陰極、を有する。脱塩室は、アニオン交換膜とカチオン交換膜とで区画され、アニオン交換体を有する。このアニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する。
Figure 2011161346
(ただし、上記一般式(1)中、R1〜R3のうち少なくとも一つの基は炭素数が2以上のアルキル基、X-は対イオンを表す。)。
このように脱塩室中のアニオン交換体は、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有することにより、アニオン交換体を耐熱性に優れたものとすることができる。また、電気式脱イオン水製造装置の運転時に電圧異常の発生を防止することができる。
電気式脱イオン水製造装置(以下、「EDI」と記載する場合がある)は、脱塩室にアニオン交換体のみを充填したアニオンEDIとすることができる。また、電気式脱イオン水製造装置は、脱塩室にアニオン交換体とカチオン交換体を充填し、被処理水中のアニオン成分とカチオン成分を除去できるEDIとすることができる。
図1は、電気式脱イオン水製造装置の一例を表す図面である。図1に示すように、アニオン交換膜2a、カチオン交換膜2bで区画されるように、脱塩室3が設けられている。脱塩室3中には、アニオン交換体4及びカチオン交換体1が充填されている。また、脱塩室3の外側に、アニオン交換膜2aと対向するように陽極室5及び陽極7、カチオン交換膜2bと対向するように陰極室6及び陰極8が設けられている。陽極7及び陰極8は直流電源(図示していない)に接続されている。そして、脱塩室3内を矢印の方向に被処理水が流れ(下降水)、陽極室5および陰極室6内を矢印の方向に電極水が流れるようになっている(上昇水)。
被処理水が脱塩室3を流れている間に、被処理水中のアニオン成分及びカチオン成分は、それぞれアニオン交換体4及びカチオン交換体1に捕捉される。そして、脱塩室3を流れる被処理水に対して、陽極7及び陰極8を介して電源から直流電流を通電させる。これにより、アニオン交換体4に捕捉されたアニオン成分はアニオン交換膜2aを通って陽極室5まで電気的に泳動して除去される。同様に、カチオン交換体1に捕捉されたカチオン成分はカチオン交換膜2bを通って陰極室6まで電気的に泳動して除去される。このように電気式脱イオン水製造装置では、電極間に通電することによって、脱塩室3内のアニオン交換体4及びカチオン交換体1に捕捉されたイオン成分は、随時、陽極室5及び陰極室6内に除去される。
また、脱塩室3内のアニオン交換体4及びカチオン交換体1の界面では水の解離反応により、水素イオン(H+)及び水酸化物イオン(OH-)が発生する。これらのイオンがアニオン交換体4及びカチオン交換体1とイオン交換を行うことによって、アニオン交換体4及びカチオン交換体1は再生される。
このように電気式脱イオン水製造装置では、脱塩室内に充填されたイオン交換体がイオンによって飽和することを抑制することができ、長時間、安定的にイオン成分を除去できる。
図1において、陽極室5及び陰極室6内にはスペーサや隔膜を配置しても、イオン交換体を充填しても良い。また、陽極室とアニオン交換膜、陰極室とカチオン交換膜の間に隔膜を介してそれぞれ、濃縮室を設けても良い。イオン交換体を充填する場合、陽極室5及び陰極室6は、アニオン交換体の単床、カチオン交換体の単床、又は、アニオン交換体とカチオン交換体との混床の何れの形態としても良い。このように陽極室5及び陰極室6にイオン交換体を充填することで、電気抵抗を低減することができる。
図1では、脱塩室3内の被処理水の流れと、陽極室5及び陰極室6内の電極水の流れは異なる方向とした。しかし、被処理水と電極水の流れ方向はこれに限定されるわけではなく、被処理水の流れ方向と電極水の流れ方向は同じであっても、異なっていても良い。また、陽極室5内の電極水の流れ方向と、陰極室6内の電極水の流れ方向は同じとするのが好ましい。
電気式脱イオン水製造装置は、図1に示すように陽極と陰極の間に、一つの脱塩室を有する構造のものとしても良い。この場合、陽極と陰極の間に、一つの陽極室/脱塩室/陰極室を設けた構造のものとなる。このタイプの電気式脱イオン水製造装置としては例えば、陽極/陽極室/アニオン交換膜/脱塩室/カチオン交換膜/陰極室/陰極の順に配置された構造を有するものを挙げることができる。また、電気式脱イオン水製造装置として、陽極/陽極室/アニオン交換膜/アニオン交換膜側の小脱塩室/中間イオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室/カチオン交換膜/陰極室/陰極の順に配置された構造を有するものを挙げることができる。これらのタイプの電気式脱イオン水製造装置は例えば、処理水量が少ない家庭用燃料電池から回収した水を処理する場合に使用できる。この電気式脱イオン水製造装置では、装置の構成を簡易化して、コストの低減を図ることができる。また、構造が簡便であるため故障しにくく、メンテナンスも簡単である。
また、電気式脱イオン水製造装置は、複数の脱塩室を有する構造のものとして、陽極/陽極室と、陰極室/陰極の間に、脱塩室と濃縮室を複数、設けても良い。すなわち、この場合、電気式脱イオン水製造装置は、陽極/陽極室/脱塩室/濃縮室/脱塩室/・・・・・/脱塩室/陰極室/陰極の構造となる。また、このタイプの電気式脱イオン水製造装置の変形例として、陽極室とアニオン交換膜、陰極室とカチオン交換膜の間に隔膜を介して濃縮室を設けることにより、陽極/陽極室/隔膜/濃縮室/脱塩室/濃縮室/脱塩室/・・・・・/脱塩室/濃縮室/隔膜/陰極室/陰極の構造となる。陽極/陽極室と、陰極室/陰極の間に設ける、脱塩室と濃縮室の数は特に限定されず、要求される水の処理流量及び処理能力に応じて適宜、選択することができる。更に、この場合、各脱塩室中に中間イオン交換膜を設けて、中間イオン交換膜により各脱塩室をアニオン交換膜側の小脱塩室とカチオン交換膜側の小脱塩室に区画しても良い。このタイプの電気式脱イオン水製造装置は、処理水量が多い場合に使用することができる。
以下、(A)電気式脱イオン水製造装置の運転時における電圧異常発生の防止、及び(B)アニオン交換体の耐熱性の向上について詳細に説明する。
(A)電圧異常発生の防止
一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体は、R1〜R3のうち少なくとも一つの基が炭素数2以上のアルキル基となっている。このように炭素数2以上のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩基を有すると、メチル基等のより低分子の基が窒素原子に結合した第4級アンモニウム塩基を有する場合と比べて塩基度が低下する。これによって、より低い電圧・電力でイオン交換体の再生反応を行わせることができるようになる。この結果、電圧異常を防止できる。
(B)アニオン交換体の耐熱性の向上
脱塩室内に流入してくる被処理水は条件によっては高温となる場合がある。このため、アニオン交換体の耐熱性が低い場合には、高温の被処理水によってアニオン交換体が劣化する。これに対して、本発明の脱塩室に充填されたアニオン交換体は耐熱性に優れ、高温の被処理水を脱塩室内に流した場合であってもアニオン交換体のイオン交換能は劣化しない。このため、長時間、安定して電気式脱イオン水製造装置を使用することができる。
また、例えば、R1〜R3の基を全て炭素数2以上のアルキル基とすることによって、II型のアニオン交換樹脂(イオン交換基としてジメチルエタノールアンモニウム基を有するアニオン交換樹脂)よりも耐熱性に優れたものとすることができる。
以下に、電気式脱イオン水製造装置を構成する各部及び材料を説明する。
(アニオン交換体)
脱塩室は、少なくとも、イオン交換基として下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を有する。
Figure 2011161346
(ただし、上記一般式(1)中、R1〜R3のうち少なくとも一つの基は炭素数が2以上のアルキル基、X-は対イオンを表す。)。
一般式(1)において、R1〜R3はそれぞれ独立して炭素数が2以上5以下のアルキル基であることが好ましい。R1〜R3は炭素数が2以上5以下のアルキル基であることにより、アニオン交換能により優れたアニオン交換体にすると共に、効果的に電圧異常の発生を防止することができる。
一般式(1)において、R1〜R3はエチル基であることが好ましい。この場合、4級アンモニム塩基は、下記一般式(2)で表される基となる。
Figure 2011161346
このようにR1〜R3を全てエチル基とすることにより、アニオン交換体を安定して使用できる最大温度は75℃となり、耐熱性に優れたものとすることができる。また、アニオン交換能を優れたものとすることができる。このようなアニオン交換樹脂としてはローム・アンド・ハース社製のPWA6を使用することができる。
一般式(1)、(2)のアニオンX-としては特に限定されるわけではないが例えば、Cl-、Br-、I-等のハロゲン化物イオン、硫酸イオン、NO3-、OH-、p−トルエンスルホン酸イオン等のアニオンを挙げることができる。
アニオン交換体の母体構造としては、第4級アンモニウム塩基を付加できるものであれば特に限定されないが、例えば、下記構造を挙げることができる。
母体構造を構成するポリマー材料としては、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリビニルベンジルクロライド等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン);ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー;スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のモノマーを重合させて得られるホモポリマーでも、複数のモノマーを重合させて得られるコポリマーであってもよく、また、2種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、イオン交換基の導入の容易性と機械的強度の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体を挙げることができる。
一般式(1)で表されるイオン交換基を有するアニオン交換体の形態としては特に限定されないが、アニオン交換樹脂、アニオン交換膜、アニオン交換繊維、モノリス状アニオン交換体の形態のものを使用することができる。また、アニオン交換樹脂を使用する場合、ゲル形、MR形のいずれも用いることができる。
モノリス状アニオン交換体としては例えば、特開2002−306976号公報、特開2009−062512号公報、特開2009−067982号公報、及び特開2009−108294号公報に記載のものを用いることができる。
特開2002−306976号公報に記載のアニオン交換体としては、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1000μmのメソポアを有する連続気泡構造を有し、全細孔容積が1〜50ml/gであり、イオン交換基が均一に分布され、イオン交換容量が0.5mg当量/g乾燥多孔質体以上であるものを挙げることができる。このアニオン交換体は、互いにつながっているマクロポアとマクロポアの壁内に平均径が1〜1000μm、好ましくは10〜100μmのメソポアを有する連続気泡構造を有している。この連続気泡は、通常、平均径2〜5000μmのマクロポアとマクロポアが重なり合り、この重なる部分が共通の開口となるメソポアを有するもので、その大部分がオープンポア構造となっている。マクロポアとマクロポアの重なりは、1個のマクロポアで1〜12個、多くのものは3〜10個となる。上記のようなアニオン交換体を用いることにより、弾力性が高く、膨潤又は収縮による形状変化を抑制することができる。また、操作電圧を安定化させることが可能であり、脱塩室に充填されたカチオン交換体の変形も防止することができる。
特開2009−062512号公報に記載のアニオン交換体としては、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、厚み1mm以上、全細孔容積0.5〜5ml/g、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ該連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25〜50%であるものを挙げることができる。このアニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に35〜150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体を有する。骨格部面積は好ましくは画像領域中25〜45%であり、イオン交換容量は好ましくは0.4〜1.8mg当量/mlである。
特開2009−067982号公報に記載のアニオン交換体としては、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる太さが1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布しているものを挙げることができる。このアニオン交換体は、イオン交換基が導入された太さが1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に直径が10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体を有する。イオン交換容量は好ましくは0.4〜1.8mg当量/mlである。
特開2009−108294号公報に記載のアニオン交換体としては、連続骨格相と連続空孔相からなる有機多孔質体と、該有機多孔質体の骨格表面に固着する直径4〜40μmの多数の粒子体又は該有機多孔質体の骨格表面上に形成される最大径が4〜40μmの多数の突起体との複合構造体であって、厚み1mm以上、孔の平均直径10〜150μm、全細孔容積0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.2mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該複合構造体中に均一に分布したものを挙げることができる。この有機多孔質体としては、2種類の有機多孔質体を用いることができる。第1の有機多孔質体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に35〜150μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体を構成する。第2の有機多孔質体は、直径が1〜50μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に10〜100μmの三次元的に連続した空孔を有する共連続構造を構成する。
上記特開2009−062512号公報、特開2009−067982号公報、及び特開2009−108294号公報に記載のアニオン交換体を用いることにより、脱塩室内の導電性を高めて、電気式脱イオン水製造装置の操作電圧を低くすることができる。
また、上記の公報に記載のモノリス状アニオン交換体以外に、下記のモノリス状アニオン交換体を使用することができる。すなわち、このモノリス状アニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径20〜200μmの開口となる厚みが1mm以上の連続マクロポア構造体であり、該連続マクロポア構造体の骨格部の表層部が多孔構造であり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量0.4mg当量/ml以上であり、イオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。この重なる部分の平均直径は、20〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。また、この重なる部分の平均直径は、水湿潤状態で30〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましく、35〜150μmが更に好ましい。モノリス状アニオン交換体の比表面積は、20m2/g〜70m2/gであることが好ましい。モノリス状アニオン交換体の厚みは、3mm〜1000mmであることが好ましい。モノリス状アニオン交換体の水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量は、0.4〜1.8mg当量/mlであることが好ましい。
なお、脱塩室内には、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体以外に、他のアニオン交換体を充填しても良い。
(カチオン交換体)
カチオン交換体としては特に限定されないが、カチオン交換膜、カチオン交換繊維、モノリス状カチオン交換体、カチオン交換樹脂を使用することができる。カチオン交換樹脂を使用する場合、ゲル形、MR形のいずれも用いることができる。モノリス状カチオン交換体は、上記(アニオン交換体)に記載のモノリス状アニオン交換体中のアニオン交換基の代わりにカチオン交換基とすることにより得ることができる。
(脱塩室)
脱塩室は、中間イオン交換膜を設けない場合、カチオン交換膜、アニオン交換膜、及び枠体から構成されている。また、中間イオン交換膜を設ける場合、脱塩室は、カチオン交換膜、アニオン交換膜、中間イオン交換膜及び枠体から構成されている。
枠体は、くりぬかれた内部空間を有するリブから構成されている。枠体の一方及び他方の側には、それぞれカチオン交換膜及びアニオン交換膜が配置されている。また、中間イオン交換膜を設ける場合、枠体の中央に中間イオン交換膜が配置されている。この枠体の内部空間には、アニオン交換体、又はアニオン交換体とカチオン交換が充填されている。このアニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体から構成される。なお、中間イオン交換膜を、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換膜としても良い。この場合、脱塩室内には、この中間イオン交換膜以外にも、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を充填しても良いし、充填しなくても良い。また、アニオン交換体としては、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体以外に、他のアニオン交換体を充填しても良い。
典型的には、アニオン交換膜及びカチオン交換膜は互いに略平行となるように配置されている。脱塩室内にアニオン交換体とカチオン交換体を充填する場合、カチオン交換体が充填されたカチオン交換領域と、アニオン交換体が充填されたアニオン交換領域の境界面は、アニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して略平行であることが好ましい。このようにアニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して境界面を平行にすることによって、アニオン交換膜側からカチオン交換膜側に向かって、アニオン交換領域/カチオン交換領域の順にイオン交換領域を配置することができる(上記において、「/」が境界面に相当する)。
この結果、脱塩室に通電した際、電圧異常の発生防止だけでなく、処理水質の低下を効果的に防止することができる。すなわち、一般的に、脱塩室に充填されたアニオン交換体とカチオン交換体は導電性が異なる。従って、例えば、被処理水の流れ方向に沿って順に、脱塩室内にアニオン交換体とカチオン交換体を充填した場合(例えば、被処理水の流れ方向に対して、入口−アニオン交換体−カチオン交換体−出口と配置した場合や、入口−カチオン交換体−アニオン交換体−出口と配置した場合など)などは、アニオン交換領域とカチオン交換領域との境界面がアニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して垂直となる。この場合、アニオン交換体及びカチオン交換体のうち導電性が優れるイオン交換体を通して電流が流れる。そして、電流が流れにくいイオン交換体の部分ではイオン交換の効率が低下して、処理水質が低下する場合がある。
これに対して、カチオン交換領域とアニオン交換領域との境界面を、アニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して平行に設けた場合、通電時には、カチオン交換領域及びアニオン交換領域の両方の領域を通って電流が流れることとなる。従って、この場合には何れか一方のイオン交換体を介した電流の流れは起こらず、処理水質の低下を防止することができる。なお、カチオン交換領域とアニオン交換領域との境界面は、アニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して略平行となっていれば良く、アニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して厳密に平行となっている必要はない。
「アニオン交換領域」とは、脱塩室内に充填されたアニオン交換体が占める領域を表す。粒子状アニオン交換樹脂を使用する場合、脱塩室内において粒子状アニオン交換樹脂が充填された領域がアニオン交換領域を構成する。なお、脱塩室内に複数のアニオン交換体が充填されている場合には、全てのアニオン交換体が占める領域が、「アニオン交換領域」となる。
同様にして、「カチオン交換領域」とは、脱塩室内に充填されたカチオン交換体が占める領域を表す。粒子状カチオン交換樹脂を使用する場合、脱塩室内において粒子状カチオン交換樹脂が充填された領域がカチオン交換領域を構成する。なお、脱塩室内に複数のカチオン交換体が充填されている場合には、全てのカチオン交換体が占める領域が、「カチオン交換領域」となる。
このため、アニオン交換体とカチオン交換体が混床で充填されており、アニオン交換体のみが充填された領域、カチオン交換体が充填された領域を明確に判別できない場合、本明細書では、カチオン交換領域及びカチオン交換領域を画定しないこととする。
また、「境界面」とは、アニオン交換領域とカチオン交換領域の境界部分を構成する面を表す。例えば、アニオン交換体及びカチオン交換体が共に、イオン交換膜、イオン交換繊維、モノリス状イオン交換体の何れかにより構成される場合、アニオン交換体とカチオン交換体が接触する面が境界面を構成する。
アニオン交換体及びカチオン交換体のうち、何れか一方が粒子状イオン交換樹脂、他方がイオン交換膜、イオン交換繊維、モノリス状イオン交換体の何れかの場合、イオン交換膜、イオン交換繊維、モノリス状イオン交換体の粒子状イオン交換樹脂に対向している面が実質的に境界面を構成する。
アニオン交換体及びカチオン交換体が共に、粒子状イオン交換樹脂から構成される場合、アニオン交換領域とカチオン交換領域の境界部分には中間イオン交換膜が配置され、この中間イオン交換膜が境界面を構成する。
(陽極及び陰極)
陽極の材料としては特に限定されないが、電気式脱イオン水製造装置の運転時に塩素が発生する場合があるため、耐塩素性を有するものが好ましい。陽極の材料としては例えば、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいはこれらの貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を用いることができる。
陰極の材料としては、陰極としての機能を発揮するものであれば特に限定されないが、例えば、板状のステンレスや網状のステンレスを用いることができる。
なお、典型的には、陽極及び陰極は略平行となるように配置されていれば良く、厳密に平行となるように配置されていなくても良い。
以下、電気式脱イオン水製造装置の具体例を説明する。下記第1〜第5実施例では、アニオン交換体は、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体となっている。
なお、下記具体例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。また、下記具体例では、便宜上、複数の実施例に分割して説明する。しかし、特に明示した場合及び原理的に不可能な場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例の関係にある。
(第1実施例)
図2は、本実施例の電気式脱イオン水製造装置を示す図である。図2に示すように、この電気式脱イオン水製造装置では、陽極7/陽極室5/アニオン交換膜2a/モノリス状アニオン交換体11からなるアニオン交換領域15/粒子状カチオン交換樹脂10が充填されたカチオン交換領域16/カチオン交換膜2b/陰極室6/陰極8の順に配置されている。脱塩室3内には、モノリス状アニオン交換体11及び粒子状カチオン交換樹脂10が充填されている。
脱塩室3内において、このモノリス状アニオン交換体11が占める領域がアニオン交換領域15を構成する。また、脱塩室3内において、この粒子状カチオン交換樹脂10が充填された領域がカチオン交換領域16を構成する。このアニオン交換領域15とカチオン交換領域16の境界面14は、アニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対して平行となっている。すなわち、本実施例では、実質的に、モノリス状アニオン交換体11のカチオン交換膜2bに対向する面(陰極8側の面)が境界面14を構成する。
本実施例では、モノリス状アニオン交換体11を用いることにより、境界面14をアニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対して平行となるように制御し易くなる。この結果、通電時の脱塩室内の電流の流れの偏りが生じにくくなり、処理水質の低下を効果的に防止できる。また、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を使用しているため、電圧異常の発生を防止できると共に耐熱性を向上させることができる。
また、装置の構成が簡易であるため、低コスト化を図ることができる。更に、通常の運転時には、従来の電気式脱イオン水製造装置では、脱塩室内への被処理水の流れの発生/停止に伴い粒子状カチオン交換樹脂の充填状態が不均一となる場合があった。しかし、本実施例では、脱塩室3内にモノリス状アニオン交換体11を設けることにより、粒子状カチオン交換樹脂10の充填状態を固定して、その充填状態が不均一となるのを防止することができる。
(第2実施例)
図3は、本実施例の電気式脱イオン水製造装置を示す図である。図3に示すように、この電気式脱イオン水製造装置では、陽極7/陽極室5/アニオン交換膜2a/粒子状アニオン交換樹脂13が充填されたアニオン交換領域15/モノリス状カチオン交換体12からなるカチオン交換領域16/カチオン交換膜2b/陰極室6/陰極8の順に配置されている。脱塩室3内には、モノリス状カチオン交換体12及び粒子状アニオン交換樹脂13が充填されている。
脱塩室3内において、このモノリス状カチオン交換体12が占める領域がカチオン交換領域16を構成する。また、脱塩室3内において、この粒子状アニオン交換樹脂13が充填された領域がアニオン交換領域15を構成する。このアニオン交換領域15とカチオン交換領域16との境界面14は、アニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対して平行となっている。すなわち、本実施例では、実質的に、モノリス状カチオン交換体12のアニオン交換膜2aに対向する面(陽極7側の面)が境界面14を構成する。
本実施例ではモノリス状カチオン交換体12を用いることにより、境界面14をアニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対して平行に制御し易くなり、処理水質の低下を効果的に防止できる。また、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を使用しているため、電圧異常の発生を防止できると共に耐熱性を向上させることができる。
また、装置の構成が簡易であるため、低コスト化を図ることができる。更に、脱塩室3内にモノリス状カチオン交換体12を設けることにより、粒子状アニオン交換樹脂13の充填状態を固定して、その充填状態が不均一となるのを防止することができる。
(第3実施例)
図4は、本実施例の電気式脱イオン水製造装置を示す図である。図4に示すように、この電気式脱イオン水製造装置では、陽極7/陽極室5/アニオン交換膜2a/モノリス状アニオン交換体11からなるアニオン交換領域15/モノリス状カチオン交換体12からなるカチオン交換領域16/カチオン交換膜2b/陰極室6/陰極8の順に配置されている。脱塩室3内には、モノリス状アニオン交換体11及びモノリス状カチオン交換体12が充填されている。
脱塩室3内において、このモノリス状アニオン交換体11が占める領域がアニオン交換領域15を構成する。また、脱塩室3内において、このモノリス状カチオン交換体12が占める領域がカチオン交換領域16を構成する。このアニオン交換領域15とカチオン交換領域16の境界面14は、アニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対して平行となっている。すなわち、本実施例では、実質的に、モノリス状アニオン交換体11とモノリス状カチオン交換体12が接触する面が境界面14を構成する。
本実施例では、モノリス状アニオン交換体11とモノリス状カチオン交換体12を用いることにより、境界面14をアニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対して平行とすることが非常に容易となる。この結果、処理水質の低下をより効果的に防止できる。また、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を使用しているため、電圧異常の発生を防止できると共に耐熱性を向上させることができる。
また、装置の構成が簡易であるため、低コスト化を図ることができる。更に、脱塩室3内に粒子状イオン交換樹脂が存在しないため、脱塩室内への被処理水の流れの発生/停止に伴い粒子状イオン交換樹脂の充填状態が不均一となるといったことがない。
(第4実施例)
図5は、本実施例の電気式脱イオン水製造装置を示す図である。図5に示すように、この電気式脱イオン水製造装置では、陽極7/陽極室5/アニオン交換膜2a/粒子状アニオン交換樹脂13が充填されたアニオン交換領域15/中間イオン交換膜17/粒子状カチオン交換樹脂10が充填されたカチオン交換領域16/カチオン交換膜2b/陰極室6/陰極8の順に配置されている。この中間イオン交換膜17は、アニオン交換膜及びカチオン交換膜と対向してこれらの膜と平行となるように設けられ、境界面14を構成する。中間イオン交換膜17によって、脱塩室はアニオン交換膜側の小脱塩室及びカチオン交換膜側の小脱塩室の、2つの小脱塩室に区画される。このアニオン交換膜側の小脱塩室はアニオン交換領域15に相当し、粒子状アニオン交換樹脂が充填される。また、カチオン交換膜側の小脱塩室はカチオン交換領域16に相当し、粒子状カチオン交換樹脂が充填される。
一般的に、脱塩室内に粒子状アニオン交換樹脂と粒子状カチオン交換樹脂を充填する際には、境界面をアニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに平行にすることが困難である。また、脱塩室内への被処理水の流れの発生/停止によって、脱塩室内に充填された粒子状アニオン交換樹脂と粒子状カチオン交換樹脂の充填状態が変化して境界面が不確定となったり、変化する場合がある。しかし、本実施例では、脱塩室3内に中間イオン交換膜17を設けることによって、粒子状アニオン交換樹脂13と粒子状カチオン交換樹脂10が充填される領域を区画することができる。この結果、中間イオン交換膜17の部分を境界面14として画定することができる。そして、境界面14を、アニオン交換膜2a及びカチオン交換膜2bに対してより平行に配置しやすくなる。また、処理水質の低下をより効果的に防止しやすくなる。
中間イオン交換膜17としては、カチオン交換膜またはアニオン交換膜の単一膜、あるいは、アニオン交換膜及びカチオン交換膜の両方を配置した複式膜、のいずれであってもよい。この複式膜とは例えば、上半分をアニオン交換膜、下半分をカチオン交換膜とした場合のように、その厚さ方向に垂直な面において一定の領域をアニオン交換膜が占有し、残りの領域をカチオン交換膜が占有する膜のことを表す。中間イオン交換膜をアニオン交換膜とする場合、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換膜としても良い。
本実施例の電気式脱イオン水製造装置では、アニオン交換領域15内と、カチオン交換領域16内をそれぞれ別々に通水できるようになっている。これらのイオン交換領域への通水の順序は特に限定されず、アニオン交換領域15→カチオン交換領域16の順に通水しても、カチオン交換領域16→アニオン交換領域15の順に通水しても良い。
以下では、カチオン交換領域16→アニオン交換領域15の順に通水した場合を例に挙げて、電気式脱イオン水製造装置の使用方法を説明する。
図5に示すように被処理水はまず、カチオン交換領域16内を流れ、この間に被処理水中のカチオン成分が除去される。この後、被処理水はアニオン交換領域15内を流れ、この間に被処理水中のアニオン成分が除去される。また、陽極室5内には電極水が流れ、アニオン交換膜2aを介して電気的に泳動してくるアニオン成分を受取る。同様に、陰極室6内には電極水が流れ、カチオン交換膜2bを介して電気的に泳動してくるカチオン成分を受け取る。
本実施例ではまず、カチオン交換領域16においてカチオン成分が除去されるため、被処理水中にはアニオン成分が残り、これらの対イオンとして水の解離反応により生じた水素イオンが被処理水中に増えることとなる。この結果、カチオン成分除去後の被処理水のpHは、酸性寄り(例えばpH5〜6)になる。従って、この後、アニオン交換領域15に流入する被処理水は酸性寄りとなり、被処理水中において泳動しやすいアニオン成分である水酸化物イオンが少なくなる。この結果、被処理水中の水酸化物イオン以外のアニオン成分を除去しやすくなる。このようにして本実施例の電気式脱イオン水製造装置では、高純度の水を得ることができる。
また、以下に、カチオン交換領域16→アニオン交換領域15の順に通水した場合の中間イオン交換膜17の機能を説明する。
中間イオン交換膜17としてカチオン交換膜の単一膜を用いた場合、カチオン交換領域16で完全に除去できず、アニオン交換領域15を流れる被処理水中に存在するカチオン成分を、カチオン交換膜(中間イオン交換膜)17を介して再除去することができる。この結果、アニオン成分の除去性能を向上させることができる。
中間イオン交換膜17としてアニオン交換膜の単一膜を用いた場合、被処理水がカチオン交換領域16内を流れている間に、被処理水中のアニオン成分がアニオン交換膜(中間イオン交換膜)17を通ってアニオン交換領域15まで泳動する。これによって、アニオン成分の除去効率を高めることができる。また、カチオン交換領域16における被処理水のpHが酸性からやや中性寄りとなり、カチオン交換領域16の末端付近におけるカチオン成分の除去効率をより高めることができる。
中間イオン交換膜17としてアニオン交換膜及びカチオン交換膜の複式膜を用いた場合、上記カチオン交換膜の単一膜を用いた時、及び上記アニオン交換膜の単一膜を用いた時の両方の利点を兼ね備えることができる。
また、図5では、カチオン交換領域16及びアニオン交換領域15内の被処理水の流れ方向は同方向とした。しかし、被処理水の流れ方向はこれに限定されるわけではなく、カチオン交換領域16内の被処理水の流れ方向と、アニオン交換領域15内の被処理水の流れ方向は逆方向であっても良い。
(第5実施例)
図6は、第1実施例の変形例を示す図である。図6に示すように、この電気式脱イオン水製造装置では、陽極7/陽極室18aと、陰極室18b/陰極8との間に、脱塩室3と濃縮室18cとが交互に配置された構造を構成する点が第1実施例と異なる。脱塩室3は、陽極側から陰極側に向かって、アニオン交換膜2a/アニオン交換領域15/カチオン交換領域16/カチオン交換膜2bの順に配置されている。各脱塩室3内には境界面14が存在する。本実施例の電気式脱イオン水製造装置は、複数の脱塩室と濃縮室が設けられたものであるため、被処理水中のイオン交換能を高めることができる。
濃縮室18cには、陽極室18a及び陰極室18bと同様にイオン交換体を充填しても良い。この場合、濃縮室18cは、アニオン交換体の単床、カチオン交換体の単床、又は、アニオン交換体とカチオン交換体の混床の何れの形態としても良い。
なお、第5実施例では、第1実施例の変形例として、脱塩室及び濃縮室を複数、設けた例を挙げた。しかし、この脱塩室及び濃縮室を複数、設ける構造は、第1実施例の変形例に限定されるわけではなく、第2〜第4実施例の電気式脱イオン水製造装置において、上記のように複数の脱塩室と濃縮室を設けても良い。
(第6実施例)
本実施例は、第4及び第5実施例の変形例である。本実施例は、脱塩室へのイオン交換体の充填形態が、第4及び第5実施例とは異なる。本変形例の一例では、アニオン交換膜側の小脱塩室内にカチオン交換体、カチオン交換膜側の小脱塩室内にアニオン交換体を充填しても良い。また、アニオン交換膜側の小脱塩室及びカチオン交換膜側の小脱塩室の一方又は双方を、アニオン交換体とカチオン交換体の混床形態としても良い。これらの場合、アニオン交換膜側の小脱塩室及びカチオン交換膜側の小脱塩室のうち少なくとも一方の小脱塩室に充填されたアニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する。
また、中間イオン交換膜を、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換膜としても良いし、カチオン交換膜としても良い。
第6実施例における脱塩室の具体的な構成としては、下記の例を挙げることができる。
(a)アニオン交換膜側の小脱塩室内にアニオン交換体を充填/一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室内にカチオン交換体を充填
(b)アニオン交換膜側の小脱塩室内に一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を充填/カチオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室内にカチオン交換体を充填
(c)アニオン交換膜側の小脱塩室内に、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体とカチオン交換体を充填/アニオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室内にカチオン交換体を充填
(d)アニオン交換膜側の小脱塩室内に、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体とカチオン交換体を充填/カチオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室内にカチオン交換体を充填
(e)アニオン交換膜側の小脱塩室内にアニオン交換体を充填/一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室内に、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体とカチオン交換体を充填
(f)アニオン交換膜側の小脱塩室内に一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を充填/カチオン交換膜/カチオン交換膜側の小脱塩室内に、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体とカチオン交換体を充填。
上記第1〜第5実施例において、アニオン交換領域には、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体以外に、他のアニオン交換体を充填しても良い。
(実施例1)
図1に示す電気式脱イオン水製造装置を準備した。粒子状アニオン交換樹脂4には、イオン交換基として一般式(2)で表される第4級アンモニウム塩基を有する、PWA6(ローム・アンド・ハース社製)を用いた。また、粒子状カチオン交換樹脂1にはIR120B(ローム・アンド・ハース社製)を用いた。
粒子状アニオン交換樹脂4を80mL、粒子状カチオン交換樹脂1を80mL、充填させた。なお、粒子状アニオン交換樹脂4と粒子状カチオン交換樹脂1の体積はタッピング法によって測定した。陽極板7及び陰極板8の大きさは縦10cm、横10cmとした。
4L/hの流量でUPW(超純水、温度25℃、導電率0.1μS/cm)を、脱塩室に流した。また、陽極室5及び陰極室6には、UPW(超純水、温度25℃、導電率0.1μS/cm)を4L/hの流量で流した。UPWが陽極室5及び陰極室6を流れる方向は、UPWが脱塩室を流れる方向と逆方向とした。そして、陽極板7と陰極板8間に0.20A及び1.0Aの電流を流し、2時間、経過した時の、領域20における電圧を測定した。この結果を、表1に示す。
(比較例1)
アニオン交換体として、粒子状アニオン交換樹脂 IRA402BL(ローム・アンド・ハース社製)を80mL、充填した以外は、実施例1と同様にして試験を行った。この粒子状アニオン交換樹脂は、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有さない。この後、実施例1と同様にして、領域20における電圧を測定した。この結果を表1に示す。
Figure 2011161346
表1に示すとおり、実施例1では、電流0.2Aにおいて電圧1V、電流1.0Aにおいて電圧2Vであり、電流0.2A及び1.0Aの何れの場合も電圧値は小さな値となった。これに対して、比較例1では、電流0.2Aにおいて電圧4V、1.0Aにおいて電圧45Vであり、電流0.2A及び1.0Aの何れの場合も電圧値は大きな値を示した。
このように電流が0.2A及び1.0Aの何れのときも、実施例1と比べて比較例1では電圧値が大きな値となっており、電圧異常が発生していることが分かる。
また、実施例1で使用したPWA6(ローム・アンド・ハース社製)の耐熱温度は75℃であるため、脱塩室内に高温の凝縮水を流した場合であってもアニオン交換体が劣化しない。
以上より、脱塩室内に、イオン交換基として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体を充填することにより、耐熱性に優れ、操作電圧を低くして安定した電気式脱イオン水製造装置の運転が可能なことを確認できた。
1 カチオン交換体
2a アニオン交換膜
2b カチオン交換膜
3 脱塩室
4 アニオン交換体
5 陽極室
6 陰極室
7 陽極
8 陰極
10 粒子状カチオン交換樹脂
11 モノリス状アニオン交換体
12 モノリス状カチオン交換体
13 粒子状アニオン交換樹脂
14 境界面
15 アニオン交換領域
16 カチオン交換領域
17 中間イオン交換膜
18a 陽極室
18b 陰極室
18c 濃縮室
19 粒子状アニオン交換樹脂

Claims (15)

  1. アニオン交換膜とカチオン交換膜とで区画され、アニオン交換体を有する脱塩室と、
    前記脱塩室の外側に、前記アニオン交換膜と対向するように設けられた陽極と、
    前記脱塩室の外側に、前記カチオン交換膜と対向するように設けられた陰極と、
    を有する電気式脱イオン水製造装置であって、
    前記アニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する、電気式脱イオン水製造装置。
    Figure 2011161346
    (ただし、上記一般式(1)中、R1〜R3のうち少なくとも一つの基は炭素数が2以上のアルキル基、X-は対イオンを表す。)
  2. 前記一般式(1)において、前記R1〜R3はそれぞれ独立して炭素数が2以上5以下のアルキル基である、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  3. 前記一般式(1)において、前記R1〜R3はエチル基である、請求項1又は2に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  4. 更に、前記アニオン交換膜及びカチオン交換膜と対向すると共に、前記脱塩室を、アニオン交換膜側の小脱塩室及びカチオン交換膜側の小脱塩室に区画するように前記脱塩室内に設けられた中間イオン交換膜を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  5. 前記中間イオン交換膜は、前記アニオン交換膜及びカチオン交換膜に対して略平行に配置される、請求項4に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  6. 前記アニオン交換膜側の小脱塩室内にアニオン交換体を充填し、
    前記カチオン交換膜側の小脱塩室内にカチオン交換体を充填する、請求項4又は5に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  7. 前記アニオン交換膜側の小脱塩室内に、イオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体、及びカチオン交換体を充填する、請求項4又は5に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  8. 前記カチオン交換膜側の小脱塩室内に、イオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換体、及びカチオン交換体を充填する、請求項4、5又は7に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  9. 前記中間イオン交換膜は、イオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するアニオン交換膜である、請求項6〜8の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  10. 前記中間イオン交換膜はカチオン交換膜であり、
    前記アニオン交換膜側の小脱塩室内に充填された前記アニオン交換体の少なくとも一部は、イオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する、請求項6に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  11. 下記(a)〜(c)の何れか一つの形態となるように、前記脱塩室にカチオン交換体及び前記アニオン交換体が充填される、請求項1〜3の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
    (a)前記アニオン交換膜側にイオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有する粒子状アニオン交換樹脂、前記カチオン交換膜側にモノリス状カチオン交換体が充填され、前記モノリス状カチオン交換体のアニオン交換膜に対向する境界面は前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜と略平行である形態、
    (b)前記アニオン交換膜側にイオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するモノリス状アニオン交換体、前記カチオン交換膜側に粒子状カチオン交換樹脂が充填され、前記モノリス状アニオン交換体のカチオン交換膜に対向する境界面は前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜と略平行である形態、
    (c)前記アニオン交換膜側にイオン交換基として前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩基を有するモノリス状アニオン交換体、前記カチオン交換膜側にモノリス状カチオン交換体が充填され、前記モノリス状アニオン交換体とモノリス状カチオン交換体の境界面は前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜と略平行である形態。
  12. 前記陽極と陰極の間に複数の前記脱塩室を有する、請求項1〜11の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  13. 一つの前記脱塩室を有する、請求項1〜11の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  14. 前記脱塩室を一以上、有し、
    前記脱塩室は、更にカチオン交換体を含み、
    前記アニオン交換体と前記カチオン交換体は混床形態で前記脱塩室内に充填される、請求項1〜3の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
  15. 前記脱塩室を複数、有し、
    複数の前記脱塩室は全て、更にカチオン交換体を含み、
    全ての前記脱塩室は、前記アニオン交換体と前記カチオン交換体が混床形態で充填される、請求項1〜3の何れか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
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