本発明のEDIは、カチオン交換膜とアニオン交換膜と中間イオン交換膜とで区画され脱塩室が設けられ、少なくとも前記中間イオン交換膜上に設けられた界面樹脂層と、前記界面樹脂層に添って形成された脱塩樹脂層とを有するものである。本発明のEDIにおける、運転時の操作電圧の低減の原理について、図1、図2を用いて説明する。「イオン交換膜と異なる電荷の界面イオン交換樹脂」とは、アニオン交換膜に対するカチオン交換樹脂、又は、カチオン交換膜に対するアニオン交換樹脂を意味する。
図1は、本発明のEDIの脱塩室の部分断面図である。図1に示すように、陰極側に配置されたカチオン交換膜20と、陽極側に配置されたアニオン交換膜24とで仕切られた空間に、イオン交換樹脂が充填され脱塩室10が形成されている。カチオン交換膜20とアニオン交換膜24との間には、中間イオン交換膜22としてカチオン交換膜が配置されている。カチオン交換膜20と中間イオン交換膜22との間に、カチオン交換樹脂17が充填され、小脱塩室16が形成されている。アニオン交換膜24と中間イオン交換膜22との間には、中間イオン交換膜22上に、界面イオン交換樹脂13からなる粒子が単層状に形成された界面樹脂層12と、該界面樹脂層12とアニオン交換膜24との間に脱塩イオン交換樹脂15が充填され形成された脱塩樹脂層14とが設けられている。前記界面樹脂層12と前記脱塩樹脂層14とで、小脱塩室11が構成されている。こうして、脱塩室10は、脱塩室10の厚さ方向に、中間イオン交換膜22により区画され形成された、小脱塩室11と小脱塩室16とにより構成されている。
前記界面イオン交換樹脂13は、中間イオン交換膜22と電荷の異なるイオン交換樹脂、即ちアニオン交換樹脂である。脱塩イオン交換樹脂15は、界面イオン交換樹脂13と異なるアニオン交換樹脂である。
小脱塩室11に被処理水を流通させ電圧を印加すると、小脱塩室11内で、被処理水中のアニオン成分は、主に脱塩イオン交換樹脂15に吸着する。他方、界面樹脂層12と中間イオン交換膜22との接点、即ち、アニオン交換樹脂とカチオン交換膜との接点である異種イオン界面では、水の電気分解が起こり、H+とOH−とが生成する。生成されたH+は、陰極に引き寄せられ、中間イオン交換膜22を透過し、小脱塩室16に移動する。そして、小脱塩室16を形成するカチオン交換樹脂17の再生に利用される。小脱塩室11は、界面樹脂層12と脱塩樹脂層14とが、同じ電荷のイオン交換樹脂で形成されている。このため、界面イオン交換樹脂13と中間イオン交換膜22との接点で生成されたOH−は、陽極に引き寄せられ、界面イオン交換樹脂13内を移動した後、脱塩イオン交換樹脂15内を円滑に移動する。この間、OH−は界面イオン交換樹脂13、脱塩イオン交換樹脂15の再生に利用される。
一般に、異種イオン界面で水分解性能が高いイオン交換樹脂は、イオン成分の除去性能が低く、イオン成分の除去性能が高いイオン交換樹脂は、水分解性能が低いことが多い。このため、脱塩室10内のイオン交換樹脂の全てを水分解性能が高いイオン交換樹脂とすると、得られる脱イオン水の純度が低くなる場合がある。また、脱塩室10内のイオン交換樹脂の全てをイオン成分の除去性能が高いイオン交換樹脂とすると、異種イオン界面での電気抵抗が高く、電圧が上昇しやすくなる。かかる状況において、水分解を促進するためには、操作電圧を高くする必要がある。小脱塩室16内の水分解を促進するには、イオン交換樹脂を混床形態として充填する方法が挙げられるが、混床形態とすると異種イオン界面が必要以上に存在することになるため、電気抵抗が高くなり、結果として操作電圧が高くなる。
本発明のEDIによれば、イオン交換膜上に界面イオン交換樹脂からなる粒子が単層状に形成された界面樹脂層を備えることで、脱塩室内のイオン交換樹脂の再生に必要なH+、OH−を生成するための異種イオン界面の形成を任意の領域に制御することができる。このため、EDI全体の電気抵抗を低くすることができる。加えて、中間イオン交換膜上に界面樹脂層が設けられているため、異種イオン界面で生成したH+及びOH−は、中間イオン交換膜を介して隣接する小脱塩室に充填されたイオン交換樹脂の再生に効率的に利用できる。そして、被処理水の水質、得られる脱イオン水の水質、被処理水の量等に応じて、脱塩イオン交換樹脂を選択することで、高純度の脱イオン水を得ることができる。
図2は、中間イオン交換膜をアニオン交換膜とした、本発明のEDIの脱塩室の部分断面図である。図2に示すように、陰極側に配置されたカチオン交換膜20と、陽極側に配置されたアニオン交換膜24とで仕切られた空間に、イオン交換樹脂が充填され脱塩室30が形成されている。カチオン交換膜20とアニオン交換膜24との間には、中間イオン交換膜42としてアニオン交換膜が配置されている。アニオン交換膜24と中間イオン交換膜42とで仕切られた空間に、アニオン交換樹脂37が充填され、小脱塩室36が形成されている。カチオン交換膜20と中間イオン交換膜42とで仕切られた空間には、中間イオン交換膜42上に、界面イオン交換樹脂33からなる粒子が単層状に形成された界面樹脂層32と、該界面樹脂層32とカチオン交換膜20との間に脱塩イオン交換樹脂35が充填され形成された脱塩樹脂層34とが設けられている。前記界面樹脂層32と前記脱塩樹脂層34とで、小脱塩室31が構成されている。こうして、脱塩室30は、脱塩室30の厚さ方向に、中間イオン交換膜42により区画され形成された、小脱塩室31と小脱塩室36により構成されている。
前記界面イオン交換樹脂33は、中間イオン交換膜42と電荷の異なるイオン交換樹脂、即ちカチオン交換樹脂である。脱塩イオン交換樹脂35は、界面イオン交換樹脂33と異なるカチオン交換樹脂である。
小脱塩室31に被処理水を流通させ電圧を印加すると、小脱塩室31内で、被処理水中のカチオン成分は、主に脱塩イオン交換樹脂35に吸着する。他方、界面樹脂層32と中間イオン交換膜42との接点、即ち、カチオン交換樹脂とアニオン交換膜との接点である異種イオン界面では、水の電気分解が起こり、H+とOH−とが生成する。生成されたOH−は、陽極に引き寄せられ、中間イオン交換膜42を透過し、小脱塩室36へ移動する。そして、OH−は、アニオン交換樹脂37の再生に利用される。小脱塩室31は、界面樹脂層32と脱塩樹脂層34とが、同じ電荷のイオン交換樹脂で形成されている。このため、界面イオン交換樹脂33と中間イオン交換膜42との接点で生成されたH+は、陰極に引き寄せられ、界面イオン交換樹脂33内を移動した後、脱塩イオン交換樹脂35内を円滑に移動する。この間、H+は界面イオン交換樹脂33と中間イオン交換膜42の再生に利用される。
本発明のEDIによれば、界面樹脂層の形成により、脱塩室内のイオン交換樹脂の再生に必要なH+、OH−を生成するための異種イオン界面の形成を任意の領域に制御することができる。このため、EDI全体の電気抵抗を低くすることができる。加えて、中間イオン交換膜上に界面樹脂層が設けられているため、異種イオン界面で生成したH+及びOH−は、中間イオン交換膜を介して隣接する小脱塩室に充填されたイオン交換樹脂の再生に効率的に利用できる。そして、被処理水の水質、得られる脱イオン水の水質、被処理水の量等に応じて、脱塩イオン交換樹脂を選択することで、高純度の脱イオン水を得ることができる。
本発明のEDIについて、例を挙げて説明するが、本実施形態に限定されるものではない。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第一の実施形態のEDI200を示す模式図である。図3に示す通り、EDI200は、陰極102と陽極132との間に、脱塩室220と、脱塩室220の両側に設けられた濃縮室110とが配置されている。そして、脱塩室220は、中間イオン交換膜226により、その厚さ方向に略二分されている。本実施形態において、「界面イオン交換樹脂と異なるイオン交換樹脂」は、脱塩イオン交換樹脂235である。
脱塩室220は、小脱塩室222と小脱塩室230とで構成されている。小脱塩室222は、陰極102側から順に、カチオン交換膜221と、枠体224と、カチオン交換膜である中間イオン交換膜226とが配置され、枠体224の開口部にイオン交換樹脂223が充填され形成されている。小脱塩室230は、陰極102側から順に中間イオン交換膜226と、枠体231と、アニオン交換膜236とが配置され、中間イオン交換膜226上に形成された界面樹脂層232と、該界面樹脂層232とアニオン交換膜236との間に形成された脱塩樹脂層234とで構成されている。界面樹脂層232は、中間イオン交換膜226上に、界面イオン交換樹脂233からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層234は、前記界面樹脂層232とアニオン交換膜236との間に、脱塩イオン交換樹脂235が充填され、形成されている。小脱塩室222には、被処理水流入ライン225と、被処理水流出ライン227とが接続されている。小脱塩室230には、被処理水流入ライン237と脱イオン水流出ライン238とが接続されている。そして、被処理水流出ライン227と被処理水流入ライン237とは、図示されない配管で接続されている。
濃縮室110は、脱塩室220の両側に、枠体112が配置され、該枠体112の開口部にイオン交換樹脂111が充填され形成されている。濃縮室110には、濃縮水流入ライン116と濃縮水流出ライン118とが接続されている。
陰極102と陽極132とは、図示されない電源と接続されている。
陰極室104は、陰極102と、枠体106と、仕切り膜107とが陰極102側から順に配置され、枠体106の開口部にイオン交換樹脂105が充填され、形成されている。陰極室104には、電極水流入ライン108と、電極水流出ライン109とが接続されている。
陽極室130は、仕切り膜134と、枠体136と、陽極132とが陰極102側から順に配置され、枠体136の開口部にイオン交換樹脂131が充填され、形成されている。陽極室130には、電極水流入ライン137と、電極水流出ライン138とが接続されている。
界面樹脂層232は、中間イオン交換膜226上に、異なる電荷のイオン交換樹脂、即ち、界面イオン交換樹脂233からなる粒子が単層状に形成された層である。前記界面樹脂層232の形成方法は、例えば、次の方法により界面樹脂層232を形成することができる。まず、中間交換膜226を枠体224と枠体231とで挟持し、枠体224側の中間イオン交換膜226の膜面をプラスチックフィルム等のシートで覆う。枠体231の開口部に界面イオン交換樹脂233を充填する。この際、カチオン交換膜である中間イオン交換膜226と界面イオン交換樹脂233とは電荷が異なるため、中間イオン交換膜226に接触した界面イオン交換樹脂233が吸着する。その後、中間イオン交換膜226に接触していない界面イオン交換樹脂233を水中で振り落とすことで、界面樹脂層232を形成することができる。
イオン交換膜は、大別すると、原料モノマー液を補強体に含浸させた後に重合させ、全体を均質に形成した均質膜と、イオン交換樹脂を溶解成型可能なポリオレフィン系樹脂と共に粉砕成型した不均質膜の2種類がある。中間イオン交換膜226には、均質膜を用いることが好ましい。
中間イオン交換膜226は、カチオン交換膜である。カチオン交換膜226のイオン形は特に限定されないが、再生形であることが好ましく、塩形のカチオン交換膜を再生形とした後に用いてもよい。再生形を用いることで、界面樹脂層232の形成が容易なためである。なお、カチオン交換膜における再生形とは、交換基の対イオンが、H+に置換されているものをいう。
中間イオン交換膜226は、例えば、高い架橋度を有し、長期間のEDI運転においても電圧上昇が起きにくい膜を選択することが好ましい。このようなイオン交換膜が水分解点に適しているためである。なお、水分解点とは、異種イオン界面の内、水解離が起こる部分を意味し、例えば、EDIの陽極側に位置するアニオン交換樹脂と陰極側に位置するカチオン交換膜の接点部分である。
カチオン交換膜221は特に限定されず、均質膜であっても不均質膜であってもよい。
アニオン交換膜236は特に限定されず、均質膜であっても不均質膜であってもよい。
界面イオン交換樹脂233は、例えば、長期間のEDI運転においても電圧上昇が起きにくい樹脂を選択することが好ましい。
界面イオン交換樹脂233は、アニオン交換樹脂であれば特に限定されず、I形強塩基性アニオン交換樹脂、II形強塩基性アニオン交換樹脂、中塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂のいずれも用いることができる。中でも、カチオン交換膜である中間イオン交換膜226との接点(水分解点)での水分解性能に優れる、II形強塩基性アニオン交換樹脂、中塩基性アニオン交換樹脂を用いることが好ましい。例えば、市販品として、II形強塩基性アニオン交換樹脂としてアンバーライト(商品名)IRA411(ローム・アンド・ハース社製)、中塩基性アニオン交換樹脂としてアンバーライト(商品名)IRA478RF(ローム・アンド・ハース社製)が挙げられる。
ここで、強塩基性アニオン交換樹脂とは、第4級アンモニウム塩基(R−N+R1R2R3)等の強塩基性官能基が導入されたアニオン交換樹脂である。第4級アンモニウム塩基は、テトラメチルアミンのようにその窒素に結合する基がアルキル基(例えば、メチル基)だけの場合をI形、例えばトリメチルアミノエタノールのように該窒素に結合する基の中にアルカノール基(例えば、−C2H4OH等)を含む場合をII形といい、II形の方がI形よりもアニオン成分に対する吸着力が低い。このようなI形の官能基が導入されたアニオン交換樹脂をI形強塩基性アニオン交換樹脂といい、II形の官能基が導入されたアニオン交換樹脂をII形強塩基性アニオン交換樹脂という。弱塩基性アニオン交換樹脂は、第1〜3級アミン等の弱塩基性官能基が導入されたアニオン交換樹脂である。中塩基性アニオン交換樹脂は、第4級アンモニウム塩基のような強塩基性官能基と、第1〜3級アミンのような弱塩基性官能基とが、強塩基性官能基数/弱塩基性官能基数で表される比率5/5〜3/7で導入されたアニオン交換樹脂である。このようなアニオン交換樹脂は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
界面イオン交換樹脂233のイオン形は特に限定されないが、再生形であることが好ましく、塩形のアニオン交換樹脂を再生形とした後に用いてもよい。再生形を用いることで界面樹脂層232の形成が容易なためである。なお、アニオン交換樹脂における再生形とは、交換基の対イオンが、OH−に置換されているものをいう。
界面イオン交換樹脂233の母体構造は特に限定されず、ゲル形、マクロポーラス形のいずれも用いることができる。また、界面イオン交換樹脂233の母体の材質は特に限定されず、スチレン系、アクリル系のいずれも用いることができる。
脱塩イオン交換樹脂235は、界面イオン交換樹脂233と異なるアニオン交換樹脂であれば特に限定されず、I形強塩基性アニオン交換樹脂、II形強塩基性アニオン交換樹脂、中塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂のいずれも用いることができる。中でも、被処理水中の弱酸成分の除去性能に優れるI形強塩基性アニオン交換樹脂を用いることが好ましい。脱塩イオン交換樹脂235の母体構造、母体の材質は、界面イオン交換樹脂233と同様である。
また、脱塩イオン交換樹脂235は、単一種のアニオン交換樹脂であってもよいし、複数種のアニオン交換樹脂が混合されたものであってもよい。
ここで、アニオン交換樹脂における、「界面イオン交換樹脂と異なるイオン交換樹脂」とは、塩基度、母体構造、母体の材質の少なくとも1つが異なるもののみならず、充填形態が異なるものを含む概念である。充填形態とは、例えば、界面樹脂層232がII形強塩基性アニオン交換樹脂の単床形態であり、脱塩樹脂層234がI形及びII形強塩基性アニオン交換樹脂の混床形態とした場合を挙げることができる。
イオン交換樹脂223は、カチオン交換樹脂を含むものであれば特に限定されず、被処理水の水質や、脱イオン水の水質、被処理水の量等を勘案して決定することができる。
また、小脱塩室222におけるイオン交換樹脂223の充填形態は特に限定されず、被処理水の水質や、脱イオン水の水質、被処理水の量等を勘案して決定することができる。例えば、カチオン交換樹脂の単床形態等が挙げられる。
枠体224は、絶縁性を有し、電極水が漏洩しない素材であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、ノリル等の樹脂製の枠体を挙げることができる。枠体224の厚さは特に限定されることなく、所望する小脱塩室222の厚さに応じて設定することができる。枠体231の材質は、枠体224と同じである。枠体231の厚さは、枠体224の厚さと同様に、所望する小脱塩室230の厚さに応じて設定することができる。
脱塩室220の厚さは特に限定されず、イオン交換樹脂の種類や処理量等を勘案して、適切な厚さを決定することが好ましい。例えば、脱塩室120の厚さは、2〜100mmの範囲で決定することができ、10mm以上としてもよいし、20mm以上としてもよい。
小脱塩室222の厚さは、被処理水や脱イオン水の水質、処理量を勘案して決定する事が好ましく、例えば、1〜50mmの範囲で決定することができ、5mm以上としてもよいし、10mm以上としてもよい。小脱塩室230の厚さは、小脱塩室222の厚さと同様である。なお、小脱塩室222、230の厚さは同じとしてもよいし、異なる厚さとしてもよい。
小脱塩室230における、界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235の充填量は特に限定されないが、界面イオン交換樹脂233と脱塩イオン交換樹脂235とが被処理水で膨潤された際の体積の合計が、枠体231の開口部の容積に対して、1〜1.5体積倍であることが好ましく、1.1〜1.3体積倍であることがより好ましい。1体積倍未満であると、EDI200の運転時に界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235が流動し、界面樹脂層232を形成する界面イオン交換樹脂233が欠落する可能性がある。1.5体積倍を超えると、中間イオン交換膜226及びアニオン交換膜236への負荷が高くなり、中間イオン交換膜226又はアニオン交換膜236が破損するおそれがあるためである。加えて、通水差圧が高くなり、被処理水を通水しにくくなるおそれがある。さらに上記範囲であれば、EDI200の運転時において、小脱塩室230内が界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235で満たされ、電気抵抗が低くなるためである。
濃縮室110のイオン交換樹脂111は特に限定されず、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂のいずれも用いることができる。アニオン交換樹脂としてはI形強塩基性アニオン交換樹脂、II形強塩基性アニオン交換樹脂、中塩基性アニオン交換樹脂、弱塩基性アニオン交換樹脂が挙げられ、例えば、市販品としてローム・アンド・ハース社製のアンバーライト(商品名)を挙げることができる。前記カチオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂が挙げられ、例えば、市販品として、ローム・アンド・ハース社製のアンバーライト(商品名)が挙げられる。アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂は、いずれも、イオン形、母体構造、母体の材質、架橋度は特に限定されず、被処理水の水質等を勘案して決定することが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
濃縮室110におけるイオン交換樹脂111の充填形態は特に限定されないが、アニオン交換樹脂の単床形態、カチオン交換樹脂の単床形態、又は、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混床形態、もしくは、複床形態等のいずれも用いることができる。例えば、濃縮室110のアニオン交換膜236面でのスケール生成防止の観点から、アニオン交換樹脂が単床形態で充填されていてもよい。アニオン交換膜236に接するアニオン交換樹脂の層を有することにより、小脱塩室230から濃縮室110へのアニオン成分の移動が促進され、濃縮室110側のアニオン交換膜236面にアニオン成分が高濃度にて存在して、濃度分極が生じるのを抑制できるためである。
枠体112は、枠体224と同様のものを用いることができる。枠体112の厚さは、所望する濃縮室110の厚さに応じて決定することができる。
濃縮室110の厚さは特に限定されず、被処理水の水質や被処理水の量を勘案して決定することが好ましい。例えば、3〜10mmの範囲で決定することが好ましい。
陰極102は、陰極として機能を発揮するものであれば特に限定されず、例えば、板状のステンレスや網状のステンレスを挙げることができる。
陽極132は、陽極として機能を発揮するものであれば特に限定されないが、被処理水中にCl−が存在する場合には、陽極には塩素発生が起きるため、耐塩素性能を有するものが好ましい。例えば、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属、あるいは前記貴金属をチタン等に被覆した網状あるいは板状の電極を挙げることができる。
仕切り膜107、134は特に限定されず、被処理水の水質や、EDI100の運転条件等を考慮して、選択することができる。例えば、カチオン交換膜、又は、アニオン交換膜を選択することができる。中でも、膜の酸化防止の観点から、カチオン交換膜を用いることが好ましい。また、仕切り膜107、134は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
陰極室104のイオン交換樹脂105は特に限定されず、濃縮室110のイオン交換樹脂111と同様のものを用いることができる。また、イオン交換樹脂105の充填形態は特に限定されず、イオン交換樹脂111と同様である。
陽極室130のイオン交換樹脂131は特に限定されず、濃縮室110のイオン交換樹脂111と同様のものを用いることができる。また、イオン交換樹脂131の充填形態は特に限定されず、イオン交換樹脂111と同様である。
枠体106の材質は、枠体224と同じである。また、枠体106の厚さは特に限定されず、所望する陰極室104の厚さに合わせて決定することができる。例えば、0.3〜4mmの範囲で決定することが好ましい。枠体136の材質は、枠体224と同じである。枠体136の厚さは枠体106と同様に、陽極室130の厚さに合わせて決定することができる。
EDI200による脱イオン水の製造方法について、界面イオン交換樹脂233をII形強塩基性アニオン交換樹脂とし、脱塩イオン交換樹脂235をI形強塩基性アニオン交換樹脂とし、イオン交換樹脂223を強酸性カチオン交換樹脂とした場合を例として説明する。
被処理水を被処理水流入ライン225から、小脱塩室222に流入させる。流入した被処理水は小脱塩室222内のイオン交換樹脂223内を拡散しながら流通し、被処理水流出ライン227から流出する。この間、主に被処理水中のカチオン成分(Na+、Ca2+、Mg2+等)が、イオン交換樹脂223に吸着される。
小脱塩室222を流通した被処理水は、被処理水流出ライン227と、図示されない配管とを順に経由し、被処理水流入ライン237から小脱塩室230に流入する。流入した被処理水は、界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のアニオン成分(Cl−、HCO3 −、CO3 2−、SiO2(シリカは、特別な形態をとることが多いため、一般のイオンとは異なった表示とする)等)は、主に脱塩イオン交換樹脂235に吸着される。また、中間イオン交換膜226と界面イオン交換樹脂233との接点では、水分解点における水分解により、H+とOH−が生成される。生成されたH+は、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜である中間イオン交換膜226を透過し、小脱塩室222へ移動する。そして、小脱塩室222に移動したH+と、イオン交換樹脂223に吸着されたカチオン成分とが交換され、イオン交換樹脂223が再生される。イオン交換樹脂223から脱着したカチオン成分は、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜221を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。
中間イオン交換膜226と界面イオン交換樹脂233との接点で生成したOH−は、陽極132に引き寄せられて移動する。この間、OH−と、小脱塩室230内の界面イオン交換樹脂233及び脱塩イオン交換樹脂235に吸着されているCl−、HCO3 −等のアニオン成分とが交換され、界面イオン交換樹脂233及び脱塩イオン交換樹脂235は再生される。そして、OH−と交換され、脱着したアニオン成分は、陽極132に引き寄せられ、アニオン交換膜236を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から排出される。
こうして、被処理水は、カチオン成分とアニオン成分とが、高度に除去された脱イオン水となって、脱イオン水流出ライン238から流出する。
被処理水は特に限定されることはないが、工業用水や井水の濁質成分を除濁膜にて除去した水を、逆浸透(RO)膜にて処理した水等が挙げられる。
小脱塩室222内における被処理水の通水量は特に限定されることはなく、EDI200の能力や被処理水の水質等を勘案して決定することができる。ここで、通水量は空間速度(SV)で表すことができる。SVが大きすぎると、イオン除去性能が低下したり、SVの上昇に伴う通水速度(LV)の上昇によって差圧が高くなり、小脱塩室222の破損を招いたり、運転上の困難を起こしたりするので好ましくない。一方、SVが小さすぎると、脱イオン水の回収率が低くなり、好ましくない。LVとは、単位面積当たりの流量で、m/hで表される線速度である(以降において同じ)。小脱塩室230内における被処理水の通水量は、小脱塩室222内における被処理水の通水量と同様である。
濃縮室110内における、濃縮水の流量は特に限定されることはなく、EDI200の能力や、被処理水の水質や処理量を勘案して決定することができる。濃縮水は、濃縮室110に移動してきたイオンを濃縮水内に拡散して、EDI200外へ流出させるという目的を有する。このことから、濃縮水の流量は、被処理水の通水量や、被処理水のイオン濃度、脱イオン水の回収率との関係で決定することが好ましく、例えば、下記(1)式で表される濃縮倍率が3〜20となるように、濃縮水の流量を決定することが好ましい。なお、下記(1)式による濃縮倍率は、被処理水と濃縮水に同一の原水を用いて、かつ脱塩室220中のイオンが全て濃縮室110に移行すると仮定し定義付けられる。
濃縮水の流量が少なすぎると、濃縮室110に移動したイオンの濃度拡散にむらが生じ、イオン交換膜面の濃度分極層が厚くなり、スケール生成のおそれがある。一方、濃縮水の流量が多すぎると、脱イオン水の回収率が低下するため好ましくないためである。
濃縮水は、特に限定されることはなく、被処理水と同じ水源の水を濃縮水として使用してもよいし、脱イオン水や純水等を使用してもよい。
陰極102、陽極132に印加する電流は特に限定されることはなく、被処理水の水質や、被処理水の量等を勘案して決定することが好ましい。
陰極室104における電極水は特に限定されることはなく、濃縮水と同様のものを用いることができる。陰極室104、陽極室130における電極水の流量は特に限定されず、印加電圧等に応じて決定することが好ましい。電極水の流量が少なすぎると、発生したH2、O2、Cl2ガスを充分に排出することが困難となり、電極水の流量が多すぎると、回収率が低下するため、好ましくない。
本実施形態によれば、界面樹脂層232に、界面イオン交換樹脂233として水分解性能に優れたII形強塩基性アニオン交換樹脂を用いることで、中間イオン交換膜226と界面イオン交換樹脂233との接点において、低電圧で水分解が良好に行われる。加えて、脱塩イオン交換樹脂235として用いたI形強塩基性アニオン交換樹脂は電気抵抗が低い。さらに、小脱塩室222は、強酸性カチオン交換樹脂が単床形態で充填され、混床形態に比べて電気抵抗が低くなる。このため、脱塩室220全体の電気抵抗を低くし、低い操作電圧でEDIを運転することができる。
小脱塩室222には、カチオン成分に対し高い吸着力を有する強酸性カチオン交換樹脂が単床形態で充填され、脱塩樹脂層234には、脱塩イオン交換樹脂235として、アニオン成分に対し高い吸着力を有するI形強塩基性アニオン交換樹脂が用いられている。加えて、中間イオン交換膜226上に、界面樹脂層232が形成されているため、中間イオン交換膜226と界面イオン交換樹脂233の接点で生成されるH+、OH−をイオン交換樹脂223、界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235の再生に有効活用できる。このため、小脱塩室222と小脱塩室230とを直列的に通水することで、カチオン成分とアニオン成分とが高度に除去された脱イオン水を得ることができる。そして、本実施形態のEDIは、上述の通り操作電圧が低いため、従来のEDIと同等の処理水量であれば、装置のコンパクト化を図ることができる。
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の第二の実施形態のEDI300を示す模式図である。図4に示す通り、EDI300は、陰極102と陽極132との間に、脱塩室320と、脱塩室320の両側に設けられた濃縮室110とが配置されている。そして、脱塩室320は、中間イオン交換膜326により、その厚さ方向に略二分されている。本実施形態において、「界面イオン交換樹脂と異なるイオン交換樹脂」は、脱塩イオン交換樹脂333である。
脱塩室320は、小脱塩室330と小脱塩室340とで構成されている。小脱塩室330は、陰極102側から順にカチオン交換膜221と、枠体224と、中間イオン交換膜326とが配置され、中間イオン交換膜326上に形成された界面樹脂層334と、該界面樹脂層334とカチオン交換膜221との間に形成された脱塩樹脂層332とで構成されている。界面樹脂層334は、中間イオン交換膜326上に、界面イオン交換樹脂335からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層332は、前記界面樹脂層334とカチオン交換膜221との間に、脱塩イオン交換樹脂333が充填され、形成されている。小脱塩室340は、陰極102側から順に、中間イオン交換膜326と、枠体231と、アニオン交換膜236とが配置され、枠体231の開口部にイオン交換樹脂341が充填され形成されている。
小脱塩室330には、被処理水流入ライン336と、被処理水流出ライン337とが接続されている。小脱塩室340には、被処理水流入ライン342と脱イオン水流出ライン344とが接続されている。そして、被処理水流出ライン337と被処理水流入ライン342とは、図示されない配管で接続されている。
界面樹脂層334は、中間イオン交換膜326上に、異なる電荷のイオン交換樹脂、即ち、界面イオン交換樹脂335からなる粒子が単層状に形成された層である。前記界面樹脂層334の形成方法は界面樹脂層232の形成方法と同様である。即ち、界面イオン交換樹脂335を中間イオン交換膜326に接触させて吸着させ、中間イオン交換膜326と接触していない界面イオン交換樹脂335を取り除くことで形成することができる。
本実施形態における中間イオン交換膜326は、アニオン交換膜である。中間イオン交換膜326として用いるアニオン交換膜は、均質膜であることが好ましい。均質膜を用いることで、界面樹脂層334の形成が容易となるためである。
中間イオン交換膜326のイオン形は特に限定されないが、再生形であることが好ましく、塩形のアニオン交換膜を再生した後に用いてもよい。再生形のアニオン交換膜を用いることで、界面樹脂層334の形成が容易となるためである。なお、アニオン交換膜における再生形とは、交換基の対イオンが、OH−に置換されているものをいう。
界面イオン交換樹脂335は、例えば、高い架橋度を有し、長期間のEDI運転においても電圧上昇が起きにくい樹脂を選択することが好ましい。
界面イオン交換樹脂335はカチオン交換樹脂であれば特に限定されず、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂のいずれも用いることができる。中でも、強酸性カチオン交換樹脂を用いることが好ましい。界面イオン交換樹脂335に強酸性カチオン交換樹脂を用いる場合、該強酸性カチオン交換樹脂の架橋度は12%以上であることが好ましい。架橋度が12%以上であると、耐酸化性に優れるためである。このような強酸性カチオン交換樹脂としてアンバーライト(商品名)IRAXT1006CP(ローム・アンド・ハース社製)が挙げられる。
ここで、強酸性カチオン交換樹脂とは、カチオン成分に対する吸着力が比較的高いカチオン交換樹脂であり、スルホン酸基(R−SO3 −H+)等の強酸性交換基を官能基して持つものである。弱酸性カチオン交換樹脂は、カチオン成分に対する吸着力が比較的低いカチオン交換樹脂であり、カルボン酸基(R−COO−H+)等の弱酸性交換基を官能基として持つものである。
界面イオン交換樹脂335のイオン形は特に限定されないが、再生形であることが好ましく、塩形のカチオン交換樹脂を再生形とした後に用いてもよい。再生形を用いることで、界面樹脂層334の形成が容易なためである。なお、カチオン交換樹脂における再生形とは、交換基の対イオンが、H+に置換されているものをいう。
界面イオン交換樹脂335の母体構造は特に限定されず、ゲル形、マクロポーラス形のいずれも用いることができる。また、界面イオン交換樹脂335の母体の材質は特に限定されず、スチレン系、アクリル系のいずれも用いることができる。これらは、被処理水の性状、中間イオン交換膜326の種類、被処理水の量等を勘案して決定することができる。
脱塩イオン交換樹脂333は、界面イオン交換樹脂335と異なるカチオン交換樹脂であれば特に限定されず、強酸性カチオン交換樹脂、弱酸性カチオン交換樹脂のいずれも用いることができる。中でも、被処理水中の弱塩基性成分の除去性能に優れる強酸性カチオン交換樹脂を用いることが好ましい。脱塩イオン交換樹脂333の母体構造は特に限定されず、ゲル形であってもよいし、マクロポーラス形であってもよい。脱塩イオン交換樹脂333の母体の材質は特に限定されず、スチレン系、アクリル系のいずれも用いることができる。また、脱塩イオン交換樹脂333の架橋度は特に限定されず、被処理水の水質、脱イオン水の水質を勘案して決定することができる。
また、脱塩イオン交換樹脂333は、単一種のカチオン交換樹脂であってもよいし、複数種のカチオン交換樹脂が混合されたものであってもよい。
ここで、カチオン交換樹脂における、「界面イオン交換樹脂と異なるイオン交換樹脂」とは、酸度、母体構造、母体の材質、架橋度の少なくとも1つが異なるもののみならず、充填形態が異なるものを含む概念である。充填形態とは、例えば、界面樹脂層334が強酸性カチオン交換樹脂の単床形態であり、脱塩樹脂層332が強酸性カチオン交換樹脂と弱酸性カチオン交換樹脂との混床形態とした場合を挙げることができる。
イオン交換樹脂341はアニオン交換樹脂を含むものであれば特に限定されず、被処理水の水質や、脱イオン水の水質、被処理水の量等を勘案して決定することができる。
また、小脱塩室340におけるイオン交換樹脂341の充填形態は特に限定されず、被処理水の水質や、脱イオン水の水質、被処理水の量等を勘案して決定することができる。例えば、アニオン交換樹脂の単床形態等が挙げられる。
小脱塩室330の厚さは、被処理水や脱イオン水の水質、処理量を勘案して決定する事が好ましく、例えば、1〜50mmの範囲で決定することができ、5mm以上としてもよいし、10mm以上としてもよい。小脱塩室340の厚さは、小脱塩室330の厚さと同様である。なお、小脱塩室330、340の厚さは同じとしてもよいし、異なる厚さとしてもよい。
小脱塩室330における、脱塩イオン交換樹脂333、界面イオン交換樹脂335の充填量は、小脱塩室230の界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235の充填量と同様である。
EDI300による脱イオン水の製造方法について、界面イオン交換樹脂335を架橋度12%の強酸性カチオン交換樹脂とし、脱塩イオン交換樹脂333を架橋度8%の強酸性カチオン交換樹脂とし、イオン交換樹脂341をI形強塩基性アニオン交換樹脂とした場合を例として説明する。
被処理水を被処理水流入ライン336から、小脱塩室330に流入させる。流入した被処理水は小脱塩室330内の脱塩イオン交換樹脂333、界面イオン交換樹脂335内を拡散しながら流通し、被処理水流出ライン337から流出する。この間、主に被処理水中のNa+、Ca2+等のカチオン成分が、脱塩イオン交換樹脂333に吸着される。また、中間イオン交換膜326と界面イオン交換樹脂335の接点では、水分解点における水分解により、H+とOH−が生成される。生成したOH−は、陽極132に引き寄せられ、中間イオン交換膜326を透過し、小脱塩室340に移動する。一方、H+は、陰極102に引き寄せられて移動する。この間、H+と、小脱塩室330内の脱塩イオン交換樹脂333、界面イオン交換樹脂335に吸着されているNa+、Ca2+等のカチオン成分とが交換され、脱塩イオン交換樹脂333、界面イオン交換樹脂335は再生される。そして、H+と交換され、脱着したカチオン成分は、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜221を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。
小脱塩室330を流通した被処理水は、被処理水流出ライン337と、図示されない配管とを順に経由し、被処理水流入ライン342から小脱塩室340に流入する。流入した被処理水は、イオン交換樹脂341内を拡散しながら流通する。この間、主に、被処理水中のCl−、HCO3 −等のアニオン成分は、イオン交換樹脂341に吸着される。イオン交換樹脂341に吸着されているアニオン成分と、小脱塩室330から移動してきたOH−とが交換され、イオン交換樹脂341が再生される。イオン交換樹脂341から脱着したアニオン成分は、陽極132に引き寄せられ、アニオン交換膜236を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。
こうして、被処理水は、カチオン成分とアニオン成分とが、高度に除去された脱イオン水となって、脱イオン水流出ライン344から流出する。
小脱塩室330、340における被処理水の通水量は、第一の実施形態の小脱塩室222、230における被処理水の通水量と同様である。
本実施形態によれば、脱塩室320をその厚さ方向に区画する中間イオン交換膜326上に、界面樹脂層334が形成されているため、中間イオン交換膜326と界面イオン交換樹脂335の接点で生成されるH+、OH−を脱塩イオン交換樹脂333、界面イオン交換樹脂335、イオン交換樹脂341の再生に活用できる。さらに、被処理水を小脱塩室330と小脱塩室340とに、直列的に通水することで、カチオン成分とアニオン成分とが高度に除去された脱イオン水を得ることができる。
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第三の実施形態のEDI400を示す模式図である。図5に示す通り、EDI400は、陰極102と陽極132との間に、脱塩室420と、脱塩室420の両側に設けられた濃縮室110とが配置されている。そして、脱塩室420は、中間イオン交換膜426により、その厚さ方向に略二分されている。本実施形態において、「界面イオン交換樹脂と異なるイオン交換樹脂」は、脱塩イオン交換樹脂445と脱塩イオン交換樹脂433である。
脱塩室420は、小脱塩室222と小脱塩室422とで構成されている。小脱塩室222は、陰極102側から順にカチオン交換膜221と、枠体224と、中間イオン交換膜426とが配置され、枠体224の開口部にイオン交換樹脂223が充填され形成されている。小脱塩室422は、陰極102側から順に中間イオン交換膜426と、枠体231と、アニオン交換膜428とが配置され、枠体231内の上流側に形成されたアニオン交換樹脂床440と、下流側に形成されたカチオン交換樹脂床430とで構成されている。
アニオン交換樹脂床440は、中間イオン交換膜426上に形成された界面樹脂層442と、該界面樹脂層442とアニオン交換膜428との間に形成された脱塩樹脂層444とで構成されている。界面樹脂層442は、中間イオン交換膜426上に、界面イオン交換樹脂443からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層444は、前記界面樹脂層442とアニオン交換膜428との間に、脱塩イオン交換樹脂445が充填され、形成されている。
カチオン交換樹脂床430は、アニオン交換膜428上に形成された界面樹脂層434と、該界面樹脂層434と中間イオン交換膜426との間に形成された脱塩樹脂層432とで構成されている。界面樹脂層434は、アニオン交換膜428上に、界面イオン交換樹脂435からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層432は、前記界面樹脂層434と中間イオン交換膜426との間に、脱塩イオン交換樹脂433が充填され、形成されている。
こうして小脱塩室422には、界面樹脂層及び脱塩樹脂層が、アニオン交換樹脂で形成されたアニオン交換樹脂床440と、界面樹脂層及び脱塩樹脂層が、カチオン交換樹脂で形成されたカチオン交換樹脂床430と、が被処理水の流通方向に多段に形成されている。
小脱塩室222には、被処理水流入ライン436と、配管437とが接続されている。小脱塩室422には配管437と、脱イオン水流出ライン438とが接続されている。
界面樹脂層434は、アニオン交換膜428上に、異なる電荷のイオン交換樹脂、即ち、界面イオン交換樹脂435からなる粒子が単層状に形成された層である。また、界面樹脂層442は中間イオン交換膜426上に、異なる電荷のイオン交換樹脂、即ち、界面イオン交換樹脂443からなる粒子が単層状に形成された層である。前記界面樹脂層434、442の形成方法は、界面樹脂層232の形成方法と同様である。
本実施形態における中間イオン交換膜426は、カチオン交換膜である。中間イオン交換膜426として用いるカチオン交換膜は、第一の実施形態における中間イオン交換膜226に用いるカチオン交換膜と同様である。
アニオン交換膜428は、第二の実施形態の中間イオン交換膜326に用いるアニオン交換膜と同様である。
界面イオン交換樹脂443は、第一の実施形態における界面イオン交換樹脂233と同様である。脱塩イオン交換樹脂445は、第一の実施形態における脱塩イオン交換樹脂235と同様である。
脱塩イオン交換樹脂433は、第二の実施形態における脱塩イオン交換樹脂333と同様である。界面イオン交換樹脂435は、第二の実施形態における界面イオン交換樹脂335と同様である。
小脱塩室422の厚さは、被処理水や脱イオン水の水質、処理量を勘案して決定する事が好ましく、例えば、1〜50mmの範囲で決定することができ、5mm以上としてもよいし、10mm以上としてもよい。なお、小脱塩室222、422の厚さは同じとしてもよいし、異なる厚さとしてもよい。
小脱塩室422における、脱塩イオン交換樹脂433、445、界面イオン交換樹脂435、443の充填量は、小脱塩室230の界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235の充填量と同様である。
EDI400による脱イオン水の製造方法について、界面イオン交換樹脂443をII形強塩基性アニオン交換樹脂とし、脱塩イオン交換樹脂445をI形強塩基性アニオン交換樹脂とし、界面イオン交換樹脂435を架橋度12%の強酸性カチオン交換樹脂とし、脱塩イオン交換樹脂433を架橋度8%の強酸性カチオン交換樹脂とし、イオン交換樹脂223を強酸性カチオン交換樹脂とした場合を例として説明する。
被処理水を被処理水流入ライン436から、小脱塩室222に流入させる。流入した被処理水は小脱塩室222内のイオン交換樹脂223内を拡散しながら流通する。この間、主に被処理水中のNa+、Ca2+等のカチオン成分が、イオン交換樹脂223に吸着される。
小脱塩室222を流通した被処理水は、配管437を経由し、小脱塩室422に流入する。流入した被処理水は、アニオン交換樹脂床440の界面イオン交換樹脂443、脱塩イオン交換樹脂445内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のCl−、HCO3 −等のアニオン成分は、主に脱塩イオン交換樹脂445に吸着される。また、中間イオン交換膜426と界面イオン交換樹脂443との接点では、水分解点における水分解により、H+とOH−が生成される。中間イオン交換膜426と界面イオン交換樹脂443との接点で生成されたH+は、陰極102に引き寄せられ、中間イオン交換膜426を透過し、小脱塩室222へ移動する。そして、小脱塩室422から小脱塩室222に移動してきたH+と、イオン交換樹脂223に吸着されたカチオン成分とが交換され、イオン交換樹脂223が再生される。イオン交換樹脂223から脱着したカチオン成分は、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜221を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。
中間イオン交換膜426と界面イオン交換樹脂443との接点で生成したOH−は、陽極132に引き寄せられて移動する。この間、OH−と、アニオン交換樹脂床440内の界面イオン交換樹脂443及び脱塩イオン交換樹脂445に吸着されているCl−、HCO3 −等のアニオン成分とが交換され、界面イオン交換樹脂443と脱塩イオン交換樹脂445は再生される。そして、OH−と交換され、脱着したアニオン成分は、陽極132に引き寄せられ、アニオン交換膜428を透過し、濃縮室110に移行し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から排出される。
アニオン交換樹脂床440を流通した被処理水は、カチオン交換樹脂床430の脱塩イオン交換樹脂433、界面イオン交換樹脂435内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のNa+、Ca2+等のカチオン成分は、主に脱塩イオン交換樹脂433に吸着される。また、アニオン交換膜428と界面イオン交換樹脂435との接点では、水分解点における水分解により、H+とOH−が生成される。生成されたH+は、陰極102に引き寄せられて移動する。この間、H+と、カチオン交換樹脂床430内の脱塩イオン交換樹脂433及び界面イオン交換樹脂435に吸着されているNa+、Ca2+等のカチオン成分とが交換され、脱塩イオン交換樹脂433と界面イオン交換樹脂435は再生される。そして、H+と交換され、脱着したカチオン成分は、陰極102に引き寄せられ、中間イオン交換膜426を透過し小脱塩室222に移動する。小脱塩室に移動したカチオン成分は、イオン交換樹脂223との吸着と脱着とを繰り返しながら、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜221を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。
アニオン交換膜428と界面イオン交換樹脂435との接点で生成したOH−は、陽極132に引き寄せられ、アニオン交換膜428を透過して濃縮室110に移動する。濃縮室110に移動したOH−は、イオン交換樹脂111の再生に利用され、あるいは、濃縮水に取り込まれて、濃縮水流出ライン118から流出する。
こうして、被処理水は、カチオン成分とアニオン成分とが、高度に除去された脱イオン水となって、脱イオン水流出ライン438から流出する。
小脱塩室422、222における被処理水の通水量は、第一の実施形態の小脱塩室222、230における被処理水の通水量と同様である。
本実施形態によれば、小脱塩室222と、アニオン交換樹脂床440と、カチオン交換樹脂床430との順に被処理水を直列的に通水して処理できるため、2つの小脱塩室で3種類の処理が行える。加えて、アニオン交換樹脂床440、カチオン交換樹脂床430は、それぞれが同じ電荷のイオン交換樹脂で形成されているため、電流の流れ方向において電気抵抗を低くしたまま、アニオン成分とカチオン成分が高度に除去された脱イオン水を得ることができる。
(第四の実施形態)
本発明の第四の実施形態について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の第四の実施形態のEDI500を示す模式図である。図6に示す通り、EDI500は、陰極102と陽極132との間に、脱塩室520と、脱塩室520の両側に設けられた濃縮室110とが配置されている。そして、脱塩室520は、中間イオン交換膜526により、その厚さ方向に略二分されている。本実施形態において、「界面イオン交換樹脂と異なるイオン交換樹脂」は、脱塩イオン交換樹脂533と脱塩イオン交換樹脂545である。
脱塩室520は、小脱塩室522と小脱塩室340とで構成されている。小脱塩室522は、陰極102側から順にカチオン交換膜524と、枠体224と、中間イオン交換膜526とが配置され、枠体224の開口部の上流側に形成されたアニオン交換樹脂床530と、下流側に形成されたカチオン交換樹脂床540とで構成されている。小脱塩室340は、陰極102側から順に中間イオン交換膜526と、枠体231と、アニオン交換膜236とが配置され、枠体231の開口部にイオン交換樹脂341が充填され形成されている。
アニオン交換樹脂床530は、カチオン交換膜524上に形成された界面樹脂層534と、該界面樹脂層534と中間イオン交換膜526との間に形成された脱塩樹脂層532とで構成されている。界面樹脂層534は、カチオン交換膜524上に、界面イオン交換樹脂535からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層532は、前記界面樹脂層534と中間イオン交換膜526との間に、脱塩イオン交換樹脂533が充填され、形成されている。
カチオン交換樹脂床540は、中間イオン交換膜526上に形成された界面樹脂層542と、該界面樹脂層542とアニオン交換膜236との間に形成された脱塩樹脂層544とで構成されている。界面樹脂層542は、中間イオン交換膜526上に、界面イオン交換樹脂543からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層544は、前記界面樹脂層542とカチオン交換膜524との間に、脱塩イオン交換樹脂545が充填され、形成されている。
こうして小脱塩室522には、界面樹脂層及び脱塩樹脂層が、アニオン交換樹脂で形成されたアニオン交換樹脂床530と、界面樹脂層及び脱塩樹脂層が、カチオン交換樹脂で形成されたカチオン交換樹脂床540と、が被処理水の流通方向に多段に形成されている。
小脱塩室522には、被処理水流入ライン536と、被処理水流出ライン537とが接続されている。小脱塩室340には被処理水流入ライン546と脱イオン水流出ライン547とが接続されている。そして、被処理水流出ライン537と、被処理水流入ライン546とは、図示されない配管により接続されている。
界面樹脂層534はカチオン交換膜524上に、異なる電荷のイオン交換樹脂、即ち、界面イオン交換樹脂535からなる粒子が単層状に形成された層である。界面樹脂層542は、中間イオン交換膜526上に、異なる電荷のイオン交換樹脂、即ち、界面イオン交換樹脂543からなる粒子が単層状に形成された層である。前記界面樹脂層534、542の形成方法は、界面樹脂層232の形成方法と同様である。
本実施形態における中間イオン交換膜526は、アニオン交換膜である。中間イオン交換膜526として用いるアニオン交換膜は、第二の実施形態における中間イオン交換膜326として用いるアニオン交換膜と同様である。
カチオン交換膜524は、第一の実施形態の中間イオン交換膜226として用いるカチオン交換膜と同様である。
界面イオン交換樹脂535は、第一の実施形態における界面イオン交換樹脂233と同様である。脱塩イオン交換樹脂533は、第一の実施形態における脱塩イオン交換樹脂235と同様である。
界面イオン交換樹脂543は、第二の実施形態における界面イオン交換樹脂335と同様である。脱塩イオン交換樹脂545は、第二の実施形態における脱塩イオン交換樹脂333と同様である。
小脱塩室522の厚さは、被処理水や脱イオン水の水質、処理量を勘案して決定する事が好ましく、例えば、1〜50mmの範囲で決定することができ、5mm以上としてもよいし、10mm以上としてもよい。なお、小脱塩室340、522の厚さは同じとしてもよいし、異なる厚さとしてもよい。
小脱塩室522における、界面イオン交換樹脂535、543と、脱塩イオン交換樹脂533、545との充填量は、小脱塩室230の界面イオン交換樹脂233、脱塩イオン交換樹脂235の充填量と同様である。
EDI500による脱イオン水の製造方法について、界面イオン交換樹脂535をII形強塩基性アニオン交換樹脂とし、脱塩イオン交換樹脂533をI形強塩基性アニオン交換樹脂とし、界面イオン交換樹脂543を架橋度12%の強酸性カチオン交換樹脂とし、カチオン交換樹脂535を架橋度8%の強酸性カチオン交換樹脂とし、イオン交換樹脂341をI形強塩基性アニオン交換樹脂とした場合を例として説明する。
被処理水を被処理水流入ライン536から、小脱塩室522に流入させる。流入した被処理水は小脱塩室522内に形成されたアニオン交換樹脂床530内の脱塩イオン交換樹脂533、界面イオン交換樹脂535内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のCl−、HCO3 −等のアニオン成分が、主に脱塩イオン交換樹脂533に吸着される。また、カチオン交換膜524と界面イオン交換樹脂535との接点では、水分解点における水分解により、H+とOH−が生成される。生成されたH+は、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜524を透過し、濃縮室110に移動する。濃縮室110に移動したH+は、イオン交換樹脂111の再生に利用され、あるいは、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。
一方、カチオン交換膜524と界面イオン交換樹脂535との接点で生成されたOH−は、陽極132に引き寄せられて移動する。この間、OH−と、アニオン交換樹脂床530内の脱塩イオン交換樹脂533及び界面イオン交換樹脂535に吸着されているCl−、HCO3 −等のアニオン成分とが交換され、脱塩イオン交換樹脂533と界面イオン交換樹脂535は再生される。そして、OH−と交換され、脱着したアニオン成分は、陽極132に引き寄せられ、中間イオン交換膜526を透過し、小脱塩室340に移動する。そして、イオン交換樹脂341との吸着と脱着を繰り返しながら、陽極132に引き寄せられ、アニオン交換膜236を透過して、濃縮室110に移行し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から排出される。
アニオン交換樹脂床530を流通した被処理水は、カチオン交換樹脂床540の界面イオン交換樹脂543、脱塩イオン交換樹脂545内を拡散しながら流通する。この間、被処理水中のNa+、Ca2+等のカチオン成分は、主に脱塩イオン交換樹脂545に吸着される。また、中間イオン交換膜526と界面イオン交換樹脂543との接点では、水分解点における水分解により、H+とOH−が生成される。中間イオン交換膜526と界面イオン交換樹脂543との接点で生成されたH+は、陰極102に引き寄せられて移動する。この間、H+と、カチオン交換樹脂床540内の界面イオン交換樹脂543、脱塩イオン交換樹脂545に吸着されているNa+、Ca2+等のカチオン成分とが交換され、界面イオン交換樹脂543と脱塩イオン交換樹脂545は再生される。そして、H+と交換され、脱着したカチオン成分は、陰極102に引き寄せられ、カチオン交換膜524を透過し、濃縮室110に移動し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から流出する。一方、中間イオン交換膜526と界面イオン交換樹脂543との接点で生成したOH−は、陽極132に引き寄せられ、中間イオン交換膜526を透過して、小脱塩室340に移動する。
カチオン交換樹脂床540を流通した被処理水は、被処理水流出ライン537と、図示されない配管とを順に経由し、被処理水流入ライン546から小脱塩室340に流入する。流入した被処理水は、小脱塩室340のイオン交換樹脂341内を拡散しながら流通する。この間、主に被処理水中のCl−、HCO3 −等のアニオン成分がイオン交換樹脂341に吸着される。そして、小脱塩室522から小脱塩室340に移動してきたOH−と、イオン交換樹脂341に吸着されているCl−、HCO3 −等のアニオン成分とが交換され、イオン交換樹脂341は再生される。OH−と交換され、脱着したアニオン成分は、陽極132に引き寄せられ、アニオン交換膜236を透過し、濃縮室110に移行し、濃縮水に取り込まれて濃縮水流出ライン118から排出される。
こうして、被処理水は、カチオン成分とアニオン成分とが、高度に除去された脱イオン水となって、脱イオン水流出ライン547から流出する。
小脱塩室522、340における被処理水の通水量は、第一の実施形態の小脱塩室222、230における被処理水の通水量と同様である。
本実施形態によれば、被処理水は、アニオン交換樹脂床530でアニオン成分が除去された後、カチオン交換樹脂床540でカチオン成分が除去され、再度、小脱塩室340でアニオン成分を除去される。一般に、被処理水の原水となる工業用水、井水等は炭酸等のアニオン成分を多く含む。本実施形態は、このようなアニオン成分を多く含む被処理水であっても、アニオン成分とカチオン成分とを高度に除去することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
第一〜第四の実施形態では、陰極室と陽極室の間に、1つの脱塩室が設けられているが、脱塩室の数はこれに限られず、2つ以上の脱塩室が設けられていてもよい。
第一〜第四の実施形態では、濃縮水を濃縮室に下降流で流通させているが、濃縮水の流通方向は上昇流であってもよいし、濃縮室毎に異なってもよい。
第一〜第四の実施形態では、電極水を陰極室及び陽極室に上昇流で流通させているが、陰極室又は陽極室の電極水の流通方向はこれに限られない。
脱塩室の被処理水の流通方向は、第一〜第四の実施形態と同様のものに限られない。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
<EDI>
実施例1に用いたEDIについて、図7を用いて説明する。図7に示す通り、EDI600は、陰極室610と陽極室650とで挟持された脱塩室620を有している。脱塩室620は、小脱塩室622と小脱塩室630とで構成されている。小脱塩室622は、陰極612側から順に、カチオン交換膜621と、枠体624と、中間イオン交換膜626とが配置され、枠体624の開口部にカチオン交換樹脂623が充填され形成されている。小脱塩室630は、陰極612側から順に中間イオン交換膜626と、枠体636と、アニオン交換膜638とが配置され、中間イオン交換膜626上に形成された界面樹脂層632と、該界面樹脂層632とアニオン交換膜638との間に形成された脱塩樹脂層634とで構成されている。界面樹脂層632は、中間イオン交換膜626上に、界面イオン交換樹脂633からなる粒子が単層状に形成されている。脱塩樹脂層634は、前記界面樹脂層632とアニオン交換膜638との間に、脱塩イオン交換樹脂635が充填され、形成されている。小脱塩室622には、被処理水流入ライン627と、被処理水流出ライン628とが接続されている。小脱塩室630には、被処理水流入ライン641と脱イオン水流出ライン642とが接続されている。そして、被処理水流出ライン628と被処理水流入ライン641とは、図示されない配管で接続されている。
このような、陰極室610と陽極室650とが濃縮室を兼ねているEDI600と、同様のEDI−Aを下記仕様にて製造した。
<EDI仕様>
(1)カチオン交換膜621:カチオン交換膜(CMD、旭硝子株式会社製)
(2)中間イオン交換膜626:カチオン交換膜(CMD、旭硝子株式会社製)
(3)アニオン交換膜638:アニオン交換膜(株式会社アストム製)
(4)小脱塩室622:幅100mm、高さ100mm、厚さ8mm
(5)小脱塩室630:幅100mm、高さ100mm、厚さ8mm
(6)カチオン交換樹脂623:強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライト(商品名)IR120B、ローム・アンド・ハース社製)
(7)界面イオン交換樹脂633:II形強塩基性アニオン交換樹脂(アンバーライト(商品名)IRA411、ローム・アンド・ハース社製)
(8)脱塩イオン交換樹脂635:I形強塩基性アニオン交換樹脂(アンバーライト(商品名)IRA402BL、ローム・アンド・ハース社製)
(9)陰極室610:幅100mm、高さ100mm、厚さ8mm
(10)陽極室650:幅100mm、高さ100mm、厚さ8mm
(11)イオン交換樹脂611:カチオン交換樹脂(アンバーライト(商品名)IR120B)
(12)イオン交換樹脂651:カチオン交換樹脂(アンバーライト(商品名)IR120B)
上述の仕様にて得られたEDI−Aについて、下記運転条件にて連続運転を行った。被処理水は、小脱塩室622を下降流で流通した後、小脱塩室630を下降流で流通させた。電極水は、陰極室610、陽極室650に下降流で流通させて排水した。
運転開始1時間後における、操作電圧を測定し、その結果を表1に示す。
<EDI運転条件>
(1)被処理水:温度;20℃、比抵抗;18MΩ・cm
(2)被処理水流量:4L/h
(3)電極水:温度;20℃、比抵抗;18MΩ・cm
(4)電極水流量:4L/h
(5)操作電流:0.5A
(実施例2)
操作電流を1.0Aとした他は、実施例1と同様の条件で、EDI−Aの運転を行った。運転開始1時間後における、操作電圧を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例1)
界面イオン交換樹脂633、脱塩イオン交換樹脂635を共にI形強塩基性アニオン交換樹脂とした他は、実施例1のEDI−Aと同様にして、EDI−Bを製造した。
得られたEDI−Bについて、実施例1と同様の条件で運転を行った。運転開始1時間後における、操作電圧を測定し、その結果を表1に示す。
(比較例2)
操作電流を1.0Aとした他は、比較例1と同様の条件で、EDI−Bの運転を行った。運転開始1時間後における、操作電圧を測定し、その結果を表1に示す。
(操作電圧の測定方法)
EDIの脱塩室の電圧は、図7に示すEDI600の脱塩室620の陰極612側面と、脱塩室620の陽極652側面との間である電圧測定範囲Dにおける電圧を測定した。
表1に示す通り、操作電流を0.5Aとした実施例1では、操作電圧が1.5Vであったのに対し、同じ操作電流である比較例1では操作電圧が2.5Vであった。また、操作電流を1.0Aとした実施例2では、操作電圧が2Vであったのに対し、実施例2と同じ操作電流である比較例2では、操作電圧が3.5Vであった。このことから、II形強塩基性アニオン交換樹脂で界面樹脂層を形成し、I形強塩基性アニオン交換樹脂で脱塩樹脂層を形成した本発明のEDI−Aは、従来型のEDI−Bよりも低い操作電圧でEDIを運転できることが判った。