JP2011153108A - 屋内塵性ダニ防除効力増強方法、屋内塵性ダニ防除用くん煙剤組成物、屋内塵性ダニの防除方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有効成分の屋内塵性ダニに対する防除効力を増強させる方法であって、前記有効成分として(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートを用い、前記有効成分をくん煙により揮散させる。
【選択図】なし
Description
一方、ダニ、ゴキブリ等の屋内害虫の防除用の殺虫剤としては、フェノトリン、ペルメトリンなどのピレスロイド系化合物やメトキサジアゾンなどのオキサジアゾール系化合物を有効成分とするものが一般的に用いられている(たとえば特許文献1)。また該殺虫剤の剤型としては、粉剤、粒剤、エアゾール剤、くん煙剤などが用いられている。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、有効成分の屋内塵性ダニに対する防除効力を増強できる方法、ならびに屋内塵性ダニに対して高い防除効力を発揮するくん煙剤組成物および防除方法を提供することを目的とする。
[1]有効成分の屋内塵性ダニに対する防除効力を増強させる方法であって、
前記有効成分として(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートを用い、
前記有効成分をくん煙により揮散させることを特徴とする屋内塵性ダニ防除効力増強方法。
[2](RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートと、発熱性基剤とを含有することを特徴とする屋内塵性ダニ防除用くん煙剤組成物。
[3][2]に記載の屋内塵性ダニ防除用くん煙剤組成物を屋内にて加熱することを特徴とする屋内塵性ダニの防除方法。
本発明の屋内塵性ダニ防除効力増強方法(以下、効力増強方法ということがある。)は、有効成分の屋内塵性ダニに対する防除効力を増強させる方法であって、有効成分として(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(以下、化合物Aということがある。)を用いる。
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、有効成分とは、屋内塵性ダニ防除効力を有する成分を意味する。
屋内塵性ダニは、屋内に生息するダニであり、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ、ケナガコナダニ、ムギコナダニ、コウノホシカダニ、サヤアシニクダニ、ミナミツメダニ、フトツメダニ、サトウダニ、イエササラダニ、カザリヒワダニ等が挙げられる。
化合物Aは、下記構造式(A)で表される。
このように化合物Aをくん煙により揮散させることで、直接接触処理または噴霧処理を行う場合に比べて、化合物Aの屋内塵性ダニに対する防除効力が大幅に増強される。そのため、該揮散を屋内にて行うことにより、当該屋内における屋内塵性ダニの防除を効果的に行うことができる。たとえば直接接触処理または噴霧処理と同じ用量であっても、その防除効果は大幅に向上する。また、直接接触処理または噴霧処理の場合に所望の防除効果を得るために要した用量よりも少ない用量で、同等の防除効果を得ることができる。
くん煙剤組成物および該くん煙剤組成物を用いた屋内塵性ダニの防除方法は、詳しくは以下に屋内塵性ダニ用くん煙剤組成物、屋内塵性ダニの防除方法として説明する。
本発明の屋内塵性ダニ防除用くん煙剤組成物(以下、くん煙剤組成物という。)は、前記化合物Aと、発熱性基剤とを含有する。
本発明のくん煙剤組成物中、化合物Aの配合量は、発熱性基剤の種類によっても異なるが、通常、当該くん煙剤組成物の全質量に対して0.5〜50質量%の範囲内で、防除効果、経済性、安全性等を考慮して設定される。該配合量は、防除効果の点から、0.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、経済性や安全性の点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
屋内塵性ダニに対する防除効果は、化合物Aの沈降量(mg/m2)に対応する。本発明でいう化合物Aの沈降量(mg/m2)は、当該くん煙剤組成物により屋内の処理を行った際に当該屋内に揮散する化合物Aの量(揮散量(mg))が室内密閉終了時に沈降する量であると仮定し、該量を、該屋内の床面積(m2)で除することにより求められる。以下、該沈降量を処理量ということがある。
該処理量は、防除効果の点から、25mg/m2以上が好ましく、50mg/m2以上がより好ましい。また、該処理量は、安全性や経済性を考慮すると、200mg/m2以下が好ましく、150mg/m2以下がより好ましい。
くん煙剤組成物中、発熱性基剤の配合量は、使用する発熱性基剤の種類によって適した配合量が異なるため、その種類に応じて設定される。たとえばニトロセルロースを単独で使用する場合は、くん煙剤組成物の全質量に対して25〜40重量%が好ましい。アゾジカルボンアミドを単独で使用する場合は、くん煙剤組成物の全質量に対して40〜95重量%が好ましい。
これらを併用する場合は、アゾジカルボンアミドの配合量を、くん煙剤組成物の全質量に対して40〜95質量%とすることが好ましい。また、ニトロセルロースの配合量は、アゾジカルボンアミドに対する重量比(ニトロセルロース/アソジカルボンアミド)が1/12〜3/8の範囲内となる量とすることが好ましい。
増量剤としては、クレー、タルク、珪藻土、ベントナイト、カオリン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
粘結剤としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
燃焼調節剤としてはメラミン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
これらの添加剤はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。
本発明のくん煙剤組成物は、共力剤を含有してもよい。これにより、さらなる効力増強が期待できる。共力剤としては、たとえばピペロニルブトキサイド、サイネピリン222(MGK−264)、リーセン384、IBTA、S−421等が挙げられる。
また、一般に用いられている害虫忌避剤や殺菌剤、防黴剤、殺ダニ活性を有する香料成分等を含有してもよい。これにより、より広範な効果が期待できる。
本発明の防除方法は、前記本発明のくん煙剤組成物を屋内にて加熱することにより行われる。これにより、揮散した化合物Aがくん煙とともに屋内に拡散、沈降して高い防除効果を発揮する。
くん煙剤組成物の加熱方法は、特に限定されず、一般的なくん煙剤の使用方法と同様であってよい。通常、くん煙用の容器内に収容して加熱する方法が用いられる。このときの加熱方式としては、酸化カルシウムと水との反応熱を利用して発熱性基剤を加熱するもの(間接加熱方式)、マッチ頭薬などを用い、発熱体(点火具)により製剤の一部を加熱して発熱性基剤の自己分解反応を行わせるもの(直接加熱方式)等が挙げられ、いずれの加熱方式を用いてもよい。
くん煙剤組成物の使用量(たとえば容器内へのくん煙剤組成物の収容量)は、化合物Aの処理量が所望の範囲内となるように、処理される屋内の大きさ(容積、床面積等)に応じて適宜設定される。
くん煙剤組成物の加熱が行われている間、屋内空間は通常、密閉状態とする。
以下の各例で使用した原料は以下のとおりである。
化合物A:和光純薬工業社製「シフルトリン標準品」(異性体混合物、純度:異性体混合物として98%、性状:常温常圧(25℃、100kPa)下でペースト状)。
フェノトリン:住友化学社製「フェノトリン」(3−フェノキシベンジル d−シス,トランス−クリサンテマート、性状:常温常圧下で液状)。
目的:化合物Aの屋内塵性ダニに対する殺虫効力に与える剤型の影響の評価。
試験方法:以下の評価試験(1)(バイアル内での原体直接接触による効力評価、比較試験)、評価試験(2)(カーペットへの原体噴霧による効力評価、比較試験)、評価試験(3)(くん煙剤としての効力評価)を行った。
化合物Aをアセトンに溶解してアセトン希釈液を調製した。このとき、アセトン希釈液中の化合物A濃度は、該アセトン希釈液0.2mLを内径27mm、高さ42mmのガラス製バイアル内に滴下して該バイアルの内表面を均一に処理した際に、該内表面に付着する化合物A量が100mg/m2となるようにした。
該アセトン希釈液0.2mLを上記バイアル内に滴下し、その内表面を均一に処理した。30分間風乾した後、該バイアル内にコナヒョウヒダニ30個体を入れた。それから48時間後、バイアル内の死亡個体数を実体顕微鏡により計測し、死亡率(%)を求めた。
死亡率(%)=死亡個体数/30×100
また、化合物Aの代わりに、対照化合物として、屋内塵性ダニの代表的な防除成分であるフェノトリンを用いた以外は前記と同じ評価を行った。結果を表1に示す。
表1に示すとおり、直接接触させた場合、処理量(100mg/m2)が同じであるにもかかわらず、化合物Aの方がフェノトリンよりも大幅に死亡率が小さく、化合物Aの屋内塵性ダニ防除効力が低いことが示された。
化合物Aをアセトンに溶解してアセトン希釈液を調製した。このとき、アセトン希釈液中の化合物A濃度は、該アセトン希釈液5mLを16×10cmのカーペットに均一に噴霧した際に、該カーペットに付着する化合物A量が100mg/m2となるようにした。
コナヒョウヒダニを増殖させたカーペット(16×10cm)に上記アセトン希釈液を小型噴霧器により均一に噴霧し、30分風乾させた。これを「処理区」とした。
また、アセトン希釈液の代わりにアセトンのみを用いて前記処理区と同じ処理を行い、これを「無処理区」とした。
噴霧(処理)してから所定日数経過後(2日後、7日後または27日後)に各カーペット内の生ダニ数を数え、処理区の生ダニ数と無処理区のダニ数との比較から、下記式により減少指数(%)を算出した。
また、化合物Aの代わりに、対照化合物としてフェノトリンを用いた以外は前記と同じ評価を行った。結果を表2に示す。
表2に示すとおり、噴霧処理の場合、処理量(100mg/m2)が同じであるにもかかわらず、化合物Aの方がフェノトリンよりも大幅に減少指数が小さく、特に27日経過時には7日経過時よりも小さくなっていた。
これらの結果から、噴霧処理の場合、化合物Aは、フェノトリンに比べて屋内塵性ダニ防除効力が低く、その持続性も低いことが示された。
(3−1.くん煙剤組成物の製造)
表3に示す各成分および水を常法により混合、練合し、造粒した後、乾燥して、顆粒状のくん煙剤組成物を得た。表3中の配合量の単位は質量%である。
コナヒョウヒダニを増殖させたカーペット(16×10cm)を容積0.5m3のチャンバー(65×65×120cm)の底面上に設置した。該チャンバー内にて、実施例1または比較例1のくん煙剤組成物0.25gをホットプレートにより加熱してくん煙を開始させた。くん煙開始から2時間該チャンバーを密閉し、くん煙処理を行った。処理終了後、チャンバーから取り出したカーペットは25℃、湿度75%の条件下に維持した。これを「処理区」とした。
また、くん煙処理を行わなかった以外は同じ処理を行い、これを「無処理区」とした。
くん煙処理終了時から所定日数経過後(2日後、7日後または27日後)に各カーペット内の生ダニ数を数え、処理区の生ダニ数と無処理区のダニ数との比較から、前記評価試験(2)と同様の手順で減少指数(%)を算出した。
同じ評価をさらに3回(合計4回)実施し、その平均値を求めた。結果を表4に示す。
また、上記くん煙処理における実施例1、比較例1のくん煙剤組成物中の有効成分(化合物Aまたはフェノトリン)の揮散率(%)を、以下の手順で求めた。
実施例1及び比較例1の顆粒0.25gをアルミカップに入れ、350℃に熱したホットプレートで蒸散させた。発生する煙をシリカゲルに吸着させ、シリカゲル中の有効成分を抽出した後、ガスクロマトグラフィーにて揮散量を測定した。顆粒に含まれる有効成分量に対する揮散量の割合を揮散率(%)として算出した。
その結果、化合物Aの揮散率は68%、フェノトリンの揮散率はほぼ100%であった。
このことから、上記効力評価にて、くん煙処理時に0.25gのくん煙剤組成物中の揮散した有効成分の全量がチャンバー底面に沈降した場合、その沈降量は化合物Aが約40mg/m2、フェノトリンが59mg/m2となる。
通常、チャンバー密閉時間内に全ての有効成分が沈降することはないので、本試験における実際の沈降量はこれらの値以下と考えられる。
また、実施例1における化合物Aの処理量は、上述したように約40mg/m2であり、前記評価試験(2)での化合物Aの処理量(100mg/m2)の半分以下である。それにもかかわらず、実施例1の減少指数は、2日後、7日後ともに評価試験(2)の同時点の減少指数よりも30%近く上昇し、27日後では40%以上も上昇していた。
一方、比較例1のくん煙剤組成物の減少指数は、評価試験(2)においてフェノトリンを用いた場合の減少指数とほぼ同等かそれよりも小さかった。
これらの結果から、化合物Aは、くん煙剤として使用することでダニに対する防除効力が大きく増強されること、このような増強効果が化合物Aに特異的なものであること、が確認された。
表5に示す各成分および水を常法により混合、練合し、造粒した後、乾燥して、顆粒状のくん煙剤組成物を得た。表5中の配合量の単位は質量%である。また、「残部」は全量が100質量%となる量である。
各くん煙剤組成物について、前記試験例1の評価試験(3)における(3−2.効力評価)と同様の効力評価を行ったところ、いずれもコナヒョウヒダニに対する優れた防除効力を示した。
Claims (3)
- 有効成分の屋内塵性ダニに対する防除効力を増強させる方法であって、
前記有効成分として(RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートを用い、
前記有効成分をくん煙により揮散させることを特徴とする屋内塵性ダニ防除効力増強方法。 - (RS)−α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1RS)−シス−トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートと、発熱性基剤とを含有することを特徴とする屋内塵性ダニ防除用くん煙剤組成物。
- 請求項2に記載の屋内塵性ダニ防除用くん煙剤組成物を屋内にて加熱することを特徴とする屋内塵性ダニの防除方法。
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