JP2011152788A - 多層構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた酸素吸収性能を有し、かつ酸素吸収に伴って発生する不快な臭気成分の除去機能に優れた多層構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の多層構造体は、酸素吸収層と脱臭層とを含み、該酸素吸収層は、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)と該熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなり、そして該脱臭層は、多孔質無機粒子、表面修飾金属、およびハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも2種の混合物からなる脱臭剤を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、多層構造体に関する。さらに詳しくは、本発明は、酸素吸収層と脱臭層とを含む多層構造体に関する。
近年、包装容器の内容物、特に食品、飲料、医薬品、化粧品などの保存性を高めるために、容器内の酸素を吸収する酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収性樹脂層を用いた容器、酸素吸収性樹脂層とガスバリア層とからなる多層構造体を用いた容器などが提案されている。
酸素吸収性樹脂組成物に用いられる化合物は炭素−炭素二重結合を有し、この二重結合が酸素と反応(酸化反応)することによって、酸素を消費すると考えられている。しかし、この酸化反応により、不快な臭気成分が副生し、容器の内容物に移行するという問題がある。
このような臭気成分の問題を解決するために、特許文献1〜3には、酸素吸収層と脱臭層とを有する多層構造体が開示されている。
特許文献1には、アミン担持水酸化アルミニウムを脱臭剤として脱臭層に配合した多層構造体が開示されている。しかし、この引用文献1の多層構造体の臭気除去機能は弱く、特に酸素吸収層に遷移金属塩が含まれる場合、十分ではない。
特許文献2および3には、脱臭層に配合する脱臭剤として、種々の物質(ゼオライト、ハイドロタルサイト、アミン担持多孔質シリカ、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、鉄(II)化合物など)を用いてもよいことが開示されている。しかし、特許文献2には、アミン担持多孔質シリカを単独で用いた例、引用文献3には、多孔質マイクロカプセルパウダーを単独で用いた例が開示されているにすぎない。さらに、これらの脱臭剤が、どのような臭気成分を除去するかについては開示されておらず、発生する臭気成分によっては、臭気成分の除去機能が必ずしも十分とはいえない。
特開2006−334784号公報 特開2004−25664号公報 特開2002−144501号公報
本発明の目的は、優れた酸素吸収性能を有し、かつ酸素吸収に伴って発生する不快な臭気成分の除去機能に優れた多層構造体を提供することにある。
本発明者らは、酸素吸収性樹脂組成物が酸素吸収に伴って発生する臭気成分が、主に低分子量の脂肪酸(炭素数1〜7の脂肪酸)であることを明らかにし、各成分の除去機能に優れた脱臭剤を組み合わせることによって、臭気成分の除去機能に優れた脱臭層が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、酸素吸収層と脱臭層とを含む多層構造体を提供し、該酸素吸収層は、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)と該熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなり、そして該脱臭層は、多孔質無機粒子、表面修飾金属、およびハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも2種の混合物からなる脱臭剤を含有する。
1つの実施態様では、上記脱臭層は、多孔質無機粒子および表面修飾金属の混合物からなる脱臭剤を含有する。
他の実施態様では、上記脱臭層は、多孔質無機粒子およびハイドロタルサイトの混合物からなる脱臭剤を含有する。
ある実施態様では、上記脱臭層は多孔質無機粒子を含み、該多孔質無機粒子がゼオライトである。
ある実施態様では、上記脱臭層は表面修飾金属を含み、該表面修飾金属が表面をアミノ基で修飾した金属である。
1つの実施態様では、上記熱可塑性樹脂(A)は、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂である。
他の実施態様では、上記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオクテニレンである。
ある実施態様では、上記酸素吸収性樹脂組成物において、上記熱可塑性樹脂(A)の粒子は、上記熱可塑性樹脂(B)のマトリックス中に分散している。
ある実施態様では、上記熱可塑性樹脂(B)は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、α−オレフィン系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、およびポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂である。
別の実施態様では、上記脱臭層は、脂肪酸に由来する臭気成分を除去する。
さらに別の実施態様では、上記脂肪酸は、炭素数1〜7の脂肪酸である。
1つの実施態様では、上記酸素吸収性樹脂組成物は、さらに遷移金属塩(C)を含有する。
さらに他の実施態様では、上記遷移金属塩(C)は、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩、およびコバルト塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩である。
さらに、本発明は、上記多層構造体を含む包装体を提供する。
1つの実施態様では、上記包装体は、容器、フィルム、またはパウチである。
他の実施態様では、上記包装体に用いられる上記多層構造体において、上記脱臭層は、上記酸素吸収層より内側に配置される。
ある実施態様では、上記包装体に用いられる上記多層構造体において、上記酸素吸収層よりも外側に、ガスバリア層が積層されている。
1つの実施態様では、上記ガスバリア層は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、およびポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂(D)でなる。
本発明によれば、優れた酸素吸収性能を有し、かつ酸素吸収に伴って発生する不快な臭気成分の除去機能に優れた多層構造体を提供し得る。
本発明の多層構造体は、特定の酸素吸収層と特定の脱臭層とを含む。
(酸素吸収層)
本発明の多層構造体に用いられる酸素吸収層は、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)を含有し、必要に応じて、遷移金属塩(C)を含有する酸素吸収性樹脂組成物からなる。
(1)熱可塑性樹脂(A)
熱可塑性樹脂(A)は、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂であり、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂が好ましい。ここで、「実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する」とは、熱可塑性樹脂(A)の主鎖に存在する炭素−炭素二重結合が、分子内の全炭素−炭素二重結合の90%以上であり、側鎖に存在する炭素−炭素二重結合が、分子内の全炭素−炭素二重結合の10%未満であることをいう。側鎖に存在する炭素−炭素二重結合の割合は、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満である。
熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(2−エチルブタジエン)、ポリ(2−ブチルブタジエン)などのポリジエンであって、主として1,4位で重合したもの(例えば、1,4−ポリブタジエンなど);シクロオレフィンの開環メタセシス重合体(ポリオクテニレン、ポリペンテニレン、ポリノルボルネンなど)などが挙げられる。
一般的に、熱可塑性樹脂分子の主鎖に存在する炭素−炭素二重結合は、側鎖に存在する炭素−炭素二重結合と比較して、酸素吸収量が少なく、酸素吸収速度が遅い場合が多い。しかし、主鎖に、隣接する炭素−炭素二重結合の間にメチレン鎖が3個以上存在する繰り返し単位(すなわち、−C=C−(CH−C=C−(但し、n≧3))を有する熱可塑性樹脂は、炭素−炭素二重結合1個あたりの酸素吸収量が予想以上に多いことがわかった。したがって、本発明においては、少ない添加量で優れた酸素吸収性能が得られるという観点から、熱可塑性樹脂(A)として、好ましくは、隣接する炭素−炭素二重結合の間にメチレン鎖が3個以上存在する繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオクテニレン、ポリペンテニレンなどが挙げられ、ポリオクテニレンが特に好ましい。
熱可塑性樹脂(A)に含まれる炭素−炭素二重結合の量は、特に限定されないが、少なすぎる場合、多層構造体に十分な酸素吸収性能を付与し得ない傾向となる。炭素−炭素二重結合の量は、0.001eq/g(当量/g)以上であることが好ましく、0.005eq/g以上がより好ましく、0.01eq/g以上がさらに好ましい。
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜500000であり、より好ましくは10000〜250000であり、さらに好ましくは40000〜200000の範囲である。熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量が1000未満の場合および500000を超える場合、多層構造体の成形加工性、ハンドリング性、さらには成形品としたときの強度、伸度などの機械的性質が低下する傾向となる。
熱可塑性樹脂(A)を製造する方法としては、熱可塑性樹脂(A)の種類によっても異なるが、公知の方法で製造できる。
例えば、ポリオクテニレンは、シクロオクテンを原料モノマーとし、触媒としてタングステン系触媒、ルテニウム系触媒などを用いて開環メタセシス重合を行う方法;あるいは、1,9−デカジエンを原料モノマーとし、同様の触媒を用いて非環状ジエンメタセシス重合を行う方法によって合成できる。触媒としては、例えば、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムが挙げられる。重合は、無溶媒で行うことも可能であるが、必要に応じて溶媒を用いてもよい。
熱可塑性樹脂(A)が環状オレフィンの開環メタセシス重合体である場合、開環メタセシス重合の機構から、必然的にある程度のオリゴマーが混合することが避け難い。このオリゴマーを除去する方法としては、例えば、アセトンなどの有機溶剤で洗浄除去する方法などが挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、チオジプロピオン酸ジラウリルなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)が酸化防止剤を含有する場合、その量は、多層構造体中の各成分の種類、含有量、使用目的、保存条件などを考慮して適宜決定される。酸化防止剤を含有させるときの量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.5質量部(100ppm〜5000ppm)であり、より好ましくは0.02〜0.08質量部(200ppm〜800ppm)である。酸化防止剤の含有量が0.5質量部(5000ppm)を超える場合、熱可塑性樹脂(A)と酸素との反応が妨げられる(すなわち、酸素吸収性能が低下する)傾向となる。一方、酸化防止剤の含有量が0.01質量部(100ppm)未満では、熱可塑性樹脂(A)の保存時または溶融混練時に酸素との反応が進行し、得られる酸素吸収性樹脂組成物の実際の使用前に、酸素吸収性能が低下する場合がある。
(2)熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)
熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)(以下、単に熱可塑性樹脂(B)と記載する場合がある)は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン(超低密度、低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度など)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなど)などのポリオレフィン系樹脂;汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などのポリスチレン系樹脂;その他α−オレフィン系共重合体などの炭化水素系樹脂が挙げられる。これらの中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
また、熱可塑性樹脂(B)は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などのガスバリア性樹脂であっても良い。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウロラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)などの脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)などの脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)などの芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンの単独重合体;酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテルなどとの共重合体などが挙げられる。
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、例えば、アクリロニトリルの単独重合体;アクリル酸エステルなどとの共重合体などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体(特に、ビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒などを用いてケン化して得られる重合体(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH))などが挙げられる。
熱可塑性樹脂(B)は、マトリックス樹脂として使用することが好ましい。すなわち、本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)の粒子が、熱可塑性樹脂(B)のマトリックス中に分散している形態が好ましい。このような形態の組成物でなる各種成形品においては、透明性、ガスバリア性および酸素掃去性が良好である。このとき、熱可塑性樹脂(A)からなる粒子の分散粒子径は10μm以下であることが好適である。分散粒子径が10μmを超える場合には、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との界面の面積が小さくなり、酸素ガスバリア性が低下するとともに、酸素掃去性能が低下する場合がある。樹脂組成物を使用した多層容器等の成形品の酸素掃去性、ガスバリア性および透明性の観点から、分散している熱可塑性樹脂(A)粒子の粒子径は5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。
なお、本発明における熱可塑性樹脂(A)の粒子径は、以下のようにして測定した。熱可塑性樹脂(A)の粒子を電子顕微鏡により1000倍に拡大した写真を撮影し、その中から、無作為に20個の粒子を選び出し、定規により粒子径を測定した。この操作を3回繰り返し、計60個の測定結果から平均粒子径を求め、熱可塑性樹脂(A)の粒子径とした。
熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との配合比(質量比)は、特に限定されず、好ましくは1:99〜30:70、より好ましくは2:98〜20:80、さらに好ましくは5:95〜15:85である。
(3)遷移金属塩(C)
遷移金属塩(C)は、熱可塑性樹脂(A)の酸化反応を促進することにより、本発明の多層構造体の酸素吸収性能を向上させる効果がある。
遷移金属塩(C)としては、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩、コバルト塩、ロジウム塩、チタン塩、クロム塩、バナジウム塩、ルテニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩、およびコバルト塩が好ましく、マンガン塩およびコバルト塩がより好ましく、コバルト塩がさらに好ましい。
遷移金属塩(C)において、遷移金属の対イオンとしては、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸などが挙げられる。特に好ましい塩としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、およびステアリン酸コバルトが挙げられる。
遷移金属塩(C)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、金属換算量で0.001質量部〜0.5質量部(10ppm〜5000ppm)の範囲で配合する。好ましくは、遷移金属塩(C)は金属換算量で、0.01質量部〜0.1質量部(100〜1000ppm)、より好ましくは0.02質量部〜0.08質量部(200ppm〜800ppm)の範囲で配合する。遷移金属塩(C)の配合量が0.001質量部(10ppm)未満の場合、得られる多層構造体の酸素吸収性能および酸素吸収速度が不十分なものとなる傾向にある。一方、遷移金属塩(C)の配合量が0.5質量部(5000ppm)を超える場合、例えば、熱可塑性樹脂(A)と遷移金属塩(C)とを溶融混練する際、発熱を伴う分解ガスの発生、成形体のゲル・ブツの発生などが著しくなり、加工性が悪くなる傾向にある。さらに、溶融混練して得られた酸素吸収性樹脂組成物の熱安定性が低下する傾向にある。また、加工中の酸化により、熱可塑性樹脂(A)の本来の酸素吸収性能が失活する懸念もある。
(4)酸素吸収性樹脂組成物
本発明に用いられる酸素吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)、必要に応じて遷移金属塩(C)を混合することによって得られる。
酸素吸収性樹脂組成物の各成分を混合する方法は、特に限定されない。各成分を混合する際の順序も、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、および遷移金属塩(C)を混合する場合、これらを同時に混合してもよいし、熱可塑性樹脂(A)、遷移金属塩(C)を混合した後、熱可塑性樹脂(B)と混合してもよい。また、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)を混合した後、遷移金属塩(C)と混合してもよいし、熱可塑性樹脂(B)および遷移金属塩(C)を混合した後、熱可塑性樹脂(A)と混合してもよい。
混合の具体的な方法としては、工程の簡便さおよびコストの観点から溶融混練法が好ましい。このとき、高い混練度を達成することができる装置を使用し、各成分を細かく均一に分散させることが、酸素吸収性能、透明性などを良好にすると共に、ゲル・ブツの発生、混入などを防止できる点で好ましい。
高い混練度を達成し得る装置としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向または異方向)、ミキシングロール、コニーダーなどの連続型混練機;高速ミキサー、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機;株式会社KCK製のKCK混練押出機などの石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用した装置、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTMなど)を設けた装置;リボンブレンダー、ブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機などを挙げることができる。これらの中でも、連続型混練機が好ましい。市販されている連続式インテンシブミキサーとしては、Farrel社製FCM、株式会社日本製鋼所製CIM、株式会社神戸製鋼所製KCM、LCM、ACMなどが挙げられる。これらの混練機の下に一軸押出機を設置し、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用することが好ましい。また、ニーディングディスクまたは混練用ロータを有する二軸混練押出機としては、例えば株式会社日本製鋼所製TEX、Werner&Pfleiderer社製ZSK、東芝機械株式会社製TEM、池貝鉄工株式会社製PCMなどが挙げられる。混練機は1機でもよいし、また2機以上を連結して用いることもできる。
混練温度は、通常50〜300℃の範囲である。熱可塑性樹脂(A)の酸化防止のためには、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが好ましい。混練時間は、長い方が良い結果を得られるが、熱可塑性樹脂(A)の酸化防止および生産効率の観点から、通常10〜600秒であり、好ましくは15〜200秒であり、より好ましくは15〜150秒である。
酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量は、50mL/g以上が好ましく、60mL/g以上がより好ましく、67mL/g以上がさらに好ましい。酸素吸収性樹脂組成物が酸素吸収に伴って発生する臭気は、熱可塑性樹脂(A)の構造が類似の場合は、酸素吸収量が多いほど多い傾向となる。このため、酸素吸収量が多い場合ほど、優れた酸素吸収性能を有すると共に、発生する臭気を低減するという本発明の効果がより有効に発揮される。
(脱臭層)
本発明の多層構造体に用いられる脱臭層は、多孔質無機粒子、表面修飾金属、およびハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも2種の混合物からなる脱臭剤を含有する。これらの脱臭剤のうち、少なくとも2種類の脱臭剤を組み合わせることによって、酸素吸収に伴って発生する不快な臭気成分である主に低分子の脂肪酸(例えば、炭素数1〜7の脂肪酸)の除去機能に優れた脱臭層を提供し得る。ここで、少なくとも2種の混合物とは、多孔質無機粒子、表面修飾金属、およびハイドロタルサイトからなる群において少なくとも異なる2種の分類(カテゴリー)から選ばれ、例えば、多孔質無機粒子および表面修飾金属の組み合わせが挙げられる。一方、多孔質無機粒子の異なる2種の化合物を併用して用いる場合は、本発明で使用される脱臭剤とはならない。
多孔質無機粒子としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル、活性酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、クレー、ケイソウ土、タルクなどが挙げられる。これらの多孔質無機粒子は、炭素数1〜7の脂肪酸の除去に有効であり、特に炭素数2〜7の脂肪酸の除去に有効である。上記多孔質無機粒子の中でも、ゼオライトは、少量で臭気成分を効率的に除去し、さらに成形容易性、外観良好性などの点からも好ましい。また、効率的に炭素数1〜7の脂肪酸を除去するための多孔質無機粒子の孔径としては特に限定されないが、好ましくは100Å以下、より好ましくは20Å以下、さらに好ましくは10Å以下である。
表面修飾金属としては、例えば、表面を水酸基で修飾した金属、表面をアミノ基で修飾した金属などが挙げられる。表面修飾金属に使用される金属としては特に限定されないが、入手しやすい点で市販品に用いられる、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、シリカおよびチタン等が挙げられる。表面修飾金属は、表面に修飾された官能基によって、効果的に除去し得る成分が異なる。例えば、水酸基で修飾された金属は、主に炭素数1〜7の脂肪酸の除去に有効であり、アミノ基で修飾された金属は、主にアルデヒドの除去に有効である。脱臭剤としてアミノ基で修飾された金属を含有すると、酸成分だけでなくアルデヒドも除去できるため好ましい。これらの表面修飾金属は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
ハイドロタルサイトは、主に炭素数1の脂肪酸(ギ酸)の除去に有効である。
脱臭剤は、多孔質無機粒子および表面修飾金属の混合物、多孔質無機粒子およびハイドロタルサイトの混合物、表面修飾金属およびハイドロタルサイトの混合物、または多孔質無機粒子、表面修飾金属およびハイドロタルサイトの混合物が好ましく、特に、多孔質無機粒子および表面修飾金属の混合物または多孔質無機粒子およびハイドロタルサイトの混合物が好ましく、ゼオライトと表面修飾金属との組み合わせまたはゼオライトとハイドロタルサイトとの組み合わせがより好ましい。
脱臭剤の配合比(質量比)は、特に限定されないが、多孔質無機粒子および表面修飾金属の混合物の場合は、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは35:65〜65:35であり、多孔質無機粒子およびハイドロタルサイトの混合物の場合は、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは35:65〜65:35であり、表面修飾金属およびハイドロタルサイトの混合物の場合は、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは35:65〜65:35である。また、多孔質無機粒子、表面修飾金属およびハイドロタルサイトの混合物における各々の配合比(質量比)は、上記の2種の配合比(質量比)を満たすのが好ましい。
脱臭層では、脱臭剤がベース樹脂に分散されて用いられる。ベース樹脂は特に限定されず、例えば、上記の熱可塑性樹脂(B)などが挙げられ、ポリエチレン(超低密度、低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度など)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなど)などのポリオレフィン系樹脂;汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などのポリスチレン系樹脂;その他α−オレフィン系共重合体などの炭化水素系樹脂を用いることができる。これらの中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
脱臭層における脱臭剤とベース樹脂との配合比(質量比)は特に限定されず、好ましくは0.1:99.9〜50:50、より好ましくは1:99〜30:70、さらに好ましくは2:98〜15:85である。
本発明に用いられる脱臭剤の粒子径は10μm以下であり、より好適には8μm以下であり、さらに好適には5μm以下であり、特に好適には4μm以下である。脱臭剤の粒子径が10μmを超える場合は、臭気バリア性および透明性が不充分なものとなる。かかる粒子径の小さい脱臭剤を製造する方法は特に限定されないが、一般に市販されている脱臭剤に対して粉砕処理を行う方法などが好適なものとして例示される。
なお、本発明における脱臭剤の粒子径は、以下のようにして測定した。脱臭剤を電子顕微鏡により1000倍に拡大した写真を撮影し、その中から、無作為に20個の吸着剤選び出し、定規により粒子径を測定した。この操作を3回繰り返し、計60個の測定結果から脱臭剤の平均粒子径を求め、脱臭剤の粒子径とした。
(多層構造体)
本発明の多層構造体は、上記の酸素吸収層と上記脱臭層とを含有する。
本発明の多層構造体を成形する方法は、特に限定されず、例えば、押出ラミネート法、ドライラミネート法、共射出成形法、共押出成形法などが挙げられる。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法などが挙げられる。
また、このようにして得られた多層構造体を、その樹脂の融点以下の温度で再加熱し、絞り成形などの熱成形法、ロール延伸法、パンタグラフ式延伸法、インフレーション延伸法、ブロー成形法などにより一軸または二軸延伸して、延伸された成形物を得ることもできる。
本発明の多層構造体は、例えば、容器、フィルム、パウチなどの包装体として用いられる。本発明の多層構造体は、包装体として用いる場合、内部に残存する酸素が吸収された際に発生する臭気を除去するために、内側が脱臭層であり、外側が酸素吸収層であることが好ましい。
本発明の多層構造体は、外側から侵入する酸素を防止するため、酸素吸収層よりも外側にさらにガスバリア層が積層(すなわち、内側から、脱臭層、酸素吸収層、およびガスバリア層の順に積層)されることが好ましい。ガスバリア層に用いられる樹脂(ガスバリア性樹脂(D))としては、上記の熱可塑性樹脂(B)で挙げたガスバリア性樹脂を用いることができ、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
本発明の多層構造体の層構成としては、酸素吸収層をa層、脱臭層をb層、ガスバリア層をc層、その他の樹脂からなる層をd層とすると、内側から、b/a、b/a/c、d/b/a/c/d、d/b/d/a/d/c/dなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。複数のd層を設ける場合は、その種類は同じであっても異なっていてもよい。また、成形時に発生するトリムなどのスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてもよいし、回収樹脂を他の樹脂からなる層にブレンドしてもよい。多層構造体の各層の厚み構成は、特に限定されるものではない。
さらに、本発明の多層構造体は、本発明の作用効果が阻害されない範囲内で、各種の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤の例としては、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、乾燥剤、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、他の高分子化合物などが挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(調製例1:ポリオクテニレンの調製)
撹拌機および温度計を装着した3つ口フラスコ内を、乾燥窒素で置換した。3つ口フラスコにcis−シクロオクテン110質量部とcis−4−オクテン0.187質量部を溶解させたヘプタン624質量部とを加えた。次いで、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム0.0424質量部をトルエン3質量部に溶解して、触媒液を調製した。この触媒液をすばやく3つ口フラスコに加えて、55℃にて撹拌して、開環メタセシス重合を行った。1時間後、反応液をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、GC−14B;カラム:化学品検査協会製、G−100)により分析して、cis−シクロオクテンの消失を確認した。次いで、3つ口フラスコにエチルビニルエーテル1.08質量部を添加し、混合液をさらに10分間撹拌した。
得られた反応液に水200質量部を添加し、混合液を40℃にて30分間撹拌した。次いで、40℃にて1時間静置して分液後、水層を除去した。残存液に再度、水100質量部を添加し、混合液を45℃にて30分間撹拌した。次いで、40℃にて1時間静置して分液後、水層を除去した。次いで、残存液からヘプタンを減圧下で留去し、得られた固形物を、真空乾燥機を用いて1Paおよび100℃にて6時間乾燥し、重量平均分子量(Mw)が142000、分子量1000以下のオリゴマーの割合が9.2質量%の重合体102.1質量部(収率92%)を得た。この重合体(ポリオクテニレン)の、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は0%であった。
得られた重合体を1mm角程度に破砕し、撹拌機、還流管、温度計を装着したセパラブルフラスコに加えた。次いで、アセトン300質量部をセパラブルフラスコに加え、混合物を40℃にて3時間撹拌した。アセトンをデカンテーションで除去した。再度、アセトン300質量部をセパラブルフラスコに加え、混合物を40℃にて3時間撹拌した。アセトンをデカンテーションで除去した。残存するアセトンを減圧下で留去し、得られた固形物を、真空乾燥機を用いて1Paおよび100℃にて6時間乾燥し、熱可塑性樹脂(A)として、重量平均分子量(Mw)が150000、数平均分子量が37000、分子量1000以下のオリゴマーの割合が3.1質量%のポリオクテニレン99質量部を得た。
(調製例2:酸素吸収性樹脂組成物の調製)
調製例1で得られた熱可塑性樹脂(A)であるポリオクテニレン100質量部と遷移金属塩(C)であるステアリン酸コバルト(II)0.4242質量部(コバルト金属換算で400ppm)とを、25mmφ二軸押出機(株式会社東洋精機製LABO PLASTOMIL MODEL 15C300)に投入した。80℃にてスクリュー回転数100rpmおよび押出樹脂量5.1kg/時間の条件で押出を行って、ペレットを得、真空下で12時間乾燥した。
次いで、熱可塑性樹脂(A)を含むペレット20質量部と熱可塑性樹脂(B)である直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテックNF325N)80質量部とを、20mmφ一軸押出機(株式会社東洋精機製:LABO PLASTOMIL A)に投入した。160℃にてコートハンガーダイより溶融押出を行って、厚み20μmの酸素吸収性樹脂組成物からなるフィルムを得た。当該フィルムの断面を電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性樹脂(A)からなる粒子(粒子径1μm)が、熱可塑性樹脂(B)のマトリックス中に分散していた。
(実施例1)
ベース樹脂として用いた直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)96質量部に、脱臭剤として粒子径4μmおよび孔径6〜8Åのゼオライト(ユニオン昭和株式会社製ABSCENTS3000)2質量部および粒子径1μm以下のハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製DHT−4A)2質量部とを、上記25mmφ二軸押出機に投入した。210℃にてスクリュー回転数100rpmおよび押出樹脂量4.0kg/時間の条件で押出を行って、脱臭剤を有する樹脂組成物ペレットを得た。次いで、得られたペレットを、上記20mmφ一軸押出機に投入した。160℃にてコートハンガーダイより溶融押出を行って、厚み20μmの脱臭剤を含有する樹脂組成物からなるフィルムを調製した。
次いで、この脱臭剤を含有する樹脂組成物からなるフィルムと調製例2で得られた酸素吸収性樹脂組成物からなるフィルムとを用いて、ヒートシーラー(株式会社安田精機製作所製YSSタイプヒートシーラー)にて120℃でヒートシールすることにより、3層(脱臭層/酸素吸収層/脱臭層、それぞれ20μm)の多層フィルムを得た。
得られた多層フィルムを、酸素吸収層が40mgとなるようにカットして、20mLのバイアル瓶に封入した。この多層フィルムを封入したバイアル瓶を、60℃にて1日間静置した後、酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
<酸素吸収量>
酸素濃度計(飯島電子工業株式会社製食品用微量酸素分析計IS−300)を用いて、静置前後のバイアル瓶中の酸素濃度を測定し、酸素吸収層単位質量当たりの酸素吸収量を求めた。
<臭気成分発生量>
GC−MS(サーモエレクトロンコーポレーション製POLARISQ TraceGC)を用いて、静置後のバイアル瓶中の臭気成分濃度を測定し、酸素吸収層単位質量当たりの臭気成分発生量を求めた。
<臭気の官能評価>
6人の被験者に、静置後のバイアル瓶中の臭気を嗅がせ、以下の評価基準で判定させ、平均値を求めた。
0:無臭
1:何の臭気か判別し得ないかすかな臭気(検知閾値)
2:何の臭気か判別し得る程度の弱い臭気(認知閾値)
3:普通に感じ得る中程度の臭気
4:強い臭気
5:耐えられないほどの強い臭気
(実施例2)
ベース樹脂として用いた直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)92質量部に、脱臭剤として、ゼオライト(ユニオン昭和株式会社製ABSCENTS3000)4質量部およびハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製DHT−4A)4質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)2質量部および粒子径6μmの水酸基修飾金属(東亜合成株式会社製ケスモンNS−70)2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
ベース樹脂として用いた直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)92質量部に、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)4質量部および水酸基修飾金属(東亜合成株式会社製ケスモンNS−70)4質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
ベース樹脂として用いた直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)92質量部に、脱臭剤として、粒子径2μmおよび孔径5.1〜5.6Åのゼオライト(水澤化学工業株式会社製ミズカシーブスEX122)4質量部およびハイドロタルサイト(DHT−4A)4質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)2質量部、水酸基修飾金属(ケスモンNS−70)1質量部、および粒子径4μmのアミノ基修飾金属(東亜合成株式会社製ケスモンNS−103)1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を91質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)4質量部、水酸基修飾金属(ケスモンNS−70)4質量部、およびアミノ基修飾金属(東亜合成株式会社製ケスモンNS−103)1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を90質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)4質量部、水酸基修飾金属(ケスモンNS−70)4質量部、およびアミノ基修飾金属(ケスモンNS−103)2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
脱臭剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を99質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)4質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例4)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を99質量部用い、脱臭剤として、水酸基修飾金属(ケスモンNS−70)1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例5)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を99質量部用い、脱臭剤として、ハイドロタルサイト(DHT−4A)1質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例6)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ハイドロタルサイト(DHT−4A)4質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例7)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)2質量部およびゼオライト(水澤化学工業株式会社製ミズカシーブスEX122)2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例8)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)2質量部および酸化カルシウム(和光純薬工業社製)2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例9)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)2質量部および水酸化カルシウム(和光純薬工業社製)2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例10)
ベース樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(ノバテックNF325N)を96質量部用い、脱臭剤として、ゼオライト(ABSCENTS3000)2質量部およびケイ酸マグネシウム(和光純薬工業社製)2質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で多層フィルムを得、実施例1と同様の手順で酸素吸収量および臭気成分発生量を測定し、臭気の官能評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2011152788
表1に示すように、本発明の多層構造体(実施例1〜5の多層フィルム)においては、優れた酸素吸収性能を有するにもかかわらず、酸素吸収に伴って発生した臭気成分がほとんど除去されたことがわかる。
一方、脱臭剤を用いていない比較例1、および脱臭剤を1種類のみ用いた比較例2〜6においては、臭気成分の発生量が多く、臭気成分が効率的に除去されていないことがわかる。そして、脱臭剤として多孔質無機粒子の中で異なる2種の化合物を組み合わせた比較例7および10は、特にギ酸および酢酸の臭気発生量が多く、臭気成分が効率的に除去されていないことがわかる。また、脱臭剤として、本発明で使用される多孔質無機粒子と、無機粒子であるが多孔質でない酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムを併用した場合も、臭気成分の発生量が多く、臭気成分が効率的に除去されていないことがわかる。
本発明によれば、優れた酸素吸収性能を有し、かつ酸素吸収に伴って発生する不快な臭気成分の除去機能に優れた多層構造体を提供することができる。したがって、本発明の多層構造体は、風味が重視される食物の容器などとして使用される。

Claims (18)

  1. 酸素吸収層と脱臭層とを含む多層構造体であって、
    該酸素吸収層が、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)と該熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)とを含有する酸素吸収性樹脂組成物からなり、そして
    該脱臭層が、多孔質無機粒子、表面修飾金属、およびハイドロタルサイトからなる群より選択される少なくとも2種の混合物からなる脱臭剤を含有する、多層構造体。
  2. 前記脱臭層が、多孔質無機粒子および表面修飾金属の混合物からなる脱臭剤を含有する、請求項1に記載の多層構造体。
  3. 前記脱臭層が、多孔質無機粒子およびハイドロタルサイトの混合物からなる脱臭剤を含有する、請求項1に記載の多層構造体。
  4. 前記脱臭剤が多孔質無機粒子を含み、該多孔質無機粒子がゼオライトである、請求項1から3のいずれかの項に記載の多層構造体。
  5. 前記脱臭剤が表面修飾金属を含み、該表面修飾金属が、表面をアミノ基で修飾した金属である、請求項1または2に記載の多層構造体。
  6. 前記熱可塑性樹脂(A)が、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂である、請求項1から5のいずれかの項に記載の多層構造体。
  7. 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリオクテニレンである、請求項6に記載の多層構造体。
  8. 前記酸素吸収性樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂(A)の粒子が、前記熱可塑性樹脂(B)のマトリックス中に分散している、請求項1から7のいずれかの項に記載の多層構造体。
  9. 前記該熱可塑性樹脂(B)が、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、α−オレフィン系共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、およびポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂である、請求項1から8のいずれかの項に記載の多層構造体。
  10. 前記脱臭層が、脂肪酸に由来する臭気成分を除去する、請求項1から9のいずれかの項に記載の多層構造体。
  11. 前記脂肪酸が、炭素数1〜7の脂肪酸である、請求項10に記載の多層構造体。
  12. 前記酸素吸収性樹脂組成物が、さらに遷移金属塩(C)を含有する、請求項1から11のいずれかの項に記載の多層構造体。
  13. 前記遷移金属塩(C)が、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩、およびコバルト塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩である、請求項12に記載の多層構造体。
  14. 請求項1から13のいずれかの項に記載の多層構造体を含む、包装体。
  15. 前記包装体が、容器、フィルム、またはパウチである、請求項14に記載の包装体。
  16. 前記包装体に用いられる前記多層構造体において、前記脱臭層が、前記酸素吸収層より内側に配置される、請求項14または15に記載の包装体。
  17. 前記包装体に用いられる前記多層構造体において、前記酸素吸収層よりも外側に、ガスバリア層が積層されている、請求項16に記載の包装体。
  18. 前記ガスバリア層が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、およびポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂(D)からなる、請求項17に記載の多層構造体。
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