JP5565894B2 - 酸素吸収性樹脂組成物の製造方法および酸素吸収性樹脂組成物 - Google Patents

酸素吸収性樹脂組成物の製造方法および酸素吸収性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、酸素吸収性樹脂組成物の製造方法およびその方法によって得られる酸素吸収性樹脂組成物に関する。
ガスバリア性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと記載する場合がある)は、酸素ガスバリア性および炭酸ガスバリア性に優れた材料である。このような樹脂は溶融成形が可能であるので、耐湿性、機械的特性などに優れた熱可塑性樹脂(ポリオレフィン、ポリエステルなど)の層と積層され、多層プラスチック包装材として好適に用いられている。
しかし、これらのガスバリア性樹脂の気体透過性は完全にゼロであるわけではなく、無視し得ない量の気体を透過する。このような気体の透過、とりわけ、内容物の品質に大きな影響を及ぼす酸素の透過を低減するために、また、内容物の包装時点ですでに包装体の内部に存在する酸素を取り除くために、酸素吸収剤を使用することが知られている。
例えば、改良された酸素吸収剤として、遷移金属触媒とエチレン性不飽和化合物とを含む組成物および上記のEVOHと酸素吸収剤とを含む酸素吸収性樹脂組成物が提案されている(特許文献1および2参照)。特に、EVOHを含む酸素吸収性樹脂組成物は、EVOHと同様に溶融成形が可能であるので、各種包装材料として好適に用いることが可能である。
しかし、上記のような酸素吸収剤または酸素吸収性樹脂組成物を包装材として使用すると、酸素吸収が進むにつれて酸素吸収剤が分解し、不快な臭気が発生することがある。そのため、臭気に敏感な食品の保存用などの、香りを重視する用途においては、さらなる改良が望まれている。
例えば、不快な臭気を発生しない酸素吸収性樹脂組成物として、本発明者らの一部は、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂および遷移金属塩を含む酸素吸収性樹脂組成物を提案している(特許文献3参照)。
しかし、上記特許文献3に記載の酸素吸収性樹脂組成物であっても、かかる組成物を構成する樹脂中に含まれる不純物やオリゴマー成分により、または遷移金属触媒による該樹脂成分の分解などにより、いくらかの臭気の発生は依然として避け難い。したがって、特に臭気に敏感な食品の保存用などに用いる酸素吸収性樹脂組成物には、酸素吸収による不快な臭気の発生がより少ないことが求められている。
一方、酸素吸収剤の臭気対策として、酸素吸収層の外側および内側に脱臭剤または臭気吸収剤を含有する臭気バリア層を備えた多層構造体が提案されている(特許文献4参照)。しかしながら、基材と酸素吸収層とに加えて、臭気バリア層を有するので層構成は複雑となり、既存設備で製造することが困難な場合が多く、汎用性に欠けるという問題がある。
また、酸素吸収層の内側に臭気バリア層が存在すると、包装体の内部に存在する酸素を取り除く効率が低下するという問題もある。
特開平5−115776号公報 国際公開第02/18496号 特開2005−187808号公報 特開2005−1371号公報
本発明の目的は、優れた酸素吸収機能(高酸素吸収量および高酸素吸収速度)を有し、酸素吸収による不快な臭気を発生せず、かつ優れた加工性を有する酸素吸収性樹脂組成物の製造方法、および前記した優れた性質を有する酸素吸収性樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、二軸押出機を用いて酸素吸収性樹脂組成物を製造する方法であり、該方法は、樹脂原料を該押出機内で溶融混練する工程を含み、該樹脂原料は、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)(以下、単に熱可塑性樹脂(A)と称する。)と、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂およびポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂(D)(以下、単にガスバリア性樹脂(D)と称する。)とを含み、該押出機は、2以上の供給口、および該供給口よりも下流にベント口を備え、該樹脂原料は、該押出機の最も上流の第1供給口から供給され、そして水が、該第1供給口よりも下流の第2供給口から供給され、該ベント口から除去される。
1つの実施態様では、上記樹脂原料を100質量%としたときに、上記水は、1〜50質量%の量で供給される。
別の実施態様では、さらに窒素ガスが、上記第1供給口、または該第1供給口と上記第2供給口との間の第3供給口から供給される。
さらに別の実施態様では、上記押出機内の樹脂温度は、250℃以下である。
さらに別の実施態様では、上記酸素吸収性樹脂組成物の水分率は、0.6質量%以下である。
さらに別の実施態様では、上記熱可塑性樹脂(A)は、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する。
ある実施態様では、上記熱可塑性樹脂(A)は、ポリオクテニレンである。
さらに別の実施態様では、上記ガスバリア性樹脂(D)は、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
さらに別の実施態様では、上記樹脂原料は、さらに遷移金属塩(C)を含む。
ある実施態様では、上記遷移金属塩(C)は、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩およびコバルト塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩である。
さらに、本発明は、上記方法により製造された酸素吸収性樹脂組成物である。
本発明によれば、優れた酸素吸収機能(高酸素吸収量および高酸素吸収速度)を有し、酸素吸収による不快な臭気を発生せず、かつ優れた加工性を有する酸素吸収性樹脂組成物の製造方法、および前記した優れた性質を有する酸素吸収性樹脂組成物が提供される。
以下、本発明の実施態様について説明する。
本発明の、二軸押出機を用いて酸素吸収性樹脂組成物を製造する方法は、樹脂原料を該押出機内で溶融混練する工程を含み、該樹脂原料は、熱可塑性樹脂(A)と、ガスバリア性樹脂(D)とを含み、該押出機は、2以上の供給口、および該供給口よりも下流にベント口を備え、該樹脂原料は、該押出機の最も上流の第1供給口から供給され、そして水が、該第1供給口よりも下流の第2供給口から供給され、該ベント口から除去される。このような方法で酸素吸収性樹脂組成物を製造することにより、優れた酸素吸収機能を有し、酸素吸収による不快な臭気を発生せず、かつ優れた加工性を有する酸素吸収性樹脂組成物が得られる。
(I)樹脂原料
本発明の方法では、熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)、ならびに必要に応じて添加される遷移金属塩(C)、相容化剤(E)およびその他の添加剤が樹脂原料として用いられる。
(1)熱可塑性樹脂(A)
本発明の方法に用いられる熱可塑性樹脂(A)は、分子内に炭素−炭素二重結合を有し、好ましくは、実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する。「実質的に主鎖のみに炭素−炭素二重結合を有する」とは、熱可塑性樹脂(A)の主鎖に存在する炭素−炭素二重結合が、分子内の全炭素−炭素二重結合の90%以上であり、側鎖に存在する炭素−炭素二重結合が、分子内の全炭素−炭素二重結合の10%以下であることをいう。側鎖に存在する炭素−炭素二重結合の割合は、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である。
このような熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリジエン(ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(2−エチルブタジエン)、ポリ(2−ブチルブタジエン)など);シクロオレフィンの開環メタセシス重合体(ポリオクテニレン、ポリペンテニレン、ポリノルボルネンなど)などが挙げられる。これらの中でも、ポリジエンの1,4位重合体およびポリオクテニレンが好ましく、1,4−ポリブタジエンおよびポリオクテニレンがより好ましい。
一般的に、熱可塑性樹脂分子の主鎖に存在する炭素−炭素二重結合は、側鎖に存在する炭素−炭素二重結合と比較して、酸素吸収量が少なく、酸素吸収速度が遅い場合が多い。しかし、主鎖に、隣接する炭素−炭素二重結合の間にメチレン鎖が3個以上存在する繰り返し単位(すなわち、−C=C−(CHn≧3−C=C−)を有する熱可塑性樹脂は、炭素−炭素二重結合1個あたりの酸素吸収量が予想以上に多いことがわかった。したがって、本発明の製造方法では、臭気を発生しにくく、少ない添加量で優れた酸素吸収機能が得られるという観点から、熱可塑性樹脂(A)として、好ましくは、隣接する炭素−炭素二重結合の間にメチレン鎖が3個以上存在する繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオクテニレン、ポリペンテニレンなどが挙げられ、ポリオクテニレンが特に好ましい。
熱可塑性樹脂(A)に含まれる炭素−炭素二重結合の量は、0.001eq/g(当量/g)以上であることが好ましく、0.005eq/g以上がより好ましく、0.01eq/g以上がさらに好ましい。炭素−炭素二重結合の含有量が0.001eq/g未満の場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物は、十分な酸素吸収機能を有さない傾向となる。
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜500000であり、より好ましくは10000〜250000であり、さらに好ましくは40000〜200000である。重量平均分子量が1000未満の場合または500000を超える場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物の成形加工性、およびハンドリング性が劣ることがあり、または成形体とした場合の強度、伸度などの機械的性質が低下する傾向となる。また、マトリックス樹脂と混合して使用する場合に樹脂の分散性が低下し、そのため、得られる酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収機能が低下する傾向にある。
熱可塑性樹脂(A)が環状オレフィンの開環メタセシス重合体である場合、開環メタセシス重合の機構から、必然的にある程度のオリゴマーが混在することは避け難い。通常の使用条件では、モノマーが除去されていれば臭気などの問題は起きにくい。しかし、成形により得られる包装体が高温高湿下で保管される場合、これらのオリゴマーが存在すると包装体の内容物に臭気が感じられる場合がある。一方、オリゴマー量は臭気などの観点から低いほど好ましいが、必要以上に低くしようとすると製造プロセスが煩雑になる。したがって、高温高湿下で保管を行うことを考慮すると、開環メタセシス重合体中に存在する分子量1000以下のオリゴマーは、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
開環メタセシス重合体からオリゴマーを除去する方法としては、アセトンなどの有機溶剤で洗浄除去する方法などが挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス(6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,6−ジ−(tert−ブチル)−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(6−tert−ブチル−p−クレゾール)、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、チオジプロピオン酸ジラウリルなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)が酸化防止剤を含有する場合、その量は、酸素吸収性樹脂組成物中に含まれる樹脂原料の種類、含有量、得られる成形体の使用目的、保存条件などを考慮して適宜決定され、熱可塑性樹脂(A)および酸化防止剤の合計質量を100質量%とすると、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.02〜0.5質量%である。酸化防止剤の含有量が1質量%を超えると、熱可塑性樹脂(A)と酸素との反応が妨げられる傾向となる。一方、酸化防止剤の含有量が0.01質量%未満では、熱可塑性樹脂(A)の保存時または溶融混練時に、酸素との反応が進行し、得られる酸素吸収性樹脂組成物の実際の使用前に、酸素吸収機能が低下する場合がある。
(2)ガスバリア性樹脂(D)
本発明の方法に用いられるガスバリア性樹脂(D)は、熱可塑性樹脂(A)を希釈し、または分散させるための支持体として機能し、かつガスバリア性を本発明の酸素吸収性樹脂組成物に付与する働きを有する。ガスバリア性樹脂をマトリックス樹脂として含む酸素吸収性樹脂組成物を、容器などの所定の成形体とすると、熱可塑性樹脂(A)が酸素を吸収した後に生成する臭気成分の該成形体外への拡散を抑制することができる。
ガスバリア性樹脂(D)は、酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atm(20℃、65%RH(相対湿度))以下のガスバリア性を有することが好ましい。この酸素透過速度は、20℃、65%RHの環境下で測定したときに、1気圧の酸素の差圧がある状態で、面積1m、20μm厚のフィルムを1日に透過する酸素の体積が500ml以下であることを意味する。酸素透過速度が500ml・20μm/m・day・atmを超える場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物が酸素を吸収後に生成する臭気の、外への拡散を抑制する効果が小さくなる。ガスバリア性樹脂(D)の酸素透過速度は、より好ましくは100ml・20μm/m・day・atm以下であり、さらに好ましくは20ml・20μm/m・day・atm以下であり、最も好ましくは5ml・20μm/m・day・atm以下である。このようなガスバリア性樹脂(D)と熱可塑性樹脂(A)とを含有させることで、ガスバリア効果に加えて酸素吸収効果が発揮され、結果として極めて高度なガスバリア性を有する酸素吸収性樹脂組成物を得ることができる。
このようなガスバリア性樹脂(D)としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂などが代表的な樹脂として挙げられる。
ガスバリア性樹脂(D)としては、これらの樹脂のうち1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよいが、特に、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレンービニルアルコール共重合体(EVOH)がより好ましい。
ガスバリア性樹脂(D)のうち、ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体(特にビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒などを用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的な化合物として挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。ケン化度が90モル%未満の場合、高湿度下でのガスバリア性が低下する。
ポリビニルアルコール系樹脂の中でも、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好な点から、EVOHが特に好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂のうち、EVOHは、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上であるのが好ましい。EVOHのエチレン含有量は、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。EVOHのエチレン含有量が5モル%未満の場合、高湿度下でのガスバリア性が低下する傾向となる。一方、EVOHのエチレン含有量は、好ましくは55モル%以下であり、より好ましくは50モル%以下である。EVOHのエチレン含有量が60モル%を超える場合、ガスバリア性が低下する傾向となる。また、EVOHのケン化度は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上である。EVOHのケン化度が90%未満では、得られる酸素吸収性樹脂組成物の熱安定性が不十分となり、成形体にゲル・ブツが発生しやすくなる。なお、EVOHのエチレン含有量およびケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
ガスバリア性樹脂(D)のうち、ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンの単独重合体のほか、酢酸ビニル、マレイン酸誘導体、高級アルキルビニルエーテルなどとの共重合体が挙げられる。
ガスバリア性樹脂(D)のうち、ポリアクリロニトリル系樹脂としては、例えば、アクリロニトリルの単独重合体のほか、アクリル酸エステルなどとの共重合体が挙げられる。
樹脂原料の合計質量を100質量%とすると、好ましくは熱可塑性樹脂(A)は30〜1質量%、ガスバリア性樹脂(D)は70〜99質量%の割合で含まれる。例えば、ガスバリア性樹脂(D)の含有量が70質量%未満の場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物の酸素ガス、二酸化炭素ガスなどに対するガスバリア性が低下する傾向にある。一方、ガスバリア性樹脂(D)の含有量が99質量%を超える場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収機能が低下する傾向にある。熱可塑性樹脂(A)は、より好ましくは20〜2質量%、さらに好ましくは15〜3質量%の割合で含まれ、ガスバリア性樹脂(D)は、より好ましくは80〜98質量%、さらに好ましくは85〜97質量%の割合で含まれる。
(3)遷移金属塩(C)
遷移金属塩(C)は、熱可塑性樹脂(A)の酸化反応を促進することにより、酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収機能を向上させる効果がある。
遷移金属塩(C)に含まれる遷移金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、ロジウム、チタン、クロム、バナジウム、ルテニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルトが好ましく、マンガンまたはコバルトがより好ましく、コバルトが最も好ましい。
遷移金属塩(C)に含まれる遷移金属の対イオンとしては、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられ、有機酸由来のアニオンが好ましい。有機酸としては、例えば、酢酸、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属塩(C)としては、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、およびステアリン酸コバルトが特に好ましい。
遷移金属塩(C)は、樹脂原料の合計質量を100質量%とすると、遷移金属換算で好ましくは1〜50000ppm、より好ましくは5〜10000ppm、さらに好ましくは10〜5000ppmの範囲で配合する。遷移金属塩(C)の配合量が50000ppmを超えると、得られる酸素吸収性樹脂組成物の熱安定性が低下し、成形体のゲル・ブツの発生が著しくなる場合がある。一方、遷移金属塩(C)の配合量が1ppm未満では、得られる酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収機能が不十分となる場合がある。
(4)相容化剤(E)
酸素吸収性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(A)とガスバリア性樹脂(D)との相容性を向上させ、酸素吸収性樹脂組成物に安定したモルフォロジーを与える目的で、必要に応じて相容化剤(E)を添加することができる。相容化剤(E)の種類は特に限定されず、使用する熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)などの組み合わせにより適宜選択することができる。
例えば、ガスバリア性樹脂(D)は極性の高い樹脂であるため、相容化剤(E)は、極性基を含有する炭化水素系重合体であることが好ましい。相容化剤(E)が極性基を含有する炭化水素系重合体の場合、重合体のベースとなる炭化水素重合体部分により、相容化剤(E)と熱可塑性樹脂(A)との親和性が良好となる。さらに、相容化剤(E)の極性基により、相容化剤(E)とガスバリア性樹脂(D)との親和性が良好となる。その結果、得られる酸素吸収性樹脂組成物に安定したモルフォロジーを形成させることができる。このような極性基を有する相容化剤(E)の具体例は、例えば、特許文献3に詳細に開示されている。
樹脂原料の合計質量を100質量%とすると、好ましくは熱可塑性樹脂(A)は29.9〜1質量%、ガスバリア性樹脂(D)は70〜98.9質量%、そして相容化剤(E)は29〜0.1質量%の割合で含まれる。ガスバリア性樹脂(D)の含有量が70質量%未満の場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物の酸素ガス、二酸化炭素ガスなどに対するガスバリア性が低下する傾向にある。一方、ガスバリア性樹脂(D)の含有量が98.9質量%を超える場合、得られる酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収機能が低下する傾向にあり、さらに酸素吸収性樹脂組成物のモルフォロジーの安定性が損なわれる傾向にある。熱可塑性樹脂(A)は、より好ましくは19.5〜2質量%、さらに好ましくは14〜3質量%の割合で含まれる。ガスバリア性樹脂(D)は、より好ましくは80〜97.5質量%、さらに好ましくは85〜96質量%の割合で含まれる。相容化剤(E)は、より好ましくは18〜0.5質量%、さらに好ましくは12〜1質量%の割合で含まれる。
(5)その他の添加剤
樹脂原料は、本発明の作用効果が阻害されない範囲内で、各種の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、乾燥剤、充填剤、加工助剤、難燃剤、防曇剤、他の高分子化合物などが挙げられる。
(II)二軸押出機
本発明の方法に用いられる二軸押出機は、2以上の供給口、および該供給口よりも下流にベント口を備えている。樹脂原料は、二軸押出機の最も上流の第1供給口から二軸押出機内に供給される。すなわち、第1供給口は、樹脂原料供給口として機能する。また、水は、第1供給口よりも下流の第2供給口から二軸押出機内に供給される。すなわち、第2供給口は、水供給口として機能する。また、本発明の方法に用いられる二軸押出機は、第1供給口と第2供給口との間に第3供給口を備えていてもよく、窒素ガスは、第1供給口または第3供給口から二軸押出機内に供給される。ベント口は、二軸押出機外に水を除去するため、および必要に応じて二軸押出機内のガスを除去するために用いられる。なお、本発明の方法に用いられる二軸押出機は、溶融混練により製造される酸素吸収性樹脂組成物の吐出口も当然に備える。市販されている二軸押出機としては、例えば、株式会社日本製鋼所製「TEX」(商品名)、Werner&Pfleiderer社製「ZSK」(商品名)、東芝機械株式会社製「TEM」(商品名)、池貝鉄工株式会社製「PCM」(商品名)などが挙げられる。
(III)溶融混練工程
本発明の方法において、樹脂原料は、樹脂原料供給口から二軸押出機内に供給され、溶融混練が開始され、そして樹脂原料が溶融混練されている部分に水を添加するために、水が水供給口から二軸押出機内に供給される。次いで、樹脂原料が溶融混練されている部分からの水がベント口から二軸押出機外に除去される。この一連の工程では、水の添加により、溶融混練による樹脂温度の上昇が抑えられ、樹脂の熱分解による臭気成分の発生が抑えられる。特に、樹脂原料中に遷移金属塩(C)が存在する場合、ガスバリア性樹脂(D)の劣化が進行し、低分子の臭気成分が発生しやすくなることから、水の添加は臭気成分の発生を抑える上で効果的である。また、樹脂に添加される水は、樹脂原料中にもともと含まれ、または溶融混練中に発生する臭気成分などの不純物を取り込み、樹脂原料が溶融混練されている部分から不純物が水とともに除去されるものと推定される。このようにして、本発明の方法で得られる酸素吸収性樹脂組成物の臭気を低減させることができる。
二軸押出機内に樹脂原料を供給する方法は、特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂(A)、ガスバリア性樹脂(D)および遷移金属塩(C)を混合する場合、第1供給口に接続するそれぞれ別々の樹脂原料供給口(定量供給口)から供給してもよいし、各原料をあらかじめドライブレンドしたものを第1供給口から供給してもよい。また、樹脂原料は第1供給口から供給するだけではなく、一部の樹脂原料を別の供給口から供給してもよい。
臭気成分の発生を抑制する観点から、溶融混練中の樹脂原料の分解を抑制する必要があり、そのため、樹脂原料として遷移金属塩(C)を用いる場合、遷移金属塩(C)と熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)との接触時間を短くすることが好ましい。
遷移金属塩(C)と熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)との接触時間を短くする方法としては、まず熱可塑性樹脂(A)とガスバリア性樹脂(D)とを溶融混練し、二軸押出機内に供給した後に、遷移金属塩(C)を別の供給口から供給する方法が好ましい。この場合、遷移金属塩(C)は単独で供給してもよいし、熱可塑性樹脂(A)やガスバリア性樹脂(D)の一部とドライブレンドしたものを供給してもよい。
二軸押出機内に水を供給する方法は特に限定されないが、溶融混練中は連続して水を供給することが好ましい。二軸押出機内に水を供給するための第2供給口の位置は、溶融混練中の樹脂温度の上昇を抑え、臭気成分を除去する効果を高める観点から、樹脂原料が溶融混練されている部分に水を添加するため、第1供給口とベント口との間に適宜設定される。
供給する水の量は、樹脂原料の合計質量を100質量%とすると、好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは3質量%〜30質量%、さらに好ましくは5質量%〜20質量%である。供給する水の量が1質量%未満の場合、溶融混練中の樹脂温度の上昇を抑え、臭気成分を除去する効果が小さくなる。一方、供給する水の量が50質量%を超える場合、水分を樹脂原料から十分に除去できず、得られる酸素吸収性樹脂組成物中に水分が残ってしまうことがある。
二軸押出機外に水を除去する方法は特に限定されないが、真空ポンプを用いてベント口を減圧とすることで、効率的に水を除去することができ、溶融混練中は連続して水を除去することが好ましい。ベント口が2つ以上ある場合は、すべてのベント口を減圧としてもよいし、常圧で開放したベント口と減圧としたベント口とを組み合わせてもよい。二軸押出機外に水を除去するためのベント口の位置は、臭気成分を除去する効果を高め、得られる酸素吸収性樹脂組成物の水分率を制御する観点から、第2供給口の下流に適宜設定される。また、樹脂原料が溶融混練されている部分への水の滞留時間は5〜300秒が好ましく、10〜60秒がより好ましい。
得られる酸素吸収性樹脂組成物中の水分率は、好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下である。水分率が0.6質量%を超える場合、酸素吸収性樹脂組成物を用いてフィルム、シート、ボトル、チューブなどに成形すると成形体内に発泡が生じる場合がある。
溶融混練中の樹脂原料の酸化劣化を抑制するため、二軸押出機内から酸素ガスを除去することが効果的である。そのため、溶融混練中に二軸押出機内に窒素ガスが供給されることが好ましい。二軸押出機内に窒素ガスを供給する方法は特に限定されないが、溶融混練中は連続して窒素ガスを供給することが好ましい。二軸押出機内に窒素ガスを供給するための第3供給口の位置は、第1供給口と第2供給口との間に適宜設定されるが、窒素ガスは第1供給口から供給してもよい。二軸押出機内の酸素ガスおよび窒素ガスを二軸押出機外に除去する方法は特に限定されないが、真空ポンプを用いてベント口を減圧とすることで、効率的にこれらのガスを除去することができ、溶融混練中は連続してこれらのガスを除去することが好ましい。
溶融混練中の樹脂原料の分解を抑制するためには、溶融混練中の樹脂温度を低くすることも効果的である。そのため、二軸押出機内の樹脂温度は、好ましくは250℃以下、より好ましくは245℃以下である。250℃以上の場合、熱可塑性樹脂(A)およびガスバリア性樹脂(D)の分解が生じやすくなる。樹脂温度の下限は特に限定されないが、樹脂原料の融点よりも高い必要がある。また、各樹脂原料を細かく均一に分散させるためには、スクリュー回転数をある程度高く設定する必要があり、その結果として、樹脂温度は上昇する。そのため、実用的な樹脂温度は200℃以上である。
(IV)本発明の方法によって製造される酸素吸収性樹脂組成物
本発明の方法で得られる酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後に発生する代表的な臭気成分である炭素数4〜8の脂肪族直鎖飽和脂肪酸と炭素数6〜9の脂肪族直鎖飽和アルデヒドとのオーダーユニット(各成分の濃度/各成分の臭気閾値)の合計が15000以下であることが好ましい。オーダーユニットが大きいほど、臭気強度が大きいことを意味する。たとえ発生した臭気成分の濃度が低くても、その成分の臭気閾値が小さければ、オーダーユニットは大きくなり臭気強度は大きくなる。逆に発生した臭気成分の濃度が高くても、その成分の臭気閾値が大きければ、オーダーユニットは小さくなり臭気強度も小さくなる。すなわち、臭気の主な原因である上記の酸およびアルデヒドのオーダーユニットの合計を15000以下とすることにより、食品、飲料、ペットフード、医薬品、化粧品など、特に風味を重視する内容物を包装する際、臭気の内容物への移行を防ぐことが可能となる。オーダーユニットは、より好ましくは13000以下、さらに好ましくは10000以下である。なお、オーダーユニットは、後述の実施例で説明する方法により算出される。
本発明の方法で得られる酸素吸収性樹脂組成物は、成形方法を適宜採用することによって、種々の成形体、例えば、フィルム、シート、容器その他の包装体に成形することができる。このとき、酸素吸収性樹脂組成物を一旦ペレットとしてから成形に供してもよいし、溶融混練して得られる酸素吸収性樹脂組成物を直接成形に供してもよい。
成形方法および成形体としては、例えば、溶融押出成形法により成形されるフィルム、シートなど、射出成形法により成形される容器など、中空成形法により成形されるボトルなどの中空容器などが挙げられる。中空成形法としては、押出中空成形法(押出成形法によりパリソンを成形し、これをブローして成形を行う方法)、射出中空成形法(射出成形法によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う方法)などが挙げられる。
成形体は単層であってもよいが、機械的特性、水蒸気バリア性、さらなるガスバリア性などの特性を付与するという観点から、他の層と積層された多層構造体であることが好ましい。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、優れた酸素吸収機能(高酸素吸収量および高酸素吸収速度)を有し、酸素吸収による不快な臭気を発生しないため、酸素の影響で何らかの劣化を生じやすい内容物(例えば、食品、飲料、医薬品、化粧品など)の包装材として好適に用いられる。特に風味を重視する食品、飲料、品質変化に敏感な加工肉、ペットフードなどの包装材として好適である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における分析および評価は、以下のとおりに実施した。
(1)熱可塑性樹脂(A)の分子構造
熱可塑性樹脂(A)の分子構造は、重クロロホルムを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(日本電子株式会社製「JNM−GX−500型」を使用)により、得られたスペクトルから決定した。
(2)熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、ポリスチレン換算値として示した。測定の詳細な条件は、以下の通りである。
<分析条件>
装置:Shodex製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)SYSTEM−11
カラム:Shodex製KF−806L
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン、流速1.0ml/分
Run:15分
検出器:RI
濃度:0.1%
注入量:100μl
(3)臭気成分のオーダーユニット
<臭気成分の捕集>
実施例および比較例で得られた酸素吸収性樹脂組成物ペレットを粉砕し、粉末状とした。得られた粉末5.0gを、23℃、50%RH(相対湿度)雰囲気中で20ml容ヘッドスペースバイアルに封入し、60℃で7日間静置した。次いで、ヘッドスペースバイアルのヘッドスペースに固相マイクロ抽出(SPME)用ファイバー(SPELCO社製、65μmPDMS−DVB)を挿入した。このバイアルを60℃のオーブンに入れ、2時間加熱して、揮発成分をSPMEファイバーに捕集した。
<臭気成分の特定>
ファイバーに捕集した揮発成分をGCカラムに導入し、カラムで分離した成分は分配器(GERSTEL社製CROSSPIECE GRAPHPACK 3D/2)を用いて質量検出器(MS)と嗅覚検出ポート(GERSTEL社製ODP2)とに導いた。この手法により、実際に臭気として感じる成分を特定することができる。実施例および比較例においては、炭素数4〜8の脂肪族直鎖飽和脂肪酸と炭素数6〜9の脂肪族直鎖飽和アルデヒドとが臭気成分として検出された。
<分析条件>
GC:Hewlett−Packard製GasChromatograph HP6890
MS:Hewlett−Packard製Mass Sensitive Detector5973
カラム:J&W製DB−5(長さ60m,内径0.25mm)
カラム温度:40℃×13分→昇温(6℃/分)→250℃×10分
移動相:ヘリウム、流速:1.8ml/分
<臭気成分のオーダーユニット>
炭素数4〜8の脂肪族直鎖飽和脂肪酸および炭素数6〜9の脂肪族直鎖飽和アルデヒドの各成分をn-ヘキサンで希釈して、それぞれ50、100および200μg/mlの標準溶液を調製し、標準溶液の上記分析結果から各成分について検量線を作成した。この検量線を用いて、実施例および比較例における各臭気成分の濃度を求め、オーダーユニットを算出した。なお、各臭気成分のオーダーユニットとは各成分の濃度を各成分の臭気閾値で除した値である。
ここで、各成分の臭気閾値は以下の通りである。
n−ブタン酸:0.19ppb
n−ペンタン酸:0.037ppb
n−ヘキサン酸:0.6ppb
n−ヘプタン酸:0.21ppb
n−オクタン酸:5ppb
n−ヘキサナール:0.28ppb
n−ヘプタナール:0.18ppb
n−オクタナール:0.01ppb
n−ノナナール:0.34ppb
(4)官能試験
実施例および比較例で得られた酸素吸収性樹脂組成物フィルム0.1gを精秤し、成形の5時間後にロール状に巻いて、23℃、50%RH、体積比で21:79の酸素および窒素を含有する空気を満たした容量85mlの規格瓶に入れた。次いで、この規格瓶に純水15mlを入れ、フィルムの一部を水中に浸漬させた。この規格瓶を、蓋をして30℃で1週間静置した。次いで、パネリスト5人が規格瓶中の水の味覚を以下の基準で評価した。
◎:純水と比較して、水の味に変化が感じられない。
○:純水と比較して、水の味にかすかな変化が感じられる。
(合成例1:ポリオクテニレン(a−1)の合成)
(重合)
攪拌機および温度計を装着した3つ口フラスコ内を、乾燥した窒素ガスで置換した。3つ口フラスコに、cis−シクロオクテン110質量部およびcis−4−オクテン0.187質量部を溶解させたヘプタン624質量部を加えた。
次いで、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム 0.0424質量部を、トルエン3質量部に溶解させた触媒液を調製した。この触媒液をすばやく3つ口フラスコに加えて、55℃で開環メタセシス重合を行った。1時間後、反応液を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、GC−14B;カラム:化学品検査協会製、G−100)により分析して、cis−シクロオクテンの消失を確認した。次いで、3つ口フラスコにエチルビニルエーテル1.08質量部を添加し、さらに10分間攪拌した。
得られた反応液に水200質量部を添加し、40℃で30分間攪拌した。次いで、40℃で1時間静置して分液後、水層を除去した。再度、反応液に水100質量部を添加し、45℃で30分間攪拌した。次いで、40℃で1時間静置して分液後、水層を除去した。反応液からヘプタンを減圧下で留去し、さらに、真空乾燥機を用いて1Pa、100℃で6時間乾燥し、重量平均分子量(Mw)が142000、分子量1000以下のオリゴマーの割合が9.2質量%の重合体102.1質量部(収率92%)を得た。この重合体(ポリオクテニレン)の、側鎖中の炭素−炭素二重結合の、全炭素−炭素二重結合に対する比率は0%であった。
(アセトン洗浄)
得られた重合体を1mm角程度に破砕し、攪拌装置、還流管、および温度計を装着したセパラブルフラスコに加えた。次いで、アセトン300質量部をセパラブルフラスコに加え、40℃で3時間攪拌した。アセトンをデカンテーションで除去した。再度、セパラブルフラスコにアセトン300質量部を加え、40℃で3時間攪拌した。アセトンをデカンテーションで除去した。残存するアセトンを減圧下で留去し、さらに、真空乾燥機を用いて1Pa、100℃で6時間乾燥し、重量平均分子量(Mw)が150000、数平均分子量が37000、分子量1000以下のオリゴマーの割合が3.1%の重合体(ポリオクテニレン(a−1))99.0質量部を得た。
(実施例1)
(酸素吸収性樹脂組成物の調製)
二軸押出機(株式会社日本製鋼所製TEX30α、30mmφ、L/D=45.5)に、スクリューおよび3つのベント口を設置し、そして樹脂供給口とベント口との間に1つの水供給口を設置した。この二軸押出機を、バレル部温度190℃、吐出量15kg/hr、およびスクリュー回転数150rpmの条件下で、樹脂供給口を水冷しながら運転した。
ガスバリア性樹脂(D)として、エチレン含有量32モル%;ケン化度99.5モル%;MFR1.6g/10分(190℃、2160g荷重);融点183℃;および20℃、65%RHにおける酸素透過速度0.4ml・20μm/(m・day・atm)のEVOH(以下、EVOH(d−1)と記載する)92質量部、熱可塑性樹脂(A)として、合成例1で得られたポリオクテニレン(a−1)8質量部、およびステアリン酸コバルト(II)0.4242質量部(コバルト原子として0.04質量部)をドライブレンドして、混合物を調製した。
次いで、この混合物を、樹脂供給口から上記二軸押出機内に供給し、二軸押出機内に窒素ガスを連続的に供給しながら溶融混練した。溶融混練の際、水供給口から二軸押出機内に純水20質量部を連続的に供給し、3つのベント口から二軸押出機外に水およびガスを連続的に除去した。この結果、EVOH(d−1)、ポリオクテニレン(a−1)、およびステアリン酸コバルト(II)からなる酸素吸収性樹脂組成物(P)(以下、酸素吸収性樹脂組成物(p−1)と記載する)のペレットを得た。
なお、溶融混練時の樹脂温度は230℃であった。また、二軸押出機のダイホールより吐出された直後の酸素吸収性樹脂組成物(p−1)の水分率を、株式会社メトラートレド社製ハロゲン水分計HR73を用いて測定したところ、0.20質量%であった。
(フィルムの調製と評価)
酸素吸収性樹脂組成物(p−1)のペレットを、20mmφ一軸押出機を用いて210℃でコートハンガーダイより溶融押出を行い、厚さ20μmのフィルムを得た。
フィルムの切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子径1μm以下のポリオクテニレン(a−1)が、EVOH(d−1)からなるマトリックス中に分散していた。
得られたフィルム0.2gを、23℃、50%RHの空気を満たしておいた内部容量260mlの規格瓶に入れた。規格瓶中の空気は、体積比で21:79の酸素および窒素を含有していた。規格瓶の口を、アルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じてから、23℃で放置した。
次いで、放置から14日後、規格瓶内部の空気をシリンジでサンプリングし、この空気の酸素濃度を、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定によって得られた酸素と窒素との体積比から、酸素の減少量を計算し、以下の式(I)から酸素吸収速度を求めたところ、2.0(ml/(g・day))であった。
F=G/(H×I×2) (I)
ここで、
F:酸素吸収速度(ml/(g・day))
G:酸素の減少量(ml)
H:保管日数(日)=14(日)
I:フィルムサンプルの表面積(m
また、フィルムサンプルの表面積は以下の式(II)より求めた。
I=J/(K×L) (II)
ここで、
J:フィルムサンプルの重量(g)
K:サンプルの厚み(μm)
L:フィルムサンプルの密度(g/cm
一方、上記で得られたフィルム0.1gを精秤し、成形の5時間後にロール状に巻いて、23℃、50%RH、体積比で21:79の酸素および窒素を含有する空気を満たした容量85mlの規格瓶に入れた。内部の相対湿度を100%RHとするため、水を含ませたろ紙を一緒に入れた。規格瓶の口を、アルミニウム層を含む多層シートを用いてエポキシ樹脂で封じ、60℃で静置した。次いで、経時的に内部の空気をシリンジでサンプリングし、酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。サンプリング時に多層シートに生じた孔は、エポキシ樹脂を用いてサンプリング毎に封じた。測定によって得られた酸素および窒素との体積比から酸素の減少量を計算して、フィルムの60℃、100%RH雰囲気下における酸素吸収量を求めた。封入時から30日後の酸素吸収量(積算量)は、59.2ml/gであった。
酸素吸収性樹脂組成物(p−1)について、臭気成分のオーダーユニットを評価したところ、炭素数4〜8の脂肪族直鎖飽和脂肪酸と炭素数6〜9の脂肪族直鎖飽和アルデヒドとのオーダーユニットの合計は12288であった。結果を表1に示す。
上記で得られたフィルムについて、官能試験を行ったところ、水の味に変化は感じられなかった。
(実施例2)
ステアリン酸コバルト(II)の量を0.2121質量部(コバルト原子として0.02質量部)としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸素吸収性樹脂組成物ペレットを得、実施例1と同様の手順で、フィルムを調製して評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
ステアリン酸コバルト(II)の量を0.1061質量部(コバルト原子として0.01質量部)としたこと以外は、実施例1と同様の手順で、酸素吸収性樹脂組成物ペレットを得、実施例1と同様の手順で、フィルムを調製して評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
(酸素吸収性樹脂組成物の調製)
溶融混練の際、水供給口から二軸押出機内に純水20質量部を供給せず、ベント口から二軸押出機外に水を除去しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順で、EVOH(d−1)、ポリオクテニレン(a−1)、およびステアリン酸コバルトからなる酸素吸収性樹脂組成物(以下、酸素吸収性樹脂組成物(p−2)と称する)のペレットを得た。
なお、溶融混練時の樹脂温度は258℃であった。また、二軸押出機のダイホールより吐出された直後の酸素吸収性樹脂組成物(p−2)の水分率を、株式会社メトラートレド社製ハロゲン水分計HR73を用いて測定したところ、0.17質量%であった。
(フィルムの調製と評価)
酸素吸収性樹脂組成物(p−2)のペレットを、20mmφ一軸押出機を用いて210℃でコートハンガーダイより溶融押出を行い、厚さ20μmのフィルムを得た。
フィルムの切断面をSEMで観察したところ、粒子径1μm以下のポリオクテニレン(a−1)が、EVOH(d−1)からなるマトリックス中に分散していた。
得られたフィルム0.2gを精秤し、実施例1と同様の手順で、酸素吸収速度および酸素吸収量を求めた。結果を表1に示す。
酸素吸収性樹脂組成物(p−2)について、臭気成分のオーダーユニットを評価したところ、炭素数4〜8の脂肪族直鎖飽和脂肪酸と炭素数6〜9の脂肪族直鎖飽和アルデヒドとのオーダーユニットの合計は16720であった。結果を表1に示す。
上記で得られたフィルムについて、官能試験を行ったところ、水の味にかすかな変化が感じられた。
(比較例2)
二軸押出機のスクリュー回転数を130rpmとしたこと以外は、比較例1と同様の手順で、酸素吸収性樹脂組成物ペレットを得、実施例1と同様の手順で、フィルムを調製して評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005565894
本発明によれば、優れた酸素吸収機能(高酸素吸収量および高酸素吸収速度)を有し、酸素吸収による不快な臭気を発生せず、かつ優れた加工性を有する酸素吸収性樹脂組成物の製造方法、および前記した優れた性質を有する酸素吸収性樹脂組成物が提供される。したがって、本発明の方法によって得られる酸素吸収性樹脂組成物は、酸素の影響で何らかの劣化を生じやすい内容物(例えば、食品、飲料、医薬品、化粧品など)の包装材として有用である。

Claims (6)

  1. 二軸押出機を用いて酸素吸収性樹脂組成物を製造する方法であって、
    樹脂原料を該押出機内で溶融混練する工程を含み、
    該樹脂原料が、炭素−炭素二重結合を有する熱可塑性樹脂(A)と、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂およびポリビニルアルコール系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のガスバリア性樹脂(D)とを含み、
    該熱可塑性樹脂(A)がポリオクテニレンであり、
    該樹脂原料が、さらに鉄塩、ニッケル塩、銅塩、マンガン塩およびコバルト塩からなる群より選択される少なくとも1種の遷移金属塩(C)を含み、
    該押出機が、2以上の供給口、および該供給口よりも下流にベント口を備え、
    該樹脂原料が、該押出機の最も上流の第1供給口から供給され
    水が、該第1供給口よりも下流の第2供給口から供給され、該ベント口から、該ガスバリア性樹脂(D)の熱分解により発生する臭気成分を伴って除去され
    該臭気成分が、炭素数4から8の脂肪族直鎖飽和脂肪酸および炭素数6から9の脂肪族直鎖飽和アルデヒドからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、そして
    該樹脂原料を100質量%としたときに、該水が、1〜50質量%の量で供給される、
    方法。
  2. さらに窒素ガスが、前記第1供給口、または該第1供給口と前記第2供給口との間の第3供給口から供給される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記押出機内の樹脂温度が、250℃以下である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記酸素吸収性樹脂組成物の水分率が、0.6質量%以下である、請求項1からのいずれかの項に記載の方法。
  5. 前記ガスバリア性樹脂(D)が、エチレン含有量5〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体である、請求項1からのいずれかの項に記載の方法。
  6. 請求項1からのいずれかの項に記載の方法により製造された酸素吸収性樹脂組成物。
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