JP2011151095A - 難燃性電磁波シールド接着フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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孝洋 松沢
Hidenori Kobayashi
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Yuji Nishiyama
祐司 西山
Akifumi Kuwabara
章史 桑原
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Abstract

【課題】フレキシブルプリント配線板などに貼付して電磁ノイズを遮蔽する用途に好適に用いられる電磁波シールド接着フィルムであって、フレキシブルプリント配線板に貼着した後、十分な電磁波シールド性に加えて、鉛フリーハンダリフロー時の高温に耐え得る耐熱性を有し、屈曲性に優れると共に、高温高湿度下に曝されても導電性が低下せず、さらにイオンマイグレーションを抑制し、環境問題に対応する難燃性電磁波シールド接着フィルムを提供する。
【解決手段】ホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことを特徴とする難燃性電磁波シールド接着フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は,繰り返し屈曲を受けるフレキシブルプリント配線板などに貼着して、電気回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する用途に好適に用いられる難燃性電磁波シールド接着フィルム及びその製造方法に関する。
フレキシブルプリント配線板は、屈曲性を有することから、近年のOA機器、通信機器、携帯電話などの更なる高性能化、小型化の要請に応えるべく、その狭く複雑な構造からなる筐体内部に電子回路を組み込むために多用されている。そうした電子回路のダウンサイズ化・高周波化に伴い、そこから発生する不要な電磁ノイズに対する対策がますます重要になってきている。そこで、フレキシブルプリント配線板に、電子回路から発生する電磁ノイズを遮蔽する電磁波シールド接着フィルムを貼着することが従来より行われている。
この電磁波シールド接着フィルム自体には、電磁波シールド性に加えて、貼り合わせたフレキシブルプリント配線板全体の屈曲性を損なわないよう、薄さと優れた屈曲性が要求される。そのため、電磁波シールド接着フィルムとしては、厚さの薄い基材フィルム上に導電層を設けてなる基本的構造を有するものが広く知られている。
一方、電子回路部品等には電気火災に対する安全性を高めるため難燃性が要求されている。そのため電磁波シールド接着フィルムもハロゲン系難燃剤の配合により難燃性を達成していた。
しかしハロゲン系難燃剤は、高温多湿下などの条件で脱ハロゲンを起こしやすく、そのハロゲンが金属回路の腐食を起こす問題や、燃焼時に電磁波シールド接着フィルムの樹脂成分と反応し、猛毒のダイオキシンが発生するという環境面の問題があった。そのため上記問題を解決する難燃性の電磁波シールド接着フィルムが求められていた。
そこで非ハロゲン系難燃剤として、リン系難燃剤を配合する方法(特許文献1参照)や、分子構造中にリンを有する樹脂を用いる方法(特許文献2参照)が提案されている。
しかし前者は、難燃性を達成できる量を配合すると難燃剤のブリードアウトが発生したり、イオンマイグレーションが進行しやすいという問題があった。また後者は、リンを分子構造中に導入するため樹脂の分子構造が制約を受け、屈曲性が不足する問題があった。
そのため環境面等の問題を解決しながら、屈曲性などの物性を満たすことができる電磁波シールド接着フィルムが求められていた。
特許3905477号 特開2005−109160号公報
本発明は、フレキシブルプリント配線板などに貼付して電磁ノイズを遮蔽する用途に好適に用いられる電磁波シールド接着フィルムであって、フレキシブルプリント配線板に貼着した後、十分な電磁波シールド性に加えて、鉛フリーハンダリフロー時の高温に耐え得る耐熱性を有し、屈曲性に優れると共に、高温高湿度下に曝されても(具体的には、プレッシャークッカーテスト(以下、PCT)を経ても)導電性が低下せず、さらに難燃性を有しながらブリードアウトやイオンマイグレーションの発生を抑制し、、同時に環境問題にも対応する難燃性電磁波シールド接着フィルム、およびフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
本発明のうち第一の発明は、下記一般式(1)で示されるホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことを特徴とする難燃性電磁波シールド接着フィルムに関する。
一般式(1)
Figure 2011151095
(R1は、水素原子、ビニル基、アリル基、アリール基、またはベンジル基であり、R2およびR3は、同一かまたは異なる、水素もしくはハロゲンを含まない有機基を示す。)
また第二の発明は、導電性接着剤層(I)と、難燃性樹脂層(II)とを含む難燃性電磁
波シールド接着フィルムであって、
前記難燃性樹脂層(II)が、一般式(1)で示されるホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことを特徴とする上記発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムに関する
また第三の発明は、導電性接着剤層(I)および難燃性樹脂層(II)が、
ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(A)およびエポキシ樹脂(B)を含むことを特徴とする上記発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムに関する。
また第四の発明は、難燃性樹脂層(II)が、さらにメラミン骨格を有する難燃剤(C)を含むことを特徴とする上記第二または第三の発明の難燃性電磁波シールド接着フィルム関する。
また第五の発明は、上記第二〜第四の発明のいずれかの難燃性電磁波シールド接着フィルムの導電性接着剤層(I)面と、配線回路上に絶縁処理されたフレキシブルプリント配
線板用配線回路の配線回路面へ重ね合わせ、加熱し、導電性接着剤層(I)および難燃性
樹脂層(II)を硬化させる工程を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法に関する。
また第六の発明は、上記発明の製造方法により得られたフレキシブルプリント配線板に関する。
本発明により優れた耐湿熱性、屈曲性、電気絶縁性、電磁波シールド性等を維持しつつ、金属腐食性を大きく改善し、ハロゲン系難燃剤を含まず難燃性を達成した難燃性電磁波シールド接着フィルム、およびそれを用いたフレキシブルプリント配線板を提供することができた。
PCT耐性評価を説明するための図。(1)回路2A上に、回路2Aの一部が露出するように、スルーホールを有するカバーフィルムが積層されたフレキシブルプリント配線板の模式的平面図。(2)D−D’における断面図。(3)C−C’における断面図。(4)前記(1)に示されるカバーフィルム及び回路2B上に、回路2A、2Bの一部が露出するように、難燃性電磁波シールド接着フィルムを重ね、圧着、硬化した状態の模式的平面図。(5)D−D’における断面図。(6)C−C’における断面図。
本発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムは、下記一般式(1)で示されるホスファフェナントレン誘導体(X)[以下、ホスファフェナントレン誘導体(X)という]を含むことが重要である。
本発明でホスファフェナントレン誘導体(X)は、下記一般式(1)で表わされる化合物であり難燃剤としての機能を有する。そして、ホスファフェナントレン誘導体(X)は、例えば、下記化学式(2)〜(4)の化合物を挙げることができる。
一般式(1)
Figure 2011151095
(R1は、水素原子、ビニル基、アリル基、アリール基、またはベンジル基であり、R2およびR3は、同一かまたは異なる、水素もしくはハロゲンを含まない有機基を示す。)
化学式(2)
Figure 2011151095
化学式(3)
Figure 2011151095
化学式(4)
Figure 2011151095
本発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムは、導電性接着剤層(I)と、難燃性樹脂
層(II)とを含むことが好ましい。そして難燃性樹脂層(II)は、ホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことが好ましい。また導電性接着剤層(I)および難燃性樹脂層(
II)は、それぞれポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とを含むことが好ましい。
本発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムは、各層中に硬化成分が未反応状態で存在している。そして被着体へ貼付し加熱することで硬化反応が起こり、その結果電磁波シールド性、耐熱性、屈曲性などの諸性能を発揮する、という機能を有する。
本発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムは、硬化性導電性ポリウレタンポリウレア接着剤層(I)と硬化性難燃性ポリウレタンポリウレア樹脂組成物層(II)とを有するこ
とが好ましい。
本発明でポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)、カルボキシル基を有するジオール化合物以外の数平均分子量500〜8000のポリオール(b2)[以下、ポリール(b2)という]および有機ジイソシアネート(b3)を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b4)と、ポリアミノ化合物(b5)とを反応させて得られる。
導電性接着剤層(I)は、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)と
を含むことによって加熱硬化時に導電性接着剤層(I)自体のしみ出しが少なく、鉛フリ
ーハンダリフローに耐え得る、優れた耐熱性及び耐屈曲性を得ることができるため好ましい。
カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。特に反応性、溶解性点から、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。
ポリオール(b2)は、一般にポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分として知られている、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)以外のポリオールである。ポリオール(b2)の数平均分子量(Mn)は、得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)の耐熱性、接着強度、溶解性等を考慮して適宜決定されるが、好ましくは1000〜5000である。Mnが1000未満であると、得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)中のウレタン結合が多くなり過ぎ、ポリマー骨格の柔軟性が低下してフレキシブルプリント配線板への接着性が低下する傾向があり、また、Mnが5000を越えると、ジオール化合物(b1)由来のカルボキシル基の、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)中における数が減少する。その結果、エポキシ樹脂との反応点が減少するため、得られる導電性硬化接着剤層の耐ハンダリフロー性が低下する傾向にある。
ポリオール(b2)としては、各種のポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類等が使用できる。
ポリエーテルポリオール類としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、もしくはダイマージオール等の飽和または不飽和の低分子ジオール類とアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、もしくはセバシン酸等のジカルボン酸類、またはこれらの無水物類を反応させて得られるポリエステルポリオール類や、n−ブチルグリシジルエーテル、又は2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と上記のジカルボン酸類の無水物類とをアルコール類などの水酸基含有化合物の存在下で反応させて得られるポリエステルポリオール類、または環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類としては、例えば、
1)グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応生成物、あるいは
2)グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを反応させて得られる反応生成物等が使用できる。
上記1)または2)の場合に用いられるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2,2,8,10−テトラオキソスピロ〔5.5〕ウンデカンが挙げられる。
また、上記1)または2)の場合に用いられるビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類や、これらのビスフェノール類にエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させた化合物等が挙げられる。また、上記1)の場合に用いられる炭酸エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
ポリオール(b2)として例示した各種ポリオールは、単独で用いても、2種類以上併用してもよい。更に、得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)の性能が失われない範囲内で、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)と、ポリオール(b2)及び有機ジイソシアネート(b3)とを反応させる際に、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)以外の低分子ジオール類を併用しても良い。併用可能な低分子ジオール類としては、たとえば、ポリオール(b2)の製造に用いられる各種低分子ジオール等が挙げられる。
ウレタンプレポリマー(b4)を合成する際に、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)と、ポリオール(b2)とは、ポリオール(b2)1モルに対して、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)0.1モル〜4.0モルとなる比率で用いることが好ましく、0.2モル〜3.0モルとなる比率で用いることがより好ましい。ポリオール(b2)1モルに対するカルボキシル基を有するジオール化合物(a1)の使用量が0.1モルより少ないと、エポキシ樹脂(B)と架橋可能なカルボキシル基が少なくなり、耐ハンダリフロー性が低下する傾向にある。また、4.0モルより多いと、接着性が低下する傾向にある。
有機ジイソシアネート(b3)としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族イソシアネート、またはこれらの混合物を使用できるが、特にイソホロンジイソシアネートが好ましい。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、またはキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、またはリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、またはメチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b4)は、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)と、ポリオール(b2)及び有機ジイソシアネート(b3)とを反応させることにより得られる。末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b4)を合成する際の条件は、イソシアネート基が過剰になるようにする他にとくに限定はないが、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.2/1〜3/1の範囲内になるような割合で、カルボキシル基を有するジオール化合物(b1)と、ポリオール(b2)及び有機ジイソシアネート(b3)とを反応させることが好ましい。また、反応温度は通常常温〜120℃であるが、更に製造時間、副反応の制御の面から好ましくは60〜100℃である。
ポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b4)と、ポリアミノ化合物(b5)とを反応させて得られる。ポリアミノ化合物(b5)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジアミンの他、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類も使用することができる。なかでも、イソホロンジアミンが好適に使用される。
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b4)とポリアミノ化合物(b5)とを反応させてポリウレタンポリウレア樹脂(A)を合成するときには、分子量を調整する為に反応停止剤を併用することができる。反応停止剤としては、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、ジエタノールアミン等のジアルカノールアミン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が使用できる。
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b4)、ポリアミノ化合物(b5)及び必要に応じて反応停止剤を反応させる際の条件は、とくに限定はないが、ウレタンプレポリマー(b4)が有するイソシアネート基に対する、ポリアミノ化合物(b5)及び反応停止剤中のアミノ基の合計の当量比が0.5〜1.3の範囲内であることが好ましい。当量比が0.5未満の場合には、耐ハンダリフロー性が不十分になりやすく、1.3より多い場合には、ポリアミノ化合物(b5)や反応停止剤が未反応のまま残存し、臭気が残りやすくなる。
ポリウレタンポリウレア樹脂(A)を合成する際に用いられる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。得られるポリウレタンポリウレア樹脂(A)の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が5000に満たない場合には、耐ハンダリフロー性が劣る傾向にあり、100000を越える場合には、接着性が低下する傾向にある。
また、導電性接着剤層(I)に含有されるエポキシ樹脂(B)は、2個以上のエポキシ
基を有する樹脂であり、液状であっても固形状であってもよい。エポキシ樹脂(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち高接着性、耐熱性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、またはテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
本発明で用いられる導電性接着剤層(I)において、エポキシ樹脂(B)とポリウレタ
ンポリウレア樹脂(A)との配合比率は、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)100重量部に対して、エポキシ樹脂(B)3〜200重量部であることが好ましく、5〜100重量部であることがより好ましい。ポリウレタンポリウレア樹脂(A)100重量部に対してエポキシ樹脂(B)が3重量部より少ないと、耐ハンダリフロー性が低くなる傾向がある。一方、エポキシ樹脂(B)が200重量部より多いと、接着性が低下する傾向がある。さらに導電性接着剤層(I)には、耐熱性や屈曲性等の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などを含有させることができる。
導電性接着剤層(I)は、上記の配合によって加熱硬化時に導電性接着剤層(I)自体
のしみ出しが少なく、鉛フリーハンダリフローに耐え得る、優れた耐熱性及び耐屈曲性を得ることができるため好ましい。
また、導電性接着剤層(I)に含有できる導電性フィラーは、導電性接着剤層(I)に
導電性を付与するものである。導電性フィラーとしては、金属フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物が用いられる。金属フィラーとしては、銀、銅、ニッケル等の金属粉、ハンダ等の合金粉、銀メッキされた銅粉、金属メッキされたガラス繊維やカーボンフィラーなどが挙げられる。なかでも、導電率の高い銀フィラーが好ましく、特にフィラー同士の接触を得やすい比表面積0.5〜2.5m2/gである銀フィラーが好ましい。また、導電性フィラーの形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、繊維状などが挙げられる。
導電性接着剤層(I)における導電性フィラーの含有量は、必要とする電磁波シールド
効果の度合いによって異なるが、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との合計100重量部に対して、導電性フィラーは10〜700重量部が好ましく、50〜500重量部がより好ましい。導電性フィラーの含有量が10重量部を下回ると、導電性フィラー同士が十分に接触せず、高い導電性が得られず、電磁波シールド効果が不十分となりやすい。また、導電性フィラーの含有量が700重量部を超えても、導電性接着剤層(I)の表面抵抗値は下がらなくなり、電導率が飽和状態に達する上に、過剰な導電性フィラーの存在により、導電性接着剤層(I)の被着体への接着力が低下する恐れがある。
導電性接着剤層(I)には、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)
との反応や、エポキシ樹脂(B)の単独での反応を促進させる目的で、硬化促進剤、硬化剤を含有させることができる。エポキシ樹脂(B)の硬化促進剤としては、3級アミン化合物、ホスフィン化合物、イミダゾール化合物等が使用でき、硬化剤としては、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、酸無水物等が使用できる。
硬化促進剤のうち、3級アミン化合物としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5等が挙げられる。また、ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらの中でも、潜在性硬化促進剤が好ましい。
硬化剤としてのカルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。また、酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
これらの硬化促進剤または硬化剤としては、それぞれ2種類以上を併用してもよく、その使用量は合計で(硬化促進剤または硬化剤のどちらか一方のみを使用する場合も含まれる)、エポキシ樹脂(B)100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲であることが好ましい。
また、導電性接着剤層(I)は、導電性、接着性、耐ハンダリフロー性を劣化させない
範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤,充填剤,難燃剤等を含んでいてもよい。
続いて、難燃性樹脂層(II)について説明する。難燃性樹脂層(II)は、難燃性電磁波シールド接着フィルムに機械的強度を与える役割を担い、絶縁性である基材フィルムに相当する。
難燃性樹脂層(II)は、上述したポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、ホスファフェナントレン誘導体(X)とを含むことが好ましい。そしてポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との配合比率も、導電性接着剤層(I)と同様の配合比率であることが好ましい。
難燃性樹脂層(II)は、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有することで、熱圧着時の難燃性樹脂層(II)自体のしみ出しが少なく、鉛フリーハンダリフローに耐え得る、優れた耐熱性及び屈曲性を得ることができるため好ましい。
さらに導電性接着剤層(I)と同様に、難燃性樹脂層(II)には、耐熱性や耐屈曲性等
の性能を損なわない範囲で、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、ユリア系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などを含有させることができる。また、難燃性樹脂層(II)にも硬化促進剤、硬化剤を含有させることができる。
そして本発明は、難燃性電磁波シールド接着フィルムがホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことで、優れた耐熱性や屈曲性を損なわずに、難燃性を達成し、さらに金属腐食性を大きく改善するという、予想以上の効果を得ることができた。
本発明では、難燃性樹脂層(II)が、さらにメラミン骨格を有する難燃剤(C)を含むことが好ましい。これにより難燃性をより向上できるという驚くべき効果を得ることができた。
そして、メラミン骨格を有する難燃剤(C)は、メラミンシアヌレートを用いることが好ましい。
ホスファフェナントレン誘導体(X)は、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との合計100重量部に対して、5〜200重量部用いることが好ましく、15〜150重量部がより好ましい。同様にメラミン骨格を有する難燃剤(C)を5〜200重量部用いることが好ましく、15〜150重量部がより好ましい。上記の数値範囲外であっても使用できるが、所定の難燃性を得られない場合や、屈曲性などの可とう性が低下する場合がある。
また難燃性樹脂層(II)には、導電性接着剤層(I)の場合と同様に、耐ハンダリフロ
ー性を劣化させない範囲で、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤,充填剤等を添加してもよい。
次に難燃性電磁波シールド接着フィルムの製造方法の好ましい態様について説明する。
一の剥離性フィルム(以下、剥離性フィルム1という)の一方の面に、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、ホスファフェナントレン誘導体(X)と、メラミン骨格を有する難燃剤(C)とを含む塗液(D)を塗工・乾燥し、難燃性樹脂層(II)を形成し、
別途、他の剥離性フィルム(以下、剥離性フィルム2という)の一方の面に、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と導電性フィラーとを含有する塗液(E)を塗工・乾燥し、導電性接着剤層(I)を形成し、
次いで、硬化性導電性接着剤層(I)と硬化性難燃性樹脂組成物層(II)とを重ね合わ
せる。
あるいは、剥離性フィルム1の一方の面に、塗液(D)を塗工・乾燥し、難燃性樹脂層(II)を形成し、
難燃性樹脂層(II)上に塗液(E)を塗工・乾燥し、導電性接着剤層(I)を形成し、
導電性接着剤層(I)上に剥離性フィルム2を重ね合わせる。
あるいは、剥離性フィルム2の一方の面に、塗液(E)を塗工・乾燥し、導電性接着剤層(I)を形成し、
導電性接着剤層(I)上に、塗液(D)を塗工・乾燥し、難燃性樹脂層(II)を形成
し、難燃性樹脂層(II)上に剥離性フィルム1を重ね合わせる。
上記のように重ね合わせて難燃性電磁波シールド接着フィルムを得るとき、導電性接着剤層(I)と導電性接着剤層(II)とは、温度が40℃〜120℃、圧力が0.1〜5M
Pa、時間が0.5秒〜60秒間程度の条件で重ね合わせて一体化することが好ましい。
上記の通り例示したような製造方法により、剥離性フィルム2/導電性接着剤層(I)
/難燃性樹脂層(II)/剥離性フィルム1/という積層順の難燃性電磁波シールド接着フィルムを得ることができる。
本発明で使用できる剥離性フィルムは、プラスチックフィルムに、シリコーンやフッ素などの含む樹脂による離型処理がされたものを用いることが好ましい。
導電性接着剤層(I)及び難燃性樹脂層(II)を塗工する方法としては、グラビアコー
ト方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等を挙げることができる。
次に本発明のフレキシブルブリント配線板の製造方法について説明する。
まず、難燃性電磁波シールド接着フィルムから、剥離性フィルム2を剥がし、導電性接着剤層(I)を露出させる。その導電性接着剤層(I)を、配線回路面のグランド回路部
分以外は絶縁層で覆われたフレキシブルプリント配線板用配線回路の配線回路面へ重ね合わせ、剥離性フィルム1を剥がした後、加熱することにより、導電性接着剤層(I)及び
難燃性樹脂層(II)中の、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)など硬化成分を硬化させることフレキシブルブリント配線板を製造できる。なお、前記硬化後に剥離性フィルム1を剥がしてもよい。
本発明の難燃性電磁波シールド接着フィルムは、リジッド配線板等の電磁波シールド性を要求される物品の製造に用いることも好ましい。
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例及び比較例において、「部」及び「%」とあるのは、「重量部」及び「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
なお、実施例中に記載したポリウレタンポリウレア樹脂の重量平均分子量、及びポリエステル樹脂の数平均分子量は、GPC測定で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量、及び数平均分子量であり、GPC測定の条件は、以下のとおりである。
装置:Shodex GPC System−21(昭和電工製)
カラム:Shodex KF−802、KF−803L、KF−805L(昭和電工製)の合計3本を連結して使用。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
温度:40℃
試料濃度:0.3重量%
試料注入量:100μl
[ポリウレタンポリウレア樹脂(A)合成]
[合成例1]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸とテレフタル酸及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られる数平均分子量(以下、「Mn」という)=1006であるジオール414部、ジメチロールブタン酸8部、イソホロンジイソシアネート145部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン27部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液816部を添加し、70℃で3時間反応させ、重量平均分子量(以下、「Mw」という)=54,000、酸価5mgKOH/gであるポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、不揮発分30%であるポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)を得た。
[合成例2]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールとから得られるMn=981であるジオール390部、ジメチロールブタン酸16部、イソホロンジイソシアネート158部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン29部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液814部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=43,000、酸価10mgKOH/gであるポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、不揮発分30%であるポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−2)を得た。
[合成例3]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られるMn=1002であるジオール352部、ジメチロールブタン酸32部、イソホロンジイソシアネート176部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン32部、ジ−n−ブチルアミン4部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液810部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=35,000、酸価21mgKOH/gであるポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、不揮発分30%であるポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−3)を得た。
[合成例4]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンカーボネートジオールとから得られるMn=981であるジオール432部、イソホロンジイソシアネート137部、及びトルエン40部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で3時間反応させた。これに、トルエン300部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。次に、イソホロンジアミン25部、ジ−n−ブチルアミン3部、2−プロパノール342部、及びトルエン576部を混合したものに、得られたウレタンプレポリマーの溶液818部を添加し、70℃で3時間反応させ、Mw=48,000、酸価0mgKOH/gであるポリウレタンポリウレア樹脂の溶液を得た。これに、トルエン144部、2−プロパノール72部を加えて、不揮発分30%であるポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−4)を得た。
[ポリエステル樹脂(P−1)の合成]
[合成例5]
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び還流脱水装置を備えたフラスコに、テレフタル酸ジメチル184.4部、ネオペンチルグリコール94.8部、エチレングリコール94.2部、2−メチル−1,3−プロパンジオール54.7部及び酢酸亜鉛0.035部を仕込んだ。原料を加熱溶融して撹拌できるようになったら撹拌を開始して、留出するメタノールを常圧下で反応系外に除きながら170℃から220℃まで3時間かけて徐々に昇温し、220℃で1時間保持した。内温を一旦170℃まで冷却し、アジピン酸92.6部、イソフタル酸65.8部、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸113.6部を加え、留出する水を常圧下で反応系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温し、さらに240℃で保持して、生成物の酸価が15mgKOH/gになるまで反応を続けた。
次に、装置を真空減圧装置に替えて、テトラブチルチタネート0.06部を加え、240℃の温度で2トールの減圧下で6時間反応を続けた後、ポリフッ化エチレン樹脂製の容器に取り出した。
この樹脂の数平均分子量は18000、ガラス転移温度は27℃であった。
続いて、得られたポリエステル樹脂100部に対して、トルエン100部を加えて溶解した。次いでフラスコにエチレングリコールビストリメリテート二無水物を5部添加し、100℃の温度で5時間反応させ、Mw=24,000、酸価14mgKOH/gであるポリエステル樹脂の溶液を得た。これにトルエンを加え希釈して、不揮発分が30%である、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂溶液(P−1)を得た。
[実施例1]
ポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)333部に対して、エポキシ樹脂(B−1)20部を加えて混合物を得た。この混合物353部に対して、導電フィラー(福田金属箔粉工業製「AgXF−301」)180部を加えて攪拌混合し、ポリウレタンポリウレア樹脂とエポキシ樹脂との合計100重量部に対して、導電フィラー150部を含有する、塗液(E)を得た。
別途ポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)333部に対して、エポキシ樹脂(B−1)20部を加えて混合物を得た。この混合物353部に対して、ホスファフェナントレン誘導体(X)として10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンー10−オキサイド(X−1)36部を混合し、ポリウレタンポリウレア樹脂とエポキシ樹脂との合計100重量部に対して、ホスファフェナントレン誘導体(X)30部を含有する、塗液(D)を得た。
次いで、剥離性フィルム2として厚さ75μmの剥離性フィルム上に、塗液(E)を塗工、乾燥し、乾燥膜厚が8μmの導電性接着剤層(I)を形成した。
別途、剥離性フィルム1として厚さ50μmの剥離性フィルム上に、塗液(D)を塗工、乾燥し、乾燥膜厚が15μmの難燃性樹脂層(II)を形成した。
剥離性フィルム2上に設けた導電性接着剤層(I)面と剥離性フィルム1上に設けた難
燃性樹脂層(II)面とを貼り合わせて難燃性電磁波シールド接着フィルムを作製した。
[実施例2〜13]、[比較例1〜6、11〜15]
実施例1と同様にして、表1〜2に示す種類及び量のポリウレタンポリウレア樹脂溶液、エポキシ樹脂、導電性フィラー、難燃剤(ホスファフェナントレン誘導体(X)、その他化合物)を用いて塗液(D)、及びに塗液(E)を調製し、電磁波シールド接着フィルムを作製した。
〔比較例7〜8〕
ポリウレタンポリウレア樹脂溶液(A−1)333部の代わりに、合成例4で得たカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の溶液(P−1)333部を用いて、剥離性フィルム1の剥離処理面上に、15μmの厚みの難燃性樹脂層を設けた以外は実施例1と同様にして、電磁波シールド接着フィルムを作製した。
〔比較例9〜10〕
実施例1で用いた難燃性樹脂層(II)の代わりに、ポリフェニレンサルファイドフィルム(比較例9)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(比較例10)を基材フィルムとして用い、剥離性フィルム2上に設けた硬化性導電性接着剤層(I)面と貼り合せ、剥離性フィルム1を用いなかった以外は、実施例1と同様にして電磁波シールドフィルムを作製した。
各実施例及び各比較例で得られた難燃性電磁波シールド接着フィルムについて、耐熱性、難燃性、耐イオンマイグレーション性およびPCT試験前後の接続抵抗値評価を以下の方法で評価した。そして実施例の結果を表1に、比較例1〜10の結果を表2に、比較例11〜15の結果を表3に示す。
(1)耐熱性試験
幅10mm×長さ60mmの難燃性電磁波シールド接着フィルムを用意し、剥離性フィルム2を剥がし、露出した導電性接着剤層(I)に、厚さが50μmのポリイミドフィル
ム(東レ・デュポン社製「カプトン200EN」)を150℃、1MPa、30minの条件で圧着し、導電性接着剤層(I)及び難燃性樹脂層(II)を硬化させた。
圧着後、剥離性フィルム1を除去し、180℃の電気オーブンで3min、次いで280℃の電気オーブンで90sec加熱処理した。加熱処理後の試料の外観を目視で観察し、発泡、浮き、剥がれ等の外観不良の有無を評価した。
それぞれ5回づつ試験をおこない、外観不良が発生した回数で評価した。
○:外観不良発生せず
△:外観不良発生が2回以内
×:外観不良発生が3回以上
(2)難燃性試験
剥離性フィルム2を剥がした難燃性電磁波シールド接着フィルムを用意し、露出した導電性接着剤層(I)に、厚さが12.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製
「カプトン50H」)を150℃、1MPa、30minの条件で圧着し、「難燃性電磁波シールド接着フィルム/カプトン50H/難燃性電磁波シールド接着フィルム」の難燃性試験用試料を得た。UL94規格V−0、VTM−0グレードを達成できるか否かにより難燃性を評価した。
◎:UL94規格V−0グレードを達成できる。
○:UL94規格VTM−0グレードを達成できる。
×:UL94規格VTM−0グレードを達成できない。
(3)耐イオンマイグレーション性試験
塗液(E)を、サブトラクティブ法により櫛型導体パターンを形成したフレキシブル銅張積層板(ライン/スペース=0.1mm/0.1mm、銅箔の厚み18μm)に塗工、乾燥し、乾燥膜厚が15μmの難燃性樹脂層を得た。
こうして得られた「難燃性樹脂層/櫛型導体パターンのある銅張積層板」の構成物を150℃、1.0MPa、30minの条件で熱プレスし、160℃の電気オーブンで60min加熱処理した後、85℃85%RH(相対湿度)の雰囲気下で、櫛型導体間に電圧50Vを印加し、1000Hrs連続的に抵抗値の変化を測定した。なお下記「リークタッチ」とは、短絡による絶縁破壊があり、瞬間的に抵抗が低下し電流が流れることである。リークタッチがない場合は絶縁性が低下しないことを意味する。
○:抵抗値が107Ω以上、かつリークタッチ無し。
△:抵抗値が107Ω以上、かつリークタッチ1回有り。
×:抵抗値が107未満、かつリークタッチ2回以上有り。
(4)PCT試験前後の接続抵抗値評価
幅20mm×長さ50mmの難燃性電磁波シールド接着フィルムから剥離性フィルム2を剥がし、露出した導電性接着剤層(I)を、別に作製したフレキシブルプリント配線板
(厚み12.5μmのポリイミドフィルム上に、厚み18μmの銅箔からなり、電気的に接続されてはいない回路2A、2Bが形成されており、回路2A上に、接着剤付きの、厚み37.5μm、直径1.6mmのスルーホールを有するカバーフィルムが積層されてなる配線板)に150℃、1MPa、30minの条件で圧着し、導電性接着剤層(I)及
び難燃性樹脂層(II)を硬化させた(図1参照)。
圧着後、剥離フィルム1を除去し、図1−(3)に示す2A−2B間の抵抗値を抵抗値測定機「ロレスターGP」(三菱化学製)の四探針プローブを用いて、PCT(121℃、100%RH、2気圧)の前後で測定した。評価基準は以下の通りである。
○:500mΩ未満
△:500mΩ以上1000mΩ未満
×:1000mΩ以上
Figure 2011151095
Figure 2011151095
表および実施例の記号等は次の通りである。
(1):樹脂100重量部に対する添加部数、X−2:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、X−3:10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、B−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製「JER828」、エポキシ当量=189 g/eq)、B−2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製「JER 1002」、エポキシ当量=650 g/eq)、B−3:テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製「JER1031」、エポキシ当量=190g/eq)、B−4:単官能エポキシ樹脂(ダウ・ケミカル製「UVR−6216」、エポキシ当量=240 g/eq)、P−1:合成例1で合成したポリエステル樹脂、
TPP:トリフェニルホスフェート(大八化学工業製「TPP」)、APP:ポリリン酸アンモニウム(ブーデンハイム・イベリカ製「TERRAJU C−60」)、PPS:ポリフェニレンサルファイドフィルム、PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム。
表1から表2の結果から、比較例は評価項目をすべて満足する結果を得ることは出来なかった。
それに対して実施例は、評価項目を全て満足する結果が得られた。また、耐イオンマイグレーション性試験の結果からホスファフェナントレン誘導体(X)を用いることでイオンマイグレーションの発生を抑制することができた。さらに実施例10および11はメラミンシアヌレートを用いたことで難燃性がより向上した結果が得られた。
1:ポリイミドフィルム
2:銅箔回路
3:カバーレイ(接着剤層は図示せず)
4:スルーホール
5:難燃性電磁波シールド接着フィルムの硬化物。
5a:難燃性樹脂層(II)の硬化層
5b:導電性接着剤層(I)の硬化層

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示されるホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことを特徴とする難燃性電磁波シールド接着フィルム。
    一般式(1)
    Figure 2011151095
    (R1は、水素原子、ビニル基、アリル基、アリール基、またはベンジル基であり、R2およびR3は、同一かまたは異なる、水素もしくはハロゲンを含まない有機基を示す。)
  2. 導電性接着剤層(I)と、難燃性樹脂層(II)とを含む難燃性電磁波シールド接着フィル
    ムであって、
    前記難燃性樹脂層(II)が、一般式(1)で示されるホスファフェナントレン誘導体(X)を含むことを特徴とする請求項1記載の難燃性電磁波シールド接着フィルム。
  3. 導電性接着剤層(I)および難燃性樹脂層(II)が、
    ポリウレタンポリウレア樹脂組成物(A)およびエポキシ樹脂(B)を含むことを特徴とする請求項1または2記載の難燃性電磁波シールド接着フィルム。
  4. 難燃性樹脂層(II)が、さらにメラミン骨格を有する難燃剤(C)を含むことを特徴とする請求項2または3記載の難燃性電磁波シールド接着フィルム。
  5. 請求項2〜4いずれか記載の難燃性電磁波シールド接着フィルムの導電性接着剤層(I)
    面と、配線回路上に絶縁処理されたフレキシブルプリント配線板用配線回路の配線回路面へ重ね合わせ、加熱し、導電性接着剤層(I)および難燃性樹脂層(II)を硬化させる工
    程を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板の製造方法。
  6. 請求項5の製造方法により得られたフレキシブルプリント配線板。
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