JP2011148852A5 - - Google Patents

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シリコーン系接着構造体の接着せん断強度を管理する方法

本発明は、シリコーン系接着剤を使用する接着構造体の接着せん断強度を管理する方法に関する。

電動パワーステアリング装置のモータの永久磁石の接着には耐熱性があり、接着せん断強度の高いエポキシ接着剤が使用されているが、使用条件により永久磁石と金属部品間に生じる残留応力や環境劣化(熱、温度など)によって接着せん断強度が低下し、永久磁石が剥がれて操舵不良となる耐久性低下がある。そのため、接着と機械的固定の併用が不可避であった。一方、接着せん断強度を高めるため、柔軟で化学的安定性に優れたシリコーン接着剤が使用されているが、シリコーン系接着剤は白金触媒の失活による接着不良の問題があり、使用は限定されている。このような背景で耐熱性を有し耐久性の良い接着構造体が要求されている。

シリコーン系接着剤の上記問題を解決するためエポキシ接着剤の改良がなされている。(特許文献1)一方、耐熱性の良いシリコーン系接着剤を用いられる場合もあるが、接着せん断強度の不足や、硬化阻害といった、品質上の管理が重要であり、種々のシリコーン材料の改良がなされている。(特許文献2)

特開2005−15563 特公平5−7427

パワーステアリング装置部品、特にモータを構成する永久磁石の接着部には高い耐熱性や耐久性を要求されている。そのため、永久磁石の接着には接着せん断強度に難があるエポキシ系接着剤に代わり、耐熱性のよいシリコーン系接着剤の要求が大きい。そこで、 リコーン系接着剤の硬化阻害の許容値を明確にすることで、管理方法・製造工程を改良して、シリコーン系接着剤を大型車の電動パワーステアリング装置に要求されるような高い接着せん断強度を広い温度範囲で満たすともに、冷熱サイクル後にも接着せん断強度を維持することができるシリコーン系接着剤を使用したシリコーン系接着構造体を提供することが要求されている。

本発明は、上記課題を解決するために、優れた接着せん断強度を有したシリコーン系接着を使用するシリコーン系接着構造体の接着せん断強度を管理する方法を提供することを目的とする。

上記課題を解決するために、本発明はシリコーン系接着剤で接着したシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方法において、接着面のチッソ、イオウ、リンの元素の量の測定結果に基いて、接着部の接着せん断強度を推定することを特徴とす るシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方法(請求項1)を要旨としている。

接着面の洗浄剤に含まれる汚染物質であるチッソ、イオウ、リンの元素の量を汚染物質 の接着面残留量として測定し、接着面の接着せん断強度と接着面残留量とは比例している ので、洗浄後の接着部の接着せん断強度を予測推定できるため、汚染物質の元素の量を規 定量以下に管理すれば必要な接着せん断強度を得ることができる。

また、前記元素の量に対する前記接着せん断強度の関係から近似関数を設定し、

前記測定結果と前記近似関数より、前記接着部の接着せん断強度を推定することを特徴 とする請求項1に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理 方法(請求項2)を要旨としている。

接着面の洗浄剤に含まれる汚染物質であるチッソ、イオウ、リンの元素の量と、それぞ れの接着せん断強度を測定することによって、予め、接着せん断強度と汚染物質の元素の 量が比例しているので近似関数を設定して接着部の接着せん断強度が推定できる。これに より、接着面の接着せん断強度と接着面残留量の近似関数によって、汚染物質の元素の量 を規定量以下に管理すれば必要な接着せん断強度を得ることができる。

また、前記接着面の前記元素の量は、0.1μmol/cm 以下であることを特徴と する請求項1または2に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度 の管理方法(請求項3)を要旨としている。

モータの永久磁石の接着構造体において、モータ磁石とモータ軸の接着面はチッソ、イオウ、リンの汚染物質の元素の量0.1μmol/cm以下であり、接合剤層の厚さは0.1mm以上が良品条件である。その厚さが0.1mm未満であれば、接着物の残留応力が大きくなり、繰り返しの温度変化で疲労により、接着はがれを発生する危険がある。また、上記接合剤層の接着せん断強度は6MPa以上が良品条件である。従って、接着面 の汚染物質であるチッソ、イオウ、リンの接着面残留量が0.1μmol/cm 以下で あれば、良品条件を達成したシリコーン系接着構造体を提供できる。

また、シリコーン系接着剤には白金族金属系触媒を含有することを特徴とする請求項3 に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方法(請求項4 )を要旨としている。

前述のように、洗浄剤に含まれる汚染物質を管理することにより、白金族金属触媒の失 活による硬化阻害を一定値以内に抑制することができ、接着面と空気との界面で接着剤の 硬化を進行させることができるので、必要接着せん断強度を得ることができる。

また、シリコーン系接着剤には前述の白金族金属触媒に、さらに有機過酸化物を含有す ることを特徴とする請求項4に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん 断強度の管理方法(請求項5)を要旨としている。

白金族触媒を含んだシリコーン系接着構造体に、有機過酸化物を含めることにより、接 着層内部の硬化を空気との界面で接着剤の硬化とともに促進させることができるので、接 着せん断強度が格段に向上する。

また、以上に示したシリコーン系接着構造体の接合剤層の厚さは、0.1mm以上であ ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコーン系接着構造体におけ る接着部の接着せん断強度の管理方法(請求項6)を要旨としている。

前述のシリコーン系接着構造体の接着層の厚さを0.1mm以上にしたので、電動パワ ーステアリング装置に要求されるような高い接着せん断強度を広い範囲で満たすとともに 、冷熱サイクル後にも接着せん断強度を維持できる。

また、接着面はアルカリイオン水と超音波による洗浄方法により、接着面のチッソ、イオウ、リンの元素の量を管理して作製するシリコーン接着構造体の接着せん断強度管理方法(請求項7)を要旨としている。

この方法により、洗浄後の接着面のチッソ、イオウ、リンの元素の定量管理ができ、白金触媒の失活による硬化阻害を一定値以内に抑制できるため、所定の接着せん断強度が得られ、耐久性のよい高品質のシリコーン系接着構造体が提供できる。

本発明によれば、汚染物質による硬化阻害が起こらず、120℃の高温でも安定した接着せん断強度の高いシリコーン系接着構造体を提供できる。

電動パワーステアリング装置の全体図である。 電動パワーステアリング装置の要部拡大図である。 汚染物質の元素の量と接着せん断強度の関係を示す図である。 汚染物質による硬化反応率と接着せん断強度の関係を示す図である。 洗浄時間による汚染物質の変化を示す図である。

11 電動パワーステアリング装置

12 第1ラックハウジング

13 第2ラックハウジング

14 モータハウジング

16 ラック軸

18 モータ軸

20 第2ベアリング(軸受)

21 第1ベアリング(軸受)

26 ボールねじナット

以下において、本発明のシリコーン系接着剤を適応することができる電動パワーステアリング装置について説明する。図1は電動パワーステアリング装置の全体図である。電動パワーステアリング装置11は、中空円筒状の第1ラックハウジング12と中空円筒状の第2ラックハウジング13と、前記両ラックハウジングに同軸的に結合された中空円筒状のモータハウジング14とが、図示しない車体のボディに、第1ラックハウジング12に形成された取付部15を介して、ねじ止めされて支持されている。

第1ラックハウジング12と第2ラックハウジング13とモータハウジング14とから構成された筒状体内には、回転不能かつ軸線方向に移動可能にラック軸16が内蔵されており、ラック軸16の両端部に連結される図示しないタイロッドを介して左右の前輪が連結される。そのラック軸16は、第1ラックハウジング12に設けられたピニオン軸17を介して図示しないステアリングホイールに連結されている。ラック軸16とピニオン軸17との間には、ラックアンドピニオン機構の噛み合い部(図示しない)が形成されている。なお、モータハウジング14は電動パワーステアリング装置のラックハウジングとしても機能している。

次に図1の要部を拡大した図2を用いて説明する。モータハウジング14の内周には巻線が施されたステータ19が嵌合され、ラック軸16の軸線方向の中間部には中空円筒状にモータ軸18が同軸的にラック軸16の外側に遊嵌されている。

モータ軸18は、その一端側(ピニオン軸17側)に嵌合段部18cが形成され、同嵌合段部18cが軸受としての第1ベアリング21を介してモータハウジング14と、第1ラックハウジング12に対して回転自在に支持されている。前記第1ベアリング21は、モータハウジング14の端部内周面及び第1ラックハウジング12端部内周面をそれぞれ周回するように形成された第1嵌合段部14aと嵌合段部12aとに対して内嵌固定されている。

また、第1ベアリング21は、モータ軸18の端部に螺合された第1ロックナット22にて締め付けられることにより、軸線方向に押圧されてモータ軸18に対して固定されている。同モータ軸18には永久磁石27が本発明に係るシリコーン系接着剤により外設して固定されている。

次に、本発明の好ましい実施の形態の1例について説明する。

モータの永久磁石の接着構造体において、モータ磁石とモータ軸の接着面はチッソ、イオウ、リンの汚染物質の元素の量0.1μmol/cm以下であり、接合剤層の厚さは0.1mm以上が良品条件である。その厚さが0.1mm未満であれば、接着物の残留応力が大きくなり、繰り返しの温度変化で疲労により、接着はがれを発生する危険がある。また、上記接合剤層の接着せん断強度は6MPa以上が良品条件である。接着せん断強度が6MPa以下の場合には、上記接合剤層が高温度でクリープを発生して、強度が低下するとともに、接合剤層の厚さが減少して、残留応力が大きくなり、疲労により接着はがれを発生して耐久性が低下するおそれがある。本管理方法により接着表面の汚染物質を測定 すれば強度が予測推定できるため、汚染物質の元素の量を規定量以下に管理すれば必要な 接着せん断強度を得ることができる。

上記接着面のチッソ、イオウ、リンの元素の量の測定は紫外蛍光分析装置により行い、接合剤層の厚みは、例えばモータ磁石のロータを軸直角方向に切断し、その断面における接合剤層を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することにより測定できる。また、上記接合剤層の接着せん断強度は、接合剤層に対して、せん断方向に応力を加え、せん断時の応力を引張試験機を用いて測定することにより求めることができる。

本発明の電動パワーステアリング装置のための接着構造体は、モータ磁石とモータ軸の接着面にシリコーン系接着剤を塗布し、硬化させることにより形成することができる。上記シリコーン系接着剤としては、公知のシリコーン系の接着剤を使用することができる。具体的には、シリコーン系接着剤は、シリコーンゴム組成物として、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基を少なくとも2つ含有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有する接着剤を用いることができる。

シリコーン系接着剤には、硬化時の白金族金属系触媒としては、例えば白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体を用いることができるが、その他、HPtCl・nHO、HPtCl・n 、NaHPtCl・HO、KPtCl・nHO、PtCl・nHO、PtCl、NaHPtCl・nHO(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウムーオレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどを含有する。

また、上記シリコーン系接着剤は、上記白金族金属触媒の他にさらに有機過酸化物を含有することが好ましい。この場合には、接着剤の硬化がより一層進行し易くなる。有機過酸化物は、酸素によって硬化阻害を受ける恐れがあるが、上記のように、有機過酸化物と白金族金属触媒とを併用することにより、空気との界面については、白金族金属触媒の働きにより硬化を進行させ、内部にては、有機過酸化物の働きによって硬化を進行させることができる。そのため、上記接合剤層の接着せん断強度をより、向上させることができる。

また、上記有機過酸化物は、樹脂成分をラジカル反応により架橋させる触媒として、機能する。具体的には、例えば、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーカーボネート等がある。より具体的には、例えばジー第3ブチルペルオキシド、ジクミルペルイキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、1,3−ビスベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等を用いることができる。

前記モータハウジング14は、端部に設けられた第1当接部14cにて、第1ラックハウジング12は、端部に設けられた当接部12bにて互いに当接されており、当接部12bを挿通した固定ねじ24を第1当接部14cに螺着することにより、両者は固定ねじ24により互いに締付けられて連結されている。前記第1当接部14cと当接部12bとの合わせ面には、薄肉状のパッキン23が介装されている。同パッキン23により、モータハウジング14と第1ラックハウジング12との勘合部から内部への水、油等の液体の侵入を防止している。この構成によりモータハウジング14と第1ラックハウジング12と第1ベアリング21とは1箇所で嵌合される。さらに、モータハウジング14と第1ラックハウジング12とに内嵌された第1ベアリング21を介して、モータ軸18の軸線方向の動きが規制されることとなる。

モータ軸18の他端側(ピニオン軸17側と反対側)は、中間部分よりも拡径された中空円筒状のナット保持部18aが一体に形成されている。また、モータハウジング14の他端側内周面には、周回する第2嵌合段部14bが形成されている。そして、モータ軸18は、ナット保持部18aが第2嵌合段部14bに内嵌固定された軸受としての第2ベアリング20に内勘されることにより自身の軸心の回りで回動自在に支持されている。第2ベアリング20は、モータハウジング14の第2嵌合段部14bと第2ラックハウジング13の端部13aとの間で軸線方向に動くことが可能な構成となっている。

第2ラックハウジング13の端部13aは、モータハウジング14に対して内嵌されるとともに、端部13a外周面から張出し形成された当接部13bがモータハウジング14の第2当接部14d端面に当接されている。そして、当接部13bを挿通した固定ねじ25を第2当接部14dに螺着することにより、モータハウジング14と第2ラックハウジング13とは固定ねじ25により互いに締め付けられて連結されている。

モータハウジング14に内嵌された端部13aの外周面には周回溝13dが形成され、同周回溝13d内には、Oリング29が嵌着されている。そして、同Oリング29により、モータハウジング14と第2ラックハウジング13との嵌合部から内部への水、油等の液体の侵入を防止している。

また、モータハウジング14とモータ軸18とは、第1ベアリング21と第2ベアリング20により、同軸度が精度良く構成されている。以上の構成により、モータ軸18の両端はモータハウジング14の両端に設けた第1ベアリング21と第2ベアリング20とにより支持される。

モータ軸18のナット保持部18a内にはボールねじナット26が同軸的に内嵌されている。このボールねじナット26は、ナット保持部18a内に第2ロックナット28が内嵌状態で螺入することにより、抜け止め固定されている。

ラック軸16の外周面には軸線方向の所定範囲に螺旋状のボールねじ溝16aが設けられている。また、ボールねじナット26の内周面には螺旋状のボールねじ溝26aが設けれ、ボールねじ溝16aとボールねじ溝26aとの間には、図示しない多数のボールが転動可能に受容されている。このように、ラック軸16のボールねじ溝16aとボールねじナット26とによりボールねじ構造を備えたボールねじ機構が形成されている。そして、このボールねじ機構によりモータ軸18の正逆回転の回転トルクをラック軸16の軸線方向の往復動のアシスト力に変換して、ピニオン軸17に連結された図示しないステアリングホイールの操舵力を軽減するようになっている。

本発明のシリコーン系接着は、上記のように、電動パワーステアリング装置のモータ軸18と永久磁石27との接着に用いることができる。本発明の接着を磁石27及び/又はモータ軸18にヘラ、シリンジ自動塗布器などにより塗布し、120〜150℃の温度で30〜120分間、硬化させることにより接着される。

以上モータ軸18とラック軸16とを同軸的に配置したタイプのラックアシスト式電動パワーステアリング装置について記載したが、モータ軸とラック軸とを非同軸的に配置したタイプのラックアシスト式電動パワーステアリング装置、コラムアシスト式、ピニオンアシスト式、ダイレクトドライブ式電動パワーステアリング装置のような他の電動パワーステアリング装置の永久磁石とモータ軸との接着においても本発明のシリコーン系接着を用いることができる。さらに、本発明で言う電動パワーステアリング装置には、ステアリングホイールの切れ角と車輪(左右の前輪)の切れ角との関係を諸条件に応じて変更するように電動モータを駆動する伝達比可変機構を備えたステアリング装置をも含むものとし、この伝達比可変機構の電動モータにも本発明を適用可能である。
Figure 2011148852

実施例1

以下において、本発明のシリコーン系接着の品質管理方法を実施例に基づいて説明する。

シリコーン系接着剤は接着面の洗浄剤に含まれる汚染物質(チッソ、イオウ、リン)により硬化阻害を起こすことが知られており、汚染物質のモノイソプロパノールアミンCHCH(OH)CHNH2、ジエタノールアミン(CHCHOH)NHトリエタノールアミン(CHCHOH)ドデカンチオールCH(CH11SH各種成分を添加してその影響を確認した。その結果を図3、4に示す。汚染物質の測定は紫外蛍光分析装置を使用する。また、接着せん断強度測定試料はダブルラップシェアー試験片(材質:JISG3141:SPCC)を用いて、表1の条件で実施した。

図3より、チッソ、イオウ、リンの汚染物質の元素の量と接着せん断強度が、図3に示 す近似関数(直線)に示すように比例しており、それは、各種汚染物質の種類や量ではなく元素量が影響することが判明した。接着せん断強度は接着面の汚染物質である元素量と比例しており、接着面残留量が0.1μmol/cm 以下のとき、接着せん断強度は 6MPa以上であると予測推定できる。推定された接着せん断強度に対する接着剤の硬化 反応は、図4に示すように付加反応率の指標で未反応量を定量として求めており、前述の 接着面残留量に対する接着せん断強度であれば、ほぼ硬化反応が完了することが分かる。 従って、汚染物質の元素の量を規定量以下に管理すれば必要な接着せん断強度を得ること ができる。

図3より、接着面残留量と接着せん断強度は比例しているので、近似関数を設定するこ とができる。近似関数(直線)によって接着部の接着せん断強度が推定できるので、汚染 物質の元素の量を規定量以下に管理すれば必要な接着せん断強度を向上したシリコーン系 接着構造体が提供できる。

以上により、汚染物質の元素の量を0.1μmol/cm 以下として管理すれば、接 着面残留量と接着せん断強度の比例または近似関数からモータ軸と永久磁石の接着構造体 において、接合剤層の必要接着せん断強度が6MPa以上であるという良品条件になり、 必要な接着せん断強度を向上したシリコーン系接着構造体が得られる。

このシリコーン系接着構造体では、従来では前述のように白金触媒の失活による接着不 良の問題があったが、接着面の洗浄剤に含まれる汚染物質を管理することにより、表2に 示すようにアルカリイオン水による超音波洗浄を用いた場合では、白金族金属触媒の失活 により硬化阻害を一定値以内に抑制できるので、前述の通り空気との界面で接着剤の硬化 を進行させることができるので、必要接着せん断強度を得ることができる。

さらに、このように洗浄剤に含まれる汚染物質を管理することにより、白金族触媒を含 んだシリコーン系接着構造体に有機過酸化物を含ませると、接着層の内部の硬化を促進さ せることができるので、表2に示すように接着せん断強度は洗浄の前後において飛躍的に 向上し、汚染物質に対して有利であることが明確になった。

なお、接着層の厚さが0.1mm未満であれば、接着物の残留応力が大きくなり、繰り 返しの温度変化で疲労により、接着はがれを発生する危険がある。そこで、表1に示すよ うに接着層の厚さを0.1mmとして試験したところ、接着せん断強度は、表2によれば 前述の良品条件である6MPa以上となっており、前述の通り洗浄剤に含まれる汚染物質 を0.1μmol/cm 以下として管理していることにより冷熱サイクル後にも接着せ ん断強度を維持できる。よって、良品条件である接着層の厚さを0.1mm以上とすれば 、必要な接着せん断強度を得ることができる。

実施例2

図5に洗浄時間による汚染物質量の変化を示し、表2に洗浄方法の違いによる前記試験片のせん断強度を示す。

図5に示すように、アルカリイオン水を用いた超音波洗浄で洗浄時間10分以上で目標の汚染物質の元素の量0.1μmol/cm以下を達成できることが判明した。

以上のことから接着面の汚染物質の除去には洗浄が重要であり、表2に示すようにアルカリイオン水を使用した超音波洗浄により、飛躍的に向上することがわかった。さらに、シリコーン系接着剤の中でも、過酸化物架橋の材料を包含すると接着性が各段に向上することが判明し、汚染物質に対して有利であることが明確になった。
Figure 2011148852

本発明で用いた計測方法から汚染物質の元素の量を整理すると比例関係にあることが判 明したので、接着面の汚染物質の元素の量を管理することで、必要な接着せん断強度を維 持できる。さらに、アルカリイオン水を使用した超音波洗浄方法を、本発明で示した管理 方法に用いることで、硬化阻害物質をさらに削減できる。よって、本発明の管理方法に基 きシリコーン系接着剤に白金族金属触媒と過酸化物架橋材を含有すれば、さらに効果的に 接着せん断強度を向上できることが判明した。従って、シリコーン系接着剤は、アルカリ イオン水を使用した超音波洗浄方法を接着面の汚染物質の管理に併用すれば、接着前のチ ッソ、イオウ、リンの元素の量を0.1μmol/cm 以下で管理することで耐久性のよいシリコーン系接着構造体ができる。

Claims (7)


  1. シリコーン系接着剤で接着したシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方法において、接着面のチッソ、イオウ、リンの元素の量の測定結果に基いて、 接着部の接着せん断強度を推定することを特徴とするシリコーン系接着構造体における接 着部の接着せん断強度の管理方法。

  2. 前記元素の量に対する前記接着せん断強度の関係から近似関数を設定し、

    前記測定結果と前記近似関数より、前記接着部の接着せん断強度を推定することを特徴 とする請求項1に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理 方法。

  3. 前記接着面の前記元素の量は、0.1μmol/cm 以下であることを特徴とする請 求項1または2に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理 方法。

  4. シリコーン系接着剤は、白金族金属系触媒を含有することを特徴とする請求項3に記載 のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方法。

  5. シリコーン系接着構造体のシリコーン系接着剤に有機過酸化物を含有することを特徴と する請求項4に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方 法。

  6. シリコーン系接着構造体の接合剤層の厚さは、0.1mm以上であることを特徴とする 請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん 断強度の管理方法。

  7. 前記接着面は、アルカリイオン水で超音波洗浄することを特徴とする請求項1〜6のい ずれか1項に記載のシリコーン系接着構造体における接着部の接着せん断強度の管理方法
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